JP6448227B2 - 素子基板および液体吐出ヘッド - Google Patents

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Description

本発明は、液体に吐出エネルギーを加えて液体を吐出する素子基板、および当該素子基板を備えた液体吐出ヘッドに関する。
液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいては、例えば体積が2pl以下といった小液滴を吐出することが求められている。このような小液滴を高密度に記録媒体に着弾させることにより、高精細な画質を得ることができる。小液滴化に伴い、吐出回数は飛躍的に増加する。吐出回数を増加させる際、単に吐出周波数を高めるだけでは限界があるし、吐出周波数を高めるにつれて吐出速度が低下するとの弊害が生じることがある。吐出速度の低下を避け、かつ所定の量の液体をより短い時間で吐出するために、多数の吐出口を高密度で配置した素子基板が採用されている。
ところで、液体を吐出する素子基板では、液体の温度低下に伴う液体の高粘度化が問題とされている。このような問題を抑制するため、液体に吐出エネルギーを作用させるための作用室に液体を供給する前に、当該液体を加熱する手法が採られている。しかし、小液滴を吐出する素子基板においては、液体の温度上昇に伴う高粘度化に起因する吐出特性の低下問題が見受けられる。すなわち、加熱された液体は、作用室に留まっていても吐出口を介して蒸発する。小液滴を吐出する素子基板においては、各吐出口から吐出される液体の量が少なく、少量の溶媒が蒸発しただけでも液体の粘度上昇が生じやすい。また、吐出口および作用室が相対的に小さいので、粘度上昇に伴う液体の流抵抗の増加の影響を受けやすい。このような問題は、特に、凝集が生じやすい顔料インクや、添加樹脂の含有量が多い高機能インクで顕著である。
流抵抗の増加は素子基板の吐出特性を低下させる。吐出特性が低下することで、素子基板は、吐出口および作用室に至る液体供給経路の回復処理を行わないと液体を吐出できない状態になることもある。これに対して、作用室内の液体を必要以上に温めないように制御された素子基板(特許文献1)が提案されている。
特開2009−148993号公報
特許文献1に記載される素子基板では、エネルギー発生素子としての発熱抵抗素子が作用室内の液体を予備的に加熱し、液体を所定の温度まで温めた後で、当該発熱抵抗素子が液体を沸騰させて液体を吐出している。しかし、予備的な加熱における熱量では液体を急速に加熱するのは困難である。そのため、低温環境下では、液体を予備的加熱で所定の温度まで温めるのに長時間の待機が必要とされ、素子基板のスループットが低下する。
このように、特許文献1に開示される素子基板では、通常用いられる範囲で万遍なく液体の高粘度化に対応できない。また、液体の高粘度化に対応するため、発熱抵抗素子が形成されている基板に、当該発熱抵抗素子とは別に作用室内に加熱素子を設け、当該加熱素子を用いて必要なときに必要な量だけ作用室内の液体を温めることが提案されている。このように加熱素子が基板に設けられている場合、加熱素子から発生した熱の多くがこの基板に伝わり効率が悪くなる。また基板に伝わった熱は、液体吐出ヘッドに蓄えられるため、加熱素子の加熱をやめた後も液体を温め続けてしまいかねない。そのため、加熱状態が長く続いて必要以上に液体が蒸発してしまう場合がある。
そこで本発明の目的は、液体を効率的に加熱し良好な吐出特性を可能とする素子基板及び液体吐出ヘッドを提供することにある。
上記目的達成するため、本発明に係る素子基板の一態様は、液体を吐出する吐出口と、吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、長手軸を有する形状を有し、液体に晒される少なくとも2面の発熱面を備える加熱素子と、加熱素子の一端部側を支持する第1の支持部と、他端部側を支持する第2の支持部と、一端部側と他端部側の間の部分を支持する第3の支持部と、を備える。
また、本発明に係る素子基板の他の態様は、液体を吐出する吐出口と、吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、エネルギー発生素子に液体を供給するための供給口が形成される基板と、発熱面を備え、発熱面が基板と間隙をもって配される加熱素子と、を備える。この態様において、加熱素子の一端部側、他端部側、及び一端部側と他端部側との間の部分の夫々は基板に支持されている。
上記各発明においては、2面の発熱面が液体に晒されているので、必要なときに作用室内の液体を加熱することができる。したがって、溶媒の蒸発が抑制され液体の高粘度化が抑制されるとともに、液体を所定の温度まで温めるのに必要な時間を短くすることができる。また、加熱素子の両端部が支持されているとともに、加熱素子の、当該両端部の間の部分が支持されているので、加熱素子の機械的強度を高めることができる。
本発明によれば、液体を効率的に加熱し良好な吐出特性を可能とする素子基板及び液体吐出ヘッドを提供することができる。
本発明に係る素子基板を備える液体吐出ヘッドの斜視図。 本発明に係る素子基板の部分破断斜視図。 図2に示される素子基板の吐出口近傍を拡大した部分破断斜視図。 図3に示される素子基板をA−A’面で切断したときの断面図。 液体の流れを説明するための断面図。 発熱抵抗素子と加熱素子の周辺を示す部分拡大斜視図。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る素子基板を備える液体吐出ヘッドの斜視図である。図1に示されるように、液体吐出ヘッド1は、インク等の液体を吐出する素子基板2と、素子基板2を支持する支持部材3と、素子基板2と電気的に接続された電気配線部材4と、を備える。図1に示される液体吐出ヘッド1は、いわゆるフルライン型の記録装置に搭載可能である。
図2は、図1に示される素子基板2の部分破断斜視図である。素子基板2は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクを吐出できるよう、色毎に夫々2列ずつ配列された吐出口5を備える。
インクは、インクタンク部(不図示)から各色毎に2列形成される吐出口列に共通する共通液室6を介して吐出口5に供給される。列方向に隣接する吐出口5は、800dpi(dots per inch)の配列密度で配置されている。さらに、同色他列の吐出口5は半ピッチずれて配置されている。したがって、素子基板2は、1600dpiの記録密度で記録媒体にインクを着弾させることが可能となる。
図3は、図2に示される素子基板2の吐出口5近傍を拡大した部分破断斜視図である。図3に示されるように、素子基板2は、吐出口5からインクを吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子としての発熱抵抗素子7と、発熱抵抗素子7のエネルギーをインクに作用させるための作用室8と、を備える。
作用室8は共通液室6(図2参照)と連通しており、インクは共通液室6から作用室8へ流入する。作用室8へ供給されたインクは、作用室8の内部に配される発熱抵抗素子7から熱エネルギーを受けて膜沸騰し、インク中に気泡が発生する。この気泡がインクを押すことで、吐出口5からインクが吐出される。
発熱抵抗素子7は、長手軸を有する形状(例えば、板形状、円柱形状および角柱形状等)を有することが好ましい。本実施形態では、発熱抵抗素子7は短冊状の板形状を有する。発熱抵抗素子7の両端が作用室8の壁に固定されており、長手軸に沿う発熱抵抗素子7の両面がインクに晒されインクを加熱可能な状態となっている。したがって、発熱抵抗素子7の当該両面からインクに熱を加えることができ、より短い時間でインクを膜沸騰させることが可能になる。
また、素子基板2は、発熱抵抗素子7を挟んで発熱抵抗素子7の両側に設けられた隔壁9を備える。隔壁9は、発熱抵抗素子7と同じ材料で、発熱抵抗素子7を形成する工程と同一の工程にて作成される。よって図4に示すように発熱抵抗素子7と基板19との間隔と、加熱素子15と基板19との間隔は実質的に等しい。発熱抵抗素子7および隔壁9は、作用室8を吐出口5側に形成される上部空間と供給口13側(上流側)に形成される下部空間とに(吐出方向と交わる仮想面で)分けている。隔壁9の一方は作用室8の底壁(吐出口5が配された壁と対向する壁を言う)まで延びており、作用室8の下部空間が一方の隔壁9により分けられている。
作用室8に形成される上下空間は、発熱抵抗素子7と隔壁9との間の間隙、一方の隔壁9に形成された開口10、および他方の隔壁9に形成された開口部である貫通口11を介して連通している。また、作用室8の下部空間に形成される複数の空間は、一方の隔壁9に形成された開口12を介して連通している。
図4は、図3に示される素子基板2をA−A’面で切断したときの断面図である。図4に示されるように、吐出口5と対向する位置に形成される基板19は、作用室8に連通する供給口13を備えている。より具体的には、基板19を貫通する供給口13は一方の隔壁9で画定される空間に連通している。当該空間は開口10,12を除き閉じられた空間となっており、一方の隔壁9はインクの流れを整流する整流素子14として機能する。本実施形態においては素子基板には複数の作用室8が形成され、各作用室8に対して個別に供給口13が形成されている。
他方の隔壁9は細幅部分を含み、当該細幅部分は電極(不図示)と電気的に接続されており、当該電極を介して細幅部分に電圧が印加されることにより、細幅部分は熱を発する。すなわち、細幅部分は加熱素子(以下、「サブヒータ」とも称する)15として機能する。サブヒータ15は、発熱抵抗素子7とは独立して駆動可能に形成されている。また、サブヒータ15は、単独で駆動しても発泡現象が生起しない仕様となっている。
本実施形態のサブヒータ15は、長手軸を有する板状の形状であり少なくとも2面の発熱面を備える。つまり主面の両面が発熱面となっており、その発熱面が基板19と所定の間隔を隔てて配されており、発熱面の両面が作用室8内のインクに晒される状態となっている。本実施形態では、サブヒータ15の両端が作用室8の壁に固定されており、長手軸に沿うサブヒータ15の両面がインクに晒されインクを加熱可能な状態となっている。したがって、サブヒータ15の当該両面からインクに熱を加えることができ、基板19への熱の逃げが抑制されるので、より短い時間でインクを所定の温度まで温めることが可能になる。尚、本発明におけるサブヒータ15はこのような長手軸を有する板形状に限らず、例えば、円柱形状や角柱形状といった形態でも適用可能である。
インクは、素子基板2を支持する支持部材3(図1参照)から共通液室6(図2参照)へ供給される。共通液室6は供給口13と連通しており、インクは共通液室6から供給口13を経て作用室8に流入する。素子基板2には回路(不図示)が形成されており、液体吐出ヘッド1が搭載される液体吐出装置本体(不図示)と電気的に接続されている。
本実施形態によれば、作用室8の内部のインクは必要なときにサブヒータ15を用いて加熱される。そのため、従来、基板全体を加熱する場合に比べて、インクの温度が高い状態を必要な時に限定することができるので、従来に比べて吐出口からインクの蒸発、及びインク中の溶媒の蒸発を抑制できる。したがって、液体の高粘度化を抑制することができる。また、発熱抵抗素子7とは別にサブヒータ15が設けられているので、任意のタイミングで作用室8の内部のインクを所定の温度まで温めることができる。
次に、図5を用いて、供給口13から吐出口5に至るインクの流れについて説明する。図5は供給口13から吐出口5へのインクの流れを示した断面図である。
発熱抵抗素子7によってインクが加熱されると、発熱抵抗素子7の表面においてインクが沸騰する。インク沸騰時のエネルギーは周囲のインクに運動エネルギーを付与し、気泡が成長する。なお、整流素子14は開口10,12を除き閉じた空間を画定しているので、吐出エネルギーを吐出口5の近くのインクに効率的に向けさせる流路抵抗として機能する。
吐出口5から作用室8内のインクが吐出された後、成長した気泡の内部は負圧となる。発泡時に伝わったインクの慣性力が負圧より低くなると、この気泡は急激に消える。その結果、気泡が存在していた領域にインクを取り込もうとする力が働き、この力によりインクは供給口13から作用室8内に流入する。
このとき、供給口13から導入されたインクは、まず整流素子14に到達し、図5に示される矢印のように、整流素子14の開口10,12から作用室8の上下空間それぞれにインクが流入する。発熱抵抗素子7の裏面側の空間(吐出口5の側とは反対側の空間)には、このような流れによりインクが補充される。
発熱抵抗素子7の裏面側を通った液体は、さらにサブヒータ15の近傍まで流れ、貫通口11を通って吐出口5側の空間に流入する。本明細書においては、貫通口11を通って吐出口側の領域に至る経路を「バイパス流路」と称す(図5参照)。言い換えれば、貫通口11がバイパス流路の一部をなしており、サブヒータ15がバイパス流路の流路壁を兼ねている。バイパス流路および開口10をインクが流れることにより、発熱抵抗素子7の表面側(吐出口5側)にインクが補充される。
次に、サブヒータ15の構成について詳述する。
関連する液体吐出ヘッドは、主に、低温環境下におけるインクの高粘度化を改善する目的でサブヒータを備えている。この場合、液体吐出ヘッド全体を温める設計となっていること、及び、配置レイアウトが有利である観点から、多くの場合、熱伝導率の高い部材(例えば、液体吐出ヘッド基板や、放熱機能を併せ持つ支持部材など)に設けられていた。
このような構成では、液体吐出ヘッドから熱が放出される。したがって、液体吐出ヘッド全体を温めるための熱量だけでなく、放熱する分の熱も賄う熱量がサブヒータに求められる。その結果、かなり大型のサブヒータが必要とされる。このような(熱伝導率の高い部材に設けられる)大型のサブヒータでは微妙な温度のコントロールが難しいので、常温環境下以外では発熱抵抗素子がインクを予備的に加熱しインクの温度を調整している。これは、高温環境下での粘度低下に伴い、吐出量が微妙に変化し、記録画像の光学濃度(OD:Optical Density)が高くなってしまうためである。この現象は、デューティの高い画像で目立ちやすくなる。
温度上昇による記録画像の光学濃度の増加現象は、先に説明した小液滴吐出環境では、さらに顕著に表れる。これは、吐出液滴に対する吐出量増加の割合が大きくなるためである。
また、先に述べたように、小液滴吐出における高温環境は蒸発による増粘も引き起こす。すなわち、小液滴吐出における高温環境は、短期的には液体の運動エネルギー上昇に起因する粘度低下をもたらし、その後、長期的にはインク中の水分蒸発に起因する粘度上昇をもたらす。このように、小液滴を吐出する素子基板では、粘度のコントロールが非常に難しい。
これらの事情に鑑みて、特許文献1では、発熱抵抗素子による予備加熱を適正に制御することで粘度コントロールに対応しようとしている。しかし、常温環境下では可能であっても、低温環境下で用いるには、大型のサブヒータの併用、もしくは、ウォーミングアップ完了までの長期待機を強いられることとなる。
よって本実施形態の、表裏面加熱型のサブヒータの採用を作用室の内部に設ける構成となる。必要なときに必要な量だけインク効率液に温めることを考えると、吐出口と発熱抵抗素子との間のインクが温められ、発熱抵抗素子よりも上流のインクは極力温められないようにすることが好ましい。このようにすることにより、短時間での加熱が可能となり、また、必要以上にインクが蒸発しなくなるとともに、発熱抵抗素子の上流側で後方流路抵抗が確保され吐出効率が向上する。サブヒータである加熱素子15を発熱抵抗素子7に対して作用室の液体の流れ方向の下流側に配置することで、発熱抵抗素子よりも上流のインクは極力温められなくなる。別の観点からは、図4に示すように基板19には供給口13が形成されている。この供給口13と加熱素子15との間隔は、供給口13と発熱抵抗素子7との間隔より大きい。この関係によって、液体の流れ方向のより下流側(吐出口5に近い側)の液体を加熱して粘度を下げることが可能となり、良好な吐出が可能となる。さらに詳細には、供給口13と加熱素子15との間隔は、供給口13と吐出口5との間隔より小さく、供給口13と発熱抵抗素子7との間隔より大きい。
発熱抵抗素子やサブヒータが熱伝導率の高い部材に設けられている場合、発熱抵抗素子やサブヒータから発生した熱は、インクだけでなく熱伝導率の高い部材にも伝わる。したがって、ある程度の大きさを有するサブヒータが必要とされ、発熱抵抗素子と吐出口との間の領域を大きく採らなくてはいけないなど、小液滴を吐出する素子基板には向かない場合がある。
加えて、熱伝導率の高い部材に伝わった熱は、液体吐出ヘッド内のその他部材に蓄えられる。そのため、サブヒータがインクの加熱をやめた後もその他の部材に蓄えられた熱がインクを温めかねない。その結果、加熱状態が長く続いて必要以上のインクが蒸発しやすい。
本実施形態では、サブヒータ15が長板形状とされ、サブヒータ15の表裏面がインクに晒される状態でサブヒータ15が作用室8の内部に設けられている。より具体的には、長板形状の短手部分が作用室8の壁に固定されている。したがって、サブヒータ15で発生した熱が作用室8の壁に伝わりにくくなる。また、サブヒータ15の表裏両面がインクに晒されているので、効率的なインクの加熱が可能となる。
しかも、このような構成によれば、関連する液体吐出ヘッドに比べ温められるインクの量が格段に少なくなる。したがって、サブヒータ15を追加するために発熱抵抗素子7と吐出口5との間のディメンジョンを変更する必要がなくなる。また、サブヒータ15が発する熱の多くが吐出されるインクのみに伝わる。したがって、インクが蒸発しにくくなり、粘度上昇も極力抑えることができる。加えて、作用室の内部のインクを加熱する構成であるので、速やかな温度調整が可能となる。したがって、関連する素子基板の発熱抵抗素子の予備加熱のみのときの様なウォーミングアップ時の待機時間も短くできる。本実施形態に係る素子基板2はインクの温度調整の幅を広げるとともに温度を速やかに調整できることから、印字中における吐出ばらつきの補正がより容易になる。
サブヒータ15による温度調整の効果をより効果的に享受するためには、発熱抵抗素子7においても、サブヒータ15の構成と同様の表裏面加熱型の構成を採ることが望ましい。発熱抵抗素子7の表面に保護層が設けられている場合には、余計な熱エネルギーが必要とされ、且つ、保護層の蓄熱が温度調整に影響をもたらす場合がある。作用室8内での温度管理の観点から、発熱抵抗素子7及びサブヒータ15は保護層を必要とせずとも十分な耐久性を有する材料からなることが好ましい。このような発熱抵抗素子7やサブヒータ15の材料としては、例えば、TiAlNのような、高融点金属を主体としたアモルファス系の高抵抗材料が挙げられる。またTiAlNとTiAlの積層体で構成でも良い。
また、吐出効率向上の観点から、発熱抵抗素子7の近傍のインクを速やかに温めることができる位置であり、且つ、吐出に影響を与えかねない吐出口5と発熱抵抗素子7との間の領域を外れた位置にサブヒータ15を配置することが望ましい。このような位置として、バイパス流路を形成する隔壁9の発熱抵抗素子7側の位置が挙げられる。
さらに、サブヒータ15の発熱効率の観点では、サブヒータ15の電気抵抗がより高い方が好ましい。電気抵抗の増加は、高い比抵抗の材料を選択することでも達成されるが、同一材料であれば、サブヒータ15の断面積を小さくすること、すなわちサブヒータ15の厚みを薄くすることでも達成される。
ところで、サブヒータ15の厚みを薄くすると、サブヒータ15の機械的強度が低下する。サブヒータ15は加熱を繰り返すため、熱応力により構造疲労が生じる。また、サブヒータ15の貫通口11およびその周囲をインクが移動することにより生じるカルマン渦等により、サブヒータ15自体に振動が生じ、その蓄積による構造疲労が生じるおそれもある。構造疲労を起こした状態でサブヒータ15を使用することは、サブヒータ15の破断を引き起こすことになり、ひいては素子基板2および液体吐出ヘッド1の故障を生じることとなる。
本実施形態では、図6に示されるように、素子基板2は、第1および第2の支持部16,17と、第1および第2の支持部16,17とは別に設けられた第3の支持部と、をさらに備える。第1および第2の支持部16,17は、サブヒータの一端部側と他端部側とに夫々形成され、サブヒータを構成する部材の一部を屈曲させることでサブヒータ15の両端部を支持する。このサブヒータの一端部と他端部との両端部間に電圧を印加可能に設けられている。第3の支持部も同様にサブヒータの一部を屈曲させることで、サブヒータ15の、当該両端部の間の部分を支持している。このようにサブヒータ15はその一部を屈曲させ屈曲部を構成することで基板との支持部を形成している。
本構成によって、発熱部の両面が基板19から離間し、インクに晒される形態のサブヒータ15であっても、サブヒータ15全体の剛性を高めることができ、熱応力や、振動による構造疲労による破断を防ぎ、長寿命化を達成することができる。また、液体吐出ヘッド1や、液体吐出ヘッド1が搭載された液体吐出装置(不図示)等を輸送する際の振動や、不意の落下によりサブヒータ15の破断を防ぐこともできる。
第3の支持部は、絶縁体を介して作用室8の壁と接続されていることが望ましい。第3の支持部が作用室8の壁と電気的に絶縁されることで、自由電子に起因する作用室8の壁(基板本体や吐出口形成部材)への熱拡散を防ぎ、サブヒータ15の効率低下を防ぐことができる。また、第3の支持部が作用室8の壁と電気的に絶縁されることで、第3の支持部が電気的に浮遊成分となり、サブヒータ15全体の抵抗値に大きな変化をもたらすことがない。したがって、第3の支持部が設けられていない場合と比べてもサブヒータ15は同程度の発熱量を確保することができる。図6に示すようにサブヒータ15とエネルギー発生素子7は基板の面に沿って、互いに沿って延在している。
本実施例においては、供給口13が作用室8の各々に設けられており、供給口13の流路長は、供給口13の出口端から吐出口5に至るまでの流路長よりも長い。このような構成とすることにより、インクの後方抵抗は高く、前方抵抗は低い状態とすることができ、所定以上の長さを有する供給口13の流体抵抗と相まって、さらに吐出効率を向上させるに好適な形態とすることもできる。
本実施形態では、エネルギー発生素子として発熱抵抗素子7が用いられているが、振動板を有するピエゾ素子がエネルギー発生素子として用いられていてもよい。エネルギー発生素子がピエゾ素子である場合には、サブヒータ15は、作用室8の内部の、ピエゾ素子に対向する箇所で、且つ、当該振動板の吐出口5の側の固定部に偏って配置されることが好ましい。
本発明は、どのようなインクに対しても適用可能であるが、凝集が生じやすい顔料インクや、添加樹脂の含有量が高い高機能インクに対して特に有利である。もちろん、本発明は、インクを吐出する素子基板に限られず、液体を吐出する素子基板にも本発明を適用することができる。
上述した各実施形態においては、サブヒータである加熱素子15は作用室8の内部に設ける構成で説明したが、本発明はこれに限定されない。加熱素子は液体吐出ヘッド内の液体に晒される部分であればどこに設けても良い。例えば供給口13の内部、供給口13と作用室とを連通する流路内や共通液室内部に設けても良い。
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明は、当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
2 素子基板
5 吐出口
7 発熱抵抗素子(エネルギー発生素子)
8 作用室
15 サブヒータ(加熱素子)

Claims (9)

  1. 作用室内の液体を吐出する吐出口と、
    前記作用室内に設けられ、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、
    長手軸を有する形状を有し、前記作用室内の液体に晒される表面及び裏面の少なくとも2面の発熱面を備え、液体中に気泡を発生することなく液体を加熱するサブヒータと、
    前記サブヒータの一端部側を支持する第1の支持部と、他端部側を支持する第2の支持部と、前記一端部側と前記他端部側の間の部分を支持する第3の支持部と、を備える素子基板。
  2. 前記サブヒータは、前記エネルギー発生素子と前記吐出口との間の領域を避けた領域に設けられている、請求項1に記載の素子基板。
  3. 前記第3の支持部は絶縁体を介して前記作用室の壁に接続されている、請求項1または2に記載の素子基板。
  4. 前記サブヒータは前記作用室の内部に配されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の素子基板。
  5. 前記エネルギー発生素子は、長手軸を有する形状を有する発熱抵抗素子であり、前記発熱抵抗素子の、前記長手軸に沿う両面が前記作用室の内部の液体に晒される状態で前記作用室に設けられている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の素子基板。
  6. 前記作用室は、前記サブヒータの前記2面をつなぐバイパス流路を含み、前記サブヒータは、前記バイパス流路に設けられている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の素子基板。
  7. 前記サブヒータは貫通口を有し、該貫通口が前記バイパス流路の一部をなしており、前記サブヒータは前記バイパス流路の流路壁を兼ねている、請求項6に記載の素子基板。
  8. 前記作用室の各々に連通する供給口をさらに備え、該供給口の流路長が、該供給口の出口端から前記吐出口に至るまでの流路長よりも長い、請求項3ないし7のいずれか1項に記載の素子基板。
  9. 前記エネルギー発生素子と前記サブヒータとは互いに沿って延在している、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の素子基板。
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