以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
<印刷装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図、図2は、図1に示す印刷装置の機能構成図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、ユーザから見て、上下左右を上下左右方向とする。
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、破線で示す経路が上部排紙経路RD1、直進排紙経路RD2、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。通常経路RCと反転経路RRとによって循環経路を構成する。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
本実施の形態に係る印刷装置は、パーソナルコンピュータ(図示せず)、通信ネットワークを介して、パーソナルコンピュータから入力された画像データに基づいた印刷を行う。
パーソナルコンピュータは、印刷装置11に対応して開発されたプリンタドライバプログラムがインストールされた、一般的な情報処理端末である。
一方、印刷装置1は、図1、図2に示すように、用紙Pを搬送経路に沿って搬送させる各搬送部(給紙部2と、縦搬送部3と、印刷搬送部4と、上面搬送部6と、直進排紙搬送部13と、直進排紙台14と、上部排紙搬送部7と、上部排紙台8と、反転部9)と、インクジェットヘッド部5と、操作パネル部10と、制御部11と、搬送経路上の複数の箇所に設けられ、搬送部により搬送された用紙Pの搬送情報を取得する用紙センサ、各部を収納又は保持するする筐体12とを備える。
給紙部2は、用紙Pを保持するとともに、給紙を行う。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に設けられ、サイド給紙台21と、サイド給紙ローラ22と、サイド給紙モータ51と、複数の内部給紙台23と、複数の内部給紙ローラ24と、内部給紙モータ52とを備える。
サイド給紙台21は、用紙Pが積載されるものであり、一部が印刷装置1の筐体12の外部に露出して設置されている。
サイド給紙ローラ22は、サイド給紙台21の上側に設けられており、サイド給紙台21から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSに沿って後述のレジストローラ31に向けて搬送する。サイド給紙ローラ22は、サイド給紙モータ51によって回転駆動される。
内部給紙台23は、筐体12の内部に設けられ、用紙Pが積載されるものである。内部給紙ローラ24は、複数の内部給紙台23の下流側端部と縦給紙ローラとの間において、複数の給紙経路RSの何れかに沿って配置されており、何れかの内部給紙台23に積層されている用紙Pを縦搬送部3へ搬送する。内部給紙ローラ24は、内部給紙モータ52によって回転駆動される。
縦搬送部3は、複数対の縦搬送ローラ25と、合流給紙ローラ28と、合流給紙モータ53と、用紙センサ27a〜27eとを備え、内部給紙台23から送り出された用紙Pを給紙経路RSに沿って搬送する。
縦搬送ローラ25は、給紙経路RSに沿って配置されており、用紙Pを後述の合流給紙ローラ28に向けて搬送する。最も下流側の縦搬送ローラ25は、サイド給紙ローラ22を回転駆動させるサイド給紙モータ51により回転駆動可能に構成されている。他の縦搬送ローラ25は、内部給紙ローラ24を回転駆動させる内部給紙モータ52により回転駆動可能に構成されている。
合流給紙ローラ28は、縦搬送ローラ25と印刷搬送部4のレジストローラ31との間の給紙経路RS上に配置されており、縦搬送ローラ25から搬送された用紙Pを印刷搬送部4へと給紙する。この合流給紙ローラ28は、合流給紙モータ53によって回転駆動される。
用紙センサ27a〜27eは、各縦搬送ローラ25の下流側近傍に配置されている。また、用紙センサ27a〜27eは、発光素子及び受光素子を有する光学式センサが適用されており、給紙経路RSに沿って搬送される用紙Pを検出して、搬送情報を取得する。搬送情報とは、搬送経路上の用紙Pの搬送状態を示す情報であって、通過の有無や、搬送速度などが含まれる。
印刷搬送部4は、給紙部2の下流側に配置されており、用紙Pを搬送しつつ、画像を印刷する。印刷搬送部4は、レジストローラ31と、レジストモータ54と、ベルト搬送部32と、ベルトモータ55と、用紙センサ33a〜33dとを備えており、サイド給紙台21、内部給紙台23、反転部9から搬送されてきた用紙Pを上面搬送部6へと搬送する。
レジストローラ31は、給紙部2から給紙された用紙Pをベルト搬送部32へと供給するとともに、反転部9から搬送される用紙Pをベルト搬送部32へと再給紙する。レジストローラ31は、印刷搬送部4の上流部の通常経路RC上に配置されている。換言すると、レジストローラ31は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍に配置されている。
レジストローラ31は、レジストモータ54によって回転駆動される。この際、レジストローラ31は、レジストモータ54の制御によって、サイド給紙台21、内部給紙台23、反転部9から搬送されてきた用紙Pを一旦止めて、斜行補正を行った後、ベルト搬送部32へと送り出す。
ベルト搬送部32は、レジストローラ31よりも通常経路RCの下流側に配置されており、レジストローラ31から搬送された用紙Pの下面を無端ベルトによって吸引しつつ、用紙Pを下流側へと搬送する。ベルト搬送部32は、ベルトモータ55の回転駆動によりベルトを駆動して用紙Pを搬送する。
ベルト搬送部32の内側には吸引ファン39が設けられている。ベルト搬送部32を形成する無端ベルトの表面には多数の通気孔が形成されており、吸引ファン39の回転によって生じる吸引力で、用紙Pは無端ベルトに吸着されて搬送される。吸引ファン39は、吸引モータ50によって回転駆動される。
用紙センサ33a〜33dは、通常経路RCに沿って搬送される用紙Pを検出するとともに、搬送される用紙Pの浮き上がりを検知して、搬送情報を取得する。用紙センサ33aは、レジストローラ31の上流側近傍に配置されている。用紙センサ33bは、レジストローラ31の下流側近傍に配置されている。用紙センサ33cは、用紙センサ33bの下流側で、ベルト搬送部32の上流部分に配置されている。用紙センサ33dは、インクジェットヘッド部5の下流側に配置されている。用紙センサ33a〜33dは、発光素子及び受光素子を有する光学式センサおよび用紙の浮き上がりを検出する接触センサが適用されている。
また、印刷搬送部4は、ベルト搬送部32を回転させるローラ44の回転角測度などの搬送情報を取得するエンコーダ44aを備える。なお、図示しないが、ベルト1周に1箇所設けられた基準マークを検知し、ベルトホームポジション信号を出力するベルトHPセンサーや、ローラー44の1周を検知し、ローラーホームポジション信号を出力するローラーHPも備える。
インクジェットヘッド部5は、各搬送部により搬送される用紙Pに印刷する印刷部であり、ベルト搬送部32の上方に配置されており、用紙Pの搬送方向と略直交する方向に複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッド(図示せず)を有する。インクジェットヘッド部5は、ベルト搬送部32により通常経路RCに沿って搬送される用紙Pにインクジェットヘッドからインク(記録材)を吐出して画像を印刷する。
上面搬送部6は、ベルト搬送部32によって搬送されてきた用紙Pを上方に搬送するとともに、右方向から左方向にUターンするように搬送する。上面搬送部6は、複数対の上面搬送ローラ35と、用紙センサ36a〜36cと、複数対の上面搬送ローラ35を回転駆動させる上面モータ58とを備える。
上面搬送ローラ35は、印刷搬送部4と上部排紙搬送部7との間の通常経路RCに沿って配置されており、用紙Pをニップして搬送する。全ての上面搬送ローラ35は、1つの上面モータ58によって回転駆動される。
用紙センサ36a,36bは、発光素子及び受光素子を有する光学式センサが適用されており、通常経路RCに沿って搬送される用紙Pを検出して、搬送情報を取得する。用紙センサ36aは、最も上流側の上面搬送ローラ35の上流側近傍に配置されている。用紙センサ36bは、通常経路RCの下流域の水平部分において、隣接する2つの上面搬送ローラ35間に配置されている。用紙センサ36cは、最も下流側の上面搬送ローラ35の上流側近傍に配置されており、反転経路RRの上流部分に沿って搬送される用紙Pを検出する。
直進排紙搬送部13は、ベルト搬送部32によって搬送されてきた用紙Pを上面搬送部6へ搬送せず、ベルト搬送部32から水平方向に直進させ、直進排紙台14へと搬送して排紙する。直進排紙搬送部13は、切替部34と、排紙ローラ37と、用紙センサ38と、切替部34を駆動させるソレノイド61と、排紙ローラ37を回転駆動させる直進排紙モータ56とを備える。
切替部34は、直進排紙経路RD2と通常経路RCとの分岐点に配置されており、用紙Pの搬送経路を直進排紙経路RD2と通常経路RCとの間で切り替える。切替部34は、ソレノイド61によって駆動される。ここで、直進排紙経路RD2は、通常経路RCのベルト搬送部32の下流側から直進排紙台14に向けて延びる経路である。
排紙ローラ37は、切替部34と直進排紙台14との間に配置されており、印刷搬送部4により搬送されてきた用紙Pを直進排紙経路RD2に沿って搬送して直進排紙台14へと排紙する。排紙ローラ37は、直進排紙モータ56によって回転駆動される。
用紙センサ38は、発光素子及び受光素子を有する光学式センサが適用されており、直進排紙経路RD2に沿って搬送される用紙Pを検出して、搬送情報を取得する。用紙センサ38は、排紙ローラ37と直進排紙台14との間に配置されている。
直進排紙台14は、筐体12から突出したトレイ形状を有しており、傾斜して設置されている。そして、直進排紙搬送部13により搬送されてきた印刷済みの用紙Pが積載される。
上部排紙搬送部7は、印刷済みの用紙Pを上部排紙台8へと搬送して排紙する。上部排紙搬送部7は、切替部41と、排紙ローラ42と、用紙センサ43と、切替部41を駆動させるソレノイド61と、排紙ローラ42を回転駆動させる上部排紙モータ57とを備える。
切替部41は、上部排紙経路RD1と反転経路RRとの分岐点に配置されており、用紙Pの搬送経路を上部排紙経路RD1と反転経路RRとの間で切り替える。なお、上部排紙経路RD1は、通常経路RCの下流側の端部から上部排紙台8に向けて延びる経路である。切替部41は、ソレノイド61によって駆動される。
排紙ローラ42は、切替部41と上部排紙台8との間に配置されており、上面搬送部6により搬送されてきた用紙Pを上部排紙経路RD1に沿って搬送して上部排紙台8へと排紙する。排紙ローラ42は、上部排紙モータ57によって回転駆動される。
用紙センサ43は、発光素子及び受光素子を有する光学式センサが適用されおり、上部排紙経路RD1に沿って搬送される用紙Pを検出して、搬送情報を取得する。用紙センサ43は、排紙ローラ42と上部排紙台8との間に配置されている。
上部排紙台8は、上部排紙経路RD1の下流端に配置されており、上部排紙搬送部7により搬送されてきた印刷済みの用紙Pが積載される。上部排紙台8は、筐体12から突出したトレイ形状を有し、傾斜して設置されている。
反転部9は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙Pを反転させて印刷搬送部4へと再給紙する。反転部9は、反転ローラ45と、反転モータ59と、スイッチバック部46と、再給紙ローラ47と、再給紙モータ60と、切替ゲート48と、用紙センサ49a,49bとを備える。
反転ローラ45は、最も下流側の上面搬送ローラ35とスイッチバック部46の搬入口との間の反転経路RR上に配置されている。そして、反転ローラ45は、上面搬送部6により搬送されてきた用紙Pをスイッチバック部46に一時的に搬入した後に搬出し、再給紙ローラ47へと搬送する。反転ローラ45は、反転モータ59によって正転方向(搬入時)及び反転方向(搬出時)に回転駆動される。
スイッチバック部46は、反転ローラ45が用紙Pを一時的に搬入するための空間である。スイッチバック部46は、上部排紙台8の下部に形成されており、反転ローラ45の近傍が用紙Pを搬入するために開口されている。
再給紙ローラ47は、反転ローラ45とレジストローラ31との間の反転経路RR上に配置されており、反転ローラ45により搬送されてきた用紙Pをレジストローラ31へと搬送する。再給紙ローラ47は、再給紙モータ60によって回転駆動される。
切替ゲート48は、最も下流側の上面搬送ローラ35、反転ローラ45、及び再給紙ローラ47の3個所の重心近傍に配置されている。そして、切替ゲート48は、上面搬送ローラ35によって搬送されてきた用紙Pを反転ローラ45へとガイドする。また、切替ゲート48は、反転ローラ45によってスイッチバック部46から搬出される用紙Pを再給紙ローラ47へとガイドする。
用紙センサ49a,49bは、発光素子及び受光素子を有する光学式センサが適用されており、反転経路RRに沿って搬送される用紙Pを検出して、搬送情報を取得する。用紙センサ49aは、反転ローラ45とスイッチバック部46との間に配置されており、用紙センサ49bは、再給紙ローラ47の下流側近傍に配置されている。
操作パネル部10は、操作ボタン、タッチパネル等を有しており、ユーザによる入力操作を受け付け、各種の画面等を表示する。
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る印刷装置の機能構成を説明する。
図2に示すように、制御部11は、印刷装置1の中枢的制御を行う。すなわち、制御部11は、給紙部2と、縦搬送部3と、印刷搬送部4と、インクジェットヘッド部5と、上面搬送部6と、直進排紙搬送部13と、上部排紙搬送部7と、反転部9と、操作パネル部10と、制御部11とを制御する。制御部11は、種々のプログラムを実行するCPU100と、各情報が一時的に記憶されるRAM111と、基本プログラム等が記憶されているROM112と、印刷用のプログラム、給紙用のプログラム等が記憶されているHDD113と、入出力を行うための接続部114とを備えている。
HDD113には、搬送経路の最適化を実行するか否かの判断に用いられる調整時間を記憶する。ここで「調整時間」とは、インクジェットヘッド部5による印刷が開始されるまでの時間長である。具体的には、搬送経路の最適化を実行するか否かの判断をする際の基準となる時間長であって、給紙可能となってからテスト用の用紙Pを搬送させるテスト搬送処理に要する時間と、その後、搬送異常の有無を判定するとともに、その判定結果に応じて搬送部又は印刷部の制御値を調整する調整処理時間とを含めた合計時間である。
具体的に、テスト搬送処理とは、テスト用の用紙Pを給紙部2から給紙させ、インクジェットヘッド部5による印刷を省略して各搬送部によりテスト搬送用の用紙Pを搬送させて所定の排紙先に排紙させる処理である。本実施形態では、給紙可能となった時点から所定の排紙先に排紙されるまでの時間をテスト搬送処理に要する時間とする。一方、調整処理時間とは、テスト搬送処理の後に、判定部105による判定処理が実行され、調整部106によって制御値の調整が行われる時間である。
テスト搬送処理において、搬送されるテスト搬送用の用紙Pは、片面印刷や両面印刷などの印刷モードに応じて搬送される経路が異なる。そのため、調整時間は、両面印刷処理を行った場合と片面印刷を行った場合とでは、搬送する時間が異なるため、その合計時間は大きく変化する。HDD113には、両面印刷用の調整時間と、片面印刷用の調整時間とが記憶されている。また、使用される給紙先(サイド給紙台21又は内部給紙台23)、使用される排紙先(用紙Pが排紙される先である直進排紙台14又は上部排紙台8)によっても搬送経路が異なるため、給紙先及び排紙先に応じた調整時間を設定してもよい。さらに、各搬送部の調整処理の数によっても調整時間を変化させてもよい。
また、HDD113は、各用紙センサ(27a〜27e、33a〜33d、36a〜36c、38、43、49a、及び49b)から入力される検出信号が検出される時間と、予測された時間との誤差の閾値であるジャム用閾値とが記憶されている。このジャム用閾値は、その所定の範囲を有しており、その範囲に含まれない場合には、ジャムが発生する可能性が高いものと判断される。
接続部114は、制御部11と、各部のモータやセンサとを電気的に接続するものである。この接続部114は、各部の用紙センサで検知された検知信号を受信して、CPU110に入力する。これにより、各部のジャム発生などが検知される。また、接続部114は、CPU110で生成された制御信号を受信して、各部のモータに入力する。これにより、各部のモータは回転駆動されたり、インクジェットヘッド部5からインクが吐出されたりする。
CPU100は、画像処理部101と、搬送制御部102と、展開時間算出部103と、比較部104と、判定部105と、調整部106とが実装される。
画像処理部101は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、用紙Pに印刷する画像データを展開する処理を行い、印刷を実行するモジュールである。この画像処理部101は、画像形成制御機能と、色変換回路機能とを備えている。色変換回路機能としては、RGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換する回路であり、各色についての印刷画像に基づいて、画像形成制御機能に印刷を実行させる。画像形成制御機能としては、各色のインクヘッドの駆動や、搬送経路の駆動部の動作を制御し、画像形成処理全体を制御するモジュールであり、スケジューリングに従ったタイミング及び印字速度で画像形成を行う。この搬送駆動に関する信号は搬送制御部102に送信する。
搬送制御部102は、印刷装置内の各経路に設けられた各部(給紙部2、各搬送部、及び各排紙部)の動作を制御するモジュールであり、画像処理部101によって決定されたスケジュールに応じて各部を駆動させ、用紙Pを搬送経路に沿って搬送させる。
展開時間算出部103は、画像データの展開処理に要する所要時間(以下、展開時間と称する。)を算出する。この展開時間算出部103によって算出される展開時間は、印刷ジョブの内容に応じて変動する。例えば、帳票を作成する場合など、大量印刷を伴う印刷ジョブでは、その展開時間は長時間となる。一方、同一の画像データを、1枚から10枚程度印刷する印刷ジョブなどでは、その展開時間は短時間となる。そして算出された展開時間の情報は、比較部104に入力される。
比較部104は、展開時間算出部103によって算出された展開時間と、予め設定された所定の調整時間とを比較する。この際、比較部104は、両面印刷用の調整時間及び片面印刷用の調整時間をそれぞれ比較し、展開時間が調整時間以上であるか否かを判定する。
図3は、比較部104で比較される展開時間と調整時間とを示すグラフである。図3において、横軸は、給紙可能時間からの経過時間を示している。一方、縦軸の上部は、調整時間を示し、両面印刷モードの調整時間を調整時間Aとし、片面印刷モードの調整時間を調整時間Bとする。縦軸の下部は、画像データの展開時間を示しており、展開時間の最も長い画像データを有する印刷ジョブを印刷ジョブaとし、展開時間の最も短い画像データを有する印刷ジョブを印刷ジョブcとし、その中間の展開時間を有する印刷ジョブを印刷ジョブbとする。
この場合、印刷ジョブaでは、片面印刷モードの調整時間B及び両面印刷モードの調整時間Aよりも展開時間が長いため、展開時間は調整時間A以上、及び調整時間B以上であると判断される。一方、印刷ジョブbでは、片面印刷モードの調整時間Bよりも展開時間は長いが、両面印刷モードの調整時間Aよりは展開時間が短いため、展開時間は調整時間B以上であるが、調整時間A以下であると判断される。
さらに、印刷ジョブcでは、片面印刷モードの調整時間B及び両面印刷モードの調整時間Aよりも展開時間が短いため、展開時間は調整時間A以下、及び調整時間B以下であると判断される。そして、比較部104は、展開時間が何れかの調整時間以上である場合には、その情報を判定部105に送信する。
判定部105は、比較部104の比較結果において所要時間が調整時間以上である場合、展開処理中に用紙Pの搬送を開始して各用紙センサで搬送情報を取得させるように搬送部を制御して、搬送異常の有無を判定する。
具体的に、判定部105は、展開処理を実行している間、搬送制御部102を制御し、テスト搬送用の用紙Pを給紙部2から給紙させるとともに、所定の排紙部に用紙Pを排紙するまで搬送させる。この際、画像処理部101は、テスト搬送用の用紙Pに対しては、インクジェットヘッド部5による印刷は行わない。
そして、判定部105は、その間、各用紙センサから入力される検出信号を取得し、その検出信号が取得される時間と、予測された時間との誤差を算出する。そして、判定部105は、HDD113に記憶されたジャム用閾値を参照し、当該誤差がジャム用閾値の範囲内か否かを判定する。その当該誤差が閾値の範囲外である場合、ジャムが発生する可能性があると判定する。ここで、ジャムが実際に生じた場合には、エラー画面を操作パネル部10に表示させ、ユーザに対してジャム解除操作を促す。
また、判定部105は、比較部104による比較結果に応じて、両面印刷時における搬送異常の有無を判定するか、片面印刷時における搬送異常の有無を判定するかを決定する。具体的に、図3に示す印刷ジョブaは、展開時間が両面印刷モードの調整時間A以上であるため、判定部105は、両面印刷時における搬送異常の有無を行うと決定する。この際、判定部105は、テスト搬送処理として、搬送制御部102を制御して、給紙部2から給紙されたテスト用紙Pを通常経路RCに搬送しつつ、反転経路RRに搬送し、再度、通常経路RCへと給紙するように、各部を制御する。そして、判定部105は、反転部9内の用紙センサを含めた判定処理を行う。
一方、図3に示す印刷ジョブbは、展開時間が片面印刷モードの調整時間B以上であるが、調整時間A以下であるため、片面印刷時の搬送異常の有無を行うと決定する。この際、判定部105は、テスト搬送処理として、給紙部2から給紙されたテスト用紙Pを、通常経路RCに搬送しつつ、反転経路RRには搬送することなく、直進排紙経路RD2又は上部排紙経路RD1に導くように各部を制御する。そして、判定部105は、テスト用紙Pが通過した各部の用紙センサの検出結果に応じて判定処理を行う。なお、図3に示す印刷ジョブcは、展開時間が何れの調整時間以下であるため、判定処理は行われない。
調整部106は、各用紙センサにより取得された搬送情報に基づいて、画像データの印刷及び用紙Pの搬送をさせるようにインクジェットヘッド部5部及び各搬送部を制御する。具体的には、判定部105による判定結果が、ジャムが発生する可能性があると判定した場合に、各搬送部(縦搬送部3、印刷搬送部4、上面搬送部6、反転部9等)又はインクジェットヘッド部5の制御値を調整する。ここで、調整部106が実行する各搬送部の制御値の調整としては、ジャムが発生する(もしくは、発生する可能性がある)と判定された用紙センサの上流部分に位置する各モータに対する制御値を増減させて、搬送速度を調整するものが含まれる。
また、例えば、用紙センサ33dによって、用紙Pの浮きを検知した場合には、吸引ファン39を駆動回転させる吸引モータ50の回転量を増大させるなどの吸引力調整も含まれる。
さらに、調整部106は、一対のローラ44に設置されたエンコーダ44aからの検出信号に応じて搬送ベルトの移動速度を測定し、一対のローラの偏芯成分による速度変動やベルトの厚みムラ成分による速度変動を検出した場合には、プロファイルデータに基づいて、ベルト搬送部32を回転駆動させるベルトモータ55の回転量を調整する。この処理を行う場合、HDD113には、ベルトの厚みムラに起因する搬送ベルト部32の速度変動に関する情報をベルトプロファイルデータとして保持するとともに、ローラ軸の偏芯に起因する搬送ベルト部32の速度変動に関する情報をローラプロファイルデータとして保持しておく。そして、調整部106は、一対のローラ44に設置されたエンコーダ44aからの検出信号に応じて搬送ベルトの移動速度を測定し、各プロファイルデータを参照してベルトモータ55の回転量を調節する。なお、ここでは、ベルト搬送部32の速度変動に対して、ベルトモータ55の回転量を調整したが、例えば、ベルト搬送部32の速度変動に応じて、インクジェットヘッド部5から吐出されるインク吐出タイミングを調整するものであってもよい。
また、調整部106は、インクジェットヘッド部5の制御値を調整する処理として、インクジェットヘッド部5を制御して、インクヘッドに搬送される用紙Pの斜行に応じて画像データを斜行させる斜行補正処理を行う調整処理も含まれる。なお、斜行補正としては、レジストローラ31及びその下流に位置する搬送ローラの回転量を制御して、レジストローラ31に用紙Pを突当て、用紙Pの斜行を補正してもよい。
調整部106による処理が終了するとともに、画像処理部101による展開処理が終了した場合には、画像処理部101及び搬送制御部102は、展開された画像データ及び調整された制御値に基づいて、印刷処理が実行される。
<印刷装置の作用>
次に、印刷装置1の動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る印刷装置における印刷時の動作を説明するためのフローチャートである。
図4に示すように、印刷装置1に対して印刷ジョブが入力されると、画像処理部101は、用紙Pに印刷する画像データを展開する(ステップS101)。このとき、展開時間算出部103は、展開処理の所要時間(展開時間)を算出し(ステップS103)、算出した展開時間を比較部104に送信する。
次に、比較部104は、展開時間算出部103によって算出された展開時間と、HDD113に記憶された調整時間とを比較する(ステップS105)。この際、比較部104は、設定された印刷モードに応じて、両面印刷モードの調整時間Aまたは片面モードの調整時間Bを用いて比較する。ここで、展開時間が調整時間以下である場合には(ステップS105;"NO")、判定部105及び調整部106による処理を行うことなく、画像展開が終了されるまで待機し(ステップS115)、画像展開が終了されると、印刷処理が実行される(ステップS117)。
一方、展開時間が調整時間以上である場合(ステップS105;"YES")、その情報は、判定部105に入力される。
判定部105は、その展開時間が調整時間以上である情報を取得すると、テスト搬送処理を実行させる(ステップS107)。このとき、判定部105は、両面印刷モードの調整時間Aまたは片面印刷モードの調整時間Bの結果に応じて、両面印刷に係るテスト搬送処理又は片面印刷に係るテスト搬送処理を選択する。
そして、判定部105は、各テスト搬送処理を実行している間、各用紙センサによるテスト搬送用の用紙Pの検出タイミングを取得し(ステップS109)、当該検出タイミングに基づいて搬送異常の有無を判定する(ステップS111)。具体的に、判定部105は、各センサからの検出信号が取得される時間と、予測された時間との誤差を算出し、HDD113内のジャム用閾値を参照して当該誤差がジャム用閾値の範囲内か否かを判定する。
ステップS111において、当該誤差が閾値の範囲内である場合には(ステップS111;"NO")、判定部105は、ジャム発生する可能性はないと判定し、調整部106による調整処理を行うことなく、画像展開が終了されるまで待機する(ステップS115)。その後、画像展開が終了すると、印刷処理が実行される(ステップS117)。
一方、ステップS111において、当該誤差が閾値の範囲外である場合には、判定部105は、ジャムが発生する可能性があると判定し(ステップS111;"YES")、調整部106にその信号を送信する。
ステップS111において、ジャム発生の可能性があると判定された場合(ステップS111;“YES”)、調整部106は、各搬送部又はインクジェットヘッド部5の制御値を調整する(ステップS113)。その後、画像展開が終了されるまで待機し(ステップS115)、画像展開が終了されると、印刷処理が実行される(ステップS117)。このとき、画像処理部101及び搬送制御部102は、調整部106によって調整された制御値に基づいて、各部を駆動制御する。
以上のように、本発明の実施の形態に係る印刷装置1では、展開処理の所要時間と、調整時間とを比較しており、展開処理の所要時間が調整時間以上である場合、展開処理と並行して搬送を開始して搬送情報を取得する。そして、取得した搬送情報を基に用紙Pの搬送送度や印刷の最適化を行っている。これにより、帳票を作成する場合など展開処理が長い印刷ジョブに対しては、その展開処理の所要時間の間を有効活用して、搬送経路の最適化を実行することで、印刷処理実行中に生じる搬送不良を防止し、全体的な印刷時間を短縮することができる。
一方、展開処理が短く即時に印刷実行可能な印刷ジョブに対しては、最適化処理は省略し、印刷処理を開始することを優先させているので、この場合も全体的な印刷時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、両面印刷用の調整時間及び片面印刷用の調整時間を有しており、それらを用いて比較部103で比較を行うので、例えば、両面印刷用の調整時間よりは展開時間が短いが、片面印刷用の調整時間よりは展開時間が長い印刷ジョブに対しても、片面印刷で使用される搬送経路の最適化を実行することができる。
なお、本実施の形態では、インクジェット方式の印刷装置1について説明したが、印刷媒体を搬送しつつ印刷を行うほかの方式の印刷装置にも本発明は適用可能である。
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
例えば、上記調整部106によって調整された制御値を、HDD113に記憶し、次回の印刷処理において利用することもできる。
具体的に、HDD113は、用紙Pの種別と、搬送経路に関する情報との組み合わせに応じた調整部106による制御結果をさらに記憶している。ここで、「用紙Pの種別」とは、用紙サイズ、種類、厚みなどの情報が含まれ、「搬送経路に関する情報」とは、搬送時に使用される経路を示した情報であって、使用される給紙台及び排紙台のほか、給紙台から排紙台に至る間の経路情報が含まれる。この経路情報には、使用される給紙部2、各搬送部(縦搬送部3、印刷搬送部4、上面搬送部6、及び反転部9)、及び各排紙部(直進排紙搬送部13、及び上部排紙搬送部7)の情報が含まれる。
そして、「制御結果」とは、判定部105による判定結果(調整必要なし、又は調整必要有り)に加え、調整必要有りの場合には、調整部106によって調整された各部の制御値が含まれる。そして、これらの組み合わせと、調整部106による制御結果とを関連付けて記憶しておく。
そして、CPU110は、印刷ジョブが入力された場合、その印刷ジョブの設定条件を抽出し、HDD113内に記憶された用紙Pの種別と搬送経路に関する情報との組み合わせと参照して、同一の組み合わせがあるか否かを判断する。同一の組み合わせがある場合には、その制御結果を搬送部又は印刷部の制御値として設定する。
なお、この処理は、上記ステップS103の展開時間算出される前に行われる。これにより、印刷媒体の種別と搬送経路に関する情報との組み合わせが同一な印刷ジョブに対しては、記憶された搬送結果を用いることで搬送経路の最適化することができるため、ステップS103〜ステップS111までの最適化処理を省略でき、その結果、印刷媒体の無駄を低減させることができる。
また、上述した実施形態では、1枚のテスト搬送用の用紙Pを搬送させて、調整部106による最適化処理を行った後、印刷処理を開始したが、例えば、制御値を調整した後、再度、テスト搬送用の用紙Pを搬送経路内に搬送させて、調整後の制御値に対して搬送不良が生じるか否かの判定を繰り返し行うこともできる。この場合には、調整された制御値によって搬送不良が生じるか否かを確認できるので、印刷実行後の搬送不良の確率を低減させることができる。
なお、最適化処理を繰り返す回数は、任意であるが、全ての最適化処理の時間が展開時間よりも短い場合に実行させるように制御することもできる。この場合には、展開処理の時間を有効活用しつつ、印刷処理開始後における搬送不良の発生をより低減させることができる。一方、全ての最適化処理の時間が展開時間より長くなる場合でも、設定した所定回数は実行するように設定してもよい。この場合には、印刷実行時の搬送不良を確実に防ぐことで、全体的な印刷時間を短縮させる。
また、上述した実施形態において、調整部106は、自動で画像処理部101及び搬送制御部102による制御値を調整したが、例えば、ユーザ操作に基づいて、調整値を設定させることもできる。この場合、ステップS6において、判定部105が搬送不良が発生する可能性があると判断した場合、操作パネル部10上に制御値を調整する画面を表示させ、ユーザ操作を受け付ける。そして、受け付けた制御値は、HDD113に記憶され、その調整された制御値に基づいて印刷処理が実行されるとともに、次回以降の印刷時においても使用される。
さらに、上述した実施形態において、印刷処理は、展開時間終了後に、用紙Pを給紙部2から給紙させたが、例えば、予め給紙部2から用紙Pを給紙させて展開時間が終了した時点で、用紙Pの先端がインクジェットヘッド部5の下流側に位置するように搬送させておくこともできる。この場合、展開時間終了後に即時印刷処理が実行できるため、より全体的な印刷時間を短縮させることができる。
この際、印刷装置1は、テスト搬送処理において、両面印刷時の搬送異常の有無を判定している場合、そのテスト搬送用に用いた用紙Pを印刷処理に利用することも可能である。この場合には、テスト搬送用の用紙Pを用いて印刷を行うため、資源の無駄を低減させることができる。