JP6428253B2 - ポリオキサミド樹脂の製造法 - Google Patents
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あらかじめ耐圧容器にジアミンを仕込み、
前記耐圧容器内にシュウ酸ジエステルを投入し、前記ジアミンと混合し、
前記ジアミンと前記シュウ酸ジエステルの反応により生成するアルコール存在下で加圧重合する工程を有するポリオキサミド樹脂の製造法において、
前記ジアミンに前記シュウ酸ジエステルを投入するときの耐圧容器内の温度が150℃超過であり、
あらかじめ耐圧容器内に仕込んだ前記ジアミンに、前記シュウ酸ジエステルとの反応により生成するアルコールと同じアルコールをシュウ酸ジエステルが投入される前に添加し、
仕込んだ前記ジアミンの重量がM(kg)、添加した前記アルコールの23℃の時の体積がA(L)である時、Y=A/Mにより求められるY(L/Kg)が0.5以上1.0以下であるポリオキサミド樹脂の製造法により、相対粘度(ηr)が3.2以上のポリオキサミド樹脂を製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明で製造の対象となるポリオキサミド樹脂のシュウ酸源としては、シュウ酸ジエステルが用いられ、これらはアミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−(またはi−)プロピル、シュウ酸ジn−(またはi−、またはt−)ブチル等の脂肪族1価アルコールのシュウ酸ジエステル、シュウ酸ジシクロヘキシル等の脂環式アルコールのシュウ酸ジエステル、シュウ酸ジフェニル等の芳香族アルコールのシュウ酸ジエステル等が挙げられる。これらのうち、重縮合反応により発生するアルコールに生成ポリオキサミド樹脂が良好に溶解し、続く溶融重合、固相重合温度においてアルコールを完全に取り除くことができるアルコールを生成するシュウ酸ジエステルが好ましく用いられる。このようなシュウ酸ジエステルの例としては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−(またはi−)プロピル、シュウ酸ジn−(またはi−、またはt−)ブチルを挙げることができる。その中でもシュウ酸ジn−ブチルが特に好ましい。
以下、本発明のポリオキサミド樹脂の製造法を具体的に説明する。まず耐圧容器内にジアミンを投入し、容器内を窒素のような不活性ガスで置換する。次いで、容器内のジアミンをシュウ酸ジエステルと混合する温度まで昇温する。(このときの温度を初期温度と称する場合がある。)シュウ酸ジエステルを投入する。容器は重縮合反応の温度および圧力に耐え得るものであれば特に制限されない。混合するシュウ酸ジエステルとジアミンの比率は、シュウ酸ジエステル/ジアミン(モル比)で、0.8〜1.2(モル比)が好ましく、0.91〜1.09がより好ましく、0.98〜1.02(モル比)が更に好ましい。
本発明により得られるポリオキサミド樹脂の相対粘度(ηr)は、3.2以上であり、3.2以上5.0以下が好ましい。ηrが3.2未満であると、押出成形時にダイから押出された溶融樹脂の粘度が低く安定性が悪いため望ましくない。また、ηrが5.0より高いと溶融樹脂の粘度が高過ぎ、成形加工機に負荷がかかったりして望ましくない。
本発明から得られるポリオキサミド樹脂には本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリオキサミドや、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミドなどポリアミド類を混合することが可能である。更に、ポリアミド以外の熱可塑性ポリマー、エラストマー、フィラーや、補強繊維、各種添加剤を同様に配合することができる。
本発明により得られるポリオキサミド樹脂の成形方法としては、射出、押出、中空、プレス、ロール、発泡、真空・圧空、延伸などポリアミドに適用できる公知の成形加工法はすべて可能であり、これらの成形法によってフィルム、シート、成形品、繊維などに加工することができる。
本発明によって得られるポリオキサミドの成形物は、従来ポリアミド成形物が用いられてきた各種成形品、シート、フィルム、パイプ、チューブ、モノフィラメント、繊維、容器等として自動車部材、コンピューター及び関連機器、光学機器部材、電気・電子機器、情報・通信機器、精密機器、土木・建築用品、医療用品、家庭用品など広範な用途に使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、実施例中の構造解析、数平均分子量の算出、末端基濃度の算出、相対粘度の測定は以下の方法により行った。
一次構造の同定は、1H−NMRにより行った。1H−NMRは、ブルカー・バイオスピン社製 AVANCE500を使用して、溶媒:重硫酸、積算回数:1024回の条件で測定した。
数平均分子量(Mn)は、1H−NMRスペクトルから求めたシグナル強度をもとに、1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなり、かつ1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15であるジアミンとシュウ酸ジn−ブチルを原料とするポリオキサミド樹脂〔以下、PA92(NMDA/MODA=85/15)と略称する〕の場合は下式により算出した。
Mn=np×212.30+n(NH2)×157.28+n(OBu)×129.14+n(NHCHO)×29.14
・np=Np/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(NH2)=N(NH2)/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(NHCHO)=N(NHCHO)/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(OBu)=N(OBu)/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・Np=[(Sp/sp)−1]/sp−N(NHCHO)
・N(NH2)=S(NH2)/s(NH2)
・N(NHCHO)=S(NHCHO)/s(NHCHO)
・N(OBu)=S(OBu)/s(OBu)
・Np:PA92(NMDA/MODA=85/15)の末端ユニットを除いた、分子鎖中の繰り返しユニット総数。
・np:分子1本当たりの分子鎖中の繰り返しユニット数。
・Sp:PA92(NMDA/MODA=85/15)の末端を除いた、分子鎖中の繰り返しユニット中のオキサミド基に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(3.1ppm付近)の積分値。
・sp:積分値Spにカウントされる水素数(2個)。
・N(NH2):PA92(NMDA/MODA=85/15)の末端アミノ基の総数。
・n(NH2):分子1本当たりの末端アミノ基の数。
・S(NH2):PA92(NMDA/MODA=85/15)の末端アミノ基に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(2.6ppm付近)の積分値。
・s(NH2):積分値S(NH2)にカウントされる水素数(2個)。
・N(NHCHO):PA92(NMDA/MODA=85/15)の末端ホルムアミド基の総数。
・n(NHCHO):分子1本当たりの末端ホルムアミド基の数。
・S(NHCHO):PA92(NMDA/MODA=85/15)のホルムアミド基のプロトンに基づくシグナル(7.8ppm)の積分値。
・s(NHCHO):積分値S(NHCHO)にカウントされる水素数(1個)。
・N(OBu):PA92(NMDA/MODA=85/15)の末端ブトキシ基の総数。
・n(OBu):分子1本当たりの末端ブトキシ基の数。
・S(OBu):PA92(NMDA/MODA=85/15)の末端ブトキシ基の酸素原子に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(4.1ppm付近)の積分値。
・s(OBu):積分値S(OBu)にカウントされる水素数(2個)。
・末端アミノ基濃度[NH2]=n(NH2)/Mn
・末端ブトキシ基濃度[OBu]=n(OBu)/Mn
・末端ホルムアミド基濃度[NHCHO]=n(NHCHO)/Mn
ηrはポリオキサミドの96%硫酸溶液(濃度:1.0g/dL)を使用してオストワルド型粘度計を用いて25℃で測定した。
撹拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、放圧口、ポリマー取出口、および直径1/8インチのSUS316製配管によって原料フィードポンプを直結させた原料投入口を備えた5Lの耐圧容器に、1,9−ノナンジアミン701.31g(4.433モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン123.76g(0.782モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)、およびn−ブタノール500mLを仕込んだ。添加アルコール量パラメータYは0.61であった。その後、純度が99.9999%の窒素ガスで3.0MPaに加圧した後、次に常圧まで窒素ガスを放出する操作を5回繰り返した。次いで、耐圧容器内の初期温度を190℃にした後、原料フィードポンプにより、シュウ酸ジn−ブチル1054.22g(5.215モル)を流速65mL/分で注入を開始し、同時に熱媒を昇温させた。撹拌速度は100rpm、熱媒昇温速度は10℃/15分であった。重縮合反応により生成したn−ブタノールによる圧力を0.5MPaに調節した。耐圧容器内が235℃に到達した後、放圧口よりn−ブタノールを留去させ、撹拌速度50rpm、260mL/分の窒素気流下において常圧重合を行った。耐圧容器内の最終的な到達温度は260℃とし、撹拌トルクが一定になったところで重合を終了した。その後、撹拌を止めて系内を窒素で3MPaに加圧して10分間静置した後、内圧0.5MPaまで放圧し、重合物を圧力容器下部より紐状に抜き出した。紐状の重合物は直ちに水冷し、ペレタイザーによりペレット化した。得られたポリオキサミド樹脂は白色であった。
耐圧容器に1,9−ノナンジアミン700.17g(4.426モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン123.56g(0.781モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)、およびn−ブタノール500mLを仕込み、添加アルコール量パラメータYは0.61であり、シュウ酸ジn−ブチル1052.56g(5.207モル)を使用し、耐圧容器内の初期温度を180℃にしたこと以外は、実施例1と同様に重縮合反応を行った。得られたポリオキサミド樹脂は白色であった。
耐圧容器に1,9−ノナンジアミン699.00g(4.418モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン123.35g(0.780モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)を仕込み、n−ブタノールは仕込まなかったために添加アルコール量パラメータYが0であり、シュウ酸ジn−ブチル1050.76g(5.198モル)を使用し、耐圧容器内の初期温度を190℃にしたこと以外は、実施例1と同様に重縮合反応を行った。得られたポリオキサミド樹脂は白色であった。
耐圧容器に1,9−ノナンジアミン696.24g(4.401モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン122.86g(0.777モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)、およびn−ブタノール100mLを仕込み、添加アルコール量パラメータYは0.12であり、シュウ酸ジn−ブチル1046.63g(5.178モル)を使用し、耐圧容器内の初期温度を190℃にしたこと以外は、実施例1と同様に重縮合反応を行った。得られたポリオキサミド樹脂は白色であった。
耐圧容器に1,9−ノナンジアミン699.72g(4.423モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン123.48g(0.781モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)、およびn−ブタノール300mLを仕込み、添加アルコール量パラメータYは0.36であり、シュウ酸ジn−ブチル1051.83g(5.203モル)を使用し、耐圧容器内の初期温度を190℃にしたこと以外は、実施例1と同様に重縮合反応を行った。得られたポリオキサミド樹脂は白色であった。
耐圧容器に1,9−ノナンジアミン697.41g(4.408モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン123.07g(0.778モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)を仕込み、n−ブタノールは仕込まなかったために添加アルコール量パラメータYが0であり、シュウ酸ジn−ブチル1048.42g(5.187モル)を使用し、耐圧容器内の初期温度を180℃にしたこと以外は、実施例1と同様に重縮合反応を行った。得られたポリオキサミド樹脂は白色であった。
耐圧容器に1,9−ノナンジアミン699.69g(4.423モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン123.47g(0.781モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)、およびn−ブタノール300mLを仕込み、添加アルコール量パラメータYは0.36であり、シュウ酸ジn−ブチル1051.87g(5.204モル)を使用し、耐圧容器内の初期温度を180℃にしたこと以外は、実施例1と同様に重縮合反応を行った。得られたポリオキサミド樹脂は白色であった。
耐圧容器に1,9−ノナンジアミン698.08g(4.413モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン123.19g(0.779モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)、およびn−ブタノール500mLを仕込み、添加アルコール量パラメータYは0.61であり、シュウ酸ジn−ブチル1049.43g(5.192モル)を使用し、耐圧容器内の初期温度を150℃にしたこと以外は、実施例1と同様に重縮合反応を行った。得られたポリオキサミド樹脂は低粘度で白色であった。
Claims (4)
- あらかじめ耐圧容器にジアミンを仕込み、
前記耐圧容器内にシュウ酸ジエステルを投入し、前記ジアミンと混合し、
前記ジアミンと前記シュウ酸ジエステルの反応により生成するアルコール存在下で加圧重合する工程を有するポリオキサミド樹脂の製造法において、
前記ジアミンに前記シュウ酸ジエステルを投入するときの耐圧容器内の初期温度が180℃から190℃であり、
あらかじめ耐圧容器内に仕込んだ前記ジアミンに、前記シュウ酸ジエステルとの反応により生成するアルコールと同じアルコールをシュウ酸ジエステルが投入される前に添加し、
仕込んだ前記ジアミンの重量がM(kg)、添加した前記アルコールの23℃の時の体積がA(L)である時、Y=A/Mにより求められるY(L/kg)が0.5以上1.0以下であるポリオキサミド樹脂の製造法。 - 前記シュウ酸ジエステルと前記ジアミンとを混合、反応させるときの熱媒昇温速度が10℃/15分以下である請求項1に記載のポリオキサミド樹脂の製造法。
- 前記ジアミンが炭素数6〜12のジアミンである請求項1又は2に記載のポリオキサミド樹脂の製造法。
- 前記ジアミンが炭素数9のジアミンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオキサミド樹脂の製造法。
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