JP6442271B2 - 化合物、熱硬化性樹脂組成物、及び熱硬化性シート - Google Patents
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Description
エポキシ樹脂系の熱硬化を低温で行う技術として、カチオン重合を用いることは広く知られている。
しかしながら、熱硬化性樹脂組成物にこれらスルホニウム塩を含有させても、低温硬化性と、保存安定性との両方を十分満足できるものは得られていなかった。
したがって、低温かつ短時間で硬化が可能で、かつ保存安定性に優れた熱硬化性樹脂組成物、及び熱硬化性シートの提供が求められているのが現状である。
<1> カチオン硬化成分と、下記一般式(1)で表されるスルホニウム塩とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
<2> 前記Y−が、B(C6F5)4 −である前記<1>に記載の熱硬化性樹脂組成物である。
<3> 前記一般式(1)で表されるスルホニウム塩が、下記一般式(2)で表されるピナコリル基を有するスルホニウム塩である前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物である。
<4> 前記R2が、ベンジル基、o−メチルベンジル基、α−ナフチルメチル基、及びシンナミル基のいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする熱硬化性シートである。
<6> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
<7> 前記Y−が、B(C6F5)4 −である前記<6>に記載の化合物である。
<8> 前記一般式(1)で表されるスルホニウム塩が、下記一般式(2)で表されるピナコリル基を有するスルホニウム塩である前記<6>から<7>のいずれかに記載の化合物である。
<9> 前記R2が、ベンジル基、o−メチルベンジル基、α−ナフチルメチル基、及びシンナミル基のいずれかである前記<6>から<8>のいずれかに記載の化合物である。
<10> 前記<6>から<9>のいずれかに記載の化合物からなることを特徴とするカチオン系硬化剤である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、カチオン硬化成分と、特定の構造のスルホニウム塩とを少なくとも含有し、好ましくは膜形成樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
上記要件を満たす、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、低温短時間硬化性及び保存安定性の両方に優れたものとなる。
そこで、本発明者らは、研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるスルホニウム塩を硬化剤として用いたところ、該硬化剤を含有した熱硬化樹脂組成物は、低温短時間硬化性、及び保存安定性のいずれにも優れたものとなることを見出した。
前記カチオン硬化成分としては、カチオン系硬化剤としての特定のスルホニウム塩の作用により硬化する成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、及び環状エーテル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明では、カチオン系硬化剤として、下記一般式(1)で表されるスルホニウム塩を含有する。
前記R2としては、ベンジル基、o−メチルベンジル基、α−ナフチルメチル基、及びシンナミル基のいずれかであると好ましい。
前記R4としては、環状構造を有していても、非環状構造であってもよく、具体的には、例えば、アルキル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
特に本発明では、前記一般式(1)で表されるスルホニウム塩において、前記R4が、tert−ブチル基であり、下記一般式(2)で表されるピナコリル基を有するスルホニウム塩であるとより好ましい。
この中で、より低温硬化性が得られ、フッ素イオンなどの不純物イオンの発生を抑制できる点で、B(C6F5)4 −が好ましい。
前記膜形成樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製膜性、加工性の点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
使用される2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
また、2官能フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類などが挙げられる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チキソトロピー剤、充填剤、レベリング剤、酸化防止剤、着色剤、導電性付与剤、接着付与剤などが挙げられる。
本発明の前記熱硬化性シートは、本発明の前記熱硬化性樹脂組成物を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記熱硬化性シートは、保管性、使用時のハンドリング性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等に必要に応じてシリコーン等で剥離処理した基材フィルムに、前記熱硬化性樹脂組成物からなる熱硬化性接着層が5μm〜50μmの平均厚みで形成されていることが好ましい。
金属を接着する接着シートとして使用される場合、組成中にシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などが挙げられる。
導電性を付与する接着シートとして使用される場合、組成中に導電性粒子を含有することが好ましい。導電粒子の種類は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば金、銀、銅、スズ、ニッケル等の金属粒子、金属酸化物あるいはシリカ等の無機粒子に金属メッキあるいは蒸着等により金属を被覆した粒子、樹脂粒子に金属メッキあるいは蒸着等により金属を被覆した粒子などが挙げられる。粒子の形状も特に制限はなく、球状、針状、不定形、細かい突起を有する形状等が挙げられる。
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。前記化合物は、低温短時間でカチオン硬化する熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を向上させるカチオン系硬化剤として有用である。
前記R2としては、ベンジル基、o−メチルベンジル基、α−ナフチルメチル基、及びシンナミル基のいずれかであると好ましい。
前記R4としては、環状構造を有していても、非環状構造であってもよく、具体的には、例えば、アルキル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
特に本発明では、前記一般式(1)で表されるスルホニウム塩において、前記R4が、tert−ブチル基であり、下記一般式(2)で表されるピナコリル基を有するスルホニウム塩であるとより好ましい。
この中で、より低温硬化性が得られ、フッ素イオンなどの不純物イオンの発生を抑制できる点で、B(C6F5)4 −が好ましい。
<3,3−ジメチル−1−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ブタン−2−オンの合成>
4−メチルチオフェノール6g(42.8mmol)とアセトニトリル20mL、炭酸カリウム7.09g(51.4mmol)を入れた100mL三口フラスコを70℃で30分間、攪拌し、そこへ1−クロロピナコリン6.91gを滴下した。70℃で6時間、攪拌し、塩を除去後、水洗、抽出を行い、溶媒を留去することで目的生成物を9.12g(収率89%)得た。
<スルホニウム塩(1)の合成>
−スルホニウム−p−トルエンスルホン酸塩の合成−
上記で合成した3,3−ジメチル−1−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ブタン−2−オン2.00g(8.39mmol)に対し、p−トルエンスルホン酸銀2.34g(8.39mmol)をアセトニトリル10gに溶解し、そこにベンジルブロミド1.72g(10.07mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。
析出した銀塩をろ過で取り除き、溶剤留去することで固体が得られた。その固体をアセトンで洗浄することで、目的とするスルホニウム塩の前駆体である、下記構造式(p−1)で表されるp−トルエンスルホン酸塩を2.56g(収率61%)得た。
上記で合成したp−トルエンスルホン酸塩1g(1.99mmol)に水20gを加え、室温でテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウム塩の3%水溶液47g(1.99mmol)を滴下し、2時間塩交換反応を行なった。反応後、析出した固体をろ過することで、下記構造式(1)で表されるスルホニウム塩を1.60g(収率80%)得た。
M+=329(スルホニウム残基)
M+=679(ボレート残基)
1.2(9H、(e))、3.2(3H、(d))、4.7〜4.9(2H、(c))、5.2(2H、(b))、7.1〜7.7(9H、(a))
−プロトン帰属−
659(C−S)、754、971、1079、1265(Ar−F)、1367、1454、1511、1589、1641、1716(C=O)、2912(C−H)、2956(C−H)
<スルホニウム塩(2)の合成>
上記で合成した3,3−ジメチル−1−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ブタン−2−オン2.00g(8.39mmol)に対し、p−トルエンスルホン酸銀2.34g(8.39mmol)をアセトニトリル10gに溶解し、そこにα−クロロキシレン1.18g(8.39mmol)とヨウ化ナトリウム1.18g(7.9mmol)をアセトン中で3時間、攪拌し、析出物をろ過で取り除いた液体を加え、室温で24時間、攪拌した。
析出した銀塩をろ過で取り除き、溶剤留去することで液体が得られた。その液体に酢酸エチル50mL、水100mLを加え、有機層を除去した。水層にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウム塩の3%水溶液180g(7.9mmol)を滴下し、室温で2時間、塩交換反応を行った。
反応後酢酸エチル50mLを加え、有機層を分取し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られた有機層から減圧下で溶媒を除き、乾燥することで、目的とする、下記構造式(2)で表されるスルホニウム塩を1.1g(収率14%)得た。
M+=343(スルホニウム残基)
M+=679(ボレート残基)
1.2(9H、(f))、2.2(3H、(e))、3.3(3H、(d))、4.8(2H、(c))、5.2(2H、(b))、7.1〜7.8(8H、(a))
−プロトン帰属−
659(C−S)、755、970、1079、1265(Ar−F)、1369、1452、1511、1587、1643、1710(C=O)、2923(C−H)、2960(C−H)
<スルホニウム塩(3)の合成>
上記で合成した3,3−ジメチル−1−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ブタン−2−オン2.00g(8.39mmol)に対し、p−トルエンスルホン酸銀2.58g(9.2mmol)をアセトニトリル10gに溶解し、そこに1−(ブロモ−メチル)ナフタレン2.41g(10.9mmol)を加え、室温で24時間、攪拌した。
析出した銀塩をろ過で取り除き、溶剤留去することで液体が得られた。得られたp−トルエンスルホン酸塩に水500mLを加え、水層を分取し、そこへテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウム塩の3%水溶液300g(8.39mmol)を滴下し、析出物をろ過することで、目的とする、下記構造式(3)で表されるスルホニウム塩を2.31g(収率30%)得た。
M+=379(スルホニウム残基)
M+=679(ボレート残基)
1.2(9H、(e))、3.3(3H、(d))、5.1(2H、(c))、5.1〜5.5(2H、(b))、7.0〜8.1(11H、(a))
−プロトン帰属−
659(C−S)、755、973、1079、1263(Ar−F)、1365、1457、1509、1575、1639、1710(C=O)、2908(C−H)、2954(C−H)
<スルホニウム塩(4)の合成>
実施例1において、ベンジルブロミド1.72g(10.07mmol)に変えて、1−(3−ブロモ−1−プロペン−1−イル)−ベンゼン1.65g(8.39mmol)を用いた他は、実施例1と同様にして、目的とする、下記構造式(1)で表されるスルホニウム塩を1.82g(収率82%)得た。
M+=355(スルホニウム残基)
M+=679(ボレート残基)
1.2(9H、(e))、3.27(3H、(d))、4.4(2H、(f))、5.2(2H、(c))、6.15(1H、(b))、6.6(1H、(b))、7.1〜7.8(9H、(a))
−プロトン帰属−
659(C−S)、754、973、1079、1267(Ar−F)、1367、1457、1511、1589、1641、1716(C=O)、2908(C−H)、2952(C−H)
比較化合物1として下記構造式(5)で表されるスルホニウム塩を合成した。該スルホニウム塩のカチオン部は、特開2014−131997号公報を参考にして合成した。
比較化合物2として下記構造式(6)で表されるスルホニウム塩を合成した。該スルホニウム塩のカチオン部は、特開2014−131997号公報を参考にして合成した。
比較化合物3として下記構造式(7)で表されるスルホニウム塩を合成した。該スルホニウム塩のカチオン部は、実施例1の合成において、3、3-ジメチル-1-[4-(メチルスルファニル)フェノキシ]ブタン-2−オンに換えて4−メトキシチオアニソールに変更し、合成した。
比較化合物4として下記構造式(8)で表されるスルホニウム塩を合成した。該スルホニウム塩のカチオン部は、特開2012−153642号公報を参考にして合成した。
比較化合物5として下記構造式(9)で表されるスルホニウム塩を合成した。該スルホニウム塩のカチオン部は、特開2007−8919号公報を参考にして合成した。
下記表1に示す配合にしたがって熱硬化性樹脂組成物を作製した。
作製した熱硬化性樹脂組成物をフィルム上に塗布し、60℃に設定された熱風循環オーブン中で5分間乾燥することにより、平均厚み10μmの熱硬化性シートを作製した。
表1における数値は、溶剤分を除いた配合量であり、単位は、質量部である。
なお、表1における各材料は、以下のとおりである。
YP−70:新日鐵住金化学株式会社製、ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂
YL980:三菱化学株式会社製、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂
なお、配合する際、YP−70、及び各種スルホニウム塩は、メチルエチルケトン(MEK)の45質量%固形分溶液を用いた。
作製した実施例5〜8及び比較例1〜5の熱硬化性シート(平均厚み10μm)の低温短時間硬化性及び保存安定性を、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差走査熱量測定装置DSC6200を用いて評価した。
昇温速度 10℃/min
N2ガス 100mL/min
サンプル重量 約10mg
塗布後のDSCピーク温度を測定することにより、低温硬化性を評価した。また、塗布後と、室温で一週間保管後におけるDSC測定から発熱量を求め、かかる発熱量変化から減少率を算出することで、保存安定性を評価した。
示差走査熱量測定による発熱挙動はエポキシ樹脂の硬化反応挙動を反映していることが当業界ではよく知られている。よって、ヒーター板による加熱前後の発熱量の比率は熱硬化性シート中のエポキシ樹脂の反応率を反映していると言える。
実用的な観点から、低温硬化性の評価基準として、DSCのピーク温度が、90℃未満を◎、90℃以上120℃未満を○、120℃以上130℃未満を△、130℃以上を×とした。
また、保存安定性の評価基準として、発熱量の減少率が、7%未満を◎、7%以上13%未満を○、13%以上20%未満を△、20%以上を×とした。
評価結果を表2に示す。
本発明の一般式(1)で表される特定の構造を有するスルホニウム塩は、熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性シートの低温硬化性、及び保存安定性の両立を図るうえで、有効な硬化剤として使用し得る。
尚、実施例5から8において、低温硬化性の結果は、実施例8が最もよく、次に、実施例7、実施例6、実施例5の順番であった。スルホニウム基上の電子密度が高いと、低温硬化性が良好な結果を示すようである。一方、保存安定性の結果は、実施例5が最もよく、次に実施例6、実施例7、実施例8の順番であった。これらの結果から、実施例のスルホニウム塩の中でも、低温硬化性、及び保存安定性のバランスがとれている、実施例2及び3のスルホニウム塩がより好ましく、実施例3のスルホニウム塩が特に好ましい。
Claims (8)
- カチオン硬化成分と、下記一般式(2)で表されるスルホニウム塩とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- 前記Y−が、B(C6F5)4 −である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 前記R 2 が、ベンジル基、o−メチルベンジル基、α−ナフチルメチル基、及びシンナミル基のいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1から3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする熱硬化性シート。
- 下記一般式(2)で表されることを特徴とする化合物。
- 前記Y − が、B(C 6 F 5 ) 4 − である請求項5に記載の化合物。
- 前記R 2 が、ベンジル基、o−メチルベンジル基、α−ナフチルメチル基、及びシンナミル基のいずれかである請求項5から6のいずれかに記載の化合物。
- 請求項5から7のいずれかに記載の化合物からなることを特徴とするカチオン系硬化剤。
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