JP6444956B2 - 経皮吸収用組成物 - Google Patents
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Description
また、テストステロンは、加齢の他、腎不全、糖尿病の如き一般的な疾病、性器発育障害などの障害、或いは、肥満などの生理的原因によって減少することがある。
既述の性機能低下により、さまざまな生理学的な変化、例えば、セックスへの関心の低下、インポテンス、筋肉量の減少、骨密度の低下、気分の落ち込み、活力の減退、及び認識機能の低下を含む種々の生理学的変化につながる可能性がある。また、その結果、老人性の性機能低下、所謂「男性更年期」と呼ばれる障害が生じることがある。
これらの治療にテストステロン等の男性ホルモンが使用され、テストステロン等の男性ホルモンの投与は、ホルモン補充療法として、経口剤、注射剤及び経皮吸収型製剤等により行われている。
テストステロンを有効な量で体内に投与することは重要であり、テストステロンを生体に投与するに際して、少なくとも肝臓での初期代謝を避ける目的で、テストステロンを経皮吸収用組成物により投与する方法が種々試みられており、テストステロンを効率よく皮膚透過させる経皮吸収用組成物の提供が望まれている。
例えば、テストステロンと、ミリスチン酸イソプロピルと、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選択される60%〜80%のアルコールと、増粘剤と、水とを含む水性アルコール性ゲルの医薬組成物を皮膚に投与する、経皮吸収性に優れたテストステロン含有組成物を用いて男性被験者の性機能低下を治療する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
テストステロンを包含する活性薬剤と、溶媒系として(ii)グリコール及び(iii)炭素数2〜4のアルコールと水の混合物と、を含む経皮的医薬製剤が提案されており(例えば、特許文献2参照。)、(iv)溶媒系の約40%〜98%の量で存在する低級アルコール及び水の混合物は、混合物中に低級アルコールを約5%〜80%及び水を約20%〜95%の量で含みうることが記載されている。
経皮吸収用組成物の別の例として、テストステロンを包含する活性薬剤と、ゲルを形成しうるポリマーと、ゲル化剤と、を含有し、活性薬剤に吸収性を与えることができる単相のゲル状組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3に記載のゲル状組成物は、プロピレングリコールに代表されるゲルを形成しうるポリマーにゲル化剤であるカルボマー(カルボキシビニルポリマー)を含むゲル状組成物であり、テストステロンを0.015質量%含有させた例が開示されている。特許文献3に記載のゲル状組成物は、低級アルコールを含有してはいないが、水を含まないゲル状組成物であり、均一な組成物を効率よく製造することが困難であり、製造性の点で、なお改良の余地がある。
特許文献3には、テストステロンを0.015質量%、プロピレングリコールを97.485質量%、カルボキシビニルポリマーを2.5質量%含有する組成物を、高せん断(例えば、50Pa〜250Pa)で撹拌して調製した例が記載されているが、高せん断の撹拌装置はコストが高いという問題がある。また、発明者らの検討によれば、高せん断の撹拌装置を用いて撹拌して組成物を調製する場合、カルボキシビニルポリマー等のゲル化剤の分解を引き起こすという問題があることがわかった。
以上のように、各種検討がなされているが、テストステロンを含む経皮吸収型製剤の如き経皮吸収用組成物において、テストステロンが十分に可溶化され、テストステロンの皮膚透過性が良好であり、皮膚刺激の発生が抑制された経皮吸収用組成物は未だ得られていないのが現状である。
[1] テストステロンと、プロピレングリコール(以下、PGと称することがある)、1,3−ブチレングリコール(以下、BGと称することがある)、ジプロピレングリコール(以下、DPGと称することがある)及びポリエチレングリコール(以下、PEGと称することがある)からなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒と、を含み、有機溶媒の総含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し60質量%〜90質量%であり、かつ、炭素数2〜4の一価アルコールの含有量が経皮吸収用組成物の全量に対し10質量%以下である経皮吸収用組成物。
[2] さらに、水を含有し、水の含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し5質量%〜35質量%である[1]に記載の経皮吸収用組成物。
[4] 炭素数2〜4の一価アルコールの含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し0.1質量%以下である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の経皮吸収用組成物。
[5] テストステロンの含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し0.5質量%〜10質量%である[1]〜[4]のいずれか1つに記載の経皮吸収用組成物。
[7] 有機溶媒が、プロピレングリコールを含む[1]〜[6]のいずれか1つに記載の経皮吸収用組成物。
[9] せん断速度100s−1、25℃で測定した粘度が0.5Pa・s〜5Pa・sの範囲にある[1]〜[8]のいずれか1つに記載の経皮吸収用組成物。
さらに、本実施形態の組成物は、親水性の特定有機溶媒を既述の特定の量含有するため、皮膚に適用した場合の感触が良好で、かつ、皮膚への親和性、塗布時の伸びが良好であることから、皮膚の所望の領域に適用することで、皮膚上での保持性にも優れるという利点、及び、汎用の撹拌装置で容易に製造することができ、製造性が良好であるという利点、を有する。
なお、本実施形態は上記の推定機構に何ら制限されない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
さらに、本明細書において組成物に含まれる各成分の量は、組成物中に、各成分に該当する物質が複数含まれる場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本実施形態の組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
本実施形態の組成物は、活性薬剤としてテストステロンを含む。
男性における主要循環アンドロゲンであるテストステロンは、コレステロールから合成される。循環テストステロンは、2つの異なる経路を介してさまざまな17−ケトステロイドに代謝される。テストステロンは、酵素5α―レダクターゼによってジヒドロテストステロン(「DHT」)に、又はアロマターゼ酵素複合体によってエストラジオール(「E2」)に代謝され得ることが知られている。
男性においては、タンパク質に結合したテストステロンのうち、約40%が既述の高親和性の性ホルモン結合性グロブリン(SHBG)と結合しており、残りの60%はアルブミンに弱く結合した状態で存在する。
テストステロンのなかでも、遊離テストステロン及びアルブミンに弱く結合したテストステロンが生体内で生理的に有効な性ホルモンとして作用するため、SHBGと結合していないテストステロンを「生理的に有効なテストステロン」と称する。
テストステロンは市販品として入手可能であり、例えば、和光純薬工業(株)のテストステロンなどが挙げられる。
経皮吸収用組成物の実施形態の一例においては、テストステロンの含有量は、0.6質量%〜8質量%であることがより好ましく、0.9質量%〜7質量%であることがさらに好ましく、0.9質量%〜5質量%であることがよりさらに好ましい。
また、テストステロンの含有量は、経皮吸収用組成物の用途に応じて変更することもできる。例えば、経皮吸収用組成物を塗布剤として使用する場合は、組成物全量に対するテストステロンの含有量は0.5質量%〜5質量%の範囲が好ましく、経皮吸収用組成物を貼付剤として使用する場合は、組成物全量に対するテストステロンの含有量は0.5質量%〜10質量%の範囲が好ましい。塗布剤及び貼付剤については、後述する。
テストステロンの含有量が既述の範囲において、経皮吸収用組成物を皮膚に適用した場合に、テストステロンの効果が十分に期待でき、組成物の安定性が良好である。
本実施形態の組成物は、PG、BG、DPG及びPEGからなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒を経皮吸収用組成物の全量に対し60質量%〜90質量%含有する。特定有機溶媒はテストステロンの溶解性が良好であり、水との親和性を有する親水性溶媒である。
ここで、テストステロンの溶解性が良好であるとは、25℃の有機溶媒に対して、0.5質量%のテストステロンを溶解させ、溶解後、24時間静置した後、結晶の析出が認められないことをいう。
PG、BG、DPG及びPEGは、いずれも生体適合性、親水性が良好な有機溶媒として知られており、皮膚外用剤、化粧料等に広く使用されている有機溶媒である。
PG、BG、DPG及びPEGからなる群より選ばれる有機溶媒は組成物中に1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
本実施形態の経皮吸収用組成物において、特定有機溶媒の総含有量は、60質量%〜90質量%であり、65質量%〜90質量%の範囲が好ましく、70質量%〜85質量%の範囲がより好ましい。
特定有機溶媒の総含有量が60質量%未満であると、テストステロンの十分な溶解性、皮膚透過性が得難く、90質量%を超えて含有すると、均一な組成物の製造が困難となり、製造性に劣ることがある。
BGを用いる場合の含有量は、組成物の全量に対し、2質量%〜90質量%の範囲であることが好ましく、5質量%〜45質量%の範囲であることがより好ましい。
DPGを用いる場合の含有量は、組成物の全量に対し、2質量%〜〜90質量%の範囲であることが好ましく、5質量%〜25質量%の範囲であることがより好ましく、5質量%〜10質量%の範囲であることがさらに好ましい。
PEGを用いる場合の含有量は、組成物の全量に対し、2質量%〜90質量%の範囲であることが好ましく、5質量%〜70質量%の範囲であることがより好ましく、10質量%〜45質量%の範囲であることがさらに好ましい。
本実施形態の経皮吸収用組成物は水を含むことができる。
本実施形態の組成物が溶媒として水を含有する場合の水としては、生体適合性が良好であり、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、注射用水等が好ましく挙げられる。
本実施形態の組成物が溶媒として水を含有する場合の水の含有量は、テストステロンの皮膚透過性、使用感等がより向上するという観点から、経皮吸収用組成物の全量に対し、5質量%〜35質量%の範囲が好ましく、6質量%〜33質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態の組成物が溶媒として水を含有する場合の水の含有量が既述の範囲において、テストステロンの溶解性がより良好となり、かつ、製造性がより良好となる。
なお、本実施形態の組成物には、例えば、pH調整等の目的で、0.1N水酸化ナトリウム等を使用することがある。
本実施形態の組成物が溶媒として水を含有する場合における既述の水の含有量は、溶媒として含有する水の量に加え、例えば、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液等の、組成物に含まれる他の成分の調整に用いられる水の量を加えた量、即ち、組成物における水の総含有量の値を採用するものとする。
本実施形態の組成物は、炭素数2〜4の一価アルコール(以下、低級アルコールと称することがある)を含有することができる。低級アルコールとしては、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールが挙げられ、なかでも、エチルアルコール、1−プロピルアルコールなどが好ましい。
本実施形態の組成物が低級アルコールを含有することで組成物中のテストステロンの溶解性をより向上することができる。一方で、低級アルコールを多く含む組成物は、皮膚に付与するとアルコールに起因する皮膚刺激が生じることがある。また、アルコールに対する感作性がある人には投与し難い。
よって、組成物に低級アルコールを使用する場合には、経皮吸収用組成物の全量に対する低級アルコールの総含有量は10質量%以下であり、4質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが最も好ましい。なお、皮膚刺激をより低下させるという観点からは、炭素数2〜4の一価アルコールを含有しない態様も好ましい。
本実施形態の組成物には、テストステロン、特定有機溶媒等、及び任意成分である水以外に、本実施形態の効果を損なわない範囲において、目的に応じて種々の化合物(以下、他の添加剤と称することがある)をさらに含んでいてもよい。
他の添加剤としては、ゲル化剤、皮膚吸収促進剤、保存剤、酸化防止剤、pH調整剤、緩衝剤、着色剤、界面活性剤、溶解補助剤、粘着剤、粘着増強剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、皮膚保護剤、安定化剤などが挙げられる。
本実施形態の組成物には、ゲル化剤を含んでもよい。組成物がゲル化剤を含むことにより、安定性がより向上し、組成物に対して皮膚への投与により適する物性を与えることができる。
本実施形態の組成物が含みうるゲル化剤としては、水性組成物の増粘剤として公知の高分子化合物等が挙げられ、水性組成物の粘度を調整することでゲル化させることができる化合物であれば特に制限はなく用いることができる。
具体的には、例えば、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、アクリル酸ベースのポリマー(例えば、カルボキシビニルポリマー)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、キトサン、デキストラン、ペクチン及び天然ゴム等の高分子が挙げられる。また、架橋ポリアクリル酸など、分子内に架橋構造を含む高分子なども用いることができる。なかでも、ゲル化剤として、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマーが好ましい。
組成物がゲル化剤を含有する場合、1種のみ含有してもよく、2種以上を含有してもよい。組成物の全量に対するゲル化剤の含有量は、組成物の所望の物性により適宜調整することができる。一般には、0.1質量%〜20質量%の範囲が好ましく、0.3質量%〜3質量%の範囲がより好ましく、0.5質量%〜1.2質量%の範囲であることがさらに好ましい。
本実施形態の組成物は、皮膚吸収促進剤を含んでもよい。
本実施形態の組成物は、特定有機溶媒を特定量含むことで、テストステロンの溶解性及び皮膚透過性に優れる。本実施形態の組成物が、さらに皮膚吸収促進剤を含むことで、テストステロンの皮膚透過性がより向上する。
皮膚吸収促進剤としては、医薬品・化粧品等に適用可能なものであれば特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリエチレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールオレエート、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールイソステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンひまし油、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリステアレート、グリセロールモノオレエート、サリチル酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、ジリノール酸ジイソプロピル、オレイン酸エチル、イソステアリン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、オレイン酸、ソルビン酸、レブリン酸、イソステアリン酸、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ベヘニルアルコール、ココイルサルコシンナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、グリチルリチン酸2カリウム、尿素、ジメチルイソソルビド、N−メチルピロリドン、イソプロパノール、アミノメチルプロパノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、酢酸エチル、炭酸プロピレン、プロピレングリコールジアセテート、シクロメチコン、グルコノラクトン、レモンオイル、メントール、リモネン、α−テルピネオールなどが挙げられ、生体適合性、及び効果の観点から、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、グリセロールモノオレエート、ラウリン酸メチル、セバシン酸ジエチル、サリチル酸エチルヘキシル、メントール、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸、オレイルアルコール、又はミリスチン酸イソプロピルが好ましく、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、又はオレイルアルコールがさらに好ましい。
皮膚吸収促進剤は、本実施形態の組成物に1種のみを含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
組成物に対するミリスチン酸イソプロピルを含有させる場合の含有量の下限値には特に制限はないが、0.1質量%以上であることで、皮膚吸収促進剤を含有する効果が得られると考えられる。
溶解補助剤としては、例えばセバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、α―テルピネオール、l―メントール、オレイン酸、オレイルアルコール等が挙げられ、テストステロンの皮膚透過性、及び効果の観点からセバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、α−テルピネオール、又はl-メントールが好ましい。
補助溶解剤は、本実施形態の組成物に1種のみを含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
保存剤としては、例えば塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブロノポール、パラベン、セトリミド、クロルヘキシジン、クレゾール、イミドウレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェルエチルアルコール、チメロサール、ソルビン酸、これらの塩及び誘導体などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばトコフェロール、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、没食子酸プロピル、亜硫酸、エデト酸、これらの塩及び誘導体などが挙げられる。
(経皮吸収用組成物の剤型)
本実施形態の経皮吸収用組成物を組成物とする際の剤型には特に制限はなく、塗布剤、貼付剤等の剤型とすることができる。
塗布剤としては、ゲル剤(水性ゲル剤、油性ゲル剤)、クリーム剤、軟膏剤、液剤(ローション剤、リニメント剤)などが挙げられる。
貼付剤は、例えば、適切な基材の表面に、テストステロンと粘着剤又は接着剤とを含有する組成物を塗布して形成された、テストステロンを含有し、皮膚に密着し得る粘着層を備える形態を有するか又は、基材とテストステロンを透過し得る放出制御層との間に、テストステロンを含有する組成物が封入された形態を有する。
既述の放出制御層を有する貼付剤の構成の例は、例えば、特開2003−063954号公報の段落〔0007〕〜段落〔0022〕の記載及び図1に記載されており、本実施形態において参照することができる。
本実施形態の組成物は、せん断速度100s−1、25℃で測定した粘度が0.5Pa・s〜5Pa・sの範囲にあることが好ましく、1Pa・s〜4Pa・sの範囲にあることがより好ましい。
粘度の測定は、第16改正日本薬局方に記載の方法に準拠して、コーンプレート型粘度計を用いて標準条件で行うことができる。
組成物の粘度は公知の方法により調整することができる。粘度の調整方法としては、既述の有機溶媒の種類及び含有量の少なくともいずれかを調整する方法、ゲル化剤(粘度調整剤)の種類及び含有量の少なくともいずれかを調整する方法、塩濃度を調整する方法などが挙げられる。
なお、組成物をローション剤、或いは、軟膏剤として用いる場合には、組成物としての好ましい粘度は、既述の粘度範囲に含まれないことがある。
本実施形態の経皮吸収用組成物の25℃におけるpHは、組成物0.1gを1mlの水で希釈して得た希釈液を測定した際のpHとして、3.0〜8.0の範囲であることが好ましく、3.5〜6.0の範囲であることがより好ましい。
組成物のpHが上記範囲であることで、組成物の安定性がより向上し、皮膚への刺激がより低減される。
組成物のpHは、公知の方法で制御することができる。組成物のpHの制御方法としては、例えば、pH調整剤を用いる方法、緩衝剤を用いる方法などが挙げられる。
本実施形態の組成物は、上記構成としたため、テストステロンの皮膚透過性に優れる。皮膚透過性は、in vitro皮膚透過実験法、in vivo皮膚透過実験法等で評価することができる。
in vitro皮膚透過実験法としては、例えば拡散セルを用いる方法が挙げられる。拡散セルとしては、フランツ型拡散セル等の垂直型セル、水平型セルなどが挙げられる。拡散セルは2つのセルパーツからなり、その2つのセルパーツの間に透過性を測定する膜を挟んで用いる。膜としては、ヒト皮膚、動物皮膚、三次元培養皮膚モデル、人工膜などが挙げられる。例えば、以下の評価方法例に示すヘアレスラット摘出皮膚を用いた皮膚透過性試験にて評価することができる。
8週齢のSPF(Specific Pathogen Free:特定病原体不在)ヘアレスラット(石川実験動物研究所)の摘出皮膚を、フランツ型拡散セル(パーメギア社、ジャケット付静置型、有効透過面積1cm2、レセプター容積8mL)に、皮膚の角質層が上面になる方向で装着する。皮膚上面の角質層側に、評価対象である組成物4mg/cm2を均一に塗布し、セル内に充填されたレセプター液に、皮膚を介して溶出してくるテストステロン濃度を測定する。拡散セルはジャケット内に32℃の水を循環させ皮膚表面温度を保ち、レセプター液として、pH7.4のリン酸緩衝液を用いる。非閉塞状態でレセプター液をマグネティックスターラーで撹拌し、24時間後にレセプター液を採取し、採取したのと同じ容量の新しいレセプター液で置換する。
採取したレセプター液を、高速液体クロマトグラフィ(Alliance HPLCシステム:商品名、waters社)を用いてレセプター液中のテストステロン濃度を測定する。
24時間で透過したテストステロン量が4μg/cm2以上である場合、十分な皮膚透過性を有する製剤(組成物)であると評価する。
本実施形態の組成物は、適用対象者の皮膚に投与して使用される。組成物が、ローション、水性ゲル、軟膏又はクリーム状の場合には、適用対象者の皮膚に塗るか、或いは、置かれることで投与される。皮膚上に投与された組成物は、経時により乾燥する場合がある。
組成物を投与する皮膚領域には特に制限はないが、テストステロンの効果をより確実にするという観点からは、適用対象者の両大腿部外側、肩部、腹部又は臀部に投与することが好ましい。組成物の投与は、手指で行なってもよく、スパーテルなどで行なってもよく、ディスペンサーを備えた容器から直接皮膚に投与してもよい。組成物の投与を手指にて行った場合には、所望されない領域におけるテストステロンの皮膚吸収を抑制するため、投与後は手指を良く洗浄することが好ましい。
本実施形態の組成物は、テストステロンの皮膚透過性に優れる。よって、組成物の投与により、テストステロンが速やかに皮膚を透過し、血液中のテストステロン濃度が望ましい範囲にまで増加するため、低テストステロンに起因する症状の緩和或いは回復が期待できる。
包装容器は、内包される組成物、特にテストステロンを安定に保持することができれば特に制限はない。包装容器としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂からなる容器又は包装袋、アルミニウム等の金属をラミネートした樹脂等からなる容器又は包装袋等が挙げられる。また、ガラス容器などを使用することもできる。
基材の片面に本実施形態の組成物を配置して貼付剤とすることができる。組成物を配置した側が皮膚に接着する面となる。皮膚に接着する面には、生体適合性の粘着剤層又は接着剤層を有していてもよい。粘着剤層又は接着剤層は、既述の如き本実施形態の組成物を含む層であってもよく、組成物を含有する層とは別に設けられた層であってもよい。接着剤又は粘着剤で貼付剤を皮膚に貼付し、固定化することができる。接着剤又は粘着剤を有さない貼付剤の場合は、テープなどで貼り薬を皮膚に固定して適用することができる。
本実施形態の組成物を貼付剤の形態で用いることで、貼付剤を固定した領域から、一定の期間、連続してテストステロンが皮膚に浸透して体内に供給される。
貼付剤は、塗布剤と異なり、長期間薬物を体内に供給することが可能である。しかし、皮膚に適用できる面積がある程度限定される。このため、貼付剤に用いる組成物として、テストステロンを塗布剤に配合する場合よりも高濃度に配合した経皮吸収用組成物を作製することが好ましい。本実施形態の組成物におけるテストステロンの含有量は、組成物の全量に対し0.5質量%〜10質量%であることが好ましいことは既述の通りであるが、貼付剤に用いる場合、本実施形態の組成物において、例えば、テストステロンの濃度を、2質量%〜10質量%の範囲といった高濃度にすることにより、限定された面積でも薬物を十分量保持した貼付剤が作製できる。
本実施形態の組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法に従い製造することができる。
製造方法の一例を挙げれば、例えば、テストステロンと、特定有機溶媒と、さらに所望により含有させる有機溶媒に可溶な他の添加剤と、を撹拌混合してテストステロン溶液を調製すること、水と、さらに所望により含有されるゲル化剤などの水性成分とを撹拌混合して水性ゲルを調製すること、得られたテストステロン溶液と、水性ゲルとを均一に混合し、テストステロンを含有する水性ゲル状組成物を調製すること、を含む製造方法がある。
例えば、本明細書に記載された経皮吸収用組成物を、それが必要な患者へ投与することで、低テストステロンに起因する疾病に対する治療方法が提供される。例えば、経皮吸収用組成物として、テストステロンを有効量体内に投与する性機能低下の治療方法が提供され、性機能低下により生じる種々の生理学的な変化、例えば、セックスへの関心の低下、インポテンス、筋肉量の減少、骨密度の低下、気分の落ち込み、活力の減退、及び認識機能の低下などを抑制する効果が期待される。本実施形態の経皮吸収用組成物によりテストステロンを経皮投与することで、経口投与する場合における、消化管からの吸収性の低さ、肝臓における代謝による有効量の低下等の懸念がなく、血液中のテストステロン濃度を所望の範囲に制御することができる。
表1〜表2に示す組成に従い、まず、テストステロン、有機溶媒、及びミリスチン酸イソプロピルを容器内で撹拌し、テストステロン溶液を調製した。
なお、表1〜表2に記載の数値は、組成物の全量に対する各成分の含有量(質量%)を示す。また、下記の各表中における空白部分は、その成分を含有しないことを示す。
別の容器に、ゲル化剤である表1〜表2に記載の量のカルボキシビニルポリマーを、表1〜表2に記載の量の注射用水に溶解させ、水性ゲルを調製した。
得られたテストステロン溶液と、水性ゲルとを、自転公転式ミキサー(あわとり練太郎ARE−310、シンキー社)を用いて、目視で均一になるまで混合し、水性ゲル状の経皮吸収用組成物を得た。なお、実施例に用いた自転公転式ミキサーは内容物を撹拌羽根で直接せん断しないタイプの一般的な撹拌装置である。
・テストステロン(和光純薬工業(株))
・プロピレングリコール(和光純薬工業(株))
・1,3−ブチレングリコール((株)ダイセル)
・ジプロピレングリコール(和光純薬工業(株))
・ポリエチレングリコール(商品名:マクロゴール400(日油(株)、分子量:400)
・ポリエチレングリコール(商品名:ポリエチレングリコール1000、和光純薬工業(株)、分子量:1000)
・エタノール(和光純薬工業(株))
・水(注射用水)
・ミリスチン酸イソプロピル(和光純薬工業(株))
・l−メントール(Alfa Aesar)
・α−テルピネオール(和光純薬工業(株))
・カルボキシビニルポリマー(カーボポール(登録商標)980NF、ルーブリゾール社)
上記で得られた実施例1〜実施例24、比較例1〜比較例7の経皮吸収用組成物について、以下の評価を行った。
テストステロン溶液と水性ゲルとを混合した直後に得られた経皮吸収用組成物と、混合後25℃にて1日間経過した経皮吸収用組成物とを目視にて観察し、結晶析出の有無を確認した。
A:混合直後、1日経過後とも結晶析出は目視にて認められず、均一な組成物であった。
B:混合直後、又は1日経過後に結晶析出が目視にて認められた
結果を表1〜表2に示す。
他方、比較有機溶剤であるグリセリンを用いた比較例3及び特定有機溶媒を用いてはいるが、含有量が本発明の範囲外である比較例4〜比較例7の経皮吸収用組成物では、テストステロンの析出が観察され、均一な組成物が得られなかった。
実施例10において、さらに、ポリソルベート80を2質量%、ミリスチン酸イソプロピルを0.5質量%含有し、注射用水の含有量を15.88質量%とした以外は実施例10と同様にして実施例25を調製した。
また、実施例15において、さらに、ポリソルベート80を2質量%、ミリスチン酸イソプロピルを0.5質量%含有し、注射用水の含有量を15.88質量%とした以外は実施例15と同様にして実施例26の経皮吸収用組成物を調製した。
さらに、実施例18において、ポリソルベート80を2質量%、ミリスチン酸イソプロピルを0.5質量%含有し、注射用水の含有量を15.88質量%とした以外は実施例18と同様にして実施例27の経皮吸収用組成物を調製した。
なお、表3に記載される組成物における各成分の含有量の単位は質量%である。
8週齢のSPFヘアレスラット(石川実験動物研究所)の摘出皮膚を、ジャケット付きフランツ型拡散セル(パーメギア社、ジャケット付静置型、有効透過面積1cm2、レセプター容積8mL)に、皮膚の角質層が上面になる向きに装着した。皮膚上面の角質層側に、評価対象である組成物4mg/cm2を均一に塗布し、セル内に充填されたレセプター液に、皮膚を介して溶出してくるテストステロン濃度を測定した。
拡散セルは、ジャケット内に32℃の水を循環させ皮膚表面温度を32℃に保ち、レセプター液として、pH7.4のリン酸緩衝液を用いた。非閉塞状態でレセプター液をマグネティックスターラーで撹拌し、24時間後に、0.3mLのレセプター液を採取した。
採取したレセプター液中のテストステロン濃度を、高速液体クロマトグラフィ(Alliance HPLCシステム、waters社)を用いて測定した。結果を表3に示す。
皮膚吸収促進剤であるミリスチン酸イソプロピルを用いない実施例10の経皮吸収用組成物は、エタノールにミリスチン酸イソプロピルを加えた比較例1の経皮吸収用組成物と同等の皮膚透過性を示した。また、実施例10と実施例25との対比より明らかなように、皮膚吸収促進剤であるミリスチン酸イソプロピルを含有することで、皮膚透過性がより向上する。
実施例4において、特定有機溶媒であるプロピレングリコールの含有量を表4に記載の量に変更した実施例28、実施例29、比較例8〜比較例10の経皮吸収用組成物を調製した。なお、表4に記載される組成物における各成分の含有量の単位は質量%である。
次に、得られた実施例28、実施例29、さらに、実施例4、比較例8〜比較例10の経皮吸収用組成物について、以下の方法でテストステロンを含む経皮吸収用組成物の製造性を評価した。
結果を表4に示す。
テストステロン溶液と、水性ゲル又はカルボキシビニルポリマーを自転公転式ミキサーで混合した直後に得られた経皮吸収用組成物を目視にて観察し、水性ゲルが均一に分散したかを評価した。
A:水性ゲルが均一に分散し、均一な組成物であった。
B:水性ゲル又はカルボキシビニルポリマーがほぐれず、不均一な組成物であった。
表5の組成に従い、実施例1と同様の方法で実施例30〜実施例39及び比較例11の経皮吸収用組成物を製造し、実施例1〜24と同様のテストステロンの溶解性評価を行った。
下記表6〜表7に記載の組成に従い、実施例1と同様の方法で実施例40〜実施例52の経皮吸収用組成物を製造し、評価対象である組成物300mg/cm2を均一に塗布したこと以外は実施例25と同様の方法で実施例35〜実施例37、実施例40〜実施例52及び比較例11の経皮吸収組成物のテストステロンの皮膚透過性を評価した。
Claims (12)
- テストステロンと、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の有機溶媒と、水と、ゲル化剤と、を含み、
前記有機溶媒の総含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し60質量%〜90質量%であり、かつ、炭素数2〜4の一価アルコールの含有量が経皮吸収用組成物の全量に対し10質量%以下である水性ゲル状組成物である経皮吸収用組成物。 - 前記水の含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し5質量%〜35質量%である請求項1に記載の経皮吸収用組成物。
- 前記炭素数2〜4の一価アルコールの含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し4質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の経皮吸収用組成物。
- 前記炭素数2〜4の一価アルコールの含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し0.1質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
- 前記テストステロンの含有量が、経皮吸収用組成物の全量に対し0.5質量%〜10質量%である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
- 前記有機溶媒が、プロピレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
- 前記有機溶媒が、プロピレングリコールを含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
- さらに、α−テルピネオールを含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
- さらに、セバシン酸ジエチルを含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
- さらに、パルミチン酸イソプロピル、及びオレイルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種含有する請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
- せん断速度100s−1、25℃で測定した粘度が0.5Pa・s〜5Pa・sの範囲にある請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
- 適用対象者の皮膚に塗布するか、或いは、基材の片面に配置し、配置した側を皮膚に接着させて使用する請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の経皮吸収用組成物。
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