JP6440552B2 - Cuろう接合時のCu拡散性に優れたフェライトおよびマルテンサイト系二相ステンレス鋼 - Google Patents
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Description
金属プレートの接合には、拡散接合する方法、ろう付け接合する方法が使用される。
例えば、特許文献1には、銅めっき鋼板からなるシート部材同士を拡散接合した積層金型に関して、断面硬さHV300、Cr10.5〜32.0重量%のステンレス鋼板にCuめっきを施したものを1.5〜6.0MPaの板厚方向に負荷をかけて、780℃〜950℃で拡散接合させる方法が示されている。特許文献2には、フェライトマルテンサイト複相鋼からなる金属体を積層して、圧力2MPa以下、温度1250℃以下の条件で当該金属体同士を拡散接合させる方法が示されている。
また、かかる基材は、金型等のように高い硬度(硬さ)が要求される用途にも使用されるので、ある程度の硬度を必要とする。例えば、特許文献3には、銅めっき鋼板を複数積層して拡散接合させた積層体に対して、硬さ350HV以上にするための熱処理を施すことが示されている。
そこで、Cu残存量を低減させるために、Cuろう付け時の被接合材に高い負荷をかけることが考えられる。しかし、Cuの残存を消失させるには、相当の面圧となるよう大きな負荷をかける必要があるので、ろう付け装置や処理時間の点で多大な手間とコストを要する。また、Cuを用いないで接合する場合は、高真空かつ高圧力を用いた拡散接合が可能であるが、特別な処理装置を必要とする。特許文献1、2は、それに加えて、銅めっき鋼板を準備するため銅めっき工程が必要である。また、特許文献4は、ろう広がり性に関する課題が記載されているが、基材界面におけるCuろう残存の低減に関する課題は開示されていない。
さらに、金型に使用する場合は、高い硬度が要求されるので、接合時の加熱によって軟化しない基材が好ましい。特許文献3は、接合後に所定の硬度とするために追加的な熱処理を必要とするものである。
以上の事情から、Cuろう付け後の基材の硬度(硬さ)が軟化せず、基材同士の界面に軟質なCuろうの残存が少ないまたはCuろうが残存しないステンレス鋼材が望まれていた。
(1)本発明は、C:0.01〜0.15重量%、Cr:16.0〜18.0重量%、Ni、MnおよびCuのうちの1種または2種以上を合計で0.3〜5.0重量%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、フェライトおよびマルテンサイトの混合組織を有していて、硬さがHV330以上であるCuろう付け時のCu拡散性に優れたフェライトおよびマルテンサイト系二相ステンレス鋼である。
Cuろう付けは、真空中(初期真空度:1×10−2Pa以下)、アルゴンや水素の雰囲気中で行われる。Cuろう付け温度は、Cuの固液相以上である約1120℃で、15〜30分保持することで基材間にCuろうが流れ込み、基材間を埋めて接合する。
また、Cuろう材に替えて、基材にCuめっきを施して使用することも可能である。めっきの厚みは、上記のシート箔状のものと同程度以下にすることが好ましい。
さらに、オーステナイト系ステンレス鋼を用いようとすると、オーステナイト系ステンレス鋼自体が元々軟質であるばかりでなく、ろう付け時の加熱冷却に伴ってさらに軟化してしまう。
Cuろうの固溶による消滅を促進するためには加圧を必須であるが、本発明の二相ステンレス鋼は、他のステンレス鋼と比べて、小さい加圧力すなわち軽加重で上記の固溶を利用した場合のCu残存低減効果が得られる。これは、常温時のフェライト相およびマルテンサイト相の二相から、高温でフェライト相およびオーステナイト相の二相状態になる時の相変態するときの駆動力が発生するために、Cuの固溶速度が速まったものと推測される。
また、ろう付け後の冷却時にオーステナイト相は、再びマルテンサイトに変態し、所望の硬さを呈することになる。
Cは、オーステナイト生成元素であり、固溶強化により鋼の強度、硬さを向上させる。0.01重量%未満では、その効果が十分でない。また、その含有量が多くなると、鋼の加工性、靱性を低下させる。そのため、C含有量は、0.01〜0.15重量%とした。
また、各元素それぞれは、Ni3.0重量%以下、Mn0.5重量%以下、Cu0.3重量%以下で含有することが好ましい。
本発明の二相ステンレス鋼は、積層金型を含む積層型熱交換器等の基材として使用できる。
表1に示す成分を有するステンレス鋼について、30kgの真空溶解で溶製し、得られた鋼塊を、30mm厚の板に鍛造し、熱間圧延により4mm厚の熱延板を得た。次いで、焼鈍、酸洗および冷間圧延を行って0.6mm厚の冷延板を得た。次いで、該冷延板に1030℃の焼鈍を施して冷延焼鈍板を得た。その後、仕上げ熱処理として、フェライトおよびオーステナイトの二相領域となる1000℃に1分で加熱保持した後、冷却することにより、オーステナイト相をマルテンサイト変態させてフェライトおよびマルテンサイトの二相混合組織からなる板厚0.6mmの供試材を製造した。
γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−52Al+470N+189
板厚0.6mmの当該供試材から幅10mm×長さ20mmのろう付け試験片を各鋼種2枚ずつ切り出した。2枚の試験片の間に、35μm厚で基材と同面積(幅10mm×長さ20mm)のシート箔からなるCuろう材をサンドイッチ状に挟んで、試験片/Cuろう材/試験片の3層からなる試験体を構成した。当該試験体の表面積に対して0.1MPaの負荷が加わるように、当該試験体の上から重しを取り付けた。これを水平に保ったまま真空炉に装入した。そして、メカニカルブースターで真空引きし、初期真空度を1×10−2Pa以下に保持した。次いで、炉内に不活性ガスを100Pa程度充填させた後、加熱して昇温を開始した。昇温は、Cuろう材の固相温度(1083℃)に達する前の1050℃で一旦5分保持した。次いで、ろう付け温度の1120℃に昇温し、その温度で30分保持した。その後、炉内に不活性ガスを90kPa程度に充填して冷却を行った後、炉内から取り出すことで、Cuろう付けを施した試験体を作製した。
Cuろう付け後の当該試験体は、板厚方向に切断し、樹脂を埋め込み、その断面を鏡面研磨した後、光学顕微鏡により観察し、ステンレス鋼基材の間の板厚方向に残存したCuろうの最大厚みを測定した。この測定値に基づいて、ステンレス鋼基材のCu拡散性を評価した。評価基準は、Cuろうが残存した最大厚みが5μm以下のものを合格(○)と判定し、5μmを超えるものを不合格(×)と判定した。この「Cu拡散性」とは、Cuろう付けを行った際に、Cuろうがステンレス鋼基材の間に残存しないようなステンレス鋼の性質を意味する。
比較例No.6〜8は、ほぼオーステナイト単相あるいはフェライト単相であったため、Cu固溶が不足し、大きなCu残存厚みを示した。また、硬度が不足した。
次に、ステンレス鋼基材の硬度を測定した。その結果を表2に示す。本発明例のステンレス鋼は、HV330以上の高い硬度を有していた。
(断面組織)
表1に示す本発明例の鋼No.Bのステンレス鋼からなる基材を用いて試験体を作製した。当該基材の試験片3枚と、Cuろう材のシート箔2枚を用意し、当該試験片の間のそれぞれにCuろう材をサンドイッチ状に挟んで、試験片/Cuろう材/試験片/Cuろう材/試験片の5層からなる試験体を構成するとともに、重しの負荷として面圧0.7MPaを加重したことを除いて、実施例1と同様の条件によりCuろう付けが施された試験体を作製した。
Cuろう付け後の当該試験体を中央で半分に切断した後、その断面組織を顕微鏡で観察した。図1、図2に界面付近の断面組織を示す。図2は、図1を拡大したものである。
図1に示すように、3枚の基材は、Cuろうを介して接合している。図2の拡大図に示すように、ステンレス鋼基材の界面にはCuろうの残存がほとんど認められなかった。
ステンレス鋼基材の室温での硬度は、HV330以上(M相:370〜440HV、α相:240HV)であった。マルテンサイト化により高い硬度となった。M相とα相の二相組織の硬度は平均化されるため、HV350〜370程度になるが、HV330以上の硬度が得られた。
表1に示す本発明例の鋼No.Aのステンレス鋼からなる基材を用いて試験体を作製した。重しの負荷として、0.001MPa、0.01MPa、0.10MPa、1.00MPaをそれぞれ加重したことを除いて、実施例1と同様の条件でCuろう付けが施された試験体を作製し、Cuろうの残存厚み(μm)を測定した。残存厚みが5μm以下を合格(○)と判定した。その結果を表3に示す。
表3に示すように、負荷が0.01MPa以下では、Cu残存厚みが5μmを超えていたが、負荷を0.10MPaに増加すると、Cuろうの残存厚みが5μm以下となった。
図3に本発明例No.10の試験体における断面組織を示す。本発明例No.9の試験体は、負荷が0.001MPaと小さいため、基材間の界面に数μmのCu残存が認められた。図3の本発明例No.10の試験体は、負荷が0.01MPaと増加したので、基材間の界面の一部にCuの残存が認められた程度であり、Cuのほとんどが消失していた。
このように、本発明の二相ステンレス鋼は、Cuろう付け時のCu拡散性に優れているので、負荷が0.1MPa程度の軽加重であっても,Cuろうの残存量を低減させることが可能となる。そのため、ろう付け装置に特別の加圧手段を設ける必要がなく、通常の汎用装置を使用して簡便にCuろうが残存しない接合部が得られた。
Claims (5)
- C:0.01〜0.15重量%、Cr:16.0〜18.0重量%、Si:0.45〜0.65重量%、Cu:0.3重量%以下、NiおよびMnのうちの1種以上を合計で0.3〜5.0重量%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、フェライトおよびマルテンサイトの混合組織を有していて、硬さがHV330以上である、Cuろう付け時のCu拡散性に優れたフェライトおよびマルテンサイト系二相ステンレス鋼。
- さらに0.02重量%以下のAl、0.015重量%以下のN、0.010重量%以下のBの少なくとも1種を含有する請求項1に記載のCuろう付け時のCu拡散性に優れたフェライトおよびマルテンサイト系二相ステンレス鋼。
- 圧延された鋼帯または鋼板を950〜1100℃で加熱した後、冷却する仕上げ熱処理を施す、請求項1または2に記載のCuろう付け時のCu拡散性に優れたフェライトおよびマルテンサイト系二相ステンレス鋼の製造方法。
- 請求項1または2に記載のCuろう付け時のCu拡散性に優れたフェライトおよびマルテンサイト系二相ステンレス鋼を基材に使用し、当該基材をろう付け接合するときに、厚み方向へ面圧で0.1〜1MPaの負荷をかける、ろう付け方法。
- 積層型熱交換器に使用される、請求項1または2に記載のCuろう付け時のCu拡散性に優れたフェライトおよびマルテンサイト系二相ステンレス鋼。
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