以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、給紙部1A、装置本体1B、および排紙部1Cを備える。なお、給紙部1Aおよび排紙部1Cを備えず、装置本体1Bに給紙部および排紙部を備えて画像形成装置1を構成してもよい。
給紙部1Aは用紙を収容し、装置本体1Bからの指示に従って用紙を給紙する。装置本体1Bは、給紙部1Aから給紙された用紙に画像を形成する。排紙部1Cは、装置本体1Bからの指示に従って装置本体1Bによって画像形成された用紙にステープル等の処理を行った後、排紙する。
図2は、画像形成装置1の制御系の主要部を示すブロック図である。
図1、図2に示す装置本体1Bは、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。装置本体1Bには、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色に対応する感光ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向(鉛直方向)に直列配置し、中間転写ベルト421に各色トナー像を順次転写させる縦型タンデム方式が採用されている。すなわち、装置本体1Bは、感光ドラム413上に形成されたYMCKの各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、画像を形成する。
図1、図2に示すように、装置本体1Bは、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着装置60、および制御部80を備える。
制御部80は、CPU81、ROM82、RAM83等を備える。CPU81は、ROM82または記憶部72から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM83に展開し、展開したプログラムと協働して、装置本体1Bの各ブロック、給紙部1A、および排紙部1Cの動作を制御する。
通信部71は、例えばネットワークカード、モデム、USB等の各種インターフェースを有する。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリーやハードディスクドライブで構成される。
制御部80は、通信部71を介して、LAN、WAN等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部80は、例えば、外部の装置から送信されたページ記述言語(PDL)による画像データ(入力画像データ)を受信し、これに基づいて用紙に画像を形成させる。また、制御部80は、通信部71を介して、給紙部1Aおよび排紙部1Cとの間で各種データの送受信を行う。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。
表示部21は、制御部80から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。また、ユーザーによるタッチ操作を受け付けて、操作信号を制御部80に出力する。
操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部80に出力する。ユーザーは、操作表示部20を操作して、画質設定および、倍率設定、応用設定、出力設定、用紙設定などの画像形成に関する設定および用紙搬送指示を行うことができる。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部80の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41および中間転写ユニット42等を備える。
画像形成ユニット41は、Y成分用、M成分用、C成分用、K成分用の4つの画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kで構成される。画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有するので、以下では同一の符号で示す。画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光を受けて一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダーに分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
帯電装置414は、例えばスコロトロン帯電装置やコロトロン帯電装置等のコロナ放電発生器で構成される。帯電装置414は、コロナ放電によって感光ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
露光装置411は、例えば複数の発光ダイオード(LED)が直線状に配列されたLEDアレイ、個々のLEDを駆動するためのLPH駆動部(ドライバーIC)、およびLEDアレイからの放射光を感光ドラム413上に結像させるレンズアレイ等を有するLEDプリントヘッドで構成される。LEDアレイの1つのLEDが、画像の1ドットに対応する。制御部80がLPH駆動部を制御することにより、LEDアレイに所定の駆動電流が流され、特定のLEDが発光する。
露光装置411は、感光ドラム413に対して各色成分の画像に対応する光を照射する。感光ドラム413の電荷発生層で発生した正電荷が電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。これにより、感光ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、各色成分の現像剤(例えばトナーと磁性キャリアーとからなる二成分現像剤)を収容しており、感光ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。具体的には、現像剤担持体(現像ローラー)に現像バイアス電圧が印加され、感光ドラム413と現像剤担持体との電位差によって現像剤担持体上の帯電トナーが感光ドラム413の表面の露光部に移動し、付着する。
ドラムクリーニング装置415は、感光ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、およびベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置される支持ローラー423が駆動ローラーであることが好ましい。駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光ドラム413に圧接されることにより、感光ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、複数の支持ローラー423のうちの一つに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421に対向して配置される支持ローラー423はバックアップローラーと呼ばれる。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラーに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙へトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着ユニット610に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
なお、中間転写ユニット42において、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(ベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および通紙経路部53等を備える。給紙部51は、給紙部1Aから搬送された用紙を通紙経路部53へ導く。通紙経路部53は、中間搬送ローラー等を含む複数の搬送ローラーを備える。通紙経路部53は、給紙部51から給紙された用紙を画像形成部40(二次転写部)、定着ユニット610、排紙部52の順に搬送する。排紙部52は、通紙経路部53から搬送された用紙を排紙部1Cへ導く。
定着装置60は、各種ローラー等を備える定着ユニット610、定着ユニット610を支持する台板620から構成される。
図3は、定着ユニット610の構成を示す図である。定着ユニット610は、加熱ローラー61、上加圧ローラー62、定着ベルト63、下加圧ローラー64等を備える。
加熱ローラー61は、定着ベルト63の内周面に当接するとともに、上加圧ローラー62の上方に所定の間隔を隔てて配置される。また、加熱ローラー61は、加熱ローラー61の内部に配置される加熱源61A(図2参照)により熱せられ、定着ベルト63にその熱を伝える。上加圧ローラー62は、定着ベルト63の内周面に当接するとともに、下加圧ローラー64に対向して配置される。また、上加圧ローラー62は、定着ベルト63を介して下加圧ローラー64に圧着することによって定着ベルト63と下加圧ローラー64との間にニップ部を形成する。定着ベルト63は、加熱ローラー61と上加圧ローラー62とに懸架される無端状ベルトである。下加圧ローラー64は、上加圧ローラー62に対向して配置され、定着ベルト63の回転に従動して回転するローラーである。
制御部80は、加熱源61A(図2参照)の出力を制御することで加熱ローラー61を加熱する。さらに、制御部80は、図示しない駆動部によって加熱ローラー61と上加圧ローラー62とを回転させ、定着ベルト63を回転させる。この回転によって加熱ローラー61の熱が定着ベルト63の全体に伝わる。
用紙は、図3の右から左に向かって搬送され、定着ベルト63と下加圧ローラー64との間のニップ部にニップされる。ニップ部にニップされることによって、用紙は加熱および加圧され、用紙上のトナー像が用紙に定着する。
図4(a)は、定着装置60の外観を示す図である。また、図4(b)は、定着ユニット610の外装を一部除いた図である。定着装置60は、定着ユニット610、台板620からなる。定着ユニット610の筐体は、少なくとも前パネル611、後パネル612、底板613によって構成される。定着装置60は装置本体1Bの内部に配置され、定着装置60へ搬送された用紙は搬送方向D1の方へ搬送される。
前パネル611および後パネル612は、加熱ローラー61、上加圧ローラー62、下加圧ローラー64を、各ローラーの回転軸の両端を支持することにより、支持する。図4(a)は定着ユニット610の外装により前パネル611、後パネル612が見えない状態であるが、図4(b)は前パネル611より手前側の外装を図示していないため、前パネル611が見える状態である。図4(b)のように、各ローラー(加熱ローラー61、上加圧ローラー62、下加圧ローラー64)の回転軸の一端が前パネル611に支持される。後パネル612も前パネル611と同様の構造である。なお、各ローラーは回転軸が平行になるように支持される。底板613は、前パネル611および後パネル612を底板と垂直に固定する。台板620は、定着ユニット610が揺動可能となるように底板613を支持する。なお、定着ユニット610は本発明の第1の支持部材として機能し、台板620は本発明の第2の支持部材として機能する。
図5は、台板620を上から見た図である。図5の右側が装置本体1Bの前側、左側が装置本体1Bの後ろ側である。台板620は、受け部621を複数有する。受け部621は、図5のように定着ユニット610が主走査方向D2に揺動可能に支持するように台板620に取り付けられる。また、受け部621は、定着ユニット610を安定して支持できるよう、図5のように2列に設けられる。また、受け部621はコロ(回転体)によって構成される。
図2に戻り、揺動部91および調整部92について説明する。
揺動部91は、制御部80からの指示に基づいて、定着ユニット610を台板620に対して主走査方向に揺動(定着揺動)させる。
図6に、定着ユニット610を揺動させる揺動部91の構成の一例を示す。揺動部91は、揺動モーター91A、ギア91B、ギア91Cを備えている。揺動モーター91Aは、例えばステッピングモーター等から構成され、制御部80からの指示に基づいて正回転および逆回転する。ギア91Bは、揺動モーター91Aの回転軸に取り付けられて、ギア91Bの周面の溝部がギア91Cの溝部にかみ合うようにして取り付けられている。ギア91Cの一端部は、前パネル611に固定して取り付けられている。
揺動モーター91Aが正回転および逆回転すると、ギア91Bおよびギア91Cを介して定着ユニット610が受け部621の上に乗った状態で主走査方向D2に揺動する。定着ユニット610が揺動されるのに伴って、定着ユニット610の内部に設置された加熱ローラー61、加熱源61A、上加圧ローラー62、定着ベルト63、下加圧ローラー64等も定着ユニット610と一体となって主走査方向D2に揺動する。
調整部92は、制御部80からの指示に基づいて、加熱ローラー61の回転軸の端部を後パネル612の面上で移動させることによって、ローラーの平行度を調整する(加熱ローラー61、上加圧ローラー62、下加圧ローラー64の回転軸が平行を保つように調整する)。なお、ローラーの平行度を調整する際は、回転軸の端部を前パネル611の面上で移動させてもよいし、前パネル611および後パネル612の両方の面上で移動させてもよい。すなわち、回転軸の端部を前パネル611および後パネル612の少なくとも一つの面上で移動させればよい。
次に、画像形成装置1および定着装置60の動作について説明する。
図7は、画像形成装置1において実行されるローラー平行度調整処理を示すフローチャートである。この処理は、制御部80のROM82に記憶されているプログラムとCPU81との協働によるソフトウェア処理によって実現される。
まず、制御部80は、画像形成に関するジョブが実行中であるか否かを判断する(ステップS11)。例えば、制御部80は、通信部71を介して画像形成装置1に接続された外部の装置または操作部22からユーザーによって画像形成に関するジョブを実行する指示が入力されたか否かによって、画像形成に関するジョブが実行中であるか否かを判断する。
画像形成に関するジョブが実行中であると制御部80が判断した場合(ステップS11でYES)、制御部80は、揺動部91によって定着ユニット610を台板620に対して揺動させる定着揺動を実施するか否かを判断する(ステップS12)。例えば、定着ユニット610内に用紙センサーを設け、用紙センサーの検出結果に基づいて、定着ベルト63と下加圧ローラー64との間に用紙がニップされていないと判断した場合には、制御部80は定着揺動を実施すると判断し、定着ベルト63と下加圧ローラー64との間に用紙がニップされていると判断した場合には、制御部80は定着揺動を実施しないと判断する。
定着揺動を実施するか否かを制御部80が判断する他の手法として、定着ベルト63の同一箇所を用紙の端部が通過した距離に応じて定着揺動を実施するか否かを判断してもよい。具体的には、定着ユニット610へ用紙が搬送される際、まず、制御部80は、画像形成を行う用紙のサイズに応じて、定着ベルト63の主走査方向における用紙の端部が通過する位置を記憶部72から取得する。次に、その位置を通過した用紙の搬送方向における長さを算出する。この長さに基づく値を、記憶部72に記憶されている位置ごとの損傷度のうち、その位置に対応する損傷度に加算することで新たな損傷度を算出して記憶部72に記憶する。制御部80は、定着揺動を実施するか否かの判断時において、記憶部72に記憶された損傷度が予め定められた閾値以上であれば定着揺動を実施すると判断し、記憶部72に記憶された損傷度が予め定められた閾値未満であれば定着揺動を実施しないと判断する。
定着揺動を実施すると制御部80が判断した場合(ステップS12でYES)、制御部80は、揺動部91によって定着揺動を実施させる。定着揺動では、制御部80は、定着ユニット610を揺動させる位置を決定し、決定した揺動位置に基づいて揺動モーター91Aに駆動信号を供給して駆動させ、定着ユニット610を主走査方向D2に移動させる。定着揺動を実施しないと制御部80が判断した場合(ステップS12でNO)、処理はステップS15へ進む。
定着揺動の実施後、制御部80は、記憶部72に記憶されている調整テーブル(図8(b)参照)を参照し、ローラー平行度調整量を取得する(ステップS13)。ローラー平行度調整量とは、定着揺動によって生じるローラー平行度のずれを、揺動部91によって定着ユニット610を揺動させる揺動位置に基づいて調整するための調整量である。ここで、ローラーの平行度は、ローラー平行度を確認せずに、定着揺動の揺動位置に基づいて調整される。なお、揺動部91によって定着ユニット610を揺動させる揺動位置は、揺動部91によって定着ユニット610が揺動される前に制御部80が決定した揺動位置であってもよいし、揺動部91によって定着ユニット610が揺動された後に定着ユニット610の位置が検出できるセンサー等を用いて定着ユニット610の位置を検出することによって揺動位置を検出してもよい。
図8に、ローラー平行度調整に用いるテーブルの例を示す。図8(a)は、揺動部91によって定着ユニット610を揺動させる揺動位置ごとに、その揺動位置に定着ユニット610が揺動された場合に前パネル611および後パネル612が正常な位置からどれだけ歪むかの歪量を示すテーブル(歪テーブル)である。図8(b)は、揺動部91によって定着ユニット610を揺動させる揺動位置ごとに、その揺動位置に定着ユニット610が揺動された場合に加熱ローラー61の回転軸の端部を後パネル612の面上でどれだけ搬送方向に移動させるか(ローラー平行度の調整量)を示すテーブル(調整テーブル)である。これらのテーブルは、記憶部72に記憶される。図8(c)は、歪量やローラー平行度の調整量の算出を説明するのに用いる図である。
歪テーブル、調整テーブルにおいて、揺動部91によって定着ユニット610を揺動させる揺動位置に対し、−5ミリから5ミリの範囲において1ミリ毎に歪量やローラー平行度の調整量が記憶部72に記憶される。ここで、定着ユニット610の台板620に対する所定の基準位置が0ミリであり、主走査方向において一つの向きが基準位置からの正の長さで表され、その向きと反対の向きが基準位置からの負の長さで表される。なお、受け部621の高さおよびローラー平行度の調整量は、揺動部91によって定着ユニット610を揺動させる揺動位置に対して必ずしも1ミリ毎に記憶部72に記憶させる必要はなく、1ミリよりも長い間隔で記憶させてもよいし、1ミリより短い間隔で記憶させてもよい。
歪テーブルは、揺動部91によって定着ユニット610をある揺動位置に揺動させた場合に、前パネル611および後パネル612が正常な位置(パネルが鉛直方向に設けられている場合の位置)からどれだけ傾いているかを実験により測定し、この測定を各揺動位置に対して行うことで作成される。具体的には、前パネル611および後パネル612に対し、パネルが正常な位置にある場合のパネル底辺端部(のどちらか一方)の高さを0ミリ(基準位置)とし、揺動部91によって定着ユニット610をある揺動位置に揺動させた場合のパネル底辺端部の高さを測定する。前パネル611に対して測定した結果を前パネル歪量、後パネル612に対して測定した結果を後パネル歪量とし、「前パネル歪量−後パネル歪量」を算出することで図8(c)のYが算出でき、これが図8(a)の歪量である。なお、歪テーブルの作成は、一台一台の定着装置60に対して出荷前に行われるのが好ましい。
調整テーブルは、歪テーブルが作成されると、歪テーブルに基づいて作成される。各揺動位置(−5ミリから5ミリ)およびローラー(加熱ローラー61、上加圧ローラー62、下加圧ローラー64)の組み合わせに対し、歪テーブルに基づいたその揺動位置に対する歪量(図8(c)のY)、前パネル611および後パネル612の搬送方向における長さ(図8(c)のW)、そのローラーのパネル底辺からの高さ(図8(c)のH)、に基づいて、ローラーの回転軸の正常な位置からのずれ(図8(c)のX)に対応する値が式X=Y×H/Wによって算出される。そのずれ(X)に対応してローラー平行度の調整量が決定され、調整テーブルが作成される。なお、いま示したローラー平行度調整量の算出方法は一例であり、これに限定されるものではない。
図7に戻り、制御部80は、記憶部72に記憶されている調整テーブルからローラー平行度を調整するための調整量を取得した後(ステップS13の後)、記憶部72に記憶されている調整テーブルから取得したローラー平行度調整量に基づき、調整部92にローラー平行度を調整させる(ステップS14)。
図9に、調整部92として偏芯カム921を用いたローラー平行度調整の例を示す。調整部92は、後パネル612に配置される。調整部92は、偏芯カム921、リンク部材922、リンク部材923等によって構成される。偏芯カム921は、単一のカム軸921Aに固定され、カム軸921Aを中心に回転する。カム軸921Aは図示しない駆動部(例えば、ステッピングモーター)から動力を伝達されることによって回転する。リンク部材922は、偏芯カム921へ向けて付勢され、偏芯カム921に圧接するとともに、リンク部材923に軸支される。また、リンク部材922は、リンク支点922Aにより支持され、リンク支点922Aを中心として所定の範囲内で回転可能である。リンク部材923は、リンク部材922および加熱ローラー61の回転軸端部に軸支され、搬送方向に平行となるように取り付けられる。リンク部材922とリンク部材923とを接続する軸および加熱ローラー61の回転軸は、後パネル612の面上で搬送方向に平行に移動可能に取り付けられる。
制御部80は、記憶部72に記憶されている調整テーブルから取得したローラー平行度調整量に基づき、カム軸921Aの回転量を制御する。カム軸921Aが当該回転量だけ回転することによって、偏芯カム921がそれに対応して回転する。さらに、リンク部材922、リンク部材923によって偏芯カム921の回転運動が、加熱ローラー61の回転軸端部を後パネル612の面上で搬送方向に直線移動する運動に変えられる。このようにして、ローラー平行度調整量の距離だけ加熱ローラー61の回転軸端部を移動させる。
図7に戻り、制御部80は、記憶部72に記憶されている調整テーブルから取得したローラー平行度調整量に基づき、調整部92にローラー平行度を調整させた後(ステップS14の後)、画像形成に関するジョブが継続されるか否かを判断する(ステップS15)。ジョブが継続されると制御部80が判断した場合(ステップS15でYES)、ステップS12から再び処理を行う。ジョブが継続されないと制御部80が判断した場合(ステップS15でNO)、ローラー平行度調整処理を終了する。
図10は、ローラー平行度調整処理の変形例を示すフローチャートである。ステップS21からステップS24は、図7のステップS11からステップS14と同様であるため、説明を省略する。
記憶部72に記憶されている調整テーブルから取得したローラー平行度調整量に基づき、調整部92にローラー平行度を調整させた後(ステップS24の後)、制御部80は、図示しないベルト位置検出センサーに定着ベルト63の位置を検出させる(ステップS25)。ベルト位置検出センサーは、主走査方向において定着ベルト63の両側端部付近に配置され、定着ベルト63の主走査方向における端部位置を検出する。制御部80は、ベルト位置検出センサーから定着ベルト63の位置情報に関する出力に基づいて、定着ベルト63の位置を取得する。
次に、制御部80は、ステップS25でベルト位置検出センサーに検出させた定着ベルト63の位置が所定範囲内であるか否かを判断する(ステップS26)。制御部80は、ベルト位置検出センサーから取得した定着ベルト63の主走査方向における端部位置に基づき、その端部位置が予め定められた位置以上に主走査方向において定着ベルト63の中心に対して外側である場合、定着ベルト63の位置が所定範囲外であると判断する。そうでない場合、定着ベルト63の位置が所定範囲内であると判断する。定着ベルト63の位置が所定範囲内であると制御部80が判断した場合(ステップS26でYES)、制御部80は、画像形成に関するジョブが継続されるか否かを判断する(ステップS27)。ステップS27は、図7のステップS15と同様である。
ベルト位置検出センサーに検出させた定着ベルト63の位置が所定範囲外であると制御部80が判断した場合(ステップS26でNO)、制御部80は、ローラー平行度調整が正常に実行されていない旨の警告を表示部21に表示させる(ステップS28)。なお、制御部80は、ベルト位置検出センサーに検出させた定着ベルト63の位置が所定範囲外であると制御部80が判断した場合に、画像形成装置1の動作を停止させてもよい。また、ローラー平行度調整が正常に実行されていない旨の警告を表示部21に表示させるとともに画像形成装置1の動作を停止させてもよい。
以上説明したように、本実施の形態の定着装置60および画像形成装置1によれば、制御部80は、定着ユニット610をどの位置まで揺動部91に揺動させるか(揺動位置)を決定し、揺動位置に基づいて定着ベルト63が懸架されている複数のローラーの平行度を調整するので、定着ベルトの損傷を防止することができる。ここで、複数のローラーの平行度の調整とは、複数のローラーすべてを移動させるものに限らず、複数のローラーのうち一つのローラーの回転軸を他のローラーの回転軸に平行になるように移動させるものも複数のローラーの平行度の調整に含む。
また、ローラー平行度の調整を、定着ベルト63によってトナー像を用紙に定着させていないタイミング(例えば、定着ベルト63と下加圧ローラー64との間に用紙がニップされていないタイミング)で行うので、トナー像を用紙に定着させる際にローラー平行度の調整によって定着ベルト63が移動して、適切にトナー像を定着できない箇所が生じる等の不具合が生じることを防止することができる。
また、制御部80は、ローラー平行度を調整した後、検知部(例えば、ベルト位置検知センサー)によって複数のローラーの平行度が正常に調整されていないと判断した場合は、表示部21に警告画面を表示させるので、ユーザーは表示部21に表示された警告画面を確認して、複数のローラーの平行度が正常に調整されていないことを知ることができる。それによって、さらに、ユーザーは必要に応じてメンテナンス等の処置を行うことができる。
また、制御部80は、ローラー平行度を調整した後、検知部(例えば、ベルト位置検知センサー)によって複数のローラーの平行度が正常に調整されていないと判断した場合は、画像形成装置の動作を停止させるので、定着ベルト63が正常な位置(ローラーの幅方向において中央付近)からずれている状態で定着動作を続けることによる定着ベルト63の損傷を防止することができる。
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る定着装置および画像形成装置の例であり、これに限定されるものではない。装置を構成する各部の細部構成および細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態では、画像形成装置1が給紙部1Aおよび装置本体1B、排紙部1Cを独立して備え、これらが接続されて画像形成装置1を構成することとしたが、装置本体1Bに給紙部1Aおよび排紙部1Cをそれぞれ設けてもよい。
また、台板620は、定着装置60に含まれることとしたが、画像形成装置に設けられていてもよい。揺動部91、調整部92についても同様に、画像形成装置に設けられていてもよい。
また、受け部621は台板620に設けられることとしたが、定着ユニット610に設けられてもよい。
また、台板620に配置される受け部621は、上記実施の形態ではコロやべアリングから構成される回転体であるとしたが、台板620に沿って定着ユニット610の揺動方向に配置されるレールであってもよい。定着ユニット610が台板620に対して揺動可能であればよい。したがって、定着ユニット610の底板613や台板620の材質や形状によっては、受け部621は必ずしも設けなくてもよい。
また、上記実施の形態では、図7のステップS12とステップS13との間で定着揺動を実施したが、ステップS13とステップS14との間で定着揺動を実施してもよいし、ステップS14の後に定着揺動を実施してもよい。また、ステップS13またはステップS14と同時に定着揺動を実施してもよい。なお、ステップS14と同時に定着揺動を実施する場合は、効率的に揺動部91による揺動とローラー平行度の調整を行うことができる。例えば、揺動部91による揺動およびローラー平行度の調整を行っている場合には定着ユニット610内に用紙を搬送しない制御を行っている場合には、揺動部91による揺動およびローラー平行度の調整を同時に行うことで、これらにかかる時間を短縮することができるので、それに伴って用紙搬送の間隔を短縮することができる。
また、上記実施の形態では、歪テーブルおよび調整テーブルは予め実験等に基づいて作成され、記憶部72に記憶されることとしたが、これらのテーブルを定着装置60および画像形成装置1の出荷後に更新できるようにしてもよい。例えば、前パネル611および後パネル612の底辺端部付近にパネル位置検出センサーを設け、これにより制御部80は歪量に関する情報を随時取得し、歪量に関する情報に基づいて各テーブルを更新するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、調整部92は、加熱ローラー61に対して配置されたが、ローラー平行度調整の対象となるローラーは加熱ローラー61に限らず、上加圧ローラー62であってもよいし、下加圧ローラー64であってもよい。また、これらのローラーに対して複数配置されてもよい。
また、上記実施の形態では、ギア92Bおよびギア91Cを用いて定着ユニット610を主走査方向D2に揺動させたが、定着揺動の機構はこの構成に限定されることなく、例えば、カムを用いて定着ユニット610を主走査方向D2に揺動させるようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、調整部92として偏芯カム921を用いたローラー平行度調整の例を示したが、ラックとピニオンを用いてもよいし、他の調整手段を用いてもよい。
また、上記実施の形態では、調整部92は、ローラーの回転軸端部を前パネル611および後パネル612の少なくとも一つの面上で搬送方向に平行に直線移動させたが、搬送方向以外の方向(例えば、鉛直方向)であってもよいし、直線移動でなくても例えば所定の経路に沿う移動であってもよい。
また、上記実施の形態では、制御部80は、ローラー平行度を調整した後、ベルト位置検知センサーによって複数のローラーの平行度が正常に調整されているか否かを判断したが、複数のローラーの平行度が正常に調整されているか否かが判断できれば他の形態の検知部であってもよい。