JPH10110347A - 織機用部品およびそれを用いた織機 - Google Patents

織機用部品およびそれを用いた織機

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JPH10110347A
JPH10110347A JP9213333A JP21333397A JPH10110347A JP H10110347 A JPH10110347 A JP H10110347A JP 9213333 A JP9213333 A JP 9213333A JP 21333397 A JP21333397 A JP 21333397A JP H10110347 A JPH10110347 A JP H10110347A
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JP
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loom
iron
chromium
alloy
phase
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JP9213333A
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English (en)
Inventor
Junji Taniguchi
淳二 谷口
Kazuya Tsujimoto
和也 辻本
Hideo Koizumi
秀雄 小泉
Yasuhisa Shiraishi
泰久 白石
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 糸との摺接に対する耐摩耗性を向上させると
共に、織布の製造環境に適応した耐食性を満足させ、さ
らには耐ヘタリ性を向上させる等によって、長寿命化を
達成した織機用部品が求められている。 【解決手段】 鉄−クロム系合金または鉄−クロム−ニ
ッケル系合金からなる織機用部品である。鉄−クロム系
合金または鉄−クロム−ニッケル系合金は、実質的にフ
ェライト相とマルテンサイト相の 2相からなる組織を有
する。鉄−クロム系合金は10〜20重量% のCrを含有す
る。鉄−クロム系合金はさらにMn、Co、Cuおよび
Ptから選ばれる少なくとも 1種を0.01〜20重量% の範
囲、またはNを0.0001〜 1重量% の範囲で含有する。鉄
−クロム−ニッケル系合金は10〜30重量% のCrと0.01
〜15重量% のNiを含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、糸と摺接するオサ
バやへルド等に好適な合金からなる織機用部品、および
それを用いた織機に関する。
【0002】
【従来の技術】織機による布の製造(織布)は、従来か
ら以下のようにして行われている。まず、径糸とよばれ
る複数のたて糸の間に、水(ウォータージェットルー
ム)や圧縮空気(エアジェットルーム)等の作用によっ
て、緯糸とよばれるよこ糸を飛ばす。このよこ糸を押し
つめることを 1工程とし、この工程を繰り返すことによ
り布が製造される。布は巻き取りコイルにより織布とし
て巻き取られる。
【0003】よこ糸を押しつめる部品はオサバ(筬羽)
と呼ばれている。オサバは薄い刃状の形状を有してい
る。このオサバは櫛歯状に多数並べられ、これらを長方
形の枠で固定してオサ(筬)が構成される。たて糸は各
オサバの間を通されて、その位置が整えられる。また、
よこ糸はオサバにより押しつめられて、布の織り目が整
えられる。たて糸を操作する部品はヘルドと呼ばれてい
る。ヘルドは中央部にたて糸を通すための糸挿通孔を有
し、多数平行に並べてフレームに取付けられて使用され
る。そして、多数平行に並べられたヘルドを一体に動か
すことによって、糸挿通孔に通したたて糸に上下振動が
与えられる。
【0004】上述したオサバやヘルドはたて糸やよこ糸
と摺接した状態で使用される。従って、これら部品の糸
との摺接面には、たて糸やよこ糸との摺接に伴う摩耗を
防止すること、すなわち耐摩耗性が要求される。あるい
は、ウォータージェットルームやエアジェットルームが
用いられることを考慮すると、耐食性に優れることが求
められる。このようなことから、オサバやヘルドの構成
材料としては、オーステナイト系ステンレス材料(例え
ばSUS301)やマルテンサイト系ステンレス材料
(例えばSUS420J2)が多く使用されている。ま
た、ウォータージェットルームを適用した織機では、フ
ェライト系ステンレス材料(例えばSUS430)も用
いられている。
【0005】SUS301は特に冷間加工を施したもの
が用いられている。SUS301は概ねFe−17重量%
Cr− 7重量% Niの組成を有し、冷間加工を施したS
US301の組織はオーステナイト相とマルテンサイト
相とからなる。SUS420J2は概ねFe−13重量%
Cr− 0.3重量% Cの組成を有し、その組織はマルテン
サイト相からなる。SUS430はFe−18重量% Cr
の組成を有し、その組織はフェライト相からなる。
【0006】ところで、近年、織機には高速化等が求め
られている。この織布の高速化や製造環境の過酷化等に
伴って、従来にも増してオサバやヘルド等の織機用部品
に対する要求は厳しくなってきている。すなわち、織機
用部品には耐摩耗性、耐食性、耐ヘタリ性に優れること
が要求されている。そして、より過酷な条件下におい
て、織機用部品の長寿命化を達成することが求められて
いる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来のステンレス材料は、織機用部品として必ずしも
十分な特性を有していない。例えば、SUS301は耐
食性、耐ヘタリ性は概ね良好であるものの、耐摩耗性が
不十分である。このため、織布の毛羽立ちや糸切れ等が
早期に発生しやすいという問題がある。さらに、SUS
301は硬度が高いことから、プレス金型の摩耗が早い
という別の問題も有している。
【0008】SUS420J2は耐摩耗性、耐ヘタリ性
は概ね良好であるものの、耐食性が不十分であり、錆が
発生しやすいという問題を有している。錆の発生は、当
然ながら織機用部品の寿命を短くする。さらに、SUS
430は耐食性は良好であるものの、特に耐ヘタリ性が
不十分であり、織布の目荒れ等が発生しやすいという問
題を有している。なお、SUS430の耐摩耗性につい
ては、SUS420J2とSUS301の中間程度であ
るが、求められる長寿命の織機用部品としては十分とは
言えない。
【0009】このように、現在織機用部品として用いら
れているステンレス材料では、いずれも長寿命化が達成
されていない。特に、織布の高速化や製造環境の過酷化
等に伴って、織機用部品の短寿命が問題となっている。
【0010】本発明はこのような課題に対処するために
なされたもので、糸との摺接に対する耐摩耗性を向上さ
せると共に、織布の製造環境に適応した耐食性を満足さ
せ、さらには耐ヘタリ性を向上させる等によって、長寿
命化を達成した織機用部品、特に織布の高速化や製造環
境の過酷化等に伴うより過酷な条件下において、長寿命
化を図ることを可能にした織機用部品を提供することを
目的としている。さらに、そのような織機用部品を使用
することにより、織布の高速化や使用環境の変化ないし
過酷化等への対応を図った織機を提供することを目的と
している。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
3種の従来材について織機用部品として改めて検討した
ところ、以下の知見を得た。第1に、織機用部品は極め
て柔軟な材料である糸により長時間の摩擦を受けるもの
である。従って、織機用部品の摩耗は部品深さ方向(糸
との順方向)の摩耗と部品横方向(糸との直角方向)の
摩耗が重要であり、単なる摩耗量が織機用部品の寿命を
決定するのではない。横方向に広がりをもって摩耗が進
めば、深さ方向への局部的な摩耗の発生を防ぐことがで
きる。その結果、織機用部品の長寿命化が図れることを
見出した。第2に、織機用部品の場合、糸との接触部に
糸に付着している糊が付着するため、この糊により錆が
発生しやすい。従って、糊による発錆を抑制する必要が
ある。これは他の環境で使用する部品とは異なるもので
ある。
【0012】これらの点につき、本願発明者らはさらに
鋭意研究した。その結果、SUS301では特に織機用
部品の深さ方向の摩耗が、横方向の摩耗に対して非常に
大きくなることが判明した。すなわち、オーステナイト
系ステンレス材料(SUS301)からなる織機用部品
では、深さ方向に非常に大きな摩耗(局部摩耗)が発生
し、これに起因して糸の切断、糸表面の荒れが誘発され
ることが分かった。
【0013】一方、マルテンサイト系ステンレス材料
(SUS420J2)は、耐摩耗性はほぼ要求を満たし
ているものの、耐食性が悪く錆が発生しやすい。さら
に、フェライト系ステンレス材料(SUS430)は、
深さ方向に摩耗が進行するものの横方向に広がりを持
ち、結果として局部摩耗が発生しにくいため、中程度の
耐摩耗性を有している。しかしながら、耐ヘタリ性が低
いために、時間経過に伴って布の目荒れ等が発生してし
まう。
【0014】上記した従来材の問題点について考慮した
上で、従来のオーステナイト系ステンレス材料(SUS
301)、マルテンサイト系ステンレス材料(SUS4
20J2)、フェライト系ステンレス材料(SUS43
0)とは異なる組成および金属組織について検討した。
その結果、Fe−Cr系合金またはFe−Cr−Ni系
合金の金属組織を、実質的にフェライト相とマルテンサ
イト相の 2相とすることによって、摩耗が横方向に広が
って深さ方向への摩耗の進行を抑制することができ、さ
らに織機用部品としての耐食性を満足させることが可能
であることを見出した。加えて、耐ヘタリ性も満足させ
ることができる。さらに、Fe−Cr系合金またはFe
−Cr−Ni系合金の結晶粒を最大20μm 以下と小粒径
化することによって、同様に局部的な摩耗の進行を抑制
できることを見出した。
【0015】ここで、実質的にフェライト相とマルテン
サイト相の 2相からなるFe−Cr系合金またはFe−
Cr−Ni系合金は、従来、織機用部品とはまるで異な
るばね材として用いられていたものである(特開平 3-5
6621号公報、特開平5-171282号公報、特開平7-138704号
公報)。実質的にフェライト相とマルテンサイト相の2
相からなるFe系合金は、ばね材には適しているもの
の、その合金が有する特性からするとSUS420J2
より単純摩耗量は劣るはずである。しかしながら、織機
用部品に適用した場合には、横方向に広がりをもって摩
耗が進行するため、局部摩耗が発生しにくく、糸切れや
毛羽立ちはSUS420J2よりも発生しにくいことが
分かった。さらに、耐食性にも優れていることが判明し
た。
【0016】本発明はこのような知見に基いてなされた
ものである。本発明における第1の織機用部品は、請求
項1に記載したように、鉄−クロム系合金からなる織機
用部品であって、前記鉄−クロム系合金は実質的にフェ
ライト相とマルテンサイト相の 2相からなる組織を有す
ることを特徴としている。鉄−クロム系合金は請求項2
に記載したように、10〜30重量% の範囲のCrを含有す
ることが、耐食性の点から好ましい。さらに、鉄−クロ
ム系合金は請求項3に記載したように、Mn、Co、C
u、Pt等のオーステナイト生成元素から選ばれる少な
くとも 1種を0.01〜20重量% の範囲、またはNを0.0001
〜 1重量% の範囲で含有することが好ましい。またさら
に、鉄−クロム系合金は請求項4に記載したように、
0.001〜1重量% のCを含有することが好ましい。
【0017】本発明における第2の織機用部品は、請求
項7に記載したように、鉄−クロム−ニッケル系合金か
らなる織機用部品であって、前記鉄−クロム−ニッケル
系合金は実質的にフェライト相とマルテンサイト相の 2
相からなる組織を有することを特徴としている。鉄−ク
ロム−ニッケル系合金は請求項8に記載したように、10
〜30重量% のCrと0.01〜15重量% のNiを含有するこ
とが、耐食性や強度、耐摩耗性の点から好ましい。さら
に、鉄−クロム−ニッケル系合金は請求項9に記載した
ように、 0.001〜 1重量% のCを含有することが好まし
い。
【0018】また、本発明の他の織機用部品は、請求項
12に記載したように、少なくとも10〜30重量% のCr
と0.01〜15重量% のNiを含有する鉄−クロム−ニッケ
ル系合金からなり、熱処理後に 1〜 1000K/secの冷却速
度で急冷処理が施されていることを特徴としている。
【0019】本発明における第3の織機用部品は、請求
項13に記載したように、鉄−クロム系合金または鉄−
クロム−ニッケル系合金からなる織機用部品であって、
前記鉄−クロム系合金または鉄−クロム−ニッケル系合
金は最大結晶粒径が20μm 以下であることを特徴として
いる。
【0020】本発明の織機は、複数のたて糸を供給する
たて糸コイルと、前記たて糸が挿通される糸挿通孔をそ
れぞれ有し、前記複数のたて糸に上下振動を与える複数
のヘルドと、前記複数のたて糸の間に、よこ糸を供給す
るよこ糸供給手段と、前記よこ糸を押しつめる複数のオ
サバとを具備する。これらのうち、請求項16または請
求項17に記載したように、ヘルドおよびオサバの少な
くとも一方は、上述した本発明の織機用部品からなるこ
とを特徴としている。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0022】本発明の第1の織機用部品は、実質的にフ
ェライト相とマルテンサイト相の2相からなる金属組織
を有する鉄(Fe)−クロム(Cr)系合金からなるも
のである。
【0023】Fe−Cr系合金は、10〜30重量% の範囲
のCrを含有していることが好ましい。Crは織機用部
品の耐食性の向上に寄与する。Cr量があまり多すぎる
と加工性が低下する傾向がある。一方、Cr量が少なす
ぎると良好な耐食性を得ることができない。さらに、フ
ェライト相とマルテンサイト相の比率にも影響を及ぼ
す。Cr量は13〜19重量% の範囲であることがさらに好
ましい。
【0024】Fe−Cr系合金はCr以外に、オーステ
ナイト相およびそれに基づくマルテンサイト相を出現さ
せる上で、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅
(Cu)、Pt(白金)等のオーステナイト生成元素か
ら選ばれる少なくとも 1種を0.01〜20重量% の範囲、ま
たは窒素(N)を0.0001〜 1重量% の範囲で含有するこ
とが好ましい。これらの元素はマルテンサイト相を増加
させて、強度および耐摩耗性の向上に寄与する。ただ
し、これらの元素をあまり多量に含有すると、マルテン
サイト相が多くなりすぎて延性が低下したり、相対的に
フェライト相が減少することによって、耐食性が低下す
るおそれがある。従って、上記したオーステナイト生成
元素等の含有量は15重量% 以下とすることがより好まし
く、さらに好ましくは10重量% 以下である。
【0025】Fe−Cr系合金は、さらに 0.001〜 1重
量% の炭素(C)を含有することが好ましい。Cは耐摩
耗性のより一層の向上に有効である。これはCを上記範
囲で含有することによって、マルテンサイト相を強化す
ることができるためである。C量は0.04〜0.08重量% の
範囲がより好ましく、さらに好ましくは0.06〜0.07重量
% の範囲である。
【0026】Fe−Cr系合金は、さらに若干量のケイ
素(Si)等を含有していてもよい。Siはフェライト
相を増加させ、マルテンサイト相の制御に有効である。
ただし、Si量があまり多量となると、熱間加工性およ
び冷間加工性が低下する。従って、Si量は 2.0重量%
以下とすることが好ましい。
【0027】また、脱酸剤としてAl、Mg、Ca、T
i等を含有していてもよい。さらに、加工性や耐熱性を
向上させるために、Nb、Ta、Zr、Mo、RE(希
土類元素)、Y、B等を含有していてもよい。なお、不
純物としてP、S、Oを若干含有していてもかまわな
い。
【0028】上述したようなFe−Cr系合金をフェラ
イト相とオーステナイト相の 2相域温度に加熱した後、
急冷してオーステナイト相をマルテンサイト変態させる
ことによって、実質的にフェライト相とマルテンサイト
相の 2相からなる金属組織を有するFe−Cr系合金が
得られる。この金属組織を構成する各相のうち、フェラ
イト相は特に耐食性の向上に寄与し、一方マルテンサイ
ト相は強度、耐摩耗性、耐ヘタリ性等の向上に寄与す
る。
【0029】ここで、フェライト相はマルテンサイト相
に比べて強度や耐摩耗性に劣るものの、フェライト相と
マルテンサイト相の複合組織として織機用部品に使用す
ることによって、糸を横方向に滑らせる作用が得られる
ため、横方向に広がりをもって摩耗が進行する。これは
局部摩耗の抑制に有効である。
【0030】このように、フェライト相とマルテンサイ
ト相の 2相から実質的になる金属組織を有するFe−C
r系合金は、糸による摩耗作用を受けた際に、フェライ
ト相の摩耗の進行がマルテンサイト相により抑制され、
さらに横方向に広がりをもって摩耗が進行する。従っ
て、糸の切断や糸表面の荒れを誘発する深さ方向への局
部摩耗の発生を抑制することができる。さらに、マルテ
ンサイト相の存在によって、耐ヘタリ性を向上させるこ
とができる。耐食性については、Crを含む合金組成お
よびフェライト相の存在によって、織機用部品に求めら
れる耐食性を十分に満足させることができる。これらに
よって、織布の高速化や製造環境の過酷化等に伴う過酷
な条件下においても、織機用部品の長寿命化を達成する
ことが可能となる。
【0031】Fe−Cr系合金の金属組織を構成する各
相のうち、フェライト相の比率は体積比で 5〜 70%の範
囲、あるいは任意の断面の面積比(断面積比)で 5〜 7
0%の範囲であることが好ましい。この際、残部は基本的
にはマルテンサイト相となる。ここで、各相の体積比は
任意の断面と平行な断面の面積比を連続して測定するこ
とにより求めることができる。また、本発明の織機用部
品は、部品全体として略均一にフェライト相とマルテン
サイト相とが存在しているため、各相の体積比と断面積
比とは略同一の値となる。なお、以下に示す他の実施形
態においても同様である。
【0032】フェライト相の体積比または断面積比が5%
未満であると、織機用部品として耐食性が不十分とな
る。一方、フェライト相の体積比または断面積比が 70%
を超えると、相対的にマルテンサイト相の比率が低下す
るために、織機用部品としての耐摩耗性や耐ヘタリ性が
不十分となる。織機用部品としての耐摩耗性、耐ヘタリ
性等の機械的特性と耐食性の両方を満足させるために
は、各相の比率を上記した範囲とすることが好ましい。
フェライト相の体積比または断面積比は15〜 40%の範囲
とすることがさらに好ましい。
【0033】なお、本発明の第1の織機用部品は、基本
的にはフェライト相とマルテンサイト相の 2相からなる
組織を有するものであるが、微量のオーステナイト相を
有していても織機用部品の耐摩耗性や耐食性を大きく損
なうものではない。従って、本発明の第1の織機用部品
は、例えば体積比または断面積比で5%以下程度のオース
テナイト相を有していてもよい。ただし、オーステナイ
ト相は少ないほどよく、体積比または断面積比で1%以下
とすることがより好ましく、特に0.1%以下であることが
望ましい。
【0034】本発明の第2の織機用部品は、実質的にフ
ェライト相とマルテンサイト相の 2相からなる金属組織
を有する鉄(Fe)−クロム(Cr)−ニッケル(N
i)系合金からなるものである。
【0035】Fe−Cr−Ni系合金は、10〜30重量%
の範囲のCrと0.01〜15重量% のNiを含有しているこ
とが好ましい。Crは織機用部品の耐食性の向上に寄与
する。Cr量があまり多すぎると加工性が低下する傾向
がある。一方、Cr量が少なすぎると良好な耐食性を得
ることができない。さらに、フェライト相とマルテンサ
イト相の比率にも影響を及ぼす。Cr量は13〜19重量%
の範囲とすることがさらに好ましい。
【0036】Niは、オーステナイト相およびそれに基
づくマルテンサイト相の出現に寄与する。Niはマルテ
ンサイト相を増加させ、強度および耐摩耗性の向上に寄
与する。Niをあまり多量に含有させるとマルテンサイ
ト相が多くなりすぎて、延性等が低下する。従って、N
i量は15重量% 以下とする。フェライト相とマルテンサ
イト相の比率をより良好に制御する上で、Ni量は 5.0
重量% 以下とすることが好ましい。さらに、Niによる
マルテンサイト相の出現効果を得る上で、Ni量は0.01
重量% 以上とすることが実用的には好ましい。Ni量は
1.0〜 4.0重量% の範囲であることがさらに好ましい。
【0037】Fe−Cr−Ni系合金は、CrおよびN
i以外に、さらに 0.001〜 1重量%のCを含有すること
が好ましい。さらに、Mn、Co、Cu、Pt等のオー
ステナイト生成元素から選ばれる少なくとも 1種を0.01
〜20重量% の範囲、またはNを0.0001〜 1重量% の範囲
で含有していてもよい。これら各元素は前述したよう
に、マルテンサイト相の強化に効果を発揮する。各元素
の含有量の規定理由は前述した通りである。Fe−Cr
−Ni系合金は、さらに 2.0重量% 以下のSiを含有し
ていてもよい。Siはフェライト相を増加させ、マルテ
ンサイト相の制御に有効である。Si量の規定理由は前
述した通りである。
【0038】また、脱酸剤としてAl、Mg、Ca、T
i等を含有していてもよい。さらに、加工性や耐熱性を
向上させるために、Nb、Ta、Zr、Mo、RE(希
土類元素)、Y、B等を含有していてもよい。なお、不
純物としてP、S、Oを若干含有していてもかまわな
い。
【0039】上述したようなFe−Cr−Ni系合金を
フェライト相とオーステナイト相の2相域温度に加熱し
た後、急冷してオーステナイト相をマルテンサイト変態
させることによって、実質的にフェライト相とマルテン
サイト相の 2相からなる金属組織を有するFe−Cr−
Ni系合金が得られる。この金属組織を構成する各相の
うち、フェライト相は特に耐食性の向上に寄与し、一方
マルテンサイト相は強度、耐摩耗性、耐ヘタリ性等の向
上に寄与する。
【0040】前述したFe−Cr系合金と同様に、フェ
ライト相とマルテンサイト相の 2相から実質的になる金
属組織を有するFe−Cr−Ni系合金は、糸による摩
耗作用を受けた際に、フェライト相の摩耗の進行がマル
テンサイト相により抑制され、さらに横方向に広がりを
もって摩耗が進行する。従って、糸の切断や糸表面の荒
れを誘発する深さ方向への局部摩耗の発生を抑制するこ
とができる。さらに、マルテンサイト相の存在によっ
て、耐ヘタリ性を向上させることができる。耐食性につ
いては、Crを含む合金組成およびフェライト相の存在
によって、織機用部品に求められる耐食性を十分に満足
させることができる。これらによって、織布の高速化や
製造環境の過酷化等に伴う過酷な条件下においても、織
機用部品の長寿命化を達成することが可能となる。
【0041】Fe−Cr−Ni系合金の金属組織を構成
する各相のうち、フェライト相の比率は体積比または断
面積比で 5〜 70%の範囲であることが好ましい。この
際、残部は基本的にはマルテンサイト相となる。フェラ
イト相の体積比または断面積比が5%未満であると、織機
用部品として耐食性が不十分となる。一方、フェライト
相の体積比または断面積比が 70%を超えると、相対的に
マルテンサイト相の比率が低下するために、織機用部品
としての耐摩耗性や耐ヘタリ性が不十分となる。織機用
部品としての耐摩耗性、耐ヘタリ性等の機械的特性と耐
食性の両方を満足させるためには、各相の比率を上記し
た範囲とすることが好ましい。フェライト相の体積比ま
たは断面積比は15〜 40%の範囲とすることがさらに好ま
しい。
【0042】なお、本発明の第2の織機用部品は、基本
的にはフェライト相とマルテンサイト相の 2相からなる
組織を有するものであるが、微量のオーステナイト相を
有していても織機用部品の耐摩耗性や耐食性を大きく損
なうものではない。従って、例えば体積比または断面積
比で5%以下程度のオーステナイト相を有していてもよ
い。ただし、オーステナイト相は少ないほどよく、体積
比または断面積比で1%以下とすることがより好ましく、
特に0.1%以下であることが望ましい。
【0043】上述したFe−Cr系合金またはFe−C
r−Ni系合金からなる織機用部品は、特に織布の際に
糸との接触の多いオサバやヘルドとして使用することが
好ましい。これら以外に、たて糸コイルやよこ糸コイル
等のコイルとしても本発明の織機用部品は好適である。
【0044】上述したようなFe−Cr系合金またはF
e−Cr−Ni系合金からなる織機用部品は、例えば以
下に示す各工程を経ることにより作製することができ
る。
【0045】まず、上述した組成比を満足する合金成分
(Fe−Cr系合金成分またはFe−Cr−Ni系合金
成分)を、高周波誘導炉や真空誘導炉にて溶解し、所望
の合金組成を有する合金インゴットとする。次いで、熱
間鍛造、熱間圧延および冷間圧延を順次施し、所望厚の
合金板とする。なお、溶解、熱間鍛造、熱間圧延および
冷間圧延の各工程は、特に変更する必要はなく、従来公
知の方法でよい。
【0046】次に、上記した合金板をフェライト相とオ
ーステナイト相の 2相域温度に加熱した後、急冷してオ
ーステナイト相をマルテンサイト変態させることによっ
て、実質的にフェライト相とマルテンサイト相の 2相組
織からなる所望の合金組成の板を得る。これを例えばオ
サバやヘルド等の所望の織機用部品形状に加工すること
によって、本願発明の織機用部品が得られる。
【0047】熱処理はオーステナイト相の出現温度(A
1 )以上の温度で行うものとする。実用的には、(A
1 +100K)〜 1373Kの範囲の温度で熱処理することが
好ましい。この熱処理温度からの急冷は、冷却速度が 1
〜 1000K/secの範囲となるように条件を設定することが
好ましい。急冷速度が1K/sec未満であると、オーステナ
イト相が多量に残存するおそれがある。さらに、必要に
応じて時効処理を施すことによって、合金の強度を向上
させることができる。
【0048】次に、本発明の第3の織機用部品について
述べる。本発明の第3の織機用部品は、最大結晶粒径が
20μm 以下であるFe−Cr系合金またはFe−Cr−
Ni系合金からなるものである。各合金のCrやNiの
含有量、他の添加元素等は、前述した第1および第2の
織機用部品と同様とすることが好ましい。
【0049】Fe−Cr系合金またはFe−Cr−Ni
系合金の結晶粒を、最大結晶粒径が20μm 以下となるよ
うに、平均的に小粒径化した場合、糸による摩耗作用を
受けた際に横方向に広がりをもって摩耗が進行する。従
って、糸の切断や糸表面の荒れを誘発する深さ方向への
局部摩耗の発生を抑制することができる。Fe−Cr系
合金またはFe−Cr−Ni系合金の最大結晶粒径は10
μm 以下であることがさらに好ましい。最大結晶粒径が
20μm を超える場合には局部的に摩耗されやすく、深さ
方向への摩耗の進行が早くなる。
【0050】さらに、Fe−Cr系合金またはFe−C
r−Ni系合金は、Crを含む合金組成によって、織機
用部品に求められる耐食性を満足させることができる。
これらによって、織布の高速化や製造環境の過酷化等に
伴う過酷な条件下においても、織機用部品の長寿命化を
達成することが可能となる。
【0051】最大結晶粒径を20μm 以下としたFe−C
r系合金またはFe−Cr−Ni系合金からなる第3の
織機用部品についても、前述した第1および第2の織機
用部品と同様に、実質的にフェライト相とマルテンサイ
ト相の 2相からなる金属組織とすることが好ましい。こ
れによって、耐摩耗性、耐ヘタリ性、耐食性等をより向
上させることができる。言い換えると、前述した第1お
よび第2の織機用部品を構成するFe−Cr系合金また
はFe−Cr−Ni系合金の最大結晶粒径を20μm 以下
とすることによって、織機用部品としての特性をより高
めることが可能となる。
【0052】第3の織機用部品は、前述した第1および
第2の織機用部品と同様にして作製することができる。
この際、フェライト相とオーステナイト相の 2相域温度
に加熱した後に急冷することによって、Fe−Cr系合
金またはFe−Cr−Ni系合金の結晶粒を、最大結晶
粒径が20μm 以下となるように微細化することができ
る。急冷速度は同様に 1〜 1000K/secの範囲とすること
が好ましい。
【0053】本発明の織機は、上述した第1、第2およ
び第3の織機用部品からなるオサバおよびヘルドの少な
くとも一方を具備するものである。図1は本発明の織機
の一実施形態の概略構造を模式的に示す図である。同図
において、たて糸コイル1から巻き出された複数のたて
糸2は、複数のヘルド3の糸挿通孔(図示せず)にそれ
ぞれ通されている。これらヘルド3は一体に動作され、
これによりたて糸2に上下振動が与えられる。
【0054】複数のたて糸2間には、水(ウォータージ
ェットルーム)や圧縮空気(エアジェットルーム)等の
作用によって、図示を省略したよこ糸コイルから巻き出
されたよこ糸4が飛ばされる。このよこ糸4はオサバ5
で押しつめられる。オサバ5は櫛歯状に多数並べられ、
これらを長方形の枠で固定してオサ6が構成されてい
る。このような工程を繰り返し行うことによって、織布
が巻取コイル7に巻き取られる。
【0055】このような織機のオサバ5やヘルド3に、
前述した本発明の織機用部品を用いることによって、本
発明の織機が構成される。そして、前述したように、耐
摩耗性、耐食性、耐ヘタリ性等に優れたオサバ5やヘル
ド3を用いることによって、織機の高速化や環境の変化
ないし過酷化等に十分対応させることが可能となる。
【0056】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例およびその評
価結果について説明する。
【0057】実施例1〜9 表1に組成を示す各合金成分をそれぞれ高周波誘導炉に
て溶解し、所望のFe−Cr系合金組成またはFe−C
r−Ni系合金組成の合金インゴットをそれぞれ作製し
た。これら各合金インゴットに熱間鍛造、熱間圧延およ
び冷間圧延を順次施し、それぞれ厚さ 0.2mmの板とし
た。
【0058】これら各合金板をそれぞれフェライト相と
オーステナイト相の 2相域温度である 1273Kまで加熱
し、この温度から 20K/secで急冷した。この処理によっ
て、実質的にフェライト相とマルテンサイト相の 2相組
織からなるFe−Cr系合金板またはFe−Cr−Ni
系合金板を得た。得られた各合金板の金属組織を顕微鏡
観察した。各合金板におけるフェライト相の比率(断面
積比)は表1に示す通りであった。これらを所望のオサ
バ形状に加工し、これを95羽/鯨寸(約3.78cm)のオサ
密度で組み合わせてオサとした。
【0059】比較例1 基本組成がFe−17重量% Cr− 7重量% Niからな
り、かつ冷間加工を施したSUS301材を用いて、上
記実施例1〜9と同様にオサバおよびオサを作製した。
比較例1によるオサバは、オーステナイト相とマルテン
サイト相とからなる金属組織を有していた。
【0060】比較例2 基本組成がFe−13重量% Cr− 0.3重量% Cからなる
SUS420J2材を用いて、上記実施例1〜9と同様
にオサバおよびオサを作製した。比較例2によるオサバ
は、マルテンサイト相からなる金属組織を有していた。
【0061】比較例3 基本組成がFe−18重量% CrからなるSUS430材
を用いて、上記実施例1〜9と同様にオサバおよびオサ
を作製した。比較例3によるオサバは、フェライト相か
らなる金属組織を有していた。
【0062】
【表1】 上述した実施例1〜9および比較例1〜3の各オサを用
いて、以下に示す試験方法により、耐摩耗性、耐食性お
よび耐ヘタリ性を評価した。
【0063】[耐摩耗性および耐食性の測定方法]図2
に示すように、試験片ホルダ11に試験片12となるオ
サバを保持し、これに糸送り部13から糸巻き取り部1
4へ張力を加えながら糸15を送る。この際、試験片ホ
ルダ11に連動させた駆動用回転軸16を回転させるこ
とにより、試験片12への摩耗を加速させて、摩耗試験
を行った。
【0064】また、実際に織機として用いる場合には、
挿送する糸15には例えば塩素を含む糊が付着してお
り、この糊がオサの腐食を発生させる。そこで、10重量
% の糊を加えた塩水を噴霧することにより、腐食試験を
行った。
【0065】これらの加速試験において、ポリエステル
製の糸を 60gの張力をかけながら、糸送り速度4m/min、
駆動用回転軸の回転数800rpmとした場合、24時間の条件
で実機で 1年間織機を稼働させたのと同等の摩耗および
腐食が発生することが分かった。この知見に基き、上記
条件で試験した結果を表2に示す。耐摩耗性は摩耗量を
mmで示す。耐食性は50個の試料中で腐食が発生した個数
で示す。
【0066】[耐ヘタリ性の測定方法]ポリエステル系
セミダル糸を用い、縦96本/inch 、横90本/inch 、回転
数 650rpm 、オサ密度95羽/鯨寸(約3.78cm)の条件で
実機試験を行った。この際に、1m幅に発生する布の目荒
れの数を測定して、耐ヘタリ性を評価した。この耐ヘタ
リ性の測定結果も併せて表2に示す。
【0067】
【表2】 表2から明らかなように、実施例1〜9による各オサバ
は、幅方向に広がりをもって摩耗が進行しているため、
深さ方向への局部的な摩耗が抑制されていることが分か
る。さらに、実施例1〜9による各オサバは、良好な耐
食性および耐ヘタリ性を有していることが分かる。
【0068】実施例10〜18 表3に組成を示す各合金成分をそれぞれ高周波誘導炉に
て溶解し、所望のFe−Cr系合金組成またはFe−C
r−Ni系合金組成の合金インゴットをそれぞれ作製し
た。これら各合金インゴットに熱間鍛造、熱間圧延およ
び冷間圧延を順次施し、それぞれ厚さ 0.3mmの板とし
た。
【0069】これら各合金板をそれぞれフェライト相と
オーステナイト相の 2相域温度である 1273Kまで加熱
し、この温度から 20K/secで急冷した。この処理によっ
て、実質的にフェライト相とマルテンサイト相の 2相組
織からなるFe−Cr系合金板またはFe−Cr−Ni
系合金板を得た。得られた各合金板の金属組織を顕微鏡
観察した。各合金板におけるフェライト相の比率(断面
積比)は表3に示す通りであった。これらを所望のヘル
ド形状に加工してヘルドとした。
【0070】比較例4 基本組成がFe−17重量% Cr− 7重量% Niからな
り、かつ冷間加工を施したSUS301材を用いて、上
記実施例10〜18と同様にヘルドを作製した。比較例
4によるヘルドは、オーステナイト相とマルテンサイト
相とからなる金属組織を有していた。
【0071】比較例5 基本組成がFe−13重量% Cr− 0.3重量% Cからなる
SUS420J2材を用いて、上記実施例10〜18と
同様にヘルドを作製した。比較例5によるヘルドは、マ
ルテンサイト相からなる金属組織を有していた。
【0072】比較例6 基本組成がFe−18重量% CrからなるSUS430材
を用いて、上記実施例10〜18と同様にヘルドを作製
した。比較例6によるヘルドは、フェライト相からなる
金属組織を有していた。
【0073】
【表3】 上述した実施例10〜18および比較例4〜6の各ヘル
ドの耐摩耗性、耐食性および耐ヘタリ性を、実施例1〜
9と同様にして測定、評価した。その結果を表4に示
す。
【0074】
【表4】 表4から明らかなように、実施例10〜18による各ヘ
ルドは、幅方向に広がりをもって摩耗が進行しているた
め、深さ方向への局部的な摩耗が抑制されていることが
分かる。さらに、実施例10〜18による各ヘルドは、
良好な耐食性および耐ヘタリ性を有していることが分か
る。
【0075】実施例19〜26 表5に組成を示す各合金成分をそれぞれ高周波誘導炉に
て溶解し、所望のFe−Cr系合金組成またはFe−C
r−Ni系合金組成を有する合金インゴットをそれぞれ
作製した。これら各合金インゴットに熱間鍛造、熱間圧
延および冷間圧延を順次施し、それぞれ厚さ 0.2mmの板
とした。
【0076】これら各合金板をそれぞれフェライト相と
オーステナイト相の 2相域温度である 1273Kまで加熱
し、この温度から急冷した。急冷条件は、実施例19、
21、23、25については 20K/secとし、実施例2
0、22、24、26については40K/sec とした。この
ような処理によって、実質的にフェライト相とマルテン
サイト相の 2相組織からなるFe−Cr系合金板または
Fe−Cr−Ni系合金板を得た。得られた各合金板の
金属組織を顕微鏡観察した。各合金板の最大結晶粒径お
よびフェライト相の比率(断面積比)は、それぞれ表5
に示す通りであった。これらを所望のオサバ形状に加工
し、これを95羽/鯨寸(約3.78cm)のオサ密度で組み合
わせてオサとした。
【0077】
【表5】 上述した実施例19〜26の各オサバの耐摩耗性を、実
施例1〜9と同様にして測定、評価した。その結果を表
6に示す。
【0078】
【表6】 表6から明らかなように、最大結晶粒径が20μm 以下で
ある実施例19〜26による各オサバは、いずれも良好
な耐摩耗性、耐食性および耐ヘタリ性を有していること
が分かる。最大結晶粒径が10μm 以下である実施例2
0、22、24、26による各オサバは、さらに耐摩耗
性に優れていることが分かる。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の織機用部
品は、糸との摺接に対して良好な耐摩耗性および耐ヘタ
リ性を有しており、さらに耐食性にも優れている。従っ
て、より過酷な条件下において、織機用部品の長寿命化
を図ることが可能となる。そして、このような織機用部
品をオサバやヘルドとして用いた本発明の織機によれ
ば、高速化や環境の変化ないし過酷化等への対応を図る
ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の織機の一実施形態の概略構造を模式
的に示す図である。
【図2】 本発明の実施例において織機用部品の耐摩耗
性および耐食性を測定するために適用した加速試験方法
の概略を示す図である。
【符号の説明】
1……たて糸コイル 2……たて糸 3……ヘルド 4……よこ糸 5……オサバ 6……オサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 38/40 C22C 38/40 (72)発明者 白石 泰久 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄−クロム系合金からなる織機用部品で
    あって、前記鉄−クロム系合金は実質的にフェライト相
    とマルテンサイト相の 2相からなる組織を有することを
    特徴とする織機用部品。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム系合金は、10〜30重量% のCrを含有す
    ることを特徴とする織機用部品。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム系合金は、Mn、Co、CuおよびPt
    から選ばれる少なくとも 1種を0.01〜20重量% の範囲、
    またはNを0.0001〜 1重量% の範囲で含有することを特
    徴とする織機用部品。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム系合金は、 0.001〜 1重量% のCを含有
    することを特徴とする織機用部品。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム系合金は、体積比で 5〜 70%のフェライ
    ト相を有することを特徴とする織機用部品。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム系合金は、任意の断面の面積比で 5〜 7
    0%のフェライト相を有することを特徴とする織機用部
    品。
  7. 【請求項7】 鉄−クロム−ニッケル系合金からなる織
    機用部品であって、前記鉄−クロム−ニッケル系合金は
    実質的にフェライト相とマルテンサイト相の2相からな
    る組織を有することを特徴とする織機用部品。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム−ニッケル系合金は、10〜30重量% のC
    rと0.01〜15重量% のNiを含有することを特徴とする
    織機用部品。
  9. 【請求項9】 請求項7記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム−ニッケル系合金は、 0.001〜 1重量%
    のCを含有することを特徴とする織機用部品。
  10. 【請求項10】 請求項7記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム−ニッケル系合金は、体積比で 5〜 70%
    のフェライト相を有することを特徴とする織機用部品。
  11. 【請求項11】 請求項7記載の織機用部品において、 前記鉄−クロム系合金は、任意の断面の面積比で 5〜 7
    0%のフェライト相を有することを特徴とする織機用部
    品。
  12. 【請求項12】 少なくとも10〜30重量% のCrと0.01
    〜15重量% のNiを含有する鉄−クロム−ニッケル系合
    金からなる織機用部品であって、前記鉄−クロム−ニッ
    ケル系合金は熱処理後に 1〜 1000K/secの冷却速度で急
    冷処理が施されていることを特徴とする織機用部品。
  13. 【請求項13】 鉄−クロム系合金または鉄−クロム−
    ニッケル系合金からなる織機用部品であって、前記鉄−
    クロム系合金または鉄−クロム−ニッケル系合金は最大
    結晶粒径が20μm 以下であることを特徴とする織機用部
    品。
  14. 【請求項14】 請求項13記載の織機用部品におい
    て、 前記鉄−クロム系合金または鉄−クロム−ニッケル系合
    金は、実質的にフェライト相とマルテンサイト相の 2相
    からなる組織を有することを特徴とする織機用部品。
  15. 【請求項15】 請求項1、請求項7、請求項12また
    は請求項13記載の織機用部品において、 オサバおよびヘルドから選ばれる少なくとも 1種の部品
    であることを特徴とする織機用部品。
  16. 【請求項16】 複数のたて糸を供給するたて糸コイル
    と、前記たて糸が挿通される糸挿通孔をそれぞれ有し、
    前記複数のたて糸に上下振動を与える複数のヘルドと、
    前記複数のたて糸の間によこ糸を供給するよこ糸供給手
    段と、前記よこ糸を押しつめる複数のオサバとを具備す
    る織機において、 前記オサバは、請求項1、請求項7、請求項12または
    請求項13記載の織機用部品からなることを特徴とする
    織機。
  17. 【請求項17】 複数のたて糸を供給するたて糸コイル
    と、前記たて糸が挿通される糸挿通孔をそれぞれ有し、
    前記複数のたて糸に上下振動を与える複数のヘルドと、
    前記複数のたて糸の間によこ糸を供給するよこ糸供給手
    段と、前記よこ糸を押しつめる複数のオサバとを具備す
    る織機において、 前記ヘルドは、請求項1、請求項7、請求項12または
    請求項13記載の織機用部品からなることを特徴とする
    織機。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1013784A1 (en) * 1998-12-24 2000-06-28 Nisshin Steel Co., Ltd. An abrasion-resistant steel and a weaving machine member made of an abrasion-resistant steel
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CN102732770A (zh) * 2012-06-20 2012-10-17 内蒙古包钢钢联股份有限公司 一种铁合金材料
JP2015200024A (ja) * 2014-03-31 2015-11-12 日新製鋼株式会社 Cuろう接合時のCu拡散性に優れたフェライトおよびマルテンサイト系二相ステンレス鋼

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