JP6442878B2 - 蓄電デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、蓄電デバイスに関する。
従来、この種の蓄電デバイスとしては、マグネシウム又はマグネシウム合金の負極と、Mg(N(CF3SO222 とイオン液体とを含む非水電解液と、MgHf(MoO43 を正極とするマグネシウム二次電池が提案されている(例えば、特許文献1)。このマグネシウム二次電池は、正極活物質がマグネシウムイオンを吸蔵放出可能であり、マグネシウムイオンをキャリアとして充放電することができるとしている。また、蓄電デバイスとしては、金属マグネシウムの負極と、金属酸化物やフッ化黒鉛((CF)n)などを含む正極と、塩化マグネシウム(II)(MgCl2)とジメチルアルミニウムクロリド((CH32AlCl)とをテトラヒドロフラン(THF)に溶かしたマグネシウムイオン含有非水電解液とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献2)。この電池では、酸化電位が高く、金属マグネシウムが有する負極活物質としての優れた特性を、十分に引き出すことができるとしている。
特開2007−280627号公報 特開2009−21085号公報
しかしながら、上述の特許文献1、2の蓄電デバイスでは、負極にマグネシウム金属やマグネシウム合金などを用いるものであるが、マグネシウムをキャリアとして充放電する電池を前提としていた。マグネシウムイオンは、電解液に溶解しない、又はしにくい特性があり、支持塩の種類や電解液、更には正極活物質の種類などが限られる問題があった。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる新規な蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、所定の金属負極と、支持塩と有機溶媒とを含みトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)を含有した非水電解液と、を用いるものとすると、負極側でトリフルオロメタンスルホネートアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の蓄電デバイスは、
マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうち1以上の金属を含む負極と、
リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を吸蔵放出する正極と、
前記リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のカチオンと、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)と、有機溶媒とを含む非水電解液と、
を備えたものである。
本発明の蓄電デバイスは、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。例えば、マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうちいずれか1以上の金属を含む負極と、トリフルオロメタンスルホネートアニオンを少なくとも含む非水電解液とを備える蓄電デバイスでは、負極の表面にイオン伝導性の高いSEI(ソリッド・エレクトロライト・インターフェース)被膜が形成され、これが負極活物質として働くためと推察される。また、このとき、負極活物質として働くSEI被膜が、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応することができるものと推察される。例えば、負極をマグネシウム金属やカルシウム金属などとした場合、マグネシウムイオンや、カルシウムイオンなどが充放電のキャリアとなるのが一般的である。本発明の蓄電デバイスでは、マグネシウムやカルシウム金属上に形成されたSEI被膜が活物質になり、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが負極側のキャリアになる一方、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上が正極側のキャリアになるという、今までにない、新規な蓄電デバイスを提供することができる。
本発明の蓄電デバイスの充放電の一例を示す模式図。 蓄電デバイス20の一例を示す模式図。 評価セル30の一例を示す模式図。 参考例1の充放電結果。 参考例1のPt上に形成されたSEI被膜のラマン分析結果。 参考例1のPt上に形成されたSEI被膜のラマン分析結果。 SEI被膜とキャリアとの関係を検証する充放電結果。 充放電時のA〜Cの各点におけるMg電極のSIMSデータ。 コイン型セル40を示す説明図。 実験例1〜3の放電曲線。 実験例4〜7の放電曲線。 実験例8、9の放電曲線。 実験例10、11の放電曲線。 実験例12の充放電測定結果。 実験例13の充放電測定結果。
本発明の蓄電デバイスは、マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうち1以上の金属を含む負極と、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を吸蔵放出する正極と、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のカチオンとトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)と有機溶媒とを含む非水電解液と、を備えている。
本発明の蓄電デバイスにおいて、負極は、マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうち1以上の金属を含んでいる。このような負極では、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる蓄電デバイスを容易に提供することができる。ここで、「アニオンがキャリアとして電気化学反応に関わる」とは、例えば、アニオンが負極側で酸化還元反応をすることによって充放電が進行したり、アニオンが負極表面などに吸蔵放出されることによって充放電が進行したりすることなどを含む。この負極は、マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうちいずれか1以上の金属からなるものとしてもよいし、マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうちいずれか1以上の金属を含む合金であるものとしてもよい。このうち、負極は、マグネシウム金属及びマグネシウム合金のうちいずれかであることが好ましい。マグネシウム金属は、比較的豊富に存在し、化学的に安定であるからである。また、合金は、上述した金属の他に、ビスマスや、シリコンなどを含むものとしてもよい。この合金は、例えば、マグネシウムを含む場合、マグネシウムアルミニウム、マグネシウムアルミニウム亜鉛、マグネシウムビスマス、マグネシウムシリコンなどとしてもよい。また、カルシウム合金としては、カルシウムスズなどが挙げられる。
本発明の蓄電デバイスの負極は、負極表面に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されたものとしてもよい。トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜は、例えば、充放電時に、トリフルオロメタンスルホネートアニオンを酸化還元するものとしてもよい。また例えば、充放電時にトリフルオロメタンスルホネートアニオンを吸蔵、放出するものとしてもよい。このとき、負極は、50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電が行われ、非水電解液の分解物が負極上に形成されているものとしてもよい。この分解物(SEI被膜)は、イオン伝導性が高く、これにより、充放電のエネルギー効率をより高めることができる。分解物を形成する際の充放電を行う温度は、55℃以上65℃以下の範囲がより好ましく、60℃が更に好ましい。
本発明の蓄電デバイスにおいて、正極は、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を吸蔵放出する正極活物質を含む。即ち、正極活物質は、支持塩を構成するカチオン、例えば、リチウムカチオンや、ナトリウムカチオン、カリウムカチオンなどが関わる酸化還元反応(カチオンの吸蔵、放出など)を行うことのできるものである。このように、カチオンがキャリアとして電気化学反応に関わることのできる正極活物質を用いると、正極側でカチオンが、負極側でアニオンが、キャリアとして電気化学反応に関わる双方向型電池が得られる。図1は、本発明の蓄電デバイスの充放電の一例を示す模式図である。図1に示すように、本発明の蓄電デバイスは、例えば、放電時にはトリフルオロメタンスルホネートアニオンが負極に吸蔵され、カチオンが正極に吸蔵される。一方、充電時にはトリフルオロメタンスルホネートアニオンが負極から放出され、カチオンが正極から放出される。なお、リチウムイオン電池などは、正極側、負極側の両方においてリチウムイオンすなわちカチオンがキャリアとして電気化学反応に関わるものである一方向型電池である。また、電気二重層キャパシタなどは、負極側でカチオンが、正極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わる双方向型電池である。
この正極は、例えば、正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上と遷移金属元素とを含む複合酸化物などを用いることができる。具体的には、リチウムを含む場合、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaMnbCoc2(a<1、b<1、c<1、a+b+c=1など)とするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物などを用いることができる。なお、リチウムをナトリウムやカリウムに置き換えたものも挙げられる。また、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物なども挙げられる。更に、正極活物質は、マンガンイオン、鉄イオン、亜鉛イオンなどとシアノアニオンで構成されるプルシアンブルー化合物としてもよい。プルシアンブルー化合物は、例えば、基本組成式をAxT[Fe(CN)6y2O(但し、Aは陽イオン、Tは遷移金属、x、y、zは任意値)とするものとしてもよい。この基本組成式において、Aは、KやLi、Na、Rbなどが挙げられ、Tは、FeやMn、Ni、Znなどが挙げられる。プルシアンブルー化合物としては、具体的には、KxMn[Fe(CN)6yやNaxCo[Fe(CN)6y2Oなどが挙げられる。正極活物質は、これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2や、プルシアンブルー化合物などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。導電材としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、活性炭など公知のカーボン粉末が挙げられる。結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリニトリルなどの高分子が挙げられる。結着剤の混合量は、例えば、導電材の100質量部に対し、3〜25質量部とすることが好ましい。混合方法としては、N−メチルピロリドンなどの溶媒下で、導電材、結着材とともに湿式混合してもよい。また、乳鉢などを使って乾式混合してもよい。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
本発明の蓄電デバイスの非水電解液は、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のカチオンとトリフルオロメタンスルホネートアニオンと有機溶媒とを含む。有機溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、グルタロニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。
あるいは、有機溶媒としては、硫黄と酸素との二重結合を1以上有する含硫黄有機化合物、及び、リンと酸素との二重結合を1以上有する含リン有機化合物のうち1種以上の化合物などが挙げられる。この化合物では、例えば、カーボネート類の有機溶媒に比して放電電圧をより高めることができ、より好ましい。含硫黄有機化合物としては、1つの硫黄に1つの酸素が二重結合したスルホキシド化合物や、1つの硫黄に2つの酸素が二重結合したスルホン化合物などが挙げられる。スルホキシド化合物としては、鎖状の炭化水素基が硫黄に直接結合した化合物であるジメチルスルホキシド(DMSO、式(1))やジエチルスルホキシド、環状の炭化水素基が硫黄に直接結合した化合物であるジフェニルスルホキシド(式(2))、鎖状の炭化水素基が硫黄に酸素を介して結合した化合物であるジエチルサルファイト(式(3))、硫黄を環状構造に含む化合物であるテトラメチレンスルホキシド(式(4))などが挙げられる。また、スルホン化合物としては、鎖状の炭化水素基が硫黄に直接結合した化合物であるジメチルスルホンやジエチルスルホン(式(5))、硫黄を環状構造に含む化合物であるスルホラン(式(6))や3−メチルスルホラン(式(7))、ジメチルスルホランなどが挙げられる。含リン有機化合物としては、1つのリンに1つの酸素が二重結合したホスフィンオキシド化合物や、1つのリンに2つの酸素が二重結合した化合物などが挙げられる。なお、上述したホスフィンオキシド化合物は、炭化水素とリンとの結合に酸素を介するものを含まないホスフィンオキシド化合物のほか、酸素を介するものを1つ含むホスフィン酸化合物や、酸素を介するものを2つ含むホスホン酸化合物、全ての炭化水素基が酸素を介して結合するリン酸化合物をも含むものである。ホスフィンオキシド化合物としては、鎖状の炭化水素基が酸素を介してリンに結合した化合物であるリン酸トリメチル(TMP、式(8))やリン酸トリブチル(式(9))、リン酸トリエチル(TEP、式(10))、環状の炭化水素基が酸素を介してリンに結合した化合物であるリン酸トリフェニル、鎖状の炭化水素基が直接リンに結合した化合物であるトリエチルホスフィンオキシド(式(11))、環状の炭化水素基が直接リンに結合した化合物であるトリフェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらの化合物のうち、例えば、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)などがより好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、これら2以上を混合して用いてもよい。
非水電解液には、イオン液体を含むものとしてもよい。このイオン液体としては、トリフルオロメタンスルホネートアニオンを含むものがより好ましい。また、イオン液体は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを含むものとしてもよい。イオン液体のカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、アルキルピペリジウムカチオン、アルキルピロジリウムカチオンなどが挙げられる。具体的には、N−メチル−N−プロピルピペリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(式(12))や、N,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DEME−TFSA、式(13))、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(式(14))、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートなどを挙げることができる。
本発明の非水電解液は、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)を含む支持塩を含有することが好ましい。この支持塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などのうち1以上とすることができ、微量の水和物であってもよい。この支持塩は、例えば、LiCF3SO3やNaCF3SO3、KCF3SO3などが挙げられる。また、CF3SO3 -アニオンを含むイオン液体が非水電解液に含有されているときには、支持塩のアニオンはCF3SO3 -アニオン以外であってもよい。例えば、(CF3SO22-アニオンを含む支持塩、PF6 -アニオンを含む支持塩、ClO4 -アニオンを含む支持塩、BF4 -アニオンを含む支持塩などが挙げられる。これらのうち、充放電に関わるカチオンとアニオンを含む、LiCF3SO3やNaCF3SO3、KCF3SO3などがより好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上であることが好ましく、0.2mol/L以上であることがより好ましく、0.25mol/L以上であることが更に好ましい。また、この支持塩は、非水電解液中の濃度が5mol/L以下であることが好ましく、2mol/L以下であることがより好ましく、1.5mol/L以下であることが更に好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、本発明の非水電解液は、支持塩を含むゲル電解質としてもよい。ゲル電解質としては、公知のゲル電解質を用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子、アミノ酸誘導体、ソルビトール誘導体などの糖類に、上記の非水電解液を含ませてなるゲル電解質が挙げられる。
本発明の非水電解液は、含まれるアニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)がモル比で4%以上含まれることが好ましい。このモル比が4%以上では、負極の表面に好適なSEI被膜が形成され、SEI被膜の抵抗をより低下させ、放電容量を高めたり、放電と充電の電圧差を十分に小さくすることができ、好ましい。また、非水電解液は、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF3SO22-)とを含み、アニオンの総量に対してトリフルオロメタンスルホネートアニオンがモル比で4%以上含まれていることがより好ましい。このモル比は、4.5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましい。また、このモル比は、50%以下としてもよい。
本発明の蓄電デバイスは、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本発明の蓄電デバイスは、50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電を行うものとしてもよい。充放電温度は、高い方がエネルギー効率を高めやすい。蓄電デバイスの充放電を行う温度は、55℃以上65℃以下の範囲がより好ましく、60℃が更に好ましい。
本発明の蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図2は、本発明の蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。図2に示すように、蓄電デバイス20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この蓄電デバイス20は、正極22と負極23との間の空間に非水電解液27を備えている。正極22は、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を吸蔵放出する。負極23は、マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうち1以上の金属を含む。非水電解液27は、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のカチオンと、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと、有機溶媒とを含む。また、負極23は、その表面にトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されているものとしてもよい。
以上詳述した本発明の蓄電デバイスは、負極側でアニオンがキャリアとして電気化学反応に関わることができる。これは、例えば、マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうちいずれか1以上の金属を含む負極と、トリフルオロメタンスルホネートアニオンを少なくとも含む非水電解液とを備える蓄電デバイスでは、負極の表面にイオン伝導性の高いSEI被膜が形成され、これが負極活物質として働くためと推察される。また、このとき、負極活物質として働くSEI被膜が、トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応することができるものと推察される。また、正極では、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を吸蔵放出するため、正極側でカチオンが、負極側でアニオンが、キャリアとして電気化学反応に関わる、今までにない、新規な双方向型電池を得ることができる。更に、この蓄電デバイスでは、非水電解液にP=O基及びS=O基のうち少なくとも一方を有する有機溶媒(例えば、含硫黄有機化合物や含リン有機化合物)を含有する場合は、例えば、カーボネート系有機溶媒やイオン液体に比して、放電電圧をより高めることができる。これは、負極表面でのCF3SO3 -アニオンの関わる電気化学反応の電位がカーボネート系有機溶媒やイオン液体よりも下がったことで放電電圧が上昇するものと推察される。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明の蓄電デバイスを具体的に作製した例を実験例として説明する。実験例1〜12が本発明の実施例に相当し、実験例13が比較例に相当する。なお、本発明は実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
[参考例1]
負極上に形成されるSEI被膜について検証するため以下の実験を実施した。図3は、評価セル30の一例を示す模式図である。図3に示す評価セル30(北斗電工製、三極式F型セル)において、作用極32と対極34としてPt板(田中貴金属製)、参照極36としてAg線(ニラコ製)をセットした。マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート(Mg(CF3SO32、アルドリッチ製)とN−メチル−N−プロピルピペリジウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(PP13−TFSA、関東化学製、上記化合物式1)を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、F型セル内に注液した。この電解液ではトリフルオロメタンスルホネートアニオンがアニオンの総量に対してモル比で4.6%含まれる。F型セルを60℃の恒温器に置き、掃引速度5mV/secの速さで、Mg基準で−0.3Vから+2.3Vの間で電位を繰り返し掃引させた。図4は、参考例1の充放電結果である。図4に示すように、1サイクル目で、作用極電位が0V付近にまで下がるとMgが作用極(Pt)上に析出する。このとき、析出したMgには支持塩及び溶媒(イオン液体)の分解物などによりSEI被膜が形成されたと考えられる。2サイクル目以降、1V付近で新しい酸化還元ピークが観測され、SEI被膜が活物質として働くことが明らかになった。図5,6は、Pt上に形成されたSEI被膜のラマン分析結果である。この測定結果により、SEI被膜は、支持塩や溶媒(イオン液体)の分解物などが含まれることがわかった。
更に、SEI被膜とキャリアとの関係について検証した。図7は、SEI被膜とキャリアとの関係を検証する充放電結果である。まず、Mg(CF3SO32−PP13TFSA系電解液と加圧型のコインセル(Mg板とPt板、およびポリエチレンセパレータ)を用いて、60℃の恒温槽に10時間放置した後(図7、点A)、10μAの電流で1時間Pt方向に電流を流し(点B)、続いて逆電流を印加した(点C)。図7から分かるように、A→Bへ電流を流したときには電圧が+0.5Vである。通常、Mgの電析が起こるには電圧が−側に振れなければならないことから、電位的にみてMgのPt上への電析は起こっていないと思われた。次に、各点において、Mg電極とPt電極の二次イオン質量分析(SIMS分析)を実施した。図8は、各点におけるMg電極の負イオンに関するSIMSデータである。図8に示すように、CF3SO3 -の存在を示す質量数(横軸)M/Z=149のシグナルはAよりもBで増加し、Cで減少した。このことから、CF3SO3 -がMg板上で挿入と脱離していると推察された。即ち、図1に示した、負極での充放電反応が起きていることが明らかとなった。
上述したように、負極(Mg)に形成されるSEI被膜は、主にトリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)と電気化学反応することにより、活物質として働くことが明らかとなった。負極に形成されるSEI被膜がトリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する場合、上記参考例においては支持塩のカチオンをMgとしたが、支持塩はマグネシウム支持塩でなくてもよいし、正極や負極はマグネシウムを吸蔵、放出するものでなくてもよい。そこで、以下では、非水電解液の種類を変更したり、正極、負極の種類を変更したセルについて、電池として作動することを確認するための実験を行った。
[実験例1]
正極は次のようにして作製した。プルシアンブルー(MnFe(CN)6)を76質量部、導電助剤としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を14質量部、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製F−104)を10質量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせた後、薄膜状に成形した。その合材15mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間、真空乾燥を行い、蓄電デバイスの正極とした。プルシアンブルーはカリウム鉄シアンK3Fe(CN)6の水溶液に、酢酸マンガンMn(CH3COO)2の水溶液を室温下で滴下することで反応、沈殿させて得た。負極には直径18mm、厚さ0.25mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には支持塩にナトリウムトリフルオロメタンスルホネート(NaCF3SO3、アルドリッチ製)、有機溶媒にリン酸トリエチル(TEP、キシダ化学)を用い、支持塩濃度1.0mol/Lの電解液を調製して用いた。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、図9のコイン型セル40をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.6mLをコイン型セルに注入し、実験例1とした。
コイン型セル40は、図9に示すように、外周面にねじ溝が刻まれた円筒基体41の中央に設けられたキャビティ42と、キャビティ42の下側に配設された負極43と、キャビティ42の上側に配設された正極44と、キャビティ42に収容された非水電解液45とを備えている。負極43の下面には集電部材46が接続され、正極44の上面には集電部材47が接続されている。正極44及び集電部材47は、キャップ部材48が円筒基体41にねじ込まれることにより円筒基体41に固定されている。この実験例1のコイン型セルを60℃において北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極の間で正極材料あたり0.010mAの電流を流して1.3Vまで放電させた。
[実験例2]
TEPの代わりにイオン液体(DEME−TFSA、関東化学)を用いた以外は実験例1と同様に作製したコイン型セルを実験例2とした。
[実験例3]
TEPの代わりにプロピレンカーボネート(PC、キシダ化学製)を用いた以外は実験例1と同様に作製したコイン型セルを実験例3とした。
(評価と考察)
図10は、実験例1〜3の放電曲線である。実験例1〜3は、いずれも放電し、セルとして機能することがわかった。また、実験例1〜3では、活物質あたりの放電容量が30mAh/gのときの放電電圧が、実験例1が1.71V、実験例2が1.54V、実験例3が1.60Vであった。このため、非水電解液の溶媒としてリン酸トリエチルを用いると、放電電圧をより高めることができ、より好ましいことがわかった。
[実験例4]
TEPの代わりにリン酸トリメチル(TMP、キシダ化学製)を用い、支持塩にリチウムトリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製)を用いた以外は実験例1と同様に作製したコイン型セルを実験例4とした。
[実験例5]
TMPの代わりにジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬製)を用いた以外は実験例4と同様に作製したコイン型セルを実験例5とした。
[実験例6]
TMPの代わりに3−メトキシプロピオニトリル(和光純薬製)を用いた以外は実験例4と同様に作製したコイン型セルを実験例6とした。
[実験例7]
TMPの代わりにグルタロニトリル(和光純薬製)を用いた以外は実験例4と同様に作製したコイン型セルを実験例7とした。
(評価と考察)
図11は、実験例4〜7の放電曲線である。実験例4〜7は、いずれも放電し、セルとして機能することがわかった。また、実験例4〜7では、活物質あたりの放電容量が30mAh/gのときの放電電圧は、実験例4が1.81V、実験例5が1.78V、実験例6が1.40V、実験例7が1.47Vであった。このため、非水電解液の溶媒としてリン酸トリメチルやジメチルスルホキシドを用いると、放電電圧をより高めることができ、より好ましいことがわかった。
[実験例8]
負極のMg代わりにCa(アルドリッチ製)を用いた以外は実験例4と同様に作製したコイン型セルを実験例8とした。
[実験例9]
負極のMgの代わりにCa(アルドリッチ製)を用いた以外は実験例6と同様に作製したコイン型セルを実験例9とした。
(評価と考察)
図12は、実験例8,9の放電曲線である。実験例8,9は、いずれも放電し、セルとして機能することがわかった。また、実験例8,9では、活物質あたりの放電容量が30mAh/gのときの放電電圧は、実験例8が2.08Vであり、実験例9が1.64Vであった。このため、負極金属をCaとした場合であっても、実験例4,6と同様の結果が得られることがわかった。
[実験例10]
プルシアンブルーの正極活物質の代わりにスピネル型リチウムマンガン酸化物の正極活物質を用いたコイン型セルを実験例10とした。正極は次のようにして作製した。三井鉱山製のスピネル型リチウムマンガン酸化物(LiMn1.9Ni0.14)と、導電材としてカーボンブラック(東海カーボン製TB5500)、結着材としてポリビニレンフルオライドポリマー溶液(PVdF、クレハ製KFポリマー#1120)を小型混錬機(アズワン製、泡とり錬太郎)により湿式混合し、得られたペーストをアルミ箔上に塗工した。150℃にて3時間、真空乾燥を行なった後、直径14mmの薄膜円板に打ち抜いた。なお、最終的に得られた正極の活物質、導電材、結着材の質量比は85:10:5であった。スピネル型リチウムマンガン酸化物の正極と、金属Liの負極と、EC+DEC(体積比50:50)を溶媒とし1.0mol/LのLiPF6を溶解した電解液とを用いセルを組み、充電を行ってスピネル型リチウムマンガン酸化物の正極からリチウムを引き抜いた。リチウムを引き抜いたあとの正極を用い、実験例4と同様に作製したコイン型セルを実験例10とした。
[実験例11]
TMPの代わりにPCを用いた以外は実験例10と同様に作製したコイン型セルを実験例11とした。
(評価と考察)
図13は、実験例10,11の放電曲線である。実験例10,11では、放電は1.6Vまで行った。実験例10,11は、いずれも放電し、セルとして機能することがわかった。また、実験例10,11では、放電容量が0.50mAhのときの放電電圧は、実験例10が2.19Vであり、実験例11が1.85Vであった。このため、非水電解液の溶媒としてリン酸トリメチルを用いると、放電電圧をより高めることができ、より好ましいことがわかった。
[実験例12]
正極のスピネル型リチウムマンガン酸化物の代わりに層状のリチウムコバルト酸化物(日本化学工業、LiCoO2)を用いた以外は実験例10と同様に作製したコイン型セルを実験例12とした。実験例12では、放電は1.6Vまで行い、その後、電流を逆向きにして3.0Vまで充電した。図14は、実験例12の充放電測定結果である。この実験例12では、放電容量が0.50mAhのときの放電電圧は2.25Vであった。また、実験例12に示すように、本発明の蓄電デバイスでは、充放電を行うことができた。
[実験例13]
正極は次のようにして作製した。五酸化二バナジウム(アルドリッチ製)を57重量部、導電材としてケッチェンブラック(三菱化学製ECP−600JD)を30重量部、結着材としてポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業製F−104)を13重量部の比率で、乳鉢を用いて混合かつ練り合わせ正極合材としたあと、これを薄膜状に成形した。その正極合材の約6mg(直径10mm、厚さ120μm)を、ステンレス製のメッシュ(ニラコ製SUS304)に圧着して、80℃にて3時間真空乾燥を行い、正極とした。負極には、直径26mm、厚さ0.25mmの金属マグネシウム(ニラコ製)を用いた。電解液には、支持塩にLiPF6(アルドリッチ製)、有機溶媒にN,N’−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学製、式13)を用い、支持塩濃度0.08mol/Lの電解液を調製し、用いた。この電解液では、トリフルオロメタンスルホネートアニオンが含まれていない。ポリエチレン製セパレータ(東燃化学製、厚さ25μm)3枚と上記正極を用い、コイン型セル(図9参照)をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内でセットし、上記電解液0.6mLをコイン型セルに注入した。なお、コインセル作製にあたり、Mg負極の表面をグローブボックス内で紙やすり(400番)で磨いてから用いた。
作製したコインセルを北斗電工製の充放電装置(HJ1001SM8A)に接続し、正極と負極との間で正極材料あたり0.015mAの電流を流して0.6Vまで放電し、その後0.015mAで2.35Vまで充電した。図15は、実験例13の充放電測定結果である。実験例13では、五酸化二バナジウム質量あたりの放電容量が9.1mAh/gと、極めて小さい値であった。
本発明は、電池に関する産業分野に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 非水電解液、30 評価セル、32 作用極、34 対極、36 参照極、38 非水電解液、40 コイン型セル、41 円筒基体、42 キャビティ、43 負極、44 正極、45 非水電解液、46,47 集電部材、48 キャップ部材。

Claims (2)

  1. マグネシウム、カルシウム及びセリウムのうち1以上の金属を含む負極と、
    リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を吸蔵放出する正極と、
    前記リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のカチオンと、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CF3SO3 -)と、有機溶媒とを含む非水電解液と、を備え
    前記非水電解液は、リン酸トリエチル、リン酸トリメチル及びジメチルスルホキシドのうち1以上を前記有機溶媒として含有しており、
    50℃以上70℃以下の温度範囲で充放電を行い、前記負極の表面には、前記非水電解液の分解物であり、前記トリフルオロメタンスルホネートアニオンと電気化学反応する被膜が形成されている、蓄電デバイス。
  2. 前記正極は、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物及びプルシアンブルー化合物のうち1以上を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス。
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