JP6444966B2 - 寿命と性能が向上した微小構造光ファイバの製造方法、および当該光ファイバを有するスーパーコンティニューム光源の製造方法 - Google Patents

寿命と性能が向上した微小構造光ファイバの製造方法、および当該光ファイバを有するスーパーコンティニューム光源の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は特に、コア材からなるコアと、クラッド材からクラッドとを含む非線形の微細構造光ファイバに関する。
最近、微細構造光ファイバ、フォトニック結晶光ファイバ(PCF)、ホーリー光ファイバと呼ばれる光ファイバが開発されている(このような光ファイバで特にフォトニックバンドギャップ光ファイバ(PBG)と呼ぶものもある)。フォトニック結晶光ファイバは、光ファイバの長手方向に沿って一連のホールが埋設された透明材からなるクラッドで構成される(非特許文献1)。ホールは、通例横方向に周期的に配列され、クラッドの他の部分よりも低い屈折率を有する材料で充填される。光ファイバの中心は、通例クラッドの周期性を中断させる透明領域を含む。この領域は、多くの場合光ファイバのコアとして機能する。しかし原理上、この領域は断面の中心になくてもよい。光ファイバの断面は通例、(任意で空気または気体で充填された)ホールを含むクラッド領域で囲まれ、コア材からなるコア領域と、クラッドの背景材に埋設された固体状または液体状の微細構造要素とを含む。いずれの領域も、光ファイバの長手方向に伸展する。コアは通例、光ファイバの動作波長の光の80%以上を案内する。一般に、コアとクラッドはいずれも純石英シリカからなり、ホールは空気で充填されている。フォトニック結晶光ファイバの変形例として、ホールの代わりに、別の材料からなるロッドを横方向に配置するものがある。このような光ファイバは、たとえば特許文献1に開示されている。特許文献1には、ホールを横方向に配置したフォトニック結晶光ファイバも幾つか開示されている。
フォトニック結晶光ファイバ型は通常、ロッド状のユニットから製造される。ロッド状のユニットを積み重ねてプリフォームが形成され、一つまたは複数の工程を経て最終的な光ファイバが形成される。非特許文献2には、チューブを積み重ねることによって形成された毛細管のロッドからプリフォームを製造する方法が開示されている。フォトニック結晶光ファイバの製造方法は、非特許文献3にも記載されている。
特許文献2には、微小構造光ファイバのプリフォーム製造方法が開示されている。この製造方法では、管内に複数の長尺要素を互いに平行に置き、前記管のうちの少なくとも一部をシリカ含有ゾルで充填したあと、乾燥し、焼結する。
微細構造光ファイバは、比較的新しい技術分野であり、導波路の特性を比較的自由に設計することができる。このような光ファイバは通例、光ファイバの長手方向に伸展するパターンを有する純シリカ(ホールやドープされたガラスであることが多い)からなる。設計に自由度があるため、光ファイバ固有の非線形特性が求められる用途に興味深い光ファイバを作ることができる。このような用途の一つとして、光ファイバ光源によって広いスペクトル出力を製造可能なスーパーコンティニューム発生がある。微小構造光ファイバにおけるスーパーコンティニューム(SC)発生は、空間的にコーヒーレントな広帯域光(白色光またはスーパーコンティニューム光という)の光源として、ここ数年研究されてきた。このような光源の新用途が継続的に発見される一方、その幾つかは蛍光顕微鏡法、レーザ精密分光法、および光コヒーレンストモグラフィ(OCT)などとして分類されている。スペクトル可視部分における高輝度の照射は、共焦点蛍光顕微鏡法においては特に重要である。しかし、スペクトルの短波長部分において出力が不十分なため、この領域においてはスーパーコンティニューム光源の潜在能力が十分に発揮されないままである。本明細書に示す実験は、高出力で可視のスーパーコンティニューム発生に焦点を当てた。
現在までのほとんどの研究は、非線形光ファイバをフェムト秒(fs)レーザでシードすることを基に行われてきたが、ナノ秒レーザやピコ秒(ps)レーザを用いたスーパーコンティニューム発生も実証されてきた。後者は、高い繰返率と効果的なスーパーコンティニューム発生を維持しながら、大幅にコストを低減し、システムを簡素化している。また、ピコ秒領域においてスペクトル的に一層均一なスーパーコンティニュームスペクトルを製造することが通常可能である。ピコ秒領域においては、より強力なシードソースが使用可能であり、そのため光ファイバの損傷閾値未満でありながら、より強力なスーパーコンティニュームが得られる。総じてピコ秒システムは、光学研究室外の現実世界での応用に魅力的であることが多い。
国際公開第00/37974号 国際公開第03/078338号
J.C.Knight等、「Opt.Lett.21」、1996年、1547頁:「Errata:Opt.Lett.22」、1997年、484頁 T.A.Birks等、「2D Photonic band gap structures in fibre form」、Photonic Band Gap Materials、Kluwer、1996年、 Bjarklev、Broeng、Bjarklev、「Photonic crystal fibers(第4章)」、Kluwer Academic Press、2003年、115頁〜130頁
スーパーコンティニューム光源の平均的な出力とスペクトル密度、およびスーパーコンティニュームの幅の限界が、非線形光ファイバの損傷閾値である。最大出力またはパルスエネルギーが、バルクガラスもしくはガラスと空気との界面損傷閾値よりも大きい場合、入力の小面または光ファイバの最初の数ミリメートルが潰れることがあり、システムに突発故障を生じる。最大出力またはパルスエネルギーがこの閾値未満である時、非線形の微細構造光ファイバが時間とともに低下し得ることが、本発明者らによって観察された。この低下は通例、時間経過とともに見られる可視出力の低下として観察される。商用アプリケーションにおいて、スーパーコンティニューム光源の寿命は長いことが重要であり、通例このような光ファイバの低下は受け入れ難い。
本発明の目的は、上記のような低下をなくした、もしくは許容レベルまで抑えた非線形微細構造の光ファイバを提供することにある。
本発明の目的は、添付の特許請求の範囲と以下に記載される発明によって達成される。
請求項1に定義する本発明の目的は、コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む光ファイバであって、前記光ファイバは、非線形の微小構造光ファイバであり、前記微小構造光ファイバは、水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程を含む製造方法で得られる光ファイバによって達成される。このような光ファイバは、高い最大出力でパルスを案内する用途において、長寿命に適した特性を有し得る。
重水素のロードは、いわゆる水バンド(water−band)による吸収を克服するために、本技術分野において適用されることがある。水バンドとは、海底通信ケーブルなどで見られるように、水素の豊富な環境に光ファイバを置くと増加するものである。この問題は、本明細書で記載する問題とは異なる。このため、一実施形態において、光ファイバは5原子パーセント(at%)未満の、あるいは1at%未満、0.1at%未満、0.01at%未満、または0.001at%未満のHイオンとHイオンのうちの少なくとも一方を含有する媒質に置かれる環境に適用される。
一実施形態において、非線形光ファイバは少なくとも波長λmin〜λmaxの範囲の光を案内し、非線形パラメータγを有し、上記範囲のうちの少なくとも一部において、γ×λの積は4×10−9−1以上、あるいは5×10−9−1以上、6×10−9−1以上、7×10−9−1以上、8×10−9−1以上、10×10−9−1以上、20×10−9−1以上、または40×10−9−1以上である光ファイバを意味する。非線形パラメータγは、以下の式で定義される。
ここで、nは光ファイバ材料の非線形屈折率、Aeffは光ファイバの実用モード面積である。通例、シリカガラスの場合、nは約2.6×10−20/Wである。
一実施形態において、非線形光ファイバは1550nmの波長を案内する場合、非線形パラメータγを有し、非線形パラメータγは3×10−3(Wm)−1以上、あるいは5×10−3(Wm)−1以上、10×10−3(Wm)−1以上、15×10−3(Wm)−1以上、20×10−3(Wm)−1以上、30×10−3(Wm)−1以上、40×10−3(Wm)−1以上、または50×10−3(Wm)−1以上である光ファイバを意味する。
一実施形態において、非線形光ファイバは1064nmの波長を案内する場合、非線形パラメータγを有し、非線形パラメータγは5×10−3(Wm)−1以上、あるいは10×10−3(Wm)−1以上、15×10−3(Wm)−1以上、20×10−3(Wm)−1以上、30×10−3(Wm)−1以上、40×10−3(Wm)−1以上、または50×10−3(Wm)−1以上である光ファイバを意味する。
一実施形態において、非線形光ファイバは少なくとも波長λmin〜λmaxの範囲の光を案内し、基本モードのモードフィールド径MFDが前記範囲のうちの少なくとも一部であり、MFD/λの割合が5以下、あるいは4以下、3以下、2以下、または1以下である光ファイバを意味する。
一実施形態において、非線形光ファイバは1550nmの波長を案内する場合、10μm以下、あるいは8μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、または1μm以下のモードフィールド径MFDを有する光ファイバを意味する。
一実施形態において、非線形光ファイバは1064nmの波長を案内する場合、6μm以下、あるいは5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、または1μm以下の
モードフィールド径MFDを有する光ファイバを意味する。
上記の各種実施形態において、波長λmin〜λmaxの範囲は、350nm〜2000nm、980nm〜1550nm、1100nm〜1550nm、および1300nm〜1450nmのうちから選ばれる一つであってもよい。一実施形態において、光ファイバがシングルモードの場合、波長λmin〜λmaxの範囲は、波長範囲への考慮を制限するように選択する。
好ましい実施形態において、光ファイバはシリカ繊維であり、コアのうちの少なくとも一部はシリカである。好ましくは、少なくともコア全体が、すなわちコア全体およびクラッドの一部もしくは全部がシリカである。微細構造光ファイバは、クラッド内で伸展するホールによって案内されるため、光ファイバは、全体が非ドープのシリカからなる(すなわち、コアとクラッドの両方がシリカからなる)ことが多い。これは、屈折率を変更するために通例ゲルマニウムでコアがドープされている標準のシングルモード通信光ファイバなどとは異なる。このため、一実施形態において、光ファイバのコアはゲルマニウムの含有が10at%以下、あるいは5at%未満、3at%未満、2at%未満、0.1at%未満、0.01at%未満、または0.001at%未満である。
一実施形態において本発明は、本発明の光ファイバと、供給部とを含む光学システムであって、前記供給部は100W/μm以上、あるいは500W/μm以上、1000W/μm以上、2500W/μm以上、5000W/μm以上、7500W/μm以上、または10000W/μm以上の前記光ファイバ内において、最大出力密度のパルスで前記光ファイバを供給するよう構成された光システムに関する。光ファイバにおいてこのような出力密度を生じるパルスは、本出願において高パルスアプリケーションと呼ぶ。
供給部は通例ポンプ光源であり、一つまたは複数の増幅器を備えてもよい。供給部は、原理上光ファイバ内で特定の出力密度を有する光ファイバに対してパルスを供給する光学システムであってもよい。
高い最大出力にさらされるため、本発明の光ファイバの低下は、まったくないかもしくは抑えられる。このため、システムの動作寿命が延長し得る。
一実施形態において、本発明はパルスポンプ光源と、本発明の光ファイバとを含むスーパーコンティニューム光源に関する。このポンプ光源は、100W/μm以上、あるいは500W/μm以上、1kW/μm以上、2.5kW/μm以上、5kW/μm以上、7.5kW/μm以上、10kW/μm以上、15kW/μm以上、または20kW/μm以上の光ファイバ内において、最大出力密度でパルスを供給するよう構成され、および/あるいは、ポンプと光ファイバは、少なくとも10μW/nmで少なくとも1オクターブ上の出力スパンとなるよう構成され、および/あるいは、ポンプと光ファイバは、最大変調不安定ゲインΩmaxが20または40を超えるように構成される。
最大変調不安定ゲインΩmaxは、以下の式で得られる。
ここで、βはポンプ波長における群速度、Ppeakはポンプの最大出力、γはポンプ波長に関する非線形パラメータである。
一実施形態において、デンマークの会社Crystal Fibre A/Sから入手可能な非線形光ファイバSC−5.0−1040によって、1オクターブを超えるスパンが実現される。1064nmでポンプされる最大出力200Wを備えるこの光ファイバを用いることによって、Ωmax=22となる(最大出力200Wは、たとえば50MHz、100mWの入力信号は10ピコ秒パルスで得られる)。
少なくとも特定の出力値(nm波長ごとの)で少なくとも1オクターブに亘る(すなわちスパンする)位相とは、本発明においては、光源からの出力光スペクトルが少なくとも1オクターブスパンし、特定の出力値によってスペクトルの外側限界が定義されることを意味する。スペクトルは複数のホールを有してもよいが、スパンしたスペクトルの25%を超える部分は、少なくとも特定の出力値を有すると想定される。一実施形態において、スパンしたスペクトルのうちの少なくとも30%は、あるいは少なくとも40%、60%、80%、99%、または99.9%は、少なくとも特定の出力値を有する。
一実施形態において、少なくとも50μW/nm、あるいは500μW/nm以上、1mW/nm以上、5mW/nm以上、または10mW/nm以上で、少なくとも1オクターブに亘ってスパンする。選択した出力限界によって、一実施形態は0.5オクターブ以上、1.5オクターブ以上、または2オクターブ以上に亘ってスパンしてもよい。
一態様において、本発明は、コア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む微細構造光ファイバの製造方法であって、前記光ファイバは、高パルスアプリケーションにおいて延長した寿命を有し、前記製造方法は、a)水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程と、b)温度Tannealで時間tannealの間、任意でアニールする工程とを含む製造方法に関する。
このような製造方法は、本発明の光ファイバの製造に有利に適用してもよい。また、光ファイバの特性に関して記載された特性は、変更すべきところは変更して、光ファイバの製造方法に適用してもよい。
一実施形態において、前記ロード工程は、水素と重水素のうちの少なくとも一方を前記コア材と前記クラッド材のうちの少なくとも一方に化学的に結合させるように、ロード条件下で前記光ファイバの材料を、水素と重水素のうちの少なくとも一方に適切に置くことによって行われ、前記ロード条件は、好ましくはa)上昇した温度T、b上昇した圧力P、c)その後に行われる照射のうち少なくとも一つを含む。
一実施形態において、本発明は、本発明の光ファイバと、本発明の光学システムと、本発明の光源と、本発明によって製造される光ファイバを含む装置とのうち少なくとも一つに関する。一実施形態において、この装置は蛍光顕微鏡法、レーザ精密分光法、光コヒー
レンストモグラフィー(OCT)などのさまざまな形態のシステムを構成する。
未使用の、あるいはロードしていない同質光ファイバに比べて、通例延長した寿命を有する劣化した光ファイバが再生できることが分かった。このため、一実施形態において、本発明はコア材からなるコアと、クラッド材からなるクラッドとを含む微小構造光ファイバの再生方法に関する。光ファイバは、高パルスアプリケーションにおいてパルス処理されるため、可視で吸収が増加する。この再生方法は、水素と重水素のうちの少なくとも一方を光ファイバにロードするロード工程を含む方法であってもよい。
本明細書で用いられる「含む(備える)」、「からなる」という語は、記載されたある特徴、整数値、工程、または構成部材を特定するものであり、記載された他の特性、整数値、工程、構成部材、またはそのグループが少なくとも一つ以上存在することもしくは追加されることを除外しないものとする。
従来型微細構造光ファイバの初期動作時(A)と、その35動作時間後(B)とに見られる一般のスーパーコンティニュームスペクトルを示す図。可視スペクトルの低減は、光ファイバの劣化を示している。 光ファイバの位置を関数として、従来型非線形光ファイバの35動作時間後の減衰を示す図。 非線形光ファイバの位置を関数として、633nmにおける吸収を示す図。 実験初期(A)、視認できる下降が観察された35時間後(B)、および250°Cまで光ファイバを再度加熱した後(C)それぞれのスーパーコンティニュームスペクトルを示す図。 視認できる下降が観察された35時間後(A)、250°Cまで光ファイバを加熱した後(B)、および重水素を光ファイバにロードした後(C)それぞれのスーパーコンティニュームスペクトルを示す図。 160°Cで重水素をロードした場合(A)、80°Cで重水素をロードした場合(B)、および重水素をロードしなかった場合(C)それぞれの非線形光ファイバについて、時間を関数として測定した可視出力を示す図。 重水素をロードする三つの互いに異なる温度(A)と、測定への指数一致(B)を関数として抽出した寿命を示す図。 重水素をロードした非線形光ファイバについて、0時間後(A)、188時間後(B)、260時間後(C)、305時間後(D)、および450時間後(E)それぞれの測定スペクトルを示す図。 ガラス不純物の少ない非線形光ファイバについて、時間を関数として測定した可視出力を示す図。
本発明は、好適な実施形態と図面によって、以下で更に十分に説明される。
図は概略であり、明確のために簡素化したものである。本発明の理解のために不可欠な詳細のみを示し、他の詳細は省略する。
本発明の適用範囲は、以降に記載する詳細な説明から明らかになるであろう。本発明の趣旨と範囲内のさまざまな変更と修正は詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明と具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、実例としてのみ示される。
測定データに基づき、本発明について以下に説明する。これらから導かれる結論は、根拠となる実験の詳細に限られるものと解釈すべきではなく、本発明によって可能となる結
果の実例として理解されたい。
ポンプ光源と非線形微細構造のシリカ繊維とを含むスーパーコンティニューム光源で得られた測定データについて、以下に説明する。平均15Wの入力(最大:23kW)を与える80MHzの繰返率において、8ピコ秒パルスに1064nmで光ファイバをポンプした。光ファイバは、3.5μmのモードフィールド径を有し、長さは約7mであった。
光ファイバの長さは、消費量を維持するには短いことが好ましい。また、スーパーコンティニュームを基にした非線形プロセスによって所望のスペクトルが得られる十分な長さで、かつ最小の長さであることが好ましい。通例、短い光ファイバが短いパルスには十分であるように、光ファイバの長さはパルスの形状によって決まる。一実施形態において、非線形光ファイバの長さは1cm以上、あるいは10cm以上、1m以上、5m以上、8m以上、または10m以上である。
一実施形態において、非線形微細構造の光ファイバは50m以下、あるいは30m以下、または10m以下である。
図1は、従来型微細構造光ファイバの初期動作時(A)と、その35動作時間後(B)とに見られる一般的なスーパーコンティニュームスペクトルを示す。約450nm〜約750nmのスペクトル可視部分に見られる減少は、光ファイバの劣化を示している。この減少は、図2に示す実験で更に詳細に調べられた。図2は、光ファイバの位置を関数として、従来型非線形光ファイバの35動作時間後の減衰を示す。非線形光ファイバ(NL光ファイバ)の最初の3mでAは測定され、Bは3m〜4mで、Cは4m〜5mで、Dは5m〜7mで測定された。この曲線は、長さ7mの参照用非線形光ファイバを差し引くことによって得られた。光ファイバが劣化するため、スペクトル可視部分において非常に大きな吸収が観察された。また、900nmと1400nmにおける下降は、非線形光ファイバのシングルモードのカットオフと、非線形光ファイバと参照用光ファイバそれぞれのO−H最大吸収の差とによるものと考えられる。出力が比較的高いポンプパルスとの相互関係によって劣化が生じるという仮定を裏付けるには、ポンプに一層近い位置で吸収されることが求められる。この傾向は、ポンプからの距離が一層遠い部位で採取した光ファイバ部分ほど吸収が落ちることから明らかである。またこの傾向は、指数への一致が見られた部分からの距離を関数として、633nmにおける吸収の測定を示す図3からも明らかである。
図4は、実験初期(A)、視認できる下降が観察された35時間後(B)、および250°Cまで光ファイバを再度加熱した後(C)のスーパーコンティニュームを示す。加熱によって光ファイバは部分的に再生されると思われる。本発明者らは、光ファイバの再生が、ガラスの少なくとも一部の構造を変えるポンプパルスの指標となり得ると仮定した。ガラスが高温になるのを可能にすることによって、ガラスは再び定状態となることができ、光ファイバは少なくとも部分的に再生される。
図5は、視認できる下降が観察された35時間後、250°Cまで光ファイバを加熱した後、および重水素を光ファイバにロードし、その後アニールした後のスーパーコンティニュームスペクトルを示す。重水素をロードすることによって、明らかに光ファイバは再生された。スペクトルには視認できる下降がなく、初期のスペクトル(図4を参照)と類似したものだった。
本実施形態において、光ファイバには重水素をロードすることが好ましい。これは、1400nm付近で吸収が最大になると知られているO−H結合をなす光ファイバにおいて、水素と酸素が結合可能であるためである。このような吸収は、本実施形態には好ましくない。しかし、このような吸収が有意でない場合もしくは好ましい場合、特に水素が重水
素より安価である場合の用途には好ましい。
図6は、互いに異なる条件下で重水素をロードした結果を示す。互いに異なる条件で重水素をロードした3つの同質非線形光ファイバについて、時間を関数として可視出力を測定した。重水素をロードした光ファイバの寿命は、ロードしなかった光ファイバに比べて大幅に延長した。すべての光ファイバに対し、約100%の重水素を圧力100バール(1バール=100000Pa)でロードした。光ファイバへのロードは、ある長さの時間、特定温度で高い部分圧力を有する重水素または水素に光ファイバを置くことによって行われることが好ましい。
図6は、160°Cで重水素をロードした場合(A)、80°Cで重水素をロードした場合(B)、および重水素をロードしなかった場合(C)の3つの同質非線形光ファイバについて、時間を関数として測定した可視出力を示す。重水素をロードした光ファイバの寿命は、ロードしなかった光ファイバに比べて、少なくとも2倍増幅した。すべての光ファイバに対し、約100%の重水素を圧力100バールでロードした。
図7は、図6に示した寿命を、重水素をロードする3つの互いに異なる温度(A)と、測定への指数一致(B)とを関数として示す。この例において、寿命は可視における光の出力が30%減少した場合に定義したものである。用途によっては、可視における光吸収の減少が40%を超える場合、あるいは50%、70%、80%、または90%を超える場合に定義してもよい。可視光は500nm〜700nmの範囲の光の整数値として定義してもよい。あるいは一つまたは複数の波長値を、650nmおよび/または633nmにおける吸収として指定してもよい。温度を関数としてロードした水素を測定した結果、ロード温度とともに指数関数的に寿命が増加することがはっきり示された。このような温度依存に基づき、光ファイバの寿命増加は材料(この場合、シリカガラス)への重水素結合によること、また、これを生じさせるのに必要な活性化エネルギーを供給する役割を温度が担っていることが推測される。あるいはこのような化学工程が誘発される場合、十分に高い圧力が発生し得る。最後に、材料への重水素の拡散と同時にもしくは拡散後に行われる照射による活性化も、重水素結合を可能にすると推測される。このため、好ましい実施形態において、光ファイバへのロードは、水素および/または重水素を前記光ファイバ材料のコア材とクラッド材のうちの少なくとも一方へ化学的に結合させるのに適切なロード条件下で、光ファイバを水素および/または重水素に置くことによって行われる。このロード条件とは、a)上昇した温度T、b)上昇した圧力P、および/またはc)その後に行われる照射のうち少なくとも一つを含むことが望ましい。これによって一実施形態において、ロードした材料は0.1原子パーセント(at%)を超える、あるいは1%、5%、10%、20%、または50%を超える結合水素および/もしくは結合重水素を含むように、光ファイバは増量の水素および/または重水素を含む。
一実施形態において、温度Tは上記の結合が可能となるように80°C以上まで上昇される。あるいは温度Tは100°C以上、120°C以上、140°C以上、160°C以上、180°C以上、200°C以上、220°C以上、240°C以上、260°C以上、280°C以上、300°C以上、350°C以上、400°C以上、450°C以上、または500°C以上まで上昇される。
非線形光ファイバは、クラッドに対するポリマ被覆を含んでもよく、含まなくてもよい。非線形光ファイバがポリマ被覆を含む場合、重水素および/または水素をロードするロード温度は、ポリマの融点未満または軟化点未満に維持されることが好ましい。重水素のロード温度上昇の上限は、光ファイバの被覆によって決定してもよい。高温度の被覆によって、重水素のロード温度は250°C以上まで可能となり、これによって大幅に寿命が向上される。あるいは被覆なしの光ファイバも製造可能であり、この場合、非常に高いロ
ード温度(たとえば500°Cまで、または500°C以上)が可能となる。あるいはコア材(および任意でクラッド材)をロードするロード工程は、光ファイバ形成工程前または光ファイバ形成工程時(すなわち被覆前)であってもよい。原理上、これらは他の被覆にも適用可能である。
化学反応時間は、温度および/または圧力に依存すると予測されるが、ロード時間は、少なくとも熱平衡が生じるのに十分な時間であることが好ましい。
温度も同様に、一実施形態において、圧力Pは10バール以上、あるいは25バール以上、50バール以上、75バール以上、90バール以上、120バール以上、160バール以上、200バール以上、500バール以上、1000バール以上、または2000バール以上である。
上記の照射は、大きな活性化エネルギーを与えるのに適切な照射であれば、原理上どんな照射であってもよい。好ましい実施形態において、スーパーコンティニューム発生に適切なパルス(たとえば「発明の概要」に記載のパルス)は、光ファイバにおける水素結合または重水素結合に適用される。一実施形態において、使用前に残存する未結合水素または未結合重水素が光ファイバから拡散するのを抑えるために、ロードと、任意で行われるアニールとの後、光ファイバは冷却される。光ファイバは、使用前の保管時、または保管期間のうちの少なくとも一部で冷却されることが好ましい。一度使用されると、スーパーコンティニューム光発生において光ファイバをポンプ注入することによって、残存する水素または重水素のうちの少なくとも一部を結合させるのに十分なエネルギーが与えられると推測される。
原理上、光ファイバ形成工程のどの時点において材料をロードしてもよいと推測される。しかし、最終的に延長された光ファイバの寿命は、ロード後の各工程によっては影響されないように考慮する必要がある。このため、一実施形態において、コア材と、任意でクラッド材とのロードは、光ファイバ形成前、光ファイバ形成時、または形成後に行われる。また、図5に示すように、一実施形態において、ロードが使用後に行われるように、光ファイバは少なくとも部分的に再生されてもよい。
上記の水バンドは幾つかの用途には不利になり得る。このため、一実施形態において、ロード後の光ファイバが、結合水素(および/または相応するイオン)に対して結合重水素を(原子で)1%以上、あるいは10%以上、100%以上、または10000%以上含むように、できるだけ少量の水素を光ファイバにロードすることが好ましい。
重水素または水素のロード後、光ファイバ内の未結合重水素または未結合水素の拡散を高めるために、光ファイバをアニールすることが好ましい。光ファイバのアニールは、水素または重水素を再び未結合にするほどのエネルギーは与えないよう、中温で行うことが好ましい。上記に示す各図においては、80°Cでアニールした。室温で光ファイバを保管した場合、2ヶ月〜3ヶ月で未結合水素または未結合重水素は外方拡散し得る。アニールによって、光ファイバを他の光ファイバに接合することができる(水素または重水素をプラズマ加熱する。たとえばこの接合は溶融では爆発の可能性がある)。また、これらの分子が原因で、アニールによって付加された感光度が低下する。約1000°Cを超える非常に高いアニール温度は、未結合水素または未結合重水素を外方拡散させることがあるため、通例望ましくない。このため、一実施形態において、光ファイバの製造方法は、ロードする工程の後に、ロードした材料をアニールする工程を含む。
図8は、重水素をロードした非線形光ファイバについて、0時間後(A)、188時間後(B)、260時間後(C)、305時間後(D)、および450時間後(E)の測定スペクトルを示す。ロードしていない非線形光ファイバについては、500nm〜700
nmまでの可視スペクトルにおいて目立った下降が観察されなかった。加えて、非線形光ファイバの寿命を増加させる場合、ロードしていない光ファイバに比べ、重水素をロードすることによって動作時の光ファイバのスペクトル変化が大きく変更することが示された。ロードしていない光ファイバに比べ、劣化は可視スペクトルにおける下降としてではなく、可視出力のなだらかな減少として観察された。短波長の範囲だけが時間とともに大きく変更すると思われる。
一実施形態において、光ファイバの寿命は、重水素と水素をロードしていない他の同質光ファイバの寿命に比べて50%以上、あるいは100%以上、200%以上、500%以上、1000%以上、または10000%以上延長される。スーパーコンティニューム発生に適切なパルスで処理されていない光ファイバの絶対寿命は、用途や、推測としてだが光ファイバコアの特定の材料によって変わり得る。このため、一実施形態において、寿命は100動作時間を超える。あるいは200動作時間、2000動作時間、20000動作時間、または50000動作時間を超える。
図9は、ガラス不純物の少ない非線形光ファイバについて、時間を関数として測定した可視出力を示す。不純物レベル、特にガラス内の塩素Cl原子の量が、光ファイバの寿命に影響すると思われる。少なくともある程度は塩素量が少ないほど、寿命が長くなると思われる。図5に比べて寿命はかなり延長しており、損傷閾値がガラスの不純物レベルによって決定されることを示している。しかし、重水素をロードした光ファイバ(A)の寿命は、ロードしていない光ファイバ(B)に比べ、依然としてかなり増加している。重水素をロードした光ファイバについて、750時間後に見られる出力増加は、ポンプの出力増加によるものである。
コアおよび用途によってはクラッド材における不純物の総数に対する結合重水素または結合水素によって、寿命は延長することが推測される。このため、一実施形態において、光ファイバのコアは固体状のコア(好ましくはシリカ)であり、不純物の総数に対する結合水素および/または結合重水素の割合は10%以上、あるいは20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、99%以上、または99.9%以上である。
本発明は、独立請求項に記載の特徴によって定義される。好適な実施形態は、従属請求項において定義される。特許請求の範囲に記載の参照符号は、特許請求項の範囲を限定するものではない。
幾つかの好適な実施形態を上記に示しているが、本発明はこれらに限定されず、以下の特許請求の範囲に定義する主題の範囲内において、他の方法で実施されてもよいことを重視されたい。特に、非線形微細構造光ファイバの用途を適用することによって本発明を説明しているが、本発明は、高パルスアプリケーションで可視における透過が重要な非線形微小構造光ファイバの他の用途にも適用可能であることを理解されたい。

Claims (10)

  1. コア材とクラッド材とを含む微細構造光ファイバの製造方法であって、前記コア材の少なくとも一部はシリカであり、
    前記製造方法は、前記微細構造光ファイバの形成前に、水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程を含む、微細構造光ファイバの製造方法。
  2. 前記ロード工程は、水素と重水素のうちの少なくとも一方を、前記コア材と前記クラッド材のうちの少なくとも一方に化学的に結合させるように、ロード条件下で前記コア材と前記クラッド材を水素と重水素のうちの少なくとも一方に適切に置くことによって行われる、
    請求項1記載の微細構造光ファイバの製造方法。
  3. 前記ロード工程の条件は、a)上昇した温度T、b)上昇した圧力P、c)後に行われる照射、のうちの少なくとも一つを含む、
    請求項1または2記載の微細構造光ファイバの製造方法。
  4. 前記温度Tは80°C以上であることと、
    前記圧力Pは10バール以上であることと
    のうちの少なくとも一方が成り立つ、
    請求項3記載の微細構造光ファイバの製造方法。
  5. 前記温度Tは100°C以上である、
    請求項3または4記載の微細構造光ファイバの製造方法。
  6. 前記圧力Pは25バール以上である、
    請求項3または4記載の微細構造光ファイバの製造方法。
  7. 前記製造方法は更に、前記ロード工程の後に、前記微細構造光ファイバをアニールするアニール工程を含む、
    請求項1乃至6何れか一項記載の微細構造光ファイバの製造方法。
  8. 請求項1乃至何れか一項記載の微細構造光ファイバの製造方法によって微細構造光ファイバを製造することと、
    前記微細構造光ファイバにパルスを供給するべくパルスポンプ光源を備えることと
    を含む、光学スーパーコンティニュームシステムの製造方法。
  9. コア材とクラッド材とを含む微細構造光ファイバと、パルスポンプ光源とを備える光学スーパーコンティニュームシステムの製造方法であって、前記製造方法は、
    水素と重水素のうちの少なくとも一方によって、前記コア材と、任意で前記クラッド材とをロードするロード工程であって、前記ロード工程は、水素と重水素のうちの少なくとも一方を、前記コア材と前記クラッド材のうちの少なくとも一方に化学的に結合させるように、ロード条件下で前記コア材と前記クラッド材を水素と重水素のうちの少なくとも一方に適切に置くことによって行われる、ロード工程と、
    前記微細構造光ファイバにパルスを供給するべく前記パルスポンプ光源を備えることとを含む、光学スーパーコンティニュームシステムの製造方法。
  10. 前記コア材と、任意で前記クラッド材との前記ロード工程は、前記微細構造光ファイバの形成前に行われる、
    請求項記載の光学スーパーコンティニュームシステムの製造方法。
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