以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
先ず、おむつの形状について説明する。本発明が包含し得るおむつは、ウェスト開口部と一対のレッグ開口部を有するおむつであり、腹側ウェスト部及び背側ウェスト部と本体部と、を備えている。本体部は、腹側本体部及び背側本体部並びにこれらの間に位置し上記レッグ開口部の少なくとも一部を形成する股部からなっており、本体部は、腹側ウェスト部及び背側ウェスト部に隣接して存在している。そして、股部を除くおむつのいずれかの部位が、伸張性の繊維集合体と、間隔を置いて複数配置された、線状、曲線状又は環状のエラストマーフィルムとを含む第1の積層体、又は、伸張性の繊維集合体と、孔が形成されたエラストマーフィルムとを含む第2の積層体で構成されている。このような形状のおむつについて、図1〜3を用いて説明する。なお、本発明が包含し得るおむつは、上述したように、腹側ウェスト部及び背側ウェスト部と本体部と、を備えているが、これは、おむつが少なくとも腹側ウェスト部及び背側ウェスト部と本体部と、を含んでいることを意味しており、腹側ウェスト部及び背側ウェスト部と本体部以外に他の部材を含んでいてもよい。
図1は、第1の形状に係るおむつを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図である。図1に示す第1の形状に係るおむつ101は、ウェスト開口部1と一対のレッグ開口部2a,2bを有するおむつであって、ウェスト開口部1を形成する腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bと、本体部20と、から構成されている。斜視図に表されるように、ウェスト開口部1は、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bが連結することにより形成されている。また、本体部20は、腹側本体部20a及び背側本体部20b並びにこれらの間に位置する股部20cからなっており、股部20cは、一対のレッグ開口部2a,2bの間に存在する。このように、第1の形状に係るおむつ101は、パンツ型のおむつである。
図2は、第2の形状に係るおむつを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図である。図2に示す第2の形状に係るおむつ102は、斜視図に表されるように、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bの間にサイド部40が位置し、これらが連結することによりウェスト開口部1が形成されている。なお、正面図又は背面図に表されるように、本体部20のレッグ開口部2a,2bが形成されている領域が股部20cに相当する。この股部20cは、第1の形状と同様に、腹側本体部20aと背側本体部20bの間に位置している。また、サイド部40は、伸張性のものとすることができる。このように、第2の形状に係るおむつ102は、パンツ型のおむつである。
図3は、第3の形状に係るおむつを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図である。図3に示す第3の形状に係るおむつ103は、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aが、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの内側に挿入され、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの両端に設けられたイヤー部50に接合された固定部60が、腹側本体部20aに再剥離可能に連結することにより、ウェスト開口部1が形成されている。なお、イヤー部50は、背側ウェスト部10b又は背側本体部20bの両端に設けられていてもよく、固定部60は、腹側ウェスト部10aや、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aの両方に対して、再剥離可能に連結していてもよい。イヤー部50の形状は、図3に示されるように矩形状であってもよく、固定部60に向かって細くなる台形状であってもよい。股部20c、腹側本体部20a及び背側本体部20bの位置は、第2の形状と同様である。また、イヤー部50は、伸張性のものとすることができる。このように、第3の形状に係るおむつ102は、オープン型(フラット型)のおむつである。固定部60は、粘着部又はメカニカルファスニング部であり得る。
図1〜図3に示すおむつの形状について、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a、背側本体部20b、サイド部40及びイヤー部50の少なくとも一つの部位が、伸張性の繊維集合体とエラストマーフィルムを含む積層体(以下、「伸張性積層体」という場合がある。)、により構成されている。なお、上記部位に加えて、股部20cが伸張性積層体で構成されていてもよい。
図4(a)は、2層構造の伸張性積層体の断面図であり、(b)は、3層構造の伸張性積層体の断面図である。伸張性積層体は、図4(a)に示すように、伸張性の繊維集合体7の主面上に、線状のエラストマーフィルム6が間隔を置いて複数配置された形態70や、図4(b)に示すように、対向する伸張性の繊維集合体7a,7bの間に、線状のエラストマーフィルム6が間隔を置いて複数配置された形態70’を取り得る。
図5(a)、(b)、(c)及び(d)は、伸張性積層体において、線状のエラストマーフィルムが間隔を置いて複数配置された状態を示す模式図である。図5(a)に示すように、形状の等しい矩形のエラストマーフィルム6が一定の間隔をもって複数配置されていてもよく、図5(b)に示すように、エラストマーフィルム6が密に存在する部分と、疎に存在する部分とが形成されるように、矩形のエラストマーフィルム6が異なる間隔をもって複数配置されていてもよい。また、図5(c)に示すように、エラストマーフィルム6は、長手方向に幅が徐々に変化する線状を有しており、幅の変化方向が同一になるように複数配置されていてもよく、図5(d)に示すように、エラストマーフィルム6は、長手方向に幅が徐々に変化する線状を有しており、幅の変化方向が相互に異なるように複数配置されていてもよい。
図6(a)及び(b)は、伸張性積層体において、曲線状のエラストマーフィルムが、間隔を置いて複数配置された状態を示す模式図である。エラストマーフィルム6は、図6(a)に示すように、曲線形状が揃うように複数配置されていてもよく、図6(b)に示すように、曲線形状が向き合うように複数配置されていてもよい。
図6(c)及び(d)は、伸張性積層体において、環状のエラストマーフィルムが、間隔を置いて複数配置された状態を示す模式図である。この場合、図6(c)に示すように、形状の等しい環状のエラストマーフィルム6が、所定の間隔をもって均等に配置されていてもよく、図6(d)に示すように、形状の異なる環状のエラストマーフィルム6が、異なる間隔をもって均等に配置されていてもよい。
図7(a)及び(b)は、伸張性積層体において、孔が形成されたエラストマーフィルムが配置された状態を示す模式図である。この場合、図7(a)に示すように、異なる形状の孔が形成されたエラストマーフィルム6が配置されていてもよく、図7(b)に示すように、等しい形状の孔が形成されたエラストマーフィルム6が配置されていてもよい
エラストマーフィルム6が、例えば図5〜7に示すような形状、配列、及び構造を有しているため、伸張性積層体70,70’は通気性に優れる。さらに、繊維集合体7(7a,7b)が伸張性を有するため、フラットな構造の伸張性積層体70,70’を形成させることが可能になり、皺が少なく外観の良い、さらに嵩張りが少ないおむつを得ることができる。また、締め付け圧力が分散され、ゴム跡が残りにくく、おむつを脱着したときに肌に目立った跡を残すことがなくなる。
間隔を置いて複数配置された、線状、曲線状又は環状のエラストマーフィルム6の幅は、1mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。エラストマーフィル6の幅が上記範囲であると、締め付け圧力がより分散され、ゴム跡がより残りにくく、おむつを脱着したときに肌に目立った跡を残すことがより少なくなる。上記性能を損なわない限り、互いに離隔した複数のエラストマーフィルム6は、弾性を有さないフィルム材料で架橋されていてもよい。一方、エラストマーフィルム6の幅は、ウエスト部の幅等を考慮し、通常は、30mm以下、ある態様においては、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。また、隣接するエラストマーフィルム6間の間隔は、1mm以上10mm以下とすることができる。1mmよりも狭いと通気性が悪くなる傾向があり、10mmより広いと締め付け圧が弱くなる傾向がある。上記の観点から、2mm以上5mm以下であるとよい。
間隔を置いて複数配置された、線状、曲線状又は環状のエラストマーフィルム6、又は、孔が形成されたエラストマーフィルム6を形成する方法としては、例えば、例えば、図5〜7に示すエラストマーフィルム6に対応するパターンを彫ったシリンダーに、溶融したエラストマーを流し込み、その後繊維集合体7(7a,7b)に転写させる方法や、エラストマーフィルムから、図5〜7に示すエラストマーフィルム6以外の部分に対応するパターンを型抜きし、型抜き後のエラストマーフィルム6を繊維集合体7(7a,7b)に貼付する方法が挙げられる。
エラストマーフィルム6は、伸縮性の調整が可能である材料であるとよい。エラストマーフィルム6を構成する重合体成分としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうち、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)及びこれらの組み合わせが好ましく、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びこれらの組み合わせがより好ましい。
ウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、長鎖ポリオール又は短鎖ポリオール等のポリオール成分と、ジイソシアネート等のイソシアネートとを重付加反応させることにより得られ、分子内にウレタン結合を有している熱可塑性エラストマーが挙げられる。
ポリオールとしては、ポリエステル系(アジペート系、ポリカプロラクトン系等)、ポリエーテル系等のポリオールが使用可能である。長鎖ポリオールとしては、ポリエーテルジオール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール)、又はポリエステルジオール(例えば、ポリ(エチレンアジペート)グリコール、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)グリコール、ポリ(1,6−ヘキシレンアジペート)グリコール、ポリ(ヘキサンジオール−1,6−カーボネート)グリコール)などが挙げられる。短鎖ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,4−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
ジイソシアネートとしては4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
ある態様においては、ウレタン系熱可塑性エラストマーのショアーA硬度(JIS A硬度)を60以上95以下にすることができる。ポリウレタンエラストマーのショアーA硬度(JIS A硬度)が60以上95以下の範囲にあると、エラストマー組成物を溶融してフィルムに製膜する際の膜安定性を高めることができ、また、良好な伸縮柔軟性を有するフィルムを得ることができる。また、ある態様においては、上述のウレタン系熱可塑性エラストマーを2種以上組み合わせて使用してもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ビニル−共役ジエン(またはその不飽和結合の一部、またはすべてが水素添加されたもの)−芳香族ビニルブロック共重合体、を基本構造とする様々なタイプの3元系ブロックポリマー材料を使用することができる。芳香族ビニル重合体を構成するビニル単量体として望ましいのはスチレンである。また、共役ジエンを構成する単量体としては、イソプレンが望ましい。それらの不飽和結合の部分、またはすべては、スチレン系熱可塑性エラストマーとして使用される時点で水素添加されていてもよい。スチレン系熱可塑性エラストマーの代表的なものとしては、スチレン―イソプレン―スチレンブロック共重合体(SIS共重合体)が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしてSIS共重合体が用いられる場合は、SIS共重合体全体の重量を100重量%としたときのスチレン比率が、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、45重量%以下が特に好ましい。
SIS共重合体のメルトフローレート(200℃、5.0kg)は、流動性(加工性)及びエラストマーフィルム6の原料組成物を層状にした際のフィルム安定性の点から高い方が好ましく、ある態様においては10以上45以下とすることができる。また、ある態様においては、SIS共重合体のメルトフローレートの下限を20、上限を40とすることができる。
SIS共重合体としては、未変性タイプのものも、変性タイプのものも使用できる。変性SIS共重合体は、例えばSIS共重合体に不飽和カルボン酸もしくはその誘導体を付加反応(例えばグラフト化)させることにより得ることができる。具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、エンド−ビ−シクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸およびそれらの無水物、イミド化物などが挙げられる。
ある態様においては、SIS共重合体として、3個以上の分岐骨格を有するSIS共重合体を使用することもできる。また、ある態様においては、2種以上のSIS共重合体を組み合わせて使用してもよい。
エラストマーフィルム6の原料組成物には、上記重合体成分の他に、タッキファイヤー(粘着性付与剤)等の添加剤が含まれていてもよい。
タッキファイヤーとしては、上記重合体との相溶性の良いものが好ましい。重合体成分として、ウレタン系熱可塑性エラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマーとのブレンドポリマーが用いられる場合には、ウレタン系熱可塑性エラストマーの構造を壊さず、またSIS共重合体との相溶性の良いものが好ましい。ロジン系、テルペン系、石油系のもの等を使用することができる。
ある態様においては、タッキファイヤーの軟化点を40℃以上160℃以下、又は70℃以上160℃以下の範囲とすることができる。また、ある態様においては、2種以上のタッキファイヤーを組み合わせて使用してもよい。
タッキファイヤーの量は、エラストマーフィルム6の原料組成物の全量を基準として、0.1重量%以上10重量%以下とすることができる。
エラストマーフィルム6の原料組成物は、更に、各種の添加剤(酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填材、オイル等)を含むこともできる。
エラストマーフィルム6は、積層体の伸縮性の観点から、坪量が300g/m2以下であることが好ましく、200g/m2以下であることがより好ましく、100g/m2以下であることがさらに好ましい。一方、耐久性の観点から、エラストマーフィルム6の坪量は5g/m2以上であることが好ましく、10g/m2以上であることがより好ましい。
エラストマーフィルム6は、一層構造であっても、複数層構造であってもよい。複数層構造の場合、各層は異なるエラストマーフィルムから構成することができる。その際、複数層のうち少なくとも1層は、上記のような熱可塑性エラストマーから構成される。伸縮性の観点から、エラストマーフィルム6全体の厚さは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。一方、耐久性の観点から、エラストマーフィルム6全体の厚さは、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。エラストマーフィルム6は一様な厚みであっても、厚さが異なっていてもよい。エラストマーフィルム6一枚当りの厚さは、約5μm以上、約100μm以下とすることができる。
繊維集合体7(7a,7b)としては、伸張性を有し、通気性があり、手触りがよいものであれば特に制限はなく、例えば、上記の特性を有する単繊維、複合繊維から構成される不織布が挙げられる。繊維集合体を構成する繊維として具体的には、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維、後述する結晶性ポリプロピレンからなるハードエラスチック成分を第1成分とし、熱可塑性エラストマーを第2成分とする2成分系の伸縮弾性複合繊維、又は、これらを混合した混紡繊維が挙げられる。芯材と当該芯材を他の材料で覆った同心型複合繊維から構成される繊維集合体を用いることもできる。同心型複合繊維は、熱融着性に優れたものとするために、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とすることができる。これらの繊維を、スパンボンド法、スパンレース法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の方法によって加工し、繊維集合体7(7a,7b)を得ることができる。
例えば、スパンボンド不織布を、その製造後に所定の倍率で延伸加工したもの、刃溝延伸加工した不織布、低交絡スパンレース、プリーツ加工不織布などが挙げられる。特に、低荷重時の伸度の点から、スパンボンド不織布を、その製造後に所定の倍率で延伸加工したものを用いることが材料強度の面からも好ましい。
繊維集合体7(7a,7b)としては、弾性繊維を含む各種不織布製造方法で得られた不織布を用いてもよい。弾性繊維層の両面に、同一の又は異なる、実質的に非弾性の非弾性繊維層が積層されて構成されていてもよい。
2つの非弾性繊維層のうちの少なくとも一方においては、その構成繊維の一部が弾性繊維層に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が少なくとも一方の非弾性繊維層に入り込んだ状態になっていてもよい。このような状態になっていることで、弾性繊維層と、非弾性繊維層との一体化が促進され、両層間に浮きが生じることが効果的に防止される。
弾性繊維層は、弾性を有する繊維の集合体である。弾性を有する繊維の成形方法には、例えば溶融した樹脂をノズル孔より押出し、この押出された溶融状態の樹脂を熱風により伸長させることによって繊維を細くするメルトブローン方法と半溶融状態の樹脂を冷風や機械的ドロー比によって延伸するスパンボンド法がある。また、メルトブローン法の特殊な方法として、メルトブローン法にスパンボンド法を組み合わせたスピニングブローン法がある。また、弾性繊維層は、弾性を有する繊維からなるウエブや不織布の形態であり得る。例えば、スピニングブローン法、スパンボンド法、メルトブローン法等によって形成されたウエブや不織布であり得る。特に好ましくは、スピニングブローン法で得られたウエブである。
弾性繊維層の構成繊維としては、例えば熱可塑性エラストマー、ゴムなどを原料とする繊維を用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを原料とする繊維は、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られた繊維は熱融着させやすいので、エアスルー不織布を基本構成とする本実施形態の伸張性の繊維集合体に好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS、SIS、SEBS、SEPS等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
非弾性繊維層は、伸長性を有するが、実質的に非弾性のものである。ここでいう、伸長性は、構成繊維自体が伸長する場合と、構成繊維自体は伸長しなくても、繊維どうしの交点において熱融着していた両繊維どうしが離れたり、繊維どうしの熱融着等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維層全体として伸長する場合の何れであっても良い。
非弾性繊維層を構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。非弾性繊維層3を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でも良く、親水性でも撥水性でも良い。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。非弾性繊維層は、連続フィラメント又は短繊維のウエブ又は不織布であり得る。特に、短繊維のウエブであることが、厚みのある嵩高な非弾性繊維層を形成し得る点から好ましい。2つの非弾性繊維層は、構成繊維の材料、坪量、厚み等に関して同じであっても良く、或いは異なっていてもよい。芯鞘型の複合繊維の場合、芯がPET、PP、鞘が低融点PET、PP、PEが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、スチレン系エラストマーを含む弾性繊維層の構成繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。
繊維集合体に伸張性を付与する観点から、繊維集合体を構成する繊維として、結晶性ポリプロピレンからなるハードエラスチック成分を第1成分とし、熱可塑性エラストマーを第2成分とする2成分系の伸縮弾性複合繊維(以下、単に「複合繊維」という)を用いることができる。上記複合繊維により構成された繊維集合体は、通常の不織布と同様に布様の感触を有し、風合いに優れたものである。従って、該繊維集合体を含む伸張性積層体を有するおむつは、快適な装着感を有するものとなる。
上記複合繊維の第1成分として用いられるハードエラスチック成分は結晶性ポリプロピレンからなる。
上記結晶性ポリプロピレンとしては、ハードエラスチック性を有するものであれば特に制限無く用いることができる。上記結晶性ポリプロピレンの好ましい例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンを主体とするエチレンとのコポリマー、及びプロピレンを主体とするα−オレフィンとのコポリマー等が挙げられる。
上記結晶性ポリプロピレンは、その結晶化度が40%以上であることが好ましい。上記結晶化度が40%満たないと繊維の伸張回復率が不十分となる場合がある。なお、上記結晶化度は、DSC(示差走査熱量測定)法に従って測定された結晶の融解に要するエネルギーをもとに算出した値である。
上記結晶性ポリプロピレンは、そのメルトインデックスが、1g/10分以上、200g/10分以下であることが好ましく、3g/10分以上、50g/10分以下であることが更に好ましい。上記メルトインデックスが1g/10分に満たないと溶融粘度が高すぎて、紡糸が困難となる場合があり、200g/10分を超えると溶融粘度が低すぎて、繊維化する前に糸切れが発生する場合があるので上記範囲内とすることが好ましい。なお、上記メルトインデックスは、ASTM D−1238に従い、230℃、2.16kgf荷重下で測定された値である。
また、上記結晶性ポリプロピレンは、伸縮弾性が容易に発現し、且つ上記複合繊維を容易に紡糸し得る点から、その重量平均分子量が、1万以上100万以下であることが好ましく、2万以上60万以下であることが更に好ましい。
上記複合繊維の第2成分は熱可塑性エラストマーからなる。該熱可塑性エラストマーは、一般に、分子中にゴム弾性を有する柔軟性成分(ソフトセグメント、軟質相)と、塑性変形を防止するための分子拘束成分(ハードセグメント、硬質相)とから構成されている。上記熱可塑性エラストマーは、そのハードセグメントの種類により分類することができ、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シンジオタクチックポリ(1,2−ブタジエン)及びポリ(トランス−1,4−イソプレン)等を好ましく用いることができる。これらの熱可塑性エラストマーのうち、ウレタン系熱可塑性エラストマー及びエステル系熱可塑性エラストマーを特に好ましく用いることができる。
上記ウレタン系熱可塑性エラストマーとして好ましく用いられるものとしては、例えば、ハードセグメントとしてウレタン結合を有するブロックと、ソフトセグメントとしてポリカーボネート系ポリオール、エーテル系ポリオール、カプロラクトン系ポリエステル、又はアジペート系ポリエステル等を有するブロックとから成るウレタン系エラストマー等が挙げられる。また、上記エステル系熱可塑性エラストマーとして好ましく用いられるものとしては、例えば、ハードセグメントとして芳香族ポリエステルを有するブロックと、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテル、又は脂肪族ポリエステルを有するブロックとから成るエステル系エラストマー等が挙げられる。
とりわけ、加工性、コスト、耐光性、耐薬品性、及び皮膚刺激性等を考慮すると、上記熱可塑性エラストマーとして、メタロセンを触媒として用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることが特に好ましい。上記エチレン−α−オレフィン共重合体において、エチレンと共重合させるα−オレフィンとしては、炭素数が3〜30のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、オクタデセン等が挙げられる。これらの中でも1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましく用いられる。上記エチレン−α−オレフィン共重合体におけるエチレンとα−オレフィンとの配合割合は、好ましくはエチレンが40重量%以上、98重量%以下であり、α−オレフィンが60重量%以上、2重量%以下である。
これらの熱可塑性エラストマーの溶融流動性を改質するために、これらの熱可塑性エラストマーに熱可塑性プラスチックやオイル成分等を添加してもよい。
上記熱可塑性エラストマーは、その100%伸張時の伸張回復率が50%以上であることが、上記伸張性積層体70,70’が、人体の動作に対して破壊を起こさずに追従可能となる点から好ましい。
上記複合繊維においては、好ましくは、上記第1成分の含有量が5重量%以上、70重量%以下であり、上記第2成分の含有量が30重量%以上、95重量%以下であり、更に好ましくは、上記第1成分の含有量が10重量%以上、60重量%以下であり、上記第2成分の含有量が40重量%以上、90重量%以下であり、一層好ましくは、上記第1成分の含有量が10重量%以上、50重量%以下であり、上記第2成分の含有量が50重量%以上、90重量%以下である。上記第1成分の含有量が上記の上限を超えるか又は上記第2成分の含有量が上記の下限に満たないと上記複合繊維の伸縮性が不十分となる場合があり、上記第1成分の含有量が上記の下限に満たないか又は上記第2成分の含有量が上記の上限を超えると上記複合繊維の表面に上記第2成分が露出する面積が多くなり、触感が低下する場合があるうえ、鞘芯型の複合繊維を紡糸することが困難となる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
上記複合繊維は、伸縮弾性を発現し得る繊維形態であればその繊維形態に特に制限は無い。上記複合繊維の好ましい繊維形態としては、並列型(サイド・バイ・サイド型)、分割型(繊維断面が円弧状に分割されたもの)及び鞘芯型[シース・コア型(同心円型及び偏心型)]等が挙げられる。これらの繊維形態の複合繊維は、公知の紡糸方法により製造することができる。
上記公知の紡糸方法により製造された上記複合繊維は、紡糸後直接ウエブとなして不織布を形成してもよく、或いは、伸縮特性を一層発現させる点から、紡糸後所定の延伸処理に付した後にウエブとなして不織布を形成してもよい。上記延伸処理の条件としては、延伸温度が20℃以上130℃以下であることが好ましく、延伸倍率が1倍以上、6倍以下であることが好ましい。上記延伸処理における上記伸縮弾性複合繊維の加熱には、例えば、熱風、蒸気、赤外線等の加熱手段を用いることができる。
上記複合繊維は、その繊維径が1デニール以上、20デニール以下であることが好ましく、2デニール以上、6デニール以下であることが更に好ましい。上記繊維径が1デニールに満たないと紡糸工程での紡糸性が低下し、繊維化しにくくなる場合があり、20デニールを超えると上記伸縮弾性不織布の実用性において、風合いが悪化する場合があるので上記範囲内とすることが好ましい。
上記複合繊維は、その100%伸張時の伸張回復率が20%以上、100%以下であることが好ましく、50%以上、100%以下であることが更に好ましい。上記伸張回復率が20%に満たないと、上記伸縮性サイドパネルの、人体の動作に追従する機能が不十分となる場合がある。
上記複合繊維は、ステープルファイバーのような短繊維の形態で用いられてもよく、連続フィラメントのような長繊維の形態で用いられてもよい。
繊維集合体7(7a,7b)は、上記複合繊維100%から構成されていてもよいが、他の繊維と混紡されたものであってもよい。上記複合繊維を他の繊維と混紡する場合には、上記伸縮弾性不織布は、上記複合繊維を好ましくは30重量%以上含み、更に好ましくは50重量%以上含む。上記複合繊維の量が30重量%に満たないと、上記伸縮弾性不織布の伸縮弾性が著しく低下して破断してしまう場合がある。上記複合繊維と混紡し得る他の繊維としては、不織布形成工程における熱処理により変質しない繊維、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミド等の熱可塑性合成繊維、コットン、麻及び羊毛等の天然繊維、並びにレーヨン及びアセテート等の再生繊維や、上記熱処理により融着し得る各種バインダー繊維等が挙げられる。
繊維集合体7(7a,7b)は、例えば、カード機を用いる方法や直接シート法によって製造することができ、具体的には、レジンボンド、バインダー繊維の混紡、ヒートロール、及びウオーターニードリンク等の不織布製造法により不織布の形態として製造することができる。特に、上記繊維集合体7(7a,7b)は、公知のウエブ形成方法を用いて上記複合繊維からなる(又は上記複合繊維を含む)ウエブを形成し、次いで該ウエブにおける繊維の交絡点間を、上記第1成分の融点と上記第2成分の融点との間の温度での熱処理により融着させ、多数の接着点を形成することにより好ましく製造される。上記ウエブ形成方法としては、上記複合繊維としてステープルファイバー等の短繊維を用いる場合には、カード機を用いて該複合繊維を開繊させてウエブを形成する方法が挙げられる。また、上記複合繊維として連続フィラメント等の長繊維を用いる場合には、溶融紡糸した上記複合繊維を高速の空気流に搬送させ、移動ネット上に堆積・開繊させてウエブを形成する方法(スパンボンド法)が挙げられる。
形成されたウエブを熱処理して不織布を形成する方法(サーマルボンド法)としては、例えば、該ウエブを、スルー・エア・ドライヤ中を通過させ、熱風により該ウエブの構成繊維の交絡点間を熱融着させて、多数の接着点を形成する方法が挙げられる。この場合、熱風の温度や供給量は、上記ウエブの構成繊維の種類並びに上記ウエブの坪量及び搬送速度等にもよるが、一般に、熱風の温度が140℃以上、170℃以下であることが好ましく、流速又は風速が0.5m/分以上、3m/分以下であることが好ましい。また、上記熱処理の別法として、彫刻ロールと平滑ロールとからなる一対のエンボスロールを用いた熱エンボス加工が挙げられる。この場合、これら両ロールのうちの何れか一方又は両方を加熱して用いることにより、熱エンボス加工を行う。エンボスロールの加熱温度は、120℃以上、170℃以下とすることが好ましい。エンボスロールをこれよりも高い温度に加熱すると、上記ウエブが該エンボスロールに接着する場合がある。上記彫刻ロールとしては、例えば種々のパターンがその表面に彫刻された鉄ロールを用いることができる。一方、上記平滑ロールとしてはペーパーロール、ゴムロール、シリコーンゴムロール、ウレタンゴムロール、金属ロール等を用いることができる。上記彫刻ロールのパターンの例としては、例えば、ピン、点ドット、亀甲、格子、縦縞、横縞、編み目、絵柄等があり、特にそのパターンに限定されるものでは無い。上記熱エンボス加工時のエンボスロールの線圧は、上記ウエブの坪量及び搬送速度並びにエンボスロールの加熱温度等にもよるが、一般的な範囲として、10kg/cm以上、150kg/cm以下であることが好ましい。
上記繊維集合体7(7a,7b)は、その20%伸張時の伸張回復率が40%以上、100%以下であることが好ましく、60%以上、100%以下であることが更に好ましい。上記伸張回復率が40%に満たないと、伸張性積層体の、人体の動作等への追従が不十分で、抵抗が大きくなる場合がある。
繊維集合体7a,7bとしては、約200μm以下の厚さのものをそれぞれ使用することができ、十分な伸縮性を有しつつ、嵩高くなってやわらかい風合いを損うことがないよう、150μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。一方、耐久性の観点から、約30μm以上が好ましく、35μm以上がより好ましい。また繊維集合体7a、7bは、1g/m2以上、500g/m2以下の目付けでそれぞれ使用することができ、生産性の観点から、400g/m2以下が好ましく、300g/m2以下がさらに好ましい。一方、耐久性の観点から、3g/m2以上が好ましく、5g/m2以上がより好ましい。
次に、図8〜10を用いて、本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。図8(a)、(b)及び(c)は、第1の形状に係るおむつに上述の伸張性積層体70又は70’を適用した、本発明の第1、2及び3実施形態に係るおむつの斜視図である。図8(a)は、第1実施形態に係るおむつ201の斜視図であり、腹側ウェスト部10aと背側ウェスト部10bに伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図8(a)中、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bにおける横縞線(黒太線)部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、当該エラストマーフィルム6が伸張性の繊維集合体7の主面上に配置されている場合、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bは、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70から構成されることとなる。また、当該エラストマーフィルム6が、対向する伸張性の繊維集合体7a,7bの間に配置されている場合、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bは、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体70’から構成されることとなる。股部20cには吸収体30が固定されている。なお、図8のいずれの態様においても、理解の容易のため、エラストマーフィルム6を黒太線で明示したが、伸縮性積層体70が適用される場合、エラストマーフィルム6は、繊維集合体7に対しておむつの内面側に存在していても外面側に存在していてもよい。また、伸縮性積層体70’が適用される場合、エラストマーフィルム6は繊維集合体7a,7bの間に存在する。このようなエラストマーフィルム6の配置は、以下の第2〜第10実施形態においても同様である。
図8(b)は、第2実施形態に係るおむつ202の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a及び背側本体部20bに伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図8(b)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a及び背側本体部20bにおける横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a及び背側本体部20bは、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態70’の伸縮性積層体から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
図8(c)は、第3実施形態に係るおむつ203の斜視図であり、腹側本体部20a及び背側本体部20bに伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図8(c)中、腹側本体部20a及び背側本体部20bにおける横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、腹側本体部20a及び背側本体部20bは、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体70’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
第1の形状に係るおむつは、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bが連結することによってウェスト開口部1が形成されているパンツ形状のおむつであり、おむつの各部位に伸張性積層体70又は70’が存在することにより、嵩高さがより一層解消された、よりコンパクトな形状のおむつを提供することができる。
図9(a)、(b)及び(c)は、第2の形状に係るおむつに上述の伸張性積層体70又は70’を適用した、本発明の第4、5及び6実施形態に係るおむつの斜視図である。図9(a)は、第4実施形態に係るおむつ204の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、サイド部40に伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図9(a)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、サイド部40における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、サイド部40は、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体70’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
図9(b)は、第5実施形態に係るおむつ205の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、サイド部40、腹側本体部20a及び背側本体部20bに伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図9(b)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、サイド部40、腹側本体部20a及び背側本体部20bにおける横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、サイド部40、腹側本体部20a及び背側本体部20bは、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体70’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
図9(c)は、第6実施形態に係るおむつ206の斜視図であり、サイド部40に伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図9(c)中、サイド部40における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、サイド部40は、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体70’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
第2の形状に係るおむつは、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、サイド部40が連結することによってウェスト開口部1が形成されているパンツ形状のおむつであり、おむつの各部位に伸張性積層体70又は70’が存在することにより、嵩高さがより一層解消された、よりコンパクトな形状のおむつを提供することができる。また、サイド部40に伸張性積層体70又は70’が存在することにより、体へのフィット感をより一層向上させることができる。
図10(a)、(b)、(c)及び(d)は、第3の形状に係るおむつに上述した伸張性積層体70又は70’を適用した、本発明の第7、8、9及び10実施形態に係るおむつの斜視図である。図10(a)は、第7実施形態に係るおむつ207の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、イヤー部50に、伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図10(a)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、イヤー部50における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、イヤー部50は、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体70’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
図10(b)は、第8実施形態に係るおむつ208の斜視図であり、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、イヤー部50、腹側本体部20a、及び、背側本体部20bに伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図10(b)中、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、イヤー部50、腹側本体部20a及び背側本体部20bにおける横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、イヤー部50、腹側本体部20a及び背側本体部20bは、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体70’から構成されることとなる。股部20cには吸収体30が固定されている。
図10(c)は、第9実施形態に係るおむつ209の斜視図であり、腹側本体部20a、背側本体部20a、及び、イヤー部50に伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図10(c)中、腹側本体部20a、背側本体部20a、及び、イヤー部50における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、腹側本体部20a、背側本体部20a、及び、イヤー部50は、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
図10(d)は、第10実施形態に係るおむつ210の斜視図であり、イヤー部50に伸張性積層体70又は70’が存在している。すなわち、図10(d)中、イヤー部50における横縞線部分は、上述した間隔を置いて複数配置された線状のエラストマーフィルム6であって、イヤー部50は、図4(a)に示す形態の伸縮性積層体70、又は、図4(b)に示す形態の伸縮性積層体70’から構成されている。股部20cには吸収体30が固定されている。
第3の形状に係るおむつにおいては、イヤー部50に接合された固定部60が、腹側本体部20aに再剥離可能に連結することによってウェスト開口部1が形成されているオープン型のおむつである。第3の形状に係るおむつは、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aが、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの内側に挿入されている構造ゆえに、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aの端部と、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの端部とが重なり合う部分が生じる。そのため、通常嵩高い形状になり易い。しかしながら、本実施形態に係るおむつによれば、オープン型のおむつでありながらも、嵩高さがより一層解消された、よりコンパクトな形状のおむつを提供することができる。なお、腹側ウェスト部10a、腹側本体部20a、背側ウェスト部10b、及び、背側本体部20bの全部位に伸張性積層体が使用された図10(b)に示す第8実施形態において、特にこの効果が大きい。
本発明は、図8〜10に示した実施形態に係るおむつに限定されず、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、腹側本体部20a、背側本体部20b、サイド部40、及びイヤー部60の少なくとも一つの箇所に伸張性積層体70又は70’を適用したものであれば同様の効果が得られる。また、上記のおむつの各部位それぞれの全域に伸張性積層体が形成されていなくてもよく、少なくとも一部に伸張性積層体70又は70’を有していればよい。
(おむつの製造方法)
以下、図11〜13を参照し、第1実施形態、第4実施形態及び第7実施形態に係るおむつの製造方法について説明する。
第1実施形態に係るおむつ201の製造方法においては、例えば、伸張性積層体70又は70’が含まれるシート状の外装体と、着用時に使用面となる内装体とがそれぞれ別のラインで製造され、これら外装体及び内装体の一体化工程以降が一つのラインで製造されることがある。当該製造方法は、例えば、外装体形成工程、股部形成工程、内装体取付工程、側部接合工程、及び、ウェスト部切り離し工程を有している。
外装体形成工程は、腹側ウェスト部10a、背側ウェスト部10b、及び、本体部20を含むおむつ本体部80を構成する外装部分を形成する工程である。おむつ本体部80を構成する外装部分全体が、一種類の繊維集合体7で形成される場合、具体的には、繊維集合体7上にエラストマーフィルム6を設けたり、二枚の繊維集合体7a,7bをエラストマーフィルム6を介して張り合わせたりする。繊維集合体7(7a,7b)を設けない部位については、繊維集合体7上に糸ゴム等の弾性伸縮部材を設けたり、二枚の繊維集合体7a,7bに糸ゴム等の弾性伸縮部材挟みつつ、二枚の繊維集合体7a,7bをホットメルト接着剤等により順次貼り合わせることによりシート状の外装体を連続的に形成する。
股部形成工程は、図11(a)に示すように、シート状の外装体の中央部において、その両側に括れが形成されるように、シート状の外装体に湾曲した切り込みを入れる工程である。当該工程により形成された括れにより、おむつ形成時、又は、着用時には、図11(b)に示すようなレッグ開口部2a,2bが形成される。
内装体取付工程は、外装体に、例えば吸収体30を有する内装体を取り付ける工程である。内装体は、例えば、上記シート状の外装体の表面上、上記股部形成工程において形成された括れ部分を覆うようにホットメルト接着剤等により添付される。
側部接合工程は、おむつ本体部80が、腹側ウェスト部10a及び背側ウェスト部10bと、腹側本体部20a及び背側本体部20bとがそれぞれ重なるように、股部20cの中央部にて折り畳み、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aの左側部3aと、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの左側部3bとが、熱溶着又はホットメルト接着剤などによって接合され、かつ、腹側ウェスト部10a及び腹側本体部20aの右側部4aと、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの右側部4aとが、熱溶着又はホットメルト接着剤などによって接合される工程である。これにより、ウェスト開口部1及びレッグ開口部2a,2bが形成され、図11(b)に示すようなパンツ型紙おむつが組み立てられる。
ウェスト部切り離し工程は、形成されたシート状の外装体の残部を、腹側ウェスト部分10a又は背側ウェスト部10bの端部から切り離す工程である。以上の工程により、第1の形態に係るおむつ110が製造される。
第4の実施形態に係るおむつ204は、図12(a)及び(b)に示すように、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの左側部3b及び右側部4bに、それぞれ、伸張性のサイド部40を接合する。伸張性のサイド部40は、おむつ本体部80を構成する繊維集合体7上に、上述のエラストマーフィルム6、又は糸ゴム等の弾張伸縮部材を設けることによって形成してもよく、或いは、おむつ本体部80を構成する繊維集合体7とは別の繊維集合体7上に、上述のエラストマーフィルム6又は糸ゴム等の弾張伸縮部材を設け、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bに接着剤で接合して形成してもよい。
第7の実施形態に係るおむつ207は、図13(a)及び(b)に示すように、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの左側部3b及び右側部4bに、それぞれ、粘着又はメカニカルファスニング部60を先端に備える伸張性のイヤー部50を接合する。伸張性のイヤー部50は、おむつ本体部80を構成する繊維集合体7上に、上述のエラストマーフィルム6、又は糸ゴム等の弾張伸縮部材を設けることによって形成してもよく、或いは、おむつ本体部80を構成する繊維集合体7とは別の繊維集合体7上に、上述のエラストマーフィルム6又は糸ゴム等の弾張伸縮部材を設け、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bに接着剤で接合して形成してもよい。
上述の製造方法においては、例えば、図11(a)及び(b)では、おむつ着用時に体側に沿う部分で、腹側ウェスト部10a及び背側本体部20aの左側部3a及び右側部4aと、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bの左側部3b及び右側部4bをそれぞれ接合しているが、実施形態に係るおむつは、このような製造方法によって得られるおむつに限定されない。例えば、実施形態に係るおむつにおいては、腹側ウェスト部10a及び背側本体部20aから構成される前身頃の幅と、背側ウェスト部10b及び背側本体部20bから構成される後身頃の幅とがほぼ同じ長さになっているが、例えば前身頃又は後身頃のいずれか一方の幅を長くすることにより、例えば、前身頃側又は後身頃側に接合部が形成されてもよい。また、腹側から背側に亘って一枚の伸張性積層体が適用され、前身頃側又は後身頃側に接合部が形成されてもよい。また、前身頃と後身頃が連続して筒状の胴回りが形成され、別途作成された股部20cの両端が、前身頃及び後身頃にそれぞれ接合されてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
繊維集合体:幅50mm、長さ280mmのメルトブロー不織布(米国3M社製)を二枚用意した。
エラストマーフィルム:Tダイ1軸溶融押出し機とチルロールとからなるフィルム製造装置(田辺プラスチック機械工業株式会社製、型番:VS30)を用い、下記エラストマー組成物から構成されるフィルムを作製した。
ポリウレタンエラストマー(TPU)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、及びタッキファイヤー(TF)を、TPU及びSISの合計質量が、エラストマー組成物全量を基準として99.6質量%、TFの質量が、エラストマー組成物全量を基準として0.4質量%となるようにドライブレンドし、エラストマー組成物を得た。TPUとSISとの混合量は、TPUを、TPU及びSISの合計質量に対して98.9質量%、SISを、TPU及びSISの合計質量に対して1.1質量%となるようにした。
TPUとしては、DICバイエルポリマー株式会社製PANDEX(商標)T−575X(A硬度:75、ペレット状)を、SISとしてはクレイトンポリマージャパン株式会社製クレイトンD−1117(ペレット状)を、TFとしては、石油系タッキファイヤー(商品名:アルコン(商標)P125、荒川化学工業株式会社製、軟化点:125℃)を、それぞれ用いた。
得られたエラストマー組成物を、200℃に加熱されたTダイ1軸押出し機に投入し、エラストマーフィルムを得た。
エラストマーフィルムと繊維集合体との接着は、二枚の繊維集合体の間に、幅1mmのエラストマーフィルム4本を、5mm間隔で貼り付け、80℃以上、120℃以下の温度でラミネートすることにより、伸張性積層体を作製した。
得られた伸張性積層体の両端部を接着し、リング状のサンプルを作製した。得られたサンプルを腕に巻き、圧縮応力が2.5Nとなったときの、肌に残った跡の状態を調べた。
(実施例2)
幅3mmのエラストマーフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、リング状のサンプルを作製した。
(実施例3)
幅5mmのエラストマーフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、リング状のサンプルを作製した。
(比較例1)
市販のおむつのウェスト部(上端部より25mm)を切り出し、リング状のサンプルを作製した。得られたサンプルを腕に巻き、圧縮応力が2.0Nとなったときの、肌に残った跡の状態を調べた。
比較例1において、市販のおむつから切り出したサンプルは、ゴム跡がくっきり残った。実施例1で得られたサンプルは、少し後が残ったが、比較例1ほど跡は残らず、実施例2、3で得られたサンプルは、目立った跡は残らなかった。特に実施例3で得られたサンプルは、跡を確認するのが難しいレベルであった。