JP6423230B2 - ローディングアーム用緊急離脱システム - Google Patents

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Description

本発明は、低温流体用ローディングアームに装備される緊急離脱システムに関するものである。
LNG運搬船と陸上のLNGタンクの間でLNGを移送する場合、陸上側のローディングアームをLNG運搬船のLNG配管のマニホールドに接続して、LNGのローディングやアンローディングを行う(特許文献1、特許文献2参照)。ローディングアームをLNG運搬船のLNG配管のマニホールドに接続してローディングやアンローディング中に、LNG運搬船の動揺によりローディングアームが破損するのを防止する為に、ローディングアームには緊急離脱システムが装備されている。
図4は、低温流体用のローディングアームの緊急離脱システムが分離された状態を示す模式図である。緊急離脱システム100は、1対の弁ケース101a,101bに組み込んだ1対の緊急遮断用ボール弁102a,102bと、この1対のボール弁102a,102bの間で弁ケース101a,101bに形成した1対の接続フランジ103a,103bと、1対の接続フランジ103a,103bを解除可能に連結する連結手段(図示略)と、1対のボール弁102a,102bを同時に遮断する遮断操作手段(図示略)とを備えている。 緊急離脱の際には、遮断操作手段により1対のボール弁102a,102bを同時に遮断状態(閉弁状態)に切換えてから、連結手段により1対の接続フランジ103a,103bを分離する。
実用新案登録第2561667号公報 特開平11−210990号公報
緊急離脱に際して緊急遮断用ボール弁102a,102bは遮断状態に切換えられ、1対の接続フランジ103a,103bが分離されるため、1対のボール弁102a,102bの間に収容されていた低温流体が気化し周辺に拡散する。ここで、低温流体が例えば液化水素である場合、ボール弁102a,102bの弁体104a,104bは液化水素の温度(−253℃)に近い低温状態であるため、外気に接する弁体104a,104bの表面には空気が結露した液体空気105a,105b(約−190℃)が発生して滞留し、この液体空気105a,105bは酸素濃度も高いため、前記のように周辺に拡散した水素ガスや、ボール弁102a,102bの微小隙間から漏出した液化水素や水素ガスと爆発的に化学反応する虞がある。
本発明の目的は、緊急離脱時に弁体の表面に液体空気が発生するのを防止可能な低温流体用のローディングアーム用緊急離脱システムを提供することである。
請求項1のローディングアーム用緊急離脱システムは、低温流体用ローディングアームに装備される緊急離脱システムにおいて、低温流体用通路を形成する第1弁ケースと第1弁ケースの一端部の第1接続フランジと第1弁ケース内の低温流体用通路を遮断可能な第1緊急遮断用ボール弁とを備えた第1弁ユニットと、低温流体用通路を形成する第2弁ケースと第2弁ケースの一端部の第2接続フランジと第2弁ケース内の低温流体用通路を遮断可能な第2緊急遮断用ボール弁とを備えた第2弁ユニットとを備え、前記第1,第2弁ユニットは、第1,第2接続フランジを突き合わせた状態で分離可能に直列接続され、第1,第2弁ユニットの少なくとも一方の緊急遮断用ボール弁の近傍部において、前記ボール弁よりも接続フランジ側の低温流体用通路に、不活性ガスを注入可能な不活性ガス注入手段を設けたことを特徴としている。
請求項2のローディングアーム用緊急離脱システムは、請求項1の発明において、前記少なくとも一方の緊急遮断用ボール弁の近傍部において、ボール弁に対して前記接続フランジと反対側の低温流体用通路に、低温流体の気化ガスと同種のガスを注入可能な同種ガス注入手段を設けたことを特徴としている。
請求項3のローディングアーム用緊急離脱システムは、請求項2の発明において、両方の緊急遮断用ボール弁の近傍部に、前記不活性ガス注入手段と前記同種ガス注入手段を夫々設けたことを特徴としている。
請求項4のローディングアーム用緊急離脱システムは、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記低温流体が液化水素であり、前記不活性ガスがヘリウムガス又は窒素ガスであり、前記気化ガスが水素ガスであることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、第1緊急遮断用ボール弁を備えた第1弁ユニットと、第2緊急遮断用ボール弁を備えた第2弁ユニットとを備え、第1,第2弁ユニットは、第1,第2接続フランジを突き合わせた状態で分離可能に直列接続され、第1,第2弁ユニットの少なくとも一方の緊急遮断用ボール弁の近傍部において、前記ボール弁よりも接続フランジ側の低温流体用通路に、不活性ガスを注入可能な不活性ガス注入手段を設けたため、緊急離脱直後から不活性ガス注入手段により前記ボール弁よりも接続フランジ側の低温流体用通路に不活性ガスを注入することにより、外気側のボール弁の弁体の表面を不活性ガスで覆って、弁体の表面に液体空気が発生するのを確実に防止することができ、低温流体と酸素との爆発的な化学反応が生じるのを防止できる。
請求項2の発明によれば、前記少なくとも一方の緊急遮断用ボール弁の近傍部において、ボール弁に対して前記接続フランジと反対側の低温流体用通路に、低温流体の気化ガスと同種のガスを注入可能な同種ガス注入手段を設けたため、緊急離脱直後から同種ガス注入手段により前記の同種ガスを注入することで、ボール弁の弁体と低温流体の間に同種ガスのガス層を形成し、弁体が低温流体で冷却されるのを防止して弁体の表面に液体空気が発生するのを一層確実に防止することができる。
請求項3の発明によれば、両方の緊急遮断用ボール弁の近傍部に、前記不活性ガス注入手段と前記同種ガス注入手段を夫々設けたため、両方の緊急遮断用ボール弁において請求項2と同様の効果が得られる。
請求項4の発明によれば、前記低温流体が液化水素であり、前記不活性ガスがヘリウムガス又は窒素ガスであり、前記同種ガスが水素ガスであるため、液化水素のローディングやアンローディングが可能になる。
本発明の実施例に係る液化水素輸送船とローディングアームの説明図である。 ローディングアーム用緊急離脱システム(接続状態)の断面図である。 ローディングアーム用緊急離脱システム(分離状態)の断面図である。 出願人が先行技術から推定したローディングアーム用緊急離脱システムに係る概略説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、液化水素運搬船1の液化水素タンク1aから陸上の液化水素タンク(図示略)に液化水素をアンローディングしたり、その反対に陸上の液化水素タンクから液化水素運搬船1に液化水素をローディングするために、陸上側には真空断熱二重管構造に構成した低温流体用ローディングアーム2が装備され、この低温流体用ローディングアーム2は、図示外の真空断熱二重管を介して液化水素タンクに接続されている。
このローディングアーム2を介して液化水素のローディングやアンローディングを行う場合、ローディングアームの先端の継手部3を液化水素運搬船1上の液化水素配管のマニホールド4の継手部5に接続してから液化水素の移送を行う。
ローディングアーム2をマニホールド4に接続した状態のとき、天候が悪化して液化水素運搬船1が激しく動揺すると、ローディングアーム2が破損する虞がある。そこで、この低温流体用ローディングアーム2には緊急離脱システム6が装備されている。
次に、緊急離脱システム6について図2、図3に基づいて説明する。
この緊急離脱システム6は、第1緊急遮断用ボール弁11(以下、第1ボール弁という)を有する第1弁ユニット10と、第2緊急遮断用ボール弁21(以下、第2ボール弁という)を有する第2弁ユニット20と、第1,第2弁ユニット10,20の第1,第2接続フランジ12,22を解除可能に連結する複数の連結機構30と、緊急離脱の際に第1,第2ボール弁11,21を同時に遮断状態(閉弁状態)となるように操作する遮断操作機構40と、第1,第2弁ユニット10,20に装備された第1,第2不活性ガス注入手段50A,50B及び第1,第2同種ガス注入手段60A,60Bとを備えている。
次に、第1弁ユニット10について説明する。
第1弁ユニット10の上端部は、低温流体用ローディングアーム2の真空断熱二重管7にフランジ接続されている。この真空断熱二重管7は、液化水素通路7pを形成する内管7aとこの内管7aとの間に真空層7bを空けて内管7aに外嵌された外管7cとを有する。第1弁ユニット10は、液化水素通路13(低温流体用通路に相当する)とその外周側を囲繞する真空層14とを形成する二重構造の第1弁ケース15と、第1弁ケース15の下端部の第1接続フランジ12と、第1弁ケース15内の液化水素通路13を遮断可能な第1ボール弁11とを備えている。
第1弁ケース15は真空断熱二重構造に構成されており、第1弁ケース15は、液化水素通路13を形成する内側ケース13aと、この内側ケース13aとの間に真空層14を空けて内側ケース13aの外周側を囲繞する外側ケース14aとを備えている。内側ケース13aの上端部のフランジ部13bは、真空断熱二重管7の内管7aのフランジ部7dにボルト締結され、外側ケース14aの上端部のフランジ部14bは、真空断熱二重管7の外管7cのフランジ部7eにボルト締結されている。内側ケース13aと外側ケース14aの下端部には、真空層14を閉じる第1接続フランジ12が形成されている。
次に、第1ボール弁11について説明する。
第1ボール弁11は、内側ケース13aに装着された部分球面状の内周面を有する弁シート11aと、この弁シート11aに回転摺動自在に装着された第1弁体11bとを有する。前記弁シート11aと第1弁体11bを装着可能にするため、内側ケース13aは、下半部の大径部材と上半部の小径部材とで構成されている。大径部材と小径部材とはフランジ接続されている。
第1弁体11bは、内側ケース13aの液化水素通路13と同径の液化水素通路11cを有し、図2に示す第1ボール弁11は開弁状態である。第1弁体11bを開閉操作する操作ロッド11dの先端部が第1弁体11bに固着され、操作ロッド11dは第1弁ケース15の外側へ延出している。操作ロッド11dは、液化水素通路11c,13の軸心と直交状の軸心を有する。操作ロッド11dを介して、第1弁体11bを90°回転させると、第1ボール弁11は遮断状態(閉弁状態)になる。
次に、第2弁ユニット20について説明する。
第2弁ユニット20の下端部は、ローディングアーム2の真空断熱二重管8にフランジ接続されている。この真空断熱二重管8は、液化水素通路8pを形成する内管8aと、この内管8aとの間に真空層8bを空けて内管8aに外嵌された外管8cとを有する。第2弁ユニット20は、液化水素通路23(低温流体用通路に相当する)とその外周側を囲繞する真空層24とを形成する二重構造の第2弁ケース25と、第2弁ケース25の上端部の第2接続フランジ22と、第2弁ケース25内の液化水素通路23を遮断可能な第2ボール弁21とを備えている。
第2弁ケース25は真空断熱二重構造に構成されており、第2弁ケース25は、液化水素通路23を形成する内側ケース23aと、この内側ケース23aとの間に真空層24を空けて内側ケース23aの外周側を囲繞する外側ケース24aとを備えている。内側ケース23aの下端部のフランジ部23bは、真空断熱二重管8の内管8aのフランジ部8dにボルト締結され、外側ケース24aの下端部のフランジ部24bは、真空断熱二重管8の外管8cのフランジ部8eにボルト締結されている。内側ケース23aと外側ケース24aの上端部には、真空層24を閉じる第2接続フランジ22が形成されている。
次に、第2ボール弁21について説明する。
第2ボール弁21は、内側ケース23aに装着された部分球面状の内周面を有する弁シート21aと、この弁シート21aに回転摺動自在に装着された第2弁体21bとを有する。前記弁シート21aと第2弁体21bを装着可能にするため、内側ケース23aは、上半部の大径部材と下半部の小径部材とで構成されている。大径部材と小径部材とはフランジ接続されている。
第2弁体21bは、内側ケース23aの液化水素通路23と同径の液化水素通路21cを有し、図2に示す第2ボール弁21は開弁状態である。第2弁体21bを開閉操作する操作ロッド21dの先端部が第2弁体21bに固着され、操作ロッド21dは第2弁ケース25の外側へ延出している。操作ロッド21dは、操作ロッド11dと平行に配設され、液化水素通路21c,23の軸心と直交状の軸心を有する。操作ロッド21dを介して、第2弁体21bを90°回転させると、第2ボール弁21は遮断状態になる。
次に、連結機構30について説明する。
第1,第2弁ユニット10,20の第1,第2接続フランジ12,22を突き合わせた状態にして解除可能に直列的に連結する複数の連結機構30が設けられている。複数の連結機構30は、周方向に適当間隔おきに配設されているが、そのうちの1組の連結機構30について説明する。連結機構30は、複動型の油圧シリンダ31と、クランプ部材32と、クランプ部材32をピン部材33を介して回動自在に枢支するブラケット34であって外側ケース14aに固定されたブラケット34と、油圧シリンダ31のシリンダ本体の上端部をピン部材35を介して回動自在に枢支するブラケット36とを備えている。
クランプ部材32は押圧部32aと鉛直腕部32bと入力部32cとからなる側面視コ字状のもので、鉛直腕部32bの上端部がブラケット34に回動自在に枢支されており、入力部32cには油圧シリンダ31のピストンロッドの下端部が回動自在に連結され、油圧シリンダ31により入力部32cを上方へ引上げ駆動すると、押圧部32aが第2接続フランジ22の下面を上方へ押圧して第1,第2接続フランジ12,22が突き合せ状態に連結されるようになっている。
緊急離脱の際に、第1,第2接続フランジ12,22の連結を解除する際には、油圧シリンダ31のピストンロッドを伸長させると、図3に示すようにクランプ部材32がピン部材33を中心にして回動して第1,第2接続フランジ12,22の連結が解除される。 尚、油圧シリンダ31へはローディングアーム2に沿って配設された油圧ホース31a,31bを介して陸上の油圧供給源70から油圧が供給される。上記油圧供給源70は制御ユニット80により制御される。尚、上記の連結機構30は一例を示すものであり、この連結機構以外の種々の連結機構を採用してもよい。
次に、遮断操作機構40について説明する。
緊急離脱の際に第1,第2ボール弁11,21を同時に遮断する為の遮断操作機構40が設けられている。遮断操作機構40は、第1ボール弁11の操作ロッド11dの外端部に固定された円板部材41aと、この円板部材41aに基端部が固着されて放射方向に延び且つ操作ロッド11d,21dの軸心を含む鉛直面に対して約45°傾斜した揺動アーム42aと、第2ボール弁21の操作ロッド21dの外端部に固定された円板部材41bと、この円板部材41bに基端部が固着されて放射方向に延び且つ操作ロッド11d,21dの軸心を含む鉛直面に対して約45°傾斜した揺動アーム42bと、揺動アーム42aの先端部に装着された水平向きのピン部材43と、揺動アーム42bの先端部に装着された水平向きのピン部材44と、上端部がピン部材43に連結される共とに下端部の係合部45aがピン部材44に係合されたロッド部材45と、ピン部材43に下端部が回動自在に連結されたピストンロッド46aを有する縦向きの複動型の油圧シリンダ46とを備えている。
油圧シリンダ46は、そのシリンダ本体の途中部に固定された1対のピン部材47をローディングアーム2の真空断熱二重管7に固定された支持部材48に回動自在に支持することで、1対のピン部材47を中心にして回動可能に構成されている。緊急離脱に際して、油圧シリンダ46のピストンロッド46aを収縮させると、図3に示すように、ピン部材43が上方へ移動し、揺動アーム42a,42bが上方へ90°回動して第1,第2ボール弁11,21が遮断状態になり、揺動アーム42a,42bが90°回動したとき、ロッド部材45の下端部の係合部45aの弾性変形を介して係合部45aがピン部材44から離脱する。尚、油圧シリンダ46は、ローディングアーム2に沿って配設した油圧ホース49a,49bを介して陸上の油圧供給源70に接続され、その油圧供給源は70は制御ユニット80により制御される。上記の遮断操作機構40は一例を示すものであり、これ以外の種々の遮断操作機構を採用してもよい。
次に、第1,第2不活性ガス注入手段50A,50Bについて説明する。
緊急離脱した時に、第1,第2弁体11b,21bの表面に液体空気が発生するのを防止する為の次のような第1,第2不活性ガス注入手段50A,50Bが設けられている。 第1ボール弁11の近傍部において、第1ボール弁11よりも第1接続フランジ12側の液化水素通路13に不活性ガスを注入可能な第1不活性ガス注入手段50Aが設けられている。同様に、第2ボール弁21の近傍部において、第2ボール弁21よりも第2接続フランジ22側の液化水素通路23に不活性ガスを注入可能な第2不活性ガス注入手段50Bが設けられている。
第1不活性ガス注入手段50Aは、第1弁ユニット10の内側ケース13aの壁部に形成された小孔51aと、この小孔51aに連なるガス通路を有し且つ上記壁部に螺合固定された管継手金具52aと、管継手金具52aからローディングアーム2に沿って配設され且つ陸上の不活性ガスボンベ55に接続された不活性ガス供給通路53aと、この不活性ガス供給通路53aを開閉可能な電磁開閉弁54aなどを備えている。前記不活性ガスボンベ55には、加圧状態の窒素ガス又はヘリウムガスが貯留されており、不活性ガス供給通路53aは強度に優れるガスホースで構成され、電磁開閉弁54aは陸上の制御ユニット80で制御される。
第2不活性ガス注入手段50Bは、第1不活性ガス注入手段50Aと同様の構成ものであるので簡単に説明する。この第2不活性ガス注入手段50Bは、小孔51bと、管継手金具52bと、管継手金具52bからローディングアーム2に沿って延びて前記不活性ガスボンベ55に接続された不活性ガス供給通路53bと、電磁開閉弁54bなどを備えている。不活性ガス供給通路53bは強度に優れるガスホースであって図3のように緊急離脱した際にも機能する十分な長さのガスホースで構成され、電磁開閉弁54bは前記制御ユニット80で制御される。
次に、第1,第2同種ガス注入手段60A,60Bについて説明する。
緊急離脱した時に、第1,第2弁体11b,21bが液化水素に接触して冷却されるのを防止する為に、次のような第1,第2同種ガス注入手段60A,60Bが設けられている。第1ボール弁11の近傍部において、第1ボール弁11に対して第1接続フランジ12と反対側の液化水素通路13に、液化水素の気化ガスと同種の水素ガスを注入可能な第1同種ガス注入手段60Aが設けられている。第2ボール弁21の近傍部において、第2ボール弁21に対して第2接続フランジ22と反対側の液化水素通路23に、液化水素の気化ガスと同種の水素ガスを注入可能な第2同種ガス注入手段60Bが設けられている。
第1同種ガス注入手段60Aは、第1弁ユニット10の内側ケース13aの壁部に形成された小孔61aと、この小孔61aに連なるガス通路を有し且つ上記壁部に螺合固定された管継手金具62aと、管継手金具62aからローディングアーム2に沿って配設され且つ陸上の水素ガスボンベ65に接続された水素ガス供給通路63aと、この水素ガス供給通路63aを開閉可能な電磁開閉弁64aなどを備えている。前記水素ガスボンベ65には、高圧状態の水素ガスが貯留されており、水素ガス供給通路63aは強度に優れるガスホースで構成され、電磁開閉弁64aは陸上の制御ユニット80で制御される。
第2同種ガス注入手段60Bは、第1同種ガス注入手段60Aと同様のものであるので簡単に説明する。この第2同種ガス注入手段60Bは、小孔61bと、管継手金具62bと、管継手金具62bからローディングアーム2に沿って延びて陸上の水素ガスボンベ65に接続された水素ガス供給通路63bと、電磁開閉弁64bなどを備えている。水素ガス供給通路63bは強度に優れるガスホースであって図3のように緊急離脱した際にも機能する十分な長さのガスホースで構成され、電磁開閉弁64bは制御ユニット80で制御される。
次に、以上説明した真空断熱二重管構造に構成した低温流体用ローディングアーム用緊急離脱システム6の作用、効果について説明する。
図2は、緊急離脱システム6を接続状態にして、液化水素運搬船1に対して、ローディングアーム2を介して液化水素のローディングまたはアンローディングを行う状態を示しており、第1,第2接続フランジ12,22は複数の連結機構30により連結されており、第1,第2ボール弁11,21は開弁状態に維持されている。
天候が悪化して液化水素運搬船1の動揺が激しくなり、ローディングアーム2の破損の虞が出て来た場合には、最初に油圧シリンダ46を駆動することで遮断操作機構40を作動させて第1,第2ボール弁11,21を遮断状態(閉弁状態)に切換える。それとほぼ同時に、図3に示すように、複数の連結機構30の複数の油圧シリンダ31を操作して、複数のクランプ部材32をアンクランプ位置に切換え、第1,第2接続フランジ12,22を分離状態にする。この第1,第2接続フランジ12,22の分離と並行して、第1,第2不活性ガス注入手段50A,50Bから不活性ガスを液化水素通路13,23に注入すると共に、第1,第2同種ガス注入手段60A,60Bから液化水素通路13,23に水素ガスを注入する。
尚、上記の不活性ガスの注入は、緊急離脱システム6が分離されている間は継続する。 また、水素ガスの注入は、液化水素通路13,23に所定の体積の水素ガスの気相部を形成できるだけの量の水素ガスの注入後、または所定時間の水素ガスの注入後に注入を停止してもよい。但し、注入した水素ガスが冷却されて液化する可能性もあるため、緊急離脱システム6が分離されている間は水素ガスの注入と注入停止を断続的に継続してもよい。
上記のように、第1,第2接続フランジ12,22の分離とほぼ同時に、第1,第2ボール弁11,21と第1,第2接続フランジ 12,22の間において第1,第2ボール弁11,21の近傍の液化水素通路12,23に不活性ガスを注入するため、第1,第2ボール弁11,21の間の液化水素が気化した水素ガスが不活性ガスにより大気中へパージされて希釈されると共に、第1,第2ボール弁11,21の第1,第2弁体11bb,21bが大気に接触しなくなるため、極低温の液化水素(−253℃)とほぼ等しい極低温の第1,第2弁体11b,21bの表面に液体空気(約−190℃)が発生するのを確実に防止することができる。
仮に、第1,第2ボール弁11,21の微小隙間から大気側へ液化水素又はその気化ガスがリークしたとしても、それら液化水素または水素ガスと、液体空気とが接触するのを確実に防止することができる。
しかも、第1,第2接続フランジ12,22の分離とほぼ同時に、第1,第2ボール弁11,21の近傍部において第1,第2接続フランジ12,22と反対側の液化水素通路13,23に水素ガスを注入するため、前記液化水素通路13,23に水素ガスの気相部を形成して、第1,第2弁体11b,21bが液化水素に接触するのを確実に防止し、第1,第2弁体11b,21bが−190℃以下の極低温に冷却されるのを防止して、第1,第2弁体11b,21bの表面に液体空気が発生するのを防止できる。
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)第1,第2緊急遮断用ボール弁11,21の構造は一例を示すもので、この構造に限定されるものではない。例えば、緊急離脱システム6の第1,第2弁ユニット10,20の各々において、真空層14,24を省略し、内側ケースと外側ケースとを一重のケース部材で構成してもよい。
2)遮断操作機構40は、共通の油圧シリンダ46により開弁操作するように構成したが、第1,第2緊急遮断用ボール弁11,21を独立の油圧式または電気式アクチュエータで開弁操作するように構成してもよい。
3)連結機構30は油圧シリンダ31で駆動する構成としたが、電気的アクチュエータで駆動する構成としてもよい。
4)ローディングアーム2の緊急離脱システム6を作動させて第1,第2接続フランジ12,22を分離した際に、ローディングアーム2内の液化水素通路のうちの第1緊急遮断用ボール弁11よりも上方の部分には液化水素が残留しないような場合には、第1緊急遮断用ボール弁11の為の不活性ガス注入手段50Aと同種ガス注入手段60Aを省略してもよい。
5)その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施することが可能である。
本発明は、低温流体用ローディングアームに装備される緊急離脱システムを提供する。
2 ローディングアーム
6 緊急離脱システム
10 第1弁ユニット
11 第1緊急遮断用ボール弁
12 第1接続フランジ
13 低温流体用通路
14 真空層
15 第1弁ケース
20 第2弁ユニット
21 第2緊急遮断用ボール弁
22 第2接続フランジ
23 低温流体用通路
24 真空層
25 第2弁ケース
50A,50B 不活性ガス注入手段
60A,60B 同種ガス注入手段

Claims (4)

  1. 低温流体用ローディングアームに装備される緊急離脱システムにおいて、
    低温流体用通路を形成する第1弁ケースと、第1弁ケースの一端部の第1接続フランジと、第1弁ケース内の低温流体用通路を遮断可能な第1緊急遮断用ボール弁とを備えた第1弁ユニットと、
    低温流体用通路を形成する第2弁ケースと、第2弁ケースの一端部の第2接続フランジと、第2弁ケース内の低温流体用通路を遮断可能な第2緊急遮断用ボール弁とを備えた第2弁ユニットとを備え、
    前記第1,第2弁ユニットは、第1,第2接続フランジを突き合わせた状態で分離可能に直列接続され、
    第1,第2弁ユニットの少なくとも一方の緊急遮断用ボール弁の近傍部において、前記ボール弁よりも接続フランジ側の低温流体用通路に、不活性ガスを注入可能な不活性ガス注入手段を設けたことを特徴とするローディングアーム用緊急離脱システム。
  2. 前記少なくとも一方の緊急遮断用ボール弁の近傍部において、ボール弁に対して前記接続フランジと反対側の低温流体用通路に、低温流体の気化ガスと同種のガスを注入可能な同種ガス注入手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のローディングアーム用緊急離脱システム。
  3. 両方の緊急遮断用ボール弁の近傍部に、前記不活性ガス注入手段と前記同種ガス注入手段を夫々設けたことを特徴とする請求項2に記載のローディングアーム用緊急離脱システム。
  4. 前記低温流体が液化水素であり、前記不活性ガスがヘリウムガス又は窒素ガスであり、前記同種ガスが水素ガスであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のローディングアーム用緊急離脱システム。
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