JP6435202B2 - 筆記具用水性インク組成物 - Google Patents
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この原因としては、樹脂粒子は比較的多量に配合する場合が多いので、水分の揮発による影響、すなわち、インク吐出部において樹脂粒子の凝集によるインク流動性の低下が起きやすいためと考えられている。
(1) 樹脂粒子を含む筆記具用水性インク組成物であって、少なくともビシン、トリシンから選ばれる化合物をインク組成物全量に対して0.1〜10質量%含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
(2) 水溶性有機溶剤の含有量がインク組成物全量に対して10質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の筆記具用水性インク組成物。
(3) 前記樹脂粒子が色材であることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具用水性インク組成物。
(4) 請求項1〜3の何れか一つの筆記具用水性インク組成物を搭載したことを特徴とする筆記具。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、樹脂粒子を含む筆記具用水性インク組成物であって、少なくともビシン、トリシンから選ばれる化合物をインク組成物全量に対して、0.1〜10質量%含有することを特徴とするものである。
これらの樹脂粒子の材質は特に限定されず、中空樹脂粒子、中実樹脂粒子では、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどの単独重合体や、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などの2種以上のモノマーが共在している共重合体、これらの変性体などの固体の樹脂粒子を用いることができる。
また、これらの樹脂粒子の形状についても、球状(真球状、略球状、略楕円球状)、もしくはその形状も多角形状、扁平状等の異形の形状のものなどが使用できるが、球状の樹脂粒子の使用が好ましい。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、壁膜がウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂等となる樹脂原料を使用、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などの各液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより熱変色性のマイクロカプセル顔料からなる熱変色性の着色樹脂粒子を製造することができる。この熱変色性の着色樹脂粒子では、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度、消色温度を好適な温度に設定することができる。
この光変色性の着色樹脂粒子樹脂粒子は、フォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などを好適に用いることにより、例えば、室内照明環境(室内での白熱灯、蛍光灯、ランプ、白色LEDなどから選ばれる照明器具)において無色であり、紫外線照射環境(200〜400nm波長の照射、紫外線を含む太陽光での照射環境)で発色する性質を有するものとすることができる。
また、樹脂粒子の平均粒子径についても、初筆性の低下と概ね比例する傾向にあり、樹脂粒子の平均粒子径が0.4μm以上であると初筆性の低下が認められ、1.0μm以上となるとより顕著になる。平均粒子径の上限は、筆記性能や描線品位を考慮すると、20μm以下とすることが望ましい。
ビシン(C6H13NO4)は、別名、N−N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンであり、トリシンは(C6H13NO5)は、別名、N−〔トリス(ヒドロキシエチル)メチル〕グリシンであり、これらは、従来、筆記具用インク中において金属イオン封鎖剤として作用するものであるが、本発明では、上述の樹脂粒子を多量に(5%以上)配合した筆記具用水性インク系において、インク吐出部において樹脂粒子の凝集によるインク流動性の低下を防止して初筆性能を向上せしめるために用いるものである。
用いるビシン、トリシンはそれぞれ単独で、又は併用しても良いものである。
この含有量が0.1%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、10%を超えると、インクの経時安定性が低下するため、好ましくない。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラックや、酸化チタン、金属粉等が挙げられる。また、有機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔 料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。
水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料のいずれも用いることができる。
これらの色材は、単独で、又は2種以上を混合して適宜量用いることができる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、目的によって変動する。例えば、書き味の向上、ペン先での乾燥防止を目的とする場合は、10%を超える量とすることが好ましい。
一方、平均粒子径が大きい樹脂粒子を含むインクを用いた筆記具は、インクの流量を多くする場合が多い。そうすると描線乾燥性が低下するという課題が生じやすい。したがって、筆記具としての全体的な性能を損なわない範囲で含有量を少なくすることが望ましい。
インク組成物全量に対して、好ましくは、上記の点から、10%以下、更に好ましくは、5〜10%とすることが望ましい。
また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンゾイソチアゾリン、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。
本発明の筆記具用水性インク組成物を収容したインクリフィル10としては、例えば、図1に示すように、ボールペンチップ15と、継手部材14と、インク収容管11とから構成されるものが挙げられる。インク収容管11は、ポリプロピレン製などの樹脂製の管であり、その内部には本発明の筆記具用水性インク組成物12が収容されており、更に、このインク組成物12の後端にはインク追従体13が収容されている。
インクリフィル10の先端部には、継手部材14を介してボールペンチップ15が装着されている。このボールペンチップ15は、図1及び図2に示すように、ホルダー16と、これに抱持される超硬合金製の筆記ボール17とによって構成されている。ホルダー16は、円柱状に形成され、その先端側が先細形状のボール保持部となるテーパー部16aと、後端側の外周が小径となっている連結部16bと、ホルダー後端からテーパー部16aの中途部分までの内部空間として形成されたバック孔16cとで構成されている。筆記ボール17を受けるホルダー16の先端部分は、図2に示すように、ボールハウス16d、筆記ボール17を抱持するカシメ部16e、バック孔16cに連通するインク誘導孔16f及びインク溝16g、ボール受け座16hが形成されている。
本発明の筆記具用水性インク組成物及びこれを搭載した筆記具では、本発明の効果を発揮せしめる持続効果が極めて優れており、しかも、その効果の発現期間・持続時間も長く、更に水溶性であるために経時的な安定性にも優れたものとなる。
下記表1及び表2に示す配合処方にしたがって、常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。
表1及び表2中において、色材の欄における蛍光顔料A、B、着色ウレタン粒子、熱変色性顔料、光変色性顔料は、着色樹脂粒子を色材として用いたものである。また、熱変色性顔料、光変色性顔料は、下記各製法によりマイクロカプセル化したマイクロカプセル顔料粒子として調製したものである。
ロイコ色素として、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン1部、顕色剤として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン2部、及び変色性温度調整剤として、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート24部を100℃に加熱溶融して、均質な組成物27部を得た。
上記で得た組成物27部の均一な熱溶液を、保護コロイド剤として、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合樹脂〔ガンツレッツAN−179:ISP(株)社製〕40部をNaOHにてpH4に溶解させた90℃の水溶液100部中に徐々に添加しながら、加熱攪拌して直径約0.5〜1.0μmの油滴状に分散させ、次いでカプセル膜剤として、メラミン樹脂(スミテックスレジンM−3、(株)住友化学製)20部を徐々に添加し、90℃で30分間加熱してマイクロカプセル化を行い、膜剤がメラミン樹脂からなる可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル分散液を得た。この分散液を常温に冷却後、酸添加、濾別、水洗を行い、スプレードライ機を用いて乾燥することにより、着色樹脂粒子となる平均粒子径が0.55μmとなるパウダー状の熱変色性マイクロカプセル顔料粒子を得た。色相は、発色状態においては濃厚な青色を呈し、摩擦熱等の熱(例えば、60℃以上)で消色するものであった。
光変色性色素として、1,3,3−トリメチルインドリノ−6’−(1−ピペリジニル)スピロナフソザジン3部、ジエチレングリコールジベンゾエート10部、およびメチルエチルケトン10部を80℃に加熱溶融して、均質な組成物23部を得た。
上記で得た組成物23部の均一な熱溶液にカプセル膜剤として、イソシアネート10部及びポリオール10部を加えて攪拌混合した。次いで、保護コロイドとして12%ポリビニルアルコール水溶液60部を用いて、25℃で乳化して分散液を調製した。次いで、5%の多価アミン5部を用いて、80℃で60分間処理してマイクロカプセルを得た。
以上の手順により得たマイクロカプセル化した水分散体をスプレードライすることでパウダー状にして平均粒子径1.8μmの光変色性マイクロカプセル顔料粒子を得た。
この光変色性マイクロカプセル顔料粒子は、室内照明環境において無色であり、紫外線照射環境〔太陽光およびブラックライト(315〜400nm)〕で赤色に発色する性質を有するものであった。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
実施例1〜5及び7〜9で得られた各インク組成物を用いて水性ボールペンを作製した。具体的には、ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:UF−202〕の軸を使用し、内径3.8mm、長さ90mmポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.5mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるインクリフィルに上記各水性インク組成物を充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、水性ボールペン(各5本)を作製した。なお、クリアランス(L)は、30μmであり、筆記ボール表面の平均粗さRaは、3nmであった。
また、実施例6では、マーキングペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:PUS−102T〕に得られた各ボールペン用水性インク組成物を充填して、マーキングペン(各5本)を作製した。
評価基準:
○:書き始めから問題なく筆記可能
△:書き始めから1mm未満のカスレが確認される
×:書き始めから1mm以上のカスレが確認される
上記で作製した水性ボールペン、マーキングペンを用いて、25℃、60%RH下で、PPC用紙に「三菱鉛筆」と筆記した直後から一定時間後に、質量50gの錘を載せたキムワイプで描線を擦り、描線状態に異常がないかを下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:3秒以内
△:3〜6秒
×:6秒以上
これらの本発明となる実施例1〜9の各筆記具用水性インク組成物は、本発明の範囲外となる比較例1〜6の各筆記具用水性インク組成物に較べて、初筆性及び描線乾燥性に優れる筆記具用水性インク組成物であることが判明した。
15 ボールペンチップ
16 ホルダー
17 筆記ボール
Claims (4)
- 樹脂粒子を含む筆記具用水性インク組成物であって、少なくともビシン、トリシンから選ばれる化合物をインク組成物全量に対して0.1〜10質量%含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
- 水溶性有機溶剤の含有量がインク組成物全量に対して10質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の筆記具用水性インク組成物。
- 前記樹脂粒子が色材であることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具用水性インク組成物。
- 請求項1〜3の何れか一つの筆記具用水性インク組成物を搭載したことを特徴とする筆記具。
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