本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置10について、図1〜図3を参照して説明する。図1〜図3では、所定の各部を接続する電気配線の図示は適宜省略されている。インクジェット記録装置10では、記録媒体14が搬送され、記録媒体14の記録面15に画像が記録される。インクジェット記録装置10では、各種の記録媒体14を対象として画像が記録される。記録媒体14としては、例えば、布帛又は建築用資材が挙げられる。実施形態では、記録媒体14が長尺状の布帛である場合を例に説明する。画像の記録に用いられるインク色は、ブラック、マゼンタ、イエロー及びシアンの4色とする。インク色は、これら以外の色であってもよい。インク色数は、3色以下又は5色以上としてもよい。図1で搬送方向の下流側に図示された記録媒体14の部分に付した網点模様は、記録媒体14に記録された画像に対応する。
インクジェット記録装置10は、図1に示すように、搬送部20と、記録部30と、移動部40と、メインタンク50K,50M,50Y,50Cと、供給流路51K,51M,51Y,51Cと、サブタンク52K,52M,52Y,52Cと、制御装置120を備える。更に、インクジェット記録装置10は、減圧部140を備える(図2参照)。図1では、減圧部140の図示は省略されている。図2において、ハッチングは、断面された部分を示す。
搬送部20は、記録媒体14を、記録媒体14の長手方向に沿って搬送する。搬送部20によって搬送される記録媒体14は、記録部30を通過する。実施形態では、搬送部20によって記録媒体14が搬送される方向を「搬送方向」という。搬送方向は、記録媒体14の短手方向に直交する。記録媒体14の短手方向は、記録媒体14の幅方向である。記録媒体14の短手方向は、主走査方向に一致する。主走査方向は、後述するように記録部30が移動部40によって往復移動される方向である。搬送方向及びこれと反対方向は、前述した主走査方向に対して「副走査方向」と称されることもある。実施形態では、搬送方向及びこれと反対方向のそれぞれに直交する方向を「主走査方向」という。搬送方向及びこれと反対方向を「副走査方向」という。
記録部30は、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cと、キャリッジ34を備える。インクジェットヘッド31Kは、ブラックインクを吐出し、ブラックインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Kには、ブラックインクを吐出するノズル32が複数形成される。インクジェットヘッド31Mは、マゼンタインクを吐出し、マゼンタインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Mには、マゼンタインクを吐出するノズル32が複数形成される。インクジェットヘッド31Yは、イエローインクを吐出し、イエローインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Yには、イエローインクを吐出するノズル32が複数形成される。インクジェットヘッド31Cは、シアンインクを吐出し、シアンインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Cには、シアンインクを吐出するノズル32が複数形成される。
インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cは、同様の構成を有する。実施形態では、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「インクジェットヘッド31」という。キャリッジ34には、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cが所定の位置に位置決めされた状態でそれぞれ搭載される。インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cは、図1に示すように、主走査方向に隣り合った状態でキャリッジ34に搭載される。各色用のインクジェットヘッド31の配列順序は、図1とは異なる順序としてもよい。これらの配列順序は、諸条件を考慮して適宜決定される。
移動部40は、記録部30を主走査方向に往復移動させる。移動部40は、図1に示すように、2個のプーリ41,42と、タイミングベルト43と、モータ44を含む。2個のプーリ41,42は、搬送部20を基準として、主走査方向の両側にそれぞれ設けられる。プーリ41には、モータ44が連結される。プーリ42は、回転自在に支持される。プーリ41は、モータ44の回転に伴い回転する。タイミングベルト43は、張力が作用した状態でプーリ41,42に架け渡される。タイミングベルト43には、キャリッジ34に固定された支持部46を介して記録部30が取り付けられる。
メインタンク50Kは、ブラックインクを貯留する。供給流路51Kは、メインタンク50Kとサブタンク52Kを接続する。供給流路51Kの途中には、供給弁53Kが設けられる。供給弁53Kは、供給流路51Kを開放し閉鎖する電磁弁である。供給弁53Kが開かれた場合、供給流路51Kは開放状態となる。供給弁53Kが閉じられた場合、供給流路51Kは閉鎖状態となる。供給弁53Kは、サブタンク52Kへのブラックインクの供給時に開かれ、供給の終了時に閉じられる。ブラックインクは、メインタンク50Kから流出し、供給流路51Kと供給弁53Kを流れてサブタンク52Kに供給される。サブタンク52Kに供給されたブラックインクは、接続部54Kを流れて、インクジェットヘッド31Kに供給される。即ち、サブタンク52Kは、インクジェットヘッド31Kに供給されるブラックインクを副次的に貯留するインクタンクである。サブタンク52Kに供給されたブラックインクは、サブタンク52Kの内部に形成された貯留室55(図2及び図3参照)に貯留される。接続部54Kは、サブタンク52Kとインクジェットヘッド31Kを接続し、サブタンク52Kからインクジェットヘッド31Kに供給されるブラックインクが流れる流路である。
メインタンク50Mは、マゼンタインクを貯留する。供給流路51Mは、メインタンク50Mとサブタンク52Mを接続する。供給流路51Mの途中には、供給弁53Mが設けられる。供給弁53Mは、供給流路51Mを開放し閉鎖する電磁弁である。供給弁53Mが開かれた場合、供給流路51Mは開放状態となる。供給弁53Mが閉じられた場合、供給流路51Mは閉鎖状態となる。供給弁53Mは、サブタンク52Mへのマゼンタインクの供給時に開かれ、供給の終了時に閉じられる。マゼンタインクは、メインタンク50Mから流出し、供給流路51Mと供給弁53Mを流れてサブタンク52Mに供給される。サブタンク52Mに供給されたマゼンタインクは、接続部54Mを流れて、インクジェットヘッド31Mに供給される。即ち、サブタンク52Mは、インクジェットヘッド31Mに供給されるマゼンタインクを副次的に貯留するインクタンクである。サブタンク52Mに供給されたマゼンタインクは、サブタンク52Mの内部に形成された貯留室55(図2及び図3参照)に貯留される。接続部54Mは、サブタンク52Mとインクジェットヘッド31Mを接続し、サブタンク52Mからインクジェットヘッド31Mに供給されるマゼンタインクが流れる流路である。
メインタンク50Yは、イエローインクを貯留する。供給流路51Yは、メインタンク50Yとサブタンク52Yを接続する。供給流路51Yの途中には、供給弁53Yが設けられる。供給弁53Yは、供給流路51Yを開放し閉鎖する電磁弁である。供給弁53Yが開かれた場合、供給流路51Yは開放状態となる。供給弁53Yが閉じられた場合、供給流路51Yは閉鎖状態となる。供給弁53Yは、サブタンク52Yへのイエローインクの供給時に開かれ、供給の終了時に閉じられる。イエローインクは、メインタンク50Yから流出し、供給流路51Yと供給弁53Yを流れてサブタンク52Yに供給される。サブタンク52Yに供給されたイエローインクは、接続部54Yを流れて、インクジェットヘッド31Yに供給される。即ち、サブタンク52Yは、インクジェットヘッド31Yに供給されるイエローインクを副次的に貯留するインクタンクである。サブタンク52Yに供給されたイエローインクは、サブタンク52Yの内部に形成された貯留室55(図2及び図3参照)に貯留される。接続部54Yは、サブタンク52Yとインクジェットヘッド31Yを接続し、サブタンク52Yからインクジェットヘッド31Yに供給されるイエローインクが流れる流路である。
メインタンク50Cは、シアンインクを貯留する。供給流路51Cは、メインタンク50Cとサブタンク52Cを接続する。供給流路51Cの途中には、供給弁53Cが設けられる。供給弁53Cは、供給流路51Cを開放し閉鎖する電磁弁である。供給弁53Cが開かれた場合、供給流路51Cは開放状態となる。供給弁53Cが閉じられた場合、供給流路51Cは閉鎖状態となる。供給弁53Cは、サブタンク52Cへのシアンインクの供給時に開かれ、供給の終了時に閉じられる。シアンインクは、メインタンク50Cから流出し、供給流路51Cと供給弁53Cを流れてサブタンク52Cに供給される。サブタンク52Cに供給されたシアンインクは、接続部54Cを流れて、インクジェットヘッド31Cに供給される。即ち、サブタンク52Cは、インクジェットヘッド31Cに供給されるシアンインクを副次的に貯留するインクタンクである。サブタンク52Cに供給されたシアンインクは、サブタンク52Cの内部に形成された貯留室55(図2及び図3参照)に貯留される。接続部54Cは、サブタンク52Cとインクジェットヘッド31Cを接続し、サブタンク52Cからインクジェットヘッド31Cに供給されるシアンインクが流れる流路である。
図1では、供給流路51K,51M,51Y,51Cは、簡略化された状態で図示されている。供給流路51K,51M,51Y,51Cは、記録部30の主走査方向への往復移動に対応可能な状態で設けられる。実施形態では、メインタンク50K,50M,50Y,50Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「メインタンク50」という。供給流路51K,51M,51Y,51Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「供給流路51」という。サブタンク52K,52M,52Y,52Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「サブタンク52」という。供給弁53K,53M,53Y,53Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「供給弁53」という。接続部54K,54M,54Y,54Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「接続部54」という。各色用の供給弁53の切り替えは、後述する制御部122からの制御信号に従い行われる。この点に関する説明は後述する。
インクジェット記録装置10は、上述した各部の他、不図示のポンプを備える。ポンプは、インク色数に対応して4台設けられる。4台のポンプは、供給流路51K,51M,51Y,51Cにそれぞれ設けられる。メインタンク50K,50M,50Y,50Cに貯留された各色のインクは、各色用のポンプによってサブタンク52K,52M,52Y,52Cに供給される。サブタンク52K,52M,52Y,52Cへの各色のインクの供給は、ポンプとは異なる公知の送液部によって行うようにしてもよい。例えば、メインタンク50K,50M,50Y,50C内を加圧等することで行うようにしてもよい。送液部は、公知のインクジェット記録装置にも設けられた構成である。インクジェット記録装置10でも公知のインクジェット記録装置と同様の送液部を採用することができる。そのため、送液部に関する説明は省略する。
制御装置120は、制御部122と、ヘッド駆動部124と、スイッチ部126と、電圧入力部128と、圧力入力部130を備える。図1では、制御部122とヘッド駆動部124とスイッチ部126と電圧入力部128と圧力入力部130は、制御装置120としてまとまった状態で図示されている。但し、制御装置120に含まれるこれら各部は、例えば、制御ボックスのような単一の筐体内に設けられなくてもよい。例えば、スイッチ部126は、インクジェットヘッド31に近い位置に設けられるようにしてもよい。
制御部122は、例えば、CPUと、記憶部と、RAMを含む。CPUは、演算処理を実行し、インクジェット記録装置10で実行される各種の処理を制御する。記憶部は、例えば、不揮発性のメモリ及び/又はハードディスクによって構成される。記憶部には、インクジェット記録装置10で実行される各種の処理のプログラムが記憶される。例えば、画像の記録に関するプログラムが記憶される。RAMは、CPUが記憶部に記憶されたプログラムを実行する際の作業領域となる。RAMには、処理の実行途中に所定のデータが記憶される。
ヘッド駆動部124は、後述するインクジェットヘッド31が備える電極板80に電気的に接続されたヘッド駆動回路である。ヘッド駆動部124は、所定の電圧値の駆動電圧(駆動信号)を所定の周期で出力する。ヘッド駆動部124から出力された駆動電圧は、電極板80に印加される。なお、駆動電圧(駆動信号)は、所定の電圧値の電気パルス信号である。
スイッチ部126は、後述するインクジェットヘッド31が備える複数の圧電素子70のそれぞれに電気的に接続されたスイッチ回路である。スイッチ部126は、複数の圧電素子70の全部又は一部に対応したスイッチを含む。例えば、1個のインクジェットヘッド31に50個の圧電素子70が設けられていたとする。1個のスイッチ部126に25個のスイッチが含まれていたとする。この場合、スイッチ部126は、1個のインクジェットヘッド31に対して合計2個設けられる。
電圧入力部128は、駆動電圧の電圧設定値の入力を受け付ける。作業者は、電圧入力部128を操作し、電圧設定値を入力する。制御部122は、電圧入力部128で受け付けられた電圧設定値を取得する。制御部122は、取得された電圧設定値に応じた電圧値指令をヘッド駆動部124に出力する。ヘッド駆動部124では、電圧値指令に従った電圧値の駆動電圧が所定の周期で出力される。
圧力入力部130は、サブタンク52の貯留室55内の圧力の圧力設定値の入力を受け付ける。作業者は、圧力入力部130を操作し、圧力設定値を入力する。制御部122は、圧力入力部130で受け付けられた圧力設定値を取得する。制御部122は、取得された圧力設定値に従い減圧部140を制御し、貯留室55内の圧力をこの圧力設定値又はこの圧力設定値に応じた範囲に調整する。この点に関する説明は後述する。
減圧部140は、図2に示すように、排気管141と、真空ポンプ142と、バッファタンク143と、第一調整弁144と、第二調整弁145と、圧力センサ146を備える。排気管141は、所定の色用のサブタンク52とバッファタンク143を接続し、バッファタンク143と真空ポンプ142を接続する。バッファタンク143と真空ポンプ142を接続する排気管141の部分には、第一調整弁144が設けられる。即ち、サブタンク52の貯留室55と真空ポンプ142は、途中にバッファタンク143と第一調整弁144が設けられた状態で排気管141によって連結される。
真空ポンプ142は、排気管141によって貯留室55に連結されたバッファタンク143内に存在する空気を吸引する。バッファタンク143は、貯留室55内を大気圧(1013hPa)より低い圧力(負圧)とする場合の緩衝用のタンクである。排気管141で連結された貯留室55とバッファタンク143の間では、空気が流通する。インクジェット記録装置10では、バッファタンク143内の圧力を後述するように調整することで、貯留室55内の圧力を圧力設定値又は圧力設定値に応じた所定の範囲に調整することとしている。但し、バッファタンク143を省略し、直接、貯留室55内に存在する空気を吸引し、貯留室55内の圧力を圧力設定値又は圧力設定値に応じた所定の範囲に調整するようにしてもよい。
第一調整弁144は、バッファタンク143と真空ポンプ142の間となる排気管141の途中の位置に設けられる。第一調整弁144は、排気管141を開放し閉鎖する電磁弁である。第一調整弁144が開かれた場合、排気管141は開放状態となる。第一調整弁144が閉じられた場合、排気管141は閉鎖状態となる。第二調整弁145は、バッファタンク143に設けられる。第二調整弁145は、バッファタンク143を開放し閉鎖する電磁弁である。第二調整弁145のバッファタンク143とは反対側は、大気に通じる。即ち、第二調整弁145が開かれた場合、バッファタンク143は、大気開放状態となる。第二調整弁145が閉じられた場合、大気との繋がりは閉鎖される。圧力センサ146は、バッファタンク143内の圧力を計測する。圧力センサ146によって計測された計測値は、制御部122に入力される。制御部122は、圧力センサ146によって計測された計測値を取得する。制御部122は、計測値に従いバッファタンク143内の圧力を調整する。
この調整は、例えば、バッファタンク143内の圧力を圧力設定値とし、又は、バッファタンク143内の圧力を圧力設定値を基準とした所定の範囲内として行われる。実施形態では、バッファタンク143内の圧力が圧力設定値を基準とした所定の範囲内に調整されることとする。前述した所定の範囲の上限の値を「上限値」といい、下限の値を「下限値」という。圧力設定値と上限値と下限値の関係は、「下限値<圧力設定値<上限値」である。上限値及び下限値は、例えば、圧力設定値に対して「±α%」以内の各値とされる。前述した「±α%」としては、例えば、「±10%」又は「±5%」が挙げられる。前述した範囲のプラス側となる上限値は、大気圧より低い圧力となるように設定される。バッファタンク143内の圧力の調整は、圧力設定値が所定の範囲の中心値とはならない状態で行うようにしてもよい。この他、バッファタンク143内の圧力の調整は、圧力設定値を上限値とし、圧力設定値より所定値だけ低い圧力を下限値とした範囲で行うようにしてもよい。また、バッファタンク143内の圧力の調整は、圧力設定値を下限値とし、圧力設定値より所定値だけ高い圧力を上限値とした範囲で行うようにしてもよい。
<インクジェットヘッド>
インクジェットヘッド31について、図2〜図4を参照して説明する。図3では、サブタンク52に接続される排気管141の部分の図示は省略されている。インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cは、上述した通り、同様の構成を有する。従って、インクジェットヘッド31の説明は、インク色を区別することなく行う。図3及び図4において、ハッチングは、断面された部分を示す。
インクジェットヘッド31は、図3に示すように、流路部60と、複数の圧電素子70と、電極板80と、絶縁シート90を備える。電極板80と絶縁シート90は、振動板100を形成する。インクジェットヘッド31は、サブタンク52より鉛直方向の下側に設けられる。インクジェットヘッド31は、流路部60と電極板80で絶縁シート90を鉛直方向に挟み込んだ状態に組み立てられる。複数の圧電素子70は、電極板80の上面の側で、電極板80と電気的に接続された状態で設けられる。電極板80の上面は、鉛直方向の上側となる電極板80の面である。
流路部60には、図3に示すように、複数のノズル32と、供給口61と、内部流路63が形成される。供給口61には、接続部54が接続される。サブタンク52から流出し接続部54を流れたインクは、供給口61を通過してインクジェットヘッド31に供給される。複数のノズル32は、例えば、図3に示すような状態で吐出面35に形成される。即ち、図3に示す例では、複数のノズル32は、その半数を副走査方向に配列して1列のノズル列とし、このノズル列を主走査方向に2列設けた状態で配置される。この場合、主走査方向の第一側と第二側にそれぞれ配列された2本のノズル列は、副走査方向に所定量だけずれた状態で主走査方向に隣り合って設けられる。吐出面35は、各色用のインクジェットヘッド31でノズル32が形成された面である(図3及び図4参照)。
但し、上述したような複数のノズル32の配置は例示である。従って、複数のノズル32の配置は、上述した配置とは異なる配置であってもよい。実施形態では、主走査方向の第一側で副走査方向に配列された複数のノズル32によるノズル列を「第一ノズル列」という。主走査方向の第二側で副走査方向に配列された複数のノズル32によるノズル列を「第二ノズル列」という。
複数のノズル32は、全て同一形状とされる。ノズル32は、図4に示すように、吐出面35の側のノズル径φ1が、支流部67の側のノズル径φ2より小さいテーパ形状である。テーパを「(φ2−φ1)/Q」によって表すとする。ノズル32のテーパは、例えば、1/2〜3/5程度の傾斜とされる。この場合、テーパ角θは、14°〜17°程度となる。前述した式における「Q」は、ノズル32のノズル長である(図4参照)。
内部流路63は、供給口61から流入したインクを複数のノズル32のそれぞれに流す流路である。従って、内部流路63は、供給口61と複数のノズル32のそれぞれを繋ぐ。内部流路63は、図3に示すように、本流部65と、複数の支流部67を含む。本流部65は、供給口61から連続した流路である。本流部65は、第一ノズル列及び第二ノズル列と同じく副走査方向に延在した状態で形成される。供給口61から本流部65に流入したインクは、本流部65を副走査方向に流れる。複数の支流部67は、本流部65から分岐した流路である。複数の支流部67は、複数のノズル32にそれぞれ繋がる。本流部65から複数の支流部67のそれぞれに流入したインクは、各支流部67を流れて各ノズル32に到達する。
流路部60において、内部流路63の一部は、その内壁がなく開口した状態となる。開口状態となる内部流路63の部分は、図3に示す完成状態のインクジェットヘッド31において、複数の圧電素子70のそれぞれと向かい合う各圧電素子70に対応した支流部67の部分である。流路部60は、例えば、本体部と、ノズルプレートを突き合わせて形成するようにしてもよい。本体部には、供給口61と内部流路63が形成される。ノズルプレートには、複数のノズル32が形成される。ノズルプレートは、20μm〜1mm程度の板厚の薄平板により形成される。
主走査方向の第一側に設けられる複数の圧電素子70は、第一ノズル列を形成する複数のノズル32にそれぞれ繋がる各支流部67に対応して設けられる。主走査方向の第二側に設けられる複数の圧電素子70は、第二ノズル列を形成する複数のノズル32にそれぞれ繋がる各支流部67に対応して設けられる。圧電素子70は、図3に示すように、振動板100を挟んで、各ノズル32に繋がる支流部67と鉛直方向に向かい合った状態となる。各圧電素子70の上面には、個別に不図示の電気配線がなされる。複数の圧電素子70は、各電気配線を介してスイッチ部126に含まれる複数のスイッチにそれぞれ電気的に接続される。圧電素子70は、対応する支流部67が繋がるノズル32からインクを吐出させる駆動素子である。圧電素子70は、ピエゾ素子と称されることもある。
電極板80は、所定の厚みの薄平板である。電極板80の板厚は、数十μm〜数百μm程度である。電極板80は、金属材料等の導電材料により形成される。電極板80の上面には、複数の圧電素子70が主走査方向の各側で副走査方向に並んだ状態で電気的に接続されて設けられる。電極板80は、上述した通り、ヘッド駆動部124と電気的に接続される。電極板80には、ヘッド駆動部124から出力された駆動電圧が所定の周期で印加される。
絶縁シート90は、所定の厚みの薄平板である。絶縁シート90の板厚は、数十μm〜数百μm程度である。絶縁シート90は、樹脂材料等の電気絶縁材料により形成される。絶縁シート90の上面は、電極板80に接する。絶縁シート90の下面は、流路部60に接する。絶縁シート90の下面は、上述した内壁がなく開口した支流部67の部分を覆い、封鎖する。従って、絶縁シート90は、各支流部67の内壁のうちの一部を形成する。上述した通り、電極板80と絶縁シート90は重なり合った状態で振動板100を形成する。振動板100は、圧電素子70の変形に伴い、変形する圧電素子70に接する部分が変形する。この変形は、弾性変形である。従って、圧電素子70が元の状態に戻ると、変形した振動板100の部分も元に戻る。即ち、圧電素子70が元の状態に戻ると、変形した電極板80と絶縁シート90の各部分も元に戻る。
<インクジェット記録方法>
インクジェット記録装置10では、記録媒体14に画像が記録される場合、インクジェット記録方法が実行される。インクジェット記録方法は、記録工程と、搬送工程を含む。搬送工程は、搬送部20によって記録媒体14を搬送する工程である。記録工程は、搬送部20によって搬送されている記録媒体14に画像を記録する工程である。インクジェット記録方法は、制御部122によって制御される。インクジェット記録方法は、次のようにして開始される。即ち、インクジェット記録方法は、画像の記録の開始指令が制御装置120に入力され、制御部122がこれを取得したタイミングで開始される。開始指令を取得した制御部122は、移動部40と記録部30と搬送部20を制御する。これに伴い、記録工程と搬送工程が連動した状態で実行される。
記録工程において、移動部40では、プーリ41に連結されたモータ44が時計回りと反時計回りに往復して回転する。モータ44の回転に伴い、プーリ41が左右両側に往復して回転する。図1でプーリ41の内側に示す「弧状の矢印」は、プーリ41の回転方向を示す。モータ44が所定の方向に回転することでプーリ41が左回転すると、タイミングベルト43も左回転する。プーリ42は、左回転するタイミングベルト43に従動して回転する。これに伴い、記録部30は、主走査方向の第二側から第一側に移動する。記録部30が主走査方向の第一側の移動端に到達すると、モータ44の回転方向は反転し、プーリ41は、右回転する。プーリ41が右回転すると、タイミングベルト43も右回転する。プーリ42は、右回転するタイミングベルト43に従動して回転する。これに伴い、記録部30は、主走査方向の第一側から第二側に移動する。記録部30が主走査方向の第二側の移動端に到達すると、モータ44の回転方向は再度反転し、プーリ41は、再度左回転する。
記録工程において、記録部30では、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cにそれぞれ形成されたノズル32から、各色のインクが記録媒体14に向けて吐出される。各色のインクの吐出は、上述した移動部40の動作に応じて記録部30が主走査方向に移動している所定のタイミングで実行される。インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cの各ノズル32から吐出された各色のインクによるインク滴は、記録媒体14の記録面15に着弾する。着弾した各色のインク滴により記録媒体14の記録面15に画像が記録される。記録媒体14の記録面15は、記録媒体14が記録部30を通過する際、各色用のインクジェットヘッド31の吐出面35と対向する面である。ノズル32からのインクの吐出に関する説明は後述する。
画像の記録が継続されると、サブタンク52では、貯留室55内のインクの量が所定量より少なくなる。各色用のサブタンク52に貯留された各色のインクの量は、例えば、不図示の液面センサによって管理される。液面センサは、例えば、1個のサブタンク52に対して2個設けられる。第一液面センサは、インクの量の下限値を検知する。第二液面センサは、インクの量の上限値を検知する。
所定の色用のサブタンク52に設けられた第一液面センサは、このサブタンク52に貯留されたインクの量が下限値を下回ったタイミングで、下限値信号を出力する。下限値信号は制御部122に入力され、制御部122はこれを取得する。この下限値信号を取得した制御部122は、供給弁53に開放信号を出力する。開放信号の出力先となる供給弁53は、下限値信号を出力した第一液面センサが設けられたサブタンク52に接続される供給流路51に設けられた供給弁である。供給弁53に出力される開放信号は、供給弁53を開いた状態へと切り替える制御信号である。出力先の供給弁53は、開放信号に応じて開いた状態へと切り替わる。これに伴い、前述した供給流路51は、開放状態となる。インクは、メインタンク50の側から供給弁53を通過してサブタンク52の側に流れ、サブタンク52に供給される。
サブタンク52にインクが供給されると、このサブタンク52に貯留されたインクの量は、増加し上限値に達する。このサブタンク52に設けられた第二液面センサは、インクの量が上限値に達したタイミングで、上限値信号を出力する。上限値信号は制御部122に入力され、制御部122はこれを取得する。この上限値信号を取得した制御部122は、供給弁53に閉鎖信号を出力する。閉鎖信号の出力先となる供給弁53は、上限値信号を出力した第二液面センサが設けられたサブタンク52に接続される供給流路51に設けられた供給弁である。供給弁53に出力される閉鎖信号は、供給弁53を閉じた状態へと切り替える制御信号である。出力先の供給弁53は、閉鎖信号に応じて閉じた状態へと切り替わる。これに伴い、前述した供給流路51は、閉鎖状態となる。インクの流れは停止し、所定の色用のサブタンク52へのインクの供給は終了する。このように、記録工程は、サブタンク52にインクを供給する工程を含む。記録工程は、後述するように、減圧部140によって貯留室55内の圧力が減圧された状態で行われる。従って、サブタンク52にインクを供給する工程も、貯留室55内の圧力が減圧された状態で行われる。
搬送工程において、搬送部20は、上述した記録部30の主走査方向への往復移動に対応して、記録媒体14を搬送方向に搬送する。即ち、搬送部20による記録媒体14の搬送は、記録部30の主走査方向への往復移動に応じて間欠的に行われる。
移動部40は、画像の記録が終了するまで動作する。従って、記録部30の主走査方向への往復移動は、画像の記録が終了するまで繰り返される。搬送部20は、例えば、画像の記録が終了した後、所定のタイミングで停止する。搬送部20の停止に伴い、搬送方向への記録媒体14の搬送も終了する。インクジェット記録方法は、搬送部20の停止に伴い終了する。
<インクの吐出>
記録工程において実行されるノズル32からのインクの吐出について説明する。記録工程において、制御部122は、ヘッド駆動部124からの駆動電圧の出力を制御する。即ち、制御部122は、取得された電圧設定値に応じた電圧値指令をヘッド駆動部124に出力する。ヘッド駆動部124では、電圧値指令に従った電圧値の駆動電圧の出力が開始される。駆動電圧は、所定の周期で繰り返し出力される。出力された駆動電圧は、上述した通り、電極板80に所定の周期で印加される。制御部122は、制御部122に含まれる記憶部に記憶された画像データに従いスイッチ部126を制御する。画像データは、記録媒体14に記録される画像に対応したデータである。画像データは、所定のアプリケーションプログラムを用いて生成される。画像データは、制御装置120に接続された外部装置から入力されるようにしてもよい。スイッチ部126では、画像データに従った制御部122による制御に応じて、内蔵されたスイッチのうち、所定のスイッチが閉結される。
スイッチ部126に内蔵された所定のスイッチが閉結されたタイミングで電極板80に駆動電圧が印加されると、電極板80の上面で電極板80と電気的に接続された複数の圧電素子70のうち、閉結されたスイッチに接続された圧電素子70に駆動電圧が印加される。駆動電圧が印加された圧電素子70の変形に伴い、この変形する圧電素子70に接する振動板100の部分が変形する。この振動板100の部分の変形に伴い、この振動板100を形成する絶縁シート90の部分が内壁の一部を形成する支流部67の容積が縮小する。支流部67の容積の縮小に伴う圧力が、縮小した支流部67内のインクに作用する。これに伴い、この支流部67に繋がるノズル32からインクが吐出される。
圧電素子70は、この圧電素子70が接続されたスイッチ部126に内蔵されたスイッチの閉結と、所定の周期の駆動電圧の印加が一致する度に、繰り返して変形する。圧電素子70の変形が繰り返されると、この繰り返し変形する圧電素子70に対応した振動板100の部分も繰り返して変形する。これに伴い、所定の圧電素子70に対応した支流部67に繋がるノズル32からインクが繰り返して吐出される。スイッチ部126を介して圧電素子70に駆動電圧を印加させる構成は、制御構成をシンプルにすることができる。その結果、インクジェット記録装置10のコストダウンを図ることができる。
記録工程におけるインクの吐出は、貯留室55内が大気圧より低い圧力に調整された状態で行われる。貯留室55内の圧力の調整は、上述した通り、貯留室55に通じたバッファタンク143内の圧力を調整することで実現される。バッファタンク143内の圧力は、制御部122によって制御される。即ち、制御部122は、圧力センサ146から取得された計測値と取得済みの圧力設定値に従い、供給弁53と真空ポンプ142と第一調整弁144と第二調整弁145の何れか又は全てに制御信号を出力する。
例えば、圧力センサ146から取得された計測値が圧力設定値に応じた上限値より高くなったとする。計測値が上限値より高い状態は、計測値が上限値より大気圧に近い状態を意味する。この場合、制御部122は、開始信号を真空ポンプ142に出力し、開放信号を第一調整弁144に出力し、閉鎖信号を第二調整弁145に出力する。開始信号は、真空ポンプ142の動作を開始させる制御信号である。第一調整弁144に出力される開放信号は、第一調整弁144を開いた状態へと切り替える制御信号である。第二調整弁145に出力される閉鎖信号は、第二調整弁145を閉じた状態へと切り替える制御信号である。真空ポンプ142は、開始信号に応じて駆動を開始する。第一調整弁144は開放信号に応じて開いた状態へと切り替わり、排気管141は開放状態となる。第二調整弁145は、閉鎖信号に応じて閉じた状態へと切り替わる。これに伴い、バッファタンク143内の空気が真空ポンプ142に吸引され、バッファタンク143内の圧力が低下する。
バッファタンク143内の空気の吸引に伴い、圧力センサ146から取得された計測値が圧力入力部130から取得された圧力設定値に応じた下限値になったとする。この場合、制御部122は、停止信号を真空ポンプ142に出力し、閉鎖信号を第一調整弁144に出力する。停止信号は、真空ポンプ142の動作を停止させる制御信号である。第一調整弁144に出力される閉鎖信号は、第一調整弁144を閉じた状態へと切り替える制御信号である。真空ポンプ142は、停止信号に応じて駆動を停止する。第一調整弁144は、閉鎖信号に応じて閉じた状態へと切り替わり、排気管141は閉鎖状態となる。これに伴い、バッファタンク143内の空気の吸引は停止される。
バッファタンク143内の空気の吸引に伴い、圧力センサ146から取得された計測値が圧力入力部130から取得された圧力設定値に応じた下限値より低くなったとする。計測値が下限値より低い状態は、下限値が計測値より大気圧に近い状態を意味する。この場合、制御部122は、停止信号を真空ポンプ142に出力し、閉鎖信号を第一調整弁144に出力し、開放信号を第二調整弁145に出力する。第二調整弁145に出力される開放信号は、第二調整弁145を開いた状態へと切り替える制御信号である。真空ポンプ142は、上記同様、駆動を停止し、第一調整弁144も閉じた状態へと切り替わる。第二調整弁145は、開放信号に応じて開いた状態へと切り替わり、バッファタンク143内は大気開放される。これに伴い、バッファタンク143内に空気が流入し、バッファタンク143内の圧力が増加する。
制御部122は、上述した制御を繰り返して実行する。このような制御により、バッファタンク143内の圧力は、圧力入力部130から取得された圧力設定値を基準とした所定の範囲に調整される。換言すれば、貯留室55内の圧力は、圧力入力部130から取得された圧力設定値を基準とした所定の範囲に調整される。このような圧力調整は、供給弁53が閉じられた状態で行われる。制御部122は、供給弁53を閉じる場合、供給弁53に対して閉鎖信号を出力する。供給弁53は、上述した通り、サブタンク52に貯留されたインクの量が第二液面センサによって上限値に達したことが検知された場合に閉じられる。
<実験結果及び考察>
インクの吐出量と水頭圧と駆動電圧と液滴速度と記録品質の関係について実験を行った。実験結果について図5を参照して説明する。以下では、実験に用いたインクジェット記録装置と上述したインクジェット記録装置10の対応を明らかにするため、実験に用いたインクジェット記録装置の各部に対して、インクジェット記録装置10の各部に付した符号と同一の符号を付して説明する。
記録条件1は、インクの吐出量を「40ng(ナノグラム)」とした条件である。記録条件1では、水頭圧を「−10cm aq」とし、駆動電圧を「62V」とした。記録条件2は、インクの吐出量を「40ng」とした条件である。記録条件2では、水頭圧を「−3cm aq」とし、駆動電圧を「57V」とした。記録条件3は、インクの吐出量を「80ng」とした条件である。記録条件3では、水頭圧を「−3cm aq」とし、駆動電圧を「80V」とした。記録条件4は、インクの吐出量を「80ng」とした条件である。記録条件4では、水頭圧を「−10cm aq」とし、駆動電圧を「88V」とした。1cm aqは98Paである。記録条件1〜4では、同一のインクジェット記録装置を用い、図5に示す水頭圧と駆動電圧以外の条件は、同一とした。吐出面35と記録媒体14の記録面15のギャップは5mmとした。インクの吐出方向は鉛直方向の下側である。ノズル32は、図4に示すようなテーパ形状とした。ノズル32の各部の寸法は、ノズル径φ1が0.06mmで、ノズル長Qが0.1mmで、テーパ角θが15°である。この場合、ノズル径φ2は、「0.06+(tan15°×0.1×2)」で0.11mmとなる。
記録条件1〜4における「水頭圧」は、ノズル32内のインクの液面に作用する圧力のことである。水頭圧は、ノズル32内のインクの液面から貯留室55内のインクの液面までの高さと、貯留室55内の圧力によって求めることができる。水頭圧の設定に関し、例えば、ノズル32内のインクの液面から貯留室55内のインクの液面の高さが10cmである場合、貯留室55内の圧力を大気圧より20cm aq減圧することで「−10cm aq」に設定することができる。記録条件1〜4における「液滴速度」は、吐出されたインク滴が吐出面35から鉛直方向の下側に0.5mm離間した位置に到達するまでの平均速度である。
記録条件1では、液滴速度は7.2m/secとなった。この液滴速度により、インク滴を目的の位置に精度よく着弾させることが可能となり、好適な記録品質の画像を記録することができた。更に、インクの吐出量を40ngとすることで、高精細な画像とすることができた。この結果、記録条件1は、画像の精細度を優先させる場合に適した記録条件であるといえる。
記録条件2では、液滴速度は3.4m/secとなった。インクの吐出量が同じである記録条件1と比較し、液滴速度は半分以下に低下した。インク滴の着弾位置精度の低下が認められた。その結果、記録された画像の記録品質は、低品質であった。このような結果は、吐出時における液滴速度が低いことが原因であると考えられる。質量が小さく低速で飛翔するインク滴は、例えば、吐出面35と記録面15の間に生じている気流の影響を受け易くなると考えられる。気流の影響を受けたインク滴は、気流の方向に流される。
記録条件3では、液滴速度は7.5m/secとなった。この液滴速度により、インク滴を目的の位置に精度よく着弾させることが可能となった。その結果、好適な記録品質の画像を記録することができた。更に、インクの吐出量を80ngとすることで、インクの吐出量が40ngの場合と比較して画像の記録時間を短縮することができた。この結果、記録条件3は、画像の記録速度を優先させる場合に適した記録条件であるといえる。
記録条件4では、液滴速度は14m/secとなった。インクの吐出量が同じである記録条件3と比較し、液滴速度は約1.9倍に上昇した。吐出された80ngのインクが1滴にまとまらない現象が確認された。その結果、記録された画像の記録品質は、低品質であった。このような結果は、吐出時における液滴速度が速すぎることが原因であると考えられる。
発明者は、今回の実験により、インクジェット記録方法の記録工程で好適な記録品質の画像を記録する条件として、次のことを明らかにすることができた。即ち、好適な記録品質の確保を前提とした上で、画像の記録速度より精細度を優先させる場合、水頭圧と駆動電圧を共に低下させてインクの吐出量を少なくするとよい(記録条件1参照)。換言すれば、好適な記録品質の確保を前提とした上で、画像の精細度より記録速度を優先させる場合、水頭圧と駆動電圧を共に増加させてインクの吐出量を多くするとよい(記録条件3参照)。
<実施形態の効果>
実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)水頭圧と駆動電圧に基づき、インクの吐出量を管理することとした(図5参照)。インクの吐出量が管理された状態で画像の記録を実行することができる。水頭圧及び駆動電圧の何れか一方のみに基づきインクの吐出量を管理することもできる。但し、この場合、前述した2条件に基づく場合と比較し、インクジェット記録装置で設定可能なインクの吐出量の範囲が狭くなる。水頭圧と駆動電圧に基づきインクの吐出量を管理することで、インクの吐出量の設定範囲を広くすることができる。画像の記録速度及び画像の精細度に対して柔軟に対応することができる。水頭圧は、上記から明らかな通り、ノズル32内のインクの液面から貯留室55内のインクの液面までの高さと、貯留室55内の圧力に基づき、所定の水頭圧値に設定することができる。貯留室55内のインクの液面の位置は、貯留室55内のインクの量を所定の範囲に調整することで管理することができる。
(2)ノズル32をテーパ形状とすることとした(図4参照)。例えば、同じノズル長Qのストレート形状のノズルと比較すると、テーパ形状とすることで、支流部67からノズル32内に流入したインクがノズル32内を流れる際の抵抗を小さくすることができる。前述した抵抗を基準とすると、テーパ形状のノズル32では、ストレート形状のノズルより、ノズル長Qを長く設定することができる。そのため、貯留室55内の圧力をより低圧としてもノズル32内にインクのメニスカスを形成することができる。例えば、ストレート形状のノズルと比較して、インクの吐出量の設定範囲を更に広くすることができる。
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は適宜省略する。
(1)上記では、インクジェット記録装置10がシリアル型である場合を例に説明した(図1参照)。シリアル型のインクジェット記録装置10では、上述した通り、移動部40によって記録部30を主走査方向に往復移動させつつインクを吐出し、記録媒体14に画像が記録される。図2〜図4に示す構造は、ライン型のインクジェットヘッドに採用することもできる。ライン型のインクジェットヘッドでは、複数のノズルは、記録媒体14の短手方向に一致する主走査方向に配列される。ノズルが配列される主走査方向の範囲は、例えば、記録媒体14の幅W(図1参照)以上とされる。ノズル列数は、上記同様、複数列とされることもある。
(2)上記では、排気管141によって、所定の1色分のサブタンク52と1個のバッファタンク143を接続し、このバッファタンク143と1台の真空ポンプ142を接続した減圧部140を例に説明した(図2参照)。例えば、減圧部140は、排気管141によって、サブタンク52K,52M,52Y,52Cと1個のバッファタンク143をそれぞれ接続し、このバッファタンク143と1台の真空ポンプ142を接続した構成としてもよい。この他、例えば、減圧部140は、排気管141によって、サブタンク52K,52M,52Y,52Cのそれぞれにバッファタンク143を1個ずつ接続し、4個のバッファタンク143と1台の真空ポンプ142を接続した構成としてもよい。この場合、4個のバッファタンク143は、排気管141によってそれぞれ通じた状態とするようにしてもよい。第一調整弁144は、4個のバッファタンク143へと分岐していない排気管141の部分に設けられる。圧力センサ146は、所定の1個のバッファタンク143に設けられる。制御部122は、上記同様、この圧力センサ146からの計測値に従ってバッファタンク143内の圧力を調整する。
(3)各色用のインクジェットヘッド31は、副走査方向、又は、副走査方向及び主走査方向に配列された一群のヘッドユニットにより形成するようにしてもよい。例えば、インクジェットヘッド31は、副走査方向に複数のヘッドユニットを配列して1列のユニット列とし、このユニット列を主走査方向に2列設けた構成としてもよい。この場合、第一ユニット列と第二ユニット列は、副走査方向に所定量だけずれた状態で主走査方向に隣り合って設けられる。サブタンク52は、複数のヘッドユニットのそれぞれに設けられる。バッファタンク143は、複数のサブタンク52に対して1個設けられる。即ち、1個のバッファタンク143に対して、複数のサブタンク52が排気管141によって接続される。複数のサブタンク52における各貯留室55内の圧力の調整は、上記同様、各サブタンク52が接続された1個のバッファタンク143内の圧力を調整して行われる。
(4)上記では、鉛直方向においてインクジェットヘッド31の上側にサブタンク52を設けたインクジェット記録装置10を例に説明した(図1〜図3参照)。この場合、貯留室55内のインクの液面は、ノズル32内のインクの液面より鉛直方向の上側となる。インクジェット記録装置では、サブタンク52のようなインクジェットヘッド31に供給されるインクを貯留するタンクをインクジェットヘッド31より鉛直方向の下側に設けるようにしてもよい。この場合、前述したタンクの貯留室内のインクの液面は、ノズル32内のインクの液面より鉛直方向の下側となる。このようなインクジェット記録装置では、このタンクの貯留室内のインクの液面の高さを調整することで、水頭圧を調整することができる。このタンクの貯留室内のインクの液面の高さの調整は、例えば、上述した、液面センサを用いたサブタンク52へのインクの供給に関する制御と同様の制御によって行われる。このタンク自体の高さを調整するようにしてもよい。このようなインクジェット記録装置では、減圧部140は省略するようにしてもよい。