JP6436018B2 - 酸化物単結晶基板の研磨スラリー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1によれば、ウェハ収容部を改良したので平坦度などの優れた加工精度が得られるが、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの酸化物単結晶はモース硬度で5〜6と硬度が高く、かつ、化学的にも極めて安定な材料であることから、研磨速度が非常に遅くて、十分な生産性が得られていない。
例えば、特許文献2では、酸化物単結晶ウェハ用研磨組成物として、シリカ粒子を含み、BET法により測定した比表面積より真球換算で算出した平均一次粒子径Aが40〜150nmであり、かつマイクロトラックUPAによるレーザー散乱法で測定した平均二次粒子径Bとの径の比率B/Aを1以上1.4未満とすることが提案されている。
そして、シリカ粒子の平均粒子径が40nm以下では研磨速度が低下し、150nm以上ではスクラッチ等の欠点が発生しやすくなることから、40〜150nmのシリカ粒子が酸化物単結晶基板のポリッシュに有用であることが示されている。しかしながら、該文献においては、コロイダルシリカ一種を用いており、複数成分の混合による研磨速度の向上については検討されていない。
ここには、平均粒子径が30〜60nmのコロイダルシリカに対し、5〜22nm、または、80〜100nmの第二のコロイダルシリカを添加することにより研磨速度が向上する事が示されている。しかし、コロイダルシリカの混合は、粒度分布をブロードにすることを目的としており、コロイダルシリカの粒度分布が最適化されたとは言い難い。
また、コロイダルシリカの粒度分布は、比較的簡易な操作で最適化できるので、研磨スラリーの生産性を高め、製造コストを抑えることができる。
本発明の酸化物単結晶基板研磨用スラリーは、研磨粒子にコロイダルシリカを用い、水などの媒体中に分散させたスラリーであって、粒子径54nm以下のシリカ粒子A、55〜94nmのシリカ粒子B、95〜144nmのシリカ粒子Cを必須成分とし、これらシリカ粒子A、B、Cが特定の個数比率で含まれる研磨用スラリーである。
本発明の酸化物単結晶基板の研磨用スラリーの製造方法は、粒子径が5〜54nmのシリカ粒子A、55〜94nmのシリカ粒子B、95〜144nmのシリカ粒子Cを含むコロイダルシリカ原料を用意し、各シリカ粒子を水に分散させてスラリーを調製した後、シリカ粒子Aとシリカ粒子Bの個数比率が40:60〜60:40の範囲となり、かつ、シリカ粒子Bとシリカ粒子Cの個数比率が65:35〜80:20の範囲となるように、スラリー同士を混合することを特徴とする。
水ガラス法とは、ケイ酸ソーダをイオン交換し、活性ケイ素を調整後、これを加熱下において、苛性ソーダでpH調整した種粒子含有水溶液中に添加し、粒子成長させる手法である。また、アルコキシド法とは、ケイ酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を塩基性触媒存在下で加水分解すると同時に縮合、粒子成長を行いながらシリカ粒子を製造する手法である。なお、100nm以上の比較的大きい粒子については、予め大きめのシリカ粒子を作り、それを粉砕、分級して粒子径をそろえる手法も取ることができる。
本発明において好ましいのは、SEMを用いた粒子径の測定法である。試料作製においては、粒度分布の偏りが生じないよう、例えば5時間以上の充分な時間をかけて乾燥を行うことが望ましい。また、同一コロイダルシリカスラリーから2つ以上の試料を作製し、500個以上の粒子を測定することにより、個数分布の偏りが生じることを防ぐことができる。
本発明の研磨スラリーを用いて酸化物単結晶基板を研磨するには、研磨装置の基板(ウェハ)収容部に基板をワックスなどで貼り付けて保持した後、研磨定盤の上表面に研磨布を貼り付け、この研磨布上へ前記の研磨スラリーを供給して研磨することができる。
研磨定盤は、この定盤に連結された駆動軸を介してモーター制御等により任意の回転速度で回転駆動される。
研磨時間は規定しにくいが、例えば30〜120分とし、所定の厚みに達したところで研磨加工を終了する。本発明では、前記のとおり、研磨スラリーの研磨速度が高いので、基板の種類によっては30分以内で研磨を終了できる場合もある。
市販のコロイダルシリカ、すなわち粒子径が5〜54nmの範囲にあるシリカ粒子A(日産化学(株)製、スノーテックス50)、55〜94nmの範囲にあるシリカ粒子B(日産化学(株)製、スノーテックスYL)、95〜144nmの範囲にあるシリカ粒子C(日産化学(株)製、MP−1040)を用意した。
次に、シリカ粒子AとBの個数比率が51:49、かつ、シリカ粒子BとCの個数比率が74:26になるようにコロイダルシリカA、B、Cを混合し、シリカ濃度が20%になるように純水で希釈した。
その後、研磨材料のタンタル酸リチウム基板(4インチ)を研磨装置(不二越機械工業社製SPM−12)の収容部(ブロック)に、ワックスを用いて貼り付けた。引き続き、研磨パッドとしてロデール社製SUBA800を用い、表1の条件で研削材料の研削を行い、研磨速度を求めて効果を評価した。結果を表2に記した。
表2のうち、”シリカ粒子数”は、シリカ粒子A、B、Cの個数を百分率で示したもので、”個数比率”は、シリカ粒子AとB、BとCの個数比率を示している。また、”研磨速度”は、研磨前後のマイクロメーターの測定値の差分を、研磨時間で割って算出した。結果を表2に示す。
10〜130nmのシリカ粒子がブロードに含まれるコロイダルシリカを比較例1とし、またコロイダルシリカA、B、Cをそれぞれ単体で用いた場合を比較例2〜4とし、さらにAとB、AとC、BとCで混合した場合を比較例5〜7として、実施例1と同様に表1の条件で研削材料の研削を行い、研磨速度を求めた。結果を表2に示す。
実施例1と同様に、コロイダルシリカA、B、Cを表2の範囲で混合し、シリカ濃度が20%になるように純水で希釈し、表1の条件でポリッシュを行った。研磨速度を求めて効果を評価した。結果を表2に記した。
実施例に対し、コロイダルシリカA、B、Cの混合割合を変え、本発明外の範囲で用いた場合について実験して、研磨速度を比較した。
上記実施例、比較例で得られた結果を表2に示したが、研磨速度の数値が大きいほど、研磨スラリーが好適な粒度分布であることを意味している。
比較例1は、コロイダルシリカがブロードな粒度分布をもち、シリカ粒子A、B、Cも所望の粒度分布を満たしていないため、研磨速度が上がっていない。比較例2は小さい粒子しか含まないため、非常に研磨速度が低くなっている。また、比較例3と4は、中くらいや大きい粒子を含んでいるため研磨速度は向上しているが、十分なレベルには達しているとはいえない。また、比較例5、6、7はコロイダルシリカ2種類を混合しているため、1種類よりは研磨速度が向上しているが、十分なレベルに達しているとはいえない。さらに比較例8〜11は、コロイダルシリカA、B、Cを混合しているが、粒度分布が適切ではないため、2種類混合と同様のレベルであった。
すなわち、本発明の研磨スラリーにおいては、コロイダルシリカのシリカ粒子が三種類混合されており、特定の比率となるように粒度分布が調整されることが重要であり、この範囲を外れると期待した効果が得られないことが分かる。
Claims (6)
- 研磨剤としてコロイダルシリカを含む酸化物単結晶基板の研磨用スラリーであって、
前記コロイダルシリカは、粒子径が5〜54nmのシリカ粒子A、55〜94nmのシリカ粒子B、95〜144nmのシリカ粒子Cを含み、しかもシリカ粒子Aとシリカ粒子Bの個数比率が40:60〜60:40の範囲であり、かつ、シリカ粒子Bとシリカ粒子Cの個数比率が65:35〜80:20の範囲に調整された粒度分布を有することを特徴とする酸化物単結晶基板の研磨用スラリー。 - シリカ粒子の粒子径が、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定されることを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶基板の研磨用スラリー。
- コロイダルシリカの含有量が、5〜50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶基板の研磨用スラリー。
- 粒子径が5〜54nmのシリカ粒子A、55〜94nmのシリカ粒子B、95〜144nmのシリカ粒子Cを含むコロイダルシリカ原料を用意し、各シリカ粒子を水に分散させてスラリーを調製した後、シリカ粒子Aとシリカ粒子Bの個数比率が40:60〜60:40の範囲となり、かつ、シリカ粒子Bとシリカ粒子Cの個数比率が65:35〜80:20の範囲となるように、スラリー同士を混合することを特徴とする酸化物単結晶基板の研磨用スラリーの製造方法。
- コロイダルシリカ原料は、粒子径が5〜144nmのシリカ粒子を90%以上含むように製造され、これを予め粒子径が5〜54nmのシリカ粒子A、55〜94nmのシリカ粒子B、95〜144nmのシリカ粒子Cに分級することを特徴とする請求項4に記載の酸化物単結晶基板の研磨用スラリーの製造方法。
- コロイダルシリカ原料は、シリカ粒子の成長速度の制御によって、粒子径が5〜54nmのシリカ粒子A、55〜94nmのシリカ粒子B、95〜144nmのシリカ粒子Cが所定の割合で含まれるように粒度分布が調整されることを特徴とする請求項4または5に記載の酸化物単結晶基板の研磨用スラリーの製造方法。
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