JP6421379B2 - 磁界センサ - Google Patents
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Description
しかし、SQUIDは、測定時に液体ヘリウムによる冷却が必要である。すなわち、冷却及び保冷装置を含んだ測定システムの実現には膨大なコストがかかるため、SQUIDを用いた心磁界計測は普及していない。
このため、SQUIDに代わる種々の磁界センサを用いた心磁界計測について研究が行われている。
また、食品中に含まれる微小な金属異物の検出や、充電式電池の製造工程で混入する微小金属異物の高感度検出が必要とされている。このためには、SQUIDのような高コストセンサは産業応用には全く不向きである。そのため、微小金属異物から発せられる微弱で空間的に局在するダイポール磁界を高感度に検出することができる勾配磁界センサが必要とされている。
また一方では、一様磁気雑音を低減する方法として、単芯のフラックスゲートセンサを用いたグラディオメータ(gradiometer:磁場勾配計)が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
本実施形態に係る磁界センサ100は、図1に示すように、勾配磁界を検出するグラディオメータ(gradiometer:磁場勾配計)10と、一様磁界を検出するマグネトメータ(magnetometer:磁力計)20と、を備える。
また、本実施形態に係る磁界センサ100(グラディオメータ10、マグネトメータ20)のセンサヘッドは、図1に示すように、第1の磁気コア1(第1のセンサヘッド101)及び第2の磁気コア2(第2のセンサヘッド102)を同軸上に配置しているが、第1の磁気コア1(第1のセンサヘッド101)及び第2の磁気コア2(第2のセンサヘッド102)を平行に配置してもよい。
なお、本実施形態に係る磁界センサ100は、第1の磁気コア1(第1のセンサヘッド101)及び第2の磁気コア2(第2のセンサヘッド102)を同軸上に精確に配置できるように、単一のプラスチックカバー内に格納している。
なお、直交フラックスゲートセンサとは、センサヘッドに細い磁性ワイヤを用い、交流電流(励磁電流)が直接ワイヤに通電され、検出信号が磁性ワイヤの周囲に巻かれた検出コイルの誘起電圧として検出されることで、磁性ワイヤの円周方向に現れる励磁磁界とワイヤ方向(ワイヤ軸方向)である検出磁界とが直交関係にあるフラックスゲートセンサである。
また、基本波型直交フラックスゲートセンサとは、交流励磁電流の振幅より大きな直流電流を重畳することで、検出コイルの出力が交流励磁周波数と同じ基本波の出力で得られる直交フラックスゲートセンサである。
このため、第1の磁気コア1及び第2の磁気コア2は、交流電流の振幅より大きい値を有する直流電流が交流電流に重畳されて供給される。
また、本実施形態に係る第1の磁気コア1及び第2の磁気コア2は、ヘアピン状に曲げた長さ30mmで直径120μmのCo基アモルファスワイヤを使用しているが、この寸法及び材質に限るものではない。
また、本実施形態に係る検出コイルは、第1の検出コイル3及び第2の検出コイル4のターン数をそれぞれ750ターンとし、第3の検出コイル5及び第4の検出コイル6のターン数をそれぞれ250ターンとしているが、このターン数及び巻数比に限るものではない。
さらに、本実施形態に係る第1のセンサヘッド101(第2のセンサヘッド102)は、第1の磁気コア1(第2の磁気コア2)を中心として、第3の検出コイル5(第4の検出コイル6)を内層とし、第1の検出コイル3(第2の検出コイル4)を外層として巻回しているが、第1の検出コイル3(第2の検出コイル4)を内層とし、第3の検出コイル5(第4の検出コイル6)を外層として巻回してもよい。
このため、グラディオメータ10は、遠方から到達してくるような一様磁気雑音に対して、第1のセンサヘッド101及び第2のセンサヘッド102の両ヘッドで同様にピックアップされてセンサ出力には現れない。しかし、グラディオメータ10は、心磁界のように局所的な磁界に対して、先端側の第1のセンサヘッド101でのみピックアップされるため、センサ出力として観察される。
これにより、グラディオメータ10は、一様磁気雑音を除去して信号を検出することができるようになり、対雑音性能を向上させることができる。
このため、マグネトメータ20は、一様磁気雑音に対して、第1のセンサヘッド101及び第2のセンサヘッド102の両ヘッドで同様にピックアップされ、加算されたセンサ出力として観察される。しかし、マグネトメータ20は、局所的な磁界に対して、先端側の第1のセンサヘッド101でのみピックアップされるため、センサ出力として観察されるものの、一様磁気雑音と比較して小さな値として観察される。
これにより、マグネトメータ20は、一様磁気雑音に対して局所的な磁界を強調した信号を検出することができる。
第1のセンサ回路11は、第1の検出コイル3の他端3bにコンデンサを介して接続され、第1の検出コイル3の他端3bからの入力信号に対して同期整流を行う第1の同期検波回路(phase-sensitive detection:PSD)11aと、第1の同期検波回路11aにより整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する第1の平滑回路(smoothing filter)11bと、反転入力端子が第1の平滑回路11bの後段に接続され、出力端子が帰還抵抗Rfを介して第1の検出コイル3の他端3bに接続される第1の誤差増幅器(Effor amplifier)11cと、を備える。
なお、本実施形態に係る第1の同期検波回路11aは、アナログ・デバイセズ社製「平衡型変復調器:AD630」を用いているが当然ながらこれに限るものでは無い。また、本実施形態に係る第1の平滑回路11bは、遮断周波数を160Hzとして高域を除去するローパスフィルタ(low-pass filter:LPF)として機能する。また、本実施形態に係る帰還抵抗Rfは、10kΩの抵抗であるが、設定する入力磁界範囲によって設計するものである。
第2のセンサ回路21は、第1のセンサ回路11の回路構成と同様に、第3の検出コイル5の他端5bからの入力信号に対して同期整流を行う第2の同期検波回路21aと、第2の同期検波回路21aにより整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する第2の平滑回路21bと、反転入力端子が第2の平滑回路21bの後段に接続され、出力端子が帰還抵抗R’fを介して第3の検出コイル5の他端5bに接続される第2の誤差増幅器21cと、を備える。
なお、本実施形態に係る第2の同期検波回路21aは、アナログ・デバイセズ社製「平衡型変復調器:AD630」を用いている。また、本実施形態に係る第2の平滑回路21bは、遮断周波数を160Hzとして高域を除去するローパスフィルタとして機能する。また、本実施形態に係る帰還抵抗R’fは、10kΩの抵抗であるが、設定する入力磁界範囲によって設計するものである。
その後、第1のセンサ回路11(第2のセンサ回路21)においては、第1の誤差増幅器11c(第2の誤差増幅器21c)への入力が0になるように、負帰還電流if(負帰還電流i’f)が帰還抵抗Rf(帰還抵抗R’f)を通して第1の検出コイル3(第3の検出コイル5)及び第2の検出コイル4(第4の検出コイル6)に流れる。このとき、帰還抵抗Rf(帰還抵抗R’f)に現れる電圧降下がグラディオメータ10(マグネトメータ20)のセンサ出力に相当する。
一様磁界Hの環境下で勾配磁界Gを検出する場合を仮定すると、第1のセンサヘッド101での磁界の大きさΔH1と第2のセンサヘッド102での磁界の大きさΔH2は、次式(1)及び式(2)のように表される。
なお、次式(1)及び式(2)において、lは第1のセンサヘッド101及び第2のセンサヘッド102間の距離であり、nは第1の検出コイル3及び第2の検出コイル4の巻き線密度であり、ifは第1のセンサ回路11からの負帰還電流を表す。
ΔH1=H+lG−nif ・・・(1)
ΔH2=H+nif ・・・(2)
V1=KΔH1=K(H+lG−nif) ・・・(3)
V2=KΔH2=K(H+nif) ・・・(4)
V1−V2=K(ΔH1−ΔH2)=K(lG−2nif) ・・・(5)
また、負帰還構成の第1のセンサ回路11では、第1の検出コイル3及び第2の検出コイル4の出力電圧V1−V2を0にするように、負帰還電流ifが流れる。
これにより、負帰還電流ifは次式(6)のように導出される。
if=lG/2n (6)
このように、センサヘッド(第1のセンサヘッド101、第2のセンサヘッド102)をグラディオメータ10とすることで、一様磁界Hを打ち消して、勾配磁界Gの検出ができるということが式からも確認できる。
グラディオメータ10の特性評価には、図3に示すように、三組の円形コイルを組み合わせたヘルムホルツコイル201を使用した。
その結果、1.66μT/mの勾配磁界を発生させたとき、グラディオメータ10のセンサの出力は14.85mVであった。これにより、グラディオメータ10の勾配磁界に対する感度は、8.94mV/(μT/m)であることが確認できた。
センサヘッドをグラディオメータ10にすることで、一様磁界の影響をなくすことができることを、式(5)で示したが、この式が成り立つのは、第1のセンサヘッド101と第2のセンサヘッド102で感度が完全に等しい場合である。
すなわち、第1のセンサヘッド101及び第2のセンサヘッド102のセンサヘッド毎に感度が異なると、一様磁界は完全には打ち消されずに出力に現れてしまう。
特に、図2(b)においては、第2のセンサヘッド102の励磁を調整するように、抵抗Rを通して可変の直流電源を第2の磁気コア2に接続する構成にしているが、図2(c)に示すように、可変抵抗を通して直流電源を第2の磁気コア2に接続する構成とし、可変抵抗の調整により、第2のセンサヘッド102に流す直流バイアス電流Idc2を微調整してもよい。この構成により、グラディオメータ10は、さらに高精度での抑圧効果の補正を可能にすることができる。
また、図2(c)においては、第1の磁気コア1(第1のセンサヘッド101)及び第2の磁気コア2(第2のセンサヘッド102)を平行に配置したセンサヘッドを図示しているが、図2(b)に示すように、第1の磁気コア1及び第2の磁気コア2を同軸上に配置してもよい。
その磁界中に第1のセンサヘッド101及び第2のセンサヘッド102を配置し、センサの応答を観察する。その後、第2のセンサヘッド102の直流バイアスを調整して、一様磁界に対するセンサの応答がどのように変化するかを観察した。
励磁電圧は、交流電圧を2Vppとし、周波数を100kHzとして、第1のセンサヘッド101及び第2のセンサヘッド102に対して共通とした。
また、第1のセンサヘッド101の直流バイアス電圧は、3Vで固定とし、第2のセンサヘッド102のバイアス電圧を3V付近で変化させた。
また、センサの出力は、ロックインアンプを用いて観察し、その結果を図4に示す。なお、図4においては、横軸が第2のセンサヘッド102のバイアス電圧を表し、縦軸が一様磁界に対するセンサの抑圧比を表している。
なお、本結果では、第2のセンサヘッド102のバイアス電圧を3.09Vとしたときに、一様磁界の抑圧比が最大となった。
これにより、グラディオメータ10の抑圧比の最大値は、1/2630(=1.18μV/3.1mV)である。
この結果より、本実施形態に係る磁界センサ100のグラディオメータ10は、従来のフラックスゲートセンサと比べて、一様磁界を最大1/2630に低減することができる。
なお、本実施形態に係る磁界センサ100の出力は、図3に示すように、周波数可変フィルタ30に接続され、100Hzを遮断周波数とするローパスフィルタと0.1Hzと0.1Hzを遮断周波数として低域を除去するハイパスフィルタ(High-pass filter:HPF)とをセンサ出力に適用した。
また、一様磁界に対するマグネトメータ20の出力は、図5(b)に示すように、グラディオメータ10の出力が無いのに対し、ヘルムホルツコイル201に流れる電流の電流波形に同期した波形として現れている。なお、マグネトメータ20の出力は、屋内配線が作る磁界や計測装置の電源トランスからの漏洩磁界が存在するため、その結果、マグネトメータが応答したものである。
また、一様磁界に対する入出力特性は、図6(b)に示すように、グラディオメータ10の出力が無いのに対し、マグネトメータ20の出力として、磁束密度の増加に伴い増加する直線性のよい出力が得られることがわかる。
2 第2の磁気コア
3 第1の検出コイル
3a 一端
3b 他端
4 第2の検出コイル
4a 一端
4b 他端
5 第3の検出コイル
5a 一端
5b 他端
6 第4の検出コイル
6a 一端
6b 他端
10 グラディオメータ
11 第1のセンサ回路
11a 第1の同期検波回路
11b 第1の平滑回路
11c 第1の誤差増幅器
20 マグネトメータ
21 第2のセンサ回路
21a 第2の同期検波回路
21b 第2の平滑回路
21c 第2の誤差増幅器
30 周波数可変フィルタ
100 磁界センサ
101 第1のセンサヘッド
102 第2のセンサヘッド
201 ヘルムホルツコイル
202 信号発生器
203 オシロスコープ
Claims (4)
- センサヘッドとセンサ回路とを有するグラディオメータ及びマグネトメータを備え、当該グラディオメータ及びマグネトメータのセンサヘッドの磁気コアが共通する磁界センサであって、
前記グラディオメータのセンサヘッドが、
交流電流が供給される第1の磁気コアと、
前記第1の磁気コアと別体であり、交流電流が供給される第2の磁気コアと、
前記第1の磁気コアに巻回される第1の検出コイルと、
前記第2の磁気コアに巻回され、前記第1の検出コイルの一端に逆直列に接続される第2の検出コイルと、
を備え、
前記マグネトメータのセンサヘッドが、
前記第1の磁気コアと、
前記第2の磁気コアと、
前記第1の磁気コアに巻回される第3の検出コイルと、
前記第2の磁気コアに巻回され、前記第3の検出コイルの一端に順直列に接続される第4の検出コイルと、
を備えることを特徴とする磁界センサ。 - 請求項1に記載の磁界センサにおいて、
前記グラディオメータが、前記第1の検出コイルの他端に接続される負帰還構成の第1のセンサ回路を備え、
前記第1のセンサ回路が、
前記第1の検出コイルの他端からの入力信号に対して同期整流を行う第1の同期検波回路と、
前記第1の同期検波回路により整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する第1の平滑回路と、
反転入力端子が前記第1の平滑回路の後段に接続され、出力端子が帰還抵抗を介して前記第1の検出コイルの他端に接続される第1の誤差増幅器と、
を備えることを特徴とする磁界センサ。 - 請求項1又は2に記載の磁界センサにおいて、
前記マグネトメータが、前記第3の検出コイルの他端に接続される負帰還構成の第2のセンサ回路を備え、
前記第2のセンサ回路が、
前記第3の検出コイルの他端からの入力信号に対して同期整流を行う第2の同期検波回路と、
前記第2の同期検波回路により整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する第2の平滑回路と、
反転入力端子が前記第2の平滑回路の後段に接続され、出力端子が帰還抵抗を介して前記第3の検出コイルの他端に接続される第2の誤差増幅器と、
を備えることを特徴とする磁界センサ。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載の磁界センサにおいて、
前記第1の磁気コア及び第2の磁気コアは、前記交流電流の振幅より大きい値を有する直流電流が前記交流電流に重畳されて供給されることを特徴とする磁界センサ。
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