以下に添付図面を参照して、本発明に係るドアラッチ制御装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1〜図3は、本発明の実施の形態であるドアラッチ装置を示したものである。ここで例示するドアラッチ装置1は、図4に示すように、車両本体Bに設けたトランクルームTRの開口を開閉するためのドア(以下、「トランクリッドD」という)を適用対象とし、トランクリッドDを閉成した状態に保持するためのものである。本実施の形態では、車両本体BにストライカSを固定配置する一方、トランクリッドDにドアラッチ装置1を設けたセダンタイプの四輪自動車を例示している。
図1〜図3に示すように、ドアラッチ装置1は、ベースプレート(装置本体)10にラッチ機構部100及びアクチュエータ駆動機構部200を設けて構成したものである。ベースプレート10は、ドアラッチ装置1をトランクリッドDに取り付ける場合の基準となるもので、車両本体BのストライカSに対応する部位、具体的にはベースプレート10の下端部にストライカ収容溝11を有している。ストライカ収容溝11は、ベースプレート10の下端部から上方に向けて延在した切欠であり、車両本体Bに対してトランクリッドDを閉成させた場合にストライカSを収容することのできる位置及び大きさに形成してある。
ラッチ機構部100は、車両本体Bに対してトランクリッドDを閉成させた場合にストライカSを噛合保持するためのもので、ストライカ収容溝11を挟んで左右となる部位にラチェット軸101及びラッチ軸102を備えている。ラチェット軸101は、ベースプレート10に対してラチェット110を揺動可能に支承するためのもので、ストライカ収容溝11の開口端部近傍に設けてある。ラッチ軸102は、ベースプレート10に対してラッチ120を回転可能に配設するためのもので、ストライカ収容溝11の奥側端部近傍に設けてある。
ラッチ機構部100のラチェット110は、ラチェット軸101からストライカ収容溝11の奥側端部方向に向けて延在してあり、ラッチ係止部111及びラチェット操作部112を有している。
ラッチ係止部111は、ストライカ収容溝11の奥側端部近傍においてラチェット110の側面からストライカ収容溝11に向けて突設した凸状部である。
ラチェット操作部112は、ストライカ収容溝11の奥側端部を超えてさらに延在した部分であり、屈曲縁部113を有している。屈曲縁部113は、ベースプレート10から離隔する方向に向けて略直角に屈曲した部分であり、ラチェット操作部112の外側縁部に設けてある。また、ラチェット操作部112は、スイッチレバー114を有している。スイッチレバー114は、ラチェット操作部112の外側縁部であって屈曲縁部113とは相反する側に設けてある。
ラッチ機構部100のラッチ120は、噛合溝121、フック部122、第1係合部123、第2係合部124及びラッチ操作部125を有している。
噛合溝121は、ラッチ120の外周面からラッチ軸102に近接する方向に向けて形成した切欠であり、ストライカSを収容することのできる幅を有している。この噛合溝121は、図1においてラッチ軸102を中心としてラッチ120を反時計回りに回転させた場合にストライカ収容溝11の開口端部から奥側端部に向けて順次交差するように構成してある。
フック部122は、噛合溝121がストライカ収容溝11と交差した場合にストライカ収容溝11の開口端部側に位置する部分である。
第1係合部123及び第2係合部124は、それぞれラチェット110のラッチ係止部111に当接した場合に、図1においてラッチ120の時計回りの回転を規制するものである。第1係合部123は、ラッチ係止部111に当接した場合にラッチ120のフック部122がストライカ収容溝11の開口端部に位置するように構成してある。第2係合部124は、ラッチ係止部111に当接した場合にラッチ120のフック部122がストライカ収容溝11の奥側端部に位置するように構成してある。ラッチ係止部111が第1係合部123及び第2係合部124のいずれに当接した場合にも、ストライカ収容溝11に対してフック部122は、ストライカ収容溝11に対するストライカSの通過を阻止することができる位置まで突出している。
ラッチ操作部125は、ラチェット110のラチェット操作部112に対応する態様でラッチ軸102に近接した部位から延在した部分である。このラッチ操作部125には、ラチェット操作部112との間に両者を互いに近接する方向に付勢するリターンスプリング103が設けてある。
尚、図1中の符号130は、図示せぬキーシリンダや緊急レバーを操作した場合にそれぞれ個別のワイヤW1,W2を介してラチェット110を操作するためのオープンレバーである。オープンレバー130は、オープンレバー軸131を介してベースプレート10に揺動可能に配設してある。また、オープンレバー130は、ベースプレート10との間に設けたバネなどの付勢手段(図示せず)によって図1において時計回り方向に付勢してある。このオープンレバー130は、ラチェット操作部132、キャンセルレバー操作部133及びストッパ部134を有している。ラチェット操作部132は、オープンレバー130の図1中の反時計回りへの揺動に伴って、ラチェット110におけるラチェット操作部112の屈曲縁部113に当接するものである。キャンセルレバー操作部133は、オープンレバー130の図1中の反時計回りへの揺動に伴って、後述するキャンセルレバー230におけるキャンセル作用レバー234に当接するものである。ストッパ部134は、ベースプレート10側に当接することによってオープンレバー130の図1中の時計回りへの揺動を規制するものである。尚、ラチェット操作部132が屈曲縁部113に当接するときのオープンレバー130の揺動ストロークと、キャンセルレバー操作部133がキャンセル作用レバー234に当接するときのオープンレバー130の揺動ストロークとは、ラチェット操作部132が先に当接し、その後にキャンセルレバー操作部133が当接するように設定してある。
一方、ドアラッチ装置1のアクチュエータ駆動機構部200は、アクチュエータ201の駆動によってラチェット110及びラッチ120を操作するためのもので出力レバー210及びカム駆動歯車220を備えている。
出力レバー210は、基端部にレバー軸211を備えたもので、レバー軸211をベースプレート10のスライド溝12に収容させることにより、レバー軸211の軸心回りに揺動可能、かつスライド溝12に沿ってレバー軸211をスライド移動させることが可能である。スライド溝12は、ベースプレート10の上縁部に形成したもので、ベースプレート10の外方に向けて凸となる円弧状に形成してある。
出力レバー210の基端部とベースプレート10との間には、レバースプリング212及びキャンセルレバー230が設けてある。レバースプリング212は、出力レバー210の基端部とベースプレート10との間に介在し、出力レバー210のレバー軸211を常時スライド溝12の右側端部(実効動作位置)に配置させるように付勢するものである。
キャンセルレバー230は、ベースプレート10のスライド溝12に沿うように湾曲状を成すプレート状部材であり、スライド溝12の右側端部近傍に設けたキャンセル軸231を介してベースプレート10に揺動可能に配設してある。このキャンセルレバー230には、ベースプレート10との間にキャンセルスプリング(弾性手段)232が設けてある。キャンセルスプリング232は、キャンセルレバー230の湾曲内面がレバー軸211の周面を圧接するように付勢するものである。このキャンセルスプリング232は、上述のレバースプリング212よりも十分に大きなバネ定数を有したものである。また、キャンセルレバー230は、キャンセル作用レバー234を有している。キャンセル作用レバー234は、キャンセルレバー230と一体に設けてあり、キャンセル軸231を介してキャンセルレバー230とは相反する側に延在してある。上述したようにキャンセル作用レバー234には、オープンレバー130の図1中の反時計回りへの揺動に伴って、キャンセルレバー操作部133が当接する。
図からも明らかなように、キャンセルレバー230の湾曲内面においてスライド溝12の右側端部に対応する部位には、支持突部233が形成してある。支持突部233は、出力レバー210のレバー軸211がスライド溝12の右側端部に位置している場合にその左側周面に当接し、レバー軸211の左側へのスライド移動を規制するものである。
また、出力レバー210には、ラチェット操作部112とラッチ操作部125との間に位置する先端部分に解除レバー部213及びラッチピン214が設けてある。解除レバー部213は、出力レバー210の先端部からラチェット操作部112の屈曲縁部113に対向する態様で設けたレバー状部分であり、出力レバー210がレバー軸211の軸心回りに揺動した場合に屈曲縁部113及びラチェット操作部112を介してラチェット110を押圧操作することが可能である。ラッチピン214は、出力レバー210の先端部から突設した柱状部分であり、出力レバー210がレバー軸211の軸心回りに揺動した場合にラッチ操作部125を介してラッチ120を押圧操作することが可能である。
カム駆動歯車220は、ベースプレート10において出力レバー210の中間部に対応する部位に回転可能に配設してあり、アクチュエータ201が駆動した場合に適宜歯車列240を介して回転するものであり、本実施の形態では、アクチュエータ201が正転駆動した場合に図1において時計回りに回転する一方、アクチュエータ201が逆転駆動した場合に図1において反時計回りに回転するものである。このカム駆動歯車220には、出力レバー210に対向する端面にカムピン221が設けてある。カムピン221は、カム駆動歯車220の端面から突出し、出力レバー210の中間部に形成したカム溝215に連係している。カム溝215は、カム駆動歯車220が回転した場合に解除レバー部213及びラッチピン214を介してラチェット110及びラッチ120に、後述する動作を行わせるように構成したものである。
尚、図には明示していないが、本実施の形態では、アクチュエータ201として出力軸にウォームギアを備えた電動モータを適用する一方、歯車列240としてこのウォームギアに歯合するウォームホイールを備えたものを適用している。
図5は、図1に示したドアラッチ装置の制御系であるドアラッチ制御装置を示すブロック図である。図5に示すようにドアラッチ制御装置は、予め格納してあるデータやプログラムに従ってドアラッチ装置1を統括的に制御するためのドアラッチ制御部300を有している。ドアラッチ制御部300には、ラチェットスイッチ104、ラッチスイッチ105、ドア開閉スイッチ106、ギヤスイッチ250、計時手段301及び上述したアクチュエータ201が接続してある。
ラチェットスイッチ104は、図1に示すようにベースプレート10に設けてあり、ラチェット110の揺動に伴って移動するラチェット操作部112のスイッチレバー114に当接または離隔することによってOFF状態またはON状態になるものである。具体的に、ラチェットスイッチ104は、ラチェット110のラッチ係止部111がラッチ120の第1係合部123及び第2係合部124のいずれに当接していない状態においてスイッチレバー114が離隔してON状態になる。一方、ラチェットスイッチ104は、ラッチ係止部111がラッチ120の第1係合部123及び第2係合部124のいずれに当接した状態においてはスイッチレバー114が当接してOFF状態になる。
ラッチスイッチ105は、図1に示すようにベースプレート10に設けてあり、ラッチ軸102を中心としたラッチ120の回転位置変化を検出するロータリスイッチである。例えば、ラッチスイッチ105は、ラッチ120の第1係合部123及び第2係合部124がラチェット110のラッチ係止部111に当接していない状態(アンラッチ状態)でのラッチ120の回転位置、ラッチ120の第1係合部123がラチェット110のラッチ係止部111に当接した状態(ハーフラッチ状態(第1噛合状態))でのラッチ120の回転位置、ラッチ120の第2係合部124がラチェット110のラッチ係止部111に当接した状態(フルラッチ状態(第2噛合状態))でのラッチ120の回転位置を検出する。尚、ラッチスイッチ105は、ラチェット110とラッチ120との各状態(アンラッチ状態,ハーフラッチ状態,フルラッチ状態)を検出することからカーテシスイッチとしても作用する。
ドア開閉スイッチ106は、図1に示すようにベースプレート10に設けてあり、当該ベースプレート10に対して揺動可能に支承したドア開閉スイッチレバー107が当接または離隔することによってON状態またはOFF状態になるものである。ドア開閉スイッチレバー107は、ストライカ収容溝11の開口部を常に跨ぐ態様でラチェット軸101を中心として揺動可能に支承してある。また、ドア開閉スイッチレバー107は、ベースプレート10との間に設けたバネなどの付勢手段(図示せず)によって図1において反時計回り方向に付勢してある。そして、ドア開閉スイッチレバー107は、ストライカ収容溝11にストライカSが侵入することによって当該ストライカSに押されて図1において時計回りに揺動する。このドア開閉スイッチレバー107は、ストライカ収容溝11にストライカSが侵入する以前の状態においてドア開閉スイッチ106をON状態にする(図6及び図12参照)。一方、ドア開閉スイッチレバー107は、ストライカ収容溝11にストライカSが侵入した以後においてドア開閉スイッチ106をOFF状態にする(図7〜図11参照)。
ギヤスイッチ250は、図2に示すようにベースプレート10に設けてあり、カム駆動歯車220の回転に伴うカムピン221の位置変化を検出するロータリスイッチである。例えば、ギヤスイッチ250は、出力レバー210の解除レバー部213及びラッチピン214がそれぞれラチェット操作部112及びラッチ操作部125から離隔した状態となるカムピン221の位置を検出する。この場合、ギヤスイッチ250は、OFF状態からON状態への移行によってカムピン221が開ドア中立位置(図6参照)にあることを検出する一方、ON状態からOFF状態への移行によってカムピン221が閉ドア中立位置(図10参照)にあることを検出する。
計時手段301は、上記スイッチによる検出に応じて所定の時間を計るものである。例えば、計時手段301は、アクチュエータ201が正転駆動してトランクリッドDを開成状態にする場合、ラチェットスイッチ104がOFF状態からON状態に移行したときに所定時間T1を計る。また、計時手段301は、アクチュエータ201が正転駆動してトランクリッドDを閉成状態にする途中で、アクチュエータ201が逆転駆動してトランクリッドDを開成状態にする場合、ギヤスイッチ250がON状態からOFF状態に移行したときに所定時間T2を計る。
図6〜図12は、ドアラッチ装置1の動作を順に示した概念図である。以下、これらの図を参照しながらアクチュエータ201が駆動した場合の動作について説明し、併せてドアラッチ装置1の特徴部分について詳述する。
このドアラッチ装置1では、トランクリッドDが開成された状態にある場合、図6に示すように、ラッチ120が最も時計回りに回転した位置にあり、かつラッチ120の第1係合部123とラチェット110のラッチ係止部111とが対向する以前の状態にある(アンラッチ状態)。このとき、ラッチ120に設けた噛合溝121は、その開口端部がベースプレート10に設けたストライカ収容溝11の開口端部に開放した状態で配置され、かつストライカ収容溝11に対して傾斜した姿勢にある。また、出力レバー210は、レバー軸211がスライド溝12の右側端部に配置されているとともに、先端部に設けた解除レバー部213及びラッチピン214がそれぞれラチェット操作部112及びラッチ操作部125から離隔した開ドア中立位置に配置されている(開ドア完了状態)。
開ドア完了状態においては、ラチェットスイッチ104がON状態にあり、ラッチスイッチ105がラッチ120のアンラッチ状態を検出し、ドア開閉スイッチ106がON状態にあり、ギヤスイッチ250がON状態にある。
図6に示す開ドア完了状態からトランクリッドDを閉成操作すると、車両本体Bに設けたストライカSがベースプレート10のストライカ収容溝11に侵入し、さらにラッチ120の噛合溝121に侵入することになる。トランクリッドDの閉成操作によりストライカ収容溝11に沿ってストライカSが順次奥側端部に侵入すると、ストライカ収容溝11に対して噛合溝121が傾斜した状態にあるラッチ120がストライカSに押され、ラッチ軸102の軸心を中心として反時計回りに回転する。
この間、ラチェット110は、その側面がリターンスプリング103の弾性力によってラッチ120の周面に圧接しており、やがてラッチ120の第1係合部123に対してラッチ係止部111が落ち込んで当接した状態に保持される。
ラッチ120の第1係合部123に対してラチェット110のラッチ係止部111が当接した状態においては、図7に示すように、リターンスプリング103の弾性復元力に抗してラッチ120のラッチ軸102を中心とした時計回りの回転が規制され、ラッチ120のフック部122がストライカSに係合することにより、ストライカSのストライカ収容溝11からの逸脱を阻止する。この結果、ドアラッチ装置1及びストライカSは、車両本体Bに対してトランクリッドDを完全に閉成した状態とはしないが、開成方向への移動を規制したハーフラッチ状態(第1噛合状態)となる。
ハーフラッチ状態(第1噛合状態)においては、ラチェットスイッチ104がOFF状態にあり、ラッチスイッチ105がラッチ120のハーフラッチ状態を検出し、ドア開閉スイッチ106がOFF状態にあり、ギヤスイッチ250がON状態にある。
図7に示すハーフラッチ状態がラチェットスイッチ104、ラッチスイッチ105及びドア開閉スイッチ106により検出されると、ドアラッチ装置1のアクチュエータ201が正転駆動することにより、カム駆動歯車220が時計回りに回転し、カムピン221とカム溝215との作用により、出力レバー210がレバー軸211の軸心を中心として時計回りに揺動を開始する(実効動作)。この結果、出力レバー210のラッチピン214がラッチ120のラッチ操作部125を押圧することにより、ラッチ120がラッチ軸102を中心として反時計回りに回転する。この場合、ラチェット110のラッチ係止部111がラッチ120の第1係合部123に当接した状態ではあるが、当該ラッチ係止部111がラッチ120の反時計回りの回転を妨げることはない。
ハーフラッチ状態からラッチ120が反時計回りに回転すると、やがてラッチ120の第2係合部124に対してラッチ係止部111が落ち込んで当接した状態に保持される。ラッチ120の第2係合部124に対してラチェット110のラッチ係止部111が当接した状態においては、図8に示すように、リターンスプリング103の弾性復元力に抗してラッチ120のラッチ軸102を中心とした時計回りの回転が規制され、ラッチ120のフック部122がストライカSに係合することにより、ストライカSのストライカ収容溝11からの逸脱を阻止する。しかも、図7に示す状態から図8に示す状態に至るまでの間においては、ラッチ120がストライカSをストライカ収容溝11の奥側端部に引き込むように動作している。この結果、ドアラッチ装置1及びストライカSは、車両本体Bに対してトランクリッドDを完全に閉成させ、かつ開成方向への移動を規制したフルラッチ状態(第2噛合状態)となる。
ハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移行するとき、ラッチ120の第2係合部124に対してラッチ係止部111が落ち込んで当接する以前では、ラチェットスイッチ104が一旦ON状態になり、ラッチ120の第2係合部124に対してラッチ係止部111が落ち込んで当接した時点でラチェットスイッチ104がOFF状態になる。そして、フルラッチ状態(第2噛合状態)においては、ラチェットスイッチ104がOFF状態にあり、ラッチスイッチ105がラッチ120のフルラッチ状態を検出し、ドア開閉スイッチ106がOFF状態にあり、ギヤスイッチ250がON状態にある。
図8に示したフルラッチ状態となった後、上記ドアラッチ装置1では、図9に示すように、出力レバー210を同方向にさらに揺動させ、ラッチ120の第2係合部124に対してラチェット110のラッチ係止部111を確実に当接させるためのラッチ側オーバストローク状態に移行する。その後、図10に示すように、ラッチ側オーバストローク状態から、出力レバー210の先端部に設けた解除レバー部213及びラッチピン214がそれぞれラチェット操作部112及びラッチ操作部125から離隔した閉ドア中立位置に復帰した状態でアクチュエータ201の正転駆動が停止する(閉ドア完了状態)。
閉ドア完了状態においては、ラチェットスイッチ104がOFF状態にあり、ラッチスイッチ105がラッチ120のフルラッチ状態を検出し、ドア開閉スイッチ106がOFF状態にあり、ギヤスイッチ250がOFF状態にある。
一方、図10に示した閉ドア完了状態において、例えば運転者が車室内のトランクオープンスイッチをONすると(開ドア指令)、ドアラッチ装置1のアクチュエータ201が正転駆動することにより、カム駆動歯車220が時計回りに回転し、出力レバー210がレバー軸211の軸心を中心として反時計回りに揺動を開始する。出力レバー210が反時計回りに揺動すると、出力レバー210の解除レバー部213がラチェット110のラチェット操作部112を押圧することにより、ラチェット110がリターンスプリング103の弾性力に抗してラチェット軸101を中心に時計回りに揺動し、図11に示すように、ラッチ120の第2係合部124とラッチ係止部111との当接状態が解除されることになる。この結果、ラッチ120がリターンスプリング103の弾性復元力によってラッチ軸102を中心に時計回りに回転するため、ストライカSがベースプレート10のストライカ収容溝11から逸脱し、トランクリッドDを開成移動させることが可能となる。
このとき、ラチェットスイッチ104がON状態にあり、ラッチスイッチ105がラッチ120のアンラッチ状態を検出し、ドア開閉スイッチ106がON状態にあり、ギヤスイッチ250がOFF状態にある。
図11に示した状態となった後、上記ドアラッチ装置1では、図12に示すように、出力レバー210が同方向にさらに揺動し、ラッチ120の第2係合部124とラチェット110のラッチ係止部111との当接状態を確実に解除させるための解除側オーバストローク状態に移行する。その後、図6に示すように、解除側オーバストローク状態から、出力レバー210の先端部に設けた解除レバー部213及びラッチピン214がそれぞれラチェット操作部112及びラッチ操作部125から離隔した開ドア中立位置に復帰した状態でアクチュエータ201の正転駆動が停止する(開ドア完了状態)。
以降、上述した図6〜図12に示す動作が繰り返し行われ、車両本体Bに対するトランクリッドDの開閉を制御することが可能となる。また、図には明示しないが、トランクリッドDには、自動開閉装置が設けてある。自動開閉装置は、トランクリッドDの閉成時においてドアラッチ装置1がハーフラッチ状態(第1噛合状態)に至るまでトランクリッドDを閉成操作する一方、トランクリッドDの開成時においてドアラッチ装置1が開ドア完了状態に至ったときにトランクリッドDを開成操作するものである。
図13は、上述した図6〜図12に示す一連の動作において、カム駆動歯車220の回転に伴うラチェット110及びラッチ120の状態を示す概略図である。上述した図6〜図12に示す一連の動作を図13を参照して概略的に説明する。図13に示すように、開ドア完了(工程A:図6参照)においてラチェットスイッチ104及びラッチスイッチ105によってハーフラッチ状態が検出されると、アクチュエータ201が正転駆動してカム駆動歯車220を時計回りに回転させる。すると、ラッチ操作部125にラッチピン214が係合する(工程B:図7参照〜工程E)。工程B〜工程Eの間では、ラッチ120がラッチ軸102を中心に反時計回りに回転してフルラッチ(工程C:図8参照)からラッチ側オーバーストローク(工程D:図9参照)を経る。フルラッチ状態は、ラチェットスイッチ104及びラッチスイッチ105によって検出される。そして、ギヤスイッチ250がON状態からOFF状態に移行することによって閉ドア完了(工程F:図10参照)が検出され、アクチュエータ201の正転駆動を停止する。すなわち、開ドア完了(工程A)から閉ドア完了(工程F)に至る動作は、ストライカSとラッチ120とがハーフラッチ状態(第1噛合状態)となった場合に、アクチュエータ201の正転駆動によってストライカSとラッチ120とをフルラッチ状態(第2噛合状態)に移行させることによりトランクリッドDを閉成状態とする噛合動作である。
一方、図13に示すように、閉ドア完了(工程F:図10参照)において開ドア指令があるとアクチュエータ201が正転駆動してカム駆動歯車220を時計回りに回転させる。すると、ラチェット操作部112に解除レバー部213が係合する(工程G:図11参照〜工程K)。工程G〜工程Kの間では、ラチェット110がラチェット軸101を中心に時計回りに揺動して、ラッチ120の係合部123,124とラッチ係止部111とが離隔して当接状態が解除されてアンラッチ状態に至る(工程H〜工程J)。さらに、工程H〜工程Jの間では、解除側オーバーストローク(工程I:図12参照)を経る。アンラッチ状態は、ラチェットスイッチ104及びラッチスイッチ105によって検出される。そして、ギヤスイッチ250がOFF状態からON状態に移行し、かつドア開閉スイッチ106がON状態になることによって開ドア完了(工程A:図6参照)が検出され、アクチュエータ201の正転駆動を停止する。すなわち、閉ドア完了(工程F)から開ドア完了(工程A)に至る動作は、アクチュエータ201の正転駆動によってストライカSとラッチ120との噛合状態を解除してトランクリッドDを開成可能にする解除動作である。
ところで、上述したドアラッチ装置1の一連の動作に係り、開ドア完了(工程A)から閉ドア完了(工程F)に至る噛合動作中で、例えば運転者が車室内のトランクオープンスイッチをONした場合(開ドア指令)、本ドアラッチ制御装置は、以下のごとく解除動作を行う。図14は、噛合動作中からの解除動作を示すフローチャートである。
図14に示すように、噛合動作中に(ステップS11)、開ドア指令があった場合(ステップS12)、当該開ドア指令がフルラッチ状態に至る以前であれば(ステップS13:No)、アクチュエータ201を逆転駆動する(ステップS14)。そして、ギヤスイッチ250がON状態からOFF状態に移行し、かつラチェットスイッチ104及びラッチスイッチ105の検出によってアンラッチ状態に至っていれば(ステップS15:Yes)、アクチュエータ201を正転駆動する(ステップS16)。そして、ギヤスイッチ250がOFF状態からON状態に移行した時点で(ステップS17:Yes)、アクチュエータ201の駆動を停止する(ステップS18)。
一方、開ドア指令がフルラッチ状態に至った後であれば(ステップS13:Yes)、アクチュエータ201を正転駆動のままとする(ステップS19)。そして、ギヤスイッチ250がON状態からOFF状態に移行し、かつラチェットスイッチ104及びラッチスイッチ105の検出によってアンラッチ状態に至っていれば(ステップS20:Yes)、ギヤスイッチ250がOFF状態からON状態に移行した時点で(ステップS17:Yes)、アクチュエータ201の駆動を停止する(ステップS18)。
このように、ドアラッチ制御装置は、アクチュエータ201の正転駆動によって噛合動作中のとき、フルラッチ状態(第2噛合状態)に至る以前に開ドア指令があった場合に、アクチュエータ201を逆転駆動してストライカSとラッチ120との噛合状態を解除する。一方、アクチュエータ201の正転駆動によって噛合動作中のとき、フルラッチ状態(第2噛合状態)に至った後に開ドア指令があった場合には、アクチュエータ201をそのまま正転駆動してストライカSとラッチ120との噛合状態を解除する。すなわち、図13に示すように開ドア完了(工程A)から閉ドア完了(工程F)に至る噛合動作中に開ドア指令があった場合に、フルラッチ状態(工程C)を基準点として、より近いアンラッチ状態に至る態様でアクチュエータ201を正逆駆動する。この結果、噛合動作からの開ドア指令があった場合に、余分な時間をかけることなくより早く噛合状態の解除を行ってアンラッチ状態にすることが可能になる。
なお、上述した実施の形態では、フルラッチ状態(第2噛合状態)を基準点としているが、この基準点をフルラッチ状態以外の所定の噛合状態として設定してもよい。この場合、例えばラッチスイッチ105またはギヤスイッチ250によって所定の噛合状態を検出するように設定する。
ところで、図10に示したフルラッチ状態において、図示せぬキーシリンダや緊急レバーを操作した場合には、図15に示すように、それぞれのワイヤW1,W2を介してオープンレバー130が反時計回りに揺動して、ラチェット操作部132がラチェット110におけるラチェット操作部112の屈曲縁部113に当接することで、ラチェット110がリターンスプリング103の弾性力に抗してラチェット軸101を中心に時計回りに揺動することになる。この結果、ラッチ120の各係合部123,124とラッチ係止部111との当接状態が解除され、トランクリッドDを開成可能にできる。
しかし、この場合には、アクチュエータ201を駆動せずにトランクリッドDを開成させるため、カム駆動歯車220の回転がなくカムピン221がフルラッチ状態の位置のままとなる。このため、図示せぬキーシリンダや緊急レバーを操作してトランクリッドDを開成させた後には、トランクリッドDを自動的に閉成することができなくなる。
そこで、本ドアラッチ制御装置では、オープンレバー130を操作してトランクリッドDを開成した場合、以下の動作を行う。図16は、オープンレバーによって開成操作した場合の動作を示すフローチャートである。
図16に示すように、閉ドア完了状態において、ドア開閉スイッチ106がON状態になった場合(ステップS21:Yes)、ドアラッチ装置1が開ドア完了状態(すなわち、ラチェットスイッチ104がON状態、ラッチスイッチ105がラッチ120のアンラッチ状態を検出、ドア開閉スイッチ106がON状態にあり、ギヤスイッチ250がON状態)でなければ(ステップS22:No)、アクチュエータ201を正転駆動する(ステップS23)。そして、ギヤスイッチ250がON状態からOFF状態に移行した時点で(ステップS24:Yes)、アクチュエータ201の駆動を停止する(ステップS25)。
このように、ドアラッチ制御装置は、ストライカSとラッチ120との噛合状態の解除がアクチュエータ201の駆動をせずに行われた場合に、アクチュエータ201を解除状態の駆動位置(開ドア中立位置)に移行する。すなわち、図13に示すように閉ドア完了(工程F)において、アクチュエータ201の駆動をせずにストライカSとラッチ120との噛合状態が解除されてトランクリッドDが開成した場合(ドア開閉スイッチ106がON状態となった場合)、アクチュエータ201を正転駆動することによって、工程G〜工程Kを経て、カム駆動歯車220に設けたカムピン221の位置を開ドア中立位置にしてドアラッチ装置1を開ドア完了状態(工程A)にする。この結果、その後に、トランクリッドDをアクチュエータ201の駆動によって自動的に閉成することが可能になる。
なお、上述した実施の形態では、閉ドア完了状態においてオープンレバー130が操作されてトランクリッドDが開成された場合を説明したがこの限りではない。すなわち、閉ドア完了状態以外においてオープンレバー130が操作された場合であっても、ドア開閉スイッチ106がON状態になって、開ドア完了状態でなければ、アクチュエータ201を正転駆動することによって、ドアラッチ装置1を開ドア完了状態にする。
ところで、アクチュエータ201の正転駆動によってストライカSとラッチ120との噛合状態を解除してトランクリッドDを開成可能にしようとしたとき、例えば積雪、荷物、手などによってトランクリッドDが開成しないことがある。この場合には、ハーフラッチ状態が検出されると、トランクリッドDを自動的に閉成状態にしてしまうため、トランクリッドDを開成しようとしたにもかかわらず閉成状態になってしまう。
そこで、本ドアラッチ制御装置では、アクチュエータ201の正転駆動によってストライカSとラッチ120との噛合状態を解除してトランクリッドDを開成可能にしようとしたとき、何らかの要因によってトランクリッドDが開成しない場合、以下の動作を行う。図17は、噛合状態を解除してもトランクリッドが開成しない場合の動作を示すフローチャートである。
図17に示すように、解除動作において(ステップS31)、ラチェットスイッチ104がON状態になった場合(ステップS32:Yes)、所定時間T1の計時を開始する(ステップS33)。その後、ドア開閉スイッチ106がON状態にならず(ステップS34:No)、所定時間T1が経過した時点で(ステップS35:Yes)、アクチュエータ201の駆動を停止する(ステップS36)。
なお、アクチュエータ201の駆動を停止した後、手などでトランクリッドDを開成させた場合には、ドア開閉スイッチ106がON状態となるので(ステップS37:Yes)、所定時間経過後に(ステップS38:Yes)、アクチュエータ201を正転駆動させ(ステップS39)、開ドア完了状態にする(ステップS40:Yes)。その後、自動開閉装置(図示せず)が引き継いでトランクリッドDを開成させる。また、ドア開閉スイッチ106がON状態となって自動開閉装置を駆動したときには、所定時間T1の計時をキャンセルする。
このように、ドアラッチ制御装置は、解除動作を行って噛合状態を解除したにもかかわらず所定時間T1の経過後にトランクリッドDが開成状態に至らなかったときにアクチュエータ201の駆動を停止する。すなわち、図13に示すように解除動作(工程F〜工程A)において、ラッチ120の係合部123,124とラッチ係止部111とが離隔して(工程H〜工程J)、ラチェットスイッチ104がON状態になった場合に、所定時間T1を計り始め、所定時間T1の経過後にドア開閉スイッチ106がON状態にならず、トランクリッドDが開成状態に至らなかったときにアクチュエータ201の駆動を停止する。この結果、アクチュエータ201の駆動を停止しているので、ハーフラッチ状態が検出されてもトランクリッドDを自動的に閉成状態にしてしまうことがないため、トランクリッドDを開成しようとしたにもかかわらず閉成状態になる事態を防ぐことが可能になる。
ところで、上記解除動作は、アクチュエータ201の正転駆動による解除動作であるが、図14に示すように、アクチュエータ201の正転駆動によって噛合動作中のとき、フルラッチ状態(第2噛合状態)に至る以前に開ドア指令があった場合に、アクチュエータ201を逆転駆動して解除動作もある。本ドアラッチ制御装置では、アクチュエータ201の逆転駆動によって解除動作を行うとき、何らかの要因によってトランクリッドDが開成しない場合、以下の動作を行う。図18は、アクチュエータ201の逆転駆動によって噛合状態を解除してもトランクリッドが開成しない場合の動作を示すフローチャートである。
図18に示すように、アクチュエータ201の逆転駆動による解除動作において(ステップS41(図14中のステップS11〜ステップS14参照))、ギヤスイッチ250がON状態からOFF状態に移行した場合(ステップS42:Yes)、所定時間T2の計時を開始する(ステップS43)。その後、ドア開閉スイッチ106がON状態にならず(ステップS44:No)、所定時間T2が経過した時点で(ステップS45:Yes)、アクチュエータ201の駆動を停止する(ステップS46)。
なお、アクチュエータ201の駆動を停止した後、手などでトランクリッドDを開成させた場合には、ドア開閉スイッチ106がON状態となるので(ステップS47:Yes)、所定時間経過後に(ステップS48:Yes)、アクチュエータ201を正転駆動させ(ステップS49)、開ドア完了状態にする(ステップS50:Yes)。その後、自動開閉装置(図示せず)が引き継いでトランクリッドDを開成させる。また、ドア開閉スイッチ106がON状態となって自動開閉装置を駆動したときには、所定時間T2の計時をキャンセルする。
このように、ドアラッチ制御装置は、噛合動作中に開ドア指令があってアクチュエータ201を逆転駆動して噛合状態を解除する場合、当該解除動作に移行して噛合状態を解除したにもかかわらず所定時間T2の経過後にトランクリッドDが開成状態に至らなかったときにアクチュエータ201の駆動を停止する。すなわち、図13に示すように開ドア完了(工程A)から閉ドア完了(工程F)に至る噛合動作中に開ドア指令があって、フルラッチ状態(工程C)を基準点としてアクチュエータ201を逆転駆動する。そして、ギヤスイッチ250がON状態からOFF状態に移行したときに(工程F)、所定時間T2を計り始め、所定時間T2の経過後にドア開閉スイッチ106がON状態にならず、トランクリッドDが開成状態に至らなかったときにアクチュエータ201の駆動を停止する。この結果、アクチュエータ201の駆動を停止しているので、ハーフラッチ状態が検出されてもトランクリッドDを自動的に閉成状態にしてしまうことがないため、トランクリッドDを開成しようとしたにもかかわらず閉成状態になる事態を防ぐことが可能になる。
ところで、図6に示したアンラッチ状態から、自動開閉装置(図示せず)によらず手などでトランクリッドDを閉成状態にすることも可能である。
しかし、この場合には、ハーフラッチ状態を過ぎてフルラッチ状態に至り、アクチュエータ201を駆動せずにトランクリッドDを閉成させるため、カム駆動歯車220の回転がなくカムピン221がアンラッチ状態の位置のままとなる。このため、その後にアクチュエータ201を駆動してトランクリッドDを自動的に開成するときには、アンラッチ状態のフルラッチ状態を経てからアンラッチ状態にするために開成状態に至るまでに時間を要することになる。
そこで、本ドアラッチ制御装置では、アクチュエータ201を駆動せずにトランクリッドDを閉成した場合、以下の動作を行う。図19は、アクチュエータの駆動なしに閉成操作した場合の動作を示すフローチャートである。
図19に示すように、開ドア完了状態において、ギヤスイッチ250がON状態のままで他のスイッチが閉ドア状態になった場合(ステップS51:Yes)、すなわち、ラチェットスイッチ104がOFF状態、ラッチスイッチ105がラッチ120のフルラッチ状態を検出、ドア開閉スイッチ106がOFF状態にあり、ギヤスイッチ250がON状態のままとなった場合、アクチュエータ201を正転駆動する(ステップS52)。そして、ギヤスイッチ250がON状態からOFF状態に移行した時点で(ステップS53:Yes)、アクチュエータ201の駆動を停止する(ステップS54)。
このように、上述したドアラッチ装置1は、ストライカSとラッチ120との噛合状態がアクチュエータ201の駆動をせずに行われた場合に、アクチュエータ201を噛合状態の駆動位置(閉ドア中立位置)に移行する。すなわち、図13に示すように開ドア完了(工程A)において、アクチュエータ201の駆動をせずにストライカSとラッチ120とが噛合状態になってトランクリッドDが閉成した場合(ラチェットスイッチ104がOFF状態、ラッチスイッチ105がラッチ120のフルラッチ状態を検出、ドア開閉スイッチ106がOFF状態、ギヤスイッチ250がON状態となった場合)、アクチュエータ201を正転駆動することによって、工程B〜工程Eを経て、カム駆動歯車220に設けたカムピン221の位置を閉ドア中立位置にしてドアラッチ装置1を閉ドア完了状態(工程F)にする。この結果、その後に、トランクリッドDをアクチュエータ201の駆動によって自動的に開成する場合に、時間を要することになく開成することが可能になる。
なお、上述した実施の形態では、開ドア完了状態においてアクチュエータ201の駆動をせずにトランクリッドDが閉成された場合を説明したがこの限りではない。すなわち、開ドア完了状態以外においてアクチュエータ201の駆動によらずにトランクリッドDが閉成された場合であっても、ラチェットスイッチ104がOFF状態、ラッチスイッチ105がラッチ120のフルラッチ状態を検出、ドア開閉スイッチ106がOFF状態、ギヤスイッチ250がON状態となれば、アクチュエータ201を正転駆動することによって、ドアラッチ装置1を閉ドア完了状態にする。
ところで、上述したドアラッチ装置1において、例えば車両本体BとトランクリッドDとの間に異物が挟み込まれた場合、ラッチ120をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移行させることが困難となりラッチ120が不動状態となる。この場合、本実施の形態のドアラッチ装置1では、ラッチ120が不動状態となった後にカム駆動歯車220が時計回りに回転すると、ラッチ120の中間部が図中において左方に押圧されることになり、やがて出力レバー210のレバー軸211がキャンセルスプリング232の弾性力及びレバースプリング212に抗して支持突部233を乗り越え、図20に示すように、ラッチピン214の軸心を中心としてベースプレート10のスライド溝12を左側端部に向けてスライド移動するようになる(退避動作)。この結果、ラッチ120が不動状態となった場合にも、アクチュエータ201からの動力をラッチ120に伝達する歯車列240、カム駆動歯車220及び出力レバー210のいずれもが動作するため、これらに過負荷が加わることがなく、損傷を来す虞れもまったくない。
尚、スライド溝12をスライド移動したレバー軸211は、その後、カム駆動歯車220が時計回りに回転した場合にカムピン221とカム溝215との協働により、再びスライド溝12の右側端部に復帰した状態に保持される。従って、この状態からトランクオープンスイッチをONすれば、図11及び図12に示すように、ラッチ120の第2係合部124とラッチ係止部111との当接状態が解除され、トランクリッドDを開成移動させることが可能となるため、車両本体BとトランクリッドDとの間に挟み込んだ異物を除去することが可能となる。
上述したレバー軸211のスライド移動による退避動作は、ハーフラッチ状態からフルラッチ状態への移行が規制された場合のみならず、フルラッチ状態からラッチ側オーバストローク状態への移行が規制された場合にも、同様に起こるように設定してある。すなわち、フルラッチ状態を経た後、新たな第2噛合状態となるラッチ側オーバストローク状態への移行が規制された場合にもアクチュエータ201の駆動により出力レバー210のレバー軸211をベースプレート10のスライド溝12に沿ってスライド移動させるように設定してある。従って、車両本体BとトランクリッドDとの間に挟み込まれた異物が比較的柔軟なものや薄いものであり、ハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ移行したものの、フルラッチ状態からラッチ側オーバストローク状態への移行が規制された場合にも、歯車列240、カム駆動歯車220及び出力レバー210に損傷を来す虞れがない。
ところで、アクチュエータ201が故障して自動で解除動作ができなくなってしまった場合には、手動で噛合状態を解除することが可能である。すなわち、上述のごとく図15に示すように、図示せぬキーシリンダや緊急レバーを操作することによって、それぞれのワイヤW1,W2を介してオープンレバー130が反時計回りに揺動して、ラチェット操作部132がラチェット110におけるラチェット操作部112の屈曲縁部113に当接することで、ラチェット110がリターンスプリング103の弾性力に抗してラチェット軸101を中心に時計回りに揺動することになる。この結果、ラッチ120の各係合部123,124とラッチ係止部111との当接状態が解除され、トランクリッドDを開成させることが可能となる。
このとき、アクチュエータ201の駆動位置によっては、出力レバー210のラッチピン214がラッチ120のラッチ操作部125に当接して、ストライカSとラッチ120との噛合を解除できない場合がある。この場合には、図21に示すように、図示せぬキーシリンダや緊急レバーを図15の状態からさらなるストロークで操作することによって、それぞれのワイヤW1,W2を介してオープンレバー130がさらに反時計回りに揺動して、キャンセルレバー操作部133がキャンセルレバー230のキャンセル作用レバー234に当接する。すると、キャンセルレバー230がキャンセルスプリング232の弾性力に抗してキャンセル軸231を中心に時計回りに揺動することになる。このため、支持突部233の規制から、出力レバー210のレバー軸211が解除される。そして、アンラッチ状態に回動しようとしているラッチ120のラッチ操作部125によって出力レバー210のラッチピン214が押されて、出力レバー210のレバー軸211がレバースプリング212に抗してベースプレート10のスライド溝12を左側端部に向けてスライド移動するようになる。この結果、ラッチ120の各係合部123,124とラッチ係止部111との当接状態が解除され、トランクリッドDを開成させることが可能となる。
尚、上述した実施の形態では、車両本体BとトランクリッドDとの間に設けられるドアラッチ装置1を例示しているが、その他のドアを閉成状態に保持するドアラッチ装置にも同様に適用することが可能である。特に、実施の形態のようにドアハンドルの無いドアに好適である。
また、上述した実施の形態では、カム駆動歯車220を同一方向に回転させることによってハーフラッチ状態からフルラッチ状態への移行と、フルラッチ状態の解除とを行うようにしたドアラッチ装置1を例示しているが、ハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ移行させるものであれば、必ずしもフルラッチ状態を解除するものでなくても構わない。
さらに、上述した実施の形態では、車両本体BにストライカSを設ける一方、ドアDにドアラッチ装置1を設けるようにしているが、逆の態様で設けるようにしても構わない。またさらに、車両本体Bに固定配置したストライカSに噛み合うラッチ120をアクチュエータ201の駆動によって動作させることにより、これらストライカSとラッチ120とを第1噛合状態から第2噛合状態に移行させるようにしているが、車両本体に設けたラッチと噛み合うストライカをアクチュエータの駆動によって動作させることにより、これらストライカとラッチとを第1噛合状態から第2噛合状態に移行させるようにドアラッチ装置を構成しても構わない。
またさらに、上述した実施の形態では、第1噛合状態であるハーフラッチ状態となった時点でアクチュエータ201を駆動するようにしているが、アクチュエータ201の駆動は必ずしも第1噛合状態となった時点である必要はない。例えばストライカによってラッチが回転してから第1噛合状態に至るまでの間の任意の時点、あるいはハーフラッチ状態となってから所定の時間経過後に、出力レバーを実効動作させるべくアクチュエータを駆動するようにしても構わない。つまり、第1噛合状態となった場合にアクチュエータが駆動するのであれば、必ずしもアクチュエータの駆動時点と第1噛合状態となった時点とを一致させる必要はない。