以下に、添付図面を参照して、本発明に係るドア開閉制御システムの好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
(ドア開閉制御システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るドア開閉制御システムの一構成例を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係るドア開閉制御システムが適用された車両のバックドアを開けた状態を示す図である。図1,2に示すように、本発明の実施の形態に係るドア開閉制御システム1は、車両100の車体後部に設けられたバックドア101の開閉を制御するものであり、ドア開閉装置2と、ドアラッチ装置3と、電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)7とを備える。
なお、以下では、ドア開閉装置2、ドアラッチ装置3、および電子制御装置7の前方、後方、上方、および下方は、図1,2に示す車両100の前方、後方、上方、および下方に各々一致するものと規定して本発明を説明する。これらの方向の定義は、説明の便宜上のものであり、車両100に対するドア開閉装置2、ドアラッチ装置3、および電子制御装置7の各方向は、これらの取り付け状態等によって勿論変化する。
ドア開閉装置2は、車両100のテールゲートとも称されるバックドア101をモータの動力を用いて開閉する電動装置である。本実施の形態において、ドア開閉装置2は、車両100のバックドア101のヒンジ102を回動することによってバックドア101を開閉できるように、車両100の天井に固定される。
ドアラッチ装置3は、車両100の車体後部104の下方部分に設けられたストライカ103と係脱可能に係合することにより、車両100のバックドア101の閉状態を解除可能にロックする電動装置である。ドアラッチ装置3は、バックドア101が車体後部104の開口を閉じた状態(図1に示す閉状態)にした際、ストライカ103と係合できるように、バックドア101の下方部分に設けられる。
電子制御装置7は、上述したドア開閉装置2およびドアラッチ装置3の各動作を制御する装置である。電子制御装置7は、配線等(図示せず)を介してドア開閉装置2およびドアラッチ装置3と電気的に接続され、例えば図1,2に示すように、車両100の車体側部内に設けられる。
なお、図1,2に示すようにドア開閉装置2、ドアラッチ装置3、および電子制御装置7が設けられた車両100は、ワンボックスカーやステーションワゴン等に例示されるように、車体後部104の開口が荷物載置スペースや座席に通じるタイプの車両である。すなわち、車両100において、図2に示すようにバックドア101が開状態になって開放される車体後部104の開口では、荷物の出し入れは勿論、ユーザの乗り降りも可能である。
(ドア開閉装置の構成)
つぎに、本発明の実施の形態におけるドア開閉装置2の構成について説明する。ドア開閉装置2は、車両100のバックドア101を電動で開閉するPTG(Power Tail Gate)ドライブユニットであり、図1,2に示すように、主な構成要素として、動力源であるPTGモータ21と、バックドア101に連係されるアーム22およびロッド23とを備える。
PTGモータ21は、車両100の車載電源から給電されて駆動し、これにより、バックドア101を開閉する動力を発生させる。PTGモータ21の駆動軸(回転軸)には、アーム22の基端部分が取り付けられる。アーム22は、PTGモータ21の動力によってPTGモータ21の駆動軸を中心に旋回する。一方、アーム22の先端部分には、ロッド23の一端が回転自在に接続される。ロッド23の他端には、バックドア101のヒンジ102が接続される。ヒンジ102の一端は、ブラケット等を用いて回転自在に車両100の天井に取り付けられる。ヒンジ102の他端は、バックドア101に固定される。
上述したようにPTGモータ21の駆動軸およびロッド23が接続されたアーム22は、ロッド23およびヒンジ102を介してバックドア101に連係される。また、アーム22は、PTGモータ21の動力を受けて旋回するとともに、受けた動力をロッド23およびヒンジ102に伝達する。これにより、アーム22は、ロッド23を介してヒンジ102をバックドア101の開方向または閉方向(図2参照)に移動させる。
ここで、バックドア101の開方向は、バックドア101が車両100の車体後部104から離間する回動方向である。バックドア101の閉方向は、バックドア101が車両100の車体後部104に近接する回動方向である。ドア開閉装置2は、PTGモータ21の動力を用いてアーム22を上述の開方向に旋回させることにより、バックドア101を開く開扉動作を行う。また、ドア開閉装置2は、PTGモータ21の動力を用いてアーム22を上述の閉方向に旋回させることにより、バックドア101を閉じる閉扉動作を行う。
(ドアラッチ装置の構成)
つぎに、本発明の実施の形態におけるドアラッチ装置3の構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態におけるドアラッチ装置の一構成例を示す斜視図である。図4は、図3に示すドアラッチ装置の正面図である。図5は、図3に示すドアラッチ装置の側面図である。図6は、図3に示すドアラッチ装置の内部構成の一例を示す図である。
図3〜6に示すように、ドアラッチ装置3は、車両100のストライカ103(図1,2参照)と係脱可能に係合(噛合)する噛合機構30と、噛合機構30を電動で動作させる駆動機構50と、噛合機構30と駆動機構50とを取り付ける等するためのブラケット60とを備える。
噛合機構30は、ラッチ31等の噛合機構30の各構成要素を収容する収容体41を備える。図3〜5に示すように、収容体41は、ドアラッチ装置3のベースとなるカバープレート42と、カバープレート42の上方側の開口を塞ぐバックプレート43とを有する。カバープレート42は、比較的板厚の大きな金属板によって成形され、前端から後端に向かって次第に浅くなる矩形凹状に形成される。このカバープレート42の上部前方は、収容体41の本体ボディによって塞がれる。
また、収容体41には、図3,6に示すように、ストライカ進入溝45と、ラッチ軸37およびラチェット軸38とが設けられる。ストライカ進入溝45は、カバープレート42の前端中央部から奥部に向けて形成された切欠であり、図1,2に示したストライカ103が進入可能な幅を有する。ラッチ軸37およびラチェット軸38は、ストライカ進入溝45を挟むようにカバープレート42に設けられる。
上述した収容体41の内部、すなわち、矩形凹状のカバープレート42による収容空間内に、噛合機構30は、図6に示すように、ハーフラッチ位置およびフルラッチ位置において車両100のストライカ103(図1,2参照)を係合保持するラッチ31と、ストライカ103とラッチ31との係合状態を解除可能に維持するラチェット32と、ラチェット32の回動を規制するストッパ36とを備える。また、噛合機構30は、上述の収容空間内に、ラッチ31がハーフラッチ位置に回動したことを検出するハーフラッチ検出スイッチ33と、ラッチ31がフルラッチ位置に回動したことを検出するフルラッチ検出スイッチ34と、ラチェット32が所定のセット位置にいるか否かを検出するラチェット検出スイッチ35とを備える。
ラッチ31は、図6に示すように、略中央に形成された貫通孔にラッチ軸37が挿通される板状の部材であり、外周面に開口する係合溝31aを有する。ラッチ31は、ストライカ進入溝45と係合溝31aとを交差させてラッチ軸37の軸心回りに回動するように、カバープレート42内に配置される。また、ラッチ31は、ラッチ軸37に設けられたラッチばね39により、ラッチ軸37を中心として、フルラッチ位置からハーフラッチ位置を経由しアンラッチ位置に至る方向(図6における反時計回りの方向)へ付勢されている。
このようなラッチ31は、図1,2に示したバックドア101が閉じる際に、ハーフラッチ位置およびフルラッチ位置で車両100のストライカ103を係合保持する。すなわち、ラッチ31は、バックドア101が閉じるとともにストライカ進入溝45に沿って進入するストライカ103を係合溝31aに当接させる。その後、ラッチ31は、ストライカ103を係合溝31aに当接した状態を維持しながら、ラッチばね39の付勢力に抗してアンラッチ位置からハーフラッチ位置に回動し、ハーフラッチ位置でストライカ103を係合溝31aに係合させてストライカ103を係合溝31a内に保持する。さらに、ラッチ31は、このストライカ103を係合溝31aに係合した状態を維持しながら、ラッチばね39の付勢力に抗してハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動し、これにより、係合溝31a内にストライカ103を完全に保持する。一方、ラッチ31は、後述するラチェット32との噛合状態が解除された際、ラッチばね39の付勢力によって、フルラッチ位置からハーフラッチ位置を経由してアンラッチ位置に回動する。これにより、ラッチ31は、係合溝31aとストライカ103との係合状態を解除し、係合溝31aからストライカ103を解放する。
ラチェット32は、ラッチ31の回動位置を規制するものである。図6に示すように、ラチェット32は、略中央に形成された貫通孔にラチェット軸38が挿通される板片状の部材であり、ラッチ31と噛合し得る形状、例えば、ラチェット軸38が挿通される貫通孔の半径方向外方へ延出する延出部を外周に有する形状に形成される。ラチェット32は、ラチェット軸38の軸心回りに回動するように、カバープレート42内に配置される。また、ラチェット32は、ラチェット軸38に設けられたラチェットばね40により、ラチェット軸38を中心として、ラッチ31に近接する方向(図6における時計回りの方向:以下、噛合方向という)へ付勢されている。
このようなラチェット32は、ラチェットばね40の付勢力によって噛合方向に回動し、これにより、ラッチ31と噛合して、ラッチ31の回動を規制するとともにラッチ31とストライカ103との係合状態を維持する。一方、ラチェット32は、後述するリリースレバー52の作用により、ラチェットばね40の付勢力に抗してラッチ31から離間する方向(図6における反時計回りの方向:以下、解除方向という)に回動する。これにより、ラチェット32は、ラッチ31との噛合状態を解除する。なお、ラチェット32の噛合方向への回動は、図6に示すようにカバープレート42に配置された弾性部材等のストッパ36によって規制される。
ハーフラッチ検出スイッチ33およびフルラッチ検出スイッチ34は、ラッチ31の回動位置を検出するためのものである。図7は、ラッチに対するハーフラッチ検出スイッチおよびフルラッチ検出スイッチの配置例を示す図である。ハーフラッチ検出スイッチ33およびフルラッチ検出スイッチ34は、各々、対象物との接触前後で進退するプッシュボタン式の検出端子を用いて構成され、図7に示すように、ラッチ31のカム部31eの幅方向に段違いで設けられている。
ここで、ラッチ31の上面には、図6,7に示すように、カム部31eが突設されている。図7に示すように、カム部31eは、ラッチ31の回動軌跡に沿った円弧形状のカム面31fを有し、一部幅広のカム面部分をもつ二段構造に形成される。カム部31eは、ラッチ31と一体的に回動する。カム面31fは、ラッチ31の回動(すなわちカム部31eの回動)に伴い、ハーフラッチ検出スイッチ33およびフルラッチ検出スイッチ34の各検出端子と摺接可能である。
ハーフラッチ検出スイッチ33は、ラッチ31がハーフラッチ位置に回動したことを検出するハーフラッチ検出部として機能する。具体的には、ハーフラッチ検出スイッチ33は、ラッチ31の回動位置がアンラッチ位置である場合、カム部31eのカム面31f(詳細には幅広部分のカム面31f)と接触してオン状態になる。また、ハーフラッチ検出スイッチ33は、ラッチ31がアンラッチ位置からハーフラッチ位置に回動し終えるまでの間、カム面31fとの接触を継続し、ラッチ31の回動位置がハーフラッチ位置になった場合、カム面31fから離れてオフ状態になる。ハーフラッチ検出スイッチ33は、このようなオン状態からオフ状態への切り替わりによって、ラッチ31の回動位置がハーフラッチ位置であることを検出する。なお、ハーフラッチ検出スイッチ33は、ラッチ31がハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動するまでの間、カム面31fから離れた状態を継続して、オフ状態を維持する。
一方、ハーフラッチ検出スイッチ33は、ラッチ31がフルラッチ位置からハーフラッチ位置に回動するまでの間、カム面31fから離れた状態であり、オフ状態になる。また、ハーフラッチ検出スイッチ33は、ラッチ31がハーフラッチ位置からアンラッチ位置に回動するまでの間、カム面31fと接触した状態であり、オン状態になる。ハーフラッチ検出スイッチ33は、このようなオフ状態からオン状態への切り替わりによって、フルラッチ位置からハーフラッチ位置へ回動したラッチ31の回動位置が更にハーフラッチ位置からアンラッチ位置に変化したことを検出する。
フルラッチ検出スイッチ34は、ラッチ31がフルラッチ位置に回動したことを検出するフルラッチ検出部として機能する。具体的には、フルラッチ検出スイッチ34は、ラッチ31の回動位置がアンラッチ位置である場合、カム部31eのカム面31fと接触してオン状態になる。また、フルラッチ検出スイッチ34は、ラッチ31がアンラッチ位置からハーフラッチ位置を経てフルラッチ位置に回動し終えるまでの間、カム面31fとの接触を継続し、ラッチ31の回動位置がフルラッチ位置になった場合、カム面31fから離れてオフ状態になる。フルラッチ検出スイッチ34は、このようなオン状態からオフ状態への切り替わりによって、ラッチ31の回動位置がフルラッチ位置であることを検出する。
一方、フルラッチ検出スイッチ34は、ラッチ31がフルラッチ位置からハーフラッチ位置を経由してアンラッチ位置に回動した場合、カム面31fから離れた状態からカム面31fと接触した状態に変化する。これに伴い、フルラッチ検出スイッチ34は、オフ状態からオン状態に切り替わる。フルラッチ検出スイッチ34は、このようなオフ状態からオン状態への切り替わりによって、ラッチ31の回動位置がフルラッチ位置からハーフラッチ位置を経てアンラッチ位置に変化したことを検出する。
上述したハーフラッチ検出スイッチ33およびフルラッチ検出スイッチ34は、各々、ラッチ31の回動位置の検出結果を示す電気信号、すなわち、オン状態またはオフ状態を示す検出信号を電子制御装置7(図1,2参照)に順次送信する。
ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32がセット位置にいるか否かを検出するラチェット検出部として機能する。本実施の形態において、上記セット位置は、ハーフラッチ位置またはフルラッチ位置にあるラッチ31と噛合可能なラチェット32の位置である。具体的には、上記セット位置は、ラチェットばね40によって付勢されてストッパ36に当接している状態のラチェット32の位置である。ラチェット検出スイッチ35は、対象物との接触前後で進退するプッシュボタン式の検出端子を用いて構成され、図6に示すように、ラチェット32近傍の所定位置に配置される。
ここで、ラチェット32の上面には、図6に示すように、突起部32aが設けられている。突起部32aは、ラチェット32と一体的に回動する。突起部32aは、ラチェット32の回動に伴い、ラチェット検出スイッチ35の検出端子と当接可能である。ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32がセット位置にいる場合、突起部32aと当接しておらず、オン状態になる。また、ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32がセット位置にいない場合、突起部32aと当接してオフ状態になる。ラチェット検出スイッチ35は、このようなオン状態とオフ状態との切り替わりによって、ラチェット32がセット位置にいるか否かを検出する。ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32がセット位置にいるか否かの検出結果を示す電気信号、すなわち、オン状態またはオフ状態を示す検出信号を電子制御装置7(図1,2参照)に順次送信する。
一方、駆動機構50は、図3〜5に示すように、ラッチ31と連係して回動するラッチレバー51と、ラッチ31とラチェット32との噛合状態を解除するリリースレバー52と、ラッチレバー51およびリリースレバー52を択一的に動作させるセクタギア53と、セクタギア53が中立位置に回動したことを検出する中立位置検出スイッチ54と、駆動機構50の駆動源であるラッチ駆動モータ55と、ラッチ駆動モータ55の動力をセクタギア53に伝達するピニオンギア56とを備える。
ラッチレバー51は、ラッチ31をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ能動的に回動するためのものであり、例えば図3,6に示すように、両端に円弧部を有する長方形状(すなわち角丸長方形状)に形成される。ラッチレバー51の一端部には、ラッチ軸37の上端付近が挿通固定される。この構造により、ラッチレバー51は、バックプレート43の上面において、ラッチ軸37を中心としラッチ31と連係して押圧作用により回動可能である。また、ラッチレバー51の他端部(ラッチ軸37と反対側の端部)には、図3,4に示すように、ラッチレバー51の一構成部として当接部51aが立設される。当接部51aは、セクタギア53のギア部よりも多少下方となる位置まで突出した円柱形のピン(シャフト)である。
リリースレバー52は、ラッチ31とラチェット32との噛合状態を解除するためのものである。図3,4に示すように、リリースレバー52は、バックプレート43の後端から上方に突設された取付部44の背面に配置され、取付部44に設けられたリリースレバー軸57に軸支される。このようにして、リリースレバー52は、取付部44とセクタギア53との間で回動可能に設けられる。また、リリースレバー52は、リリースレバー軸57に設けられたリリースレバーばね58により、図6に示すリリースレバー52の下端部がラチェット32から離間する方向(図4における反時計回りの方向)へ付勢されている。リリースレバー52は、後述するセクタギア53の押圧部53aによって押圧された場合、リリースレバーばね58の付勢力に抗して、図4における時計回りの方向に回動し、ラチェット32を解除方向に回動させる。これにより、リリースレバー52は、ラチェット32をラッチ31から離間させて、ラッチ31とラチェット32との噛合状態を解除する。この結果、ラッチ31は、フルラッチ位置またはハーフラッチ位置からアンラッチ位置に回動する。
なお、リリースレバー52の上側アーム部は、ラッチ31とラチェット32との噛合状態を手動で解除する手動解除手段として機能する。例えば、電気系統の故障やバッテリの消耗等によってラッチ駆動モータ55に電力供給ができず、ドアラッチ装置3からストライカ103を解放することができない非常時に、バックドア101の車内側から蓋体等(図示せず)を取り外してリリースレバー52の上側アーム部を手動で回動操作することにより、ラッチ31とラチェット32との噛合状態を手動で解除することができる。
セクタギア53は、ラッチ駆動モータ55の動力を用いて、噛合機構30のクローズ動作またはリリース動作を行うためのものである。具体的には、セクタギア53は、その上側の外周面にギア部を有する扇形のギア部材であり、図3,4に示すように、バックプレート43とブラケット60との間に配設される。この際、セクタギア53は、バックプレート43の上面と同程度の高さの位置でブラケット60に固着されたセクタギア軸53cによって、回動可能に軸支される。セクタギア53のギア部には、図3,4に示すように、ラッチ駆動モータ55の動力によって回転するピニオンギア56が噛合している。セクタギア53は、ピニオンギア56の回転により、ラッチ駆動モータ55の動力が伝達されて、ラッチレバー51側への方向またはリリースレバー52側への方向に向かって回動する。
また、セクタギア53は、図3,4,6に示すように、ラッチレバー51およびリリースレバー52を択一的に押圧可能な押圧部53aを有する。押圧部53aは、セクタギア53の前面から前方(ラッチレバー51の当接部51aとリリースレバー52との間を抜ける方向)へ突出した円柱形のピン(シャフト)である。押圧部53aは、ラッチレバー51の回動位置に関わらず、ラッチレバー51の当接部51aの周面に当接可能な長さを有する。セクタギア53は、ピニオンギア56を介して伝達されるラッチ駆動モータ55の動力を用いてラッチレバー51側へ回動し、これにより、ラッチレバー51(詳細には当接部51a)を押圧部53aで押圧する。このようにして、セクタギア53は、ラッチレバー51とともにラッチ31をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動させるクローズ動作を行う。また、セクタギア53は、上述したラッチ駆動モータ55の動力を用いてリリースレバー52側へ回動し、これにより、リリースレバー52を押圧部53aで押圧する。このようにして、セクタギア53は、リリースレバー52にラッチ31とラチェット32との噛合状態を解除させるリリース動作を行う。
本実施の形態では、上述したクローズ動作により、ストライカ103はラッチ31によって完全に係合保持され、これらラッチ31とストライカ103との係合状態はラチェット32によって維持され、結果、バックドア101の全閉状態がロックされる。一方、上述したリリース動作により、ラッチ31とストライカ103との係合状態は解除され、結果、ストライカ103はラッチ31から解放されて、バックドア101の閉状態のロックが解除される。すなわち、バックドア103は、開放可能な状態になる。
中立位置検出スイッチ54は、セクタギア53の中立位置への復帰を検出する中立位置検出部として機能する。具体的には、中立位置検出スイッチ54は、対象物との接触前後で進退するプッシュボタン式の検出端子を用いて構成され、図3,4に示すように、セクタギア53のギア部の前面から離れて位置するようにブラケット60に取り付けられる。
ここで、セクタギア53の前面には、セクタギア53の回動軌跡に沿った円弧形状のカム面を有する検出片53bが突設されている。検出片53bは、セクタギア53と一体的に回動し、セクタギア53の中立位置において中立位置検出スイッチ54の検出端子と摺接可能である。一方、本実施の形態において、中立位置は、ラッチレバー51およびリリースレバー52から押圧部53aが離れた状態、すなわち、ラッチレバー51の当接部51aおよびリリースレバー52のリリースアーム部(後述する)のいずれからも押圧部53aが所望の間隔をあけて完全に離れた状態のセクタギア53の回動位置である。
中立位置検出スイッチ54は、セクタギア53の回動位置が中立位置ではない場合、検出片53bのカム面から離れてオン状態になる。また、中立位置検出スイッチ54は、セクタギア53の回動位置が中立位置である場合、すなわち、クローズ動作またはリリース動作を実行後のセクタギア53が中立位置に復帰した場合、検出片53bのカム面と接触してオフ状態になる。中立位置検出スイッチ54は、このようなオン状態とオフ状態との切り替わりによって、セクタギア53が中立位置へ復帰したことを検出する。中立位置検出スイッチ54は、上述したセクタギア53の回動位置の検出結果を示す電気信号、すなわち、オン状態またはオフ状態を示す検出信号を電子制御装置7(図1,2参照)に順次送信する。
ラッチ駆動モータ55は、ドアラッチ装置3の動力を発生させる電動式の駆動モータ(駆動源)である。図3,4に示すように、ラッチ駆動モータ55は、その長手方向がドアラッチ装置3の幅方向(図4の紙面に向かって左右の方向)に沿った状態となるように、ブラケット60の背面に固定される。ラッチ駆動モータ55は、車両100の車載電源から給電されて駆動し、これによって動力を発生させる。ラッチ駆動モータ55の動力は、ギア機構等(図示せず)を介してピニオンギア56に伝達される。ピニオンギア56は、図3,4に示すように、ブラケット60に形成された開口を介してブラケット60の背面側から前面側へ突出するように配置され、セクタギア53のギア部と噛合する。ラッチ駆動モータ55は、正方向に駆動軸を回転する駆動(以下、正転作動という)を行うことにより、ピニオンギア56を正方向に回転させて、セクタギア53をラッチレバー51側に向かう方向へ回動させることができる。ラッチ駆動モータ55は、逆方向に駆動軸を回転する駆動(以下、逆転作動という)を行うことにより、ピニオンギア56を逆方向に回転させて、セクタギア53をリリースレバー52側に向かう方向へ回動させることができる。
ブラケット60は、上述した噛合機構30および駆動機構50の各構成要素が適宜取り付けられる部材である。例えば、図3〜5に示すように、ブラケット60の下端部分には、噛合機構30の収容体41が螺子止め等によって取り付けられる。ブラケット60の前面側には、セクタギア53、中立位置検出スイッチ54、およびピニオンギア56が設けられる。ブラケット60の背面側には、ラッチ駆動モータ55が設けられる。このように噛合機構30および駆動機構50の各構成要素が設けられたブラケット60は、図5に示すように、バックドア101に螺子止め等によって取り付けられる。この際、ストライカ103と噛合する噛合機構30がバックドア101から車体内部側に向かって露出するように、ドアラッチ装置3はバックドア101に設けられる。
(ストライカと噛合機構との係合動作)
つぎに、車両100のバックドア101を開閉する際のストライカ103(図1,2参照)とドアラッチ装置3の噛合機構30との係合動作について説明する。図8A〜8Cは、本発明の実施の形態におけるストライカと噛合機構との係合動作を説明する図である。図8Aは、アンラッチ位置にあるラッチとラチェットとの状態を示す図である。図8Bは、ハーフラッチ位置にあるラッチとラチェットとの噛合状態を示す図である。図8Cは、フルラッチ位置にあるラッチとラチェットとの噛合状態を示す図である。
図8A〜8Cに示すように、ラッチ31は、上述したように外周面に開口する係合溝31aと、ストライカ103と噛み合うフック部31bと、フルラッチ状態の際にラチェット32と噛み合うフルラッチ係止部31cと、ハーフラッチ状態の際にラチェット32と噛み合うハーフラッチ係止部31dとを有する。このようなラッチ31がアンラッチ位置にあるアンラッチ状態において、図8Aに示すように、係合溝31aの開口は、噛合機構30の収容体41の一構成要素であるカバープレート42に形成されたストライカ進入溝45の開口に合致している。係合溝31aよりも右側に位置するフック部31bは、ストライカ進入溝45から退避した状態になっている。すなわち、アンラッチ状態において、ラッチ31は、ストライカ103と係合しておらず、ストライカ進入溝45内に進入するストライカ103を受け入れることもできれば、ストライカ進入溝45からストライカ103を解放することもできる。
図8Aに示すようにラッチ31がアンラッチ位置にある場合、ハーフラッチ検出スイッチ33およびフルラッチ検出スイッチ34は、各々、カム部31eのカム面31fと接触しており、故に、双方ともオン状態である。また、ラッチ31がアンラッチ位置にある場合、ドアラッチ装置3の噛合機構30は、バックドア101の閉状態のロックを解除している。この場合、バックドア101は、バックドア101に設けた操作ハンドル(図示せず)等を操作しなくとも、開閉することができる。
ついで、バックドア101が閉じた際、ドアラッチ装置3は、車両100の車体後部104に設けられたストライカ103に係合するように接近する。この際、ストライカ103は、ストライカ進入溝45に沿って噛合機構30の内部へ進入する。ラッチ31は、この進入してきたストライカ103を、フルラッチ係止部31cに当接させるとともに係合溝31a内に受け入れる。その後、ラッチ31は、係合溝31a内にストライカ103を受け入れた状態を維持しながら、ラッチ軸37を中心として、図8Aに示すアンラッチ位置から図8Bに示すハーフラッチ位置へ回動する。このラッチ31の回動に伴い、フック部31bは、ストライカ進入溝45の前端側から奥部側へと順次移動しながら、図8Bに示すようにストライカ進入溝45を横切る状態となる。この状態において、ラッチ31は、ハーフラッチ位置に回動し終え、図8Bに示すようにハーフラッチ位置でストライカ103と係合する。詳細には、フック部31bは、ストライカ103と係合して、ストライカ進入溝45からのストライカ103の解放を阻止するとともに、係合溝31a内にストライカ103を係合保持する。
ハーフラッチ位置にあるラッチ31のアンラッチ位置への回動は、図8Bに示すように、ラチェット32がハーフラッチ係止部31dと噛合することによって規制される。図8Bに示すようにラッチ31がハーフラッチ位置にある場合、ハーフラッチ検出スイッチ33は、カム部31eのカム面31fから離れてオン状態からオフ状態に切り替わる。フルラッチ検出スイッチ34は、カム面31fとの接触を継続し、オン状態を維持する。また、ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32がハーフラッチ係止部31dと噛合する前後の回動に伴い、ラチェット32がセット位置にいない際の突起部32aと一時的に接触し、突起部32aとの接触時にオフ状態に切り替わり、ラチェット32がセット位置にいる際の突起部32aからの離間時にオン状態に切り替わる。一方、ラッチ31がハーフラッチ位置にある場合、ドアラッチ装置3の噛合機構30は、バックドア101を半ドア状態としている。この場合、操作ハンドル等を操作してラッチ31がアンラッチ位置へ回動しなければ、バックドア101を開くことはできない。なお、半ドア状態とは、つぎのように定義される。すなわち、全閉状態のとき、万一何らかの原因でラッチ31のフルラッチ係止部31cとラチェット32との噛合が外れても、不意にバックドア101が開かないように、フルラッチ位置とアンラッチ位置との間において、ラチェット32がラッチ31のハーフラッチ係止部31dと噛合して、バックドア101を半閉状態に保持し得るようになっているハーフラッチ位置が設定されている。このバックドア101の半閉状態のことを、「半ドア状態」という。
上述したようにハーフラッチ位置にあるラッチ31が、ラッチ軸37を中心としてフルラッチ位置に向け回動した場合、図8Cに示すように、フック部31bは、ストライカ進入溝45の奥部を横切る状態となって、ストライカ進入溝45の開口を閉塞する。この状態において、ラッチ31は、フルラッチ位置に回動し終え、図8Cに示すようにフルラッチ位置でストライカ103と完全に係合する。詳細には、フック部31bは、ストライカ103との噛合を進行して、ストライカ進入溝45からのストライカ103の解放を阻止し続けながら、係合溝31a内にストライカ103を完全に係合保持する。
フルラッチ位置にあるラッチ31のハーフラッチ位置またはアンラッチ位置への回動は、図8Cに示すように、ラチェット32がフルラッチ係止部31cと噛合することによって規制される。図8Cに示すようにラッチ31がフルラッチ位置にある場合、ハーフラッチ検出スイッチ33は、カム面31fから離れた状態を継続してオフ状態を維持する。フルラッチ検出スイッチ34は、カム面31fから離れてオン状態からオフ状態に切り替わる。また、ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32がフルラッチ係止部31cと噛合する前後の回動に伴い、ラチェット32がセット位置にいない際の突起部32aと一時的に接触し、突起部32aとの接触時にオフ状態に切り替わり、ラチェット32がセット位置にいる際の突起部32aからの離間時にオン状態に切り替わる。一方、ラッチ31がフルラッチ位置にある場合、ドアラッチ装置3の噛合機構30は、バックドア101の閉状態を完全にロックしている(全閉状態)。この場合、バックドア101の開扉動作を電子制御装置7に指示する開操作部等を操作して、ドアラッチ装置3の駆動機構50がラッチ31をアンラッチ位置へ回動させなければ、バックドア101を開くことはできない。
一方、ラチェット32は、ラチェット軸38を中心として解除方向に回動することにより、図8Bに示すハーフラッチ位置または図8Cに示すフルラッチ位置にあるラッチ31との噛合状態を解除することができる。すなわち、ドアラッチ装置3の駆動機構50がラッチ31とラチェット32との噛合状態を解除するようリリースレバー52(図3〜6参照)を操作するリリース動作を行うことにより、図8B,8Cに示す噛合機構30とストライカ103との係合状態を解除することができる。なお、ラチェット32は、ラチェット軸38を中心として噛合方向へ回動するよう付勢されている。このラチェット軸38を中心としたラチェット32の噛合方向への回動は、図8A〜8Cに示すように、ストッパ36がラチェット32の延出部を受け止めることによって規制される。
(電子制御装置の構成)
つぎに、本発明の実施の形態における電子制御装置7の構成について説明する。図9は、本発明の実施の形態に係るドア開閉制御システムの機能構成の一例を示すブロック図である。以下、図9を参照しつつ、ドア開閉制御システム1の機能構成とともに電子制御装置7の構成を説明する。
図9に示すように、ドア開閉制御システム1は、ドアラッチ装置3の中立位置検出スイッチ54、ハーフラッチ検出スイッチ33、フルラッチ検出スイッチ34、およびラチェット検出スイッチ35の各検出結果をもとに、電子制御装置7によってドア開閉装置2のPTGモータ21およびドアラッチ装置3のラッチ駆動モータ55を適宜制御するように構成される。また、ドア開閉制御システム1は、上述したドア開閉装置2、ドアラッチ装置3、および電子制御装置7の他に、図1,2に示した車両100のバックドア101の開扉動作を操作するための開操作部8と、このバックドア101の閉扉動作を操作するための閉操作部9とを備える。
電子制御装置7は、図9に示すように、バックドア101の開閉に関する各種処理を実行する処理部71と、バックドア101の開閉に関する各種処理に用いる基準値等の各種情報を記憶する記憶部72とを備える。処理部71は、各種判定処理を実行する判定処理部71aと、ドア開閉装置2およびドアラッチ装置3の各駆動制御を実行する駆動制御部71bとを備える。電子制御装置7は、ドアラッチ装置3の各検出スイッチ(中立位置検出スイッチ54、ハーフラッチ検出スイッチ33、フルラッチ検出スイッチ34、およびラチェット検出スイッチ35)の各々から検出信号を受信する。また、電子制御装置7は、バックドア101の開閉操作の指示信号を開操作部8または閉操作部9から受信する。電子制御装置7は、これらの受信した各信号をもとに、PTGモータ21およびラッチ駆動モータ55を適宜制御して、バックドア101の開閉を制御する。
判定処理部71aは、中立位置検出スイッチ54からの検出信号に基づいて、セクタギア53の回動位置が中立位置であるか否かを判定する。判定処理部71aは、ハーフラッチ検出スイッチ33およびフルラッチ検出スイッチ34からの各検出信号に基づいて、ラッチ31の回動位置がアンラッチ位置、ハーフラッチ位置、フルラッチ位置のいずれであるかを判定する。判定処理部71aは、ハーフラッチ検出スイッチ33、フルラッチ検出スイッチ34、およびラチェット検出スイッチ35からの各検出信号に基づいて、ラッチ31とラチェット32との噛合状態を判定する。判定処理部71aは、これらラッチ31の回動位置およびラッチ31とラチェット32との噛合状態の各判定結果をもとに、クローズ動作が完了したか否か、あるいは、リリース動作が完了したか否かを判定する。
また、判定処理部71aは、上述した各検出信号に基づくクローズ動作完了またはリリース動作完了の判定処理に並行して、ラッチ駆動モータ55の作動時間に基づき、クローズ動作が完了したか否か、あるいは、リリース動作が完了したか否かを判定する。具体的には、クローズ動作の際、判定処理部71aは、クローズ動作の開始から完了までに必要な時間として予め設定された作動時間であるクローズ作動タイマ値と、クローズ動作の開始からの経過時間とを比較する。判定処理部71aは、この経過時間がクローズ作動タイマ値に到達した場合、クローズ動作が完了したと判定する。また、リリース動作の際、判定処理部71aは、リリース動作の開始から完了までに必要な時間として予め設定された作動時間であるリリース作動タイマ値と、リリース動作の開始からの経過時間とを比較する。判定処理部71aは、この経過時間がリリース作動タイマ値に到達した場合、リリース動作が完了したと判定する。
一方、判定処理部71aは、リリース動作の際、中立位置検出スイッチ54、ハーフラッチ検出スイッチ33、フルラッチ検出スイッチ34、およびラチェット検出スイッチ35(以下、これらを「各検出スイッチ」と適宜略す)を有するドアラッチ装置3のグランド断線故障の有無を判定する。具体的には、判定処理部71aは、リリース動作が完了した時点において、ドアラッチ装置3の各検出スイッチの全てがオフ状態である場合、ドアラッチ装置3にグランド断線故障が発生したと判定する。判定処理部71aは、このようにリリース動作完了時点でドアラッチ装置3にグランド断線故障ありと判定した場合、グランド断線故障後にリリース動作を完了した状態にあるリリース動作完了後のセクタギア53を中立位置に復帰させるリリーサ復帰動作の実行時間を補正する。この補正処理において、判定処理部71aは、リリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関関係と、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動開始時の電源電圧とをもとに、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動時間を補正する。この補正した作動時間である補正作動時間は、グランド断線故障後のリリーサ復帰動作の際にラッチ駆動モータ55を作動させる時間として用いられる。
駆動制御部71bは、判定処理部71aによる判定結果に基づいて、ドア開閉装置2のPTGモータ21およびラッチ駆動モータ55の各駆動を適宜制御する。例えば、駆動制御部71bは、クローズ動作が完了したと判定処理部71aによって判定された時点において、ラッチ駆動モータ55を停止する制御を行い、これにより、クローズ動作を停止させる。駆動制御部71bは、リリース動作が完了したと判定処理部71aによって判定された時点において、ラッチ駆動モータ55を停止する制御を行い、これにより、リリース動作を停止させる。また、駆動制御部71bは、グランド断線故障後にリリース動作を完了した状態にあるリリース動作完了後のセクタギア53を中立位置に復帰させるリリーサ復帰動作の際、判定処理部71aによって導出された補正作動時間だけラッチ駆動モータ55を作動させる。これにより、駆動制御部71bは、このリリース動作完了後のセクタギア53を中立位置まで回動させて停止させる。
一方、駆動制御部71bは、開操作部8または閉操作部9からの指示信号に基づいて、バックドア101の開扉動作または閉扉動作が実行されるようPTGモータ21およびラッチ駆動モータ55の各駆動を制御する。
記憶部72は、判定処理部71aの判定処理に用いられる基準値(例えばクローズ作動タイマ値やリリース作動タイマ値等)および判定処理部71aによる判定結果等の情報を記憶する。また、記憶部72は、処理部71が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部72に記憶された情報やプログラムは、処理部71によって適宜読み込まれる。
また、記憶部72は、図9に示すように、上述した判定処理部71aによるラッチ駆動モータ55の作動時間の補正処理に用いられる相関情報72aを予め記憶し保持する。図10は、グランド断線故障後のリリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータの作動電圧と作動時間との相関関係の一例を示す図である。相関情報72aは、図10に示すように、リリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関関係を示す情報である。
具体的には、ラッチ駆動モータ55の仕様に規定される作動電圧の範囲(例えば8[V]〜16[V]の範囲:以下、仕様範囲という)内において、相関情報72aは、図10の相関線L1によって示されるように、ラッチ駆動モータ55の作動電圧の増加に伴い、リリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動時間が二次関数的に減少するという相関関係を表す。例えば、作動電圧の仕様範囲内での相関情報72aにおいて、ラッチ駆動モータ55の作動電圧が10[V]である場合、リリース動作完了後のセクタギア53を中立位置へ復帰させ停止させるために必要なラッチ駆動モータ55の作動時間は、約194[ms]となる。ラッチ駆動モータ55の作動電圧が14[V]である場合、リリース動作完了後のセクタギア53を中立位置へ復帰させ停止させるために必要なラッチ駆動モータ55の作動時間は、約134[ms]となる。
図10の相関線L1によって示されるラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関関係は、リリーサ復帰動作の際に回動させたセクタギア53の停止する回動位置(停止位置)のばらつきの要因を考慮して設定される。本実施の形態では、このセクタギア53の停止位置のばらつきの要因(以下、停止位置ばらつき要因と適宜いう)として、例えば、ラッチ駆動モータ55の作動時の環境温度、印加電圧および回転速度と、セクタギア53およびラッチ駆動モータ55の単品寸法と、ラッチ駆動モータ55の惰性回転量と、電子制御装置7による電源電圧の読み取り誤差とが考慮される。
ここで、図10において作動電圧と作動時間との相関関係を示す各プロット点は、セクタギア53がリリース動作完了時点の位置(リリースレバー52のリリースアーム部52aを押圧部53aで押圧した状態の位置)から中立位置に復帰するまで回動した際の回動角度(作動角度)や、ラッチ駆動モータ55の性能(電圧当たりの回転数、作動時間等)をもとに、ばらつきを考慮しながら所定の計算によって算出したラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関結果をプロットしたものである。図10に示す相関線L1は、これらの各プロット点に対応付けられる作動電圧および作動時間の各算出値をもとに回帰分析等の所定の分析方法を行うことにより、導出される。このような相関線L1は、図10に示すように、ラッチ駆動モータ55の作動電圧をx軸にとり、ラッチ駆動モータ55の作動時間をy軸にとった場合、下式(1)によって表される。ただし、下式(1)において、xの範囲は、ラッチ駆動モータ55の作動電圧の仕様範囲(例えば8[V]以上、16[V]以下)である。
y=1.388x2−48.313x+538.61 ・・・(1)
本実施の形態では、式(1)の各項の係数や定数を四捨五入(例えば小数点第2位を四捨五入)して式(1)の近似式を求め、この近似式をもとに、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動電圧x[V]と作動時間y[ms]との相関関係を示す相関式(2)が設定される。
y=1.4x2−48.3x+538.6 ・・・(2)
この相関式(2)では、作動電圧xとして、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動開始時の電源電圧VBUが代入された場合、この電源電圧VBUに応じてリリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動時間yとして、電圧補正タイマ値tr[ms]が算出される。電圧補正タイマ値trは、リリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動時間yを電源電圧VBUに基づいて補正した補正作動時間である。
一方、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動電圧が、その仕様範囲の下限値、すなわち作動下限電圧に比して低い場合、ラッチ駆動モータ55の作動電圧xと作動時間yとの相関関係は、図10の相関線L2によって示されるように、作動電圧xの増減に関わらず作動時間yを、作動下限電圧に対応する作動時間と同一の値とする相関関係に設定される。これに基づき、上述の補正作動時間は、ラッチ駆動モータ55の作動電圧xが作動下限電圧に比して低い場合、ラッチ駆動モータ55の作動電圧xと作動時間yとの相関関係においてラッチ駆動モータ55の作動下限電圧に対応する作動時間と同一の値とする。例えば、作動下限電圧が8[V]である場合、8[V]未満の範囲におけるラッチ駆動モータ55の電圧補正タイマ値trは、この作動下限電圧に対応する作動時間(約241[ms])と同じ値とする。
他方、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動電圧が、その仕様範囲の上限値、すなわち作動上限電圧に比して高い場合、ラッチ駆動モータ55の作動電圧xと作動時間yとの相関関係は、図10の相関線L3によって示されるように、作動電圧xの増減に関わらず作動時間yを、リリーサ復帰動作におけるラッチ駆動モータ55の最小の作動時間と同一の値とする相関関係に設定される。これに基づき、上述の補正作動時間は、ラッチ駆動モータ55の作動電圧xが作動上限電圧に比して高い場合、仕様に規定されるラッチ駆動モータ55の作動電圧の上下限範囲(仕様範囲)においてラッチ駆動モータ55の作動電圧xと作動時間yとの相関関係(図10の相関線L1参照)で示される作動時間のうち最小の作動時間と同一の値とする。例えば、作動下限電圧が8[V]であり且つ作動上限電圧が16[V]である場合、16[V]超過の範囲におけるラッチ駆動モータ55の電圧補正タイマ値trは、8[V]以上、16[V]以下という作動電圧xの仕様範囲内での作動時間yの最小値(約121[ms])と同じ値とする。
記憶部72は、上述した相関情報72aとして、相関線L1に対応する作動電圧xと作動時間yとの相関関係を示す相関式(2)と、相関線L2に対応する作動電圧xと作動時間yとの相関関係を示す情報と、相関線L3に対応する作動電圧xと作動時間yとの相関関係を示す情報とを記憶し保持する。
上述した処理部71および記憶部72を備えた構成の電子制御装置7は、リリース動作の開始からリリース動作の完了までの時間が経過した時点において、駆動制御部71bによってリリース動作を停止させるとともに、ハーフラッチ検出スイッチ33、フルラッチ検出スイッチ34、ラチェット検出スイッチ35、および中立位置検出スイッチ54の全てがオフ状態である場合、これらの各検出スイッチを有するドアラッチ装置3にグランド断線故障が発生したと判定処理部71aによって判定する。ついで、電子制御装置7は、グランド断線故障後にリリース動作を完了した状態にあるリリース動作完了後のセクタギア53を中立位置に復帰させるリリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動電圧xと作動時間yとの相関関係(図10参照)と、このリリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動開始時の電源電圧VBUとをもとに、このリリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動時間を判定処理部71aによって補正する。この際、電子制御装置7は、判定処理部71aにより、ラッチ駆動モータ55の作動電圧xと作動時間yとの相関関係を示す相関式(2)に、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動開始時の電源電圧VBUを代入して、補正作動時間を算出する。電子制御装置7は、判定処理部71aによる補正作動時間だけ、駆動制御部71bによってラッチ駆動モータ55を作動させ、これにより、リリース動作完了後のセクタギア53を中立位置まで回動させ停止させる。
開操作部8および閉操作部9は、バックドア101の開閉を操作するための操作手段である。例えば、開操作部8および閉操作部9は、各々、操作ボタンまたは操作スイッチ等の操作ユニットを用いて構成され、車両100の内部またはバックドア101等に設けられる。開操作部8は、ユーザの操作に応じて、バックドア101の開扉動作の実行を指示する開扉指示信号を電子制御装置7に入力する。閉操作部9は、ユーザの操作に応じて、バックドア101の閉扉動作の実行を指示する閉扉指示信号を電子制御装置7に入力する。
(ドア開閉制御の動作)
つぎに、本発明の実施の形態に係るドア開閉制御システム1によるバックドア101の開閉制御の動作について説明する。図11は、本発明の実施の形態に係るドア開閉制御システムの動作の一例を示すタイミングチャートである。図12は、本発明の実施の形態におけるリリース動作を実行している状態を示す図である。図13は、本発明の実施の形態におけるドアラッチ装置のグランド断線故障後にセクタギアを中立位置へ復帰させる状態を示す図である。
まず、車両100のバックドア101は、一例として、図1に示すように閉状態となっている。この際、ドアラッチ装置3において、ラッチ31は、図8Cに示すように、フルラッチ位置においてラチェット32と噛合した状態にあり、ストライカ103を係合保持している。セクタギア53は、ラッチレバー51の当接部51aおよびリリースレバー52のリリースアーム部52aのいずれにも押圧部53aを接触させていない中立位置に停止した状態である(停止状態)。なお、リリースアーム部52aは、図12に示すように、リリースレバー52のうちリリースレバー軸57よりも下方側のアーム部分である。
この停止状態では、図11における時間t1以前の期間に示されるように、中立位置検出スイッチ54は、中立位置にあるセクタギア53の検出片53bと接触してオフ状態になっている。ハーフラッチ検出スイッチ33およびフルラッチ検出スイッチ34は、図8Cに示すように、ラッチ31のカム部31eから離間してオフ状態になっている。ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32の突起部32aと接触しておらず、オン状態になっている。また、ドアラッチ装置3のラッチ駆動モータ55は、停止した状態になっている。なお、特に図11には示さないが、ドア開閉装置2のPTGモータ21も停止した状態になっている。
ついで、上述した閉状態のバックドア101を開けるべく、ユーザは、図9に示す開操作部8を操作する。開操作部8は、ユーザの操作に応じて、開扉指示信号を電子制御装置7に入力する。電子制御装置7は、この開扉指示信号に基づいて、図11に示すように、上述した停止状態以後の時間t1のタイミングから、バックドア101の閉状態のロックを解除するリリース動作(通常時リリース動作S1)を開始する。
通常時リリース動作S1において、電子制御装置7の駆動制御部71bは、開操作部8からの開扉指示信号に基づいて、リリース動作のための逆転作動を行うようラッチ駆動モータ55を制御する。ラッチ駆動モータ55は、この制御に基づいて、図11に示すように、時間t1のタイミングから逆転作動を開始する。セクタギア53は、このラッチ駆動モータ55の逆転作動によって発生した動力を用い、セクタギア軸53c(図12参照)を中心として中立位置からリリースレバー52に向かう方向へ回動し始める。
一方、通常時リリース動作S1において、電子制御装置7の判定処理部71aは、セクタギア53がリリース動作を開始してからの経過時間、すなわち、ラッチ駆動モータ55がリリース動作のための逆転作動を開始してからの経過時間を計時(カウント)する。判定処理部71aは、記憶部72から読み出したリリース作動タイマ値と、このリリース動作開始からの経過時間とを比較し、この経過時間がリリース作動タイマ値に到達したか否かを継続的に判定する。
駆動制御部71bは、リリース動作の開始からリリース動作の完了までの時間が経過するまで、具体的には図11に示すように、ラッチ駆動モータ55が逆転作動を開始した時間t1からの経過時間がリリース作動タイマ値に到達するまで、逆転作動を継続するようラッチ駆動モータ55を制御する。この制御に基づき、ラッチ駆動モータ55は、時間t1のタイミングから継続して逆転作動を行う。この逆転作動の継続により、セクタギア53は、図12に示すセクタギア軸53cを中心としてリリースレバー52に向かい回動し続け、これにより、中立位置から外れる。この状態において、中立位置検出スイッチ54は、図12に示すように、セクタギア53の検出片53bから離間する。この結果、中立位置検出スイッチ54は、図11に示すように、オフ状態からオン状態に切り替わる。
このように通常時リリース動作S1が実行されている途中のタイミング、例えば、図11に示すように、中立位置検出スイッチ54がオフ状態からオン状態に切り替わった後の時間t2のタイミングに、ドアラッチ装置3にグランド断線故障が発生したとする。この場合、グランド断線故障の発生に起因して、中立位置検出スイッチ54は、セクタギア53が中立位置から外れて回動し続けているにもかかわらず、オン状態からオフ状態に切り替わる。これと同時に、ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32がセット位置にいるにもかかわらず、オン状態からオフ状態に切り替わる。そして、このグランド断線故障が発生して以後、各検出スイッチは、オン状態とオフ状態とを切り替えることができなくなってしまう。すなわち、中立位置検出スイッチ54は、セクタギア53の回動位置に関係なく、継続的にオフ状態となる。ラチェット検出スイッチ35は、ラチェット32がセット位置にいるか否かに関係なく、継続的にオフ状態となる。また、ハーフラッチ検出スイッチ33およびフルラッチ検出スイッチ34は、ラッチ31の回動位置に関係なく、継続的にオフ状態となる。
グランド断線故障が発生した時間t2のタイミング以後においても、駆動制御部71bは、リリース動作の逆転作動を継続するようラッチ駆動モータ55を制御する。この制御に基づき、ラッチ駆動モータ55は、グランド断線故障の発生に関係なく、時間t1のタイミングから継続して逆転作動を行う。このような逆転作動の継続により、セクタギア53は、グランド断線故障の発生に関係なく、時間t1のタイミングから継続してリリースレバー52に向かい回動し続ける。これにより、セクタギア53は、図12に示すように、リリースレバー52のリリースアーム部52aに押圧部53aを当接させ、ついには、押圧部53aでリリースアーム部52aを押圧する。
リリースレバー52は、図12に示すように、押圧部53aによってリリースアーム部52aを押圧されることにより、リリースレバー軸57を中心としてリリースアーム部52aがラチェット32に近接する方向(図12における時計回りの方向)へ回動する。これにより、リリースレバー52は、図12に示すようにリリースアーム部52aでラチェット32を押圧して、この結果、ラチェット32をセット位置から解除方向へ回動させて、フルラッチ位置にあるラッチ31とラチェット32との噛合状態(図8C参照)を解除する。このラッチ31とラチェット32との噛合状態の解除に伴い、ラッチ31は、フルラッチ位置からハーフラッチ位置(図8B参照)を経てアンラッチ位置(図8A参照)に回動する。アンラッチ位置にあるラッチ31は、ストライカ103との係合を解除して、ストライカ103を解放する。この結果、バックドア101は、閉状態のロックが解除されて開放可能な状態になる。
上述したセクタギア53の継続的な回動に並行して、判定処理部71aは、ラッチ駆動モータ55がリリース動作のための逆転作動を開始してからの経過時間を計時し続け、この経過時間がリリース作動タイマ値に到達したか否かを継続的に判定している。判定処理部71aは、このリリース動作開始からの経過時間とリリース作動タイマ値とを比較し、この経過時間がリリース作動タイマ値に到達した場合、リリース動作が完了したと判定する。駆動制御部71bは、この判定処理部71aの判定結果に基づき、リリース動作の開始からリリース動作の完了までの時間が経過した時点、すなわち、図11に示すように時間t1からリリース作動タイマ値(例えば2520[ms])が経過した時間t3のタイミングに、逆転作動を停止するようラッチ駆動モータ55を制御する。この制御に基づき、ラッチ駆動モータ55は、図11に示すように、時間t3のタイミングに逆転作動を停止する。これにより、セクタギア53は、図12に示すように、リリースレバー52のリリースアーム部52aに押圧部53aを接触させた状態(詳細には押し付けた状態)で回動を停止する。
上述したように駆動制御部71bがリリース動作を停止させるとともに、判定処理部71aは、このリリース動作停止の時点(図11に示す時間t3)におけるハーフラッチ検出スイッチ33、フルラッチ検出スイッチ34、ラチェット検出スイッチ35、および中立位置検出スイッチ54の各オンオフ状態を判定する。判定処理部71aは、この時点においてハーフラッチ検出スイッチ33、フルラッチ検出スイッチ34、ラチェット検出スイッチ35、および中立位置検出スイッチ54の全てがオフ状態である場合、これらの各検出スイッチを有するドアラッチ装置3にグランド断線故障が発生したと判定する(故障検出)。図11に示すように、通常時リリース動作S1は、時間t1のタイミングから時間t3のタイミングまで実行される。
通常時リリース動作S1を実行後、ドア開閉制御システム1は、図11に示すように、グランド断線故障後にリリース動作を完了した状態にあるリリース動作完了後のセクタギア53を中立位置へ復帰させる故障時リリーサ復帰動作S2を実行する。
故障時リリーサ復帰動作S2において、電子制御装置7の駆動制御部71bは、上述したようにリリース動作のためのラッチ駆動モータ55の逆転作動を停止させた時点(時間t3のタイミング)から所定の時間(例えば5000[ms])待機する。駆動制御部71bは、この待機後の時間t4のタイミングに、リリーサ復帰動作のための正転作動を行うようラッチ駆動モータ55を制御する。この制御に基づき、ラッチ駆動モータ55は、図11に示すように、時間t4のタイミングから正転作動を開始する。リリース動作完了後のセクタギア53は、このラッチ駆動モータ55の正転作動によって発生した動力を用い、セクタギア軸53c(図13参照)を中心としてリリースレバー52側から中立位置に向かう方向へ回動し始める。
一方、故障時リリーサ復帰動作S2において、電子制御装置7の判定処理部71aは、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動時間を補正する。本実施の形態において、判定処理部71aは、リリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関関係を示す相関情報72aを記憶部72から読み出す。また、判定処理部71aは、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動開始時の電源電圧、すなわち、図11に示す時間t4のタイミングにおいてラッチ駆動モータ55に印加される電源電圧VBUを読み取る。判定処理部71aは、これら相関情報72aと電源電圧VBUとをもとに、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動時間を、電源電圧VBUに応じてリリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動時間に補正する。これにより、判定処理部71aは、この補正した作動時間である補正作動時間を得る。
具体的には、読み取った電源電圧VBUがラッチ駆動モータ55の仕様範囲内の作動電圧である場合、判定処理部71aは、相関情報72aとして読み出した上述の相関式(2)の作動電圧xに電源電圧VBUを代入して演算処理し、これにより、電源電圧VBUに応じた電圧補正タイマ値trを算出する。判定処理部71aは、得られた電圧補正タイマ値trを、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の補正作動時間として決定する。
一方、読み取った電源電圧VBUがラッチ駆動モータ55の作動下限電圧に比して低い場合、判定処理部71aは、相関情報72aとして読み出した上述の相関式(2)の作動電圧xに上記の作動下限電圧を代入して演算処理し、これにより、作動下限電圧に応じた電圧補正タイマ値trを算出する。すなわち、判定処理部71aは、相関式(2)によって示されるラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関関係において上記の作動下限電圧に対応する作動時間と同一の値を、電圧補正タイマ値trとする。判定処理部71aは、このようにして得られた電圧補正タイマ値trを、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の補正作動時間として決定する。
また、読み取った電源電圧VBUがラッチ駆動モータ55の作動上限電圧に比して高い場合、判定処理部71aは、ラッチ駆動モータ55の作動電圧の上下限範囲内(仕様範囲内)においてラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関関係(図10参照)で示される作動時間、すなわち、相関式(2)に基づき作動電圧に応じて算出される作動時間のうち、最小の作動時間と同一の値を、電圧補正タイマ値trとする。判定処理部71aは、このようにして得られた電圧補正タイマ値trを、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の補正作動時間として決定する。
ついで、判定処理部71aは、リリース動作完了後のセクタギア53が中立位置に向かう方向へ回動し始めてからの経過時間、すなわち、ラッチ駆動モータ55がリリーサ復帰動作のための正転作動を開始した時間t4からの経過時間を計時(カウント)する。判定処理部71aは、上述した電圧補正タイマ値trと時間t4からの経過時間とを比較し、この経過時間が電圧補正タイマ値trに到達したか否かを継続的に判定する。
駆動制御部71bは、リリース完了後のセクタギア53を中立位置に向けて回動させ始めてから判定処理部71aによる補正作動時間が経過するまで、すなわち、時間t4からの経過時間が電圧補正タイマ値trに到達するまで、正転作動を継続するようラッチ駆動モータ55を制御する。この制御に基づき、ラッチ駆動モータ55は、時間t4のタイミングから継続して正転作動を行う。この正転作動の継続により、セクタギア53は、図13に示すセクタギア軸53cを中心としてリリースレバー52側からラッチレバー51側に向かい回動し続ける。
時間t4から電圧補正タイマ値trが経過した時点、すなわち、図11に示す時間t5のタイミングにおいて、判定処理部71aは、時間t4からの経過時間が電圧補正タイマ値trに到達したと判定する。この判定処理部71aによる判定結果に基づき、駆動制御部71bは、時間t5のタイミングに正転作動を停止するようラッチ駆動モータ55を制御する。これにより、駆動制御部71bは、時間t4から電圧補正タイマ値trの作動時間(補正作動時間)だけ、ラッチ駆動モータ55を正転作動させたことになる。すなわち、ラッチ駆動モータ55は、駆動制御部71bの制御に基づき、図11に示すように、時間t4のタイミングから開始した正転作動を、時間t5のタイミングに停止する。
リリース動作完了後のセクタギア53は、上述した時間t4から時間t5までの期間の正転作動により、リリースレバー52のリリースアーム部52aから押圧部53aを離間させる方向に回動し、時間t5のタイミングに回動を停止する。これにより、このセクタギア53は、ラッチレバー51の当接部51aと押圧部53aを接触させることなく、リリースアーム部52aから押圧部53aを離間させて回動停止する。すなわち、このセクタギア53は、図13に示すように、リリースレバー52との接触位置から中立位置まで回動して停止し、リリースレバー52のリリースアーム部52aおよびラッチレバー51の当接部51aの双方から押圧部53aを十分に離間させた状態に復帰する。
この結果、ラチェット32は、図13に示すように、リリースレバー52による押圧作用から解放され、ラチェットばね40(図6参照)の付勢力によってセット位置に回動する。このようなラチェット32は、バックドア101の手動の閉操作により、ハーフラッチ位置またはフルラッチ位置のラッチ31と噛合可能な状態にあり、且つ、バックドア101の手動の開操作により、ハーフラッチ位置またはフルラッチ位置のラッチ31との噛合を解除可能な状態にある。
上述した故障時リリーサ復帰動作S2は、図11に示すように、リリース動作が完了した時間t3のタイミングから、リリース動作完了後のセクタギア53を中立位置に復帰させ停止させる期間(時間t4から時間t5までの期間)を経て実行され、ラッチ駆動モータ55の正転作動が停止した以後の時間t6のタイミングに終了する。一方、図11には図示しないが、故障時リリーサ復帰動作S2の実行期間において、ドア開閉装置2は、電子制御装置7の駆動制御部71bの制御に基づきPTGモータ21を動作させて開扉動作を行い、これにより、バックドア101を自動(電動)で開放してもよい。
なお、本実施の形態では、図13に示すように、故障時リリーサ復帰動作S2において中立位置に復帰させたセクタギア53の検出片53bが中立位置検出スイッチ54と接触しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、リリース動作完了後のセクタギア53が中立位置に復帰し停止した状態では、検出片53bと中立位置検出スイッチ54とが接触してもよいし、接触していなくてもよい。
故障時リリーサ復帰動作S2を実行後、ドア開閉制御システム1は、図11に示すように、バックドア101の自動(電動)の開閉を禁止する禁止動作S3を実行する。禁止動作S3において、駆動制御部71bは、開操作部8によって電子制御装置7に入力された開扉指示信号を無効にし、閉操作部9によって電子制御装置7に入力された閉扉指示信号を無効にする。これにより、駆動制御部71bは、ラッチ駆動モータ55の正転作動および逆転作動を禁止して、ラッチ駆動モータ55を停止状態に制御する。この結果、セクタギア53は、中立位置に停止した状態を維持する。このような状態において、バックドア101は、操作ハンドル等を用いた手動の開閉操作のみにより、開閉可能となる。また、バックドア101が手動で閉められた際、ドアラッチ装置3は、ラッチ31によってストライカ103を係合保持し、ラチェット32によってストライカ103とラッチ31との係合状態を維持する。
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、リリースレバー52のリリースアーム部52aをセクタギア53の押圧部53aで押圧して、ラチェット32とラッチ31との噛合状態を解除させるリリース動作を実行し、これにより、ラッチ31とストライカ103との係合状態を解除し、リリース動作の開始から完了までに要する時間が経過した時点において、リリース動作を停止するとともに、ハーフラッチ検出スイッチ33、フルラッチ検出スイッチ34、ラチェット検出スイッチ35、および中立位置検出スイッチ54の全てがオフ状態である場合、これらの各検出スイッチを有するドアラッチ装置にグランド断線故障が発生したと判定している。また、グランド断線故障後にリリース動作を完了した状態にあるリリース動作完了後のセクタギア53を中立位置に復帰させるリリーサ復帰動作を実行する際、このリリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関関係と、このリリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動開始時の電源電圧VBUとをもとに、リリーサ復帰動作時のラッチ駆動モータ55の作動時間を補正している。そして、この補正した作動時間である補正作動時間だけラッチ駆動モータ55を作動させて、リリース動作完了後のセクタギア53を中立位置まで回動させ停止させている。
このため、リリーサ復帰動作のためのラッチ駆動モータ55の正転作動をその作動時間で制御した際、この正転作動時の環境温度や作動電圧(電源電圧)の違いに起因して生じるセクタギア53の停止位置のばらつきを可能な限り抑制することができる。これにより、たとえグランド断線故障が発生してセクタギア53の中立位置への復帰を検出不可能な状態になったとしても、リリース動作完了後のセクタギア53の押圧部53aを、ラッチレバー51の当接部51aに意図せず接触させることなく、リリースレバー52のリリースアーム部52aから確実に離した状態にして、このセクタギア53を狙いの中立位置に確実に復帰させ、停止させることができる。
この結果、バックドア101が開いた状態において、ラッチレバー51とともにラッチ31をハーフラッチ位置またはフルラッチ位置へ誤って回動させてしまう事態を防止することができる。さらには、リリース動作完了後のセクタギア53が押圧部53aでリリースレバー52のリリースアーム部52aを押圧したままの状態になって、ラッチ31とラチェット32との噛合が解除された状態を誤って維持してしまう事態を防止することができる。故に、グランド断線故障が発生した状況下でリリース動作を実行した後であっても、開状態のバックドア101を手動で閉めてバックドア101を全閉状態に維持することができ、また、全閉状態あるいは半ドア状態のバックドア101を手動で開けることができる。
また、本発明の実施の形態では、リリーサ復帰動作に必要なラッチ駆動モータ55の作動電圧と作動時間との相関関係を示す相関式(2)に、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動開始時の電源電圧VBUを代入して、上述した補正作動時間としての電圧補正タイマ値trを算出している。このため、ラッチ駆動モータ55の動作環境の温度(環境温度)を上述した作動時間の補正処理のパラメータに用いずとも、電源電圧VBUに応じて、ラッチ駆動モータ55の作動時間を、リリーサ復帰動作に必要な補正作動時間としての電圧補正タイマ値trに容易に補正することができる。この電圧補正タイマ値trに基づくラッチ駆動モータ55の正転作動の制御により、リリース動作完了後のセクタギア53を、環境温度によらず確実に狙いの中立位置に停止させることができる。
なお、上述した実施の形態では、リリーサ復帰動作時のラッチ駆動モータ55の作動時間を補正する際、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の作動開始時の電源電圧VBUのみを、上述の相関式(2)に代入するパラメータとして用いていたが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明では、リリーサ復帰動作の際におけるラッチ駆動モータ55の環境温度を上述した作動時間の補正処理におけるパラメータとして用いてもよい。
この際、上述した相関式(2)にラッチ駆動モータ55の環境温度の項を追加した相関式を設定し、この設定した相関式に、ラッチ駆動モータ55の作動電圧(電源電圧VBU)と環境温度とを代入して、これら作動電圧と環境温度とに応じた補正作動時間を算出してもよい。あるいは、上述した相関式(2)をラッチ駆動モータ55の環境温度別に複数設定し、リリーサ復帰動作時の環境温度に応じて、これら設定した複数の相関式の中から選択した相関式に基づき、補正作動時間を算出してもよい。ラッチ駆動モータ55の環境温度は、ドアラッチ装置3等に温度センサを設置し、この温度センサによって測定すればよい。
また、上述した実施の形態では、車両100の開閉対象とするドアとしてバックドア101を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、車両100の開閉対象とするドアは、サイドドアであってもよい。この場合、上述したバックドア101用のドア開閉装置2およびドアラッチ装置3を、各々、サイドドア用のドア開閉装置およびドアラッチ装置に置き換えればよい。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、上述した各検出スイッチに影響を及ぼすグランド断線故障は、主に、ドアラッチ装置3のハーネス部分において発生するが、電子制御装置7内での故障によって発生する場合もあり得る。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。