JP6446964B2 - 電池用金属端子 - Google Patents

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Description

本発明は、耐電解液性に優れ、金属端子と包装材料の金属箔層との短絡を効果的に抑制することができる電池用金属端子、及び当該電池用金属端子を用いた電池に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る包装材料として、基材層/接着層/バリア層/シーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなフィルム状の包装材料を用いる場合、包装材料の最内層に位置するシーラント層同士を対向させた状態で、包装材料の周縁部をヒートシールにて熱溶着させることにより、包装材料によって電池素子が封止される。包装材料のヒートシール部分からは、金属端子が突出しており、包装材料によって封止された電池素子は、電池素子の電極に電気的に接続された金属端子によって外部と電気的に接続される。すなわち、包装材料のヒートシール部分においては、金属端子がシーラント層に挟持された状態で包装材料の外側に突出するように形成されている。金属端子とシーラント層とは異種材料により形成されているため、金属端子とシーラント層との界面において、電池素子の密封性が低くなりやすい。
このような問題を解消するため、金属端子とシーラント層との界面部分にタブフィルム(接着性フィルム)を配置して、シーラント層との界面部分における密封性の低下を抑制する技術が知られている(例えば特許文献2を参照)。
特開2001−202927号公報 特開2008−277238号公報
例えば、特許文献2に開示されているように、包装材料のシーラント層と金属端子との間にタブフィルムを配置することにより、金属端子と包装材料との密着性が高められ、金属端子と包装材料との界面部分における耐電解液性を高めることができる。
一方、タブフィルムを用いずに、金属端子と包装材料との界面部分における耐電解液性を高める技術については、十分に検討されていない。
また、金属端子の製造過程においては、一般に、金属部材を切断して製造されるが、この切断によって、金属端子の端部にバリと呼ばれる尖った部分が形成される。金属端子のバリが形成された部分が包装材料により挟持された場合、バリが包装材料のシーラント層を突き抜け、金属箔層に到達して、金属端子と金属箔層との間に短絡が生じる場合がある。このような金属端子のバリなどによって生じる、金属端子と包装材料の金属箔層との間の短絡を抑制することも求められている。
このような状況下、本発明は、タブフィルムを用いなくても、金属端子と包装材料との界面部分における耐電解液性を高めることができ、さらに、金属端子と包装材料の金属箔層との短絡を効果的に抑制することができる電池用金属端子を提供することを主な目的とする。
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、電池素子の電極に電気的に接続され、電池素子を封止する包装材料の外側に突出するようにして包装材料に挟持される電池用金属端子であって、当該電池用金属端子が、金属材料により形成された金属部材と、金属部材の表面上であって、金属端子が包装材料に挟持される部分の少なくとも一部に形成された、酸硬化性樹脂を含む酸反応樹脂層とを有することにより、耐電解液性に優れ、金属端子と包装材料の金属箔層との短絡を効果的に抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 電池素子の電極に電気的に接続され、前記電池素子を封止する包装材料の外側に突出するようにして前記包装材料に挟持される、電池用金属端子であって、
前記電池用金属端子は、
金属材料により形成された金属部材と、
前記金属部材の表面上であって、前記金属端子が前記包装材料に挟持される部分の少なくとも一部に形成された、酸硬化性樹脂を含む酸反応樹脂層と、
を有する、電池用金属端子。
項2. 前記酸硬化性樹脂が、酸硬化性フラン樹脂及び酸硬化性フェノール樹脂の少なくとも一方である、項1に記載の電池用金属端子。
項3. 前記酸反応樹脂層が、酸変性ポリオレフィンをさらに含む、項1または2に記載の電池用金属端子。
項4. 前記金属部材の前記包装材料に挟持される部分の表面の少なくとも一部と、前記酸反応樹脂層との間に、化成処理層を有する、項1〜3のいずれかに記載の電池用金属端子。
項5. 前記酸反応樹脂層の厚みが、0.1〜15μmである、項1〜4のいずれかに記載の電池用金属端子。
項6. 前記金属部材が、アルミニウム、ニッケル、銅、またはステンレスにより形成されている、項1〜5のいずれかに記載の電池用金属端子。
項7. 前記化成処理層が、クロメート処理により形成された層である、項1〜6のいずれかに記載の電池用金属端子。
項8. 前記包装材料が、少なくとも、基材層、接着層、金属箔層、及びシーラント層をこの順に有する積層体であり、
前記包装材料の互いに対向する前記シーラント層表面によって挟持される、項1〜6のいずれかに記載の電池用金属端子。
項9. 少なくとも、正極、負極、及び電解質を有する電池素子と、
前記電池素子を封止する包装材料と、
前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記包装材料の外側に突出するようにして前記包装材料に挟持された、項1〜8のいずれかに記載の電池用金属端子と、を備える、電池。
本発明の電池用金属端子は、電池素子の電極に電気的に接続され、電池素子を封止する包装材料の外側に突出するようにして包装材料に挟持される電池用金属端子である。当該電池用金属端子は、金属材料により形成された金属部材と、金属部材の表面上であって、
金属端子が包装材料に挟持される部分の少なくとも一部に形成された、酸硬化性樹脂を含む酸反応樹脂層とを有する。本発明の電池用金属端子が電池に使用された場合、時間の経過と共に金属端子の周辺に浸透してくる酸成分(例えば、電解質と水分とが反応して生成するフッ化水素など)が、電池用金属端子に形成された酸反応樹脂層に到達し、酸反応樹脂層に含まれる酸硬化性樹脂が硬化して、金属端子の酸反応樹脂層が形成されている部分の機械的強度が高められる。よって、本発明の電池用金属端子は、耐電解液性に優れる。さらに、硬化した酸反応樹脂層によって、金属端子のバリも覆われることにより、金属端子の金属部材が表面に露出し難くなり、金属端子と包装材料の金属箔層との短絡を効果的に抑制できる。
また、本発明の電池は、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた電池素子と、当該電池素子を封止する包装材料と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、包装材料の外側に突出するようにして包装材料に挟持された、本発明の金属端子とを備える電池である。このため、本発明の電池においては、耐電解液性に優れ、金属端子と包装材料の金属箔層との短絡が効果的に抑制されている。
本発明の電池の略図的平面図である。 図1の線A−A’における略図的断面図である。 図1の線B−B’における略図的断面図である。 本発明の電池用金属端子の略図的断面図である。 本発明の電池用金属端子を挟持する包装材料の略図的断面図である。
本発明の電池用金属端子は、電池素子の電極に電気的に接続され、電池素子を封止する包装材料の外側に突出するようにして包装材料に挟持される電池用金属端子であって、当該電池用金属端子は、金属材料により形成された金属部材と、金属部材の表面上であって、金属端子が包装材料に挟持される部分の少なくとも一部に形成された、酸硬化性樹脂を含む酸反応樹脂層とを有することを特徴とする。また、本発明の電池は、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた電池素子と、当該電池素子を封止する包装材料と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、包装材料の外側に突出するようにして包装材料に挟持された、本発明の金属端子とを備えることを特徴とする。以下、本発明の電池用金属端子及びこれを用いた本発明の電池について詳述する。
1.電池用金属端子
本発明の電池用金属端子(タブ)は、電池素子の電極(正極または負極)に電気的に接続され、電池素子を封止する包装材料の外側に突出するようにして包装材料に挟持されるものである。例えば図1〜3に示されるように、本発明の電池用金属端子1(以下、単に「金属端子1」ということがある)は、ヒートシールされた包装材料3の周縁部3aから包装材料3の外側に突出するようにして、包装材料3に挟持される。包装材料3によって封止された電池素子4は、電池素子4の電極に電気的に接続された金属端子1によって外部と電気的に接続される。なお、本発明において、包装材料3をヒートシールする際の熱としては、通常160〜190℃程度の範囲、圧力としては、通常1.0〜2.0MPa程度の範囲である。
本発明の電池用金属端子1は、金属部材11と、酸反応樹脂層12とを有している。酸反応樹脂層12は、金属部材11の表面上であって、金属端子1が包装材料3に挟持される部分の少なくとも一部に形成されている。金属端子1に対して、より一層優れた耐電解液性及び短絡防止性能を備えさせる観点から、酸反応樹脂層12は、金属部材の表面上であって、金属端子1が包装材料に挟持される部分の全面に形成されていることがより好ましい。
[金属部材11]
金属部材11は、金属材料により形成されており、電池用金属端子1の導電性を担保している。金属端子1を構成する金属材料としては、特に制限されず、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅などが挙げられる。例えば、リチウムイオン電池の正極に接続される金属端子1は、通常、アルミニウムなどにより構成されている。また、リチウムイオン電池の負極に接続される金属端子1は、通常、銅、ニッケルなどにより構成されている。なお、金属部材11は、前記のような金属材料によって形成されている場合、他の金属を含む合金であってもよい。
金属部材11の大きさは、使用される電池の大きさなどに応じて適宜設定すればよい。金属部材11の厚みとしては、好ましくは50〜1000μm程度、より好ましくは70〜800μm程度が挙げられる。また、金属部材11の長さとしては、好ましくは1〜200mm程度、より好ましくは3〜150mm程度が挙げられる。また、金属部材11の幅としては、好ましくは1〜200mm程度、より好ましくは3〜150mm程度が挙げられる。
[酸反応樹脂層12]
酸反応樹脂層12は、酸硬化性樹脂を含む。酸硬化性樹脂とは、酸の存在下に重合して硬化する性質を有する樹脂である。本発明で使用される酸硬化性樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、酸硬化性フラン樹脂、酸硬化性フェノール樹脂等が挙げられる。
酸硬化性フラン樹脂として、具体的には、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールの縮合物、フルフリルアルコールとアルデヒド類との縮合物、フルフリルアルコールと尿素との縮合物、フルフリルアルコールとフェノール類とアルデヒド類との縮合物、フルフリルアルコールとメラミンとアルデヒド類との縮合物、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類との縮合物等が挙げられる。これらの酸硬化性フラン樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
フルフリルアルコールと縮合される前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、フルフラール、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
フルフリルアルコールと縮合される前記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF等が挙げられる。これらのフェノール類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、酸硬化性フェノール樹脂としては、ノボラック型又はレゾール型のいずれであってもよい。酸硬化性フェノール樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの酸硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの酸硬化性樹脂の中でも、より一層優れた耐電解液性を備えさせるという観点から、好ましくは熱硬化性フラン樹脂、更に好ましくはフルフリルアルコールと尿素との縮合物、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類との縮合物等の尿素変性フラン樹脂が挙げられる。
酸反応樹脂層12において、酸硬化性樹脂は、少なくとも一部が未硬化の状態で含有されていることを限度として、一部が硬化した状態であってもよい。このように、酸硬化性樹脂の少なくとも一部が未硬化の状態の存在することにより、電解液中で生じた酸と接触すると硬化して優れた耐電解液性を備えることが可能になる。また、硬化後には、酸反応樹脂層12の機械的強度が高められるため、金属端子1と包装材料3の金属箔層33とが接触して短絡することを効果的に抑制することができる。
酸反応樹脂層12において酸硬化性樹脂の一部を硬化させた状態で存在させるには、酸反応樹脂層12を形成する樹脂組成物を所定の部位に塗布した後に、加熱処理を行えばよい。加熱処理の条件としては、使用する酸硬化性樹脂の種類や硬化させる程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば120〜250℃程度、好ましくは150〜200℃程度で、例えば0.1〜60秒程度、好ましくは1〜30秒程度が挙げられる。
金属端子1と包装材料3のシーラント等34との密着性を向上させることなどと目的として、酸反応樹脂層12には、酸変性ポリオレフィンを配合してもよい。酸反応樹脂層12が酸変性ポリオレフィンを含む場合、酸変性ポリオレフィンと酸硬化性樹脂との比率については、特に制限されないが、例えば、酸変性ポリオレフィン100質量部に対して酸硬化性樹脂が0.1〜35質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部、更に好ましくは3〜15質量部が挙げられる。このような比率を充足させることによって、金属端子1に対して、より一層優れた耐電解液性及び短絡防止性能を備えさせることができる。
酸反応樹脂層12に含まれ得る酸変性ポリオレフィンとしては、特に制限されないが、好ましくは不飽和カルボン酸またはその無水物でグラフト変性されたポリオレフィンが挙げられる。不飽和カルボン酸またはその無水物でグラフト変性されるポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。また、当該ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
また、ポリオレフィンの変性に使用されるカルボン酸またはその無水物としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。上記の環状ポリオレフィンをカルボン酸またはその無水物で変性して得られるカルボン酸変性環状ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。
酸反応樹脂層12においては、酸変性ポリオレフィンに加えて、上記のポリオレフィンが含まれていてもよい。また、酸変性ポリオレフィン及びポリオレフィンは、それぞれ、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
金属端子1に対して、より一層優れた耐電解液性及び短絡防止性能を備えさせる観点から、酸反応樹脂層12の厚みとしては、好ましくは0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上が挙げられる。なお、酸反応樹脂層12の厚みの上限値は、通常15μm程度である。
[化成処理層13]
金属部材11の包装材料3に挟持される部分の表面の少なくとも一部と、酸反応樹脂層との間に、化成処理層13を有することが好ましい。化成処理層13を形成することにより、金属部材11の耐酸性を向上させることができる。化成処理層13は、金属部材11の包装材料3に挟持される部分の表面の少なくとも一部に形成されていればよく、金属部材11の全面に形成されていてもよいし、化成処理層13による導電性の低下を抑制するために、金属部材11の包装材料3に挟持される部分の表面の全面のみに形成されていてもよい。
金属部材11が、アルミニウム、ニッケルなどにより形成されている場合には、電解質と水分との反応によって生じるフッ化水素による腐食を抑制するために、金属端子1は化成処理層13を有することが好ましい。
化成処理層13を形成するための処理としては、耐酸性被膜が形成される処理であれば特に制限されないが、好ましくは、クロメート処理、より好ましくはリン酸クロメート処理が挙げられる。
クロメート処理においては、クロム酸塩の液を用い、金属部材の表面を化成処理することによって、耐酸性被膜である化成処理層13が形成される。化成処理の方法の具体例としては、クロム酸塩液に金属部材11を浸漬する方法、金属部材11にクロム酸塩液を吹き付ける方法、ロールコート法を用いて、金属部材11にクロム酸塩液をコートする方法などが挙げられる。
リン酸クロメート処理の形成に用いる処理液の具体例としては、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液が挙げられる。例えば、当該水溶液を、浸漬法、シャワー法、ロールコート法等を用いて、金属部材11の表面に塗布後、乾燥する。次に、熱風、遠近赤外線の照射等により皮膜を硬化させる。このとき、被膜温度が180度以上となる温度で焼付けることが好ましい。クロメート処理において形成される化成処理層13において、各成分の乾燥重量としては、アミノ化フェノール重合体は1〜200mg/m2程度、クロム付着量は0.5〜50mg/m2程度、リン付着量は0.5〜5mg/m2程度であることが好ましい。
金属材料11を形成する際、その表面に油性成分が付着することがある。例えば、広幅の金属シートからスリッターによって所定幅の金属材料11に断裁する際に、切断刃の保護のために用いられるオイルが付着することもある。これらの油性成分やオイルは、以後の酸反応樹脂層12や化成処理層13の形成に悪影響を及ぼすため、油性成分やオイルを除去する脱脂工程を行うことが好ましい。なお、脱脂工程の前に、バフ研磨等により金属材料11表面を前処理する工程を設けてもよく、エッチング、デスマット処理等により金属材料11表面を洗浄、溶解する工程をさらに設けてもよい。
脱脂処理は、金属材料11に酸またはアルカリ液をコーティングするか、金属材料11を酸またはアルカリ液中に浸漬することにより行うことができる。脱脂に用いる酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、リン酸、スルファミン酸などの無機酸、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、ヒドロオキシ酢酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびその誘導体、チオグリコール酸アンモニウム等が挙げられる。
また、アルカリ性物質としては、カセイソーダ(NaOH)、ソーダ灰(Na2CO3)、重曹(NaHCO3)、ボウ硝(Na2SO4・10H2O)、セスキ炭酸ソーダ(Na2CO3・NaHCO3・2H2O)などのソーダ塩類、オルソケイ曹(2Na2O・SiO2、水分10〜40%)、メタケイ曹(2Na2O・SiO2・9H2O)、一号ケイ曹(Na2O・2SiO2、水分42〜44%)、二号ケイ曹(Na2O・3SiO2、水分65%)等のケイ酸塩、第一リン酸ソーダ(NaH2PO4)、ピロリン酸ソーダ(Na427)、第二リン酸ソーダ(Na2HPO4)、ヘキサメタリン酸ソーダ{(NaPO36}、第三リン酸ソーダ(Na3PO4)、トリポリリン酸ソーダ(Na5310)等のリン酸塩類が挙げられる。
脱脂処理は、上記の酸性物質またはアルカリ性物質の水溶液を用意して、該水溶液中に金属材料11を浸漬、または前記水溶液を金属材料11の表面にスプレー、ロールコート等の方法で塗布した後、水洗いして金属材料11表面を清浄にした後、乾燥することにより行うことができる。乾燥の後、ただちに酸反応樹脂層12または化成処理層13の形成を行うことが好ましい。
[接着性フィルム]
本発明の電池用金属端子1は、金属端子1と包装材料3との間に配される接着性フィルム(タブフィルム)を備えていなくても、金属端子と包装材料との界面部分における耐電解液性を高めることができるが、金属端子1と包装材料3との密着性を高めて、金属端子1と包装材料3の金属箔層33との短絡をより一層効果的に抑制する観点から、金属端子1と包装材料3との間に接着性フィルム(図示しない)を配置してもよい。
接着性フィルムとしては、特に限定されず、金属端子と包装材料との間に配されるタブフィルムとして公知のものを使用することができる。接着性フィルムとしては、ポリエチレンナフタレートフィルムの両面に、接着剤により形成されたアンカー層を介して、ポリオレフィン及び酸変性ポリオレフィンの少なくとも一方を含むポリオレフィン層を有するものなどが挙げられる。
ポリエチレンナフタレートフィルムは、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」と表記することがある。)により形成されたフィルムであって、接着性フィルムにおいて、基材として機能する。PENフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリオレフィンフィルム、酸変性ポリオレフィンフィルムなどに比べて、融点及びガラス転移点が高く、高温下における機械的強度に優れている。このため、接着性フィルムが金属端子1と包装材料3との間に挟持された状態でヒートシートされた場合にも、PENフィルムは薄肉化しにくく、金属端子1と包装材料3の金属箔層33との短絡をより一層効果的に抑制することができる。
また、PENフィルムは、PETフィルムに比して、水蒸気透過度が小さく、水蒸気バリア性に優れているため、PENフィルムを透過して電池内部へ水蒸気が進入することを効果的に抑制することができる。このため、電池寿命を設計通りにすることができる。
PENフィルムの厚みとしては、好ましくは6μm以上、より好ましくは12〜25μm程度が挙げられる。
PENフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理などの公知の易接着手段が施されていてもよい。
接着性フィルムにおいて、アンカー層は、PENフィルムの両面(両主面)に積層されており、PENフィルムと後述のポリオレフィン層とを強固に接着するために設けられる層である。アンカー層は、接着剤により形成されている。アンカー層を形成する接着剤としては、芳香族系イソシアネート成分(芳香族系イソシアネート化合物)を含むことが好ましい。芳香族系イソシアネート成分としては、一分子に複数のイソシアネート基を有する芳香族系イソシアネート(芳香族系ポリイソシアネート化合物)が好ましい。芳香族系イソシアネート成分の好ましい具体例としては、トリフェニルメタン−4,4,4−トリイソシアネートなどの芳香族トリイソシアネートモノマー;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのポリメリックMDIなどが挙げられる。芳香族系イソシアネート成分は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明において、芳香族トリイソシアネートモノマーとは、1分子中にイソシアネート基を3つ有する芳香族系のモノマーを意味する。また、ポリメリックMDIとは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びMDIオリゴマーの混合物であり、一般に下記式で示される。
PENフィルムの両面(両主面)にアンカー層を形成する方法としては、特に制限されず、上記の接着剤を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法などの公知の方法で塗布し、乾燥させればよい。接着剤の塗布量としては、例えば芳香族系イソシアネート成分として芳香族トリイソシアネートモノマーを用いる場合であれば、好ましくは20〜100mg/m2程度、より好ましくは40〜60mg/m2程度が挙げられる。また、例えば芳香族系イソシアネート成分としてポリメリックMDIを用いる場合であれば、好ましくは40〜150mg/m2程度、より好ましくは60〜100mg/m2程度が挙げられる。
接着性フィルムにおいて、ポリオレフィン層は、アンカー層を介して、PENフィルムの両面側に積層されており、金属端子1と包装材料3のシーラント層34との密着性を高めるために設けられる層である。ポリオレフィン層は、ポリオレフィン及び酸変性ポリオレフィンの少なくとも一方を含む。ポリオレフィン及び酸変性ポリオレフィンとしては、それぞれ、上記で例示したものと同じものが例示できる。
ポリオレフィン層の厚みとしては、接着性フィルムの層構成に応じて適宜選択することができ、例えば10〜100μm程度、好ましくは15〜80μm程度、より好ましくは20〜60μm程度が挙げられる。
また、接着性フィルムの厚みとしては、例えば20〜210μm程度、好ましくは30〜170μm程度、より好ましくは40〜130μm程度が挙げられる。
なお、接着性フィルムは図示しないが、接着性フィルムを金属端子1と包装材料3との間に介在させる方法としては、特に制限されず、例えば、金属端子1が包装材料3によって挟持される部分において、金属端子1に接着性フィルムを巻き付けてもよい。また、金属端子1が包装材料3によって挟持される部分において、接着性フィルムが2つの金属端子1を横断するようにして、金属端子1の両面側に配置してもよい。
接着性フィルムは、PENフィルムの両面に、上記のアンカー層を形成する接着剤と、ポリオレフィン層を形成する樹脂成分(樹脂フィルム)とを、ドライラミネーション法、共押出ラミネーション法、サーマルラミネーション法、サンドラミネーション法などの公知の方法により積層すればよい。接着性フィルムの製造方法の具体例としては、PENフィルムの両面上に、上記のように、アンカー層を形成する接着剤を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法などの公知の方法で塗布し、乾燥させる。次に、2つアンカー層の上に、それぞれ、ポリオレフィン層を形成する樹脂成分を、Tダイ押出機などを用いて押出し塗布し、必要に応じてエージング処理を行うことにより、ポリオレフィン層/アンカー層/PENフィルム/アンカー層/ポリオレフィン層が順に積層された接着性フィルムが得られる。
[包装材料3]
包装材料3としては、少なくとも、基材層31、接着層32、金属箔層33、及びシーラント層34をこの順に有する積層体からなる積層構造を有するものが挙げられる。図7に、包装材料3の断面構造の一例として、基材層31、接着層32、金属箔層33、及びシーラント層34がこの順に積層されている態様について示す。包装材料3においては、基材層31が最外層になり、シーラント層34が最内層になる。電池の組み立て時に、電池素子4の周縁に位置するシーラント層34同士を接面させて熱溶着することにより電池素子4が密封され、電池素子4が封止される。なお、図1〜3には、エンボス成形などによって成形されたエンボスタイプの包装材料3を用いた場合の電池10を図示しているが、包装材料3は成形されていないパウチタイプであってもよい。なお、パウチタイプには、三方シール、四方シール、ピロータイプなどが存在するが、何れのタイプであってもよい。
(基材層31)
包装材料3において、基材層31は、包装材料の基材として機能する層であり、最外層を形成する層である。
基材層31を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層31を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
前記ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層31の形成素材として好適に使用される。
また、前記ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層31の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層31の形成素材として好適に使用される。
基材層31は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層31として好適に使用される。
これらの中でも、基材層31を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ポリエステルが挙げられる。
基材層31は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルムを積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層31を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。
また、基材層31は、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層31を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層31を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。
基材層31の厚さについては、例えば、10〜50μm程度、好ましくは15〜30μm程度が挙げられる。
(接着層32)
包装材料3において、接着層32は、基材層31に密着性を付与させるために、基材層31上に配置される層である。即ち、接着層32は、基材層31と金属箔層33の間に設けられる。
接着層32は、基材層31と金属箔層33とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層32の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。また、接着層32の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層32の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;ふっ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や応変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層31と金属箔層33との間のラミネーション強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
また、接着層32は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着層32を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層31と金属箔層33とのラミネーション強度を向上させるという観点から、基材層31側に配される接着剤成分を基材層31との接着性に優れる樹脂を選択し、金属箔層33側に配される接着剤成分を金属箔層33との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着層32は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、金属箔層33側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
接着層32の厚さについては、例えば、2〜50μm程度、好ましくは3〜25μm程度が挙げられる。
(金属箔層33)
包装材料3において、金属箔層33は、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。金属箔層33を形成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明において金属箔層33として、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等を用いることが好ましい。
金属箔層33の厚さについては、包装材料を薄型化しつつ、成形によってもピンホールの発生し難いものとする観点から、好ましくは10〜200μm程度、より好ましくは20〜100μm程度が挙げられる。
包装材料3の耐電解液性をより一層向上させる観点からは、クロメート処理を施した金属箔層33を用いることが好ましい。
クロメート処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。
一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。
クロメート処理において金属箔層33の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、金属箔層33の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5mg〜約50mg、好ましくは約1.0mg〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5mg〜約50mg、好ましくは約1.0mg〜約40mg、及びアミノ化フェノール重合体が約1mg〜約200mg、好ましくは約5.0mg〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
クロメート処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、金属箔層33の表面に塗布した後に、金属箔層33の温度が70℃〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属箔層33にクロメート処理を施す前に、予め金属箔層33を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属箔層33の表面のクロメート処理をより効率的に行うことが可能となる。
更に、金属箔層33には、必要に応じて、耐食性を付与する化成処理が施されていてもよい。金属箔層33に耐食性を付与する化成処理方法として、具体的には、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属箔層33の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[接着層35]
包装材料3において、接着層35は、シーラント層34を強固に接着させために、金属箔層33とシーラント層34の間に、必要に応じて設けられる層である。
接着層35は、金属箔層33とシーラント層34を接着可能である接着剤によって形成される。接着層35の形成に使用される接着剤の組成については、特に制限されないが、例えば、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。接着層35に使用される熱硬化性樹脂の具体例については、前記接着層32で例示したものと同様である。
接着層35の厚さについては、例えば、1〜40μm程度、好ましくは2〜30μm程度が挙げられる。
[シーラント層34]
包装材料3において、シーラント層34は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
シーラント層34に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸で変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくは結晶性又は非晶性のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、及びこれらのブレンドポリマー;さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンの共重合体、及びこれらの中の2種以上のブレンドポリマーが挙げられる。
シーラント層34は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、シーラント層34は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上形成されていてもよい。
また、シーラント層34の厚みとしては、特に制限されないが、2〜2000μm程度、好ましくは5〜1000μm程度、さらに好ましくは10〜500μm程度が挙げられる。
2.電池10
本発明の電池10は、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた電池素子4と、当該電池素子4を封止する包装材料3と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、包装材料3の外側に突出するようにして包装材料3に挟持された、本発明の電池用金属端子1とを備えることを特徴とする。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子4を包装材料3で封止する際に、正極及び負極の各々に接続された金属端子1を外側に突出させた状態で、電池素子4の周縁に包装材料3のフランジ部(シーラント層34同士が接触する領域であり、包装材料の周縁部3a)が形成できるようにして電池素子4を被覆し、フランジ部のシーラント層34同士をヒートシールして密封することによって、本発明の電池用金属端子1を使用した電池10が提供される。なお、包装材料3を用いて電池素子4を収容する場合、包装材料3のシーラント層34が内側(電池素子4と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池は、一次電池、二次電池のいずれであってもよいが、好ましくは二次電池である。二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、好ましくは、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1−5
<金属端子の製造>
厚み100μm、幅4mmのアルミニウム製の金属部材を用意した。この金属部材の両面に、尿素変性フラン樹脂(HP6200N、旭有機材社製)を、それぞれ、最終的に表1に示す膜厚となるようにロールコート法により塗布した。次に、190℃で、3秒間加熱し、金属部材の表面上に酸反応樹脂層を形成し、各金属端子を得た。
実施例6−10
<金属端子の製造>
金属部材の両面にクロメート処理を施した後、酸反応樹脂層を形成したこと以外は、前記実施例1−5と同様の条件で、各金属端子を得た。なお、クロメート処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。当該クロメート処理によって形成された耐酸性皮膜の厚み(片面の厚み)は0.005μmであった。
比較例1−2
実施例1−5で使用した酸反応性樹脂層を形成する前の金属部材を比較例1とし、実施例6−10でクロメート処理を行い、酸反応性樹脂層を形成していないものを比較例2とした。
<電池用包装材料の製造>
金属箔層としてのアルミニウム箔(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、基材層としてナイロンフィルム(厚さ25μm)を接着層の厚さが約3μmとなるようにポリエステル系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。次に、他方のアルミニウム箔の化成処理面に、シーラント層を形成するカルボン酸変性ポリプロピレン(23μm)とポリプロピレン(23μm)を共押出して、基材層/接着層/アルミニウム箔/シーラント層から構成される積層体を得た。なお、アルミニウム箔の化成処理は、いずれも、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる水溶液を用い、ロールコート法により塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼付けた。また、クロムの塗布量は3mg/m2(乾燥重量)とした。
<金属端子と金属箔層との短絡評価>
上記実施例1−10、比較例1−2の各金属端子と、上記で製造した電池用包装材料を用いて、金属端子と金属箔層との短絡を評価した。まず、上記で製造した電池用包装材料を60mm(MD方向、縦方向)×150mm(TD方向、横方向)に裁断した。次に、裁断した電池用包装材料をTD方向においてシーラント層同士が対向するようにして2つ折りにし、TD方向の対向する1辺とMD方向の1辺を熱溶着し、TD方向の1辺が開口する袋状の電池用包装材料を作製した。なお、熱溶着の条件は、温度190℃、面圧1.0MPa、加熱・加圧時間3秒とした。この中に、電解液(1M LiPF6 となるようにしたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(1:1:1)の混合液3gを入れ、さらに、当該開口に上記の金属端子の一部が外側に出るようにして挿入し、ヒートシール条件を190℃、2.0MPa、3secとして密封して、各包装体を得た。これらの包装体を、開口部が位置していた部分を上向きにして、85℃の恒温層内に24時間静置した。次に、これらの包装体の金属端子のヒートシールした部分を断裁し、断面写真を確認して、金属端子と電池用包装材料の金属箔層との間で短絡する虞があるものについては、テスターによって接触を確認した。断面写真によって、金属端子と金属箔層との間に皮膜が見られないものを短絡寸前とし、その内でテスターにより短絡が確認された検体を短絡とした。実施例1−10及び比較例1−2において、それぞれ100検体について、短絡評価を行い、短絡寸前及び短絡の合計数の割合を確認して短絡の割合とした。結果を表1に示す。
<剥離強度残存率>
上記の短絡評価で製造した直後における包装体(電解液を入れて密封したもの)と、短絡評価を行った包装体(電解液を入れて密封し、85℃の恒温層内に24時間静置したもの)について、それぞれ、金属端子のヒートシールした部分の剥離強度を以下の条件で測定し、剥離強度の残存率(製造直後における包装体の剥離強度に対する、短絡評価を行った包装体の剥離強度の割合(%))を算出した。具体的には、金属端子のヒートシールした部分において、金属端子と金属箔層とを、引張り機(島津製作所製の商品名AGS−50D)を用いて、50mm/分の速度で引張り、剥離強度(N/15mm)を測定した。剥離強度残存率を表1に示す。
表1に示される結果から、金属端子の表面上に酸反応樹脂層が形成されていることにより、金属端子のヒートシールした部分の短絡が効果的に抑制されることが分かる。また、酸反応樹脂層を形成する前に、金属端子の表面をクロメート処理することにより、金属端子のヒートシールした部分の剥離強度が高められることも分かる。
1 電池用金属端子
3 包装材料
3a 包装材料の周縁部
4 電池素子
10 電池
11 金属部材
12 酸反応樹脂層
13 化成処理層
31 基材層
32 接着層
33 金属箔層
34 シーラント層

Claims (9)

  1. 電池素子の電極に電気的に接続され、前記電池素子を封止する包装材料の外側に突出するようにして前記包装材料に挟持される、電池用金属端子であって、
    前記電池用金属端子は、
    金属材料により形成された金属部材と、
    前記金属部材の表面上であって、前記金属端子が前記包装材料に挟持される部分の少なくとも一部に形成された、酸の存在下に重合して硬化する性質を有する酸硬化性樹脂を含む酸反応樹脂層と、
    を有する、電池用金属端子。
  2. 前記酸硬化性樹脂が、酸硬化性フラン樹脂及び酸硬化性フェノール樹脂の少なくとも一方である、請求項1に記載の電池用金属端子。
  3. 前記酸反応樹脂層が、酸変性ポリオレフィンをさらに含む、請求項1または2に記載の電池用金属端子。
  4. 前記金属部材の前記包装材料に挟持される部分の表面の少なくとも一部と、前記酸反応樹脂層との間に、化成処理層を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用金属端子。
  5. 前記酸反応樹脂層の厚みが、0.1〜15μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用金属端子。
  6. 前記金属部材が、アルミニウム、ニッケル、銅、またはステンレスにより形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用金属端子。
  7. 前記金属部材の前記包装材料に挟持される部分の表面の少なくとも一部と、前記酸反応樹脂層との間に、化成処理層を有し、
    前記化成処理層が、クロメート処理により形成された層である、請求項1〜6のいずれかに記載の電池用金属端子。
  8. 前記包装材料が、少なくとも、基材層、接着層、金属箔層、及びシーラント層をこの順に有する積層体であり、
    前記包装材料の互いに対向する前記シーラント層表面によって挟持される、請求項1〜6のいずれかに記載の電池用金属端子。
  9. 少なくとも、正極、負極、及び電解質を有する電池素子と、
    前記電池素子を封止する包装材料と、
    前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記包装材料の外側に突出するようにして前記包装材料に挟持された、請求項1〜8のいずれかに記載の電池用金属端子と、
    を備える、電池。
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