JP6421645B2 - 炭素が除去されたR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法 - Google Patents

炭素が除去されたR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法 Download PDF

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Description

本発明は、R−Fe−B系永久磁石(R:Nd,Pr,Dyなどの希土類元素)のスクラップやスラッジ、使用済み磁石などとして発生する炭素含有磁石合金から炭素を除去して合金再生材料を製造する方法に関する。
R−Fe−B系永久磁石は、高い磁気特性を有していることから、今日様々な分野で使用されていることは周知の通りである。このような背景のもと、R−Fe−B系永久磁石の生産工場では、日々、大量の磁石が生産されているが、磁石の生産量の増大に伴い、製造工程中に加工不良物などとして排出される磁石スクラップや、切削屑や研削屑などとして排出される磁石スラッジなどの量も増加している。とりわけ情報機器の軽量化や小型化によってそこで使用される磁石も小型化していることから、加工代比率が大きくなることで、製造歩留まりが年々低下する傾向にある。従って、製造工程中に排出される磁石スクラップや磁石スラッジなどを廃棄せず、いかに回収して再利用するかが今後の重要な技術課題となっている。また、R−Fe−B系永久磁石を使用した電化製品などから使用済み磁石をいかに回収して再利用するかについても同様である。
R−Fe−B系永久磁石は、一般に、原料となる複数の金属を所定の割合で配合し、真空溶解炉において高周波加熱することで所定の組成を有する合金材料を得る工程を経て製造される。磁石スクラップや磁石スラッジや使用済み磁石などを磁石の製造に再利用することを考えた場合、これらをそのまま真空溶解炉において高周波加熱することで合金再生材料を得ることができれば省エネルギー化やコスト削減などの点において理想的であるが、現実にはこのようなことは行われない。その理由の一つとして、磁石スクラップや磁石スラッジや使用済み磁石などは、磁石の製造工程において使用された有機系潤滑剤などに由来する炭素を磁石の組織中に含んでいることから、これらから合金再生材料を得て磁石を製造すると、これらに含まれていた炭素が磁石の磁気特性に悪影響を及ぼすといったことがある。従って、磁石スクラップや磁石スラッジや使用済み磁石などを磁石の製造に再利用するためには、これらに含まれる炭素を除去することが望ましい。
磁石スクラップや磁石スラッジや使用済み磁石などの炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金から炭素を除去する方法としては、例えば特許文献1において、金属カルシウムや水素化カルシウムを還元剤として利用し、合金に含まれる炭素を還元することで炭化カルシウムに変換して除去する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、炭化カルシウムよりも希土類炭化物の方が熱力学的に安定であるため、希土類炭化物が炭化カルシウムよりも優先して生成することで、希土類炭化物が大量に除去されてしまい、結果として再生された合金材料中の希土類元素の歩留まりが悪くなるといった問題がある。また、特許文献2には、粉末状の炭素を含む磁石スクラップを酸素雰囲気中にて700℃〜1200℃の温度で1時間〜10時間熱処理することで酸化脱炭する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、酸化脱炭の際に希土類酸化物が大量に生成するので、生成した希土類酸化物を還元するために金属カルシウムなどを還元剤として大量に必要とするためコストが高くつくといった問題や、再生された合金材料中に還元剤として使用した金属カルシウムなどが不純物として含まれることで、磁石の磁気特性に悪影響を及ぼすといった問題がある。従って、これまでに提案されている方法では、磁石スクラップや磁石スラッジや使用済み磁石などに含まれる炭素を効果的に除去することができないことから、これらの磁石の製造への再利用は、製造される磁石に含まれる炭素量の無視できない増加を避けるため、少量ずつ真空溶解炉に投入してバージン合金材料とともに高周波加熱して使用する態様や、ケミカルリサイクルを行って希土類元素として回収して使用する態様で行われているのが実情である。しかしながら、こうした態様には、例えばコスト削減を目的としてバージン合金材料の使用量を減らしたいと考えても減らせる量には自ずと限界があるといった問題や、ケミカルリサイクルを行った場合には排出される廃液が環境に与える影響に配慮しなければならないといった問題がある。
そこで本発明者らの研究グループは、R−Fe−B系永久磁石のスクラップやスラッジ、使用済み磁石などとして発生する炭素含有磁石合金から炭素を除去して合金再生材料を製造する方法として、R−Fe−B系異方性ボンド磁石の製造に用いられ、結晶粒を微細化して高い磁気特性を有する合金粉末を得るための方法として当業者によく知られているHDDR(Hydrogenation:水素化−Disproportionation:不均化−Desorption:脱水素−Recombination:再結合)処理を、炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金に対して行うことで、炭素を除去する方法を特許文献3において提案し、その実施例において、炭素含有磁石合金に対し、水素ガス雰囲気中にて600℃〜900℃でHD(水素化および不均化)工程を行った後、処理環境を10kPa以下に減圧してから850℃でDR(脱水素および再結合)工程を行うことで、磁石合金に含まれる炭素を除去することができることを確認している。しかしながら、特許文献3に記載の方法よりも、より多くの炭素を除去することができれば望ましい。
特開昭58−73731号公報 特開2003−51418号公報 国際公開第2013/002376号
そこで本発明は、R−Fe−B系永久磁石のスクラップやスラッジ、使用済み磁石などとして発生する炭素含有磁石合金から炭素を効果的に除去して合金再生材料を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の点に鑑みて検討を重ねる過程において、特許文献3に記載の方法によって炭素が除去されたR−Fe−B系永久磁石合金再生材料は、大気に解放されると、大気中に含まれる炭素成分を吸着することで、炭素量が増加することに気付いた。そこで、特許文献3に記載の方法を改良し、炭素が除去された磁石合金再生材料が大気に解放されることによって炭素量が増加することを抑制する方法を検討したところ、炭素含有磁石合金に対して水素粉砕を行った後、所定の圧力以上の水素ガス雰囲気中にて第1の熱処理を行い、さらに処理環境を所定の圧力以下に減圧してから第1の熱処理よりも高温で第2の熱処理を行うことで、炭素が除去された磁石合金再生材料が大気に解放されることによって炭素量が増加することを抑制することができることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明のR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法は、請求項1記載の通り、炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金に対して水素粉砕を行った後、100kPa以上の水素ガス雰囲気中にて600℃〜900℃で第1の熱処理を行い、さらに処理環境を10kPa以下に減圧してから1000℃以上で第2の熱処理を行うことを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、第1の熱処理を500kPa以下の水素ガス雰囲気中にて行うことを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1記載の方法において、第2の熱処理を1200℃以下で行うことを特徴とする。
また、本発明のR−Fe−B系永久磁石の製造方法は、請求項4記載の通り、請求項1記載のR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法を行った後、前記合金再生材料を少なくとも原料の一部として使用して行うことを特徴とする。
本発明によれば、R−Fe−B系永久磁石のスクラップやスラッジ、使用済み磁石などとして発生する炭素含有磁石合金から炭素を効果的に除去して合金再生材料を製造する方法を提供することができる。本発明の方法で製造された磁石合金再生材料は、大気に解放されても炭素量が低減されたままであるので、磁石の製造に再利用しても、製造される磁石に含まれる炭素量の増加を抑制することができる。従って、本発明は、磁石の製造における磁石スクラップや磁石スラッジや使用済み磁石などの効率的な再利用を可能とし、バージン合金材料の使用量を減らしたり、ケミカルリサイクルの実施回数を少なくしたりすることができることから、省エネルギー化やコスト削減や環境保全などに貢献する。
実施例1における、SC合金に対して300℃で水素粉砕を行った後、850℃で第1の熱処理を行い、さらに1100℃で第2の熱処理を行う場合の処理パターンの詳細である。 同、6種類の温度で第2の熱処理を行って得られた合金粉末のそれぞれの断面のSEM観察結果である。 同、850℃で第2の熱処理を行った後に炉内から取り出した合金粉末の、最表層面、最表層面から0.6nm深さ分をArイオンでエッチングすることで現れた新生面、新生面を大気に数秒間晒した後の最表層面のESCA分析結果である。
本発明のR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法は、炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金に対して水素粉砕を行った後、100kPa以上の水素ガス雰囲気中にて600℃〜900℃で第1の熱処理を行い、さらに処理環境を10kPa以下に減圧してから1000℃以上で第2の熱処理を行うことを特徴とするものである。
本発明における処理対象物である炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金は、例えば磁石の製造工程において使用された有機系潤滑剤などに由来する炭素を磁石の組織中に含んでいる磁石スクラップや磁石スラッジや使用済み磁石などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。処理対象物とするR−Fe−B系永久磁石合金に含まれる炭素量に特段の制限はないが、本発明は、とりわけ炭素量が400ppm以上である、再利用する際には含まれる炭素を除去することが望ましい磁石合金に対して効果を発揮する(磁石合金に含まれる炭素量の上限は磁石スクラップや磁石スラッジや使用済み磁石などに通常含まれる炭素量に鑑みれば1200ppmである)。なお、処理対象物がその表面に例えば有機膜が付着している磁石スクラップなどの場合、アルコールなどを用いた洗浄処理、アルカリなどを用いた化学処理、ショットブラストなどを用いた機械処理などによって表面付着物を予め除去しておくことが望ましい。
本発明のR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法においては、まず、処理対象物とする炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金に対して水素粉砕を行う。磁石合金に対して水素粉砕を行うと、磁石合金の主にR−rich相(粒界相)に微細なクラックが導入されることが知られているが、本発明者らは、磁石合金に含まれる炭素は、磁石合金のR−rich相に偏析していることを知見している。よって、炭素含有磁石合金に対して水素粉砕を行うと、炭素が偏析している磁石合金のR−rich相に微細なクラックが導入されることになり、引き続き、水素粉砕を行った炭素含有磁石合金に対して2段階の熱処理を行うことで、炭素と水素が反応して炭化水素が生成することによる脱炭反応が進行しやすくなるとともに、生成した炭化水素が磁石合金から排出されやすくなる。処理対象物とする炭素含有磁石合金は、例えば、高周波加熱することで溶融してから鋳片状にしたストリップキャスト合金であることが、その調製の際に磁石合金に含まれる酸素をスラグに取り込ませて除去することができる点において都合がよい。炭素含有磁石合金に対する水素粉砕は、例えば、炭素含有磁石合金を炉内に仕込み、水素爆発の危険性などを排除するためにいったん炉内の圧力を5Pa以下になるまで減圧して脱酸素を行った後、減圧状態のまま200℃〜400℃まで炉内を加熱してから、水素ガスを炉内の圧力が100kPa〜500kPaになるように導入して水素ガス雰囲気(ArガスやHeガスなどの不活性ガスを含んでいてもよい、以下同じ)を形成し(水素ガス雰囲気は150kPa以上が望ましい)、5分間〜5時間行えばよいが、炉内の圧力を5Pa以下になるまで減圧した後、ArガスやHeガスなどの不活性ガスを炉内の圧力が大気圧になるように導入しながら水素粉砕を行う温度まで炉内を加熱してから、炉内への不活性ガスの導入を停止し、かわりに水素ガスを所定の圧力になるように導入することで水素ガス雰囲気を形成して行ってもよい。この場合、水素粉砕を行う温度までの炉内の昇温は、炉の伝熱性、対流性、輻射性などの特性を考慮し、200℃/時間〜1000℃/時間で行うことが望ましい。なお、炭素含有磁石合金に対する水素粉砕は、常温で行ってもよい。
次に、水素粉砕を行った炭素含有磁石合金に対し、100kPa以上の水素ガス雰囲気中にて600℃〜900℃で第1の熱処理を行う。水素粉砕を行うことによって磁石合金のR−rich相に微細なクラックが導入された炭素含有磁石合金に対して第1の熱処理を行うことで、微細なクラックが磁石合金への水素の誘導経路となって水素が磁石合金に取り込まれやすくなり、磁石合金に含まれる炭素と水素が接触しやすくなることで炭素と水素が反応して炭化水素が生成しやすくなる。また、磁石合金のR−rich相に導入された微細なクラックは、こうして生成した炭化水素の磁石合金からの排出経路となる。第1の熱処理は、例えば、炉内に仕込んだ炭素含有磁石合金に対して水素粉砕を行った後、炉内の圧力状態を維持したまま、あるいは必要な調整を行ってから第1の熱処理を行う温度まで炉内を加熱して行えばよい(炉内の昇温は200℃/時間〜1000℃/時間で行うことが望ましい。炉内の圧力状態を調整する場合には炉内を昇温してから行ってもよい)。第1の熱処理を行う水素ガス雰囲気を100kPa以上と規定するのは、水素ガス雰囲気が100kPa未満であると、脱炭反応が進行しにくくなる恐れがあることに加え、炉内の圧力が減圧状態であることで、何らかの原因で炉内に大気が侵入すると水素爆発を引き起こす恐れがあるからである。なお、安全性の確保などの点に鑑みれば、水素ガス雰囲気は500kPa以下が望ましく、300kPa以下がより望ましい。第1の熱処理を行う温度を600℃〜900℃と規定するのは、600℃未満であると、脱炭反応が進行しにくくなる恐れがある一方、900℃を超えると、炭素が偏析している磁石合金のR−rich相に導入された微細なクラックが閉塞されやすくなることで、脱炭反応が進行しにくくなる恐れがあるからである。第1の熱処理を行う温度は、700℃〜875℃が望ましい。第1の熱処理を行う時間は、脱炭反応を十分に進行させるためには1時間以上が望ましく、2時間以上がより望ましい(時間の上限に特段の制限はないが処理効率などに鑑みれば8時間以下が望ましく6時間以下がより望ましい)。第1の熱処理は、処理環境を流気状態にして行うことが、炭素と水素が反応して生成した炭化水素が処理環境に貯留することで次第に磁石合金から排出されにくくなることを回避することができる点において望ましい。
最後に、処理環境を10kPa以下に減圧してから1000℃以上で第2の熱処理を行う。第2の熱処理は、第1の熱処理を行うことで生成した炭化水素や磁石合金に取り込まれた水素を、磁石合金のR−rich相に導入された微細なクラックを排出経路として磁石合金から十分に排出させることに加え、微細なクラックを最終的に閉塞してしまうことで磁石合金粒子の表面積を減少させ、大気に解放されても大気中に含まれる炭素成分を吸着しにくくすることを意図したものである。第2の熱処理は、例えば、第1の熱処理を行った炉内で、炉内の雰囲気をArガスやHeガスなどからなる不活性ガス雰囲気に変更してから、第2の熱処理を行う温度まで炉内を加熱した後(炉内の昇温は200℃/時間〜1000℃/時間で行うことが望ましい)、所定の圧力まで減圧してから行えばよい(炉内の昇温と炉内の減圧の順序は逆であってもよい)。第2の熱処理を行う処理環境を10kPa以下に減圧するのは、処理環境が10kPaを超えると、第1の熱処理を行うことで生成した炭化水素や磁石合金に取り込まれた水素の排出に長時間を要する恐れがあるからである。なお、処理環境の圧力の下限は特段限定されるものではなく、例えば1Paであってよい。第2の熱処理を行う温度を1000℃以上と規定するのは、1000℃未満であると、微細なクラックが閉塞しにくくなる恐れがあるからである。第2の熱処理を行う温度は、1025℃以上が望ましく、1050℃以上がより望ましい。なお、第2の熱処理は1200℃以下の温度で行うことが望ましい。1200℃を超えると、磁石合金の主相が溶融して炉壁に付着したりする恐れがある。第2の熱処理を行う時間は、微細なクラックを十分に閉塞させるためには、1時間以上が望ましく、2時間以上がより望ましい(時間の上限に特段の制限はないが処理効率などに鑑みれば8時間以下が望ましく6時間以下がより望ましい)。
本発明のR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法を、1つの炉を一貫して用いて実施する場合、炉は、炉内を流気状態にできるものが望ましい。炉内を流気状態にできる炉は、上記の通り、第1の熱処理を行う際に有効である。炉は、減圧や加圧を自在に行えるものがより望ましく、炉を回転させたり振動させたりする機構を有していてもよい。なお、炉は、1つの炉を一貫して用いるのが簡便であるが、工程ごとに処理対象物を別の炉に移し替えてもよい。しかしながら、工程ごとに処理対象物を別の炉に移し替える場合、処理対象物を大気に解放しないことが肝要である。
以上のようにして炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金に対して水素粉砕と2段階の熱処理を行うことで、磁石合金に含まれる炭素を効果的に除去することができる(例えば400ppm以上の炭素量を好適には100ppm以下にまで、より好適には65ppm以下にまで、さらに好適には50ppm以下にまで低減することができる)。
本発明によれば、炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金に対して水素粉砕と2段階の熱処理を行うことで、炭素が効果的に除去された粉末の合金再生材料が得られる。こうして得られた粉末の合金再生材料は、例えば、それ単独で、またはバージン合金材料とともに、真空溶解炉において高周波加熱し、得られた溶湯を冷却凝固させて鋳片やインゴットなどの形態で回収し、必要に応じて成分分析や組成調整などを行なった後、磁石の製造工程に供することで、磁石の製造に利用することができる。なお、こうして得られた粉末の合金再生材料を高周波加熱するまでのその保存やハンドリングは、ArガスやHeガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。粉末の合金再生材料は、そのままの形態で真空溶解炉に投入してもよいが、ハンドプレス機や自動成形機などを用いて0.98MPa〜98MPaの成形圧力で一辺が3mm〜1cm程度の直方体状物や直径と高さがこの程度の円柱状物などに成形することで取り扱い性を高めた上で真空溶解炉に投入してもよい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:
R−Fe−B系永久磁石の加工工程で発生したスクラップ(加工不良の固形屑)を真空溶解炉において高周波溶解し、ストリップキャスト合金(一辺が10mm程度で厚みが0.3mm程度の大きさのもの。以下「SC合金」)を調製した。このSC合金のICP分析(使用装置:島津製作所社製のICPV−1017、以下同じ)とガス分析(使用装置:堀場製作所社製のEMGA−550W(OとNの分析)および同社製のEMIA−820(Cの分析)、以下同じ)の結果を表1に示す。表1から明らかなように、このSC合金に含まれる炭素量は0.098mass%(980ppm)であった。
上記のSC合金約100gを管状型の回転式の炉に仕込み、炉内の圧力を2Pa以下になるまで減圧した後、減圧状態のまま300℃まで炉内を30分間で加熱してから、水素ガスを炉内の圧力が220kPaになるように10L/分の流量で導入して加圧状態の水素ガス雰囲気を形成し、1時間水素粉砕を行った。次に、炉内の加圧状態の水素ガス雰囲気を維持したまま850℃まで炉内を1時間で加熱した後、加圧状態を10L/分の流気状態に切り換え、4時間、第1の熱処理を行った。次に、水素ガスによる炉内の流気状態を停止し、炉内にArガスを20L/分の流量で10分間導入することで炉内の雰囲気をArガス雰囲気に変更した後、炉内の圧力を2Pa以下になるまで減圧し、6種類の温度(850℃、900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃)で5時間、第2の熱処理を行った。なお、900℃以上の温度で第2の熱処理を行う場合、減圧状態のまま熱処理を行う温度まで炉内を30分間で加熱した(1100℃で第2の熱処理を行う場合の処理パターンの詳細を図1に示す)。その後、真空引きしながら炉内の温度を室温まで冷却してから炉内の合金粉末を取り出した。炉内から取り出した合金粉末をICP分析とガス分析したところ、850℃で第2の熱処理を行った合金粉末に含まれる炭素量は190ppmであったのに対し、1100℃で第2の熱処理を行った合金粉末に含まれる炭素量は10ppmであり、第2の熱処理を行う温度によって合金粉末に含まれる炭素量は大きく異なることがわかった。なお、いずれの温度で第2の熱処理を行った場合でも、炉の出口において炉内からの排出ガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィーによってその成分分析を行ったところ、炭化水素(メタン)の存在が認められた。6種類の温度で第2の熱処理を行った合金粉末のそれぞれの断面のSEM観察結果(使用装置:日立ハイテクノロジーズ社製のS800)を図2に示す。図2から明らかなように、水素粉砕によって磁石合金のR−rich相に導入された微細なクラックは、950℃以下の温度で行う第2の熱処理では閉塞されないが、1000℃以上の温度で行う第2の熱処理では閉塞されることがわかった(水素粉砕によって微細なクラックが磁石合金のR−rich相に導入されることは別途の試験で確認済み)。なお、いずれの温度で第2の熱処理を行った場合でも、炉内から取り出した合金粉末は大小の粒子を含み、その大きさは概ね1μm〜1mm程度であった。
図3は、850℃で第2の熱処理を行った後に炉内から取り出した合金粉末の、最表層面、最表層面から0.6nm深さ分をArイオンでエッチングすることで現れた新生面、新生面を大気に数秒間晒した後の最表層面のESCA分析結果(使用装置:アルバック・ファイ社製のESCA−5400R)である。横軸の結合エネルギーが288eV〜282eVの付近に現れるピークは炭化水素に起因するピークである。図3から明らかなように、合金粉末の最表層面をエッチングすると炭化水素のピークは減少するが、大気に晒すと炭化水素のピークは再び増大することから、850℃で第2の熱処理を行った合金粉末は、炉内から取り出すことで大気に解放されると、大気中に含まれる炭素成分を瞬時に吸着することがわかった。1100℃で第2の熱処理を行った合金粉末も、850℃で第2の熱処理を行った合金粉末と同様に、炉内から取り出すことで大気に解放されると、大気中に含まれる炭素成分を瞬時に吸着するが、850℃で第2の熱処理を行った合金粉末に含まれる炭素量と、1100℃で第2の熱処理を行った合金粉末に含まれる炭素量の違いは、前者の合金粉末は、水素粉砕によって磁石合金のR−rich相に導入された微細なクラックが閉塞されていないので、大気中に含まれる炭素成分を吸着する表面積が非常に大きいのに対し、後者の合金粉末は、水素粉砕によって磁石合金のR−rich相に導入された微細なクラックが閉塞されているので、大気中に含まれる炭素成分を吸着する表面積が小さいことから、炉内から取り出すことで大気に解放されてからの大気中に含まれる炭素成分の吸着量の違いを反映していると推察された。
実施例2:
R−Fe−B系永久磁石の加工工程で発生したスクラップ(加工不良の固形屑)を真空溶解炉において高周波溶解し、ストリップキャスト合金(一辺が10mm程度で厚みが0.3mm程度の大きさのもの。以下「SC合金」)を調製した。このSC合金のICP分析とガス分析の結果を表2に示す。表2から明らかなように、このSC合金に含まれる炭素量は0.047mass%(470ppm)であった。
上記のSC合金に対し、実施例1と同様にして、300℃での水素粉砕、水素ガス雰囲気中にて850℃での第1の熱処理、減圧してからの1000℃での第2の熱処理を順次行った。1000℃で第2の熱処理を行った後に炉内から取り出した合金粉末をICP分析とガス分析したところ、合金粉末に含まれる炭素量は40ppmであった。この合金粉末(以下「脱炭合金粉末」)を、20%または50%の割合でR−Fe−B系永久磁石を製造するためのバージン合金材料に混合し、合計で600gになるように秤量した。脱炭合金粉末とバージン合金材料の混合原料をムライト製のるつぼに仕込んだ後、るつぼを高周波真空溶解炉に収容した。メカニカルブースターポンプを用いて炉内を排気した後、Arガスを炉内に導入し、炉内の圧力を40kPaに保持してから昇温を開始した。炉内のるつぼの内部を目視で観察し、混合原料が全て溶解したことを確認した後、5分間保持してから溶湯を水冷銅鋳型に鋳造し、磁石合金のインゴットを作製した。得られたインゴットに含まれる炭素量を表3に示す。また、表3には、バージン合金材料のみを用いて作製したインゴットと上記のSC合金のみを用いて作製したインゴットにそれぞれ含まれる炭素量をあわせて示す。表3から明らかなように、脱炭合金粉末とバージン合金材料の混合原料を用いて作製したインゴットは、バージン合金材料のみを用いて作製したインゴットと比較して、インゴットに含まれる炭素量の増加がほとんどなかった。
実施例3:
実施例1におけるSC合金に対し、実施例1と同様にして、300℃での水素粉砕、水素ガス雰囲気中にて600℃での第1の熱処理、減圧してからの1150℃での第2の熱処理を順次行った。得られた合金粉末に含まれる炭素量は35ppm以下であった。
実施例4:
実施例1におけるSC合金に対し、実施例1と同様にして、300℃での水素粉砕、水素ガス雰囲気中にて900℃での第1の熱処理、減圧してからの1150℃での第2の熱処理を順次行った。得られた合金粉末に含まれる炭素量は30ppm以下であった。
実施例5:
実施例1におけるSC合金に対し、実施例1と同様にして、300℃での水素粉砕、水素ガス雰囲気中にて850℃での第1の熱処理、減圧してからの1050℃での第2の熱処理を順次行った。得られた合金粉末に含まれる炭素量は30ppm以下であった。
実施例6:
第1の熱処理を行う水素雰囲気を350kPaにすること以外は実施例1と同様にして合金粉末を得た。得られた合金粉末に含まれる炭素量は25ppm以下であった。
本発明は、R−Fe−B系永久磁石のスクラップやスラッジ、使用済み磁石などとして発生する炭素含有磁石合金から炭素を効果的に除去して合金再生材料を製造する方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (4)

  1. 炭素を含むR−Fe−B系永久磁石合金に対して水素粉砕を行った後、100kPa以上の水素ガス雰囲気中にて600℃〜900℃で第1の熱処理を行い、さらに処理環境を10kPa以下に減圧してから1000℃以上で第2の熱処理を行うことを特徴とするR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法。
  2. 第1の熱処理を500kPa以下の水素ガス雰囲気中にて行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 第2の熱処理を1200℃以下で行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 請求項1記載のR−Fe−B系永久磁石合金再生材料を製造する方法を行った後、前記合金再生材料を少なくとも原料の一部として使用して行うことを特徴とするR−Fe−B系永久磁石の製造方法。
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