JP6438689B2 - ホウ素供給用組成物 - Google Patents

ホウ素供給用組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP6438689B2
JP6438689B2 JP2014131027A JP2014131027A JP6438689B2 JP 6438689 B2 JP6438689 B2 JP 6438689B2 JP 2014131027 A JP2014131027 A JP 2014131027A JP 2014131027 A JP2014131027 A JP 2014131027A JP 6438689 B2 JP6438689 B2 JP 6438689B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
boron
composition
deficiency
improvement
agent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014131027A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016008162A (ja
Inventor
洋 副島
洋 副島
慶多 広瀬
慶多 広瀬
文夫 大沼
文夫 大沼
英史 篠田
英史 篠田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Snow Brand Seed Co Ltd
Original Assignee
Snow Brand Seed Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Snow Brand Seed Co Ltd filed Critical Snow Brand Seed Co Ltd
Priority to JP2014131027A priority Critical patent/JP6438689B2/ja
Publication of JP2016008162A publication Critical patent/JP2016008162A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6438689B2 publication Critical patent/JP6438689B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Fertilizers (AREA)

Description

本発明は、植物の必須元素であるホウ素を植物に供給するための組成物に関する。
ホウ素(元素記号:B)は、植物や動物に必須の微量元素の一つである。農作物にあってホウ素が欠乏すると細胞伸長が阻害され、先端部の萎縮や果実の亀裂などの症状が現れる。これは、ホウ素が細胞壁の構成成分であるラムノガラクチュロナンII分子を共有結合させるために必須であり、このためホウ素が不足すると細胞壁の正常な生育が妨げられてこのような症状が発症する(非特許文献1)。特にダイコンの黒芯症、カブの内部障害、ブロッコリーの花蕾生育障害などは代表的なホウ素欠乏症である(非特許文献2)。これらのホウ素欠乏症は農業生産上の大きな問題になっている。ホウ素欠乏症は、土壌中のホウ素濃度の低下のほか、土壌中の窒素、カリ、石灰の過剰、土壌の乾燥によっても発生する。
また、ホウ素欠乏による細胞壁の結合阻害とカルシウム不足によるペクチン質結合阻害は、症状が類似しており、カルシウム不足と診断されるキャベツやレタスのチップバーン症(縁腐れ病)、ハクサイの内部障害、トマトの尻腐れ病なども、ホウ素欠乏が原因の一つである。土壌中に十分なカルシウムが含まれている場合にはホウ素欠乏が原因である可能性が高い。特にカルシウムの葉面散布によっても症状が改善しない場合はホウ素欠乏が原因であるといわれる。
ホウ素欠乏症の改善のため、ホウ素入りの肥料も開発されているが、ホウ素は土壌内の遊離水中ではホウ酸イオン(陰イオン)として存在するため、土壌には保持されにくく、その効果は限定的であった。また、ホウ素入りの葉面散布用組成物も開発されているが、ホウ素は植物体内において転流しにくいため、ダイコン黒芯症、カブの内部障害、キャベツやレタスのチップバーンといった作物体内に発生する生理障害に対しては効果が限定的であった。
多くの植物は葉で光合成によって得られた炭水化物をショ糖の形で転流するが、木本類の中でネクタリン、リンゴ、クルミといった植物は炭水化物をソルビトールとして転流することが知られていた。また、これらの植物はホウ素欠乏症状がほとんど現れず、ホウ素が効率よく転流されていることも明らかにされてきた。そこで、遺伝子組み換えによってソルビトールを合成できるようにしたタバコを作出したところ、分裂組織へのホウ素の転流が著しく促進されることが明らかにされ(非特許文献3)、ホウ素はソルビトールなどの糖アルコールと植物体内で結合することにより転流が促進されることも判明し(非特許文献4)、現在はホウ素欠乏症に対する種々の対策が提案されつつあるところである。
ホウ素は通常肥料中に微量元素群として配合されており、肥料を用いることで土壌や野菜に補給されている。特許文献1(特開2013−43800号公報)にはアミノ酸を含む液体肥料に窒素、リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄、モリブデン、ホウ素、亜鉛から選ばれた1種又は2種以上を配合することが記載されている。特許文献2(特開2007−153654号公報)には芝の葉やけ防止用肥料に酸化マグネシウム、珪酸、マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、コバルトから選ばれた1種又は2種以上を配合することが記載されている。特許文献3(特開2005−229865号公報)には土壌改良剤とホウ素などのミネラルを含む液状の農園芸用組成物が記載されている。
ホウ素の水溶解度は土壌pHで大きく変化する。酸性土壌ではホウ素は水に溶けやすい。この時に降雨や潅水が多すぎると土から流失してしまい、欠乏症の原因となる場合がある。反対にアルカリ土壌では不溶性となり、これも欠乏症の原因となる。また、土壌が乾燥しすぎても発生しやすい。このため、肥料によるホウ素供給の配合が過剰になりがちである。
しかしホウ素は過剰に供給するとホウ素過剰症が発症する。土壌中にホウ素が1ppm以上存在するとホウ素過剰症が発症するといわれている。ホウ素過剰症は葉脈間が黄化し、更に症状が進むと葉縁部が黄褐変化して壊死する症状がみられる。このような過剰症を発生させないためには、必要とするホウ素を効率よく吸収させることが必要である。しかし肥料中に配合されるホウ素は、ホウ酸、ホウ酸塩であり、上記のように配合量が少なければ土壌から流出し、欠乏症を発生させやすいし、配合量が多すぎれば過剰症を引き起こすため、常に適正な濃度を維持することが難しかった。
また一般に、ホウ素欠乏に対する耐性は作物により異なるが、ハクサイを含むアブラナ科野菜は欠乏症になりやすい作物として知られている。ハクサイであれば作物体中に10ppm以下では欠乏症の心配があり、きめ細かな土壌診断が必要とされていた。ホウ素欠乏症は、生長点の枯死や新葉の黄化、壊死、組織のコルク化などさまざまな症状を引き起こす。
特開2013−43800号公報 特開2007−153654号公報 特開2005−229865号公報
O'Neill et al. 2001.Requirement of borate cross-linking of cell wall rhamnogalacturonan II for Arabidopsis growth. Science 294:846-849. 農林水産省農蚕園芸局農産課監修.作物栄養診断カードI.全国農村教育協会. Bellaloui N et al. 1999. Manipulation of in vivo sorbitol production alters boron uptake and transport in tobacco. Plant Physiol. 119: 735-742. Hu et al. 1997. Isolation and characterization of soluble boron complexes in higher plants. Plant Physiol. 113: 649-655.
本発明の課題は、植物、特に野菜へのホウ素供給に有用な組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、糖アルコールと、ホウ酸又はホウ酸塩を併用することで、効率よく植物にホウ素を供給することができ、ホウ素欠乏症の発症を改善又は予防することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
1. 100重量部あたりソルビトールを0.01〜5重量部、ホウ酸を0.005〜0.25重量部を含有する生育期の野菜へのホウ素供給用組成物であって、ダイコンの黒芯症、カブの内部障害、ブロッコリーの花蕾生育障害、キャベツ及びレタスのチップバーン症(縁腐れ病)、ハクサイの内部障害、トマトの尻腐れ病の改善又は予防剤
2. さらにカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を含む1に記載の改善又は予防剤
3. さらにマンガン塩を含むに記載の改善又は予防剤
4. 葉面散布用である1〜のいずれかに記載の改善又は予防剤
5. 液剤の形態である1〜のいずれかに記載の改善又は予防剤
本発明により、植物へのホウ素供給用組成物が提供される。本発明の組成物は、植物へのホウ素吸収効率が高いため、最小限の用量で植物体が要求するホウ素量を供給でき、速やかに植物体のホウ素欠乏症を改善又は予防が可能となる。また投与量が必要最小限ですむため、ホウ素過剰症を発症させない。
圃場におけるキャベツに発生したホウ素欠乏症の改善効果を確認した画像である。左2列が本発明の組成物を投与したキャベツの切断画像、右側2列が非投与キャベツの切断画像である。右側対非投与キャベツには→で示す箇所に顕著なチップバーン症状が出現している。
本発明は、植物のホウ素欠乏症の予防又は改善のための、糖アルコールと、ホウ酸又はホウ酸塩を含有する植物へのホウ素供給用組成物に係る。
本発明に用いることが可能な糖アルコールとしては、エリスリトール、イノシトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールが例示できる。好ましくはソルビトール、イノシトール、マンニトール、キシリトールであり、さらに好ましくはソルビトール又はマンニトールなどのヘキシトール類であり、特に好ましくはソルビトールである。ソルビトールは植物組織内のホウ素の移動の際にホウ素と結合しキャリアーとして作用すると推測されている。
本発明の組成物におけるホウ素源としては、水溶性ホウ素化合物が好ましく、より具体的には例えばホウ酸またはその塩(例えば、ホウ酸ナトリウム等)などが挙げられる。ホウ素の含有量は、組成物全体に対して約0.001〜0.2質量%が好ましく、約0.005〜0.05質量%であることがより好ましく、約0.01〜0.02質量%であることがさらに好ましい。0.02質量%以上にするとホウ素過剰症の危険が出てくるので好ましくない。
ホウ素に併用する糖アルコールは、ホウ素に対して質量比で、ホウ酸又はホウ酸塩の1〜100重量部、好ましくは10〜20重量部である。
本発明の組成物は、水溶液とすることが好ましい。水溶液中にホウ酸又はホウ酸塩を約0.005〜0.25質量%濃度になるように配合する。さらに糖アルコールを0.01〜5重量%配合し、最終的に糖アルコールと、ホウ酸又はホウ酸塩が1/2〜20/1の重量比で含まれるように糖アルコールと、ホウ酸又はホウ酸塩の比率及び水の添加量を調整する。
本発明の組成物は、上記の水溶液をそのままホウ素欠乏症が発生した植物に直接葉面散布するか土壌に散布することができる。水和剤、乳剤、粒剤、粉剤、界面活性剤など、通常の肥料や農薬で用いられる担体を用いて製剤化してもよい。例えば、固体担体としては鉱物質粉末(カオリン、ベントナイト、クレー、モンモリロナイト、タルク、ケイソウ土、雲母、バーミキュライト、セッコウ、炭酸カルシウム、リン石灰など)、植物質粉末(大豆粉、小麦粉、木粉、タバコ粉、デンプン、結晶セルロースなど)、高分子化合物(石油樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル酢酸樹脂、ポリ塩化ビニル、ケトン樹脂など)、更に、アルミナ、ワックス類などを使用することができる。また、液体担体としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ベンジルアルコールなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、塩素化炭化水素類(クロロホルム、四塩化炭素、モノクロルベンゼンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、酸アミド類(N,N−ジメチルアセトアミドなど)、エーテルアルコール類(エチレングリコールエチルエーテルなど)、又は水などを使用することができる。
乳化、分散、拡散などの目的で使用される界面活性剤としては、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性及び両イオン性のいずれも使用することができる。本発明において使用することができる界面活性剤の例を挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンポリマー、オキシプロピレンポリマー、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、第四級アンモニウム塩、オキシアルキルアミン、レシチン、サポニン等である。また、必要に応じてゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、デンプン、寒天、ポリビニルアルコールなどを補助剤として用いることができる。
本発明の組成物にあっては、製剤の形状も制限はなく、粉剤、顆粒剤、粒剤、水和剤、フロアブル剤、乳剤及びペースト剤等のあらゆる製剤形態に成形することができる。その他の成分を常法に従い、混合、撹拌、噴霧乾燥等することにより製造することができる。
本発明の組成物の適用対象となる植物としては、特に限定されないが、ホウ素欠乏症が発生することが確認されている野菜類、例えば、トマト、ピーマン、トウガラシ、ナス等のナス類、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ等のウリ類、セルリー、パセリー、レタス等の生菜・香辛菜類、ダイズ、ラッカセイ、インゲン、エンドウ、アズキ等の豆類、イチゴ等のその他果菜類、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ等の直根類、サトイモ、キャッサバ、バレイショ、サツマイモ、ナガイモ等の芋類、アスパラガス、ホウレンソウ、ミツバ等の柔菜類、トルコギキョウ、ストック、カーネーション、キク等の花卉類、イネ、トウモロコシ等の穀物類、ベントグラス、コウライシバ等の芝類、ナタネ、ヒマワリ等の油料作物類、サトウキビ、テンサイ等の糖料作物類、ワタ、イグサ等の繊維料作物類、クローバー、ソルガム、デントコーン等の飼料作物類、リンゴ、ナシ、ブドウ、モモ等の落葉性果樹類、ウンシュウミカン、レモン、グレープフルーツ等の柑橘類が挙げられる。
ホウ素欠乏症が観測されている症状としては、黒芯症(ダイコン)、内部障害(カブ、ハクサイ)、花蕾生育障害(ブロッコリー)、チップバーン症(キャベツ、レタス)、尻腐れ病(トマト)、心ぐされ症(ダイコン、カブ、セルリー)、赤心症(ダイコン、カブ)、すいり(ダイコン)、根ぐされ症(ダイコン)、トップモザイク症(トマト)、くき割症(トマト)、やに症(トマト、ぶどう)、あんいり症(ぶどう)、茎裂開症(ぶどう)、落果症(みかん、りんご)、縮果症(りんご)、樹脂症(りんご、ぶどう、もも)、枝枯れ症(りんご、ぶどう)、花弁色抜け症(チューリップ)などを例示することができる。このような症状や兆候が発見された場合には、本発明の組成物を葉面散布あるいは土壌散布することで症状を改善し、あるいは症状の拡大を予防することができる。
また、本発明の効果向上を目的として、他のミネラルを配合することもできる。特にカルシウムの欠乏症は、ホウ素欠乏症と類似の心ぐされ症(キャベツ、ダイコン)、赤心症(ダイコン、カブ)などを伴う。また前述したチップバーン症を伴う。したがって葉面散布する場合は、カルシウム塩又はマグネシウム塩を配合することで、ホウ素欠乏症と区別のつきにくい症状にも対処可能となるので農業作業上有利である。一般的には塩化カルシウムや硫酸マグネシウムなどが配合に適している。
また本発明の組成物は、各種殺虫剤、殺菌剤、微生物農薬、肥料等と混用又は併用することも可能である。
次に、製造例、試験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造例
(ホウ素供給組成物の製造例)
ホウ酸3,600g、ソルビトール3,625g、無水硫酸マグネシウム2,500g、硫酸マンガン275g(合計10kg)を撹拌機でよく撹拌し、ホウ素供給用組成物を製造した。このホウ素供給用組成物は、水で100〜20,000倍に希釈して、葉面散布剤として用いることができるものである。
本配合により、ホウ素を供給できるほか、欠乏すると光合成抑制が起こるマグネシウムや、土壌中のマンガン酸化菌の働きにより畑地状態で吸収されにくくなる場合があるマンガンの補給も合わせて可能となる。
試験例1
(ダイコンのホウ素吸収量に及ぼす糖アルコールの効果試験)
1/5000aワグナーポットに土壌として「すくすく倶楽部30」(雪印種苗社製)を充填し、ダイコン品種「葉根っこ」(雪印種苗社製)を播種、北海道江別市雪印種苗(株)技術研究所内の温室内で栽培した。
播種後20日後から、週1回の割合で、表1に示すホウ酸濃度及びソルビトール濃度に調製した溶液に、さらにポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル含有展着剤(アプローチBI、花王社製)を0.1%加えたものをスプレーヤーで葉が十分濡れる量を葉面散布した。
葉面散布は一日3回行った。
播種後52日目にサンプリングし、可食部(根と胚軸肥大部)および葉部の生重を測定後、70℃3日間乾燥させた。乾燥後すみやかに乾物重を測定し、乾物率を算出した。
乾燥物は超遠心粉砕機MRK−RETSCH(三田村理研工業社製)で粉砕した後、0.5gを秤量し、精密分析用硝酸(和光純薬社製)5mLを加え、テフロン(登録商標)密閉加圧分解容器にて分解した。分解液を一定量に定容し、その液をICP発光分光分析装置SPS4000(セイコーインスツルメンツ社製)によってホウ素含有量を測定した。
得られた定量値を乾物率から逆算して、採取時の植物体の生重あたりのホウ素含有量を算出した。
その結果を表1に示す。
表1に示すとおり、試験溶液のホウ酸の葉面散布によって葉部・可食部ともホウ素含有量が高まった。特にソルビトールの添加によって、ホウ素の吸収量は増大し、その効果は根及び胚軸部まで及ぶことが明らかとなった。すなわちホウ酸とソルビトールを併用することで、植物体の各組織に効率的にホウ素を供給できることが確認された。
試験例2
(圃場におけるホウ素欠乏栽培でのダイコンの黒芯症状発生抑制試験)
あらかじめホウ素欠乏症の発生が予測される栽培条件においてダイコンの栽培試験を実施した。
北海道長沼町雪印種苗(株)北海道研究農場内の試験圃場において、ダイコン品種「葉根っ子」(雪印種苗社製)をホウ素欠乏症が発生しやすいように銀ネズミ色マルチ(畦間45cm、株間27cm)で被覆栽培した。基肥は窒素50kg/ha、リン酸113kg/ha、カリウム38kg/haとした。
ダイコンの播種は6月12日に行い、発芽後7月5日、7月12日、7月20日の3回にわたって表2に示す組成のホウ酸及びソルビトール濃度に調製した溶液に、さらにポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル含有展着剤(アプローチBI、花王社製)を0.1%加えたものを、背負動力噴霧器SHR061(共立社製)を用いて100mL/m2の量を葉面散布した。
次いで8月4日に欠株を除いた9〜10本のダイコンをサンプリングした。ダイコン食部を切断し、切断面の一部が飴色に変色したものを「軽度の黒芯症状」、褐色〜黒色に変色したものを「明確な黒芯症状」として、その発生個体の全体に対する比率で評価した。 評価結果を次の表2に示す。
表2に示すとおり、ホウ素欠乏条件で発生するダイコン黒芯症状の発生を、ホウ酸0.005%とソルビトール0.01%以上を葉面散布することで黒芯症状の発生を顕著に改善できることが明らかとなった。
試験例3
(圃場におけるキャベツのチップバーン症状の発生抑制試験)
ホウ素供給がなされている千葉県長沼原町雪印種苗(株)千葉研究農場内の試験圃場において、キャベツを栽培し試験を実施した。あらかじめ「闘根入り培土」(大柿園芸社製)を充填したセルトレイに2月5日に播種を行い、温室内で育苗した。生育後、基肥を窒素96kg/ha、リン酸128kg/ha、カリウム96kg/ha、ホウ素1.6kg/haを施した圃場に移植した。
結球中期の6月7日とその12日後の6月18日に、製造例1で製造したホウ素供給組成物を水で300倍希釈したもの(ホウ素0.066%,ソルビトール0.121%となる)にポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル含有展着剤アプローチBI(花王社製)を0.1%加え100mL/m2葉面散布した。対照群には水のみを散布した。
収穫は7月2日に行い、10個のキャベツを収穫した。収穫したキャベツを中心から二分割されるように切断し、切断面を観察し、切断面、変色葉が1〜2層のものを「軽度の発生」、変色葉が3層以上のものを「明確な発生」としてその発生個体の全体に対する比率で評価した。評価結果を下記表3に示す。
表3に示すように、散布区、対照区ともにあらかじめ基肥としてホウ素が施用されているにも関わらず明確なチップバーン症状が発生した。しかし本発明の製造例によるホウ素供給用組成物の葉面散布によって明確なチップバーン症状の発生が抑制された。
本発明の組成物によって、キャベツのチップバーン症状が抑制できることが明らかとなった。
試験例4
(圃場におけるブロッコリーの黒花症状の改善試験)
ブロッコリー品種「ピクセル」(サカタのタネ社製)を培養土「ばりばり根ばり」(北海道農材工業社製)を充填した128穴セルトレイに播種した。
播種は5月15日に行い、温室内で育苗栽培し、6月12日に北海道江別市の圃場に畦間66cm、株間45cmで移植した。
圃場の基肥は窒素140kg/ha、リン酸187kg/ha、カリウム140kg/ha、ホウ素2.3kg/haを施した。
着蕾期である7月15日と7月22日に、製造例で配合したホウ素供給用組成物を500倍希釈したもの(ホウ素0.04%,ソルビトール0.07%となる)に前記の試験例と同様にポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル含有展着剤アプローチBI(花王社製)を0.1%加え、100mL/m2葉面散布した。なお対照区は水のみを散布した。収穫は7月30日に行い、36個のブロコリーを収穫した。収穫したブロコリーに褐変した蕾が観察された発生個体の全体に対する比率で評価した。
評価結果を下記の表4に示す。
表4に示すように、対照区で、散布区にはあらかじめ基肥としてホウ素が施用されているにも関わらず明確な黒花症状が発生した。一方,本発明の製造例1によるホウ素供給用組成物の葉面散布によって明確な黒花症状発生の個体比率は明らかに抑制された。
本発明の組成物によって、ブロッコリーの黒花症状が抑制できることが明らかとなった。

Claims (5)

  1. 100重量部あたりソルビトールを0.01〜5重量部、ホウ酸を0.005〜0.25重量部を含有する生育期の野菜へのホウ素供給用組成物であって、ダイコンの黒芯症、カブの内部障害、ブロッコリーの花蕾生育障害、キャベツ及びレタスのチップバーン症(縁腐れ病)、ハクサイの内部障害、トマトの尻腐れ病の改善又は予防剤
  2. さらにカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を含む請求項1に記載の改善又は予防剤
  3. さらにマンガン塩を含む請求項に記載の改善又は予防剤
  4. 葉面散布用である請求項1〜のいずれかに記載の改善又は予防剤
  5. 液剤の形態である請求項1〜のいずれかに記載の改善又は予防剤
JP2014131027A 2014-06-26 2014-06-26 ホウ素供給用組成物 Active JP6438689B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014131027A JP6438689B2 (ja) 2014-06-26 2014-06-26 ホウ素供給用組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014131027A JP6438689B2 (ja) 2014-06-26 2014-06-26 ホウ素供給用組成物

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018191295A Division JP6662981B2 (ja) 2018-10-09 2018-10-09 ホウ素供給用組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016008162A JP2016008162A (ja) 2016-01-18
JP6438689B2 true JP6438689B2 (ja) 2018-12-19

Family

ID=55225978

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014131027A Active JP6438689B2 (ja) 2014-06-26 2014-06-26 ホウ素供給用組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6438689B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7416025B2 (ja) 2021-07-30 2024-01-17 横河電機株式会社 栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4976767A (en) * 1986-01-29 1990-12-11 Cpc International Inc. Plant food and method for its use
JP2819524B2 (ja) * 1993-05-13 1998-10-30 三井建設株式会社 土壌改良材の製造方法
JPH08104604A (ja) * 1994-10-05 1996-04-23 Tomoe Kagaku Kogyo Kk 植物用カルシウム・ホウ素栄養強化剤、並びにそれを含む液肥、葉面・果実散布剤、土壌処理剤及び種子処理剤
US5962049A (en) * 1997-03-31 1999-10-05 Miljkovic; Dusan Boron carbohydrate complexes and uses thereof
JPH10323128A (ja) * 1997-05-23 1998-12-08 Kagome Co Ltd アミノ酸含量の高い野菜の生産方法
JP2793583B1 (ja) * 1997-10-07 1998-09-03 株式会社紀文フードケミファ 硝酸態窒素濃度低下剤
JP4191284B2 (ja) * 1998-07-08 2008-12-03 株式会社紀文フードケミファ 硝酸態窒素濃度低下剤
JP4292724B2 (ja) * 2001-02-20 2009-07-08 味の素株式会社 有機態窒素含有組成物及びそれを含む肥料
JP2003171194A (ja) * 2001-12-04 2003-06-17 Masahiro Nagahama 有機物であるビタミン類と含硫アミノ酸と糖類入り肥料組成物を含有する地力増進材
JP2006052137A (ja) * 2005-11-04 2006-02-23 Haiponekkusu Japan:Kk 着色剤配合肥料の製造方法
EP2371220B2 (en) * 2010-03-31 2018-01-17 Taminco Stabilized bio-available soluble silicate solution

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016008162A (ja) 2016-01-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100760240B1 (ko) 셀레늄 및 님오일을 이용한 유기농작물의 친환경 재배방법
EA022245B1 (ru) Пестицидные смеси
EA023113B1 (ru) Применение агрохимических смесей для увеличения жизнеспособности растения
EA021404B1 (ru) Способ уменьшения выделения закиси азота из почвы
EA020281B1 (ru) Пестицидные смеси
BR112020022770A2 (pt) composição de suspensão, composição granular, processos de preparação da composição e método para melhorar a saúde ou o rendimento das plantas
JP2007308434A (ja) 植物生長促進剤
Singh et al. Effect of plant growth regulators on growth and yield of coriander
JP4705616B2 (ja) 植物における金属成分の吸収向上剤
JP2005192534A (ja) 植物のストレス緩和剤および生長促進剤
RU2450516C1 (ru) Способ получения пастообразного продукта для стимуляции роста и развития растений и пастообразный продукт для стимуляции роста и развития растений
KR101218221B1 (ko) 신규한 농작물 생육 증진용 비료 조성물
JP6662981B2 (ja) ホウ素供給用組成物
JP6438689B2 (ja) ホウ素供給用組成物
CA2849585C (en) Compounds, compositions and methods for crop enhancement
JP5254281B2 (ja) 植物のストレス緩和剤および生長促進剤
RU2758601C1 (ru) Способ применения биологического препарата в технологии выращивания ранних сортов картофеля
JP6454806B1 (ja) 農業用組成物
Bakry et al. Some Agro-Physiological Studies of Stigmasrterol on Growth and Productivity of Some Flax Cultivars under Sandy Soil Conditions
WO2005073150A1 (ja) 多肥料栽培における肥料吸収促進剤
CN102863283B (zh) 有机肥及其制备方法和一种防治土传病虫害的方法
JP2023163672A (ja) 植物用処理組成物
GB2560380A (en) Agrochemical combination
US9018392B1 (en) Compounds, compositions and methods for crop enhancement
JP2000053517A (ja) 植物の生理活性物質及びその使用方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170322

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180314

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180403

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20180601

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180601

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20180710

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181009

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20181009

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20181019

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181106

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181119

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6438689

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250