JP6448591B2 - 水晶振動素子 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば基準信号源やクロック信号源に用いられる水晶振動素子及びその製造方法に関する。以下、水晶振動素子の一例として、音叉型屈曲水晶振動素子(以下「振動素子」と略称する。)について説明する。
振動素子の水晶片は、基部と、この基部から同一方向に延設された二本の振動腕部と、これらの振動腕部の表裏面に形成された溝部と、からなる。この水晶片は、水晶ウェハにウェットエッチングを施すことにより得られる。その一般的なウェットエッチング工程では、基部及び振動腕部の外形を形成する工程と、溝部を形成する工程とに分かれる。一回のウェットエッチングで外形と溝部の両方を形成しようとすると、溝部が表裏で貫通してしまうからである。
これに対し、関連技術1として、一回のウェットエッチングで外形と溝部の両方を形成し得る技術が知られている(特許文献1)。この関連技術1では、ウェットエッチングのマスクにおいて溝部となる領域にエッチング抑制パターンを形成しているので、外形となる領域の水晶ウェハが貫通しても、溝部となる領域の水晶ウェハは貫通しない。
図9は、関連技術1の製造方法における耐食膜のパターンの一部を拡大して示す平面図である。図10は、関連技術1の振動素子の溝部を示す断面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
図9に示すように、水晶ウェハ341の表裏には、耐食膜342からなるマスクが形成されている。耐食膜342のパターンは、振動腕部となる領域352、溝部となる領域354、表の溝部内の山となる領域355、裏の溝部内の山となる領域356などに分けられる。表の溝部内の山となる領域355には耐食膜342からなる突起357(実線)が形成され、裏の溝部内の山となる領域356には耐食膜342からなる突起357(破線)が形成されている。
このような耐食膜342からなるマスクを用いることにより、ウェットエッチング工程では、耐食膜342で覆われていない領域の水晶ウェハ341を除去するととともに、耐食膜342からなる突起357に覆われた領域355,356の水晶ウェハ341をサイドエッチングによって除去する。このとき、耐食膜342からなる突起357がエッチング抑制パターンとして作用するので、図10に示すように、振動腕部312aの外形と表の溝部441aと裏の溝部443aとが、一回のウェットエッチングで同時に形成される。
図10に示すように、表の溝部441aは、一の開口321からなり、開口321内に振動腕部312aの延設方向に沿って山521と谷522とが交互に連続する底面322を有する。裏の溝部443aも、表から見て表の溝部441aと同じ位置に同じ形状で形成される。そのため、表の溝部441aに形成された山521は裏の溝部443aに形成された山521に対向し、表の溝部441aに形成された谷522は裏の溝部443aに形成された谷522に対向する。
また、関連技術2として、一回のウェットエッチングで外形と溝部の両方を形成し得る技術が知られている(特許文献2)。この関連技術2では、エッチング抑制パターンを用いる代わりに、溝部を仕切部で複数の小溝部に分けることにより、溝部におけるエッチングレートが小さくなるので、外形となる領域の水晶ウェハが貫通しても、溝部となる領域の水晶ウェハは貫通しない。
図11は、関連技術2の振動素子の溝部を示す断面図である。以下、この図面に基づき説明する。
表の溝部741aは、振動腕部612aの延設方向に沿って、複数の仕切部821によって複数の小溝部621に分けられている。小溝部621内の底面622には、エッチングレートの差に起因して谷822が形成されている。裏の溝部743aも、表の溝部741aの形状と同じである。ただし、表の溝部741aの仕切部821は裏の溝部743aの谷822に対向し、表の溝部741aの谷822は裏の溝部743aの仕切部821に対向する。
ここで、表の溝部741aにおいて仕切部821から谷822までのピッチをQとし、振動腕部612a(すなわち水晶ウェハ)の厚みをtとすると、Q<tとする必要がある。その理由は、底面622の傾斜角824がピッチQの大小によらずほぼ一定であることから、Q≧tとすると、表の溝部741a(又は裏の溝部743a)の谷822が裏(又は表)の仕切部821へ貫通する割合が多くなることにより、歩留りが低下するからである。
特開2011−217039号公報 特開2011−139233号公報
図10に示す関連技術1において、振動素子のクリスタルインピーダンスを低減するには、溝部441a,443aの内側面323の面積を大きくする必要がある。図11に示す関連技術2でも、振動素子のクリスタルインピーダンスを低減するには、溝部741a,743aの内側面623の面積を大きくする必要がある。しかしながら、関連技術1,2には次のような問題があった。
図10に示す関連技術1において、溝部441a,443aの内側面323の面積を大きくするには、底面322を更に深くする必要がある。一方、エッチング抑制パターンを用いたことにより、表裏の溝部441a,443aの底面322には山521と谷522が生じている。そのため、底面322の深さは、表裏の溝部441a,443aが谷522の部分で貫通しない程度に制限される。その結果、表裏の溝部441a,443aを隔てる底板523の厚みが山521の部分で厚くなってしまい、その分、内側面323の面積を大きくできない。
図11に示す関連技術2では、エッチング抑制パターンを用いないので、表裏の溝部741a,743aの底面622には、実施形態1と異なり、一の開口内に山と谷が交互に連続する形状が生じない。その代わり、表裏の溝部741a,743aを隔てる底板823が表裏を横断する構造になっている。ところが、この構造では、底板823の専有面積が大きくなるので、内側面623の面積を増やすことが困難である。その詳しい理由については後述する。
なお、底板823の専有面積とは、内側面623と同一面で底板823を切断した場合の底板823の断面積をいうものとする。つまり、(底板の専有面積)+(内側面の面積)=一定、であるから、底板の専有面積が大きくなれば、その分、内側面の面積が小さくなる。以下に述べる「底板の専有面積」と「内側面の面積」との関係も同様である。
そこで、本発明の目的は、エッチング抑制パターンを用いて一回のウェットエッチングで外形と溝部の両方を形成し得るとともに、そのエッチング抑制パターンに起因する問題を解決してクリスタルインピーダンスを低減し得る水晶振動素子及びその製造方法を提供することにある。
本発明に係る水晶振動素子は、
基部と、この基部から同一方向に延設された二本の振動腕部と、これらの振動腕部の表裏面である第一及び第二の主面にそれぞれ設けられた第一及び第二の溝部と、を備えた水晶振動素子において、
前記第一及び第二の溝部は、それぞれ一の開口からなり、当該開口内に前記振動腕部の延設方向に沿って山と谷とが交互に連続する底面を有し、
前記第一及び第二の溝部に連続的に形成された前記山はそれぞれ、前記第一の溝部に形成された一つの前記山の全体の位置に対して、前記第二の溝部に形成された一つの前記山の全体の位置が前記延設方向にずれ、かつ、
前記第一及び第二の溝部に連続的に形成された前記谷はそれぞれ、前記第一の溝部に形成された一つの前記谷の全体の位置に対して、前記第二の溝部に形成された一つの前記谷の全体の位置が前記延設方向にずれている、
ことを特徴とする。
本発明によれば、振動腕部の表裏面である第一及び第二の主面にそれぞれ第一及び第二の溝部が設けられ、第一の溝部の底面の山の位置に対して、第二の溝部の底面の山の位置が振動腕部の延設方向にずれ、かつ、第一の溝部の底面の谷の位置に対して、第二の溝部の底面の谷の位置が振動腕部の延設方向にずれているので、エッチング抑制パターンを用いて水晶振動素子の外形と溝部とを一回のウェットエッチングで同時に形成する場合でも、溝部同士の貫通を回避しつつ谷を極限まで深く形成できる。その結果、溝部の内側面の面積が増加することにより、その内側面に形成される励振電極の面積も増加するので、クリスタルインピーダンスを低減できる。
実施形態1の振動素子における水晶片を示す斜視図である。 図1の水晶片に励振電極を形成した状態を示す、図1におけるII−II線断面図である。 図1の水晶片の一部を拡大して示す平面図である。 図3におけるIV−IV線断面図である。 実施形態1の製造方法を示す断面図であり、図5[1][2][3]の順に工程が進行する。 実施形態1の製造方法を示す断面図であり、図6[4][5]の順に工程が進行する。 実施形態1の製造方法における感光性レジスト膜及び耐食膜のパターンの一部を拡大して示す平面図である。 実施形態1の振動素子のクリスタルインピーダンスの測定値を示すグラフである。 関連技術1の製造方法における耐食膜のパターンの一部を拡大して示す平面図である。 関連技術1の振動素子の溝部を示す断面図である。 関連技術2の振動素子の溝部を示す断面図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いる。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
図1は、実施形態1の振動素子における水晶片を示す斜視図である。図2は、図1の水晶片に励振電極を形成した状態を示す、図1におけるII−II線断面図である。図3は、図1の水晶片の一部を拡大して示す平面図である。図4は、図3におけるIV−IV線断面図である。以下、図1乃至図4に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、振動素子は、水晶片10と励振電極31a,31bとを少なくとも備えている。水晶片10は、基部11と、基部11から同一方向に延設された二本の振動腕部12a,12bと、振動腕部12a,12bの第一の主面131にそれぞれ設けられた第一の溝部141a,142a,141b,142bと、振動腕部12a,12bの第二の主面132にそれぞれ設けられた第二の溝部143a,144a,143b,144bと、からなる。主面131,132は、振動腕部12a,12bの表裏面である。
図3及び図4に示すように、溝部141aは、一の開口21からなり、開口21内に振動腕部12aの延設方向に沿って山221と谷222とが交互に連続する底面22を有する。溝部141aに形成された山221は溝部143aに形成された谷222に対向し、溝部141aに形成された谷222は溝部143aに形成された山221に対向する。他の溝部142a,…についても同様である。図3において、谷222は、露出しているが、わかりやすくするために破線で示している。
なお、図面では、わかりやすくするために、主面131,132と底面22とを平行にしたり、エッチング残渣を省略したりしている。しかし、実際の形状は、水晶のウェットエッチングが異方性を有することにより、図示した形状とは若干異なる。
次に、本実施形態1の振動素子の動作について説明する。
図1に示すように、水晶の結晶は三方晶系であり、水晶の頂点を通る結晶軸をZ軸(光軸)、Z軸に垂直な平面内の稜線を結ぶ三つの結晶軸をX軸(電気軸)、X軸及びZ軸に直交する座標軸をY軸(機械軸)とする。ここで、これらのX軸、Y軸及びZ軸からなる座標系をX軸を中心として±5度の範囲で回転させたときの回転後のY軸及びZ軸を、それぞれY’軸及びZ’軸とする。この場合、本実施形態1では、二本の振動腕部12a,12bの延設方向がY’軸の方向であり、二本の振動腕部12a,12bの並ぶ方向がX軸の方向である。なお、X軸、Y’軸及びZ’軸は、図9乃至図11においても図1と同様である。
図2に示すように、振動腕部12aにおいて、励振電極31aは外側面15に設けられ、励振電極31bは内側面23に設けられている。振動腕部12bにおいて、励振電極31bは外側面15に設けられ、励振電極31aは内側面23に設けられている。したがって、振動腕部12aの外側面15に設けられた励振電極31aと溝部141a,142a,143a,144aの内側面23に設けられた励振電極31bとが異極同士となり、振動腕部12bの外側面15に設けられた励振電極31bと溝部141b,142b,143b,144bの内側面23に設けられた励振電極31aとが異極同士となる。このとき、振動腕部12aにおいては、外側面15の励振電極31aと内側面23の励振電極31bとがほぼ平行平板電極となり、振動腕部12bにおいては、外側面15の励振電極31bと内側面23の励振電極31aとがほぼ平行平板電極となり、それらの電極間で大きな電界強度が得られる。
励振電極31a,31bに交番電圧を印加した場合、印加後のある電気的状態を瞬間的に捉えると、振動腕部12aにおいて、内側面23に設けられた励振電極31bはプラス電位となり、外側面15に設けられた励振電極31aはマイナス電位となり、プラスからマイナスに電界が生じる。このとき、振動腕部12bにおいて、内側面23に設けられた励振電極31aはマイナス電位となり、外側面15に設けられた励振電極31bはプラス電位となり、振動腕部12aに生じた極性とは反対の極性となり、プラスからマイナスに電界が生じる。この交番電圧で生じた電界によって、振動腕部12a,12bに伸縮現象が生じ、所定の共振周波数の屈曲振動モードが得られる。
ここで、クリスタルインピーダンスを下げるには、内側面23の面積をできるだけ大きくすることが求められる。
次に、本実施形態1の振動素子の作用及び効果について説明する。
水晶のウェットエッチング工程において、溝部141a,…の開口21内となる領域の水晶を耐食膜からなる複数の突起(すなわちエッチング抑制パターン)で覆うことにより、基部11及び振動腕部12a,12bの外形と溝部141a,…とを一回のウェットエッチングで同時に形成できる。この場合、溝部141a,…の開口21内における水晶のエッチングレートは、突起で覆われた領域が最も小さくなり、この領域から離れるに従い大きくなり、隣接する二つの突起の概ね中間の領域が最も大きくなる。その結果、図4に示すように、溝部141aの底面22は、山221と谷222が交互に連続する形状となる。ただし、谷222は、水晶のウェットエッチングの異方性により、隣接する二つの山221の中間から少しずれた位置になる。
本実施形態1によれば、一方の溝部141a,…の最も深い場所である谷222と他方の溝部143a,…の最も浅い場所である山221とが向かい合うように形成されているので、エッチング抑制パターンを用いて基部11及び振動腕部12a,12bの外形と溝部141a,…とを一回のウェットエッチングで同時に形成する場合でも、溝部141a,…同士の貫通を回避しつつ谷222を極限まで深く形成できる。その結果、溝部141a,…の内側面23の面積が増加することにより、内側面23に形成される励振電極31a,31bの面積も増加するので、クリスタルインピーダンスを低減できる。
また、図4において、溝部141a,143aに形成された谷222の深さ68は、振動腕部12aの厚みtの50%以上かつ60%以下とすることが望ましい。この場合、50%未満では、後述の累積度数分布図(図8)から明らかなように、前述の効果がやや不十分になる。60%を越えると、水晶の結晶方位依存性によるエッチングレートの差によって形成される傾斜角71,72がほぼ一定であるため、エッチング抑制パターンや厚みtについて最良の選択をしても、幾何学的な条件により、溝部141a,143a同士が貫通する割合が増える。なお、図10に示す関連技術1では、谷522の深さを振動腕部312aの厚みの50%以上にすることはできない。なぜなら、表裏の溝部441a,443aが谷522の部分で貫通してしまうからである。
更に、図3及び図4において、前述のようにX軸、Y’軸及びZ’軸を設定した場合、山221のY’軸方向のピッチをPとしたとき、溝部141aに形成された山221に対する、溝部143aに形成された山221のY’軸方向のずれ64は、0.4P以上かつ0.5P未満が好ましく、0.45Pがより好ましい。実験によれば、ずれ64をこの範囲内とすることにより、内側面23の面積を最も広くできる。その理由は、このずれ64の範囲における本実施形態1の振動腕部12a,12bの結晶方位では、水晶の結晶方位によるウェットエッチングレートの異方性に基いて、底板223の厚みdがほぼ一定となることにより、厚みdを最小化できるので、底板223の専有面積を小さくできるからである。
つまり、図4において、ウェットエッチングレートの異方性に起因して、山221から−Y’軸方向の底面22の傾斜角71の方が、山221からY’軸方向の底面22の傾斜角72よりも少し小さくなる。そのため、谷222の形成される位置は、隣接する二つの山221の中間ではなく、その中間から−Y’方向へ少しずれる。そこで、ウェットエッチングレートの異方性を考慮して、溝部141aの谷222に溝部143aの山221が対向するように、溝部141aに形成された山221に対する、溝部143aに形成された山221のY’軸方向のずれ64を、設定すると良い。
また、図11に示す関連技術2では、前述したように、ピッチQと厚みtの関係がQ<tを満たす必要がある。一方、底面622の傾斜角824はピッチQの大小によらずほぼ一定であるので、Q≒tのときに底板823の厚みdが最小となり、このとき底板823の専有面積も最小となる。そこで、ピッチQをtとし、底板823の専有面積をS2とし、ピッチQ方向の単位長さをtとすると、単位長さt当たりの専有面積S2の最小値は次式で与えられる。
S2=√(t2+t2)×d≒1.41td
これに対し、図4に示す実施形態1では、厚みt,dを上記と同じ値とし、底板223の専有面積をS1とすると、傾斜角71,72が小さいため、ピッチP方向の単位長さt当たりの専有面積S1はおおよそ次式で与えられる。
S1≒t×d=td
したがって、S1/S2≒0.707となることから、本実施形態1によれば、底板223の専有面積を関連技術2に比べて最低でも30%削減できるので、その分、内側面23の面積を増大できる。
図5及び図6は、実施形態1の製造方法を示す断面図である。図7は、実施形態1の製造方法における感光性レジスト膜及び耐食膜のパターンの一部を拡大して示す平面図である。以下、図5乃至図7を中心に、図1乃至図4も用いつつ、本実施形態1の製造方法ついて説明する。
本実施形態1の製造方法は、実施形態1の振動素子を製造する方法である。まず、図5[1]に示すように、水晶ウェハ41の表裏に耐食膜42を形成する(耐食膜形成工程)。例えば、スパッタによりクロム又はクロム及び金の二層からなる耐食膜42を成膜する。
続いて、図5[2]に示すように、耐食膜42上に感光性レジスト膜43を形成する(感光性レジスト膜形成工程)。感光性レジスト膜43は、例えばポジ型を使用する。
続いて、図5[3]に示すように、基部及び振動腕部となる領域52の感光性レジスト膜43を残し、かつ、溝部となる領域54の感光性レジスト膜43を除去する(露光現像工程)。ここで、水晶ウェハ41上に残された感光性レジスト膜43は、図7に示す平面形状となる。
続いて、図6[4]に示すように、感光性レジスト膜43で覆われていない耐食膜42を除去することにより、耐食膜42からなるマスクを作成する(パターニング工程)。耐食膜42の除去には、耐食膜42のみをエッチングし、水晶ウェハ41をエッチングしない強酸を用いる。この耐食膜42からなるマスクも、図7に示す平面形状となる。
続いて、図6[5]に示すように、耐食膜42からなるマスクを用いて水晶ウェハ41をウェットエッチングする(ウェットエッチング工程)。このエッチング液には、フッ酸を用いる。図6[5]では、感光性レジスト膜43が除去されているが、感光性レジスト膜43を残しておき次の工程でリフトオフ法を用いて電極等を形成してもよい。
その後、図2に示すように、振動腕部12a,12b等に励振電極31a,31b等の金属膜を形成する。これらの金属膜は、例えば成膜、フォトリソグラフィ、エッチングにより形成され、例えばチタンの上にパラジウム又は金が設けられた積層構造となっている。
前述のとおり、露光現像工程(図5[3])において水晶ウェハ41上に残される感光性レジスト膜43は、図7に示す平面形状となる。つまり、図7に示すように、露光現像工程では、表側の溝部に形成される山となる領域55、及び、裏側の溝部に形成される山となる領域56に、それぞれ感光性レジスト膜43からなる突起57を残す。
この場合、水晶のエッチングレートは、表側の溝部において、突起57で覆われた領域55が最も小さくなり、領域55から離れるに従い大きくなり、隣接する二つの領域55の概ね中間で最も大きくなる。裏側の溝部において突起57で覆われた領域56についても同様である。そのため、領域55,56に対応して、図4に示すように、底面22の山221が形成され、隣接する二つの山221の概ね中間に谷222が形成される。そこで、一方の溝部の最も深い場所である谷222が他方の溝部の最も浅い場所である山221と向かい合う形状になるように、表側の溝部に形成される山となる領域55と裏側の溝部に形成される山となる領域56とを一定距離(ずれ64)ずらして、それぞれ感光性レジスト膜43からなる突起57を残す。この一定距離は、隣接する二つの山221のピッチPの概ね半分であるが、水晶のウェットエッチングに異方性があるため、ピッチPの半分丁度になるとは限らない。
また、前述のとおり、パターニング工程(図6[4])で作成される耐食膜42からなるマスクも、図7に示す平面形状となる。そして、図7に示すように、このような平面形状の耐食膜42からなるマスクを用いることにより、ウェットエッチング工程では、耐食膜42で覆われていない領域の水晶ウェハ41を除去するととともに、耐食膜42からなる突起57に覆われた領域55,56の水晶ウェハ41をサイドエッチングによって除去する。このとき、耐食膜42からなる突起57がエッチング抑制パターンとして作用するので、図1に示す基部11及び振動腕部12a,12bの外形と溝部141a,…とが一回のウェットエッチングで同時に形成される。
なお、図7に示す突起57の傾き66及び幅67は、エッチング抑制パターンとして作用する値、かつ、領域55,56の水晶が当該サイドエッチングによって消滅する値に設定しておく。また、突起57の傾き66を60°とすると、突起57で覆われる水晶の突出方向がY’軸方向、当該水晶の両側面の法線方向が±X軸方向となる。そして、水晶のエッチングレートは、X軸方向がY’軸方向よりも大きい。したがって、突起57の傾き66を60°とすることにより、突起57で覆われる水晶はサイドエッチングされやすくなる。ただし、X軸及びY’軸は三本ずつあるので、ここでいうX軸及びY’軸は、図1に示すX軸及びY’軸とは異なる。
本実施形態1の製造方法によれば、実施形態1の振動素子を製造できることにより、実施形態1の振動素子と同様の作用及び効果を奏する。
次に、本実施形態1の寸法例について説明する。
図1において、振動腕部12a,12bの長さ61は1200μm、振動腕部12a,12bの幅62は58μmである。図4において、振動腕部12a(すなわち水晶ウェハ41)の厚みtは100μmである。図3及び図7において、山221のピッチP及び突起57のピッチPは50μm、表裏の山221のずれ64及び表裏の突起57のずれ64は22.5μmである。図7において、溝部となる領域54の幅65は13μm、突起57のY’軸方向からの傾き66は60°、突起57の幅67は4.5μmである。なお、これらの寸法は、あくまで一例であり、設計上適切な値を選べばよい。
図8は、本実施形態1の振動素子のクリスタルインピーダンスの測定値を示すグラフである。以下、この図面に基づき説明する。
図8は、横軸がクリスタルインピーダンス(CI)[kΩ]、縦軸が累積度数[%]からなる、累積度数分布図である。そして、図8では、一枚の水晶ウェハごとにウェハ面内溝深さを変えながら振動素子を製造し、各振動素子のクリスタルインピーダンスを測定し、各水晶ウェハごとに異なる記号で各測定値をプロットしている。図8における「表」、「裏」、「ウェハ面内溝深さ」とは、図4における「主面131」、「主面132」、「水晶ウェハの厚みtに対する谷222の深さ68の割合」である。図8から明らかなように、本実施形態1の振動素子のクリスタルインピーダンスは、ウェハ面内溝深さが深くなるにつれて減少する傾向が認められ、関連技術1の振動素子に比べて大幅に低減できることがわかる。すなわち、図4において、溝部141a,143aに形成された谷222の深さ68は、振動腕部12aの厚みtに対して、前述のとおり50%以上かつ60%以下とすることが望ましく、更に50%以上かつ55%以下とすることがより望ましい。
以上、上記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
10 水晶片
11 基部
12a,12b 振動腕部
131 主面(第一の主面)
132 主面(第二の主面)
15 外側面
141a,142a,141b,142b 溝部(第一の溝部)
143a,144a,143b,144b 溝部(第二の溝部)
21 開口
22 底面
221 山
222 谷
223 底板
23 内側面
31a,31b 励振電極
41 水晶ウェハ
42 耐食膜
43 感光性レジスト膜
52 振動腕部となる領域
54 溝部となる領域
55 第一の溝部の山となる領域
56 第二の溝部の山となる領域
57 突起
61 長さ
62,65,67 幅
64 ずれ
66 傾き
68 深さ
71,72 傾斜角
d,t 厚み
P ピッチ
312a 振動腕部
321 開口
322 底面
521 山
522 谷
523 底板
323 内側面
341 水晶ウェハ
342 耐食膜
352 振動腕部となる領域
354 溝部となる領域
355 表の溝部の山となる領域
356 裏の溝部の山となる領域
357 突起
441a,443a 溝部
612a 振動腕部
621 小溝部
622 底面
821 仕切部
822 谷
823 底板
824 傾斜角
623 内側面
741a,743a 溝部
Q ピッチ

Claims (2)

  1. 基部と、この基部から同一方向に延設された二本の振動腕部と、これらの振動腕部の表裏面である第一及び第二の主面にそれぞれ設けられた第一及び第二の溝部と、を備えた水晶振動素子において、
    前記第一及び第二の溝部は、それぞれ一の開口からなり、当該開口内に前記振動腕部の延設方向に沿って山と谷とが交互に連続する底面を有し、
    前記第一及び第二の溝部に連続的に形成された前記山はそれぞれ、前記第一の溝部に形成された一つの前記山の全体の位置に対して、前記第二の溝部に形成された一つの前記山の全体の位置が前記延設方向にずれ、かつ、
    前記第一及び第二の溝部に連続的に形成された前記谷はそれぞれ、前記第一の溝部に形成された一つの前記谷の全体の位置に対して、前記第二の溝部に形成された一つの前記谷の全体の位置が前記延設方向にずれている、
    ことを特徴とする水晶振動素子。
  2. 基部と、この基部から同一方向に延設された二本の振動腕部と、これらの振動腕部の表裏面である第一及び第二の主面にそれぞれ設けられた第一及び第二の溝部と、を備えた水晶振動素子において、
    前記第一及び第二の溝部は、それぞれ一の開口からなり、当該開口内に前記振動腕部の延設方向に沿って山と谷とが交互に連続する底面を有し、
    前記第一の溝部に形成された前記山の位置に対して、前記第二の溝部に形成された前記山の位置が前記延設方向にずれ、かつ、
    前記第一の溝部に形成された前記谷の位置に対して、前記第二の溝部に形成された前記谷の位置が前記延設方向にずれ、
    前記第一及び第二の溝部に形成された前記谷の深さは、前記振動腕部の厚みの50%以上かつ60%以下である、
    ことを特徴とする水晶振動素子。
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