本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置10について、図1を参照して説明する。インクジェット記録装置10では、記録媒体14が搬送され、記録媒体14の記録面15に画像が記録される。インクジェット記録装置10では、各種の記録媒体14を対象として画像が記録される。記録媒体14としては、例えば、布帛又は建築用資材が挙げられる。本実施形態では、記録媒体14が長尺状の布帛である場合を例に説明する。画像の記録に用いられるインク色は、ブラック、マゼンタ、イエロー及びシアンの4色とする。インク色は、これら以外の色であってもよい。インク色数は、3色以下又は5色以上としてもよい。図1で搬送方向の下流側に図示された記録媒体14の部分に付した網点模様は、記録媒体14に記録された画像に対応する。
インクジェット記録装置10は、図1に示すように、搬送部20と、記録部30と、移動部40と、メインタンク50K,50M,50Y,50Cと、供給流路51K,51M,51Y,51Cと、制御装置120を備える。
搬送部20は、記録媒体14を、記録媒体14の長手方向に沿って搬送する。搬送部20によって搬送される記録媒体14は、記録部30を通過する。本実施形態では、搬送部20によって記録媒体14が搬送される方向を「搬送方向」という。搬送方向は、記録媒体14の短手方向に直交する。記録媒体14の短手方向は、記録媒体14の幅方向である。記録媒体14の短手方向は、主走査方向に一致する。主走査方向は、後述するように記録部30が移動部40によって往復移動される方向である。搬送方向及びこれと反対方向は、前述した主走査方向に対して「副走査方向」と称されることもある。本実施形態では、搬送方向及びこれと反対方向のそれぞれに直交する方向を「主走査方向」という。搬送方向及びこれと反対方向を「副走査方向」という。
記録部30は、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cと、キャリッジ34を備える。インクジェットヘッド31Kは、ブラックインクを吐出し、ブラックインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Kには、ブラックインクを吐出するノズル32が複数形成される。インクジェットヘッド31Mは、マゼンタインクを吐出し、マゼンタインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Mには、マゼンタインクを吐出するノズル32が複数形成される。インクジェットヘッド31Yは、イエローインクを吐出し、イエローインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Yには、イエローインクを吐出するノズル32が複数形成される。インクジェットヘッド31Cは、シアンインクを吐出し、シアンインクにより画像を記録するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド31Cには、シアンインクを吐出するノズル32が複数形成される。
インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cは、同様の構成を有する。本実施形態では、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「インクジェットヘッド31」という。各色用のインクジェットヘッド31は、副走査方向、又は、副走査方向及び主走査方向に配列された一群のヘッドユニットにより形成するようにしてもよい。例えば、インクジェットヘッド31は、副走査方向に複数個のヘッドユニットを配列して1列のユニット列とし、このユニット列を主走査方向に2列設けた構成としてもよい。この場合、第一ユニット列と第二ユニット列は、副走査方向に所定量だけずれた状態で主走査方向に隣り合って設けられる。
キャリッジ34には、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cが所定の位置に位置決めされた状態でそれぞれ搭載される。インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cは、図1に示すように、主走査方向に隣り合った状態でキャリッジ34に搭載される。各色用のインクジェットヘッド31の配列順序は、図1とは異なる順序としてもよい。これらの配列順序は、諸条件を考慮して適宜決定される。
移動部40は、記録部30を主走査方向に往復移動させる。移動部40は、図1に示すように、2個のプーリ41,42と、タイミングベルト43と、モータ44を含む。2個のプーリ41,42は、搬送部20を基準として、主走査方向の両側にそれぞれ設けられる。プーリ41には、モータ44が連結される。プーリ42は、回転自在に支持される。プーリ41は、モータ44の回転に伴い回転する。タイミングベルト43は、張力が作用した状態でプーリ41,42に架け渡される。タイミングベルト43には、キャリッジ34に固定された支持部46を介して記録部30が取り付けられる。
メインタンク50Kは、ブラックインクを貯留する。供給流路51Kは、メインタンク50Kとインクジェットヘッド31Kを繋ぐ。ブラックインクは、メインタンク50Kから流出し、供給流路51Kを流れて、インクジェットヘッド31Kに供給される。メインタンク50Mは、マゼンタインクを貯留する。供給流路51Mは、メインタンク50Mとインクジェットヘッド31Mを繋ぐ。マゼンタインクは、メインタンク50Mから流出し、供給流路51Mを流れて、インクジェットヘッド31Mに供給される。
メインタンク50Yは、イエローインクを貯留する。供給流路51Yは、メインタンク50Yとインクジェットヘッド31Yを繋ぐ。イエローインクは、メインタンク50Yから流出し、供給流路51Yを流れて、インクジェットヘッド31Yに供給される。メインタンク50Cは、シアンインクを貯留する。供給流路51Cは、メインタンク50Cとインクジェットヘッド31Cを繋ぐ。シアンインクは、メインタンク50Cから流出し、供給流路51Cを流れて、インクジェットヘッド31Cに供給される。
図1では、供給流路51K,51M,51Y,51Cは、簡略化された状態で図示されている。供給流路51K,51M,51Y,51Cは、記録部30の主走査方向への往復移動に対応可能な状態で設けられる。本実施形態では、メインタンク50K,50M,50Y,50Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「メインタンク50」という。供給流路51K,51M,51Y,51Cを区別せず、又は、これらを総称する場合、「供給流路51」という。
インクジェット記録装置10は、上述した各部の他、不図示のポンプを備える。ポンプは、インク色数に対応して4台設けられる。4台のポンプは、供給流路51K,51M,51Y,51Cにそれぞれ設けられる。メインタンク50K,50M,50Y,50Cに貯留された各色のインクは、各色用のポンプによってインクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cに供給される。
制御装置120は、制御部122と、ヘッド駆動部124と、スイッチ部126を備える。図1では、制御部122とヘッド駆動部124とスイッチ部126は、制御装置120としてまとまった状態で図示されている。但し、制御装置120に含まれるこれら各部は、例えば、制御ボックスのような単一の筐体内に設けられなくてもよい。例えば、スイッチ部126は、インクジェットヘッド31に近い位置に設けられるようにしてもよい。
制御部122は、例えば、CPUと、記憶部と、RAMを含む。CPUは、演算処理を実行し、インクジェット記録装置10で実行される各種の処理を制御する。記憶部は、例えば、不揮発性のメモリ及び/又はハードディスクによって構成される。記憶部には、インクジェット記録装置10で実行される各種の処理のプログラムが記憶される。例えば、画像の記録に関するプログラムが記憶される。RAMは、CPUが記憶部に記憶されたプログラムを実行する際の作業領域となる。RAMには、処理の実行途中に所定のデータが記憶される。
ヘッド駆動部124は、後述するインクジェットヘッド31が備える電極板80に電気的に接続されたヘッド駆動回路である。図1では、ヘッド駆動部124と電極板80を接続する配線の図示は、省略されている。ヘッド駆動部124は、所定の電圧値の駆動電圧(駆動信号)を所定の周期で出力する。ヘッド駆動部124から出力された駆動電圧は、電極板80に印加される。なお、駆動電圧(駆動信号)は、所定の電圧値の電気パルス信号である。
スイッチ部126は、後述するインクジェットヘッド31が備える複数の圧電素子70のそれぞれに電気的に接続されたスイッチ回路である。図1では、スイッチ部126と複数の圧電素子70をそれぞれ接続する配線の図示は、省略されている。スイッチ部126は、複数の圧電素子70の全部又は一部に対応したスイッチを含む。例えば、1個のインクジェットヘッド31に50個の圧電素子70が設けられていたとする。1個のスイッチ部126に25個のスイッチが含まれていたとする。この場合、スイッチ部126は、1個のインクジェットヘッド31に対して合計2個設けられる。
インクジェット記録装置10での画像の記録は、次のようにして開始される。即ち、画像の記録は、画像の記録の開始指令が制御装置120に入力され、制御部122がこれを取得したタイミングで開始される。画像の記録を開始させた制御部122は、移動部40と搬送部20を制御する。これに伴い、移動部40と搬送部20は、次のように動作する。即ち、移動部40において、プーリ41に連結されたモータ44が時計回りと反時計回りに往復して回転する。モータ44の回転に伴い、プーリ41が左右両側に往復して回転する。図1でプーリ41の内側に示す「弧状の矢印」は、プーリ41の回転方向を示す。モータ44が所定の方向に回転することでプーリ41が左回転すると、タイミングベルト43も左回転する。プーリ42は、左回転するタイミングベルト43に従動して回転する。これに伴い、記録部30は、主走査方向の第二側から第一側に移動する。記録部30が主走査方向の第一側の移動端に到達すると、モータ44の回転方向は反転し、プーリ41は、右回転する。プーリ41が右回転すると、タイミングベルト43も右回転する。プーリ42は、右回転するタイミングベルト43に従動して回転する。これに伴い、記録部30は、主走査方向の第一側から第二側に移動する。記録部30が主走査方向の第二側の移動端に到達すると、モータ44の回転方向は再度反転し、プーリ41は、再度左回転する。
搬送部20は、上述した記録部30の主走査方向への往復移動に対応して、記録媒体14を搬送方向に搬送する。即ち、搬送部20による記録媒体14の搬送は、記録部30の主走査方向への往復移動に応じて間欠的に行われる。各色のインクは、記録部30が主走査方向に移動している所定のタイミングで、インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cにそれぞれ形成されたノズル32から、記録媒体14に向けて吐出される。インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cの各ノズル32から吐出された各色のインクは、記録媒体14の記録面15に着弾する。着弾した各色のインクにより記録媒体14の記録面15に画像が記録される。記録媒体14の記録面15は、記録媒体14が記録部30を通過する際、各色用のインクジェットヘッド31の吐出面35と対向する面である。吐出面35は、後述する図4に示すように、各色用のインクジェットヘッド31でノズル32が形成された面である。ノズル32からのインクの吐出に関する説明は後述する。
移動部40は、画像の記録が終了するまで動作する。従って、記録部30の主走査方向への往復移動は、画像の記録が終了するまで繰り返される。搬送部20は、例えば、画像の記録が終了した後、所定のタイミングで停止する。搬送部20の停止に伴い、搬送方向への記録媒体14の搬送も終了する。
<インクジェットヘッド>
インクジェットヘッド31について、図2〜図4を参照して説明する。インクジェットヘッド31K,31M,31Y,31Cは、上述した通り、同様の構成を有する。従って、以下では、インク色を区別することなく説明する。図3において、ハッチングは、断面された部分を示す。図4において、破線は、図2に示す状態のインクジェットヘッド31で鉛直方向の上側に設けられる各部のかくれた形状を示すかくれ線である。
インクジェットヘッド31は、図2及び図3に示すように、流路部60と、複数の圧電素子70と、電極板80と、絶縁シート90を備える。インクジェットヘッド31は、流路部60と電極板80で絶縁シート90を挟み込んだ状態に組み立てられる。複数の圧電素子70は、電極板80の第二平面82の側で、電極板80と電気的に接続された状態で設けられる。電極板80の第二平面82は、電極板80の第一平面81とは反対側となる電極板80の面である。電極板80の第一平面81は、流路部60の側となる電極板80の面である。本実施形態では、電極板80の第一平面81は、図2及び図3に示す完成状態のインクジェットヘッド31において、鉛直方向の下側となる。電極板80の第二平面82は、図2及び図3に示す完成状態のインクジェットヘッド31において、鉛直方向の上側となる。
流路部60は、図2〜図4に示すように、供給口61と、複数のノズル32と、内部流路63を含む。流路部60は、導電材料により形成される。供給口61は、供給流路51と接続される。供給流路51を流れたインクは、供給口61を通過してインクジェットヘッド31に供給される。
複数のノズル32は、例えば、図4に示すような状態で吐出面35に形成される。即ち、図4に示す例では、複数のノズル32は、その半数を副走査方向に配列して1列のノズル列とし、このノズル列を主走査方向に2列設けた状態で配置される。この場合、第一ノズル列LAと第二ノズル列LBは、副走査方向に所定量だけずれた状態で主走査方向に隣り合って設けられる。第一ノズル列LAは、主走査方向の第一側に配列された第一ノズル32Aによるノズル列である。第二ノズル列LBは、主走査方向の第二側に配列された第二ノズル32Bによるノズル列である。換言すれば、複数のノズル32は、千鳥状に配置される。図4で符号「LA」が付された一点鎖線は、第一ノズル列LAに対応する直線である。図4で符号「LB」が付された一点鎖線は、第二ノズル列LBに対応する直線である。本実施形態は、図4に示す複数のノズル32の配置に基づき説明する。但し、図4に示す複数のノズル32の配置は例示である。従って、複数のノズル32の配置は、図4とは異なる配置であってもよい。本実施形態において、ノズル32は、第一ノズル32A及び第二ノズル32Bを区別せず、これらを総称するものである。
内部流路63は、供給口61から流入したインクを複数のノズル32のそれぞれに流す流路である。従って、内部流路63は、供給口61と複数のノズル32のそれぞれを繋ぐ。内部流路63は、図3に示すように、本流部65と、複数の支流部67を含む。本流部65は、供給口61から連続した流路である。本流部65は、副走査方向に延在する第一ノズル列LAと第二ノズル列LBに対応した状態で形成される。即ち、本流部65は、第一ノズル列LA及び第二ノズル列LBと同じく副走査方向に延在した状態で形成される。供給口61から流入したインクは、本流部65を副走査方向に流れる。複数の支流部67は、本流部65から分岐した流路である。複数の支流部67は、複数のノズル32にそれぞれ繋がる。本流部65から流入したインクは、各支流部67を流れて各ノズル32に到達する。ノズル32の流路面積は、支流部67の流路面積より小さくされる。ノズル32の流路面積は、鉛直方向に垂直な平面で切断したノズル32の面積である。本実施形態において、ノズル32の流路面積との比較対象となる支流部67の流路面積は、ノズル32へと繋がる鉛直方向に延在した支流部67の部分を、鉛直方向に垂直な平面で切断した支流部67の面積である。
流路部60において、内部流路63の一部は、その内壁がなく開口した状態となる。開口状態となる内部流路63の部分は、図3に示す範囲H及び範囲Jの各部分である。本実施形態では、開口状態となる内部流路63の部分は、鉛直方向の上側となる流路部60の面に設けられる。内部流路63の範囲Hの部分は、主走査方向の中心部分に設けられる本流部65から、主走査方向の第一側に延在する支流部67の部分である。内部流路63の範囲Jの部分は、主走査方向の中心部分に設けられる本流部65から、主走査方向の第二側に延在する支流部67の部分である。内部流路63の範囲Hの部分の一部と内部流路63の範囲Jの部分の一部は、図2及び図3に示す完成状態のインクジェットヘッド31において、複数の圧電素子70のそれぞれと向かい合う。
流路部60は、例えば、本体部と、ノズルプレートを突き合わせて形成するようにしてもよい。本体部には、供給口61と内部流路63が形成される。本体部の全部又は一部は、例えば、内部流路63となる貫通穴が形成された薄平板を積層して形成するようにしてもよい。例えば、支流部67の一部が形成される本体部の一部を、支流部67となる貫通穴が形成された薄平板を積層して形成するようにしてもよい。この場合、支流部67の一部は、各薄平板に形成された貫通穴により形成される。ノズルプレートには、複数のノズル32が形成される。ノズルプレートは、20μm〜1mm程度の板厚の薄平板により形成される。
複数の圧電素子70は、複数の支流部67のそれぞれに対応して設けられる。本実施形態では、第一ノズル列LAと第二ノズル列LBは、副走査方向にずれた状態で主走査方向に並べて配置される。従って、複数の圧電素子70は、鉛直方向の上側となる流路部60の面の上方で、第一ノズル列LAと第二ノズル列LBに対応させて主走査方向の両側に設けられる。主走査方向の第一側に設けられる圧電素子70を「第一圧電素子70A」という。主走査方向の第二側に設けられる圧電素子70を「第二圧電素子70B」という。本実施形態において、圧電素子70は、第一圧電素子70A及び第二圧電素子70Bを区別せず、これらを総称するものである。第一圧電素子70A及び第二圧電素子70Bの各個数は、圧電素子70全体の半数ずつである。
複数の第一圧電素子70Aは、第一ノズル列LAを形成する複数の第一ノズル32Aにそれぞれ繋がる各支流部67に対応して主走査方向の第一側で副走査方向に並んだ状態で設けられる。複数の第二圧電素子70Bは、第二ノズル列LBを形成する複数の第二ノズル32Bにそれぞれ繋がる各支流部67に対応して設けられる。複数の圧電素子70は、スイッチ部126に電気的に接続される。詳細には、複数の圧電素子70は、スイッチ部126に含まれる複数のスイッチにそれぞれ電気的に接続される。圧電素子70は、対応する支流部67が繋がるノズル32からインクを吐出させる駆動素子である。圧電素子70は、ピエゾ素子と称されることもある。圧電素子70を介したインクの吐出については後述する。
電極板80は、導電材料により形成された所定の厚みの薄平板である。例えば、電極板80は、金属材料により形成された薄平板である。電極板80の板厚は、数十μm〜数百μm程度である。例えば、電極板80の板厚は、50μm〜200μm程度である。電極板80は、第一平面81及び第二平面82を貫通する穴又は溝等を有さない長方形状の薄平板である。電極板80は、圧電素子70の変形に伴い、変形する圧電素子70に接する部分が変形する。この変形は、弾性変形である。従って、圧電素子70が元の状態に戻ると、変形した電極板80の部分も元に戻る。本実施形態では、第一ノズル列LAと第二ノズル列LBは、副走査方向にずれた状態で主走査方向に並べて配置される。従って、電極板80は、主走査方向の両側に1枚ずつ設けられる。主走査方向の第一側に設けられる電極板80を「第一電極板80A」という。主走査方向の第二側に設けられる電極板80を「第二電極板80B」という。本実施形態において、電極板80は、第一電極板80A及び第二電極板80Bを区別せず、これらを総称するものである。
第一電極板80Aの第二平面82には、複数の第一圧電素子70Aが副走査方向に並んだ状態で電気的に接続されて設けられる。第一電極板80Aの第二平面82における複数の第一圧電素子70Aの副走査方向の間隔は、第一ノズル列LAを形成する第一ノズル32Aの副走査方向の間隔に一致する。第一圧電素子70Aは、図3に示すように、第一電極板80Aと後述する第一絶縁シート90Aを挟んで、第一ノズル32Aに繋がる支流部67と主走査方向に向かい合った状態となる。第一電極板80Aは、上述した通り、ヘッド駆動部124と電気的に接続される。第一電極板80Aには、ヘッド駆動部124から出力された駆動電圧が所定の周期で印加される。
第二電極板80Bの第二平面82には、複数の第二圧電素子70Bが副走査方向に並んだ状態で電気的に接続されて設けられる。第二電極板80Bの第二平面82における複数の第二圧電素子70Bの副走査方向の間隔は、第二ノズル列LBを形成する第二ノズル32Bの副走査方向の間隔に一致する。第二圧電素子70Bは、図3に示すように、第二電極板80Bと後述する第二絶縁シート90Bを挟んで、第二ノズル32Bに繋がる支流部67と主走査方向に向かい合った状態となる。第二電極板80Bは、上述した通り、ヘッド駆動部124と電気的に接続される。第二電極板80Bには、ヘッド駆動部124から出力された駆動電圧が所定の周期で印加される。
絶縁シート90は、電気絶縁材料により形成された所定の厚みの薄平板である。例えば、絶縁シート90は、樹脂材料により形成された薄平板である。絶縁シート90の板厚は、数十μm〜数百μm程度である。例えば、絶縁シート90の板厚は、30μm〜100μm程度である。絶縁シート90は、主走査方向の各平面を貫通する穴又は溝等を有さない長方形状の薄平板である。絶縁シート90は、電極板80と共に変形する。この変形は、弾性変形である。従って、圧電素子70が元の状態に戻ると、変形した絶縁シート90の部分は、電極板80の部分と共に元に戻る。本実施形態では、第一ノズル列LAと第二ノズル列LBは、副走査方向にずれた状態で主走査方向に並べて配置される。従って、絶縁シート90は、主走査方向の両側に1枚ずつ設けられる。主走査方向の第一側に設けられる絶縁シート90を「第一絶縁シート90A」という。主走査方向の第二側に設けられる絶縁シート90を「第二絶縁シート90B」という。本実施形態において、絶縁シート90は、第一絶縁シート90A及び第二絶縁シート90Bを区別せず、これらを総称するものである。
第一絶縁シート90Aは、第一電極板80Aの第一平面81の全面に接する。第一絶縁シート90Aは、第一電極板80Aの第一平面81に接した状態で、第一電極板80Aと、鉛直方向の上側となる流路部60の主走査方向の第一側の部分に挟まれる。第一絶縁シート90Aは、前述した挟まれた状態において、開口した支流部67の範囲Hを覆い、封鎖する。従って、第一絶縁シート90Aは、主走査方向の第一側に形成された各支流部67の内壁のうちの一部を形成する。
外形が共に長方形状をなす第一電極板80Aと第一絶縁シート90Aの外形寸法は、次のような関係とされる。即ち、第一絶縁シート90Aの主走査方向の寸法X9及び副走査方向の寸法Y9は、第一電極板80Aの主走査方向の寸法X8及び副走査方向の寸法Y8より大きな値に設定される(寸法X9>寸法X8、寸法Y9>寸法Y8 図2参照)。従って、第一絶縁シート90Aは、インクジェットヘッド31を鉛直方向から視たとき、次のような状態となって、第一電極板80Aと、鉛直方向の上側となる流路部60の主走査方向の第一側の部分に挟まれる。即ち、第一絶縁シート90Aは、インクジェットヘッド31を鉛直方向から視たとき、第一電極板80Aの第一平面81の全てを被覆し、第一電極板80Aの外縁からはみ出した状態となる(図2〜図4参照)。
第二絶縁シート90Bは、第二電極板80Bの第一平面81の全面に接する。第二絶縁シート90Bは、第二電極板80Bの第一平面81に接した状態で、第二電極板80Bと、鉛直方向の上側となる流路部60の主走査方向の第二側の部分に挟まれる。第二絶縁シート90Bは、前述した挟まれた状態において、開口した支流部67の範囲Jを覆い、封鎖する。従って、第二絶縁シート90Bは、主走査方向の第二側に形成された各支流部67の内壁のうちの一部を形成する。
外形が共に長方形状をなす第二電極板80Bと第二絶縁シート90Bの外形寸法は、次のような関係とされる。即ち、第二絶縁シート90Bの主走査方向の寸法X9及び副走査方向の寸法Y9は、第二電極板80Bの主走査方向の寸法X8及び副走査方向の寸法Y8より大きな値に設定される(寸法X9>寸法X8、寸法Y9>寸法Y8 図2参照)。なお、第二絶縁シート90Bの寸法X9及び寸法Y9は、第一絶縁シート90Aの寸法X9及び寸法Y9と同一である。第二電極板80Bの寸法X8及び寸法Y8は、第一電極板80Aの寸法X8及び寸法Y8と同一である。従って、第二絶縁シート90Bは、インクジェットヘッド31を鉛直方向から視たとき、次のような状態となって、第二電極板80Bと、鉛直方向の上側となる流路部60の主走査方向の第二側の部分に挟まれる。即ち、第二絶縁シート90Bは、インクジェットヘッド31を鉛直方向から視たとき、第二電極板80Bの第一平面81の全てを被覆し、第二電極板80Bの外縁からはみ出した状態となる(図2〜図4参照)。
<インクの吐出>
ノズル32からのインクの吐出について、説明する。上述したように、画像の記録を開始させた制御部122は、ヘッド駆動部124からの駆動電圧の出力を制御する。この制御に応じて、ヘッド駆動部124では、駆動電圧の出力が開始される。出力された駆動電圧は、上述した通り、電極板80に所定の周期で印加される。また、画像の記録を開始させた制御部122は、制御部122に含まれる記憶部に記憶された画像データに従い吐出信号を生成する。画像データは、記録媒体14に記録される画像に対応したデータである。画像データは、所定のアプリケーションプログラムを用いて生成される。画像データは、制御装置120に接続された外部装置から入力されるようにしてもよい。生成された吐出信号は、スイッチ部126に入力される。吐出信号は、所定の電圧値の電気パルス信号である。スイッチ部126では、入力された吐出信号に応じて、内蔵されたスイッチのうち、所定のスイッチが閉結される。
スイッチ部126に内蔵された所定のスイッチが閉結されたタイミングで電極板80に駆動電圧が印加されると、電極板80上の複数の圧電素子70のうち、閉結されたスイッチに接続された圧電素子70に駆動電圧が印加される。駆動電圧が印加された圧電素子70の変形に伴い、この変形する圧電素子70に接する電極板80の部分が変形する。この電極板80の部分の変形は、変形する電極板80の部分に接する絶縁シート90の部分に伝わる。即ち、互いに接する前述した電極板80及び絶縁シート90の各部分の変形に伴い、この絶縁シート90の部分が内壁の一部を形成する支流部67の容積が縮小する。支流部67の容積の縮小に伴う圧力が、縮小した支流部67内のインクに作用する。これに伴い、この支流部67に繋がるノズル32からインクが吐出される。
圧電素子70は、この圧電素子70が接続されたスイッチ部126に内蔵されたスイッチの閉結と、所定の周期の駆動電圧の印加が一致する度に、繰り返して変形する。スイッチの閉結は、電気パルス信号である吐出信号の入力に伴い行われる。圧電素子70の変形が繰り返されると、この繰り返し変形する圧電素子70に対応した、互いに接する電極板80及び絶縁シート90の各部分も繰り返して変形する。これに伴い、所定の圧電素子70に対応した支流部67に繋がるノズル32からインクが繰り返して吐出される。スイッチ部126を介して圧電素子70に駆動電圧を印加させる構成は、制御構成をシンプルにすることができる。その結果、インクジェット記録装置10のコストダウンを図ることができる。
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)インクジェットヘッド31は、図2及び図3に示すように、流路部60と、複数の圧電素子70と、電極板80と、絶縁シート90により形成される。複数の圧電素子70は、電極板80に電気的に接続された状態で設けられる。流路部60は、本流部65と複数の支流部67による内部流路63と、複数のノズル32等を含む。流路部60は、導電材料により形成される。電極板80と流路部60の間に絶縁シート90が設けられる。そのため、流路部60と電極板80を絶縁することができる。絶縁シート90により、電極板80に駆動電圧が印加された際、圧電素子70に流れるべき電気(電気パルス信号)が流路部60の側に流れることを抑制することができる。インクの吐出不良を抑制することができる。高画質の画像を記録することができる。インクジェットヘッド31を、電気的な絶縁に対する信頼性が確保されたシンプルな構造とすることができる。
(2)インクジェットヘッド31では、図2に示すように、絶縁シート90の主走査方向の寸法X9及び副走査方向の寸法Y9が、電極板80の主走査方向の寸法X8及び副走査方向の寸法Y8より大きな値に設定される。絶縁シート90は、電極板80の第一平面81に接し、この第一平面81の全てを被覆する。絶縁シート90は、電極板80の外縁からはみ出した状態となる。そのため、インクジェットヘッド31の絶縁性能を向上させることができる。例えば、画像が記録される場合、ノズル32から吐出されたインクのインク滴がミストとなって浮遊することがある。浮遊するインクミストは、インクジェットヘッド31の外周面に付着することがある。絶縁シートが電極板80からはみ出していないとする。浮遊するインクミストが多量である、又は、画像の記録が長時間継続された場合、インクが流路部60と電極板80を横断した状態で付着することもある。このような状態でインクが付着すると、付着したインクによって流路部60と電極板80が電気的に接続されることもある。絶縁シート90をはみ出させた構成によれば、インクを介して流路部60と電極板80が電気的に接続されることを抑制することができる。例えば、インクジェットヘッド31の清掃作業の回数を少なくすることができる。
<変形例>
本実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は適宜省略する。
(1)上記では、インクジェット記録装置10がシリアル型である場合を例に説明した(図1参照)。シリアル型のインクジェット記録装置10では、上述した通り、移動部40によって記録部30を主走査方向に往復移動させつつインクを吐出し、記録媒体14に画像が記録される。図2〜図4に示す構造は、ライン型のインクジェットヘッドに採用することもできる。ライン型のインクジェットヘッドでは、複数のノズルは、記録媒体14の短手方向に一致する主走査方向に配列される。ノズルが配列される主走査方向の範囲は、例えば、記録媒体14の幅W(図1参照)以上とされる。ノズル列数は、上記同様、複数列とされることもある。
(2)上記では、メインタンク50とインクジェットヘッド31が供給流路51を介して直接接続されたインクジェット記録装置10を例に説明した(図1参照)。インクジェット記録装置10は、上述した各部の他、サブタンクを備えるようにしてもよい。サブタンクは、各色用のインクジェットヘッド31のそれぞれに対応して設けられる。各色用のサブタンクは、各色用の供給流路51の途中に設けられる。サブタンクは、供給流路51の第一部分を介してメインタンク50から供給されたインクを貯留する。サブタンクに貯留されたインクは、サブタンクから流出し、供給流路51の第二部分を流れてインクジェットヘッド31に供給される。供給流路51の第一部分は、メインタンク50とサブタンクを繋ぐ供給流路51の部分である。供給流路51の第二部分は、サブタンクとインクジェットヘッド31を繋ぐ供給流路51の部分である。供給流路51の第二部分の両端部のうち、インクジェットヘッド31側の端部は、供給口61に接続される。上述したように、インクジェットヘッド31が複数のヘッドユニットによって形成される場合、サブタンクは、各ヘッドユニットに対して1個設けるようにしてもよい。この他、サブタンクは、2個以上のヘッドユニットに対して1個設けるようにしてもよい。
(3)上記では、絶縁シート90として、主走査方向の第一側に第一絶縁シート90Aを設け、主走査方向の第二側に第二絶縁シート90Bを設けたインクジェットヘッド31を例に説明した(図2〜図4参照)。絶縁シート90は、図5に示すように、単一の絶縁シートとしてもよい。図5に基づく説明では、図2〜図4に示すインクジェットヘッド31との対応を考慮し、図2〜図4に示す各部に対応する構成に、上記と同じ符号を用いる。図5に示すインクジェットヘッド31では、絶縁シート90は、主走査方向の第一側で、第一電極板80Aの第一平面81の全面に接し、主走査方向の第二側で、第二電極板80Bの第一平面81の全面に接する。絶縁シート90は、第一電極板80Aの第一平面81と第二電極板80Bの第一平面81に接した状態で、第一電極板80A及び第二電極板80Bと、流路部60の鉛直方向の上側の部分に挟まれる。絶縁シート90は、前述した挟まれた状態において、開口した支流部67の範囲H,Jをそれぞれ覆い、封鎖する。従って、絶縁シート90は、主走査方向の第一側及び第二側にそれぞれ形成された各支流部67の内壁のうちの一部を形成する。
詳細は省略するが、単一の絶縁シートとする場合、電極板も単一の構成としてもよい。この場合、第一圧電素子と第二圧電素子は、単一の電極板の第一平面に、図2及び図5に示す状態と同様に設けられる。単一の絶縁シートと単一の電極板のそれぞれにおける主走査方向の寸法及び副走査方向の寸法は、上記同様の関係に設定される。即ち、絶縁シートの主走査方向の寸法は、電極板の主走査方向の寸法より、大きな値に設定される。絶縁シートの副走査方向の寸法は、電極板の副走査方向の寸法より、大きな値に設定される。従って、インクジェットヘッドにおいて、単一の絶縁シートは、単一の電極板の第一平面に接し、この第一平面の全てを被覆し、この電極板の外縁からはみ出した状態で、電極板と、流路部の鉛直方向の上側の部分に挟まれる。