以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
図1から図7は、実施例1を示す図である。図1は、本実施例の外部電源からの外部充電機能を備えたプラグインハイブリッド車両(Plug-in Hybrid Vehicle)の構成ブロック図である。図1に示すように、車両100は、エンジン1、第1MG(Motor Generator)2、第2MG3、動力分配機構4、トランスミッション(無段変速機、減速装置など)5、及びバッテリ6が搭載される。なお、車両100として、プラグインハイブリッド車両を一例に説明しているが、外部充電機能を備えていないハイブリッド車両であってもよい。
エンジン1の出力軸は、動力分配機構4に接続される。動力分配機構4は、トランスミッション5の入力軸及び第1MG(発電用モータ)2の入力軸と連結される。トランスミッション5の出力軸は、車輪(駆動輪)7のディファレンシャルギア(差動装置)8に連結され、エンジン1の動力が動力分配機構4を介して車輪7に伝達される。また、トランスミッション5の出力軸は、第2MG(走行用モータ)3の出力軸と連結されている。第2MG3の動力は、トランスミッション5を介して車輪7に伝達されるようになっている。
動力分配機構4は、エンジン1が発生させる動力を2つの経路に分割する。一つは、トランスミッション5を介して車輪7に伝達する第1経路である。もう一つは、エンジン1が発生された動力を第1MG2に伝達して発電させる第2経路である。動力分配機構4は、後述する車両制御装置31によって制御され、車両制御装置31は、エンジン1の駆動力を用いた走行制御やバッテリ6への充放電制御に応じて、第1経路及び第2経路それぞれに伝達される動力やその比率を制御する。
バッテリ6は、第2MG3に電力を供給する電源装置である。バッテリ6としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。バッテリ6の直流電力は、インバータ9により交流電力に変換され、第2MG3に供給される。第2MG3は、三相同期モータや三相誘導モータなどの交流モータである。
インバータ9は、バッテリ6から出力された直流電力を交流電力に変換し、交流電力を第2MG3に出力する。第2MG3は、インバータ9から出力された交流電力を受けて、車両100を走行させるための運動エネルギを生成する。第2MG3によって生成された運動エネルギは、トランスミッション5を介して車輪7に伝達される。
車両が減速したり、停止するときなどの車両100の制動時には、車輪7がトランスミッション5を介して第2MG3を駆動させる。第2MG3は、ジェネレータ(発電機)として作動し、車両100の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギ(交流電力)に変換する。
本実施例の第2MG3は、バッテリ6から供給される電力によって駆動する車両走行の駆動源であるとともに、制動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。第2MG3によって発電された電力(回生エネルギ)は、インバータ9を介してバッテリ6に蓄えられる。インバータ9は、第2MG3が生成した交流電力を直流電力に変換し、直流電力(回生電力)をバッテリ6に出力する。
第1MG2は、エンジン1の動力により回転駆動することにより発電し、インバータ9を介して発電した電力をバッテリ6に供給するジェネレータである。第1MG2は、第2MG3と同様に、三相同期モータや三相誘導モータなどの交流モータで構成できる。
第1MG2により発電された電力は、そのまま第2MG3を駆動させる電力として供給したり、バッテリ6に蓄えられる電力として供給することができる。例えば、第1MG2は、バッテリ6のSOC(State of Charge)や車両100の要求出力等に応じて制御され、第2MG3は、バッテリ6に蓄えられた電力及び第1MG2により発電された電力のうちのいずれか一方又は両方の電力によって駆動制御される。
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の内燃機関である。エンジン制御装置32は、車両制御装置31からのエンジン制御信号に基づいてエンジン1を制御するエンジンECUである。エンジン制御装置32は、車両100全体の制御を行うメインコントローラである車両制御装置31に接続されている。
エンジン制御装置32は、エンジン1の駆動状態を検出する各種センサの検出値に基づいて、車両制御装置31によって定められた目標回転数及び目標トルクで動作するように、エンジン1の燃料噴射量や吸気空気量、点火時期などを制御する。
例えば、従来技術1(特開2010−58745号公報)に記載のように、エンジン制御装置32には、車速センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、エンジン回転数センサからの信号が入力される。また、燃料噴射量を決定するために、アクセルペダルの開度と連動したスロットルの開度に応じた吸入空気量を検出するための吸入空気量センサ(エアフロメータ)からの信号も入力される。なお、エンジン1の構造や、エンジン1の駆動制御、駆動制御に必要な各種センサ機器は、従来技術1に記載のように公知技術を適用することができる。
エンジン1には、不図示の燃料タンクからガソリンなどの燃料が供給される。シリンダ内で圧縮された燃料および空気を含む混合気体が燃焼、爆発することで、車両100の駆動力が得られる。このとき、燃料の燃焼に伴って排気ガスが発生する。排気ガスは、炭化水素や窒素酸化物などの有害物質が含まれているため、排気ガスを車両100の外部に排出する排気管12に、有害物質を浄化する触媒13が設けられている。
バッテリ制御装置33は、バッテリ6のSOCや劣化状態などを管理するとともに、バッテリ6の充放電動作を車両制御装置31からのバッテリ制御信号に基づいて制御するバッテリECUである。
本実施例の車両100は、外部電源から供給される電力をバッテリ6に充電する外部充電手段を備える。車両100の側部には、インレット11が設けられる。インレット11は、車両100と外部電源とを連結する接続プラグを有する充電ケーブルが接続される接続口である。外部電源は、家庭用電源(商用電源)や充電スタンドなどがある。
充電制御装置34は、外部充電制御を遂行するECUであり、外部電源から延設される接続プラグがインレット11に接続された状態で、充電器10を制御して外部電源から供給される電力を、バッテリ6に充電させる。
充電器10は、インレット11とバッテリ6との間に接続され、外部電源から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器を含んで構成される。充電器10は、充電制御装置34から出力される駆動信号に基づいて動作する。
車両制御装置31、エンジン制御装置32、バッテリ制御装置33及び充電制御装置34は、個別の制御装置として構成しているが、これら各制御装置を含む1つの制御装置30として構成することもできる。以下の説明において、これら制御装置を区別することなく、制御装置30として説明する。
制御装置30は、車両100全体で要求される車両要求出力、例えば、アクセルペダルの踏み込み量に基づいて要求駆動力を算出し、算出された車両要求出力に応じてエンジン1の出力制御及びバッテリ6の入出力制御を行う。
制御装置30は、運転状態に応じて駆動供給源を選択し、エンジン1及び第2MG3のうちの一方又は両方からの駆動力を用いた車両の走行制御を遂行する。例えば、アクセル開度が小さい場合や車速が低い場合などには、エンジン1からの駆動力を使用せずに(エンジン1を停止した状態で)、第2MG3のみを駆動源として車両100の走行制御を行う。なお、第2MG3のみを駆動源として車両100の走行制御を行う場合でも、エンジン1を駆動して第1MG2による発電制御を行うことができる。
一方、アクセル開度が大きい場合や車速が高い場合、又はバッテリ6のSOCが小さい場合などには、エンジン1を駆動源として走行制御を遂行する。このとき、制御装置30は、エンジン1のみ、もしくはエンジン1および第2MG3の両方を駆動源として車両100の走行制御を行うことができる。
次に、本実施例の制御装置30及び車両100の走行制御について詳細に説明する。制御装置30は、CD(Charge Depleting)モードと、CS(Charge Sustaining)モードとを切り替えて車両100の走行制御を行う。
CDモードは、第2MG3の動力のみでの走行(EV走行)を優先的に行う走行モードである。つまり、CDモードは、バッテリ6に蓄えられた電力を維持せず積極的に使用し、基本的にエンジン1を停止して、第2MG3の駆動力のみで車両出力全体を確保するように、エンジン1及び第2MG3を制御する。なお、CDモードであっても、アクセル開度が高い場合や車速が高い場合などには、駆動力を補うためにエンジン1を動作させて走行制御を行う。
CSモードは、必要に応じてエンジン1を動作させてエンジン1及び第2MG3の両方の動力を用いた走行を優先的に行う走行モードである。つまり、CSモードは、所定値のSOCを制御中心としてバッテリ6の充放電を行いながら、言い換えれば、バッテリ6に蓄えられた電力を所定の目標値よりも低くならないように、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いて、車両出力全体を確保するようにエンジン1及び第2MG3を制御する。すなわち、SOCが目標値よりも低下すると、エンジン1を始動して第1MG2による充電制御が行われ、目標値よりも低いSOCを目標値に近づけるように上昇させつつ、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いた走行制御を行う。なお、CSモードでも、CSモードでの走行中に回生エネルギの充電により、バッテリ6のSOCが目標値を上回っていれば、エンジン1を停止して第2MG3の動力のみを用いたEV走行を行うように制御される。
このようにCDモード及びCSモードの各々は、エンジン1が動作している状態と停止している状態とを有している。そして、予め設定されたバッテリ6の閾値(SOC_th)に基づいて、SOCがSOC_thよりも大きい領域ではCDモードでの車両走行が許容され、SOCがSOC_thよりも小さい領域ではCDモードでの車両走行が許容されずに、CSモードでの車両走行が許容されるように、走行モードを切り替えて車両100の走行制御を行う。なお、CDモードとCSモードとは、手動で切替えるように構成することも可能である。
次に、エンジン1の触媒暖機運転について詳細に説明する。上述した特許文献1に記載のように、エンジン1を始動する際、触媒13の浄化機能を確保するために、触媒暖機運転を行い、触媒温度を所定の活性温度まで上昇させることができる。制御装置30は、触媒暖機制御部として機能し、触媒暖機制御は、制御装置30(車両制御装置31)によって遂行される。
触媒暖機運転は、例えば、エンジン1の始動時にスロットルを広げ、吸入空気量を多めにし、エンジン1が大幅な点火遅角を行う。燃料の燃焼を主に排気工程で行い、触媒13内で燃焼が広がるようにすることで、触媒温度を上昇させることができる。他の触媒暖機運転としては、例えば、通常のエンジン1の駆動制御に加えて、吸入空気量を多めにしつつ、主に膨張工程で再度燃料噴射を行い、未燃で残っている酸素を使って排気工程で燃焼を広げて触媒温度を上昇させたり、通常のエンジン1の駆動制御に加えて、燃料噴射量を多めにしつつ、未燃で残っている燃料に対して触媒13の手前で排気管12に設置された空気インジェクターから追加の空気を送り込み、残った燃料を触媒13付近で燃焼させることで、触媒温度を上昇させたりすることができる。
このような触媒暖機運転によって、エンジン1の始動の際に触媒13を活性温度まで上昇させ、触媒13の浄化機能を確保することができる。しかしながら、EV走行中は、エンジン1が停止している状態なので、触媒暖機運転を行った後でもその間に触媒が冷えてしまい、停止状態にあるエンジン1を再始動する際に、エミッションが悪化するおそれがある。そこで、エンジン1の再始動時に再度触媒暖機運転を行うことで、EV走行中に冷えた触媒13によってエミッションが悪化することを抑制することができる。
図2は、触媒13の触媒温度の温度遷移と、エンジン1の再始動時の触媒暖機運転の実行有無とを説明するための図である。図2の例において、縦軸は触媒温度を、横軸は時間を示している。図2に示すように、例えば、イグニッションスイッチがオンされた後の走行制御において、時刻t1で初めてエンジン1が始動するとき、制御装置30は、触媒暖機運転を実行するように制御する。
ここで、エンジン1の「始動」とは、イグニッションスイッチがオンされて車両100の走行制御が開始され、イグニッションスイッチがオフされて走行制御が終了するまでの間に行われる初回のエンジン1の始動であり、触媒暖機運転が必ず行われる。一方、エンジン1の「再始動」とは、初回のエンジン1の始動後、つまり、エンジン1の始動に伴う触媒暖機運転後に、エンジン1を停止して走行用モータのみの駆動力を用いたEV走行を行い、その後に停止状態にあるエンジン1を再度始動すること、又は、停止状態にあるエンジン1を再度始動した後に、さらにエンジン1を停止して走行用モータのみの駆動力を用いたEV走行を行い、その後に停止状態にあるエンジン1を再度始動することである。
また、図2の例において、ソーク温度とは、エンジン1が停止したときから次に始動するまでの温度であり、例えば、イグニッションスイッチがオンされた後において、エンジン1が初めて始動する前のエンジン1が停止している状態の触媒温度である。
時刻t1でのエンジン1の初回始動時における触媒暖機運転により、触媒温度は、触媒活性温度T_cc_thまで上昇する。そして、触媒暖機運転後の継続した通常のエンジン1の駆動制御によって、エンジン1の作動継続時間、吸入空気量及びエンジン回転数に応じて触媒温度が触媒活性温度T_cc_thよりもさらに上昇する(時刻t11〜時刻t12)。
そして、制御装置30は、時刻t12からエンジン1を停止してEV走行による車両100の走行制御を行うことができる。時刻t12からエンジン1が停止された状態で車両100の走行制御が行われると、触媒暖機運転後の触媒温度は、車速、エンジン停止中の時間及び触媒13の雰囲気温度に応じて低下する。
例えば、図2の例において、実線及び一点鎖線で示すように、触媒温度が低下する。実線で示す触媒温度の遷移は、触媒13の雰囲気温度が高く、かつ車速が低いケースであり、一点鎖線で示す触媒温度の遷移は、触媒13の雰囲気温度が低く、かつ車速が高いケースを示している。実線で示す触媒温度の遷移のように、触媒13の温度が低下し難い状況では、時刻t2におけるエンジン再始動時における触媒温度、言い換えれば、エンジン1の停止中の触媒温度T_cc(n)が、触媒活性温度T_cc_thよりも低くなっていない。したがって、時刻t2でのエンジン再始動時に触媒暖機運転を行う必要はない。
一方、一点鎖線で示す触媒温度の遷移では、触媒13の温度が低下し易い状況なので、時刻t2でのエンジン再始動時における触媒温度T_cc(n)が触媒活性温度T_cc_thよりも低くなってしまう。そこで、時刻t2のエンジン再始動時に、触媒暖機運転を行う。
したがって、CDモードでの走行中に、停止しているエンジン1を再始動するとき、触媒暖機運転を行えば、エンジン再始動時のエミッションの悪化を抑制することができる。一方で、CSモードにおいても、EV走行を行い、その後に停止しているエンジン1が再始動されることがあるが、CSモードでの走行は、CDモードに比べてエンジン1が停止している時間が短い。
このため、CSモード走行中にCDモードと同様の触媒暖機制御を行うと、触媒温度がそれほど低下していないにもかかわらず、不要な触媒暖機運転を実行してしまうおそれがある。不要な触媒暖機運転は、燃費の悪化に繋がる。
また、エンジン1の再始動時の触媒暖機運転の実行有無を制御する際、触媒温度を用いることができるが、把握される触媒温度には、誤差が含まれることがある。このため、あまり触媒温度が低下していない状態でも、誤差によって再度触媒暖機運転を行ってしまうおそれがある。触媒暖機運転後に触媒温度があまり低下していない状態で、再度触媒暖機運転を行うと、触媒13の高温異常や触媒劣化を招くおそれがある。
そこで、本実施例では、CDモード及びCSモードの走行特性に応じて、エンジン再始動時における触媒暖機運転の実行を制御する。図3は、本実施例のCDモードとCSモードとを切り替えて行う走行制御と、エンジン再始動時の触媒暖機制御との関係を説明するための図である。図3の例において、縦軸はバッテリ6のSOC、横軸は時間を示している。なお、図3に示した時刻t1,t12、t2は、図2と同じ時刻を示している。
図3に示すように、制御装置30は、イグニッションスイッチがオンされた後のCDモードでの走行制御中に、例えば、アクセル開度が高い等に応じて時刻t1で、エンジン1を始動させる。このとき、初回のエンジン1の始動であるため、制御装置30は、触媒暖機運転を実行するように制御する。
そして、制御装置30は、時刻t12においてエンジン1を停止し、第2MG3のみの動力を用いたEV走行1を行う。EV走行1において、アクセル開度が高い等に応じて時刻t2でエンジン1の再始動が行われる。制御装置30は、エンジン再始動1の時点で、触媒温度T_cc(n)が触媒活性温度T_cc_thよりも低いか否かを判別し、触媒温度T_cc(n)が触媒活性温度T_cc_thよりも低いとき、再度触媒暖機運転を実行させるように制御する。なお、触媒温度T_cc(n)は、エンジン1の始動に伴う触媒暖機運転後のエンジン1を停止して第2MG3によって車両走行している間の触媒温度である。
一方、制御装置30は、バッテリ6のSOC低下に伴い、SOCがSOC_thよりも低くなると、走行モードをCDモードからCSモードに切り替える。制御装置30は、エンジン1の駆動力及び第2MG3の駆動力を用いて、走行制御を行う。このとき、CSモード中に、時刻t22において回生エネルギの充電によってバッテリ6のSOCがSOCthを上回ると、制御装置30は、エンジン1を停止して第2MG3の動力のみを用いたEV走行を時刻t23まで行うことができる。そして、時刻t23において、停止状態のエンジン1が再始動するが、このとき、制御装置30は、CSモードでの走行制御なので、触媒暖機運転を実行しないように制御する。
このように、触媒暖機運転後に停止状態にあるエンジン1を再始動する際の触媒温度T_cc(n)が触媒活性温度T_cc_thよりも低いとき、再度触媒暖機運転を実行させる触媒暖機制御を行いつつ、エンジン再始動時の触媒温度が低い状態になり易いCDモード及び触媒温度が低い状態になり難いCSモードの各走行モード特性に応じて、CSモードでの走行中に停止状態にあるエンジン1が再始動するときは、触媒暖機運転を実行しないように制御する。これにより、エンジン再始動時のエミッションの悪化を抑制でき、かつ不要な触媒暖機運転の抑制による燃料向上及び触媒の高温異常等の抑制を図ることができる。
なお、制御装置30は、CDモードによる走行制御からCSモードによる走行制御に切り替える際、CSモードへの切り替え前準備として、エンジン1が停止していれば、CDモード中にエンジン1を始動してからCSモードでの走行制御を開始する。
図3の例において、時刻t12でエンジン1を停止してEV走行2を行い、その間にエンジン1が再始動することなくバッテリ6のSOCがSOC_thまで低下したとき、制御装置30は、CSモードへの切り替え前の時刻t21において、触媒温度T_cc(n)が触媒活性温度T_cc_thよりも低ければ、再度触媒暖機運転を実行させるように制御する(エンジン再始動2)。
次に、図4は、本実施例のCSモードで走行制御を開始したときのエンジン再始動時の触媒暖機制御を説明するための図である。図4に示すように、制御装置30は、イグニッションスイッチがオンされた後に、バッテリ6のSOCがSOC_thよりも低ければ、CSモードで走行制御を開始する。
制御装置30は、時刻t3においてイグニッションスイッチがオンされた後の初回のエンジン1の始動時に、触媒暖機運転を行うように制御するものの、時刻t31において回生エネルギの充電によってバッテリ6のSOCがSOCthを上回り、時刻t32までエンジン1を停止して第2MG3の動力のみを用いたEV走行を行っても、CSモードでの走行制御なので、時刻t32において、停止状態にあるエンジン1が再始動するとき、触媒暖機運転を実行しないように制御することができる。なお、図4の例は、CSモードで走行制御を開始することを前提に、図3で示したCSモードの走行制御領域を拡大したものである。
図5は、本実施例の車両100の制御装置30とセンサ機器類の構成を示す図である。制御装置30は、図5に示すような各センサ機器の検出結果を用いて、CDモード及びCSモードに応じた触媒暖機制御を遂行する。図5に示すように、制御装置30は、メモリ30aを有する。メモリ30aには、車両100の制御及び触媒暖機制御に必要な各種情報が記憶される。
制御装置30には、車速センサ21、エンジン回転数センサ22、吸入空気量センサ23、及び外気温センサ24の各検出値が入力される。外気温センサ24は、車両100の外気温を検出する温度センサであり、検出結果を制御装置30に出力する。外気温センサ25の検出結果は、触媒13の雰囲気温度として用いることができる。
また、制御装置30は、バッテリ6の状態を把握するために、バッテリ6の端子間電圧を検出する電圧センサ25、バッテリ6の充放電電流を検出する電流センサ26及びバッテリ6の電池温度を検出する電池温度センサ27から各信号が入力される。制御装置30は、電圧センサ25や電流センサ26の検出値に基づいてSOCや満充電容量を算出してバッテリ6のSOCや劣化状態などを管理する。SOCや満充電容量は、公知の手法により算出することができる。
図6は、本実施例の触媒暖機制御の処理フローを示す図である。図7は、エンジン1の停止前の触媒温度の推定処理に用いられるマップ例を示す図である。図6に示す処理は、車両のイグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでの間、所定のサイクルタイムで繰り返し行われる。
図6に示すように、制御装置30は、車両100のイグニッションスイッチがオンされた後に、停止中のエンジン1を作動させる(エンジンON)か否かを判別する(S101)。停止中のエンジン1を作動させると判別された場合、制御装置30は、エンジン1の始動が、イグニッションスイッチがオンされた後に初めて始動されるものであるか否かを判別する(S102)。ここで、エンジン1の始動履歴は、メモリ30aに記憶しておくことができる。
制御装置30は、イグニッションスイッチがオンされた後の初めてのエンジン始動である場合(S102のYES)、触媒暖機運転を実行するように制御する(S103)。例えば、図2で説明した、時刻t1でのエンジン1の始動時に相当する。制御装置30は、触媒暖機運転後のエンジン作動継続時間を計測し(S106)、エンジン停止前の触媒温度T_cc_offの推定処理を行う(S107)。
ここで、ステップS107のエンジン停止前の触媒温度T_cc_offの推定処理とは、図2で説明した触媒暖機運転後のEV走行が行われるまでの触媒温度を推定する処理である。触媒温度T_cc_offは、触媒暖機運転後のエンジン1の作動継続時間、平均吸入空気量及び平均エンジン回転数によって推定することができる。
したがって、図7(a)〜図7(c)に示すように、エンジン1の作動継続時間毎に、平均吸入空気量及び平均エンジン回転数に応じた触媒温度を予め測定してマップ化することができる。制御装置30は、ステップS106におけるエンジン1の作動継続時間の計測結果から、メモリ30aに予め記憶されているマップを特定し、選択されたマップを用いて、エンジン回転数センサ22及び吸入空気量センサ23の検出結果から触媒温度T_cc_offを算出することができる。
なお、初回のエンジン1の始動以降、エンジン1が継続して作動しているときは、次のサイクルタイムでの処理において、制御装置30は、初回のエンジン1の始動でないと判別し、ステップS104に進む。そして、ステップS104において制御装置30は、イグニッションスイッチがオンされた後のエンジン1の再始動、つまり、初回のエンジン1の始動後に一度もエンジンが停止していない状態であると判別する。制御装置30は、エンジン1の始動後に一度もエンジンが停止していない状態であれば、ステップS106及びS107の処理を行い、その間の時間経過に伴って変化する触媒温度T_cc_offを繰り返し算出する。
次に、ステップS101において停止中のエンジン1を作動させないと判別された場合、制御装置30は、ステップS108に進み、メモリ30aを参照してイグニッションスイッチがオンされた後にエンジン1が始動されているか否かを判別する。エンジン1が一回も始動されていない場合は、図6に示す処理を終了する。
一方、ステップS108において、イグニッションスイッチがオンされた後にエンジン1が始動されていた場合、制御装置30は、エンジン1が一度始動した後のEV走行によってエンジン1が停止状態にあると判別し、EV走行中の触媒13の触媒温度T_cc(n)の推定処理を行う(S109)。
ステップS109の触媒温度T_cc(n)の推定処理は、図2で説明した、エンジン1の始動に伴う触媒暖機運転後のエンジン1を停止してEV走行している間(時刻t12〜時刻t2)の触媒温度を推定する。
触媒温度T_cc(n)の推定処理は、EV走行中の車速spd[km/h]及びEV走行時間Δt[s]、触媒13の雰囲気温度T_amb[K]、触媒13の熱伝達特性によって算出することができる。触媒13の熱伝達特性は、触媒13の伝熱面積A[m2]、熱伝達率h[W/(m2×K×km/h)]、熱容量q[J/K]を含み、予め実験等によって求めることができる。
そして、制御装置30は、「触媒温度T_cc(n)=T_cc_off−(T_cc(n−1)−T_amb)×A×h×spd×Δt/q」の算出式により、エンジン1の始動に伴う触媒暖機運転後にエンジン1を停止してからEV走行している現時点までの触媒温度T_cc(n)を算出する。なお、nは、算出回数を示している。
制御装置30は、ステップS109において触媒温度T_cc(n)を算出した後、ステップS110に進み、現在の走行モードがCSモードであるか否かを判別する。上述したように、本実施例の触媒温度T_cc(n)を用いた触媒暖機制御は、CSモードでは触媒暖機運転を実行しないように制御される。このため、制御装置30は、CSモードであるとき、触媒温度T_cc(n)に固定値T_cc_hotを代入する。固定値T_cc_hotは、触媒活性温度T_cc_thよりも高い値が設定される。
制御装置30は、図2の時刻t12から時刻t2までの間、ステップS101,S108のYES,S109を繰り返し行い、時間経過に伴って変化するその時点での触媒温度T_cc(n)を算出する。そして、図2で説明した、EV走行後のエンジン1の再始動を行う時刻t2において、制御装置30は、ステップS101で停止中のエンジン1を作動させる判別され、ステップS102において時刻t2でのエンジン再始動が、イグニッションスイッチがオンされた後に初めてのエンジン始動でないと判別されるので、ステップS104に進む。
ステップS104では、制御装置30は、イグニッションスイッチがオンされた後のエンジン1の再始動であるか否かを判別する。このとき、制御装置30は、図2で説明した時刻t2におけるEV走行に伴って停止していたエンジン1が再始動されると判別し、ステップS105に進む。
ステップS105において、制御装置30は、時刻t2でのエンジン再始動時の触媒温度T_cc(n)が、閾値よりも小さいか否かを判別する。閾値としては、触媒活性温度T_cc_thが用いられる。エンジン再始動時の触媒温度T_cc(n)が、閾値よりも小さいとき、制御装置30は、ステップS103に進み、エンジン1の再始動に伴って触媒暖機運転を実行するように制御する。その後は、エンジン1の継続的な作動によるステップS106,S107を経た触媒温度T_cc_offの推定処理が行われる。
一方、ステップS105において、エンジン再始動時の触媒温度T_cc(n)が閾値以上であると判別されたときは、CDモードであっても触媒暖機運転を実行しないように制御し、ステップS103をスキップしてステップS106,S107の触媒温度T_cc_offの推定処理を行う。
ステップS105の処理において、CDモードでの走行制御中の場合、触媒温度T_cc(n)は、ステップS109で算出された推定値が用いられる。一方、CSモードでの走行制御中は、ステップS111で代入された固定値T_cc_hotが用いられる。固定値T_cc_hotは、閾値(触媒活性温度T_cc_th)よりも大きい値に設定されるため、CSモードでの走行制御中は、常にステップS105においてエンジン再始動時の触媒温度T_cc(n)が閾値以上であると判別され、触媒暖機運転が実行されないように制御されることになる。
また、図4で示したCSモードで走行制御を開始したとき、図6の触媒暖機制御では、時刻t3においてイグニッションスイッチがオンされた後の初回のエンジン1の始動時には、必ず触媒暖機運転が行われるように制御されるが、一度触媒暖機運転が行われると、CDモードに比べてEV走行する時間が短い(エンジン1の停止時間が短い)ので、時刻t31でエンジン1を停止して第2MG3の動力のみを用いたEV走行を行い、時刻t32で停止状態にあるエンジン1が再始動するときは、触媒温度T_cc(n)に関係なく、触媒暖機運転を実行しないように制御されることになる。
なお、上記説明において、図2の時刻t2でエンジン1が再始動した後、さらにエンジン1を停止してEV走行が行われることもある。つまり、2回目以降のエンジン1の再始動時においても、図6に示した触媒暖機制御の処理フローに従い、CDモード中にエンジン1を停止したEV走行によって触媒温度T_cc(n)が閾値よりも低ければ、再度触媒暖機運転が行われるように制御される。