JP6447218B2 - インクジェットヘッド及びダンパー部材の製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッド及びダンパー部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はインクジェットヘッド及びダンパー部材の製造方法に関し、詳しくは、共通インク室内に設けられたダンパー部材によってクロストークに起因する圧力室の列間の影響を低減することのできるインクジェットヘッド及びダンパー部材の製造方法に関する。
インクジェットヘッドは、駆動によって圧力室内に発生する圧力波が原因で射出性能が不均一になることがある。駆動によって圧力室内に発生した圧力波が、共通インク室によって連通している他の圧力室に伝播し、その圧力波が伝播した圧力室の射出特性に変動を生じさせるいわゆるクロストークを発生させるためである。
従来、クロストークに起因する圧力室間の影響を低減する技術として、圧力室のインク入口とインク出口とを結ぶ直線の延長線に対して交叉する壁面部材を、体積弾性率40GPa以下の材質によって形成する技術(特許文献1)、共通インク室に面して弾性変形するダンパー壁を形成する技術(特許文献2)、共通インク室内に空気が充填されたダンパー室を有するダンパー部材を別部材として配置する技術(特許文献3)等が提案されている。
特開2007−168185号公報 特開2012−106513号公報 特開2007−118312号公報
近年、インクジェットヘッドは、より高速で高精細な画像記録を行うことができる性能が求められている。このため、複数の圧力室が配列された圧力室の列を複数列並設することによって、高密度な画像記録を行うことができるようにしたインクジェットヘッドが提案されている。
ところが、本発明者が確認したところ、複数の圧力室の列を有するインクジェットヘッドを駆動すると、圧力室の列が1列だけのインクジェットヘッドに比べて、クロストークの影響が大きくなり、射出特性の変動の問題が顕著に見られることがわかった。
すなわち、圧力室が複数の列によって構成され、列間の圧力室のインク入口が共通インク室によって連通する構造を有するインクジェットヘッドは、1つの圧力室の列を駆動したことによって圧力室内に発生した圧力波が、共通インク室を介して他の列の圧力室に伝播し、他の列の圧力室の射出特性に影響を与える。
特許文献1、2に記載の技術は、クロストークを抑制するために、圧力波を減衰させる機能を有する部材を共通インク室の壁面に使用している。しかしながら、例えば、クロストークを抑制するために該壁面をインク入口に近接させると、それだけ共通インク室が狭小となって、必要量のインクを貯留させるだけの容積を確保することができなくなる問題がある。
一方、特許文献3に記載の技術は、共通インク室内にダンパー部材を別部材として配置する構成であるため、ダンパー部材を自由に配置でき、共通インク室の容積も確保できる利点がある。しかし、ダンパー室に空気が充填されたダンパー部材は、ダンパー面に可撓膜が用いられるため、インクジェットヘッドの駆動によって発生する熱や、例えばゲルUVインクやセラミックインク等のように吐出のためにヒーター等によって高温にする必要があるインクを使用する場合では、その高温のインクの熱によって、ダンパー室の空気が膨張してダンパー面を圧力室方向へ凸状に大きく突出させてしまう。これにより圧力室へのインク流路が狭められてしまい、円滑なインク供給が妨げられてしまうおそれがある。
特許文献3には、ダンパー部材内の気圧を大気圧以上にする記載がある。また、使用環境下でダンパー室の空気の温度が高くなるほど、空気の膨張によってダンパー室の容積が大きくなると共にダンパー室の圧力が上昇して大気圧よりも大きくなり、減衰特性が向上する、と記載されている。従って、特許文献3は、ダンパー部材の膨張によりインク流路を狭めてしまうことを全く考慮していない。
ダンパー室の空気の膨張によってインク流路を狭めてしまうことを防止するため、ダンパー面を構成する膜の厚みを厚くして、膨張時の突出量を抑えることも考えられるが、厚みを厚くすると圧力波減衰の効率低下を招き、ダンパー効果が損なわれてしまう問題がある。
そこで、本発明は、ダンパー効果を発揮しつつ、使用時にダンパー面が圧力室へのインク供給を妨げることのないダンパー部材を搭載したインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
また、本発明は、ダンパー効果を発揮しつつ、使用時にダンパー面が圧力室へのインク供給を妨げることのないダンパー部材が搭載されたインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、ダンパー効果を発揮しつつ、使用時にダンパー面が圧力室へのインク供給を妨げることのないダンパー部材を容易に製造することのできるダンパー部材の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
1.
2列以上配列された圧力室と、
前記圧力室のインク入口を介して全ての前記圧力室と連通する共通インク室と、
前記共通インク室内に配置されたダンパー部材とを有するインクジェットヘッドであって、
前記ダンパー部材は、ダンパーフレームと少なくとも前記インク入口に対向する面に張設された可撓膜とによってダンパー室が画成され、該ダンパー室を外部と連通させるための圧力調整用穴を有していると共に、前記圧力調整用穴が封止部材によって封止されていることにより前記ダンパー室に封入された気体が、常温では収縮して前記可撓膜の面が凹んだ湾曲面を形成してなり、前記共通インク室内のインクが常温よりも高い使用温度にあるときは膨張して前記可撓膜の面が略平坦面又は凹んだ湾曲面を形成してなることを特徴とするインクジェットヘッド。
2.
前記圧力調整用穴は、前記ダンパー部材において、前記可撓膜とは反対側の面に配置されていることを特徴とする前記1記載のインクジェットヘッド。
3.
前記圧力調整用穴は、前記ダンパー部材において、前記インク入口の配列領域の外側に対応する部位に配置されていることを特徴とする前記1又は2記載のインクジェットヘッド。
4.
前記可撓膜の厚みは、10μm以上150μm以下であることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
5.
前記ダンパーフレームは、少なくとも一部が金属で形成されていることを特徴とする前記1〜4の何れかに記載のインクジェットヘッド。
6.
前記ダンパー部材は、前記インク入口と前記可撓膜との離間距離が、隣り合う前記圧力室の列同士の前記インク入口間の離間距離よりも小さくなるように配置されていることを特徴とする前記1〜5の何れかに記載のインクジェットヘッド。
7.
前記使用温度であるときに前記可撓膜の面が平坦面又は凹んだ湾曲面を形成してなることを特徴とする前記1〜6の何れかに記載のインクジェットヘッド。
8.
前記1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置。
9.
インクジェットヘッドの複数の圧力室のインク入口を介して全ての前記圧力室と連通する共通インク室内に配置され、ダンパーフレームと少なくとも前記インク入口に対向する面に設けられた可撓膜とによって画成されるダンパー室に封入された気体が、常温では収縮して前記可撓膜の面が凹んだ湾曲面を形成してなり、前記共通インク室内のインクが常温よりも高い使用温度にあるときは膨張して前記可撓膜の面が略平坦面又は凹んだ湾曲面を形成してなるダンパー部材の製造方法であって、
前記ダンパーフレームに前記可撓膜を平坦になるように張設して前記ダンパー室を画成すると共に、前記ダンパー室を圧力調整用穴によって外部と連通させた状態で前記ダンパー室の気体を加熱し、その後、前記圧力調整用穴を封止部材によって封止することによって、前記ダンパー室に前記加熱された気体を封入することを特徴とするダンパー部材の製造方法。
10.
前記ダンパー室を圧力調整用穴によって外部と連通させた状態で前記ダンパー室の気体を加熱し、その後、該気体が前記共通インク室内のインクの使用温度に達したときに、前記封止部材による封止を開始することによって前記圧力調整用穴を塞ぎ、前記ダンパー室に前記加熱された気体を封入することを特徴とする前記9記載のダンパー部材の製造方法。
11.
前記圧力調整用穴は、前記可撓膜とは反対側の面に配置されていることを特徴とする前記9又は10記載のダンパー部材の製造方法。
12.
ホットプレートの上面に前記可撓膜側の面を配置させた状態で、前記ダンパー室の気体を加熱することを特徴とする前記9、10又は11記載のダンパー部材の製造方法。
13.
加熱時の前記可撓膜側の面と前記ホットプレートとの間の距離を、3mm以下に保持することを特徴とする前記12記載のダンパー部材の製造方法。
14.
前記封止部材は熱硬化型樹脂であり、前記ダンパー室の気体を加熱する際の熱を利用して該封止部材を硬化させることを特徴とする前記9〜13の何れかに記載のダンパー部材の製造方法。
15.
前記圧力調整用穴は、直径3mm以下であることを特徴とする前記9〜14の何れかに記載のダンパー部材の製造方法。
本発明によれば、ダンパー効果を発揮しつつ、使用時にダンパー面が圧力室へのインク供給を妨げることのないダンパー部材を搭載したインクジェットヘッドを提供することができる。
また、本発明によれば、ダンパー効果を発揮しつつ、使用時にダンパー面が圧力室へのインク供給を妨げることのないダンパー部材が搭載されたインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を提供することができる。
また、本発明によれば、ダンパー効果を発揮しつつ、使用時にダンパー面が圧力室へのインク供給を妨げることのないダンパー部材を容易に製造することのできるダンパー部材の製造方法を提供することができる。
本発明に係るインクジェットヘッドの第1の実施形態を示す分解斜視図 図1中の(ii)−(ii)線に沿って切断したインクジェットヘッドの断面図 ダンパー部材の断面図 隣り合う圧力室の列におけるインク入口間の距離を説明する図 脚部を突設したダンパー部材の一態様を示す斜視図 ダンパー部材の製造工程を説明する図 ダンパー部材の製造工程を説明する図 ダンパー部材の製造工程を説明する図 ダンパー部材の製造工程を説明する図 ダンパー部材の製造工程を説明する図 本発明に係るインクジェットヘッドの第2の実施形態を示す断面図 本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す斜視図 インクジェットヘッドユニットの一例を示す斜視図
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
(インクジェットヘッドの第1の実施形態)
図1は本発明に係るインクジェットヘッドの第1の実施形態を示す分解斜視図、図2は図1中の(ii)−(ii)線に沿って切断したインクジェットヘッドの断面図、図3はダンパー部材の断面図である。
インクジェットヘッド1は、図1中の下から順に、ノズルプレート11、ヘッドチップ12、基板13、インクマニホールド14を有し、これらが互いに接合されることによって構成されている。インクマニホールド14の内側の共通インク室141にはダンパー部材15が配置されている。
本実施形態に示すヘッドチップ12は六面体形状であり、本発明における圧力室であるチャネル121が複数配列されている。各チャネル121は、ヘッドチップ12のノズルプレート11側の面と基板13側の面とに亘ってストレート状に貫通するように形成されている。複数のチャネル121は、図1中のX方向に沿って並設されることによって1列のチャネル列を形成している。そして、このチャネル列がX方向と交差するY方向に沿って複数並設されることによって、複数のチャネル列を形成している。
ここでは7つのチャネル121でX方向に延びる1列のチャネル列が形成され、このチャネル列がY方向に4列並設されたヘッドチップを例示している。しかし、本発明において1列のチャネル121の数は問わない。
Y方向に並設されるチャネル列の数は2列以上であればよく、4列に限定されない。本発明は、ダンパー部材15によって、1つのチャネル列で発生した圧力波が、共通インク室141を介して隣りのチャネル列に影響を与えるクロストークの問題を防止する。また、3列以上のチャネル列を有するインクジェットヘッドを使用する場合、1つのチャネル列で発生した圧力波がその両隣りのチャネル列に影響を与えることから、クロストークの影響がより顕著となる場合がある。この場合においても本発明を好適に使用することができる。
なお、チャネル列(圧力室の列)とは、インクジェットヘッド1と被記録材との一方向の相対的な移動時に被記録材に所定の幅で記録される画像の記録幅を形成するチャネル121(圧力室)の集合のことである。記録幅は、例えば、インクジェットヘッド1が被記録材に対して固定配置され、被記録材を一方向に搬送させながら画像記録を行うものである場合、この被記録材の搬送時に形成される画像の幅である。インクジェットヘッド1におけるチャネル列の配列方向であるX方向は、この被記録材に形成される画像の記録幅の幅方向と平行な方向に限らず、記録幅に対して斜めに交差する方向でもよい。
また、インクジェットヘッド1と被記録材との相対的な移動は、インクジェットヘッド1を固定配置させ、被記録材を搬送させる態様の他、例えば、インクジェットヘッド1を被記録材の幅方向に沿って走査移動させて画像記録を行い、一走査移動毎に被記録材をインクジェットヘッド1の走査移動方向と交差する方向に移動させる態様や、被記録材を固定配置させ、インクジェットヘッド1を被記録材の幅方向に沿って走査移動させて画像記録を行い、一走査移動毎にインクジェットヘッド1を走査移動方向と交差する方向に移動させる態様等であってもよい。
ヘッドチップ12は、各チャネル列において隣り合うチャネル121、121の間を仕切る隔壁122の少なくとも一部が、分極処理された圧電素子によって形成されている。各隔壁122の両面には駆動電極(図示せず)が形成されている。隔壁122は、その両面の駆動電極に所定電圧の駆動信号が印加されることによってせん断変形する。これによって、一対の隔壁122、122に挟まれるチャネル121は、容積が膨張、収縮するように変化し、チャネル121内のインクに吐出のための圧力を付与する。
ノズルプレート11には複数のノズル111が形成されている。各ノズル111は、チャネル121のインク出口121aと連通している。隔壁122の変形によって吐出のための圧力が付与されたチャネル121内のインクは、インク出口121aを通ってノズル111から吐出される。なお、インク出口121aは、ヘッドチップ12における図2中の下側のチャネル121の開口部である。
基板13は、ヘッドチップ12との接合面よりも大きな面積を有する平板状の薄板であり、例えばガラス、セラミックス、シリコン、合成樹脂等によって形成されている。基板13のヘッドチップ12側の面に、ヘッドチップ12の各駆動電極と電気的に接続される不図示の配線が形成されている。ヘッドチップ12から張り出した基板13の領域は、この配線と駆動回路(図示せず)との間を電気的に接続するFPC等の外部配線部材(図示せず)の接続部として機能している。
また、基板13には、ヘッドチップ12のチャネル121にそれぞれ対応する貫通孔131が形成されている。すなわち、ヘッドチップ12のチャネル121と同様、図1中のX方向に沿って7個の貫通孔131が並設されて1つの列が形成され、この列がY方向に沿って4列形成されている。
チャネル121の内部は、それと対応する貫通孔131と連通している。貫通孔131のヘッドチップ12側の開口部は、チャネル121の開口部と同一形状となるように形成されている。各貫通孔131は、共通インク室141内に向けて開口しており、共通インク室141のインクをチャネル121内に流入させる個別のインク流路を構成している。従って、各貫通孔131の共通インク室141側の開口部は、それに対応するチャネル121のインク入口131aを構成している。
インクマニホールド14は、一面が開口する箱型に形成され、この開口を塞ぐように基板13と接合されている。これにより、インクマニホールド14の内側に、インクを吐出させる全てのチャネル121に共通にインクを供給する共通インク室141が形成される。インクマニホールド14は、インク流入口142からインクを流入させ、インク流出口143から外部に排出させるようになっている。
ダンパー部材15は、ダンパーフレーム151と、圧力波を緩衝するダンパー面として機能する可撓膜152とを有し、これらによって画成されるダンパー室153に空気等の気体が封入されている。ダンパーフレーム151は、剛性を有する部材によって、可撓膜152が張設される面が開口した薄い箱型に形成されている。可撓膜152が張設される面は、少なくともインク入口131aに対向する面にあればよい。ここでは六面体からなるダンパー部材15の6つの面のうち、インク入口131aに対向する1つの面のみに可撓膜152が張設されたダンパー部材15を例示している。
可撓膜152は、基板13に開口している全てのインク入口131aを覆うことができる大きさを有しており、ダンパーフレーム151に接着剤によって接着されることによって、ダンパー部材15の一つの面を構成している。可撓膜152としては、例えばPI(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂フィルムを用いることができる。可撓膜152の厚みは、圧力波を減衰させて緩衝するダンパー効果を効果的に発揮させる観点から、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。
ダンパー部材15は、可撓膜152側の面がインク入口131aと向かい合うように共通インク室141内に配置されている。これにより、チャネル121からインク入口131aを介して共通インク室141に伝播する圧力波を、ダンパー面である可撓膜152に当て、ダンパー室153に封入されている気体の圧縮によって可撓膜152が撓み変形することによって吸収する。
ダンパー部材15は、図1に示すように、基板13に開口している全てのインク入口131aの配列領域よりも広い領域を覆うことができる大きさを有しているが、インクマニホールド14の開口面積よりは小さい。このため、図2に示すように、ダンパー部材15の周囲と共通インク室141の内壁面との間に、インク入口131aへのインク流路141aが確保されている。また、ダンパー部材15は、基板13との間にインク流路141bとなる所定の間隔をおいて配置されている。
図3に示すように、ダンパーフレーム151には、ダンパー室153をダンパー部材15の外部と連通させる圧力調整用穴154が設けられている。圧力調整用穴154の具体的な機能については後述するが、この圧力調整用穴154を用いることによって、ダンパー部材15の製造時にダンパー室153の内部圧力が所定の圧力となるように調整することが容易となる。
ダンパー部材15は、圧力調整用穴154が封止部材155によって封止されている。封止部材155は、圧力調整用穴154を塞ぐことができるものであれば特に問わず、例えば接着剤、粘着テープ等を用いることができる。また、圧力調整用穴154を溶着によって封止するようにしてもよい。本実施形態に示す封止部材155には熱硬化型樹脂を用いている。
そして、ダンパー部材15は、圧力調整用穴154が封止部材155によって封止されることによりダンパー室153に封入された気体が、常温では収縮して可撓膜152の面がインク入口131a側とは反対側に凹んだ湾曲面を形成し、共通インク室141内のインクが常温よりも高い使用温度にあるときは膨張して可撓膜152の面が略平坦面又はインク入口131a側とは反対側に凹んだ湾曲面を形成している。なお、常温とは25℃を示す。
図3中の実線で示す可撓膜152は、ダンパー室153の気体が膨張して平坦面を形成した状態を示し、1点鎖線で示す可撓膜152は、ダンパー室153の気体が膨張して凹んだ湾曲面を形成した状態を示している。但し、ダンパー室153の気体が膨張した時の凹んだ湾曲面は、ダンパー室153の気体が常温の時の凹んだ湾曲面よりも凹み具合が小さい。
ここで、インクの使用温度とは、印字動作のためにノズル111からインクを射出する際の共通インク室141内のインクの温度のことである。具体的な温度はインクの種類等によって異なるが、常温よりも高い温度に設定される。
共通インク室141内のインクを使用温度に設定する手段としては、図示しないが、例えばマニホールド14の表面、壁内部又は共通インク室141内にヒーターを設け、共通インク室141内に貯留されているインクを直接加温する手段、ヒーターによって加温されたインクタンク内のインクを共通インク室141に供給する手段、インクジェットヘッド1にインクを供給する供給管にヒーターを設け、インクの供給過程で加温されたインクを共通インク室141に供給する手段等が挙げられる。また、インクジェットヘッド1は圧電素子(隔壁122)の駆動によって発熱し、インクの温度を上昇させるため、圧電素子の発熱によって共通インク室141内のインクが使用温度とされる場合もある。
このようにダンパー部材15は、圧力調整用穴154が封止部材155によって封止されてダンパー室151に封入された気体が、常温では収縮して可撓膜152の面が凹んだ湾曲面を形成し、共通インク室141内のインクが常温よりも高い使用温度にあるときは膨張して可撓膜152の面が略平坦面又は凹んだ湾曲面を形成することにより、インクジェットヘッド1の駆動時において可撓膜152がインク入口131a側に凸状に大きく膨らむことがなく、可撓膜152と基板13との間にインク流路141bを確保することができる。すなわち、ダンパー部材15は、ダンパー効果を発揮しつつ、使用時にチャネル121へのインク供給を妨げることがない。
なお、全てのチャネル121に対して均等にダンパー効果を発揮する観点から、ダンパー部材15がインクの使用温度の環境下にあるときの可撓膜152の面は平坦面であることが好ましい。
ダンパー室153の具体的な内部圧力は、常温かつ1気圧の条件下で50kPa以上大気圧未満となるように減圧されていることが好ましい。これにより、可撓膜152がインク流路141bを狭めてしまうことのない効果を発揮しつつ、ダンパー効果を良好に得ることができる。なお、大気圧とは、常温かつ1気圧の条件下で測定した際に1気圧となる気圧である。
圧力調整用穴154はダンパー部材15の一部にあればよい。例えば、ダンパー部材15の側面に設けられていても良いことは言うまでもない。本実施形態に示す圧力調整用穴154は、可撓膜152と反対側のダンパーフレーム151の面に形成されているが、可撓膜152に設けることもできる。しかし、圧力調整用穴154をダンパーフレーム151側に設けることにより、ダンパー部材15のインク流路141b側の面に封止部材155による凸状の部位が形成されることがないため、インク入口131aへのインクの流れを阻害するおそれがない。また、可撓膜152によるダンパー効果を損なうおそれもない。
封止部材155によって封止された圧力調整用穴154は、図1、図2に示すように、基板13に開口するインク入口131aの配列領域の外側に対応する部位に配置されていることが好ましい。すなわち、基板13の面13aに対して垂直方向からダンパー部材15を投影したときに、圧力調整用穴154及び封止部材155が配置される部位は、インク入口131aの配列領域よりも外側に位置する。
これにより、粘度が低下した硬化前の熱硬化型樹脂が圧力調整用穴154から可撓膜152の裏面に滴下しても、インク入口131aの配列領域からは外れているため、滴下した熱硬化型樹脂が可撓膜152によるダンパー効果に与える影響を少なくできる。また、圧力調整用穴154を可撓膜152に設けたとしても、封止部材155はインク入口131aの配列領域から外れているため、封止部材155がインク入口131aへのインクの流れを阻害するおそれを低減できると共に、可撓膜152によるダンパー効果を大きく損なうおそれも低減できる。
ダンパー部材15は、インク流路141bを確保しつつ可撓膜152によるダンパー効果を効率良く発揮させる観点から、インク入口131aと可撓膜152との離間距離Dが、隣り合うチャネル列同士のインク入口131a、131a間の離間距離dよりも小さくなるように配置されることが好ましい。
離間距離Dは、インク入口131aからダンパー部材15の可撓膜152に向けた垂直の距離である。この離間距離Dは、図4に示すように、Y方向に隣り合うチャネル列におけるインク入口131a、131a間の離間距離をそれぞれd1、d2、d3とするとき、D<d1、且つ、D<d2、且つ、D<d3であることが好ましい。
具体的には、ダンパー部材15は、離間距離Dが、隣り合うチャネル列のインク入口131a、131a間の距離d1、d2、d3のいずれとの比較でも、その距離d1、d2、d3よりも小さくなるように共通インク室141内に配置されることである。離間距離d1、d2、d3は、1つのチャネル列内のインク入口(これをインク入口Aとする。)と、その隣りのチャネル列内においてインク入口Aに最も近接したインク入口(これをインク入口Bとする。)との間の最短距離である。この離間距離d1、d2、d3は、一般には、隣り合うチャネル列のインク入口A、B間に形成される列間間隙の幅となる。離間距離d1、d2、d3は同一の値でなくてもよい。
これにより、インク入口131aからダンパー部材15を見た場合、隣りのチャネル列のインク入口131aまでの距離よりもダンパー部材15の可撓膜152までの距離の方が近くなるため、チャネル121からインク入口131aを通って共通インク室141内に伝播した圧力波のうち、ダンパー部材15に向けて直進する成分を直ちに可撓膜152に吸収させて減衰させることができる。従って、隣り合うチャネル列間のクロストークの影響を低減する効果を高めることができる。
本実施形態に示すインクジェットヘッド1は、図2中に破線で示す直線Lのように、インク入口131a、インク出口121a及びノズル111が一直線上に配置され、この直線Lがダンパー部材15の可撓膜152と交差している。この構成によれば、チャネル121内で発生してインク入口131aからダンパー部材15に向かう圧力波の成分を可撓膜152で直接吸収させて減衰させることができるため、圧力波の吸収効果が最も高く、クロストークの影響を低減する効果が顕著に得られるために好ましい。
ダンパー部材15をインク入口131aから離間距離Dをおいて配置させる手段は特に問わない。例えば図5に示すように、ダンパー部材15に基板13側に突出する適宜数の脚部157を突設しておくことが挙げられる。この脚部157を基板13の面13aに当接させれば、脚部157の突出高さによって離間距離Dを容易に規定することができる。脚部はダンパーフレーム151の側面に設けてもよい。
その他、図示しないが、脚部を基板13の面13a上に突設したり、あるいは、ダンパー部材15と共通インク室141の内壁面との間に支柱を架け渡したりすることにより、ダンパー部材15を支持するようにしてもよい。
ダンパー部材15は、可撓膜152によって全てのインク入口131aを覆うことができる大きさに形成されている。すなわち、図1に示すように、インク入口131aが存在する基板13の面13aに対して垂直な方向からダンパー部材15を投影したとき、ダンパー部材15がインク入口131aの全てを包含している。これにより、全てのチャネル121からの圧力波をダンパー部材15によって減衰させることができる。また、チャネル121毎に圧力波の吸収性能がばらつくことを低減できる。このため、クロストークの影響の低減効果を各チャネル121間で均一化できるために好ましい態様である。
さらに、ダンパー部材15は、可撓膜152が平坦面であると仮定した場合に、該可撓膜15が基板13の面13aと平行であると、全てのチャネル121に対して均等にダンパー効果を発揮することができるために好ましい。
しかし、本発明において、ダンパー部材15は、少なくとも一つのインク入口131aと可撓膜152との離間距離Dが、当該インク入口131aと、当該インク入口131aに連通するチャネル121を含むチャネル列の隣りのチャネル列におけるインク入口131aとの間の離間距離よりも小さくなる位置に配置されていれば、当該インク入口131aからの圧力波をダンパー効果によって減衰させ、隣接チャネル121へ与えるクロストークの影響を低減する効果を得ることができる。
もちろん、ダンパー部材15によって隣りのインク入口131aに到達する前に圧力波が減衰されるインク入口131aの数が多い程好ましい。すなわち、インク入口131aとダンパー部材15の可撓膜152との離間距離Dが、隣りのチャネル列におけるインク入口131aとの間の距離よりも小さくなるように配置されるインク入口131aの数の割合が、全てのインク入口131aの数の90%以上となるようにダンパー部材15が配置されることが、クロストークの影響を低減する観点からは好ましい。
なお、ダンパー部材15の可撓膜152が、インクの使用温度の環境下で凹んだ湾曲面を形成している場合(図3中の1点鎖線で示す場合)、インク入口131aと可撓膜152との離間距離Dは、可撓膜152の最も凹んだ部位と、この部位に最も近いインク入口131aとの間の距離によって規定することが好ましい。これによって、どのインク入口131aでも、それと隣接するチャネル列のインク入口131aとの間の距離よりも可撓膜152までの距離の方が近くなり、隣接する列間のクロストークの影響を低減する効果をより顕著に得ることができる。
ダンパー部材15のダンパーフレーム151は剛性を有する材質によって形成されるが、少なくとも一部が金属で形成されていることが好ましい。一般に、金属はインク(液体)よりも熱伝導率が高いため、共通インク室141内のインクの温度分布を素早く均一化することができる。金属としては、例えばアルミニウム、銅、ステンレス等の熱伝導率が良好な金属を好ましく使用することができる。このような金属は、ダンパーフレーム151の一部の壁面に使用されていてもよいし、ダンパーフレーム151の全体に使用されていてもよいが、共通インク室141内のインクと直に接するように、少なくともダンパーフレーム151の表面に露出していることが好ましい。
本発明において使用されるインクは特に問わないが、例えばゲルUVインクやセラミックインク等のように、ヒーター等の加温手段によってインクを所定温度まで加温し、インクの粘度を吐出に適した粘度まで低下させる必要のあるインクを使用することが好ましい。インクの種類によって異なるが、例えば使用温度が60℃以上90℃以下であるゲルUVインク等のインクは、使用温度が他のインクに比べて高温になり、ダンパー室153の気体が大きく膨張し易いため、本発明によって顕著な効果が得られるからである。
本実施形態では、共通インク室141に1つのダンパー部材15を配置したが、共通インク室141に複数のダンパー部材15を配置してもよい。また、ダンパー部材15の平面形状は矩形状に限定されず、円形状、楕円形状、多角形状等任意である。
(ダンパー部材の製造方法)
次に、かかるダンパー部材15の製造方法の一例について、図6〜図9を用いて説明する。
まず、予め一部に圧力調整用穴154が形成されたダンパーフレーム151を用意する。そして、ダンパーフレーム151の開口縁151aに接着剤156を塗布した後、可撓膜152を平坦になるように貼り付ける(図6)。接着剤156は特に限定されないが、本実施形態では熱硬化型接着剤を使用している。
次いで、可撓膜152を貼り付けたダンパーフレーム151をベーク炉100内に配置し、接着剤156の硬化温度まで加熱することにより接着剤156を硬化させる(図7)。ベーク炉100を用いることにより、接着剤156を効率良く硬化させることができる。
接着剤156が硬化したら、可撓膜152付きのダンパーフレーム151をベーク炉100から取り出し、その後、加熱手段を用いて、ダンパー室153の気体を共通インク室141内のインクの使用温度となるように加熱する(図8)。
加熱手段としてはホットプレート200を用いることが好ましい。ホットプレート200の表面200aは平板状であるため、ダンパー室151の気体を全体に亘って直接且つ均一に効率良く加熱することができる。このため、製品毎の性能のばらつきも小さくできる。
ダンパー室153の気体の加熱は、ホットプレート200の表面200aに可撓膜152側の面を向け、ダンパー室153が圧力調整用穴154によってダンパーフレーム151の外部と連通した状態で、可撓膜152を介して行う。このとき、ダンパー室153内の気体は膨張するが、圧力調整用穴154からダンパー室153の外部に放出されるため、可撓膜152は膨らんだり剥がれたりすることはなく、平坦面を維持する。
その後、加熱によりダンパー室153内の気体がインクの使用温度に達したときに、圧力調整用穴154に対して封止部材155による封止作業を開始し、圧力調整用穴154を塞ぎ、ダンパー室153に加熱された気体を封入する(図9)。
なお、加熱時のダンパー室153内の気体の温度をインクの使用温度以上とすることにより、ダンパー部材15がインクの使用温度の環境下にあるときに、可撓膜152の面は略平坦面か又は凹んだ湾曲面を形成するのでインク流路141bを狭めてしまうことがない。
ここで、略平坦面とは、ダンパー室153内の気体の温度がインクの使用温度の±10%の下で圧力調整用穴154の封止を完了した時に形成される面である。
より好ましくは、ダンパー部材15がインクの使用温度の環境下にあるときの可撓膜152の面を平坦面とすることである。平坦面とは、ダンパー室153内の気体の温度がインクの使用温度の±5%の下で圧力調整用穴154の封止を完了した時に形成される面である。平坦面とすることで、全てのチャネル121に対して均等にダンパー効果を発揮できるのでより好ましい。
本実施形態では、可撓膜152と反対側のダンパーフレーム151の面に圧力調整用穴154が配置されているため、可撓膜152側をホットプレート200の表面200aに対面させたまま容易に封止作業を行うことができる。また、熱硬化型樹脂からなる封止部材155をホットプレート200の熱をそのまま利用して硬化させることができるため、封止作業も簡略化できる。
圧力調整用穴154の封止は、ダンパー室153の気体の温度が使用温度よりも高い時に開始する場合に限定されず、例えばインクの使用温度よりも低い温度のときに開始してもよい。封止部材155である熱硬化型樹脂が未硬化であれば、ダンパー室153の気体がさらに加熱されても、未硬化の熱硬化型樹脂を介して圧力を逃がすことができるので、封止開始のタイミングは特に限定されない。なお、収率の観点からは、使用温度に達した時に圧力調整用穴154の封止を開始することが好ましい。
ダンパー室153内の気体がインクの使用温度に達したかどうかは、例えば、ダンパーフレーム151の近傍に温度計(図示せず)を配置し、ダンパーフレーム151の周囲の環境温度を測定することによって判断することができる。
圧力調整用穴154の大きさは、封止部材155による封止作業性を良好にする観点から、直径3mm以下とすることが好ましい。特に本実施形態の示すように封止部材155として熱硬化型樹脂を用いる場合は、塗布した未硬化の熱硬化型樹脂が圧力調整用穴154からダンパー室153内に入り込んでしまうことを防止する観点から、直径1mmとすることが好ましい。穴形状は円形に限らないが、円形でない場合、圧力調整用穴154の直径は、穴の開口面積と同じ面積の円に置き換えた場合のその円の直径とする。
封止部材155による圧力調整用穴154の封止は、ホットプレート200による加熱状態を維持したまま行われる。封止部材155としての熱硬化型樹脂が硬化する前にダンパー室153内の気体の温度が低下すると、気体の収縮によって圧力調整用穴154から熱硬化型樹脂を引き込んでしまい、可撓膜152の裏面に熱硬化型樹脂による膜を形成してしまうおそれがあるためである。この場合、可撓膜152とホットプレート200の表面200aとの間の距離を3mm以下に保持することにより、ダンパー室153内の気体の温度変化を極力抑えるようにすることが好ましい。
封止部材155である熱硬化型樹脂が硬化することにより圧力調整用穴154が封止され、ダンパー室153内に気体が封入されたダンパー部材15が得られる。圧力調整用穴154の封止は、ダンパー室153内の気体がインクの使用温度に達したときに行われるため、このダンパー部材15が常温環境下にあるときは、ダンパー室153内の気体は収縮し、可撓膜152の面は凹んだ湾曲面を形成する。一方、ダンパー部材15がインクの使用温度にあるときは、ダンパー室153内の気体は膨張するが、可撓膜152の面は図3に示すように略平坦面か又は凹んだ湾曲面を形成する程度であり、インク入口131a側に凸状に大きく膨らんでインク流路141bを狭めてしまうことがない。
かかる製造方法によれば、ダンパー室153内の気体を加熱して、該気体がインクの使用温度に達したときに圧力調整用穴154を封止部材155によって封止するだけで、ダンパー室153内の気体の圧力調整を極めて簡単に行うことができる。従って、ダンパー効果を発揮しつつ、共通インク室141内のインクが使用温度となっても可撓膜152がチャネル121へのインク供給を妨げることのないダンパー部材15を容易に製造することができる。
なお、以上の製造方法では、加熱によりダンパー室153内の気体がインクの使用温度に達したときに、圧力調整用穴154に対する封止作業を開始するようにしたが、特に封止部材155として熱硬化型樹脂を使用する場合は、ダンパー室153内の気体がインク使用温度に達する前に封止作業を開始するようにしてもよい。この場合、封止部材155による封止が完了しない間(熱硬化型樹脂が未硬化の間)に加熱が継続され、膨張した気体が未硬化の熱硬化型樹脂を押し退けて外部に放出されることで、封止完了時点(熱硬化型樹脂の硬化完了時点)で、ダンパー室153にインクの使用温度に達した気体を封入することができる。
また、以上の製造方法では、接着剤156を硬化させる際、ベーク炉100を使用したが、図10に示すように、ホットプレート200上に配置させた可撓膜152付きのダンパーフレーム151をカバー300で覆うようにしてもよい。ホットプレート200の熱によって、カバー300内部の温度を硬化条件温度まで昇温させることができるので、ベーク炉100を使用しなくても効率良く接着剤156を硬化させることができる。また、接着剤硬化後に直ちにダンパー室153の気体を加熱する工程に移行できるため、製造工程も簡略化できる。
(インクジェットヘッドの第2の実施形態)
図11は本発明に係るインクジェットヘッドの第2の実施形態を示す断面図である。
このインクジェットヘッド2は、ヘッド基板21と配線基板22とが接着樹脂層23によって積層一体化されている。配線基板22の上面には、上述したインクマニホールド14と同様の箱型形状のインクマニホールド24が接合されている。このインクマニホールド24と配線基板22との間で、内部にインクが貯留される共通インク室241が形成されている。242はインク流入口、243はインク流出口である。そして、この共通インク室241内にダンパー部材25が配置されている。
ヘッド基板21は、図中下層側から、Si(シリコン)基板によって形成されたノズルプレート211、ガラス基板によって形成された中間プレート212、Si(シリコン)基板によって形成された圧力室プレート213、SiO薄膜によって形成された振動板214と有している。ノズルプレート211には下面にノズル211aが開口している。
圧力室プレート213には、インクを収容する圧力室213aが形成されている。圧力室213aの上壁は振動板214によって構成され、下壁は中間プレート212によって構成されている。中間プレート212には、圧力室213aの内部とノズル211aとを連通する連通路212aが貫通形成されている。
振動板214の上面には、各圧力室213aに1対1に対応してアクチュエータ215が積層されている。アクチュエータ215は、薄膜PZT等の圧電素子からなるアクチュエータ本体が、駆動電極としての上部電極と下部電極とで挟まれた構造をしており、その下部電極側が振動板214の上面に配置されている。
配線基板22は、各アクチュエータ215に対して所定電圧の駆動信号を印加するための配線が形成された基板であり、その端部にFPC等の外部配線部材26がACF(異方性導電フィルム)によって電気的に接続されている。
接着樹脂層23は、例えば熱硬化性の感光性接着樹脂シートによって形成され、ヘッド基板21と配線基板22との間に介在されることによって、両基板21、22を積層一体化している。この接着樹脂層23によって両基板21、22の間には該接着樹脂層23の厚み分の間隔が設けられている。接着樹脂層23は、アクチュエータ215及びその周囲に相当する領域が露光、現像によって除去されている。各アクチュエータ215は、この接着樹脂層23が除去された空間内にそれぞれ収容されている。
接着樹脂層23には、上下に貫通する貫通孔231が各圧力室213aの数に対応して形成されている。各貫通孔231の一端(上端)は、配線基板22に形成されているインク供給路221と連通し、他端(下端)は、振動板214に形成された開口部214aを通して圧力室213aの内部と連通している。インク供給路221は配線基板22の上面に開口している。この開口部は共通インク室241内に対面しており、共通インク室241内のインクを各圧力室213a内に供給するインク入口221aとして機能している。
このインクジェットヘッド2は、共通インク室241からインク入口221aを介して圧力室213a内にインクが供給される。そして、外部配線部材26からアクチュエータ215に駆動信号が印加されると、アクチュエータ215の変形動作によって振動板214が振動し、圧力室213a内に吐出のための圧力変化が付与され、該圧力室213a内のインクが連通路212aを通ってノズル211aから吐出される。
このインクジェットヘッド2は、複数の圧力室213aが並設されることによって圧力室213aの列を形成し、その圧力室213aの列が複数配列されることによって複数列、好ましくは3列以上の圧力室213aを備えている。このため、各列の圧力室213aに対応するインク入口221aが共通インク室241内に臨んでいる。
ダンパー部材25は、インク入口221aに近接して共通インク室241内に配置されている。このダンパー部材25も、上述した第1の実施形態におけるダンパー部材15と同様に、ダンパーフレーム251と可撓膜252とを有し、これらダンパーフレーム251と可撓膜252とによってダンパー室253が画成されている。ダンパーフレーム251には、圧力調整用穴254が形成され、封止部材255によって封止されている。これら圧力調整用穴254及び封止部材255は、上述した第1の実施形態における圧力調整用穴154及び封止部材155と同じ機能を有する。その他のダンパー部材25の具体的構成及び製造方法は、上述したダンパー部材15の構成及び製造方法と同一であるため、その詳細については第1の実施形態におけるダンパー部材15及びその製造方法の説明を援用し、ここでは省略する。
このインクジェットヘッド2においても、圧力室213aからインク入口221aを通って共通インク室241内に伝播した圧力波をダンパー部材25によって吸収することができる。ダンパー室253内の気体は、ダンパー部材15と同様に、共通インク室241内のインクが使用温度であるときに可撓膜252がインク入口221a側に凸状に大きく膨らんで突出することがないように封入されていることで、高温インク使用時でもダンパー効果を発揮しつつ、可撓膜252が圧力室213aへのインク流路を狭めてしまうことがない効果が得られる。
(インクジェット記録装置)
本発明に係るインクジェット記録装置は、以上の第1の実施形態又は第2の実施形態によって説明したインクジェットヘッド1又は2を備えてなる。
以下、図12を参照して、インクジェット記録装置の好ましい一例を説明する。なお、以下に示すインクジェット記録装置は、ラインヘッドを用いて記録媒体の1方向の搬送のみで描画を行う1パス描画方式の実施形態を例示するが、本発明に係るインクジェットヘッド1、2は適宜の描画方式のインクジェット記録装置に適用可能であり、例えばスキャン方式やドラム方式を用いた描画方式を採用してもよい。
また、以下の説明では、記録媒体Kの搬送方向を前後方向、記録媒体Kの搬送面において当該搬送方向に直交する方向を左右方向、前後方向及び左右方向に垂直な方向を上下方向として説明する。
インクジェット記録装置3は、プラテン31、搬送ローラー32及びラインヘッド41、42、43、44を備えている。
プラテン31は、上面に被記録材である長尺状の記録媒体Kを支持しており、搬送ローラー32が駆動されると、記録媒体Kを搬送方向(前後方向)に搬送する。
ラインヘッド41、42、43、44は、記録媒体Kの搬送方向の上流側から下流側にかけて、搬送方向に直交する幅方向(左右方向)に並列して設けられている。そして、各ラインヘッド41、42、43、44の内部には、それぞれ後述するインクジェットユニット5が少なくとも一つ設けられており、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)のインクを記録媒体Kに向けて吐出する。
図13に、インクジェットヘッドユニット5の一例を示す。
インクジェットヘッドユニット5は、上述したインクジェットヘッド1又は2を保持部51上に複数個(図13では6個)搭載されてなる。保持部51は、インクジェットヘッド1又は2の底面(ノズル面)が保持部51の開口部から露出するように、インクジェットヘッド1又は2を着脱可能に保持している。また、保持部51は、インクジェットヘッド1又は2を全体として千鳥格子状となるように保持している。
このインクジェットヘッドユニット5が、各ラインヘッド41、42、43、44の内部にそれぞれ少なくとも一つ設けられることにより、インクジェットヘッドユニット5の幅方向(左右方向)に亘る記録幅で描画を行うことができるようになっている。
このようなラインヘッド41、42、43、44によって1パス描画を行うインクジェット記録装置3では、一般に高速駆動による高速描画が行われるため、クロストークの影響が大きく、圧力室の列間でのクロストークの影響が問題となり易い。このため、本発明に係るインクジェットヘッド1又は2を適用することにより、ダンパー効果を発揮しつつ、使用時にダンパー面が圧力室へのインク供給を妨げることのないダンパー部材が搭載されたインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を提供することができる。
1:インクジェットヘッド
11:ノズルプレート
111:ノズル
12:ヘッドチップ
121:チャネル(圧力室)
121a:インク出口
122:隔壁
13:基板
13a:面
131:貫通孔
131a:インク入口
14:インクマニホールド
141:共通インク室
141a:インク流路
142:インク流入口
143:インク流出口
15:ダンパー部材
151:ダンパーフレーム
151a:開口縁
152:可撓膜
153:ダンパー室
154:圧力調整用穴
155:封止部材
156:接着剤
157:脚部
2:インクジェットヘッド
21:ヘッド基板
211:ノズルプレート
211a:ノズル
212:中間プレート
212a:連通路
213:圧力室プレート
213a:圧力室
214:振動板
214a:開口部
215:アクチュエータ
22:配線基板
221:インク供給路
221a:インク入口
23:接着樹脂層
231:貫通孔
24:インクマニホールド
241:共通インク室
242:インク流入口
243:インク流出口
25:ダンパー部材
251:ダンパーフレーム
252:可撓膜
253:ダンパー室
254:圧力調整用穴
255:封止部材
26:外部配線部材
3:インクジェット記録装置
31:プラテン
32:搬送ローラー
41、42、43、44:ラインヘッド
5:インクジェットユニット
51:保持部
100:ベーク炉
200:ホットプレート
200a:表面
300:カバー
K:記録媒体

Claims (15)

  1. 2列以上配列された圧力室と、
    前記圧力室のインク入口を介して全ての前記圧力室と連通する共通インク室と、
    前記共通インク室内に配置されたダンパー部材とを有するインクジェットヘッドであって、
    前記ダンパー部材は、ダンパーフレームと少なくとも前記インク入口に対向する面に張設された可撓膜とによってダンパー室が画成され、該ダンパー室を外部と連通させるための圧力調整用穴を有していると共に、前記圧力調整用穴が封止部材によって封止されていることにより前記ダンパー室に封入された気体が、常温では収縮して前記可撓膜の面が凹んだ湾曲面を形成してなり、前記共通インク室内のインクが常温よりも高い使用温度にあるときは膨張して前記可撓膜の面が略平坦面又は凹んだ湾曲面を形成してなることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記圧力調整用穴は、前記ダンパー部材において、前記可撓膜とは反対側の面に配置されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記圧力調整用穴は、前記ダンパー部材において、前記インク入口の配列領域の外側に対応する部位に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記可撓膜の厚みは、10μm以上150μm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記ダンパーフレームは、少なくとも一部が金属で形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記ダンパー部材は、前記インク入口と前記可撓膜との離間距離が、隣り合う前記圧力室の列同士の前記インク入口間の離間距離よりも小さくなるように配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記使用温度であるときに前記可撓膜の面が平坦面又は凹んだ湾曲面を形成してなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置。
  9. インクジェットヘッドの複数の圧力室のインク入口を介して全ての前記圧力室と連通する共通インク室内に配置され、ダンパーフレームと少なくとも前記インク入口に対向する面に設けられた可撓膜とによって画成されるダンパー室に封入された気体が、常温では収縮して前記可撓膜の面が凹んだ湾曲面を形成してなり、前記共通インク室内のインクが常温よりも高い使用温度にあるときは膨張して前記可撓膜の面が略平坦面又は凹んだ湾曲面を形成してなるダンパー部材の製造方法であって、
    前記ダンパーフレームに前記可撓膜を平坦になるように張設して前記ダンパー室を画成すると共に、前記ダンパー室を圧力調整用穴によって外部と連通させた状態で前記ダンパー室の気体を加熱し、その後、前記圧力調整用穴を封止部材によって封止することによって、前記ダンパー室に前記加熱された気体を封入することを特徴とするダンパー部材の製造方法。
  10. 前記ダンパー室を圧力調整用穴によって外部と連通させた状態で前記ダンパー室の気体を加熱し、その後、該気体が前記共通インク室内のインクの使用温度に達したときに、前記封止部材による封止を開始することによって前記圧力調整用穴を塞ぎ、前記ダンパー室に前記加熱された気体を封入することを特徴とする請求項9記載のダンパー部材の製造方法。
  11. 前記圧力調整用穴は、前記可撓膜とは反対側の面に配置されていることを特徴とする請求項9又は10記載のダンパー部材の製造方法。
  12. ホットプレートの上面に前記可撓膜側の面を配置させた状態で、前記ダンパー室の気体を加熱することを特徴とする請求項9、10又は11記載のダンパー部材の製造方法。
  13. 加熱時の前記可撓膜側の面と前記ホットプレートとの間の距離を、3mm以下に保持することを特徴とする請求項12記載のダンパー部材の製造方法。
  14. 前記封止部材は熱硬化型樹脂であり、前記ダンパー室の気体を加熱する際の熱を利用して該封止部材を硬化させることを特徴とする請求項9〜13の何れかに記載のダンパー部材の製造方法。
  15. 前記圧力調整用穴は、直径3mm以下であることを特徴とする請求項9〜14の何れかに記載のダンパー部材の製造方法。
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