JP2019045275A - 磁気検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便な構成で微弱な磁場を精度よく検出する。【解決手段】第1磁気分解能で入力磁場の検出軸の成分を検出した検出値に基づいて、入力磁場の検出軸の成分を減殺する第1キャンセル磁場を生成する第1磁場生成部と、第2磁場生成部、及び、磁気抵抗素子を有する第1磁気検出部とを備え、第2磁場生成部は、磁気抵抗素子の出力に応じて流れるフィードバック電流に基づいて、入力磁場及び第1キャンセル磁場を重畳した合成磁場の検出軸の成分を減殺する第2キャンセル磁場を生成し、磁気抵抗素子は、入力磁場、第1キャンセル磁場、及び、第2キャンセル磁場が与えられて検出軸を感磁軸として磁場を検出した結果を出力し、第1磁気検出部は、フィードバック電流を測定することで、合成磁場の検出軸の成分を、第1磁気分解能よりも高い第2磁気分解能で検出する磁気検出装置を提供する。【選択図】図4
Description
本発明は、磁気検出装置に関する。
10pT程度の微弱な磁場を検出する磁気センサが知られており、心臓等の臓器の電気的な分極に起因する心磁信号を測定する心磁計等に用いられていた(例えば、特許文献1〜3参照)。また、超伝導量子干渉計(SQUID:Superconducting QUantum Interference Device)を用いてグラジオメータを形成して環境磁場の影響を軽減することが知られていた(例えば、特許文献4参照)。
特許文献1 特開2000−217798号公報
特許文献2 特開2012−152515号公報
特許文献3 特開2000−284032号公報
特許文献4 特開平5−232202号公報
特許文献1 特開2000−217798号公報
特許文献2 特開2012−152515号公報
特許文献3 特開2000−284032号公報
特許文献4 特開平5−232202号公報
また、臓器等の微弱な磁場を測定すると環境磁場成分の含まれる割合が大きく、被測定信号を高精度で測定しようとすると高いダイナミックレンジが必要になり、高ビット数のAD変換器及び高電圧電源等の特別な技術が必要であった。
また、ジョセフソン効果を利用したSQUIDセンサは、微弱な磁場を検出できるが、高価な液体ヘリウムと、大規模な磁気シールドルーム等が必要になってしまい、当該センサを備える装置を設置することは容易ではなかった。このため、従来、簡便な構成で微弱な磁場を精度よく検出することが困難であった。
本発明の第1の態様においては、第1磁気分解能で入力磁場の検出軸の成分を検出した検出値に基づいて、入力磁場の検出軸の成分を減殺する第1キャンセル磁場を生成する第1磁場生成部と、第2磁場生成部、及び、磁気抵抗素子を有する第1磁気検出部と、を備え、第2磁場生成部は、磁気抵抗素子の出力に応じて流れるフィードバック電流に基づいて、入力磁場及び第1キャンセル磁場を重畳した合成磁場の検出軸の成分を減殺する第2キャンセル磁場を生成し、磁気抵抗素子は、入力磁場、第1キャンセル磁場、及び、第2キャンセル磁場が与えられて、検出軸を感磁軸として磁場を検出した結果を出力し、第1磁気検出部は、フィードバック電流を測定することで、合成磁場の検出軸の成分を、第1磁気分解能よりも高い第2磁気分解能で検出する、磁気検出装置、及び、当該磁気検出装置により実行される磁気検出方法を提供する。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る磁気検出装置10の概略図を示す。本実施形態に係る磁気検出装置10は、入力磁場から、入力磁場の大部分を占める環境磁場成分を除き、入力磁場に含まれる微小成分の被測定信号である信号磁場成分を高い分解能で検出する。磁気検出装置10は、第2磁気検出部110、第1磁場生成部130、及び、第1磁気検出部150を備える。
第2磁気検出部110は、入力磁場の強度を検出して、検出結果を第1磁場生成部130に与える。第2磁気検出部110は、第1磁気分解能で、入力磁場の検出軸(感磁軸ともいう)の成分を検出する。第1磁気分解能は、地磁気をはじめとした環境磁場と比較して充分低い値である必要があり、例えば、約0.1〜10μT(一例としては約1μT)の範囲にあってよい。
第1磁場生成部130は、第2磁気検出部140からの検出結果に応じて第1キャンセル磁場を生成する。例えば、第1磁場生成部130は、第2磁気検出部110が検出した入力磁場に応じた大きさの電流をコイルに流すことにより、第1キャンセル磁場を生成する。ここで、第1キャンセル磁場は、入力磁場の大部分を減殺することにより、合成磁場を生じさせる。第1キャンセル磁場が減殺する成分は、入力磁場の環境磁場成分に対応する。
第1磁気検出部150は、合成磁場の磁場強度を検出して出力する。第1磁気検出部150は、第1磁気分解能よりも高い第2磁気分解能で、第2磁気検出部110と同じ検出軸における合成磁場の強度を検出する。合成磁場は、入力磁場の信号磁場成分に対応する。一例として、第2磁気分解能は、第1磁気分解能よりも105倍以上高くてよく、例えば、1〜数pTの範囲にあってよい。
入力磁場は、大きな割合を占める地磁気等の環境磁場、及び、臓器等から発せられた被測定信号となる微弱な信号磁場を含む。本実施形態によれば、第2磁気検出部110が入力磁場を低分解能で測定した結果に基づき、第1磁場生成部130が入力磁場中の環境磁場を第1キャンセル磁場により減殺する。これにより、第1磁気検出部150は、ダイナミックレンジの大部分を信号磁場の検出に用いることができる。従って、磁気検出装置10は、高ダイナミックレンジの信号処理回路を用いなくとも、被測定信号を高精度に計測することができる。
図2は、本実施形態に係る被測定信号の一例である心磁信号の概略波形を示す。図2は、横軸が時間を示し、縦軸が検出される磁場の強度の例を示す。図2は、信号磁場をB_sigとして示す。図2に示すB_sigは、心磁磁場等の微弱な信号磁場であってよい。心磁磁場は、心臓において、電流の発生とみなすことができる電気的な分極に起因して発生する磁気的な信号である。
なお、心臓の活動を電気的に測定する心電図が知られている。心電図は、測定対象である心臓の近傍に取り付けた電極から電位信号を取得するものであり、電気伝導度の不均一性等による影響を受けやすい。これに対して、心磁信号は、磁気的な信号を直接検出するので、心電図と比較してより詳細な診断情報が取得できるものとして知られている。このような心磁信号は、「R波」と呼ばれる10pT程度のピーク信号レベルを有する波形となる。本実施形態の磁気検出装置10は、このような微弱な波形を検出するものであってよい。
しかしながら、単に磁気検出装置10が心臓に近い位置で磁場を検出しても、心磁信号等の信号磁場B_sigに、環境磁場B_Envが重畳した信号を検出することになる。環境磁場B_Envは、例えば、比較的周波数が低い地磁気成分B_Env_LFと、比較的周波数が高いランダム成分B_Env_HFとを含む。
図3は、本実施形態に係る被測定信号の一例である心磁信号のスペクトラムの概略を示す。図3は、横軸が周波数を示し、縦軸が検出される磁場の強度の例を示す。図3は、心磁信号をB_sigとして示し、環境磁場をB_Envとして示す。環境磁場B_Envは、心磁信号B_sigよりも低い周波数の地磁気成分B_Env_LFと、地磁気成分B_Env_LFよりも比較的周波数が高いランダム成分B_Env_HFとを含む。したがって、単に磁気検出装置10が心臓近辺の磁場を検出すると、心磁信号等の信号磁場B_sigに、地磁気成分B_Env_LFおよびランダム成分B_Env_HFが重畳した信号を検出することになる。
環境磁場B_Envは、信号磁場B_sigのピーク信号レベルと比較して非常に大きい信号レベルなので、このままでは、磁気検出装置10における信号ダイナミックレンジが大きくなり、その扱いが困難である。そこで、磁気検出装置10の第1磁場生成部130が環境磁場B_Envを打ち消すことにより、第1磁気検出部150が信号磁場B_sigを検出する際の信号ダイナミックレンジを低減し、環境磁場に重畳した信号磁場の変化をより詳細に捉えることが出来る。
図4は、本実施形態に係る磁気検出装置10の構成の一例を示す。例えば、図1に示す磁気検出装置10は、図4に示す構成により具体化されてよい。本実施形態において、磁気検出装置10は、第2磁気検出部110、電流DA変換器128、第1磁場生成部130、第1磁気検出部150、及び、ハイパスフィルタ160を備える。以下、図1と重複する構成については説明を省略する場合がある。
第2磁気検出部110は、環境磁場B_Env及び信号磁場B_sigを含む入力磁場B_Entを検出し、その結果を電流DA変換器128に供給する。第2磁気検出部110は、磁場成分を検出ための検出軸を有する。例えば、図4において、第2磁気検出部110は、x軸と平行な検出軸を有する。
第2磁気検出部110は、磁気検出結果のデジタル値を出力するデジタル磁気センサ素子であってよい。例えば、第2磁気検出部110は、予め定められた回数、又は、周期的に磁気検出結果を出力してよい。又は、第2磁気検出部110は、ユーザの操作に応じて磁気検出結果を出力してよい。
電流DA変換器128は、デジタル値をアナログ電流に変換するDAコンバータである。電流DA変換器128は、デジタル磁気センサ素子等の第2磁気検出部110から、入力磁場B_Entを第1磁気分解能で検出した結果をデジタル信号で受け取り、当該デジタル信号に対応する電流値の電流I_Compを第1磁場生成部130に付与する。
第1磁場生成部130は、第2磁気検出部110が検出した入力磁場B_Entの検出軸の成分に対応する電流が流れる磁気発生回路を含む。第1磁場生成部130は、当該磁気発生回路に電流I_Compが流れることによって、環境磁場B_Envを減殺する第1キャンセル磁場B_Compを発生させる。
すなわち、第1磁場生成部130は、第1磁気分解能で入力磁場B_Entの検出軸の成分を検出した検出値に基づいて、入力磁場B_Entの検出軸の成分を減殺する第1キャンセル磁場B_Compを生成する。第1キャンセル磁場B_Compは、環境磁場B_Envのうち地磁気等の低周波成分B_Env_LFを特に減殺する。
第1磁場生成部130の磁気発生回路は、コイルにより実現されてもよい。例えば、第1磁場生成部130のコイルは、その中心軸が磁気抵抗素子152を通過するように配置されてよい。第1キャンセル磁場B_Compを生成する電流I_Compは、次式のようにあらわされる。
…数式(1)
なお、β_Env1は、第1磁場生成部130のコイル係数であってよい。
なお、β_Env1は、第1磁場生成部130のコイル係数であってよい。
第1磁気検出部150は、入力磁場B_Entが第1キャンセル磁場B_Compで減殺された合成磁場を第2磁気分解能で検出し、検出結果をハイパスフィルタ160に出力する。第1磁気検出部150は、クローズドループ方式の磁気センサを構成してよい。例えば、第1磁気検出部150は、磁気抵抗素子152、増幅回路153、第2磁場生成部154、及び、信号出力部156を有する。
磁気抵抗素子152は、巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto−Resistance)素子、または、トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunnel Magneto−Resistance)素子等の磁気抵抗効果素子であってよい。磁気抵抗素子152は、第2磁気検出部110と同じ検出軸(例えば、図4におけるx軸)を有する。
磁気抵抗素子152の検出軸の正の方向を+X方向とした場合に、+X方向の磁場が入力すると抵抗値が増加し、−X方向の磁場が入力すると抵抗値が減少するように形成されてよい。即ち、磁気抵抗素子152の抵抗値の変化を観測することにより、当該磁気抵抗素子152に入力する磁場Bの大きさを検出することができる。
例えば、磁気抵抗素子152の磁気感度をSとすると、磁気抵抗素子152に入力する磁場B_Inに対する検出結果は、S×B_Inと算出できる。なお、磁気抵抗素子152は、一例として、電源等が接続され、抵抗値の変化に応じた電圧変化を、磁場の検出結果として増幅回路153に出力してよい。なお、図4では、磁気抵抗素子152は、棒状に描かれているが、基板等の平面に形成された形態であってよい。
増幅回路153は、磁気抵抗素子152の磁場の検出結果に応じた電流を増幅して、フィードバック電流I_FBとして出力する。増幅回路153は、例えば、トランスコンダクタンスアンプを含み、磁気抵抗素子152の出力電圧に応じたフィードバック電流I_FBを出力する。例えば、増幅回路153の電圧・電流変換係数をGとすると、フィードバック電流I_FBは、G×S×B_Inと算出できる。
第2磁場生成部154は、フィードバック電流I_FBに応じた第2キャンセル磁場B_FBを発生させる。第2磁場生成部154は、フィードバック電流I_FBが流れる磁気発生回路を含んでよい。磁気発生回路は、コイルにより実現されてもよい。例えば、第2磁場生成部154の当該コイルは、その中心軸が磁気抵抗素子152を通過するように配置されてよい。
例えば、第2磁場生成部154のコイル係数をβ_Env2とすると、第2キャンセル磁場B_FBは、β_Env2×I_FBと算出できる。ここで、第2キャンセル磁場B_FBは、磁場B_Inを打ち消す向きに発生するので、磁気抵抗素子152に入力する磁場は、B_In−B_FBに低減されることになる。したがって、フィードバック電流I_FBは、次式のように示される。
…数式(2)
上記式をフィードバック電流I_FBについて解き、磁気抵抗素子152の磁気感度Sおよび増幅回路153の電圧・電流変換係数Gが十分に大きいとして、次式が算出される。
…数式(3)
ここで、本実施形態において、第1磁気検出部150には、磁場B_Inとして、入力磁場B_Entそのものではなく、入力磁場B_Ent及び第1キャンセル磁場B_Compを重畳した合成磁場(B_Ent−B_Comp)が与えられる。
第2磁場生成部154は、磁気抵抗素子152の出力に応じて流れるフィードバック電流I_FBに基づいて、合成磁場(B_Ent−B_Comp)の検出軸の成分を減殺する第2キャンセル磁場B_Fbを生成する。ここで、磁気抵抗素子152は、入力磁場B_Ent、第1キャンセル磁場B_Comp、及び、第2キャンセル磁場B_Fbが与えられて、検出軸(図4のx軸)を感磁軸として磁場を検出した結果を出力する。
その結果、第2磁場生成部154には、次式に示すフィードバック電流I_FBが流れる。第2磁場生成部154は、フィードバック電流I_FBを信号出力部156に供給する。
…数式(4)
信号出力部156は、第1磁場生成部130が第2キャンセル磁場B_FBを発生するために流すフィードバック電流I_FBに応じた出力信号V_xMRを出力する。信号出力部156は、例えば、抵抗値Rの抵抗性素子を有し、当該抵抗性素子にフィードバック電流I_FBが流れることによって生じる電圧降下を出力信号V_xMRとして出力する。この場合、出力信号V_xMRは、次式のように算出される。
…数式(5)
信号出力部156は、出力信号V_xMRをハイパスフィルタ160に出力する。これにより、第1磁気検出部150は、フィードバック電流I_FBを介して、合成磁場(B_Ent−B_Comp)の検出軸の成分を第2磁気分解能で検出し、検出結果を外部に出力する。
ハイパスフィルタ160は、第1磁気検出部150からの出力の高周波成分を通過させる。例えば、ハイパスフィルタ160は、出力信号V_xMRの低周波成分をカットし、高周波成分を差分出力部170に供給する。これにより、ハイパスフィルタ160は、環境磁場B_Envのうち直流成分に近い低周波成分B_Env_LF(例えば、地磁気成分)を効果的に除去することができる。本実施形態において、磁気検出装置10は、ハイパスフィルタ160を設けなくてもよい。
以上のように、磁気検出装置10は、外部から入力する入力磁場B_Entのうち大部分を占める環境磁場B_Envを減殺した上で、信号磁場B_Sigを測定する。従って、磁気検出装置10によれば、環境磁場B_Envにダイナミックレンジの大部分を取られずに、信号磁場B_sigの検出にダイナミックレンジの大部分を使用することができる。従って、本実施形態に依れば、特別な装置構成を用いずに従来よりも精度よく微弱な信号磁場B_sigを検出することができる。
なお、一般的に、磁気抵抗素子152は、磁気感度が高く10pT程度の微小な磁場を検出することができる一方で線形性が利用できる磁気範囲(すなわち、入出力特性の直線性が良好な範囲)が狭い。従って、本実施形態の第1磁気検出部150のようにクローズドループ方式を採用することで、入力磁場の絶対値の大きさによらず、磁気抵抗素子152に入力される磁場が0磁場付近となるように磁気抵抗素子152を利用することができる。これにより、本実施形態の磁気検出装置10は、出力信号の直線性を改善することができる。
図5は、本実施形態の第1変形例に係る磁気検出装置10の構成の一例を示す。本変形例では、磁気検出装置10がグラジオメータを構成する形態を示す。本変形例の磁気検出装置10において、図1〜図4等に示される磁気検出装置10と略同一の構成には同一の符号を付け、説明を省略する。本変形例の磁気検出装置10は、第1磁場生成部130及び第1磁気検出部150を複数(図5に示される形態では2個)備え、差分出力部170を更に有する。
本変形例において、2個の第1磁場生成部130は、直列に接続され、電流DA変換器128から電流I_Compが流れる。ここで、電流DA変換器128に対して、上流側を第1磁場生成部130Aとし、下流側を第1磁場生成部130Bとする。第1磁場生成部130A及び第1磁場生成部130Bは、同等のコイル係数を有してよく、これにより、第1磁場生成部130A及び第1磁場生成部130Bは、同等の第1キャンセル磁場B_Compを生成してよい。
本変形例において、2個の第1磁気検出部150はそれぞれ独立に動作して、それぞれが出力信号を出力する。第1磁気検出部150のうち第1磁場生成部130Aからの第1キャンセル磁場を受け取る方を第1磁気検出部150Aとし、第1磁場生成部130Bからの第1キャンセル磁場を受け取る方を第1磁気検出部150Bとする。
第1磁気検出部150Aは、入力磁場B_Ent_Aを第1キャンセル磁場B_Compで減殺した合成磁場(B_Ent_A−B_Comp)を第2磁気分解能で検出する。第1磁気検出部150Aの信号出力部156Aは、検出結果を出力信号V_xMR1として出力する。
第1磁気検出部150Bも、入力磁場B_Ent_Bを第1キャンセル磁場B_Compで減殺した合成磁場(B_Ent_B−B_Comp)を第2磁気分解能で検出する。第1磁気検出部150Bの信号出力部156Bは、検出結果を出力信号V_xMR2として出力する。
第1磁気検出部150A(例えば、磁気抵抗素子152A)及び第1磁気検出部150B(例えば、磁気抵抗素子152B)は、その検出軸(感磁軸)が共通又は平行であり、両者は検出軸上で離れた位置に設けられてよい。また、心磁信号等の信号磁場B_sigを発する心臓等の測定対象は、検出軸上で第1磁気検出部150A(例えば、磁気抵抗素子152A)及び第1磁気検出部150B(例えば、磁気抵抗素子152B)から離れた位置に配置されてよい。一例として、測定対象、第1磁気検出部150A(例えば、磁気抵抗素子152A)、及び第1磁気検出部150B(例えば、磁気抵抗素子152B)は、一の検出軸上又はその近傍に配置されてよい。
これにより、第1磁気検出部150A及び第1磁気検出部150Bは、測定対象から異なる強度の信号磁場B_Sigを受け取る。ここでは、第1磁気検出部150Aが受け取る信号磁場をB_Sig1とし、第1磁気検出部150Bが受け取る信号磁場をB_Sig2とする。一例として、第1磁気検出部150Aは、第1磁気検出部150Bよりも測定対象から遠方に配置されてよく、この場合、通常はB_sig1<B_sig2となる。
第2磁場生成部154A及び第2磁場生成部154Bのコイル定数が同一(例えば、β_Env2)であり、信号出力部156A、Bの負荷抵抗が同一(例えば、R)であるとすると、第1磁気検出部150Aの出力信号V_xMR1、及び、第1磁気検出部150BのV_xMR2は、以下の式で表される。
…数式(6)
複数の第1磁気検出部150は出力信号をそれぞれに接続するハイパスフィルタに出力してよい。例えば、第1磁気検出部150Aは、出力信号V_xMR1をハイパスフィルタAに出力し、第1磁気検出部150Bは、出力信号V_xMR2をハイパスフィルタBに出力する。
差分出力部170は、複数の第1磁気検出部150(例えば、第1磁気検出部150A及び第1磁気検出部150Bの)の出力の差分を出力する。例えば、差分出力部170は、ハイパスフィルタ160A、及び、ハイパスフィルタ160Bを経た出力信号V_xMR1及びV_xMR2を差分した信号(V_xMR2−V_xMR1)を出力する。一例として、差分出力部170は、下記数式で表されるΔVを出力する。
…数式(7)
このように、本実施形態において、差分出力部170は、検出軸上の異なる位置における信号磁場の差分(B_Sig1−B_Sig2)に対応する成分のみを出力する。これにより、磁気検出装置10は、環境磁場B_Env(特に強度の大きい地磁気等の低周波成分B_Env_LF)を含まない検出結果を、ダイナミックレンジの全体を使用して出力することができる。この結果、磁気検出装置10は、信号磁場をより高い精度で検出した結果を出力することができる。
なお、図5に示す形態では、磁気検出装置10は、単一の電流DA変換器128及び単一の第2磁気検出部110を備えるが、これに代えて、複数の電流DA変換器128及び複数の第2磁気検出部110が設けられてもよい。例えば、複数の第1磁気検出部150のそれぞれに対応して、電流DA変換器128及び第2磁気検出部110が設けられてもよい。
図6は、本実施形態に第2変形例に係る磁気検出装置10の構成の一例を示す。本変形例では、磁気検出装置10は、第2磁気検出部110を磁場トラッキング回路により実現する形態を説明する。先行する図面の構成と略同一の構成には同一の符号を付け、説明を省略する。
磁場トラッキング回路は、環境磁場B_Envの低周波成分B_Env_LFを自動的にトラッキングする。例えば、磁気検出装置10の向きが変わる場合、地磁気などの低周波成分B_Env_LFも変化する。このような場合に、本変形例の磁気検出装置10は、環境磁場B_Envの変動に適用できる。
本変形例において、磁気検出装置10は、電流DA変換器128に代え、電圧DA変換器126を備える。本変形例の第2磁気検出部110は、電圧AD変換器142、判断回路144、及び、カウンタ146を有する。
電圧AD変換器142は、第1磁気検出部150の出力信号V_xMRをデジタル値に変換する。ここで、電圧AD変換器142は、出力信号V_xMRを低ビット数(例えば、5〜10ビット)のデジタル出力値に変換して、判断回路144に出力する。このため、電圧AD変換器142は低分解能で出力信号V_xMRをAD変換する。従って、第2磁気検出部110は、出力信号V_xMRに含まれる信号磁場B_sig(例えば、±1pT)に由来する微弱な電圧信号を実質的に検出することなく、地磁気などの大きな環境磁場B_Envの変動(例えば、±1.0μT)のみを検出する。
判断回路144は、電圧AD変換器142から受け取ったデジタル出力値が予め定められた範囲の上限を超えるか否か、及び、デジタル出力値が予め定められた範囲の下限を下回るか否かを判断し、その判断結果をカウンタ146に供給する。
カウンタ146は、判断回路144の判断結果に基づいてカウント値を増減する。例えば、デジタル出力値が予め定められた範囲を超えたことに応じてカウント値を加算し、デジタル出力値が予め定められた範囲を下回ったことに応じてカウント値を減算する。これにより、カウンタ146は、第1磁気検出部150からの出力が予め定められた範囲を超えたことに応じてカウント値を加算し、第1磁気検出部150からの出力が予め定められた範囲を下回ったことに応じてカウント値を減算する。カウンタ146は、カウント値を電圧DA変換器126に出力する。
電圧DA変換器126は、カウンタ146から受け取ったカウント値に対応する電圧値の電圧V_Compを第1磁場生成部130に与える。すなわち、本変形例において、電圧DA変換器126は、デジタル磁気センサではなく磁場トラッキング回路からのデジタル値に基づき、電圧V_Compを供給する。ここで、第1磁場生成部130のコイル抵抗をR_Coilとする場合、第1磁場生成部130には、次式で示される電流I_Compが与えられる。
…数式(8)
図7は、第2変形例における磁気検出方法の処理フローの一例を示す。本変形例において、磁気検出装置10の第2磁気検出部110は、図7に示す処理フローを実行してよい。処理フローはS110〜S140に示す処理を含む。以下では、S110の処理から説明するが、処理はこの順番に開始されなくてもよい。
第2磁気検出部110は、定期的にS110の処理を開始してよい。S110において、判断回路144は、電圧AD変換器142からのデジタル出力値(すなわちV_xMRの低ビットデジタル出力値)が閾値1以上かつ閾値2以下で定義される予め定められた範囲に含まれるか判断する。例えば、閾値1<0<閾値2であってよい。一例として、更に閾値1=−閾値2であってよい。
また、閾値1はR×(R/β_Env2)×(許容下限磁場)で表されてよく、閾値2はR×(R/β_Env2)×(許容上限磁場)で表されてよい。ここで、許容下限磁場及び許容上限磁場は、許容される出力信号V_xMRの範囲に対応する。
出力信号V_xMRの低ビットデジタル出力値が、許容下限磁場及び許容上限磁場に対応する範囲から外れる場合には、第2磁気検出部110が第1磁場生成部130に与える電流I_Compを増減させて、許容下限磁場及び許容上限磁場の範囲に収まるように調整する。一例として、許容下限磁場は−0.5μTであってよく、許容上限磁場は0.5μTであってよい。
S110において、デジタル出力値が範囲に含まれると判断する場合、判断回路144は処理を終了し、次にS110を開始するタイミングまで待機する。当該範囲に含まれないと判断する場合、判断回路144はS120の処理に進む。
S120において、判断回路144は、デジタル出力値が閾値1未満であるか否かを判断する。デジタル出力値が閾値1未満であると判断する場合、判断回路144はS130の処理に進み、そうでない場合、判断回路144はS140の処理に進む。
S130において、カウンタ146は、カウント値を減少する。これにより、電圧DA変換器126は、第1磁場生成部130に与える電流I_Compを減少させる。その後、処理はS110に進む。
S140において、カウンタ146は、カウント値を増加する。これにより、電圧DA変換器126は、第1磁場生成部130に与える電流I_Compを増加させる。その後、処理はS110に進む。
図6及び図7で説明したように、本変形例の第2磁気検出部110は、出力信号V_xMRの低ビットデジタル出力値が一定の範囲に収まるように電流I_Compを自動制御し、これにより第1キャンセル磁場B_Compが入力磁場B_Entの大部分(すなわち、環境磁場B_Envに対応)を減殺するようにする。
本変形例においては、電流DA変換器128の代わりに電圧DA変換器126を用いることにより、第1磁場生成部130のコイルが比較的大きな温度係数を持つ場合にも、必要な電流I_Compが第1磁場生成部130に与えられるように電圧V_Compが自動制御される。従って、図7に示すフローを、温度変化の影響を受けず安定して実行することができる。なお、電圧DA変換器126に代えて、電流DA変換器128を用いる形態を排除するものではなく、そのような形態を採用してもよい。
また、図6〜7に示した第2変形例の第2磁気検出部110及び電圧DA変換器126を図5に示した第1変形例に適用してもよい。この場合、第1変形例において、電流DA変換器128に代えて電圧DA変換器126を用い、ハイパスフィルタ160Aの出力及びハイパスフィルタ160Aの出力の少なくとも一方(例えば、ハイパスフィルタ160Aの出力)を第2磁気検出部110の電圧AD変換器142に入力してよい。また、別の変形例において、磁気検出装置10は、デジタル磁気センサ素子等を利用する第1変形例の第2磁気検出部110と、磁気トラッキング回路を利用する第2変形例の第2磁気検出部110を併用してもよい。
図4〜図7において説明した実施形態及び変形例において、磁気検出装置10は、更に他の要素を備えてよい。例えば、磁気検出装置10は、最後段のハイパスフィルタ160又は差分出力部170の後段にAD変換器を有してよく、これにより出力信号をデジタル化したデジタル信号を出力してよい。
また更に、磁気検出装置10は、更に後段にデジタル信号処理回路を有してよく、デジタル信号に対して信号処理を行ってよい。例えば、デジタル信号処理回路は、デジタル信号のうちの着目する周波数成分(例えば、心磁信号であれば〜1Hz)のみを抽出する処理を行ってよい。一例として、デジタル信号処理回路は、信号積算を行うことで、高周波で白色雑音に近いランダム成分B_Env_HFの成分を低減することができる。また、デジタル信号処理回路は、カルマンフィルタ等の信号処理技術を利用して、デジタル信号のSNRを向上してもよい。
以上のように、本実施形態によれば、磁気抵抗素子を用いて微弱な磁場を検出するので、SQUIDセンサ等のように装置が大規模になることなく、簡易な構成で磁気測定装置を実現できる。
図1〜図7等に例示した実施形態等に示される磁気検出装置10は、微弱な磁気検出を行うさまざまな用途に用いることができる。例えば、磁気検出装置10を複数備え、異なる位置における磁気検出結果を生成する磁気測定装置が挙げられる。一例として、このような磁気測定装置は、複数の磁気検出装置10を配列状に配置し、複数の磁気検出装置10の各々の磁気検出結果に対応する画素からなる磁気画像を生成してよい。
例えば、磁気測定装置は心磁計であってよく、この場合、磁気画像は心磁図であってよい。また、磁気測定装置は、異なる複数の軸(例えば、直交するX軸、Y軸、Z軸)に対応する検出軸の磁気を検出する磁気検出装置10を配置し、これにより、3次元の微小磁気信号を検出する3軸センサしても機能してもよい。一例として、磁気測定装置は、複数の磁気検出装置10を、心臓近辺の体表面において格子状または同心円状に、3つずつ配置してよく、3次元心磁計として機能してよい。
磁気測定装置は、微弱な磁気信号を発生する動物の心臓以外の臓器を測定してもよい。例えば、磁気測定装置は脳磁計であってよく、この場合、磁気画像は脳磁図であってよい。また、例えば、磁気測定装置は、構造物(例えば、コンクリート内部)の傷、欠陥、変質、変形等の構造的/化学的特徴を探索する磁気探傷装置として用いられてよい。また、例えば、磁気測定装置は、生体試料および環境試料等の微量物質を測定する磁気イムノアッセイを行ってもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
10 磁気検出装置、110 第2磁気検出部、126 電圧DA変換器、128 電流DA変換器、130 第1磁場生成部、142 電圧AD変換器、144 判断回路、146 カウンタ、150 第1磁気検出部、152 磁気抵抗素子、153 増幅回路、154 第2磁場生成部、156 信号出力部、160 ハイパスフィルタ、170 差分出力部
Claims (15)
- 第1磁気分解能で入力磁場の検出軸の成分を検出した検出値に基づいて、前記入力磁場の検出軸の成分を減殺する第1キャンセル磁場を生成する第1磁場生成部と、
第2磁場生成部、及び、磁気抵抗素子を有する第1磁気検出部と、
を備え、
前記第2磁場生成部は、前記磁気抵抗素子の出力に応じて流れるフィードバック電流に基づいて、前記入力磁場及び前記第1キャンセル磁場を重畳した合成磁場の前記検出軸の成分を減殺する第2キャンセル磁場を生成し、
前記磁気抵抗素子は、前記入力磁場、前記第1キャンセル磁場、及び、前記第2キャンセル磁場が与えられて、前記検出軸を感磁軸として磁場を検出した結果を出力し、
前記第1磁気検出部は、前記フィードバック電流を測定することで、前記合成磁場の前記検出軸の成分を、前記第1磁気分解能よりも高い第2磁気分解能で検出する、
磁気検出装置。 - 前記第1磁気検出部を複数備え、
複数の前記第1磁気検出部の出力の差分を出力する差分出力部を更に備える請求項1に記載の磁気検出装置。 - 前記磁気抵抗素子は、巨大磁気抵抗効果(GMR)素子、又は、トンネル磁気抵抗効果(TMR)素子である、
請求項1又は2に記載の磁気検出装置。 - 前記第1磁気分解能で前記入力磁場の前記検出軸の成分を検出する第2磁気検出部を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気検出装置。 - 前記第2磁気検出部は、前記入力磁場の検出結果のデジタル値を出力するデジタル磁気センサ素子を含む、
請求項4に記載の磁気検出装置。 - 前記第2磁気検出部は、
前記第1磁気検出部からの出力が予め定められた範囲を超えたことに応じて値を加算し、
前記第1磁気検出部からの出力が前記予め定められた範囲を下回ったことに応じて値を減算するカウンタを有し、
前記第1磁場生成部は、前記カウンタの値に応じた大きさで前記第1キャンセル磁場を生成する、
請求項4に記載の磁気検出装置。 - 前記第1磁場生成部は、前記第2磁気検出部が検出した入力磁場の前記検出軸の成分に対応する電流が流れる磁気発生回路を含む、
請求項4から6のいずれか1項に記載の磁気検出装置。 - 前記第2磁場生成部は、前記フィードバック電流が流れる磁気発生回路を含む、
請求項7に記載の磁気検出装置。 - 前記第2磁気分解能は前記第1磁気分解能よりも105倍以上高い、
請求項1から8のいずれか1項に記載の磁気検出装置。 - 前記第1磁気検出部からの出力の高周波成分を通過させるハイパスフィルタを更に備える請求項1から9のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
- 異なる位置に配置された請求項1か10のいずれか1項に記載の磁気検出装置を複数備え、異なる位置における磁気検出結果を生成する磁気測定装置。
- 複数の前記磁気検出装置は配列状に配置され、
複数の前記磁気検出装置の各々の磁気検出結果に対応する画素からなる磁気画像を生成する、
請求項11に記載の磁気測定装置。 - 前記磁気画像は心磁図であり、心磁計として用いられる、
請求項12に記載の磁気測定装置。 - 前記磁気画像は脳磁図であり、脳磁計として用いられる、
請求項12に記載の磁気測定装置。 - 構造物の磁気探傷装置として用いられる、
請求項11又は12に記載の磁気測定装置。
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