JP6439794B2 - 粘着剤付き偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Description
ところで、一般的に偏光板は、最外層に粘着剤層が形成され、さらに粘着剤層の上に剥離フィルムが貼着された状態で流通している。液晶セルへの貼合前に、偏光板から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を介して液晶セルに貼合することになる。このような偏光板は、剥離フィルムを剥離して液晶セルに貼合する際に静電気が発生するという問題があるため、例えば、特開2009−251281号公報(特許文献2)に記載のように粘着剤層を形成する粘着剤に対し、イオン性化合物を配合することで帯電防止能を付与する方法が提案されている。
一般に、特許文献1に記載の偏光板では、偏光子層の保護層の積層されていない面(保護層が積層されている面と反対側の面)に粘着剤層が積層されるが、この粘着剤層を形成する粘着剤組成物にイオン性化合物が配合されている場合、イオン性化合物の影響で、特に耐湿熱試験において偏光子の光学性能が低下する問題があった。かかる問題に対して、例えば、特開2014−32360号公報(特許文献3)には、配合するイオン性化合物の組成を選択することで性能低下を抑制できるとの記載がある。しかしながら、イオン性化合物の限定により、粘着剤組成物の組成によっては相溶性が悪くなったり、粘着力が低下して耐熱試験において偏光板の剥がれや浮きが発生するといった問題があった。
すなわち本発明は、一つの見地から、偏光子層と、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物である第一の保護層と、イオン性化合物を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層とを、この順に備える粘着剤付き偏光板を提供するものである。
上記の粘着剤付き偏光板において、偏光子層は、第一の保護層と反対側の表面に第二の保護層を備えることができる。この第二の保護層は、熱可塑性樹脂から形成される透明樹脂フィルムであることが好ましい。
上記した活性エネルギー線硬化性化合物は、カチオン重合性化合物を含むことが好ましい。このカチオン重合性化合物は、少なくとも1個のオキシラン環を有する化合物を含む化合物であることがより好ましい。
また、上記のいずれかの活性エネルギー線硬化性化合物は、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系化合物を含むことが好ましい。
上記の粘着剤付き偏光板において、第一の保護層は、そのガラス転移温度が23℃以上であることが好ましく、また第一の保護層は、その厚さが0.1〜10μmであることが好ましく、また第一の保護層は、水接触角が60°以上であることが好ましい。
本発明の粘着剤付き偏光板は、その粘着剤層側で液晶セルなど貼合することができる。したがって、使用時まで、その粘着剤層上に離型処理が施された剥離フィルムが積層されていることが好ましい。
上記の粘着剤付き偏光板は、液晶セルに適用することで液晶表示装置とすることができる。すなわち本発明は、もう一つの見地から、液晶セルと上記のいずれかに記載の粘着剤付き偏光板とを備える液晶表示装置を提供するものである。その好ましい形態の一つとして、粘着剤付き偏光板が、その粘着剤層側で液晶セルに貼合されていることを挙げることができる。
[偏光子層]
偏光子層は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素を吸着配向させたものであることができる。本発明において、偏光子層の厚さは、通常30μm以下であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下である。なお、偏光子層としてポリビニルアルコール系樹脂層に二色性色素を吸着配向させたものを用いる場合は、ポリビニルアルコール系樹脂単体を延伸してもよいし、基材などにポリビニルアルコール系樹脂の溶液を塗工して乾燥させた後、基材と共に延伸させ、基材を除去してもよい。基材と共に延伸する場合は、厚さが7μm以下の偏光子層の作製が容易となる。
上記の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂層を構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸、アンモニウム基を有するアクリルアミドなどが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、80モル%以上であることができるが、好ましくは90〜99.5モル%の範囲であり、より好ましくは94〜99モル%の範囲である。ケン化度が80モル%未満であると、得られる偏光板の耐水性及び耐湿熱性が低下する。ケン化度が99.5モル%を超えると、染色速度が遅くなり、生産性が低下するとともに十分な偏光性能を有する偏光子層が得られないことがある。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3)がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、次の式で定義される。なお、ケン化度は、JIS K 6726:1994「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して求めることができ、ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、したがって結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)/(水酸基の数+酢酸基の数)
ポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールであってもよく、例えば、エチレン及びプロピレン等によるオレフィン変性;アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸等による不飽和カルボン酸変性;不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどにより変性されたものを用いてもよい。ポリビニルアルコール系樹脂の変性の割合は、30モル%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素が吸着しにくくなる傾向にあり、十分な偏光性能を有する偏光子層が得られないことがある。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100〜10000程度であり、より好ましくは1500〜8000、さらに好ましくは2000〜5000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度も、JIS K 6726:1994「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して求めることができる。平均重合度が100未満であると、好ましい偏光性能を得ることが困難となる傾向があり、平均重合度が10000を超えると、溶媒への溶解性が悪化し、ポリビニルアルコール系樹脂層の形成が困難になる傾向がある。
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂としては適宜の市販品を用いることができる。好適な市販品の例は、いずれも商品名で、(株)クラレ製の“PVA124”及び“PVA117”(いずれもケン化度:98〜99モル%)、“PVA624”(ケン化度:95〜96モル%)、“PVA617”(ケン化度:94.5〜95.5モル%);日本合成化学工業(株)製の“N−300”及び“NH−18”(いずれもケン化度:98〜99モル%)、“AH−22”(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、“AH−26”(ケン化度:97〜98.8モル%)、;日本酢ビ・ポバール(株)製の“JC−33”(ケン化度:99モル%以上)、“JF−17”、“JF−17L”及び“JF−20”(いずれもケン化度:98〜99モル%)、“JM−26”(ケン化度:95.5〜97.5モル%)、“JM−33”(ケン化度:93.5〜95.5モル%)、“JP−45”(ケン化度:86.5〜89.5モル%)などが挙げられる。
偏光子層に含有(吸着配向)される二色性色素は、ヨウ素又は二色性有機染料であることができる。二色性有機染料の具体例としては、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックを挙げることができる。二色性色素は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
[第一の保護層]
偏光子層の一方の面に積層する第一の保護層は、前述のとおり、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される。活性エネルギー線硬化性化合物とは、活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線など)の照射により硬化し得る化合物を意味する。活性エネルギー線硬化性化合物は、カチオン重合性化合物を含むものであってもよいし、ラジカル重合性化合物を含むものであってもよいし、これら双方を含むものであってもよい。
カチオン重合性化合物の例としては、分子内に少なくとも1個のオキシラン環を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」と称することがある)、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物(以下、単に「エポキシ系化合物」と称することがある)などを挙げることができる。
また、ラジカル重合性化合物の例としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、単に「(メタ)アクリル系化合物」と称することがある)、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリルアミド基を有する化合物(以下、「(メタ)アクリルアミド系化合物」と称することがある。)などを挙げることができる。なお、「(メタ)アクリル系」とは、メタクリル系又はアクリル系を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を意味し、(メタ)アクリルアミド基とはメタクリロイルアミド基又はアクリロイルアミド基を意味する。
これらの中でも、オキセタン化合物及び/又は(メタ)アクリル系化合物を用いた場合に、偏光子層の光学性能低下の抑制効果が顕著となる。
オキセタン化合物は、分子内に少なくとも1個のオキシラン環(4員環エーテル)を有する化合物であって、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、いずれも東亞合成(株)から販売されている商品名で、“アロンオキセタン(登録商標)OXT−101”、“アロンオキセタン(登録商標)OXT−121”、“アロンオキセタン(登録商標)OXT−211”、“アロンオキセタン(登録商標)OXT−221”、“アロンオキセタン(登録商標)OXT−212”などを挙げることができる。
オキセタン化合物の配合量は特に限定されないが、カチオン重合性化合物全体を基準に、通常90重量%以下、好ましくは20〜80重量%である。また、硬化性樹脂組成物は、上記のオキセタン化合物に加え、エポキシ化合物を含有してもよい。エポキシ化合物を添加することにより、硬化性樹脂組成物と偏光子層との密着性がより良好となる。
上記のエポキシ系化合物としては、特に制限されないが、芳香族エポキシ系化合物、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ系化合物を有するエポキシ系化合物などが例示できる。
芳香族エポキシ系化合物は、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル及びビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル及びエポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルは、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF及びビスフェノールSのようなビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂のようなノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン及びポリビニルフェノールのような多官能型の化合物などが挙げられる。これら芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。このような脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルのなかでも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであることができる。より具体的には、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール若しくはグリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
また、下式(I)で表される単官能エポキシ化合物も脂肪族エポキシ化合物として挙げられる。R1は、炭素数1〜15のアルキル基である。このアルキル基は、直鎖であってもよいし、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。このアルキル基は、比較的長鎖であるもの、例えば炭素数6以上であるのが好ましく、さらには炭素数6〜10の範囲にあることが好ましい。なかでも分岐したアルキル基であるのが好ましい。式(I)で表される単官能エポキシ化合物の典型的な例として、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを挙げることができる。
以上のようなエポキシ化合物のなかでも脂環式エポキシ化合物、すなわちエポキシ基の少なくとも1個が脂環式環に結合している化合物が好ましく、とりわけ、エポキシシクロヘキサン〔上記式(II)においてn=4のもの〕やエポキシシクロヘプタン〔上記式(II)においてn=5のもの〕を有するエポキシ化合物は、硬化性樹脂組成の硬化物の弾性率が高くなり、偏光子層との密着性に優れる保護層が得られやすいことから、より好ましく用いられる。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイド。
エポキシ化合物の配合量は特に限定されないが、カチオン重合性化合物全体を基準に、通常90重量%以下、好ましくは20〜80重量%である。また、活性エネルギー線硬化性化合物全体を基準にすると、カチオン重合性化合物の配合量は、通常100重量%以下、好ましくは30〜90%重量%である。
硬化性樹脂組成物が、活性エネルギー線硬化性化合物としてオキセタン化合物やエポキシ化合物等のカチオン重合性化合物を含む場合、その硬化性樹脂組成物には通常、光カチオン重合開始剤が配合される。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での保護層の形成が可能となるため、偏光子層の耐熱性や膨張による歪を考慮する必要が減少し、密着性良く第一の保護層を偏光子層上に形成することができる。また光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、これを硬化性樹脂組成物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線及び電子線等の活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、いずれのタイプのものであってもよいが、具体例を挙げれば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩及び芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレーン錯体などがある。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
また、鉄−アレーン錯体としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
これらの光カチオン重合開始剤は市販品を容易に入手することが可能であり、例えばそれぞれ商品名で、日本化薬(株)から販売されている“カヤラッド(登録商標)PCI−220”及び“カヤラッド(登録商標)PCI−620”、ダウ・ケミカル社から販売されている“UVI−6990”、ダイセル・サイテック(株)から販売されている“UVACURE 1590”、(株)ADEKAから販売されている“アデカオプトマー(登録商標)SP−150”及び“アデカオプトマー(登録商標)SP−170”、日本曹達(株)から販売されている“CI−5102”、“CIT−1370”、“CIT−1682”、“CIP−1866S”、“CIP−2048S”及び“CIP−2064S”、みどり化学(株)から販売されている“DPI−101”、“DPI−102”、“DPI−103”、“DPI−105”、“MPI−103”、“MPI−105”、“BBI−101”、“BBI−102”、“BBI−103”、“BBI−105”、“TPS−101”、“TPS−102”、“TPS−103”、“TPS−105”、“MDS−103”、“MDS−105”、“DTS−102”及び“DTS−103”、ローディア社から販売されている“PI−2074”などを挙げることができる。
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。これらのなかでも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度や偏光子層との良好な密着性を有する硬化性樹脂組成物の硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物やオキセタン化合物を包含するカチオン重合性化合物の合計100重量部に対し、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光カチオン重合開始剤の配合量が少ないと、硬化が不十分になり機械的強度や第一の保護層と偏光子層との接着性を低下させる傾向にある。一方、光カチオン重合開始剤の配合量が多すぎると、偏光子層の光学性能が低下する可能性がある。
硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含む場合、ラジカル重合性化合物は、例えば(メタ)アクリル系化合物、(メタ)アクリルアミド系化合物であることができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーや、官能基を有する化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。(メタ)アクリル系化合物を2種以上併用する場合、(メタ)アクリレートモノマーが2種以上であってもよいし、(メタ)アクリレートオリゴマーが2種以上であってもよいし、もちろん(メタ)アクリレートモノマーの1種以上と(メタ)アクリレートオリゴマーの1種以上とを併用してもよい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
上記の(メタ)アクリレートモノマーには、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー及び分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーがある。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、カルボキシル基含有の(メタ)アクリレートモノマーを用いてもよい。カルボキシル基含有の単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、N−(メタ)アクリロイルオキシ−N′,N′−ジカルボキシメチル−p−フェニレンジアミン、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸などが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド系化合物としては、N−置換(メタ)アクリルアミドを用いてもよい。N−置換(メタ)アクリルアミドは、N−位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドである。その置換基の典型的な例は、さらに置換されていてもよいアルキル基であるが、(メタ)アクリルアミドの窒素原子とともに環を形成していてもよく、この環は、炭素原子及び(メタ)アクリルアミドの窒素原子に加え、酸素原子を環構成員として有してもよい。さらに、その環を構成する炭素原子には、アルキルやオキソ(=O)のような置換基が結合していてもよい。N−置換(メタ)アクリルアミドは一般に、(メタ)アクリル酸又はその塩化物と1級又は2級アミンとの反応によって製造できる。
N−置換(メタ)アクリルアミドはとりわけ、下式(III)で示されるものであることが好ましい。下式(III)において、Q1は水素原子又はメチル基を表し、Q2は水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Q3は水酸基若しくはアミノ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表すか、又はQ2とQ3が一緒になって、それらが結合する窒素原子とともに酸素原子を環構成員として有してもよい5員環若しくは6員環を形成する。Q2がアルキル基であるとき、及びQ3が水酸基又はアミノ基を有してもよいアルキル基であるとき、それぞれのアルキル基は、炭素数3以上であれば直鎖でも分岐していてもよい。Q3が水酸基を有するアルキル基である例として、ヒドロキシアルキル基がこれに該当する。Q3がアミノ基を有するアルキル基である例として、アミノアルキル基、N−アルキルアミノアルキル基及びN,N−ジアルキルアミノアルキル基がこれに該当する。Q2とQ3が一緒になって、それらが結合する窒素原子とともに、酸素原子を環構成員として有してもよい5員環又は6員環を形成するとき、その5員環又は6員環の例をN−位でカルボニル(C=O)につながる基の形で掲げると、1−ピロリジニル(C4H8N−)、2−オキサゾリジノン−3−イル〔C2H4OC(=O)N−〕、ピペリジノ(C5H10N−)、モルホリノ(C2H4OC2H4N−)などがある。
同じくQ2が水素原子であり、Q3が水酸基を有するアルキル基であるN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミドなどがある。同じく、Q2が水素原子であり、Q3がアミノ基を有するアルキル基であるN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル](メタ)アクリルアミド、N−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル](メタ)アクリルアミド、N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−[1−メチル−1−(N,N−ジメチルアミノ)エチル](メタ)アクリルアミドなどがある。
また、式(III)におけるQ2とQ3が一緒になって、それらが結合する窒素原子とともに、5員環又は6員環を形成するN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N−アクリロイルピロリジン、3−アクリロイル−2−オキサゾリジノン、4−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジンなどがある。
上記したN−置換(メタ)アクリルアミドのなかでも、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド及びN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドのようなN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、並びにN,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルアクリルアミドのようなN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド又はN,N−ジメチルアクリルアミドが特に好ましい。
その他、N−ドデシル(メタ)アクリルアミドのような長鎖アルキルを有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドや、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(プロポキシメチル)アクリルアミド及びN−(ブトキシメチル)アクリルアミドのようなN−(アルコキシアルキル)(メタ)アクリルアミドも、活性エネルギー線硬化性化合物を構成するN−置換(メタ)アクリルアミドとして用いることができる。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレートなどが代表的である。
2官能(メタ)アクリレートモノマーのより具体的な例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどがある。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのような3官能以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが代表的なものであり、その他、3官能以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
一方、(メタ)アクリレートオリゴマーには、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーなどがある。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内にウレタン結合(−NHCOO−)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物などであり得る。
ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
かかる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなど)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネート等のジ−又はトリ−イソシアネート及び上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするために用いられるポリオール類としては、芳香族、脂肪族及び脂環式のポリオールのほか、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどを使用することができる。脂肪族及び脂環式のポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、上記したポリオール類と多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物でありうるものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸などがある。
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールのほか、上記したポリオール類又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールなどであり得る。
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを用いた脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物でありうるものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などがある。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得ることができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。活性エネルギー線硬化性化合物全体を基準にすると、ラジカル重合性化合物の配合量は、通常100重量%以下、好ましくは10〜70%重量%である。
硬化性樹脂組成物が、活性エネルギー線硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤が配合されることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、可視光線、紫外線、X線及び電子線等の活性エネルギー線の照射により、(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物の重合を開始できるものであればよく、従来公知のものを用いることができる。光ラジカル重合開始剤の具体例を挙げれば、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンのようなアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン及び4,4′−ジアミノベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル及びベンゾインエチルエーテルのようなベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。
これらの光ラジカル重合開始剤は市販品を容易に入手することが可能であり、例えばそれぞれ商品名で、BASF社製の“イルガキュア(登録商標) 184”、“イルガキュア(登録商標) 907”、“ダロキュア(登録商標) 1173”及び“Lucirin(登録商標) TPO”などを挙げることができる。
光ラジカル重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物の全量100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光ラジカル重合開始剤の配合量が少ないと、硬化が不十分になり、機械的強度や保護層と偏光子層との密着性が低下する傾向にある。また、光ラジカル重合開始剤の配合量が多すぎると、硬化性樹脂組成物中の活性エネルギー線硬化性化合物が相対的に少なくなり、得られる偏光板の光学特性の耐久性が低下する可能性がある。
また、硬化性樹脂組成物は、上記したオキセタン化合物、又はオキセタン化合物及びエポキシ化合物と、上記したラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物とを併用してもよい。これらを併用することにより、第一の保護層の硬度や機械的強度を高める効果が期待でき、さらには硬化性樹脂組成物の粘度や硬化速度などの調整がより一層容易に行えるようになる。
(その他の成分)
硬化性樹脂組成物は、必要に応じてさらに光増感剤を含有することができる。光増感剤を配合することにより、カチオン重合及び/又はラジカル重合の反応性が高まり、保護層の機械的強度や保護層と偏光子層との密着性を向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。
また、硬化性樹脂組成物には、高分子に通常使用されている公知の高分子添加剤を添加することもできる。高分子添加剤としては、例えば、フェノール系やアミン系のような一次酸化防止剤、イオウ系の二次酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系及びベンゾエート系のような紫外線吸収剤などが挙げられる。
上記の硬化性樹脂組成物には、シリカ微粒子を添加してもよい。シリカ微粒子を添加することにより、得られる保護層の硬度及び機械的強度をより向上させることができる。シリカ微粒子は、例えば有機溶剤に分散された液状物として硬化性樹脂組成物に配合することができる。
シリカ微粒子は、その表面に水酸基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの反応性官能基を有していてもよい。また、シリカ微粒子の粒径は、通常100nm以下、好ましくは5〜50nm程度である。微粒子の粒径が100nmを超えると、光学的に透明な保護層が得られない傾向にある。
有機溶剤に分散されたシリカ微粒子を用いる場合、そのシリカ濃度は、特に限定されるものではなく、市販品として入手可能な、例えば20〜40重量%程度のものを用いることができる。
さらに硬化性樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含んでもよい。溶剤は、硬化性樹脂組成物を構成する成分の溶解性を考慮して適宜選択される。一般的な溶剤の例を挙げると、n−ヘキサンやシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類;トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びn−ブタノールのようなアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ及びブチルセロソルブのようなセロソルブ類;塩化メチレンやクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類などがある。溶剤の配合割合は、成膜性などの加工上の目的による粘度調整などの観点から適宜決定される。
また、硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、レベリング剤を含有することができる。硬化性樹脂組成物を偏光フィルムや基材上へ塗布する際、偏光フィルムや基材上への濡れ性が乏しい場合や、硬化性樹脂組成物の硬化物の表面性が悪い場合、レベリング剤を添加することで、それらを改善し得る。レベリング剤としては、シリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル酸共重合物系、チタネート系などの種々の化合物を用いることができる。これらのレベリング剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
レベリング剤は、硬化性樹脂組成物に含有される活性エネルギー線硬化性化合物100重量部に対して0.01〜1重量部添加されることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.7重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部である。この添加量が0.01重量部未満であると、濡れ性や表面性の改善が十分でない傾向があり、またこの添加量が1重量部を超えると、偏光フィルムと保護層との密着性が低下する傾向がある。
このような活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物である第一の保護層は、そのガラス転移温度(Tg)が23℃以上であること好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。第一の保護層のガラス転移温度が23℃未満であると、偏光子層の光学性能の低下抑制が不十分となる傾向がある。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
第一の保護層の厚さは、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましく、1.5〜3μmがさらに好ましい。第一の保護層の厚さが0.1μm未満であると、耐久性及び光学性能の低下抑制が十分でなくなることがあり、一方で10μmを越えると、偏光板の薄型軽量化の効果が小さくなることがある。
第一の保護層は、水接触角が60°以上であることが好ましく、60°〜95°であることがより好ましく、60°〜80°であることがさらに好ましい。第一の保護層の水接触角が60°未満であると、光学性能の低下抑制が十分でなくなることがあり、一方で水接触角が95°を越えると、偏光子との密着性が不十分となる傾向がある。硬化性樹脂組成物を用い、第一の保護層を形成する方法については後述する。
[粘着剤層]
本発明では、第一の保護層の、偏光子層とは反対側の表面に粘着剤層が形成される。本発明の粘着剤付き偏光板は、かかる粘着剤層を介して、例えば液晶セルに貼合することができる。粘着剤層を形成する粘着剤(組成物)には、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとしたものを用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、光学的な透明性や接着性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、さらに耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれなどの剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基、エチル基及びブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した重量平均分子量が100000以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチルのような有機溶剤に上記したベースポリマーをはじめとする粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを透明樹脂フィルム上に移着することで粘着剤層を形成する方式などにより行うことができる。粘着剤には上記したベースポリマーのほか、架橋剤を配合するのが一般的である。液晶セルへの貼合を意図する場合は、シランカップリング剤を配合することも好ましい。粘着剤層の厚さは、その接着力などに応じて決定されるが、通常は1〜50μmの範囲である。
本発明では、イオン性化合物を含有する粘着剤組成物から粘着剤層を形成する。イオン性化合物は、カチオン成分(有機カチオン又は無機カチオン)と、アニオン成分(有機アニオン又は無機アニオン)とから構成される。以下、有機カチオンを有するイオン性化合物について、有機カチオンの構造毎に例示すると、次のようなものがある。
ピリジニウム塩:
1−ブチルピリジニウム テトラフルオロボレート、
1−ブチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−ブチル−3−メチルピリジニウム テトラフルオロボレート、
1−ブチル−3−メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホネート、
1−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
1−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−ヘキシルピリジニウム テトラフルオロボレート、
1−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−ヘキシル−4−メチル−ピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1−オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−ブチルピリジニウム N−(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、
1−ブチル−3−メチルピリジニウム N−(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミドなど。
イミダゾリウム塩:
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセテート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘプタフルオロブチレート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ペルフルオロブタンスルホネート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム p−トルエンスルホネート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアナミド、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム N−(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム メタンスルホネート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセテート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘプタフルオロブチレート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ペルフルオロブタンスルホネート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ブロマイド、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム クロライド、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート、
1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、
1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、
1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなど。
ピロリジニウム塩:
1−ブチル−1−メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
第四級アンモニウム塩:
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム p−トルエンスルホネート、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、
N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
ジアリルジメチルアンモニウム テトラフルオロボレート、
ジアリルジメチルアンモニウム トリフルオロメタンスルホネート、
ジアリルジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
ジアリルジメチルアンモニウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
ジアリルジメチルアンモニウム N−(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、
グリシジルトリメチルアンモニウム トリフルオロメタンスルホネート、
グリシジルトリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
グリシジルトリメチルアンモニウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
グリシジルトリメチルアンモニウム N−(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、
N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリメチルヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリエチルプロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリエチルペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリエチルヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、 トリオクチルメチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネートなど。
無機カチオンを有するイオン性化合物の例を挙げると、次のようなものがある。
リチウム ブロマイド、
リチウム ヨーダイド、
リチウム テトラフルオロボレート、
リチウム ヘキサフルオロホスフェート、
リチウム チオシアネート、
リチウム パークロレート、
リチウム トリフルオロメタンスルホネート、
リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
リチウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
リチウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、
カリウム ビス(フルオロスルホニル)イミドなど。
有機カチオン及び無機カチオンを有するイオン性化合物は、上に例示したとおりそれぞれ対イオン(アニオン)を有する。アニオンについては、上記のとおり有機アニオンでも無機アニオンでもよい。その具体例は、上に例示したイオン性化合物中に示されるものを挙げることができる。
これらのイオン性化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
イオン性化合物を構成するアニオン成分がヘキサフルオロホスフェートである場合に、特に偏光子層の性能低下が顕著となる傾向がある。本発明の粘着剤付き偏光板は、このようなイオン性化合物を含む粘着剤組成物を採用した場合においても、その第一の保護層によって、偏光子層の性能の低下を効果的に抑制することができる。
粘着剤には必要に応じ、ガラス繊維、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉等の無機粉末などからなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
[第二の保護層]
第二の保護層は、偏光子層において第一の保護層が積層される側とは反対側の面に積層される。第二の保護層としては、酢酸セルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂など、当分野において従来から保護層の形成材料として広く用いられている適宜の材料で構成された熱可塑性樹脂フィルムを特に制限なく用いることができる。また、第二の保護層は、上記した第一の保護層と同様に活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物で構成することもできる。量産性及び接着性の観点からは、上記のなかでも、酢酸セルロース系樹脂フィルム又はシクロオレフィン系樹脂フィルムを第二の保護層として用いることが好ましい。また、表面処理層を設けることの容易性及び光学特性の観点から、酢酸セルロース系樹脂フィルムを第二の保護層として用いることがさらに好ましい。
本発明における第二の保護層として好適に用いられ得る酢酸セルロース系樹脂フィルムは、セルロースの部分又は完全酢酸エステル化物からなるフィルムであって、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルムなどが挙げられる。
このような酢酸セルロース系樹脂フィルムとしては、適宜の市販品を用いることができる。好適な市販品としては、例えば、富士フィルム(株)から販売されている“フジタック(登録商標)TD80”、“フジタック(登録商標)TD80UF”、“フジタック(登録商標)TD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“KC8UX2M”、“KC8UY”(以上、いずれも商品名)などが挙げられる。
また、第二の保護層に好適に用いられ得るシクロオレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネン、多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する熱可塑性の樹脂である(熱可塑性シクロオレフィン系樹脂とも呼ばれる)。このシクロオレフィン系樹脂は、上記のシクロオレフィンの開環重合体、2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であってもよく、シクロオレフィンと鎖状オレフィン、ビニル基などを有する芳香族化合物などとの付加重合体であってもよい。また、極性基が導入されているものも有効である。
シクロオレフィンと鎖状オレフィン、ビニル基を有する芳香族化合物との共重合体を用いて第二の保護層を構成する場合、鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどが挙げられ、またビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレンなどが挙げられる。このような共重合体において、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットが50モル%以下(好ましくは15〜50モル%)であってもよい。特に、シクロオレフィンと鎖状オレフィンとビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体を用いて第二の保護層を構成する場合、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、上記のように比較的少ない量とすることができる。かかる三元共重合体において、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%である。
シクロオレフィン系樹脂は、適宜の市販品、例えば、“TOPAS(登録商標)”〔Topas Advanced Polymers GmbH社製〕、“アートン(登録商標)”〔JSR(株)製〕、“ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)”及び“ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)”〔以上、日本ゼオン(株)製〕、“アペル(登録商標)”〔三井化学(株)製〕(以上、いずれも商品名)などを好適に用いることができる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、例えば“エスシーナ(登録商標)”及び“SCA40”〔以上、積水化学工業(株)製〕、“ゼオノアフィルム(登録商標)”〔日本ゼオン(株)製〕などの予め製膜されたシクロオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を用いてもよい。
上記のシクロオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。この場合の延伸倍率は、通常、1.1〜5倍、好ましくは1.1〜3倍である。
ポリオレフィン系樹脂は、エチレンやプロピレンの如き鎖状オレフィンを主な単量体とする重合体であり、単独重合体や共重合体であることができる。なかでも、プロピレンの単独重合体やプロピレンに少量のエチレンが共重合されている共重合体が代表的である。
アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルを主な単量体とする重合体であり、メタクリル酸メチルの単独重合体のほか、メタクリル酸メチルと、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステルとの共重合体であってもよい。
ポリイミド系樹脂は、主鎖にイミド結合を持つ重合体であり、テトラカルボン酸2無水物とジアミンを重合させ、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)とした後、脱水・環化(イミド化)反応によって得られるものが代表的である。
ポリカーボネート系樹脂は、主鎖にカーボネート結合を持つ重合体であり、ビスフェノールAとホスゲンとの縮合重合によって得られるものが代表的である。
ポリエステル系樹脂は、二塩基酸と二価アルコールとの縮合重合によって得られる重合体であり、ポリエチレンテレフタレートが代表的である。
一方、第二の保護層を硬化性樹脂組成物の硬化物で形成する場合は、前記の第一の保護層を形成する硬化性樹脂組成物について説明したのと同様のものを用いることができる。第二の保護層を形成するための硬化性樹脂組成物と、第一の保護層を形成するための硬化性樹脂組成物は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
以上に説明した第二の保護層は、その厚さが薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向にあり、また、厚すぎると、透明性が低下したり、偏光板の重量が大きくなる傾向にある。このような観点から、本発明の偏光板における第二の保護層の厚さは、熱可塑性樹脂フィルムで構成する場合、通常5〜100μm、好ましくは10μm以上であり、また好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下である。一方、第二の保護層を硬化性樹脂組成物の硬化物で構成する場合、その厚さは10μm以下とすることができる。
また、第二の保護層は、偏光子層に貼着する面と反対側の面に、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理などの表面処理が施されたものであってもよい。第二の保護層の偏光子層に貼着する面と反対側の面に、液晶性化合物、その高分子量化合物などからなるコート層が形成されていてもよい。
[偏光子層と第二の保護層との接着]
第二の保護層として熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、偏光子層と第二の保護層とは、適宜の接着剤又は粘着剤を用いて貼合される。これらフィルムの貼合に際し、接着性を向上させるために、偏光フィルム及び/又は第二の保護層の貼合面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理、溶剤処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
偏光子層と第二の保護層との貼合に用いられる接着剤は特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物(活性エネルギー線硬化性接着剤)や、接着剤成分を水に溶解又は分散させた水系の接着剤(水系接着剤)が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性接着剤としては、前記した第一の保護層を形成する硬化性樹脂組成物と同様のものを用いることができる。第一の保護層の形成に用いる硬化性樹脂組成物と、偏光子層と第二の保護層との貼合に用いる活性エネルギー線硬化性接着剤は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、水系接着剤としては、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を用いた接着剤組成物が挙げられる。
水系接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン、ビニルエーテル、アンモニウム基を有するアクリルアミドなどが挙げられる。接着剤に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、適度の重合度を有していることが好ましく、例えば、4重量%濃度の水溶液としたときに、粘度が4〜50mPa・secの範囲内、さらには6〜30mPa・secの範囲内にあることがより好ましい。
また、変性されたポリビニルアルコール系樹脂も好ましく用いることができる。好適な変性ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコール系樹脂、アニオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂、カチオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。このような変性されたポリビニルアルコール系樹脂を用いれば、接着剤層の耐水性を向上させる効果が得られやすい。
本発明に用いられる水系接着剤はもちろん、上記した変性ポリビニルアルコール系樹脂を2種以上含むものであってもよく、また、未変性のポリビニルアルコール系樹脂(具体的には、ポリ酢酸ビニルの完全又は部分ケン化物)及び上記した変性ポリビニルアルコール系樹脂の両方を含むものであってもよい。
水系接着剤を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、市販品の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、(株)クラレから販売されている“PVA−117H”、“KL−318、“KM−118”及び“CM−318”、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセノール(登録商標) NH−20”、“ゴーセファイマーZ”シリーズ、“ゴーセファイマー(登録商標) K−210”及び“ゴーセナール(登録商標) T−330”(以上、いずれも商品名)などを挙げることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、架橋剤を含有させることができる。架橋剤となりうる化合物を官能基別に掲げると、イソシアナト基(−NCO)を分子内に少なくとも2個有するイソシアネート化合物;エポキシ基(橋かけの−O−)を分子内に少なくとも2個有するエポキシ化合物;モノ−又はジ−アルデヒド;有機チタン化合物;マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛及びアルミニウムの如き二価又は三価金属の無機塩;グリオキシル酸の金属塩;メチロールメラミンなどがある。
これらの架橋剤のなかでも、上述した水溶性のポリアミドエポキシ樹脂をはじめとするエポキシ化合物や、アルデヒド類、メチロールメラミン、グリオキシル酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩などが好適に用いられる。
架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂とともに水に溶解して接着剤を形成していることが好ましい。ただ、以下に述べるとおり、水溶液中での架橋剤量はわずかでよいので、水に対して例えば、少なくとも0.1重量%程度の溶解度を有するものであれば、架橋剤として使用できる。もちろん、一般に水溶性と呼ばれる程度の水に対する溶解度を有する化合物のほうが、本発明に用いる架橋剤としては好適である。
架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の種類などに応じて適宜設計されるものであるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常5〜60重量部程度、好ましくは10〜50重量部である。この範囲で架橋剤を配合すると、良好な接着性が得られる。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤が早期にゲル化する傾向にあり、その結果、ポットライフが極端に短くなって工業的な使用が困難になる。
水系接着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、帯電防止剤、微粒子など、従来公知の適宜の添加剤を配合することもできる。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系接着剤に好適に用いられる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を偏光子層と保護層の接着剤に用いることは、例えば、特開2005−070140号公報、特許第4432487号公報及び特開2005−208456号公報に記載されている。
乾燥又は硬化後に得られる接着剤層の厚さは、通常0.01〜5μm程度であるが、水系接着剤を用いた場合は1μm以下とすることができる。一方、活性エネルギー線硬化性接着剤を用いた場合でも、2μm以下とするのが好ましく、1μm以下とするのがより好ましい。接着剤層が薄すぎると、接着が不十分になるおそれがあり、一方で接着剤層が厚すぎると、偏光板の外観不良を生じる可能性がある。
偏光子層と第二の保護層の貼合は、前記した粘着剤層を介して行うこともできる。この場合、粘着剤組成物中に前記したイオン性化合物が含有されないことが好ましい。
[粘着剤付き偏光板の製造方法]
本発明の偏光板は、次の工程(i)〜(iii)を経て製造することができる。なお、工程(i)及び(ii)の順序は、特に制限されるものではなく、工程(ii)を先に行ってもよいし、これらの工程を同時に行なってもよい。なお、偏光子層に第二の保護層を積層しない場合は、工程(ii)は不要である。
(i)偏光子層の片面に、第一の保護層を積層する工程、
(ii)偏光子層の他方の面に、第二の保護層を積層する工程、
(iii)第一の保護層の偏光子層と反対側の面に、粘着剤層を積層する工程。
上記の工程(i)では、塗布層形成工程、塗布層貼合工程、硬化工程及び基材除去工程を経て、偏光子層の片面に第一の保護層を積層することができる。
塗布層形成工程では、基材上に第一の保護層を形成する活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥を行ない、基材表面に硬化性樹脂組成物の塗布層を設ける。ここで、基材としては、前記した基材のほか、例えば、金属ベルト、ガラス板なども使用しうる。また基材の硬化性樹脂組成物が塗工される表面は、例えば、剥離処理が施されていてもよい。
塗布層貼合工程では、上記の塗布層形成工程で基材上に形成された塗布層と偏光子層とを貼合し、偏光子層/塗布層/基材の順に積層された積層体を作製する。なお、上記の工程において、工程(ii)を工程(i)より前に行なう場合、この積層体は、偏光子層の塗布層とは反対側の面に第二の保護層を有している。
硬化工程では、この積層体に対し、例えば基材側から、可視光線、紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線を照射するか又は加熱することにより、硬化性樹脂組成物からなる塗布層を硬化させて第一の保護層を形成する。続く基材除去工程では、第一の保護層上の基材の除去を行う。
また、工程(i)を行う別の方法として、第一の保護層を形成する硬化性樹脂組成物を偏光子層に直接塗工し、活性エネルギー線を照射する又は加熱することにより、硬化性樹脂組成物からなる塗布層を硬化させ、第一の保護層を形成する方法も挙げられる。この方法によれば、基材を使用しなくとも第一の保護層を形成することができる。
上記の工程(ii)は、偏光子層に第二の保護層を積層する場合に行われる。第二の保護層として熱可塑性樹脂フィルムを採用する場合、第二の保護層は、接着剤層を介して積層される。第二の保護層の積層は、次のとおり行われる。まず、第二の保護層の貼合面に接着剤組成物を塗工し、必要に応じてこれを乾燥する。次いで、この接着剤組成物を介して偏光子層と第二の保護層とを貼合し、偏光子層/接着剤組成物/第二の保護層の順に積層された積層体を作製した後、これを乾燥させるか、又はこの積層体に対して可視光線、紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線を照射又は加熱することにより接着剤組成物を硬化させ、偏光子層と第二の保護層とを貼合する。このとき、必要に応じて乾燥させる工程を設けてもよい。なお、上記の工程(i)を工程(ii)より前に行なう場合、この積層体は、偏光子層の塗布層とは反対側の面に第一の保護層を有している。偏光子層と第二の保護層との貼合に活性エネルギー線硬化性接着剤を用いると、乾燥工程を設ける必要がないため、製造効率の向上を図ることができる。
また、上記とは別の方法として、接着剤組成物を偏光子層の貼合面に直接塗工し、これを介して第二の保護層を積層させた後、乾燥させるか、又は、活性エネルギー線を照射又は加熱することによって接着剤を硬化させ、偏光子層と第二の保護層を貼合させる方法を挙げることができる。この方法においても、必要に応じて乾燥させる工程を設けることができる。
工程(ii)において、第二の保護層として活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物を採用する場合、上記した工程(i)と同様の方法により行うことができる。
上記の第一の保護層と第二の保護層とは、同時に形成することができる。第二の保護層が熱可塑性樹脂フィルムである場合は、上記の工程(i)及び(ii)を経て得られる積層体(第二の保護層/接着剤組成物/偏光子層/第一の保護層を形成する硬化性樹脂組成物の塗布層/基材)に対し、例えば、基材側から活性エネルギー線を照射又は加熱することにより、接着剤組成物及び塗布層を同時に硬化させることができる。
第二の保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物である場合は、上記の工程(i)及び(ii)を経て得られる積層体(基材/第二の保護層を形成する硬化性樹脂組成物の塗布層/偏光子層/第一の保護層を形成する硬化性樹脂組成物の塗布層/基材)に対し、どちらか一方又は両方の基材側から活性エネルギー線を照射又は加熱することにより、塗布層を同時に硬化させることができる。かかる方法によれば、硬化工程が1回で済むため、製造効率のさらなる向上を図ることができる。
本発明において、第一又は第二の保護層を形成する活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物、及び偏光子層と第二の保護層とを貼合する接着剤組成物の塗工方法には特別な限定はなく、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。
また、上記の塗工方法とは別の方法としては、偏光子層と基材との間、又は偏光子層と第二の保護層との間に、上記した硬化性樹脂組成物又は接着剤組成物をそれぞれ滴下した後、ロールなどで加圧して均一に押し広げる方法もある。この方法において、ロールの材質としては、金属やゴムなどを用いることが可能である。ロールとして、一対のロールを用いる場合(積層体はロール間を通過する場合)、これらロールは同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
第一又は第二の保護層を形成する硬化性樹脂組成物及び/又は上記の接着剤組成物の硬化を活性エネルギー線の照射により行う場合、利用される光源は、特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有するものを用いることができる。具体例としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを挙げることができる。
活性エネルギー線の光照射強度は、照射する組成物ごとに異なり得るが、光ラジカル重合開始剤及び/又は光カチオン重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が10〜2500mW/cm2であることが好ましい。光照射強度が10mW/cm2未満であると、反応時間が長くなりすぎ、また2500mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱及び硬化性樹脂組成物や接着剤組成物の重合時の発熱により、硬化性樹脂組成物や接着剤組成物の黄変や偏光子層の劣化を生じる可能性がある。
硬化性樹脂組成物や接着剤組成物への光照射時間は、照射する組成物ごとに制御されるものであって、やはり特に限定されないが、照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜2500mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。この積算光量が10mJ/cm2未満であると、重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる保護層や接着剤層の硬化が不十分となる可能性がある。また、積算光量が2500mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。なお、活性エネルギー線の照射は、偏光子層の偏光度及び透過率等の各種性能が低下しない範囲で行なわれることが好ましい。
上記の工程(iii)では、第一の保護層の偏光子層と反対側の面に、粘着剤層を積層して粘着剤付き偏光板を得ることができる。粘着剤層の積層は、例えば、剥離フィルムを用いる方法、第一の保護層上に粘着剤組成物塗布する方法などにより行うことができる。剥離フィルムを用いる方法は、例えば、離型処理が施された剥離フィルムの離型処理面に、前記した粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層に偏光板の第一の保護層を積層させることにより行うことができる。また、第一の保護層上に粘着剤組成物塗布する方法は、例えば、偏光板の第一の保護層の貼合面に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成させることにより行うことができる。この方法では、得られた粘着剤層に剥離フィルムを積層して粘着剤層面を保護しておくことが好ましい。
本発明の粘着剤付き偏光板は、液晶セルなどに適用して液晶表示装置を構成することができるが、その使用時まで粘着剤層側に上記の剥離フィルムを積層し、保護しておくことが好ましい。ここで使用する剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレートなどの各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材フィルムの粘着剤層との貼合面に、シリコーン処理の如き離型処理が施されたものなどであることができる。また、2枚の剥離フィルムで粘着剤層を挟んでおき、必要に応じてどちらか片方の剥離フィルムを剥離し、偏光板に貼着してもよい。
[液晶表示装置]
本発明の粘着剤付き偏光板は、ガラス基板に適用することができる。好適な適用形態の一つとしては、例えば、粘着剤層を介してガラス基板に積層する形態を挙げることができる。粘着剤付き偏光板をガラス基板に積層するには、例えば、上記した粘着剤付き偏光板から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層面をガラス基板の表面に貼り合わせればよい。ガラス基扱としては、例えば、液晶セルを構成するガラス基板、防眩用ガラス、サングラス用ガラスなどを挙げることができる。なかでも、液晶セルの前面側(視認側)のガラス基板に粘着剤付き偏光板を積層し、液晶セルの背面側のガラス基板にもう一つの粘着剤付き偏光板を積層してなる光学積層体は、液晶表示装置のためのパネル(液晶パネル)として使用できることから好ましい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどがあるが、液晶セルには無アルカリガラスが好適に用いられる。
本発明の粘着剤付き偏光板は、液晶セルの片側又は両側に配置することができる。液晶セルの両側に設ける偏光板は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、液晶セルの片側に本発明の粘着剤付き偏光板を配置し、液晶セルの反対側には異なる偏光板を配置することもできる。
まず、硬化性樹脂組成物を調製した例を示す。硬化性樹脂組成物の調製には、次の化合物を用いた。
〈活性エネルギー線硬化性化合物〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P”:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学(株)から入手。
“OXT−221”:ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、東亞合成(株)から入手。
“OXT−212”:2−エチルヘキシルオキセタン、東亞合成(株)から入手。
“A−DCP”:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学(株)から入手。
“DMAA”:N,N−ジメチルアクリルアミド、興人(株)から入手。
“4HBA”:4−ヒドロキシブチルアクリレート、日本化成(株)から入手。
“UV−3700B”:2官能ウレタンアクリレート、日本合成化学工業(株)から入手。
“CHDMMA”:1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、日本化成(株)から入手。
“OXT−101”:3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、東亞合成(株)から入手。
〈光カチオン重合開始剤〉
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150”:4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤、プロピレンカーボネート溶液の形で(株)ADEKAから入手。
〈光ラジカル重合開始剤〉
“イルガキュア(登録商標) 907”:2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、BASFジャパン(株)から入手。
“ダロキュア(登録商標) 1173”:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、BASFジャパン(株)から入手。
〈その他の成分〉
“SH710”:シリコーン系レベリング剤、東レ・ダウコーニング(株)から入手。
[製造例1]硬化性樹脂組成物A〜Vの調製
以下の各成分を混合して、硬化性樹脂組成物A〜Vをそれぞれ調製した。光カチオン重合開始剤“アデカオプトマー SP−150”は、プロピレンカーボネート溶液のものを使用しているが、以下ではその有効成分量で表示している。
〈硬化性樹脂組成物A〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P” 100部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物B〉
“OXT−221” 100部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物C〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P” 70部
“OXT−221” 30部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物D〉
“DMAA” 15部
“4HBA” 40部
“UV−3700B” 10部
“CHDMMA” 35部
“イルガキュア(登録商標) 907” 3部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物E〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P” 35部
“OXT−221” 15部
“A−DCP” 50部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 1.13部
“ダロキュア(登録商標) 1173” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物F〉
“A−DCP” 100部
“ダロキュア(登録商標) 1173” 4.5部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物G〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P” 80部
“A−DCP” 20部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 1.8部
“ダロキュア(登録商標) 1173” 0.9部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物H〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P” 60部
“A−DCP” 40部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 1.35部
“ダロキュア 1173” 1.8部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物I〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P” 40部
“A−DCP” 60部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 0.9部
“ダロキュア 1173” 2.7部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物J〉
“OXT−221” 65部
“OXT−212” 35部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物K〉
“OXT−221” 80部
“OXT−212” 20部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物L〉
“OXT−221” 95部
“OXT−212” 5部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物M〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 60部
“OXT−221” 40部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物N〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 40部
“OXT−221” 60部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物O〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 20部
“OXT−221” 80部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物P〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 60部
“OXT−212” 40部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物Q〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 40部
“OXT−212” 60部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物R〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 20部
“OXT−212” 80部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物S〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 80部
“OXT−101” 20部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物T〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 60部
“OXT−101” 40部
”アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物U〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 40部
“OXT−101” 60部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈硬化性樹脂組成物V〉
“セロキサイド(登録商標) 2021P 20部
“OXT−101” 80部
“アデカオプトマー(登録商標) SP−150” 2.25部
“SH710” 0.2部
[製造例2]偏光子層(偏光フィルム)の作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/10/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/7.5/100の水溶液に68℃で300秒間浸漬した。引き続き、10℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムを作製した。偏光フィルムの厚さは11μmであった。
次に、接着剤を調製した例を示す。ポリビニルアルコール及びエポキシ架橋剤には、次の化合物を用いた。
〈ポリビニルアルコール〉
“クラレポバール(登録商標) KL318”:カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、(株)クラレから入手。
〈エポキシ系架橋剤〉
“スミレーズレジン(登録商標) 650”:水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(固形分濃度30%の水溶液)、住化ケムテックス(株)から入手。
[製造例3]水系接着剤の調製
以下の各成分を混合して、水系接着剤を調製した。エポキシ系架橋剤“スミレーズレジン 650”は水溶液のものを使用しているが、以下ではその有効成分量で表示している。
〈水系接着剤〉
“純水” 100部
“クラレポバール(登録商標) KL318” 1.8部
“スミレーズレジン(登録商標) 650” 0.9部
[製造例4]偏光板Aの作製
製造例2で作製した偏光子層の片面に、製造例3で調製した水系接着剤を塗布し、ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースからなる保護層〔コニカミノルタオプト(株)製、KC2UA、厚さ25μm、第二の保護層と呼ぶ〕を貼合した。これを60℃で6分乾燥し、片面に第二の保護層を有する偏光板Aを作製した。
[実施例1]
(1)偏光板の作製
製造例1で調製した硬化性樹脂組成物Aを、厚さ50μmのシクロオレフィン系樹脂フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR(登録商標)”〕の片面に、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が約1μmとなるように塗工した。その塗工面に、製造例4で作製した偏光板Aの偏光子層側に貼合し、積層体を作製した。この積層体のシクロオレフィン系樹脂フィルム側からベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”使用〕を用いて積算光量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物を硬化させ、その後積層体からシクロオレフィン系樹脂フィルムを剥離した。こうして、第一の保護層(硬化性樹脂組成物の硬化物)/偏光子層/接着剤層/第二の保護層からなる偏光板を作製した。
次に、(1)で作製した偏光板の第一の保護層側に、イオン性化合物が配合され、帯電防止機能が付与されているアクリル系粘着剤の層を設けた。粘着剤に配合するイソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤及び帯電防止剤として以下のものを用いた。
〈イソシアネート系架橋剤〉
コロネート(登録商標)L:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、日本ポリウレタン(株)から入手。
〈シランカップリング剤〉
KBM−403 :3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、液体、信越化学工業(株)から入手。
〈帯電防止剤〉
1−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロフォスフェート、下式で示される化合物。
ブチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸及びヒドロキシエチルアクリレートの共重合体に、イソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤及び帯電防止剤を添加したアクリル系粘着剤の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム〔商品名“SP−PLR382050”、リンテック(株)から入手、剥離フィルムと呼ぶ〕の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚さが20μmとなるように塗工し、剥離フィルム付きシート状粘着剤を作製した。次いで、上記(1)で作製した偏光板の第一の保護層面に、上で得たシート状粘着剤の剥離フィルムと反対側の面(粘着剤面)をラミネーターにより貼り合わせたのち、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤層を設けた偏光板を得た。
[実施例2〜7]
実施例1において、表1に記載の硬化性樹脂組成物、第一の保護層の厚さに変更したこと以外は、実施例1と同様に偏光板を作製した。
[実施例8]
製造例1で調製した硬化性樹脂組成物Fを、製造例4で作製した偏光板Aの偏光子層側に、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が約2μmとなるように塗工した。この積層体の硬化性樹脂組成物側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”使用〕を用いて、窒素雰囲気化、積算光量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物を硬化させた。こうして、第一の保護層/偏光子層/接着剤層/第二の保護層からなる偏光板を作製した。それ以外は、実施例1と同様の方法で耐久性評価を実施し、結果を表1にまとめた。
[実施例9〜24]
実施例2において、表1に記載の硬化性樹脂組成物に変更したこと以外は、実施例2と同様に偏光板を作製した。
[比較例1]
第一の保護層を積層しなかったこと以外、すなわち偏光子層に直接粘着剤を積層したこと以外は、実施例1と同様に偏光板を作製した。
〈偏光板の光学耐久性の評価〉
上記(2)で作製した粘着剤層を設けた偏光板を30mm×30mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥離し、その粘着剤層側で無アルカリガラス〔コーニング社製の商品名“EAGLE XG(登録商標)”〕に貼合した。このサンプルに、温度50℃、圧力5kgf/cm2(490.3kPa)で1時間オートクレーブ処理を施した後、温度23℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置した。このサンプルについて、紫外可視分光光度計〔(株)島津製作所の製品名“UV2450”〕にオプションアクセサリーの「偏光フィルム付フィルムホルダー」をセットして、波長380〜700nmの範囲における偏光板の透過軸方向と吸収軸方向の透過スペクトルを測定し、それらをもとに、偏光度Py(単位:%)を求めた。この状態の光学性能を初期Pyとし、60℃で相対湿度90%の環境下に100時間静置した後の光学性能(試験後Py)を測定し、下式より偏光度変化ΔPyを算出し、結果を表1の「ΔPy」の欄に示した。60℃で相対湿度90%の環境下に、さらに150時間静置した後(合計250時間静置)の光学性能を測定し、偏光度変化ΔPyを算出して、その結果を同様に表1の「ΔPy」の欄に示した。
ΔPy=初期Py−試験後Py
〈第一の保護層のガラス転移温度(Tg)の測定〉
実施例1で用いたのと同じ厚さ50μmのシクロオレフィン系樹脂フィルムを2枚用意した。そして、一方のフィルム表面にバーコーターを用い、製造例1で調製した硬化性樹脂組成物A〜Vを、硬化後の膜厚がそれぞれ2μmとなるように塗工し、その塗工面にもう1枚のフィルムを重ね、実施例1に準じて一方の面から積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物を硬化させた。次に、その硬化物を挟んでいるフィルムを剥がし、その硬化物を5mgかき集めて、アルミニウム押え蓋型容器に入れ、押さえつけて密閉し、測定用試料を作製した。
エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)から販売されている示差走査熱量計(DSC)“EXSTAR−6000 DSC6220”を用い、そこに上の測定用試料が入った容器をセットし、窒素ガスをパージしながら、20℃から−60℃まで降温し、−60℃に達してから1分間保持した後、−60℃から200℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、200℃に達したら直ちに20℃まで降温した。そして、−60℃から200℃まで昇温するときのDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に規定される中間点ガラス転移温度を求め、これを第一の保護層(硬化物)のガラス転移温度とした。結果は、表1の「Tg」の欄に示した。
〈第一の保護層の水接触角の測定〉
実施例1で用いたのと同じ厚さ50μmのシクロオレフィン系樹脂フィルムを2枚用意した。そして、一方のフィルム表面にバーコーターを用い、製造例1で調製した硬化性樹脂組成物A〜Vを、硬化後の膜厚がそれぞれ2μmとなるように塗工し、その塗工面にもう1枚のフィルムを重ね、実施例1に準じて一方の面から積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物を硬化させた。次に、その硬化物を挟んでいるフィルムを剥がし、全自動接触角測定装置〔データフィジックス社製の製品名”OCA35”〕を用いて、硬化物に対して、水を8μL滴下し、180秒間静置した後の水の接触角を測定した。結果は、表1の「水接触角」の欄に示した。
Claims (10)
- 偏光子層と、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物である第一の保護層と、イオン性化合物を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層とが、この順で積層され、
前記粘着剤層は、前記第一の保護層の、前記偏光子層とは反対側の表面に形成される層であり、
前記第一の保護層は、その厚さが0.1〜5μmであり、
前記第一の保護層は、水接触角が60°以上である粘着剤付き偏光板。 - 前記偏光子層は、前記第一の保護層と反対側の表面に第二の保護層を備える請求項1に記載の粘着剤付き偏光板。
- 前記第二の保護層は、熱可塑性樹脂から形成される透明樹脂フィルムである請求項2に記載の粘着剤付き偏光板。
- 前記活性エネルギー線硬化性化合物は、カチオン重合性化合物を含む請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤付き偏光板。
- 前記カチオン重合性化合物は、少なくとも1個のオキシラン環を有する化合物を含む請求項4に記載の粘着剤付き偏光板。
- 前記活性エネルギー線硬化性化合物は、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系化合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤付き偏光板。
- 前記第一の保護層は、そのガラス転移温度が23℃以上である請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤付き偏光板。
- 前記粘着剤層に剥離フィルムが積層されている請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤付き偏光板。
- 液晶セルと請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤付き偏光板とを備える液晶表示装置。
- 前記粘着剤付き偏光板が、その粘着剤層側で前記液晶セルに貼合されている請求項9に記載の液晶表示装置。
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