以下、本発明に係る画像形成装置及び転写ユニットを図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することのできる、中間転写方式を採用したタンデム型(4連ドラム方式)のカラーレーザービームプリンタである。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として一列に並べて配置された第1、第2、第3、第4のプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKを有する。これらのプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成する。また、これらのプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの下方には、露光手段としてのレーザースキャナー3が配置されている。また、これらのプロセスカートリッジPY、PM、PC、PKの上方には、プロセスカートリッジPY、PM、PC、PKで形成されたトナー像を転写材Sに転写するための中間転写ユニット6が配置されている。
なお、各色の画像を形成するためにそれぞれ設けられた実質的に同一の構成や機能を有する要素については、特に区別する必要のない場合は、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
プロセスカートリッジPは、像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の電子写真感光体である感光ドラム1を有する。また、プロセスカートリッジPは、感光ドラム1に作用するプロセス手段として、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2、現像手段としての現像装置4、及び感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置5を有する。これら感光ドラム1、帯電ローラ2、現像装置4、及びドラムクリーニング装置5は、一体的に画像形成装置100の装置本体110に対して着脱可能とされている。
感光ドラム1は、図示しない駆動源と駆動列とにより図中矢印R1方向に所定の速度(周速度)で回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電させられる。このとき、帯電ローラ2には、所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電した感光ドラム1の表面は、各色成分の画像情報に従ってレーザースキャナー3から照射されるレーザービームによって走査露光される。これにより、感光ドラム1上に各色成分の画像情報に従った静電像(静電潜像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電像は、現像装置4によって、現像剤としてのトナーを用いてトナー像として現像(可視化)される。トナーは、現像装置4の現像剤容器42に収容されている。このとき、現像装置4の現像ローラ41には、所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、イメージ部露光と反転現像とにより、トナー像が形成される。つまり、現像装置4は、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値の低下した感光ドラム1上の露光部に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させる。なお、本実施例では、現像ローラ41は、感光ドラム1に対して当接離間可能な構成になっている。感光ドラム1に形成された静電像に合わせて現像ローラ41の当接及び離間を行うことで、現像ローラ41の寿命を向上させている。
中間転写ユニット6は、4個の感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向するように配置された、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト10を有する。中間転写ベルト10は、複数の張架ローラとしての駆動ローラ7、テンションローラ8及び二次転写対向ローラ9に巻回されている。中間転写ベルト10は、テンションローラ8によって所定の張力が付与された状態で、上記複数の張架ローラに張架されている。中間転写ベルト10は、図示しない駆動源と駆動列とにより駆動ローラ7が回転駆動されることで、その駆動力が伝達されて図中矢印R2方向に所定の速度(周速度)で回転(周回移動)する。中間転写ベルト10の裏面(内周面)側において、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと対向する位置には、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ11Y、11M、11C、11Kが配置されている。一次転写ローラ11は、中間転写ベルト10を介して感光ドラム1に向けて押圧され、中間転写ベルト10と感光ドラム1とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)T1を形成する。また、中間転写ベルト10の表面(外周面)側において、二次転写対向ローラ9と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ12が配置されている。二次転写ローラ12は、中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ9に向けて押圧され、中間転写ベルト10と二次転写ローラ12とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)T2を形成する。
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、各一次転写部T1において、一次転写ローラ11の作用により、中間転写ベルト10上に転写(一次転写)される。このとき、一次転写ローラ11には、現像時のトナーの帯電極性(正規の帯電極性)とは逆極性の直流電圧である所定の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、4個の感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト10上に重ね合わせるようにして順次転写されて、中間転写ベルト10上にフルカラー画像用の多重トナー像が形成される。
中間転写ベルト10上に形成されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写ローラ12の作用により、中間転写ベルト10と二次転写ローラ12とに挟持されて搬送される転写材S上に転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ12には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である所定の二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。
記録用紙やプラスチックシートなどの転写材Sは、給送装置14によって二次転写部T2へと供給される。給送装置14は、積載されて収容された転写材Sを1枚ずつ分離して送り出すカセット給送部14a及び手差し給送部14b、所定のタイミングで転写材Sを二次転写部T2に搬送するレジストローラ対14cなどを有している。
トナー像が転写された転写材Sは、定着手段としての定着装置15において、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとで形成される定着ニップで挟持されて搬送される過程で熱及び圧力が加えられて、その上にトナー像が定着(固着)される。その後、両面フラッパ16によって転写材Sの搬送路が切り替えられ、排出ローラ対17又はスイッチバックローラ対18のどちらかに搬送される。排出ローラ対17側に搬送された転写材Sは、排出ローラ対17を通過した後、装置本体110の上面に設けられた転写材積載部19に排出される。スイッチバックローラ対18側に搬送された転写材Sは、スイッチバックローラ対18で搬送方向が反転された後に、排出ローラ対17側に搬送される。
一次転写後の感光ドラム1の表面に残留したトナー(一次転写残トナー)などの付着物は、ドラムクリーニング装置5によって感光ドラム1の表面から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置5は、清掃部材としてのクリーニングブレード51によって、回転する感光ドラム1の表面から一次転写残トナーなどの付着物を掻き取って回収トナー収容部52内に回収する。また、二次転写後の中間転写ベルト10の表面に残留したトナー(二次転写残トナー)などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置13によって中間転写ベルト10の表面から除去されて回収される。ベルトクリーニング装置13は、清掃部材としてのクリーニングブレード13aによって、回転する感光ドラム1の表面から一次転写残トナーなどの付着物を掻き取って回収トナー収容部13b内に回収する。ベルトクリーニング装置13は、中間転写ベルト10の回転方向において、二次転写部T2よりも下流かつ最上流の一次転写部T1Yよりも上流で中間転写ベルト10を清掃するように配置されている。ベルトクリーニング装置13で除去されたトナーは、トナー回収容器22に搬送され、蓄積される。
本実施例では、各プロセスカートリッジPY、PM、PC、PK、各一次転写ローラ11Y、11M、11C、11K、及びレーザースキャナー3などによって、中間転写ベルト10にトナー像を形成する画像形成手段が構成される。また、本実施例では、中間転写ユニット6は、装置本体110に対して着脱可能とされている(図7参照)。中間転写ユニット6は、駆動ローラ7、テンションローラ8及び二次転写対向ローラ9に張架された中間転写ベルト10、各一次転写ローラ11及びベルトクリーニング装置13を有して構成されている。
2.中間転写ユニット
次に、中間転写ユニット6について更に詳しく説明する。図2は、フルカラー画像形成時の中間転写ユニット6及びその周辺の断面図である。中間転写ユニット6は、トナー像を転写材Sに転写するための、無端状のベルトを備えた転写ユニットの一例である。
中間転写ベルト10は、無負荷時に円筒状の無端ベルトで構成され、駆動ローラ7、テンションローラ8、二次転写対向ローラ9によって張架されている。中間転写ベルト10は、トナー像を直接担持して搬送する無端状のベルトの一例である。本実施例では、中間転写ベルト10は、基層と表層とを有する2層で構成されている。表層は、感光ドラム1から転写されたトナーを担持(保持)する。表層は、基層上に形成されている。
基層に使用する材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン−1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは混合して2種以上使用することもできる。また、基層は、上述の熱可塑性樹脂中に導電材料などを熔融混煉し、次いでその樹脂組成物をインフレーション成形、円筒押出し成形、ブロー成形などから適宜選択される成形方法により成形することで得ることができる。
一方、表層の材料には、中間転写ベルト10の表面の硬度を高め、耐久性(耐摩耗性)を向上させる観点から、熱、又は光(紫外線など)や電子線などのエネルギー線の照射によって硬化する硬化性材料を用いることが好ましい。特に、硬化性の高い紫外線や電子線などの照射によって硬化する硬化性材料が好ましいが、これらに限定されるものではない。硬化性材料のうち、有機材料としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フッ素系硬化性樹脂(含フッ素硬化性樹脂)などの硬化性樹脂が挙げられる。無機材料としては、アルコキシシラン・アルコキシジルコニウム系材料、ケイ酸塩系材料などが挙げられる。有機・無機ハイブリッド材料としては、無機微粒子分散有機高分子系材料、無機微粒子分散オルガノアルコキシシラン系材料、アクリルシリコン系材料、オルガノアルコキシシラン系材料などが挙げられる。中間転写ベルト10の表層の耐摩耗性、耐クラック性などの強度の観点から、硬化性材料の中でも樹脂材料(硬化性樹脂)が好ましく、硬化性樹脂の中でも、不飽和二重結合含有アクリル共重合体を硬化させて得られるアクリル樹脂が好ましい。
テンションローラ8は、図中矢印A方向(中間転写ベルト10の裏面側から表面側に向かう方向)に図示しない付勢手段により付勢され、中間転写ベルト10に所定の張力を付与している。そして、駆動ローラ7が、装置本体110側に設けられているモータ(図示せず)などにより回転駆動されることで、中間転写ベルト10は図中矢印R2方向に所定の速度で回転する。
一次転写は、一次転写ローラ11と感光ドラム1とで形成される一次転写部T1で行われる。一次転写部T1では、一次転写ローラ11に正極性の一次転写電圧が印加されて、負極性に帯電した感光ドラム1の表面との電位差を利用することで、中間転写ベルト10上へのトナーの転写が行われる。
二次転写は、二次転写対向ローラ9と二次転写ローラ12とで形成される二次転写部T2で行われる。二次転写ローラ12は、軸受20によって回転軸の両端部が回動可能に保持されており、付勢手段としてのバネ21によって中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ9に向けて押圧される。これにより、中間転写ベルト10と二次転写ローラ12との間に二次転写ニップが形成されている。二次転写ニップでは、紙などの電気を通し難い転写材Sに転写電界を形成するため比較的高い二次転写電圧が印加される。そのため、二次転写ローラ12は、二次転写対向ローラ9に対して転写材Sの搬送方向上流側にオフセットして配置され、テンションニップ領域(図2に示すTN)が設けられている。また、二次転写ニップT2に小さな空隙があると異常放電が発生しやすくなるため、転写材Sと二次転写ローラ12との密着性を良くすることが望まれる。そのため、バネ21の力は、比較的強い力に設定され、本実施例では50Nである。
3.駆動ローラ
次に、中間転写ベルト10を駆動する駆動ローラ7について更に詳しく説明する。図3は、駆動ローラ7の外観を示す斜視図である。
3−1.概要
前述のように、駆動ローラの弾性層をソリッドゴム(非発泡ゴム)で形成することで、弾性層の厚みを相対的に薄くしやすくなり、駆動ローラの外径の変化を抑制するのに有利である。一方、弾性層がソリッドゴムで形成されている場合、ソリッドゴムはスポンジゴムと比較して変形しにくいため、弾性層に付着したトナーなどの異物の影響でベルトと駆動ローラとの間のスリップが発生しやすい。このようなスリップの問題に対し、特許文献1に記載されるように、駆動ローラの使用時間に応じて変位ローラによって駆動ローラとベルトとの巻き付け角を変化させる構成では、部品の増加を招き、また複雑な制御と機構が必要となる。ここで、ソリッドゴムとは発泡剤による発泡させる工程が無く形成されるゴム層である。
ここで、スリップを起こしにくくするために、駆動ローラの表面と中間転写ベルトの裏面との摩擦係数を大きくすることが考えられる。しかし、この場合、中間転写ベルトが駆動ローラの表面に巻き付きやすくなり、中間転写ベルトの走行が不安定になり、中間転写ベルトに波打ちが生じてしまう(図7参照)。特に、中間調(ハーフトーン)を持った画像を形成する場合、中間転写ベルトの波打ちが画像に現れやすくなり、画像不良を起こしやすくなる。また、中間転写ベルトの膜厚は薄くされる傾向にあるが、中間転写ベルトが薄くされると中間転写ベルトの剛性が弱くなり、駆動ローラと中間転写ベルトの裏面との摩擦により中間転写ベルトがより波打ちやすくなる。このような波打ちの問題に対して、中間転写ベルトの回転方向において一次転写部の上流側に、中間転写ベルトを感光体側に向けて押圧するベルト押圧手段を設け、中間転写ベルトを転写前に緊張させる構成がある(特開平11−52759号公報)。しかし、このような構成では、ベルト押圧手段が必要となり、部品の増加を招いてしまう。
そこで、本実施例では、駆動ローラ7はソリッドゴムで形成された表層を有し、この表層の表面には複数の溝が形成されており、この複数の溝のうち少なくとも一部の溝はその表層を厚み方向に貫通している構成とする。以下、更に詳しく説明する。
3−2.駆動ローラの全体構成
駆動ローラ7は、芯材(芯金)71、前側軸部72、後側軸部73、及びゴム層74を有して構成されている。
芯材71は、円筒状の胴部(主部)71aと、軸挿通用の筒部71bと、連結壁部71cと、を有して構成されている。胴部71aは、芯材71の回転軸線方向(長手方向)にわたって芯材71の表面(外周面)を形成している。また、筒部71bは、胴部71aの回転軸線方向の略全域にわたって胴部71aの回転中心部に設けられている。また、連結壁部71cは、胴部71a及び筒部71bの回転軸線方向の略全域にわたって胴部71aの内壁と筒部71bの外壁とを連結する。連結壁部71cは、筒部71bから放射状に3つ設けられている。
本実施例では、芯材71の材料としては、金属材料であるアルミニウム合金を使用している。また、本実施例では、芯材71の外径は約26[mm]となっている。この値は、各色の感光ドラム1間の距離を考慮して設定された値である。ただし、芯材71の材料は、アルミニウム合金に限定されるものではなく、例えばSUSやSUMに無電解ニッケルメッキを施したものなど、他の金属材料を使用することもできる。また、金属材料に限らず、所望によりプラスチックなどの他の材料を用いてもよい。また、芯材71の構造は、本実施例のような構造に限定されるものではなく、例えば中実のローラなどその他の構造であってもよい。また、芯材71の胴部71aの表面(外周面)の表面粗さ(Rz)は、0.5[μm]程度であることが好ましい。
前側軸部72、後側軸部73は、一本の円柱状の中実軸の回転軸線方向の両端部で構成されている。この中実軸は、芯材71の筒部71bに挿通される。本実施例では、この中実軸(すなわち、前側軸部72、後側軸部73)の材料としては、金属材料であるSUMにKNメッキを施したものを使用している。前側軸部72、後側軸部73は、それぞれ中間転写ユニット6の保持体としてのフレーム61(図7参照)に設けられた軸受(図示せず)により支持されている。後側軸部73は、段付きの軸になっており、根元側(駆動ローラ7の回転軸線方向の中央部側)の軸受取付部73aと、先端側(駆動ローラ7の回転軸線方向の端部側)のカップリング取付部73bと、を有して構成されている。カップリング取付部73bの方が軸受取付部73aよりも外径が小さくなっている。カップリング取付部73bは、装置本体110側のカップリング(図示せず)から駆動を伝達するための駆動カップリング(図示せず)を、平行ピン(図示せず)を介して取り付けることが可能となっている。カップリング取付部73bには、その平行ピンを挿通するための孔73cが、カップリング取付部73bの回転軸線方向に垂直に設けられている。前側軸部72、後側軸部73の材料は、上述のものに限定されるものではなく、他の金属材料を使用することもできる。また、金属材料に限らず、所望によりプラスチックなどの他の材料を用いてもよい。
駆動ローラ7の表層を形成する弾性層であるゴム層74は、芯材71の胴部71aの表面の全域を被覆するソリッドゴムで形成されている。本実施例では、ゴム層74の材料としては、シリコーンゴムを使用している。ゴム層74にソリッドゴムを使用することで、駆動ローラ7の外径の変化を抑制することができる。そのため、ゴム層74にスポンジゴムを使用する場合に比べて、中間転写ベルト10の速度変化や、中間転写ベルト10の張架力の変化に伴う外径(周長)の変化を小さくできる。したがって、中間転写ベルト10の安定した走行に有利である。ゴム層74の材料は、シリコーンゴムに限定されるものではなく、例えば、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、エチレン−プロピレン重合体(EPM)、エチレンプロピレンジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、天然ゴム、イソプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリノルボルネンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、及び塩素化ポリエチレンゴムなどが挙げられる。
本実施例では、ゴム層74のシリコーンゴムとしては、線膨張係数が4.0×10−4[1/K]のシリコーンゴムを使用している。また、本実施例では、芯金71のアルミニウム合金としては、線膨張係数が23.4×10−6[1/K]で、JIS呼称が6063のAl−Si−Mg系合金を使用している。線膨張係数は、1[K(℃)]当たりに物体の長さが熱膨張する割合である。また、本実施例では、ゴム層74の厚みは0.08[mm]である。
ここで、温度上昇による駆動ローラ7の外径の変化量は、下記式で求められる。
ΔD=D1α1ΔT+2tα2ΔT
ΔD:温度変化後の駆動ローラの外径変化量
D1:通常使用環境温度での芯材の外径
t:ゴム層の厚み
α1:芯材の線膨張係数
α2:ゴム層の線膨張係数
ΔT:通常使用環境温度からの温度変化
本実施例では、画像形成装置100の通常使用環境温度を25[℃]と設定し、想定使用環境温度の下限値を10[℃]、上限値を35[℃]、連続プリント動作による駆動ローラ7の温度上昇を5[℃]とする。この場合、プリント開始時の環境温度下限の温度10[℃]から、連続プリント動作により昇温した際の環境温度上限の温度40[℃]の範囲で使用されることを考慮すると、通常使用温度から15[℃]の温度変化が生じることになる。この温度変化による駆動ローラ7の外径の変化量を上記式により算出すると、0.011[mm]となる。この外径の変化を周長に変換すると、0.034[mm]となる。
上述の温度変化におけるイエローの画像とブラックの画像との色ずれ量は、下記式で算出できる。なお、イエローの画像は、中間転写ベルト10の回転方向において最上流の一次転写部T1Yで中間転写ベルト10に形成される画像であり、ブラックの画像は最下流の一次転写部T1Kで中間転写ベルト10に形成される画像である。
ΔC=ΔD×L/π(D1+2t)
ΔC:イエローの画像とブラックの画像の色ずれ量
L:イエロー用とブラック用の感光ドラムの中心間距離
本実施例では、イエロー用とブラック用の感光ドラム1の中心間距離Lは、249[mm]であり、色ずれ量を算出すると0.096[mm]となる。この色ずれ量は、高画質を追及するためには、小さければ小さい方がよく、人の目で見ても色ずれが分かりにくくするためには0.1[mm]以下であることが好ましい。このような温度変化による色ずれは、例えば温度検知手段を画像形成装置内に設けて、その検知結果から各色の画像の書き出しタイミングを調整するなどして補正することが可能である。しかし、温度検知手段を省いたり、補正を行わないか又は簡略化するためには、このような補正を行わなくても色ずれが十分に小さい構成とすることが望まれる。上記検討より、色ずれ量を0.1[mm]以下に維持するためには、特に外径が20[mm]以上の駆動ローラ7に関しては、ゴム層74の厚みは0.1[mm]以下であることが好ましい。
3−3.ゴム層の溝
駆動ローラ7のゴム層74の表面(外周面)には、複数の溝75が形成されている。図4は、駆動ローラ7の回転軸線方向の模式的な断面図である。本実施例では、駆動ローラ7のゴム層74の表面には、駆動ローラ7の周方向と略平行に複数の溝75が形成されている。特に、本実施例では、各溝75は駆動ローラ7の周方向の全周にわたり連続しており、またゴム層74の表面の略全域に満遍なく溝75が形成されている。ここで、略平行とは、完全に平行な場合の他、10度程度まで傾いている場合も含む。
ゴム層74の表面に形成された複数の溝75には、駆動ローラ7の半径方向(ゴム層74の厚み方向)の深さdがゴム層74の厚みDと同じである深溝(貫通溝)75aと、該深さdがゴム層74の厚みDより小さい浅溝(非貫通溝)75bとが含まれている。深溝75aは、ゴム層74を厚み方向に貫通しており、深溝75aの部分では、ゴム層74の下層(下地)である芯材71が駆動ローラ7の外部に露出し、駆動ローラ7を外部から見たとき芯材71の表面が見える。浅溝75bの深さdは不規則であってよいが、後述するトナーを取り込む作用を良好に発揮する観点から、トナー粒子の直径(トナーの平均粒径で代表)よりも大きいことが好ましく、0.02〜0.06[mm]程度が好ましい。
また、溝75(深溝75a、浅溝75b)の幅Wも、トナーを取り込む作用を良好に発揮する観点から、トナー粒子の直径(トナーの平均粒径で代表)よりも大きいことが好ましく、0.03〜0.1[mm]程度が好ましい。溝75の幅は、駆動ローラ7の半径方向の最外部における、溝75の軸線方向(長手方向)と略直交する方向の長さ(開口幅)で代表する。
ここで、本実施例では、トナーとして平均粒径が5〜10[μm]のトナーが使用されることを想定している。トナーの平均粒径としては、体積平均粒径を用いることができる。トナーの体積平均粒径は、例えば、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を使用して測定することができる。測定法は次のとおりである。一級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液からなる電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行う。そして、上記コールターカウンターTA−II型により100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積を測定する。これにより、体積分布を算出し、その測定結果から体積50%のメジアン径をもって体積平均粒径とすることができる。
なお、溝75間のピッチは、不規則であってよいが、トナーを取り込む作用の偏りを低減させる観点などから、0.05〜0.18[mm]程度が好ましい。また、同様にトナーを取り込む作用の偏りを低減する観点などから、駆動ローラ7の回転軸線方向におけるゴム層74の表面(外周面)の表面粗さは、JIS2001の最大粗さRzで、22〜33[μm]程度が好ましい。この表面粗さの測定は、23℃50%RHの環境下で、東京精密製のSurfcom1400Dにて行った。測定条件は、カットオフ波長(λcフィルタ):ガウシアン、傾斜補正:最小二乗直線補正、測定長さ:4.0[mm]、カットオフ波長:0.8[mm]、測定速度:0.3[mm/s]にて測定した。
本実施例では、ゴム層74の表面の複数の溝75は、ゴム層74の表面を研磨加工により研削することで形成する。より詳細には、本実施例では、芯材71にゴム層74を形成した後に、駆動ローラ7を回転させながら研磨部材としての研磨紙をゴム層74の表面に接触させることにより、ゴム層74の表面に駆動ローラ7の周方向と略平行に延びる複数の溝75を形成する。この方法によれば、研磨紙の種類や接触圧といった条件を変えることにより、比較的容易に溝75の形状などを変えた駆動ローラ7を製作することが可能である。このように、好ましくは、駆動ローラ7の製造方法は、ソリッドゴムで表層を形成する工程と、表層を研削して、表層に複数の溝であってそのうちの少なくとも一部の溝が表層を厚み方向に貫通している複数の溝を形成する工程と、を有する。
図5は、中間転写ベルト10の裏面側にトナー粒子(トナー)tが入り込んだ際の中間転写ベルト10と駆動ローラ7との接触部の様子を示す模式的な断面図である。図5(a)は、ゴム層74に溝75が形成されていない駆動ローラ7を用いた場合(比較例)、図5(b)は、ゴム層74に溝75が形成されている駆動ローラ7を用いた場合(本実施例)を示している。
図5(a)に示すようにゴム層74に溝75が形成されていない場合、ゴム層74の表面と中間転写ベルト10の裏面との間にトナーtが介在し、中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との有効接触面積が減少してしまう。そのため、ゴム層74に溝75が形成されていない場合、トナーtが中間転写ベルト10の裏面側に入り込むと、中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との摩擦係数が低下し、スリップに対するリスクは大きくなる。
一方、図5(b)に示すようにゴム層74に溝75が形成されている場合、トナーtが溝75内に入り込むことで、中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との有効接触面積は維持される。そのため、ゴム層74に溝75が形成されている場合、トナーtが中間転写ベルト10の裏面側に入り込んでも、中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との摩擦係数は維持され、スリップに対するリスクは小さくなる。
なお、溝75が深ければ深いほど、多くのトナーtを溝75に格納できるため、より効果的である。そのため、このようなトナーを取り込む作用をより良好に発揮する観点から、ゴム層74の表面に形成された複数の溝75には、深溝75aが多ければ多いほどよい。ただし、本発明者らの検討によれば、例えば上述のような方法で溝75を形成する場合に、少なくとも深溝75aが形成されるように研磨紙の種類や接触圧を設定することで、トナーを取り込む作用を十分に発揮できる。これは、そのような設定とすることで、深溝75aによって多くのトナーを取り込めるようになると共に、浅溝75bの深さや幅も十分となり、全体としてもトナーを取り込む作用が良好になることが一つの理由である。したがって、典型的には、複数の溝75のうち、例えば溝75の軸線方向の長さを基準として深溝75aの割合が浅溝75bの割合よりも多いことが好ましいと言えるが、その逆であってもよい。
また、駆動ローラ7のゴム層74の表面に複数の溝75を設けることにより、中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との接触面積を適度に減らすことができるため、接触面の全体として摩擦係数を適度に減らすことができる。これにより、タックが適度に低下するため、中間転写ベルト10が駆動ローラ7のゴム層74の表面へ巻き付くことによる中間転写ベルト10の波打ちを抑制することができ、画像不良の発生を抑制することができる。
図6は、通紙耐久試験におけるスリップトルクの推移を示したグラフ図である。ここで、スリップトルクとは、中間転写ベルト10と駆動ローラ7とがスリップを起こす限界のトルクである。このスリップトルクの測定は、次のようにして行った。中間転写ユニット6が単体の状態で、中間転写ベルト10が回転しないように固定し、駆動ローラ7の前側軸部72又は後側軸部73にトルクゲージを取り付ける。そして、駆動ローラ7にトルクゲージを介して回転力を与えていき、駆動ローラ7が中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との静摩擦に抗して回転する時のトルクを測定した。トルクゲージには、(株)東日製作所製のものを使用した。また、中間転写ベルト10の固定は、テンションローラ8上の中間転写ベルト10の表面を、ゴム手袋をはめた手で上下方向から挟み込むように押さえつけて行った。所定の試験パターンの画像出力を繰り返すと共に、適時上述のスリップトルクの測定を行って、図6に示す通紙耐久試験の結果を得た。この通紙耐久試験は、ゴム層74に溝75が形成されていない駆動ローラ7を用いた場合(比較例)、ゴム層74に溝75が形成されている駆動ローラ7を用いた場合(本実施例)について行った。
初期のスリップトルクは、ゴム層74に溝75が形成されていない場合は15[kgf・cm]、ゴム層74に溝75が形成されている場合は11[kgf・cm]であった。このように、ゴム層74に溝75を形成することにより、初期の中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との摩擦係数が低下する。
ここで、スリップトルクが図6に「波打ち発生限界ライン」として示す14[kgf・cm]以上になると、中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との摩擦係数が大きいことで、中間転写ベルト10の裏面が駆動ローラ7の表面に巻き付くことがある。そして、駆動ローラ7と二次転写対向ローラ9との間の中間転写ベルト10上に波打ちが発生することがある(図7参照)。そのため、ゴム層74に溝75が形成されていない場合、初期においては波打ちが発生することがある。これに対して、ゴム層74に溝75を形成することにより、初期の中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との摩擦係数が適度に低下することで、波打ちの発生を抑制することができる。
また、ゴム層74に溝75が形成されていない場合、スリップトルクは初期から40000(40k)枚付近にかけて5.6[kgf・cm]まで急激に低下し、その後100000(100k)枚付近にかけて4.4[kgf・cm]まで低下した。これに対し、ゴム層74に溝75が形成されている場合、スリップトルクは初期から50000(50k)枚付近にかけて8.0[kgf・cm]まで緩やかに低下し、その後は安定し、150000(150k)枚でも7.6[kgf・cm]で安定していた。
ここで、スリップトルクが図6に「スリップ限界ライン」として示す3.5〜4.0[kgf・cm]以下になると、転写材Sとして厚みの大きい紙やグロス紙を用いる場合などに色ずれが悪化することがある。この原因は、次のように考えられる。つまり、二次転写ニップと定着ニップとの間での紙のループによる紙のコシによって、二次転写ニップでは搬送方向と反対の方向に力が発生する。そして、この力に駆動ローラ7による搬送力が及ばず、中間転写ベルト10と駆動ローラ7との間のスリップが発生してしまう。そのため、ゴム層74に溝75が形成されていない場合、通紙枚数の増加にしたがって中間転写ベルト10と駆動ローラ7との間のスリップが発生するトルクに対するマージンが少なくなる。これに対して、ゴム層74に溝75を形成することで、スリップトルクの低下を抑制し、通紙枚数が増加しても安定した中間転写ベルト10の搬送が可能となる。
以上のように、本実施例では、中間転写ベルト10を駆動する駆動ローラ7は、芯材71の上に、表層としてソリッドゴムで形成されたゴム層74を有する。ゴム層74にソリッドゴムを用いることにより、スポンジゴムを用いた場合に比べて、中間転写ベルト10の速度変化や、中間転写ベルト10の張架力の変化に伴う外径(周長)の変化を抑制することができる。そのため、中間転写ベルト10の安定した走行に有利である。好ましくは、ゴム層74の厚みを0.1[mm]以下にすることで、使用環境や連続プリント動作による線膨張による色ずれへの影響を、より良好に抑制することが可能となる。
そして、本実施例では、駆動ローラ7のゴム層74の表面に複数の溝75が形成されている。これにより、スリップの主要因であるトナーがゴム層74の表面に付着しても、そのトナーが溝75に入り込むことで、中間転写ベルト10の裏面とゴム層74の表面との接触面積を維持でき、中間転写ベルト10の安定した走行が可能となる。特に、本実施例では、ゴム層74の表面に形成された複数の溝75は、ゴム層74の厚みと同じ深さを有し芯材71までゴム層74を厚み方向に貫通する深溝(貫通溝)75aを含んでいる。これにより、ゴム層74の厚みを薄くしても、溝75の深さを最大限活用してトナーを溝75に格納することができる。好ましくは、溝75の深さを最小でもトナーの外径(平均粒径で代表)より大きくする。これにより、トナーがより確実に溝75に入り込み、中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との接触面積を維持でき、中間転写ベルト10の安定した走行が可能となる。
また、好ましくは溝75を駆動ローラ7の周方向に形成する。つまり、複数の溝75の各溝の軸線方向は、駆動ローラ7の周方向と略平行である。これにより、駆動ローラ7の回転角度によらずに常に中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との接触面に溝75が存在するため、駆動ローラ7の回転角度による中間転写ベルト10の搬送力のムラを抑制することができる。また、これにより、溝75が形成されたことによる中間転写ベルト10の寄りや、駆動ローラ7の回転角度による中間転写ベルト10の速度ムラを抑制することができる。
また、駆動ローラ7のゴム層74の表面に複数の溝75を形成することにより、中間転写ベルト10の裏面と駆動ローラ7の表面との接触面積を適度に小さくできる。これにより、中間転写ベルト10の裏面とゴム層74の表面との摩擦係数が大きいことによる中間転写ベルト10の波打ちを抑制することができる。
また、本実施例では、駆動ローラ7のゴム層74の表面の複数の溝75は、芯材71の表面にゴム層74を形成した後に、ゴム層74の表面を研磨加工により研削することによって形成する。これにより、複雑なゴム層74の形成を行う必要がなく、容易に溝75を形成することができる。また、研磨する工具を交換するなどして比較的容易に条件を変えて、溝75の形状などを変えた駆動ローラ7を製造することが可能である。
このように、本実施例によれば、簡単な構成で、駆動ローラ7に付着したトナーなどの異物の影響でベルトの走行が不安定となることを抑制することができる。より詳細には、本実施例によれば、簡単な構成で、駆動ローラ7の温度変化による外径変化を低減し、中間転写ベルト10と駆動ローラ7のスリップを抑制し、かつ、中間転写ベルト10の波打ちを抑制して、安定した中間転写ベルト10の走行が可能となる。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
例えば、上述の実施例では、駆動ローラは、芯材と、その上に形成されたゴム層と、からなり、ゴム層の表面の複数の溝のうち深溝の深さはゴム層の厚みと同じとした。更に芯材71にもゴム層の深溝に連通する溝を設け、全体として深さがゴム層の厚み以上の溝を設けてもよい。これにより、より多くのトナーを溝に格納することができるため、中間転写ベルトと駆動ローラとの間のスリップをより効果的抑制することが期待できる。
また、駆動ローラは、芯材と、表層を構成するゴム層と、からなっている構造に限定されるものではなく、芯材の上に、複数の弾性層などの複数層を有していてよい。この場合も、駆動ローラの最外層をなす表層をソリッドゴムで形成し、その表層の表面に溝を形成する。この場合、上記同様、表層より下層(芯材を含む)に、表層の深溝に連通する溝を設けてもよい。
また、上述の実施例では、駆動ローラの表面に付着する異物は主にトナーであるものとして、駆動ローラのゴム層に形成する溝の深さが最小でもトナーの外径より大きいことが好ましいことを説明した。しかし、中間転写ベルトの裏面側にトナー以外の塵埃が入り込みやすい構成の場合などには、駆動ローラのゴム層に形成する溝の深さを想定される塵埃の外径(平均粒径で代表できる)より大きくすることで、当該塵埃をより確実に溝に取り込むことができる。駆動ローラのゴム層に形成する溝の幅についても同様であり、想定される塵埃の外径(平均粒径で代表できる)より大きくすることで、当該塵埃をより確実に溝に取り込むことができる。
また、上述の実施例では、駆動ローラのゴム層の各溝は、駆動ローラの周方向の全周にわたり連続しているものとしたが、各溝の駆動ローラの周方向における長さは、駆動ローラの周長よりも短くてもよい。なお、一つの連続する溝の軸線方向の全域が深溝又は浅溝のいずれかであることに限定されるものではない。一つの連続する溝の深さは溝の軸線方向において異なっていてもよく、軸線方向の一部が深溝とされ他の部分が浅溝とされていてもよい。
また、上述の実施例では、駆動ローラのゴム層の各溝の軸線方向を駆動ローラの周方向(回転方向、表面の移動方向)と略平行とした。しかし、これに限定されるものではなく、溝の軸線方向は駆動ローラの周方向に対して傾斜していてもよく、例えば駆動ローラのゴム層の表面に螺旋状の溝を形成してもよい。また、溝の軸線方向を駆動ローラの周方向と略平行とすることで、前述のような効果が得られるが、トナーなどの異物を溝に取り込むという作用に関して言えば、溝の軸線方向は駆動ローラの回転軸線方向と略平行であってもよい。あるいは、所望により溝を駆動ローラの周方向と回転軸線方向との両方に形成してクロス形状としてもよい。また、溝は直線状に形成されることに限定されるものではなく、その全体又は一部が曲線状に形成されていてもよい。
また、上述の実施例では、駆動ローラのゴム層の表面の略全域に溝を形成したが、駆動ローラのゴム層の表面に部分的に溝を形成してもよい。
また、駆動ローラの回転軸線方向において、溝を形成する領域と形成しない領域を設けたり、あるいは溝の形状を変化させたりしてもよい。これにより、駆動ローラの回転軸線方向において駆動ローラの搬送力に差を設け、中間転写ベルトを幅方向の片側に寄せるようにしてもよい。
また、駆動ローラの溝の形成方法は、ゴム層を研磨加工により研削する方法に限定されるものではない。例えば、溝が付いたリングに通してゴム層に溝を形成したり、レーザーによりゴム層に溝を形成したり、溶剤を用いてゴム層に溝を形成したり、ゴム層を形成する際に型などで溝を形成してもよい。
また、上述の実施例では、中間転写ベルトを駆動する駆動ローラは1つであるものとして説明したが、中間転写ベルトを張架する複数のローラのうち複数のローラが駆動ローラであってもよい。その場合、その複数の駆動ローラのうち少なくとも一つに溝を形成することで相応の効果が得られるが、その複数の駆動ローラの全てに溝を形成することが好ましい。
また、上述の実施例では、駆動ローラが駆動する無端状のベルトが中間転写体である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。画像形成装置においてトナー像を直接又は転写材を介して担持して搬送する無端状のベルトであれば、任意のベルトの駆動ローラに関し本発明を適用して、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。例えば、像担持体からトナー像が転写される転写材を担持して搬送する転写材担持体として、上述の実施例における中間転写ベルトと同様の無端状のベルトが用いられる、直接転写方式の画像形成装置がある。転写材担持体としてのベルトについても駆動ローラによる安定した走行が望まれるのは中間転写体としてのベルトの場合と同様である。したがって、無端状のベルトが転写材担持体である場合にも、本発明は等しく適用することができ、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。その他、無端状のベルトが感光体や静電記録誘電体などである場合も同様である。