JP3424664B2 - 磁場計測装置 - Google Patents

磁場計測装置

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JP3424664B2
JP3424664B2 JP2000247916A JP2000247916A JP3424664B2 JP 3424664 B2 JP3424664 B2 JP 3424664B2 JP 2000247916 A JP2000247916 A JP 2000247916A JP 2000247916 A JP2000247916 A JP 2000247916A JP 3424664 B2 JP3424664 B2 JP 3424664B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,心臓磁場,脳磁場
等の生体磁場,地磁気,非破壊検査等の微弱磁場の検出
を行なう超伝導デバイスであるSQUID(Super
conducting Quantum Interf
erence Device:超伝導量子干渉素子)磁
束計を用いた磁場計測装置に関し,特に妨害磁場のキャ
ンセルを行なう磁場計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】SQUIDを用いた磁場計測装置による
微弱磁場の計測では,40dB〜50dB(デシベル)
以上の磁場の減衰率を持つ磁気シールドルームの内部で
微弱な脳磁場,心臓磁場等の計測が実行される。生体磁
場を検出する検出コイルとして,1ターンの検出コイル
と反対方向に巻かれたコイルとの差分を検出する1次微
分型検出コイルが多用される。1次微分型検出コイル
は,遠方の磁場発生源からの妨害磁場をキャンセルし,
心臓,脳等の近傍から発生する磁場については,大きな
キャンセルを伴わずに信号を検出できるという特徴があ
り,簡易に妨害磁場の影響を小さくできる。通常,1次
微分型検出コイルは一様磁場に対して約40dB〜50
dBの減衰を持つ。
【0003】以上のように,磁気シールドルームと1次
微分型検出コイルを組み合わせることにより,妨害磁場
を約80dB〜100dB以上キャンセルできる。しか
し,電車や車といった大きな磁場を発生させる物体が磁
気シールドルームから50m〜100m位の近くを通過
する時,生体から発生する磁場より何10倍も大きい妨
害磁場が観測される。以上のような大きな強度を持つ妨
害磁場をキャンセルするため,様々な方法が試みられて
いる。
【0004】例えば,磁気シールドルームの外部に配置
したフラックスゲートから検出される磁場の信号を使っ
て,磁気シールドルームの外部に巻き付けられたキャン
セルコイルにフィードバック電流を流しフラックスゲー
トの出力が零になるように調整する方法が提案されてい
る(従来技術1:Meas.Sci.Technol.
Vol.2,pp.596−601(1991))。
【0005】その他,SQUIDセンサを用いたリファ
レンスコイルの信号を用いてソフト的にキャンセルする
手法(従来技術2:Clin.Phys.Physio
l.Meas.,Vol.12,Suppl.B,p
p.81−86(1991))が考案されているが,リ
ファレンスコイルの詳細には触れられていない。
【0006】特開平11−47108号公報(従来技術
3)に,コイルバランスの崩れに起因した環境磁場雑音
除去の誤差を小さくする生体磁場計測装置が記載されて
いる。特開平11−47108号公報には以下の記載が
ある。外来磁場を人工的に発生させる複数のコイルを,
例えば,デュアの外周表面上の既知の位置に取り付け
る。複数のコイルに駆動電流を流して駆動する。複数の
コイルから発生した外来磁場に対する検出コイルの検出
値と駆動電流値とを用いて,検出コイルの感度,コイル
バランスを高精度に計測する。検出コイルの検出値より
求められた生体磁場計測値からコイルバランスの崩れの
影響を高精度に補正し,その結果,コイルバランスの崩
れに起因した環境磁場雑音除去の誤差を小さくして,生
体磁場の計測精度を向上させている。真空断熱容器内に
は,被検体に近い側に,生体磁場を主に計測する複数の
生体磁場計測用の検出コイルが配置され,また,被検体
に対して検出コイルよりも離れた位置に,環境磁場を主
に計測する複数のリファレンスコイルが配置されてい
る。
【0007】特開平11−83965号公報(従来技術
4)に,対象体からの微弱磁場を,異なる周波数帯域の
環境磁場の影響を受けることなく正確かつ高精度で計測
できる環境磁場キャンセリングシステム及び磁気計測装
置が記載されている。特開平11−83965号公報に
は以下の記載がある。ダイナミックレンジ及びスルーレ
ートの異なる複数の環境磁場計測用SQUID磁束計に
より磁場強度及び周波数帯域の異なる環境磁場を検出
し,環境磁場に応じた電気信号を計測する。計測した各
電気信号を加算処理して得られた加算電気信号に基づい
て一対のアクティブシールドコイルを介して逆磁場を発
生させるか,あるいは磁気計測用SQUID磁束計によ
り計測された磁気信号から加算電気信号を差し引くこと
により,磁場強度や周波数帯域の異なる環境磁場をキャ
ンセルできる。
【0008】特開平9−84777号公報(従来技術
5)に,複数の電流ダイポールが深さ方向に重なって位
置する場合でも,深い位置の電流ダイポールをも精度良
く推定できる生体磁場計測装置が記載されている。特開
平9−84777号公報には,以下の記載がある。生体
の磁場源からの磁束を探知するピックアップコイルを,
微分次数及びベースラインの内の少なくとも一方が相互
に異なる複数種のピックアップコイルを組みあわせて配
置したピックアップコイルアレイを使用する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来技術1では,磁気
シールドルームの外部に配置されたキャンセルコイルに
フィードバック電流を流すことにより,磁気シールドル
ームの外部に配置したフラックスゲートの出力が零にな
るように調整するため,複数の1次微分型検出コイル等
の差動型検出コイルから構成されるSQUID磁束計を
有するマルチチャンネルの磁場計測装置では,各チャン
ネルでの差動型検出コイルのキャンセル率のばらつきの
補正は困難であるという問題がある。
【0010】従来技術2では,リファレンスコイルの具
体的な構成については何ら記載はなく,磁気シールドル
ームを使用しない場合のデータが示されているに過ぎな
い。
【0011】本発明の目的は,妨害磁場を精度よくキャ
ンセル可能な磁場計測装置を提供することにあり,マル
チチャンネルの磁場計測装置の各チャンネルでの差動型
検出コイルのキャンセル率,ベースラインのばらつき考
慮して妨害磁場をキャンセルすると共に,磁気シールド
ルームの周波数特性によって生ずる磁場波形の歪みを除
去できる磁場計測装置を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】以下の明細書の記載で使
用する用語について説明する。
【0013】「差動型検出コイル」は,1次微分型検出
コイル,又は2次微分型検出コイルを意味する。
【0014】(1)差動型検出コイルが,1次微分型検
出コイルである場合。
【0015】(1.1)「検出用磁束計」(第1のSQ
UID磁束計)は,1次微分型SQUID磁束計であ
り,妨害磁場のz方向の磁場成分,及び生体から発生す
る生体磁場のz方向の磁場成分を検出する磁束計を意味
する。
【0016】(1.2)「補償用磁束計」(第2のSQ
UID磁束計)は,1次微分型SQUID磁束計であ
り,妨害磁場のz方向の磁場成分を検出する磁束計を意
味する。
【0017】(1.3)「検出用磁束計の入力コイル」
は,検出用磁束計を構成する1次微分型検出コイルを構
成するコイルのうち,検査対象に最も近い位置に配置さ
れる第1のコイルを意味する。
【0018】(1.4)「補償用磁束計の入力コイル」
は,補償用磁束計を構成する1次微分型検出コイルを構
成するコイルのうち,検査対象に最も近い位置に配置さ
れる第1のコイルを意味する。
【0019】(1.5)「検出用磁束計の補償コイル」
は,検出用磁束計を構成する1次微分型検出コイルを構
成するコイルのうち,第1のコイルよりも検査対象から
遠い位置に配置され,第2のコイルの面に平行な面をも
つ第2のコイルを意味する。
【0020】(1.6)「補償用磁束計の補償コイル」
は,補償用磁束計を構成する1次微分型検出コイルを構
成するコイルのうち,第1のコイルよりも検査対象から
遠い位置に配置され,第2のコイルの面に平行な面をも
つ第2のコイルを意味する。
【0021】(1.7)「検出用磁束計の出力」は,検
出用磁束計を構成する1次微分型検出コイルの出力を意
味する。
【0022】(1.8)「補償用磁束計の出力」は,補
償用磁束計を構成する1次微分型検出コイルの出力を意
味する。
【0023】(1.9)「検出用磁束計のベースライ
ン」は,検出用磁束計を構成する1次微分型検出コイル
のベースラインを意味し,第1のコイルの面と第2のコ
イルの面との間の距離である。
【0024】(1.10)「補償用磁束計のベースライ
ン」は,補償用磁束計を構成する1次微分型検出コイル
のベースラインを意味し,第1のコイルの面と第2のコ
イルの面との間の距離である。
【0025】(2)差動型検出コイルが,2次微分型検
出コイルである場合。
【0026】(2.1)「検出用磁束計」(第1のSQ
UID磁束計)は,2次微分型SQUID磁束計であ
り,妨害磁場のz方向の磁場成分,及び生体から発生す
る生体磁場のz方向の磁場成分を検出する磁束計を意味
する。
【0027】(2.2)「補償用磁束計」(第2のSQ
UID磁束計)は,2次微分型SQUID磁束計であ
り,妨害磁場のz方向の磁場成分を検出する磁束計を意
味する。
【0028】(2.3)「検出用磁束計の入力コイル」
は,検出用磁束計を構成する2次微分型検出コイルを構
成するコイルのうち,検査対象に最も近い位置に配置さ
れる第1のコイルを意味する。
【0029】(2.4)「補償用磁束計の入力コイル」
は,補償用磁束計を構成する2次微分型検出コイルを構
成するコイルのうち,検査対象に最も近い位置に配置さ
れる第1のコイルを意味する。
【0030】(2.5)「検出用磁束計の補償コイル」
は,検出用磁束計を構成する2次微分型検出コイルを構
成するコイルのうち,第1のコイルよりも検査対象から
遠い位置に順次配置され,第2のコイルの面に平行な面
をもつ第2,第3,第4のコイルを意味する。本発明で
は,第2のコイルの面積は,第3のコイルのコイルの面
積に等しい構成とする。
【0031】(2.6)「補償用磁束計の補償コイル」
は,補償用磁束計を構成する2次微分型検出コイルを構
成するコイルのうち,第1のコイルよりも検査対象から
遠い位置に順次配置され,第2のコイルの面に平行な面
をもつ第2,第3,第4のコイルを意味する。本発明で
は,第2のコイルの面積は,第3のコイルのコイルの面
積に等しい構成とする。
【0032】(2.7)「検出用磁束計の出力」は,検
出用磁束計を構成する2次微分型検出コイルの出力を意
味する。
【0033】(2.8)「補償用磁束計の出力」は,補
償用磁束計を構成する2次微分型検出コイルの出力を意
味する。
【0034】(2.9)「検出用磁束計のベースライ
ン」は,検出用磁束計を構成する2次微分型検出コイル
のベースラインを意味し,第1のコイルの面と第2のコ
イルの面との間の距離,第3のコイルの面と第4のコイ
ルの面との間の距離である。本発明では,第1のコイル
の面と第2のコイルの面との間の距離と,第3のコイル
の面と第4のコイルの面との間の距離とは等しい構成と
する。
【0035】(2.10)「補償用磁束計のベースライ
ン」は,補償用磁束計を構成する2次微分型検出コイル
のベースラインを意味し,第1のコイルの面と第2のコ
イルの面との間の距離,第3のコイルの面と第4のコイ
ルの面との間の距離である。本発明では,第1のコイル
の面と第2のコイルの面との間の距離と,第3のコイル
の面と「第4のコイル」の面との間の距離とは等しい構
成とする。
【0036】本発明の磁場計測装置の構成では,差動型
検出コイル(1次微分型検出コイル,又は2次微分型検
出コイル)から構成され,妨害磁場,生体から発生する
磁場を検出する複数のSQUID磁束計と,差動型検出
コイル(1次微分型検出コイル,又は2次微分型検出コ
イル)から構成され,妨害磁場を検出する1又は複数の
SQUID磁束計(第2のSQUID磁束計)とがクラ
イオスタットの内部に配置され,クライオスタットの内
部に液体ヘリウム,液体窒素等の極低温冷媒が貯蔵され
るか,又は冷凍機が配置される。クライオスタットはガ
ントリーに保持される。
【0037】第2のSQUID磁束計の差動型検出コイ
ルのベースラインを,第1のSQUID磁束計の差動型
検出コイルのベースラインより短い構成として,第2の
SQUID磁束計により,心臓から発する磁場が検出さ
れない構成とする。
【0038】第2のSQUID磁束計により検出された
妨害磁場の信号と,第1のSQUID磁束計により検出
された,生体から発する磁場と妨害磁場とが混合した混
合磁場の信号とを使用して,最小自乗法を適用して最適
なフィッティングパラメータを求め,検出された混合磁
場から妨害磁場をキャンセル(除去)する(第1の妨害
磁場のキャンセル方法)。
【0039】上記の第1の妨害磁場のキャンセル方法に
よりキャンセルできず残留する妨害磁場,即ち,磁気シ
ールドルームの周波数特性が原因となり生じている妨害
磁場を,(数1)で示される磁場の時間変化を表わす理
論波形により近似して,振幅A,時定数Tを最小自乗法
により求め,妨害磁場の除去を行なう構成とする。
【0040】
【数1】 B(t)=−A・t2・exp(−t/T) …(数1) なお,従来技術1〜従来技術5には,本発明の特徴であ
る,妨害磁場を検出する第2のSQUID磁束計の差動
型検出コイルのベースラインを,生体磁場を検出する第
1のSQUID磁束計の差動型検出コイルのベースライ
ンより短くする構成,異なるベースラインをもつ差動型
検出コイルを具備する第2のSQUID磁束計を複数使
用する構成,及び,磁気シールドルームの周波数特性に
起因して生じている妨害磁場をキャンセルする構成は,
開示されていない。
【0041】本発明の磁場計測装置の第1の構成は,検
査対象から発生する法線方向の磁場を検出する複数の第
1のSQUID磁束計と,法線方向の妨害磁場を検出す
る第2のSQUID磁束計と,第1及び第2のSQUI
D磁束計を冷却する低温容器と,第1及び第2のSQU
ID磁束計を駆動する駆動回路と,第1及び第2のSQ
UID磁束計により検出される信号を収集して信号処理
を行なう計算機と,信号処理の結果を表示する表示手段
を具備し,第1及び第2のSQUID磁束計は補償コイ
ルをもつ差動型検出コイル(1次微分型検出コイル,又
は2次微分型検出コイル)を有し,第2のSQUID磁
束計の差動型検出コイルのベースラインの長さが,第1
のSQUID磁束計の差動型検出コイルのベースライン
の長さよりも短いことを特徴とする。
【0042】本発明の第1の構成に於いて,(1)磁気
シールドルームの内部で,検査対象から発生する法線方
向の磁場が検出され,第2のSQUID磁束計を1又は
複数有し,計算機は,第2のSQUID磁束計により検
出された妨害磁場の信号と,第1のSQUID磁束計に
より検出された,生体から発する磁場と妨害磁場とが混
合した法線方向の混合磁場の信号とを使用して,最小自
乗法を適用して,混合磁場から妨害磁場をキャンセルす
る第1の信号処理と,磁気シールドルームの周波数特性
に起因して生じている妨害磁場の発生が始まる初期時刻
の近傍で,周波数特性に起因して生じている妨害磁場の
波形を表わす波形B(t)を,振幅をA,時定数をT,
時間変数をtとして,B(t)=−A・t2・exp
(−t/T)により近似して,第1の信号処理により得
られた磁場波形を使用して,振幅A,及び時定数Tを最
小自乗法により求め,最小自乗法により決定されたB
(t)を用いて,第1の信号処理により得られた磁場波
形から,周波数特性に起因して生じている妨害磁場をキ
ャンセルする第2の信号処理を実行すること,更に,
(2)計算機は初期時刻を推定し,推定された初期時刻
が,第1,及び第2の信号処理により妨害磁場がキャン
セルされた磁場波形の時間軸に表示されること,(3)
第2のSQUID磁束計の差動型検出コイルの入力コイ
ルの面積が,第1のSQUID磁束計の差動型検出コイ
ルの入力コイルの面積よりも大であること等にも特徴が
ある。
【0043】本発明の磁場計測装置の第2の構成は,磁
気シールドルームの内部で,検査対象から発生する法線
方向の磁場を検出する複数の第1のSQUID磁束計
と,法線方向の妨害磁場を検出する第2のSQUID磁
束計と,第1,及び第2のSQUID磁束計を冷却する
低温容器と,第1,及び第2のSQUID磁束計を駆動
する駆動回路と,第1,及び第2のSQUID磁束計に
より検出される信号を収集して信号処理を行なう計算機
と,信号処理の結果を表示する表示手段を具備し,第
1,及び第2のSQUID磁束計は補償コイルをもつ差
動型検出コイル(1次微分型検出コイル,2次微分型検
出コイル)を有し,第2のSQUID磁束計の差動型検
出コイルのベースラインの長さが,第1のSQUID磁
束計の差動型検出コイルのベースラインの長さよりも短
かく,計算機は,複数の第1のSQUID磁束計により
得られた法線方向の磁場波形から,第1のSQUID磁
束計の間でのキャンセル率の違いに起因する妨害磁場を
キャンセルする信号処理(イ)と,信号処理(イ)によ
り得られた磁場波形から,磁気シールドルームの周波数
特性に起因して発生している妨害磁場をキャンセルする
信号処理(ロ)とを行なうことを特徴とする。
【0044】本発明の第2の構成に於いて,(1)計算
機は,周波数特性に起因して生じている妨害磁場の発生
が始まる初期時刻を推定し,推定された初期時刻が,信
号処理(イ),及び(ロ)により妨害磁場がキャンセル
された磁場波形の時間軸に表示されること,(2)第2
のSQUID磁束計の差動型検出コイルの入力コイルの
面積が,第1のSQUID磁束計の差動型検出コイルの
入力コイルの面積よりも大であること等にも特徴があ
る。
【0045】本発明の磁場計測装置の第3の構成は,磁
気シールドルームの内部で,検査対象から発生する法線
方向の磁場を検出する複数の第1のSQUID磁束計
と,法線方向の妨害磁場を検出する第2,及び第3のS
QUID磁束計と,第1,第2,及び第3のSQUID
磁束計を冷却する低温容器と,第1,第2,及び第3の
SQUID磁束計を駆動する駆動回路と,第1,第2,
及び第3のSQUID磁束計により検出される信号を収
集して信号処理を行なう計算機と,信号処理の結果を表
示する表示手段を具備し,第1,第2,及び第3のSQ
UID磁束計は補償コイルをもつ差動型検出コイル(1
次微分型検出コイル,2次微分型検出コイル)を有し,
第2,第3のSQUID磁束計の差動型検出コイルのベ
ースラインの長さが,第1のSQUID磁束計の差動型
検出コイルのベースラインの長さよりも短かく,第2の
SQUID磁束計の差動型検出コイルのベースラインの
長さが,第3のSQUID磁束計の差動型検出コイルの
ベースラインの長さよりも短かく,計算機は,複数の第
1のSQUID磁束計により得られた法線方向の磁場波
形から,第1のSQUID磁束計の間でのキャンセル率
の違いに起因する妨害磁場をキャンセルする信号処理
(a)と,信号処理(a)により得られた磁場波形か
ら,第2のSQUID磁束計の差動型検出コイルのベー
スラインと,第3のSQUID磁束計の差動型検出コイ
ルのベースラインとの違いに起因する妨害磁場をキャン
セルする信号処理(b)と,信号処理(b)により得ら
れた磁場波形から,磁気シールドルームの周波数特性に
起因して発生している妨害磁場をキャンセルする信号処
理(c)とを行なうことを特徴とする。
【0046】本発明の第3の構成に於いて,(1)計算
機は,周波数特性に起因して生じている妨害磁場の発生
が始まる初期時刻を推定し,推定された初期時刻が,信
号処理(a),(b),及び(c)により妨害磁場がキ
ャンセルされた磁場波形の時間軸に表示されることを,
(2)第2,第3のSQUID磁束計の差動型検出コイ
ルの入力コイルの面積が,第1のSQUID磁束計の差
動型検出コイルの入力コイルの面積よりも大であること
等にも特徴がある。
【0047】本発明の磁場計測装置の第4の構成は,高
周波電磁波を遮断する電磁シールドルームの内部で,検
査対象から発生する法線方向の磁場を検出する複数の第
1のSQUID磁束計と,法線方向の妨害磁場を検出す
る複数の第2のSQUID磁束計と,第1及び第2のS
QUID磁束計を冷却する低温容器と,第1及び第2の
SQUID磁束計を駆動する駆動回路と,検査対象を上
下から挾んで配置され妨害磁場をキャンセルする法線方
向の磁場を発生するキャンセルコイルと,キャンセルコ
イルに流す電流を制御する制御手段と,第1及び第2の
SQUID磁束計により検出される信号を収集して信号
処理を行なう計算機とを具備し,第1及び第2のSQU
ID磁束計は補償コイルをもつ差動型検出コイル(1次
微分型検出コイル,2次微分型検出コイル)を有し,第
2のSQUID磁束計の差動型検出コイルのベースライ
ンの長さが,第1のSQUID磁束計の差動型検出コイ
ルのベースラインの長さよりも短く,制御手段は,キャ
ンセルコイルに流す電流を,複数の第2のSQUID磁
束計の1つのSQUID磁束計の出力に基づいて制御し
て,キャンセルコイルは,妨害磁場と逆方向の法線方向
の磁場を発生することを特徴とする。
【0048】本発明の第4の構成に於いて,(1)第2
のSQUID磁束計の差動型検出コイルの入力コイルの
面積が,第1のSQUID磁束計の差動型検出コイルの
入力コイルの面積よりも大であること,(2)複数の第
2のSQUID磁束計の1つのSQUID磁束計を駆動
する駆動回路が独立に設けられ,キャンセルコイルが,
独立に設けられた駆動回路で使用するフィードバックコ
イルを兼ねること,(3)キャンセルコイルが,電磁シ
ールドルームの内部又は外部に配置されること等にも特
徴がある。
【0049】本発明の磁場計測装置の第5の構成は,検
査対象から発生する所定の方向の磁場を検出する複数の
第1のSQUID磁束計と,所定の方向の妨害磁場を検
出する第2のSQUID磁束計と,第1及び第2のSQ
UID磁束計を冷却する低温容器と,第1及び第2のS
QUID磁束計を駆動する駆動回路と,第1及び第2の
SQUID磁束計により検出される信号を収集して信号
処理を行なう計算機と,信号処理の結果を表示する表示
手段を具備し,第1及び第2のSQUID磁束計は差動
型検出コイルを有し,第2のSQUID磁束計の差動型
検出コイルのベースラインの長さが,第1のSQUID
磁束計の差動型検出コイルのベースラインの長さよりも
短いことを特徴とする。
【0050】本発明の第5の構成に於いて,所定の方向
は,x,y,z方向の少なくとも何れか1つの方向であ
る。また,所定の方向は,法線方向又は/及び接線方向
であり,検査対象から発生する磁場の法線方向又は/及
び接線方向の成分が検出され,法線方向又は/及び接線
方向に於ける妨害磁場がキャンセルする信号処理が実行
される。
【0051】図1を用いて,本発明の代表的な構成を要
約すると以下の通りである。生体磁場,妨害磁場を検出
する複数の第1のSQUID磁束計9と,妨害磁場を検
出する複数の第2のSQUID磁束計10と,第1,第
2のSQUID磁束計を駆動する駆動回路6と,第1,
第2のSQUID磁束計による検出信号を収集して信号
処理を行なう計算機8と,第1,第2のSQUID磁束
計は1次微分型検出コイルを有し,第2のSQUID磁
束計の1次微分型検出コイルのベースラインが,第1の
SQUID磁束計の1次微分型検出コイルのベースライ
ンよりも短かく,検出された生体磁場波形から,第1の
SQUID磁束計の1次微分型検出コイルの間でのキャ
ンセル率の違いに起因する妨害磁場と,第2のSQUI
D磁束計の1次微分型検出コイルの間でのベースライン
の違いに起因する妨害磁場と,磁気シールドルームの周
波数特性に起因して発生している妨害磁場とをキャンセ
ルする処理とを行なう。この構成によれば,急峻かつ大
きな強度の妨害磁場をキャンセルでき,妨害磁場を精度
よくキャンセル可能な磁場計測装置を提供できる。
【0052】以上説明した本発明の各構成によれば,生
体から発生する法線方向の磁場を検出するSQUID磁
束計によって検出され,法線方向の妨害磁場が混入した
生体磁場信号から,妨害磁場を検出するSQUID磁束
計によって検出される法線方向の妨害磁場の信号を使用
して,法線方向の生体磁場信号を分離抽出できる。
【0053】更に,磁気シールドルームの周波数特性に
よって生ずる法線方向の磁場波形の歪みを理論計算式を
用いて除去できる。
【0054】また,本発明の各構成によれば,検査対象
の心臓,母体内の胎児の心臓から発する微弱な磁場の計
測を感度良く可能とする生体磁場計測装置を実現でき
る。
【0055】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施例を図に基づ
いて詳細に説明する。まず,差動型検出コイルとして1
次微分型検出コイルを使用する場合について詳細に説明
するが,差動型検出コイルとして2次微分型検出コイル
を使用する場合についても,後で詳細に説明するように
本発明は適用可能である。
【0056】(第1の実施例)図1は,本発明の第1の
実施例の磁場計測装置の構成例を示す図である。磁気シ
ールドルーム2の内部に,検査対象が横たわるベッド4
と,クライオスタット(デュア)1を保持するガントリ
ー3とが配置されている。クライオスタット1の内部の
底部に,4個の検出用磁束計9を2×2のアレー状に配
置する。検出用磁束計9の上部に,2個の補償用磁束計
10が同じ高さに配置される。検出用磁束計9と補償用
磁束計10の構成については,図2により後で詳細に説
明する。
【0057】検出用磁束計9,及び補償用磁束計10
は,コネクタ5を介して駆動回路6により駆動され,検
出用磁束計9,補償用磁束計10の出力は,アンプフィ
ルタユニット7により増幅されフイルタ処理がなされた
後に,計算機8に収集される。計算機8は,補償用磁束
計10の出力信号を用いて,後で詳細に説明する妨害磁
場のキャンセルを検出用磁束計9の出力に対して実行し
た後に,平均磁場の推定,磁場分布の解析等の信号処理
を行ない,処理結果を表示装置に表示する。
【0058】図2は,本発明の第1の実施例に於ける検
出用磁束計及び補償用磁束計の構成例を示す図であり,
クライオスタット1の内部に配置されたz方向の生体磁
場を検出する検出用磁束計9と補償用磁束計10を拡大
して表示した図である。検出用磁束計9−a,9−b,
9−c,9−dのベースライン11−cは,50mmで
ある。検出用磁束計9−a,9−b,9−c,9−d
は,2×2のマトリックス状に配置されている。検出用
磁束計の数,配置は,図2に示す例に限定されない。例
えば,3×3〜8×8のマトリックス状に,9個〜64
個の検出用磁束計を配置しても良いし,3次元的に配置
することも可能である。また,ベースライン11−cの
値も50mmに限定されず,40mm等の長さにしても
良い。
【0059】補償用磁束計10−a,10−bのベース
ライン11−a,11−bは,検出用磁束計9−a,9
−b,9−c,9−dのベースライン11−cより短く
し,第1の実施例では,ベースライン11−aを10m
mとし,ベースライン11−bを30mmとしている。
補償用磁束計10(10−a,10−b)のベースライ
ン11−a,11−bを,検出用磁束計9(9−a,9
−b,9−c,9−d)のベースライン11−cより短
くすることにより,補償用磁束計10に心臓から発生す
る磁場が混入しないようにし,ほぼ妨害磁場のみを検出
する構成とする。
【0060】第1の実施例では,検出用磁束計9の入力
コイルの面と補償用磁束計10の入力コイルの面とは,
300mmだけz方向で分離され配置されている。検出
用磁束計9の入力コイルの面と補償用磁束計10の入力
コイルの面との距離は,300mmに限定されず,心臓
から発生する磁場が混入しない任意の距離にできる。
【0061】以下,クライオスタット1を保持するガン
トリー3を磁気シールドルームの内部に配置し,磁気シ
ールドルームが周波数特性を持たないと仮定した場合に
ついての,妨害磁場のキャンセル法について説明する。
【0062】図3は,本発明の第1の実施例に於いて,
磁気シールドルームの内部の磁場勾配を示す図である。
(数2)に示すようにz方向に強度が直線的に変化する
磁場勾配を考える。なお,座標系(x,y,z)は,図
1,図2に示す通りであり,座標点(x,y,z0
は,クライオスタットの底面である。
【0063】
【数2】 B(z)=βz+B(z0) …(数2) 1次微分型検出コイルから構成される磁束計では,入力
コイルの面積をS1,補償コイルの面積をS2,ベースラ
インをdとする時,磁束計で検出される磁束Φは,(数
3)となる。なお,入力コイルの面はz=z1に,補償
コイルの面はz=z2=z1+dにあるとする。
【0064】
【数3】 Φ=S1×B(z1)−S2×B(z1+d) =S1×{β×z1+B(z0)}−S2×{β×(z1+d)+B(z0)} =β×(S1−S2)×z1+(S1−S2)×B(z0)−S2×β×d …(数3) αを(数4)により定義すると,B0=Φ/S1は(数
5)により得られる。
【0065】
【数4】 α=S2/S1 …(数4)
【0066】
【数5】 B0=Φ/S1=β×(1−α)×z1+(1−α)×B(z0)−α×β×d …(数5) (数5)に於いて,(1−α)の値は,1次微分型検出
コイルの一様磁場に対するキャンセル率を示している。
検出用磁束計,補償用磁束計が配置される空間の磁場分
布が(数2)により示される場合,(数5)から明らか
なように,検出される磁場は,キャンセル率(1−α)
を係数とする項とベースラインdを係数とする項とを含
んでいる。
【0067】また,検出用磁束計9のベースライン11
−cと,補償用磁束計10−a,10−bのベースライ
ン11−a,11−bとを同じ長さすれば,検出用磁束
計9の出力を,後で図4,図5により説明する方法によ
り,補償用磁束計10の出力を用いて補正することによ
り,キャンセル率(1−α)を係数とする項のみが残る
と考えられる。しかし,心臓から発生する磁場を計測す
る場合,検出用磁束計9から300mm離れた位置に補
償用磁束計10を配置した場合でも,補償用磁束計10
のベースラインを50mmとすると心臓から発生する磁
場の波形が大きく出現するため,補償用磁束計10に
は,心臓から発生する磁場が混入するため,妨害磁場の
みの検出ができない。
【0068】そこで,心臓から発生する磁場が補償用磁
束計に混入しないようにするため,補償用磁束計10
(10−a,10−b)のベースライン11−a,11
−bを,検出用磁束計9のベースライン11−cより短
くして,ベースライン11−aの長さとベースライン1
1−bの長さとを異ならせる。
【0069】例えば,図2に示す例では,ベースライン
11−aを10mm,ベースライン11−bを30mm
とする。異なる値のベースラインをもつ補償用磁束計1
0を複数配置することにより,検出用磁束計9のベース
ラインと補償用磁束計10のベースラインの長さとが異
なることにより生じる妨害磁場の混入量の違いを補正で
きる。
【0070】以下,図4,及び図5を用いて補償用磁束
計により計測された磁場波形を使用した妨害磁場のキャ
ンセルの方法(第1の妨害磁場のキャンセル方法)を説
明する。図4は,本発明の第1の実施例の第1の補償用
磁束計を用いて妨害磁場をキャンセルする例を示すフロ
ーチャートを示す図,図5は,本発明の第1の実施例の
第2の補償用磁束計を用いて妨害磁場をキャンセルする
例を示すフローチャートを示す図である。
【0071】ここで,図1,又は図2に示した検出用磁
束計9−a,9−b,9−c,9−dにより検出された
磁場波形をF1i,F2i,F3i,F4iとし,図1,又は図
2に示した補償用磁束計10−a,10−bにより検出
された磁場波形をG1i,G2iとする。図4,及び図5に
示すf1i,f2i,f3i,f4i,g1i,g2iは,j=1〜
4,k=1〜2として,平均値を求める処理と各磁場波
形から各平均値を引き算する処理とによって,(数6)
〜(数9)のように示される。なお,以下の数式で使用
する加算記号Σは,i=1〜i=N(Nは,磁場波形の
時間軸に於けるサンプリング点の数を示す)に関する加
算を示すものとする。
【0072】
【数6】 Fj0=Σ(Fji)/N …(数6)
【0073】
【数7】 Gk0=Σ(Gki)/N …(数7)
【0074】
【数8】 fji=Fji−Fj0 …(数8)
【0075】
【数9】 gki=Gki−Gk0 …(数9) 図4に示す(処理15)に示すγの値,図5に示す(処
理19)に示すγ'の値は,最小自乗法により決定でき
る。検出用磁束計によって得られる磁場波形Fji(j=
1〜4,i=1〜N)から磁場波形Fjiの平均値を除去
した後の磁場波形fji(j=1〜4,i=1〜N)を簡
単のためfi,補償用磁束計によって得られる磁場波形
ki(k=1〜2,i=1〜N)から磁場波形Gkiお平
均値を除去した後の磁場波形gki(k=1〜2,i=1
〜N)を簡単のためをgiと表わす時,(数10)の評
価関数Eが最小になるγの値を最小自乗近似により求め
ると(数11)となる。図4,及び図5は,(数11)
を用いて各チャンネル毎に妨害磁場のキャンセルを行な
う手順を示す。
【0076】
【数10】 E=Σ(fi−γ×gi2 …(数10)
【0077】
【数11】 γ=Σ(fi×gi)/Σ(gi2 …(数11) 具体的な処理の手順を,図4,及び図5を用いて説明す
る。検出用磁束計9のベースライン11−cの長さ50
mmよりも短いベースラインを持った補償用磁束計10
−a(ベースライン11−aが10mm)によって検出
される磁場波形をg1iとし,補償用磁束計10−b(ベ
ースライン11−bが30mm)によって検出される磁
場波形をg2iとする。最初に,主にキャンセル率の違い
によって生ずる妨害磁場をキャンセルするため,最も短
いベースラインを持つ補償用磁束計10−aにより計測
された妨害磁場の磁場波形を使用する。
【0078】(処理15):(数11)を使って各検出
用磁束計9,補償用磁束計10−aに関するγ(γ1
γ2,γ3,γ4,γ5)の値を求める。γ1,γ2,γ3
γ4,γ5は(数12)〜(数16)により与えられる。
【0079】(処理16):主にキャンセル率の違いに
よって生じている妨害磁場を,1から4のチャンネル毎
にキャンセルでき,磁場波形f'1i,f'2i,f'3i,f'
4i,g'2iが得られる。f'1i,f'2i,f'3i,f'4i
g'2iは(数17)〜(数21)により与えられる。磁
場波形g'2iには,2つの補償用磁束計のベースライン
の相違による磁場の成分が残存していると考えられる。
【0080】
【数12】 γ1=Σ(f1i×g1i)/Σ(g1i2 …(数12)
【0081】
【数13】 γ2=Σ(f2i×g1i)/Σ(g1i2 …(数13)
【0082】
【数14】 γ3=Σ(f3i×g1i)/Σ(g1i2 …(数14)
【0083】
【数15】 γ4=Σ(f4i×g1i)/Σ(g1i2 …(数15)
【0084】
【数16】 γ5=Σ(g2i×g1i)/Σ(g1i2 …(数16)
【0085】
【数17】 f'1i=f1i−γ1×g1i …(数17)
【0086】
【数18】 f'2i=f2i−γ2×g1i …(数18)
【0087】
【数19】 f'3i=f3i−γ3×g1i …(数19)
【0088】
【数20】 f'4i=f4i−γ4×g1i …(数20)
【0089】
【数21】 g'2i=g2i−γ5×g1i …(数21) 次に,図5の#1(参照番号18)に移り,(処理1
5)と同様に,(処理19),(処理20)を実行す
る。
【0090】(処理19):γ'1,γ'2,γ'3,γ'
4を,(数22)〜(数25)により求める。
【0091】(処理20):磁場波形g'2iをリファレ
ンスデータとして,(処理16)を実行した後の磁場波
形f'1i,f'2i,f'3i,f'4iから妨害磁場のキャンセ
ルを行ない,f"1i,f"2i,f"3i,f"4iを,(数2
6)〜(数29)により求める。
【0092】
【数22】 γ'1=Σ(f'1i×g'2i)/Σ(g'2i2 …(数22)
【0093】
【数23】 γ'2=Σ(f'2i×g'2i)/Σ(g'2i2 …(数23)
【0094】
【数24】 γ'3=Σ(f'3i×g'2i)/Σ(g'2i2 …(数24)
【0095】
【数25】 γ'4=Σ(f'4i×g'2i)/Σ(g'2i2 …(数25)
【0096】
【数26】 f"1i=f'1i−γ'1×g'2i …(数26)
【0097】
【数27】 f"2i=f'2i−γ'2×g'2i …(数27)
【0098】
【数28】 f"3i=f'3i−γ'3×g'2i …(数28)
【0099】
【数29】 f"4i=f'4i−γ'4×g'2i …(数29) 以上説明した方法が,磁気シールドルームに周波数特性
が存在しないと仮定し,ベースラインの長さが異なる補
償用磁束計を複数使用した第1の妨害磁場のキャンセル
方法である。
【0100】次に,上述の第1の妨害磁場のキャンセル
方法だけではキャンセルしきれない,磁気シールドルー
ムの周波数特性に依存した妨害磁場をキャンセルする第
2の妨害磁場のキャンセル方法について説明する。
【0101】磁気シールドルームは,1Hz以下のカッ
トオフ周波数を持つローパスフィルター(LPF)の特
性を有している。このローパスフィルターの特性は,抵
抗,コンデンサによるRC回路と同様な振る舞いを示
す。即ち,ステップ関数状の妨害磁場が磁気シールドル
ームに侵入してきた場合,磁気シールドルーム内部で観
測される磁場波形Brは,時間をtとし時定数をTとす
ると,(数30)により示される磁場波形になると考え
られる。理解を容易にするため(数30)では,振幅値
を1とする(ユニットステップ関数で表わされる妨害磁
場が磁気シールドルームに侵入する場合を想定)。
【0102】
【数30】 Br(t)=exp(−t/T) …(数30) (数30)に示す磁場波形Br(t)を用いて,検出用
磁束計により計測される磁場の磁場波形B1(t)は
(数31)により計算できる。但し,検出用磁束計の入
力コイル,補償コイルの時定数をそれぞれT1とT2とす
る。(数31)をテイラー展開すると,(数32)とな
る。
【0103】
【数31】 B1(t)=exp(−t/T1)−exp(−t/T2) ={1−exp(−t(1/T2−1/T1))}×exp(−t/T1) …(数31)
【0104】
【数32】 B1(t)=(1/T2−1/T1)×t×exp(−t/T1) …(数32) 同様にして,補償用磁束計の入力コイル補償コイルの時
定数をそれぞれT3とT4とすると,補償用磁束計により
計測される磁場波形B2(t)は,(数33)により計
算できる。
【0105】
【数33】 B2(t)=(1/T4−1/T3)×t×exp(−t/T3) …(数33) 検出用磁束計により計測される磁場波形B1(t)か
ら,補償用磁束計により計測される妨害磁場の磁場波形
2(t)を,(数34)により定義されるδを用いて
キャンセルした磁場波形(B1−δB2)は,(数35)
となる。(数35)を(数32)と同様にテイラー展開
すると(数36)となる。
【0106】
【数34】 δ=(1/T2−1/T1)/(1/T4−1/T3) …(数34)
【0107】
【数35】 (B1−δB2)=(1/T4−1/T3)×δ×t×exp(−t/T1) −δ×(1/T4−1/T3)×t×exp(−t/T3) =(1/T4−1/T3)×δ×t ×{exp(−(1/T1−1/T3)×t)−1}×exp(−t/T3) …(数35)
【0108】
【数36】 (B1−δB2)=−(1/T1−1/T3)×(1/T4−1/T3)×δ×t2 ×exp(−t/T3) …(数36) (数36)の振幅値のうち時間に依存しない項をη(数
37)とすると,(数36)は(数38)に示す関数と
なる。以上説明したように(数38)は,(数34)に
より求めたフィッティングパラメータδを用いて,B1
(t)から妨害磁場B2(t)をキャンセルした磁場波
形を示している。
【0109】
【数37】 η=(1/T1−1/T3)×(1/T4−1/T3)×δ …(数37)
【0110】
【数38】 (B1−δB2)=−η×t2×exp(−t/T3) …(数38) 図6は,本発明の第1の実施例に於いて,理論計算によ
り求まる妨害磁場の磁場波形の例を示す図である。図6
に於いて,横軸は時間(秒)を示し,縦軸は(数30)
に示すように振幅値を1とする関数から導出される磁場
強度を示す。
【0111】図6(a)は,理論計算により得られる磁
場波形Br(t)((数30)により求められる)(観
測される妨害磁場の磁場波形)を示し,図6(b)は,
1次微分型SQUID磁束計(検出用磁束計)により計
測される磁場波形B1(t)((数32)により求めら
れる)を示し,図6(c)は,補償用磁束計により計測
される磁場波形B2(t)を用いて,検出用磁束計によ
り計測される磁場波形B1(t)に対して,妨害磁場の
キャンセルを実行した後の磁場波形,即ち,(数38)
により求められる磁場波形{(B1(t)−δB
2(t)}を示す。
【0112】実際の測定系では,ハイパスフィルター
(HPF)を使用して生体磁場の計測を実行している。
図6(d)は,実際に測定される磁場波形をシミュレー
ションするため,補償用磁束計により計測される磁場波
形を用いて,検出用磁束計により計測される磁場波形に
対して,妨害磁場のキャンセルを実行した後の磁場波
形,即ち,(数38)により求まる磁場波形{B
1(t)−δB2(t)}を,0.1Hzの2次のバター
ワース型のハイパスフィルタに通過させた後の磁場波形
を示す。
【0113】なお,以上の計算では,Brに於ける時定
数をT=0.2秒とし,B1に於ける時定数をT1=0.
2秒,T2=0.21秒とし,(B1−δB2)に於ける
時定数をT3=0.2秒とした。図6(a)は,観測さ
れる妨害磁場の磁場波形を示し,妨害磁場がスッテプ関
数として時刻10秒に発生したものとしてシミュレーシ
ョンにより計算された磁場波形である。
【0114】磁場波形Br(t)と磁場波形B1(t)
は,Twente大学のBrake等(Meas.Sc
i.Technol.,Vol.2,pp.596−6
01(1991))によって実際に測定された磁場波形
とも良く一致している。
【0115】図7は,本発明の第1の実施例に於いて,
磁気シールドルームの周波数特性に起因する妨害磁場を
キャンセルする方法(第2の妨害磁場のキャンセル方
法)のフローチャートの例を示す図である。図7を用い
て,第2の妨害磁場のキャンセル方法について説明す
る。最初に図4,図5に示す第1の妨害磁場のキャンセ
ルの処理を行ない,次に,(数38)に基づいて,磁気
シールドルームの周波数特性に起因する磁場波形の歪み
のキャンセルを行なっていく。jチャンネル(j=1〜
4)の各チャンネルに関して以下の(処理302)〜
(処理309)の各処理を行なう。
【0116】(処理302):磁場波形の歪みが生じる
データの始まりの点(妨害磁場が発生する初期点)(図
6に示す例では,横軸が10秒に等しい点)を求める。
処理302では,測定された磁場波形(第1の妨害磁場
のキャンセル前の磁場波形)の時間に関する2次微分波
形を計算しピークを検出し,ピーク点の時刻をデータの
始まりの点(初期点)とする。初期点は,表示装置の表
示画面に表示された磁場波形のピーク点を読み取っても
良いし,磁気シールドルームの外部に設置されたフラッ
クスゲートによって計測された磁場波形を用いても良
い。
【0117】(処理303):jチャンネル(j=1〜
4)に関する,振幅ηj,時定数Tj(Tjは,jチャン
ネルのT3(数38)である),初期点(磁場波形の歪
みが生じるデータの始まりのデータ点)の初期値を設定
する。例えば,ηj=1,Tj=0.2秒と設定とする。
【0118】(処理304):jチャンネル(j=1〜
4)の各チャンネルについて,理論計算により求まる磁
場波形Best,j,iを(数39)により計算する。
【0119】(処理305):ハイパスフィルタ処理を
行なう。
【0120】(処理306):(数40)に従って測定
値Bmes,j,iとBest,j,iの最小自乗和により評価関数E
jを計算する。なお,(数40)では,加算記号Σは,
i=1〜i=N’(N’は,測定値Bmes,j,iの磁場波
形の時間軸に於けるサンプリング点tiの数を示す)に
関する加算を示すものとする。
【0121】
【数39】 Best,j,i=−ηj×ti 2×exp(−ti/Tj) …(数39)
【0122】
【数40】 Ej=Σ(Bmes,j,i−Best,j,i2 …(数40) (処理307):Ej>予め設定した基準値(例えば,
j>10-4)の時は(処理308)を実行し,Ej≦予
め設定した基準値(例えば,Ej>10-4)の時は(処
理309)を実行する。
【0123】(処理308):シンプレックス法によ
り,より評価関数の値Ejが小さくなるように,振幅
ηj,時定数Tj,データの始まりの点(初期点)を求め
て,(処理304)を実行する。
【0124】(処理309):最適解として求められ
た,振幅ηj,時定数Tj,データの始まりの点(初期
点)を使用して,(数39)により理論的に磁場波形B
est,j,iを計算し,(数41)に従い,第1の妨害磁場
のキャンセル法によって得られた磁場波形Bmes,j,i
ら,Best,j,iを差し引く。この結果,第2の妨害磁場
のキャンセル方法により妨害時がキャンセルされた,j
チャンネル(j=1〜4)に関するBc,j,iを得る。
【0125】
【数41】 Bc,j,i=Bmes,j,i−Best,j,i …(数41) 以上説明した方法が,磁気シールドルームの周波数特性
に依存して発生し,第1の妨害磁場のキャンセル方法に
より残留する妨害磁場をキャンセルする,第2の妨害磁
場のキャンセル方法の説明である。
【0126】(第2の実施例)次に,図1,及び図2に
示したSQUID磁束計の配置で測定を行なったデータ
を用いて,上述の処理を行なった結果を以下に説明す
る。最初に,磁気シールドルームの内部,及び外部で妨
害磁場の波形を同時に記録した。
【0127】図8は,本発明の第2の実施例の磁場計測
装置の構成例を示す図である。フラックスゲート磁束計
のセンサ部102を,磁気シールドルームから約5m離
れた外部に設置し,磁気シールドルーム内部の1次微分
型SQUID磁束計の磁場検出方向と同じz方向の磁場
を検出した。フラックスゲート磁束計のセンサ部102
はフラックスゲート磁束計の本体部101によって磁束
計動作する。本体部101の出力は100Hzのコーナ
ー周波数を持つローパスフィルタのみを通して計算機8
に取り込んだ。1次微分型SQUID磁束計の配置は,
図1及び図2で説明した通りであり,SQUID磁束計
の出力は0.1Hz〜100Hzのバンドパスフィルタ
と50Hzのノッチフィルタを通して計算機8に取り込
んだ。
【0128】図9は,本発明の第2の実施例の磁場計測
装置に於いて,フラックスゲート磁束計により測定され
た磁場波形の例を示す図である。図9に於いて,横軸は
時間(分)を,縦軸は磁場強度(μT(マイクロテス
ラ))を示す。図9に示す例では,約10分の周期で,
1.2μT以上の大きな磁場が出現している。この大き
な磁場は,磁気シールドルームから約50m離れた所を
約10分間隔で走行している電車から発生する磁場の波
形である。
【0129】図10は,本発明の第2の実施例の磁場計
測装置に於いて,フラックスゲート磁束計とSQUID
磁束計により測定された磁場波形の例を示す図である。
図10に於いて,横軸は時間(秒)を示し,縦軸は磁場
強度(図10(A)ではpT(ピコテスラ),図10
(B)ではμT)を示す。図10は,図9に示す測定区
間201で記録された磁場波形であり,検出用磁束計に
より検出される磁場波形,フラックスゲート磁束計によ
って計測された磁場波形(図9の測定区間201の拡大
図)を示す。磁場の測定は,検査対象がベッドに横たわ
っていない状態で実行した。
【0130】図10(A)は,磁気シールドルームの内
部で測定された1次微分型SQUID磁束計による波形
を示し,(A1),(A2),(A3),(A4)はそ
れぞれ,検出用磁束計(図2)9−a(ch.1),9
−b(ch.2),9−c(ch.3),9−d(c
h.4)の出力f1i,f2i,f3i,f4iに対応してい
る。ch.iはiチャンネルを意味する。
【0131】図10(B)は,磁気シールドルームの外
部で測定されたフラックゲート磁束計による波形を示
す。図10(B)では,時刻A,時刻B,時刻Cで,ス
テップ関数状の妨害磁場が発生している。図10(A)
に示すch.1〜ch.4に関する磁場波形を見ると,
時刻A,及び時刻Bを初期点として磁気シールドルーム
の内部にも,妨害磁場が発生していることが分かる。c
h.1〜ch.4に関する妨害磁場の波形の強度を比較
すると,チャンネル間で妨害磁場の大きさが異なること
が分かる。
【0132】ch.1からch.4の磁場波形のよう
に,ベースラインが等しい検出用磁束計を用いる場合で
も妨害磁場の大きさが異なる原因は,(数5)に関する
考察から,主にチャンネル間でのキャンセル率の違いに
よるものと考えられる。
【0133】図1,図2,図8に示す検出用磁束計,補
償用磁束計の入力コイル,補償コイルは,超伝導線を手
巻き作業により作成しており,キャンセル率は約10-2
から10-3以下(40dB〜60dB)にあり,僅かな
キャンセル率の違いが磁場波形の大きさの違いとして大
きく反映してしまう。手作りのコイルの場合,このよう
なチャンネル間のキャンセル率の違いは,避けられない
問題である。仮に各キャンセル率を合わせるとすると,
10-3以下の均一な磁場の中で,超伝導状態にあるコイ
ルの調整を行なう必要があり,現実的には大変困難な作
業である。
【0134】不均一な強い妨害磁場がある場合,チャン
ネル間でのキャンセル率の違いによって,磁束計の出力
の大きさが大きく変化するため,特定の1つのチャンネ
ルを妨害磁場を推定するための参照チャンネルとして使
用し,参照チャンネルの出力を用いて,各チャンネルの
出力信号から参照チャンネルの出力信号を引き算する方
法では,妨害磁場を精度よくキャンセルすることは困難
である。従って,マルチチャンネルの磁場計測装置で
は,各チャンネル毎に妨害磁場の最適なキャンセル量を
決定する必要がある。
【0135】図11は,本発明の第2の実施例の磁場計
測装置に於いて,検査対象がベッドに横たわっていない
状態で,図10に示す例とは異なる時間帯で,SQUI
D磁束計により測定された磁場波形の例を示す図であ
る。図11に於いて,横軸は時間(秒)を示し,縦軸は
磁場強度(pT)を示す。図11(a),(b),
(c),(d)はそれぞれ,図1,図2,図8に示す検
出用磁束計9−a(ch.1),9−b(ch.2),
9−c(ch.3),9−d(ch.4)による磁場波
形f1i,f2i,f3i,f4iと対応しており,図11
(e),(f)はそれぞれ,補償用磁束計10−a(r
ef.ch.1),10−b(ref.ch.2)によ
る磁場波形g1i,g2iに対応している。
【0136】ref.ch.1の磁場波形g1i(図11
(e))とref.ch.2の磁場波形g2i(図11
(f))では,時刻16秒の前後で100pT程度の大
きな妨害磁場が発生している。ベースラインが10mm
である補償用磁束計(ref.ch1.)による波形g
1i(図11(e))の磁場波形の大きさが最も小さい
が,図11(e)の磁場波形には,図11(a)(c
h.1)から図11(d)(ch.4)に示す波形
1i,f2i,f3i,f4iと同じ形の妨害磁場の波形が出
現している。
【0137】図12は,本発明の図11に示す磁場波形
を,第1の実施例の第1の補償用磁束計を用いた妨害磁
場のキャンセル(図4)を実行した後の磁場波形例を示
す図である。図12に於いて,横軸は時間(秒)を示
し,縦軸は磁場強度(pT)を示す。図12は,図11
に示すref.ch1の磁場波形g1iを用いて,図4に
示す(処理15),及び(処理16)を,(数12)か
ら(数21)に従って実行した結果を示す。即ち,図1
2(a),(b),(c),(d),(e)はそれぞ
れ,(数17),(数18),(数19),(数2
0),(数21)による結果,f'1i,f'2i,f'3i
f'4i,g'2iを示す。
【0138】図12(a),(b),(c),(d)の
磁場波形では,図11(a),(b),(c),(d)
の磁場波形に比較して,妨害磁場が約1/4程度となっ
ているが,まだ大きな妨害磁場が残っている。
【0139】図13は,本発明の図12に示す磁場波形
を,第1の実施例の第2の補償用磁束計を用いた妨害磁
場のキャンセル(図5)を実行した後の磁場波形の例を
示す図である。図13に於いて,横軸は時間(秒)を示
し,縦軸は磁場強度(pT)を示す。図13は,更に,
図12に示すref.ch2の磁場波形g'2iを用い
て,図5に示す(処理19),及び(処理20)を実行
した結果を示す。即ち,図13(a),(b),
(c),(d)はそれぞれ,(数26),(数27),
(数28),(数29)による結果,f"1i,f"2i
f"3i,f"4iを示す。
【0140】図13に示す結果では,大きな妨害磁場は
殆どキャンセルされているが,時刻15秒近くに20p
T程度の妨害磁場が残っている。図13(a),
(b),(c),(d)に残留する妨害磁場の波形は,
シミュレーションにより求めた図6(d)に示す磁場波
形に酷似している。図13に示す残留する妨害磁場の波
形は,先に図6で説明したように,ステップ関数状に混
入した妨害磁場が,磁気シールドルームのローパスフィ
ルタの特性によって歪められて生じた磁場波形であると
考えられる。
【0141】この残留する妨害磁場の波形は,(数3
8)から明らかなように,補償用磁束計の入力コイルの
時定数T3に依存し,図13に示す結果から明らかなよ
うに,検出用磁束計のチャンネル番号,即ち,検出用磁
束計が配置される位置により変化している。
【0142】従って,第1の実施例の第1,第2の補償
用磁束計を用いた妨害磁場のキャンセルにより残留する
妨害磁場の波形は,検出用磁束計と補償用磁束計との位
置関係によっても変化することを意味している。図13
に示す残留する妨害磁場をキャンセルするため,図7に
示す(処理302)から(処理309)を実行する。
【0143】図14は,本発明の図13に示す磁場波形
を,磁気シールドルームの周波数特性に起因する妨害磁
場のキャンセル(図7)を実行した後の磁場波形の例を
示す図である。図14に於いて,横軸は時間(秒)を示
し,縦軸は磁場強度(pT)を示す。図13(a),
(b),(c),(d)の磁場波形に対してそれぞれ,
(数39)から(数41)に示す処理を実行して得た結
果を,図14(a),(b),(c),(d)に示す。
【0144】図14(a),(b),(c),(d)か
ら明らかなように,妨害磁場は殆どキャンセルされてい
るが,ch.1〜ch.4の各チャンネルの磁場波形に
は,妨害磁場がステップ関数状に混入した初期点と考え
られる時刻15秒近辺で,鋭いピークが妨害磁場として
残留している。この最後まで残留する鋭いピークをもつ
妨害磁場は,検出用磁束計の入力コイルの時定数T1
相違により生じているものと考えられる。
【0145】図15は,本発明の第2の実施例の磁場計
測装置に於いて,検査対象の心臓から発生する磁場をS
QUID磁束計により測定した磁場波形の例を示す図で
ある。図15に於いて,横軸は時間(秒)を示し,縦軸
は磁場強度(pT)を示す。図15に示す例では,妨害
磁場は,時刻14秒の近傍で発生している。図15
(a),(b),(c),(d),(e),(f)の磁
場波形はそれぞれ,図11(a),(b),(c),
(d),(e),(f)の磁場波形と同様な波形を示し
ている。
【0146】図16は,本発明の図15に示す磁場波形
を,第1の実施例の第1の補償用磁束計を用いた妨害磁
場のキャンセル(図4)を実行した後の磁場波形の例を
示す図である。図16に於いて,横軸は時間(秒)を示
し,縦軸は磁場強度(pT)を示す。図12(a),
(b),(c),(d),(e)と同様にして,図15
に示すref.ch.1の磁場波形(図15(e))を
用いて,図4に示す(処理15),及び(処理16)を
実行した結果を,図16(a),(b),(c),
(d),(e)に示す。図16に示す例では,図4に示
す処理のみで,大きな妨害磁場は殆どキャンセルされて
いるが,時刻14秒近くに20pT程度の妨害磁場が残
留している。
【0147】図17は,本発明の図16に示す磁場波形
を,第1の実施例の第2の補償用磁束計を用いた妨害磁
場のキャンセル(図5)を実行した後の磁場波形の例を
示す図である。図17に於いて,横軸は時間(秒)を示
し,縦軸は磁場強度(pT)を示す。図13(a),
(b),(c),(d)と同様にして,図16に示すr
ef.ch2の磁場波形(図16(e))を用いて図5
に示す(処理19),及び(処理20)を実行した結果
を,図17(a),(b),(c),(d)に示す。図
13(a),(b),(c),(d)と同様に,シミュ
レーションにより求めた図6(d)に示す磁場波形に酷
似する波形が,妨害磁場として図17(a),(b),
(c),(d)の磁場波形に残留している。
【0148】図18は,本発明の図17に示す磁場波形
を,磁気シールドルームの周波数特性に起因する妨害磁
場のキャンセル(図7)を実行した後の磁場波形の例を
示す図である。図18に於いて,横軸は時間(秒)を示
し,縦軸は磁場強度(pT)を示す。図17(a),
(b),(c),(d)に磁場波形に残留する妨害磁場
をキャンセルするため,図14(a),(b),
(c),(d)と同様にして,図7に示す(処理30
2)から(処理309)を実行した結果を,図18
(a),(b),(c),(d)に示す。
【0149】図18に示す結果から明らかなように,妨
害磁場は殆どキャンセルされて,検査対象の心臓から発
生する磁場が明確に検出されているが,図14の結果と
同様に,ほぼ時刻13.8秒にキャンセルしきれなかっ
た妨害磁場の鋭いピークが残留している。
【0150】なお,図16に示す結果では,図4に示す
処理のみで,大きな妨害磁場は殆どキャンセルされてい
るので,図16(a),(b),(c),(d)の磁場
波形で時刻14秒近くに残留する20pT程度の妨害磁
場をキャンセルするために,磁気シールドルームの周波
数特性に起因する妨害磁場のキャンセル(図7)を実行
しても同様の結果を取得できる。
【0151】即ち,第1の補償用磁束計を用いた妨害磁
場のキャンセル(図4)の結果を判断して,その判断結
果により,磁気シールドルームの周波数特性に起因する
妨害磁場のキャンセル(図7)を実行しても良い。この
結果,図5に示す,第2の補償用磁束計を用いた妨害磁
場のキャンセルを実行する必要がない場合には,短時間
で妨害磁場のキャンセルが実行できる。
【0152】図22は,本発明の第2の実施例の図1
3,図17に示す波形からそれぞれ求めた時定数((数
38)のT3(単位:秒)),data1,data2
を示す図である。図22は,図13,及び図17に残留
する妨害磁場をキャンセルするために(数38)を用い
て推定された時定数をまとめた結果である。図22の結
果によれば,図1,図2,図8に示すように配置される
検出用磁束計9−a(ch.1),9−b(ch.
2),9−c(ch.3),9−d(ch.4)による
磁場波形から求めた時定数(T3)の値が少しづつ異な
ることが分かる。
【0153】補償用磁束計の入力コイルの時定数T
3の,各検出用磁束計に対する影響の大きさが,検出用
磁束計毎に異なっており,検出用磁束計の位置により時
定数T3の影響の大きさが異なることを示している。こ
れらの時定数の違いを評価するため,図13,及び図1
7の磁場波形のチャンネル間での引き算を行なう。
【0154】図19は,図13(a),(b),
(c),(d)に示す磁場波形のチャンネル間での差分
処理後の磁場波形の例を示す図である。図19に於い
て,横軸は時間(秒)を示し,縦軸は磁場強度(pT)
を示す。図19(a),(b),(c)はそれぞれ,図
13に示すch.2,ch.3,ch.4の磁場波形か
らch.1の磁場波形を引き算し(−1)倍した結果を
示す。
【0155】図20は,同様に,図17(a),
(b),(c),(d)に示す磁場波形のチャンネル間
での差分処理後の磁場波形の例を示す図である。図20
に於いて,横軸は時間(秒)を示し,縦軸は磁場強度
(pT)を示す。図20(a),(b),(c)はそれ
ぞれ,図19に示すch.2,ch.3,ch.4の磁
場波形からch.1の磁場波形を引き算し(−1)倍し
た結果を示す。
【0156】図19,図20に示す例では,時定数T3
の差が最も大きなch.1とch.4の磁場波形との間
での引き算で得られる図19(c),図20(c)の磁
場波形(差)に,妨害磁場が残留している。以上の結果
から,時定数((数38)を用いて推定された時定数T
3)の影響の大きさが,検出用磁束計の位置により異な
ることを示している。即ち,時定数T3の影響の大きさ
空間分布をもつことが分かる。
【0157】図21は,本発明の第2の実施例に於け
る,妨害磁場をキャンセルした後の磁場波形の表示例を
示す図であり,妨害磁場のキャンセルで残る磁場波形
を,測定者が容易に理解できるようにする表示例を示
す。図21に於いて,横軸は時間(秒)を示し,縦軸は
磁場強度(pT)を示す。図21に示すように,妨害磁
場が発生する初期点の時刻上に直線401を,点,カラ
ー点,点線,カラー線,太い線等により,表示装置の画
面に,妨害磁場がキャンセルされた磁場波形と共に表示
し,初期点近傍では,妨害磁場の影響を受けている可能
性があることを表示する構成とする。
【0158】直線401により表示する時刻としては,
図7に示す(処理303)で求めた値を使用する。ま
た,直線401により表示する時刻は,図8に示すフラ
ックスゲート磁束計により測定された磁場波形の時間微
分波形等から検出しても良い。
【0159】(第3の実施例)図23は,本発明の第3
の実施例の磁場計測装置の構成例を示す図である。第3
の実施例では,第1の実施例(図1),及び,第2の実
施例(図8)で使用している,パーマロイ等の高透磁率
を有する部材で構成された磁気シールドルームを使用し
ない構成である。図23に示す補償用磁束計10の構成
は,第1の実施例(図1),及び,第2の実施例(図
8)に於ける補償用磁束計10(10−a,10−b)
と同様な構成とする。
【0160】補償用磁束計10(10−a,10−b)
のベースラインが,検出用磁束計9のベースラインより
短い構成とし,第3の実施例では,補償用磁束計10の
他にもう1つ補償用磁束計601を配置する。補償用磁
束計601の出力を使用して,制御装置604によって
コイル603−a,603−bに流す電流を制御して妨
害磁場と逆方向の磁場をz方向に発生し,妨害磁場を2
0dB〜60dB程度キャンセルする構成とする。な
お,コイル603−a,603−bは,高周波電磁波を
遮断するアルミや銅等で構成された電磁シールドルーム
の内部又は外部に配置することも可能である。
【0161】補償用磁束計601のベースラインは補償
用磁束計10(10−a,10−b)のベースラインよ
り短い構成とする。例えば,補償用磁束計601のベー
スラインを0.5mm〜1mmの範囲の値とし,主にキ
ャンセル率のみで決定される妨害磁場をキャンセルする
構成とする。
【0162】補償用磁束計10,又は601のベースラ
インを短くすると,コイルのインダクタンスが小さくな
り,実効的な面積が小さくなっていまい,SQUID磁
束計の最小磁場分解能(例えば,10fT/√Hz)の
値が大きくなるので,図23に示す構成では,補償用磁
束計10(10−a,10−b),補償用磁束計601
の面積を検出用磁束計9の面積よりも大きい構成とす
る。
【0163】検出用磁束計の最小磁場分解能の値より小
さい最小磁場分解能の値を持つ補償用磁束計を使用しな
い場合には,図4,及び図5で説明した妨害磁場のキャ
ンセルの処理や,図23に示すコイル603−a,60
3−bによって,妨害磁場をキャンセルする時に,SQ
UID磁束計の白色雑音が増加するという問題が生じ
る。
【0164】この白色雑音の値が大きくて問題となる場
合には,補償用磁束計10−a,10−b,601の出
力波形の信号帯域を,アナログ又はデジタルのフィルタ
リング処理により帯域制限処理を行なうことにより,妨
害磁場のキャンセルの処理による白色雑音の増加は防止
できる。多くの場合,低周波(1Hzまで)の磁場が主
なノイズ源となり妨害磁場が発生するので,この帯域制
限処理は実用的で有効な方法である。
【0165】以上説明した帯域制限処理の実行,及び,
補償用磁束計の面積を検出用磁束計9の面積よりも大き
くする構成は,第3の実施例(図23),以下で説明す
る第4の実施例(図24)に限定されず,第1の実施例
(図1,図2)にも同様に適用でき,白色雑音を増加さ
せないで妨害磁場のキャンセルが実行できる。
【0166】(第4の実施例)図24は,本発明の第4
の実施例の磁場計測装置の構成例を示す図である。以
下,第3の実施例(図23)の構成と異なる構成につい
て説明する。第4の実施例の構成では,第3の実施例
(図23)で説明した補償用磁束計601を駆動する駆
動回路(FLL:Flux Locked Loop)
回路605を独立に有する構成とし,このFLL回路で
使用するフィードバックコイル(通常はSQUID内部
に内蔵されている)とコイル603−a,603−bと
を兼用させる構成とする。フィードバックコイルとコイ
ル603−a,603−bとを兼用することによって,
無調整で外部磁場のキャンセルが行なえる。
【0167】(第5の実施例)図25は,本発明の第5
の実施例であり,第1の実施例(図1,図2),第2の
実施例(図8)に於ける補償用磁束計と検出用磁束計の
配置例を示す投影図であり,補償用磁束計が配置される
位置を検出用磁束計が配置される面(クライオスタット
の下面に平行な面)に上方から投影し,上方から見た図
である。図25に示す例では,検出用磁束計9−aが配
置される上部に補償用磁束計10−aを,検出用磁束計
9−dが配置される上部に補償用磁束計10−bを,そ
れぞれ配置している。検出用磁束計9−a,9−dが配
置される位置では,人体の心臓から発生する磁場の大き
さが小さいため,図25に示す配置例では,補償用磁束
計10−a,10−bには,心臓から発生する磁場が殆
ど入力せず,ほぼ純粋な外来の妨害磁場を検出できる。
【0168】(第6の実施例)図26は,本発明の第6
の実施例であり,第3の実施例(図23),第4の実施
例(図24)に於ける補償用磁束計と検出用磁束計の配
置例を示す投影図であり,補償用磁束計が配置される位
置を検出用磁束計が配置される面(クライオスタットの
下面に平行な面)に上方から投影し,上方から見た図で
ある。図26に示す例では,図25の構成に加えて,補
償用磁束計601を補償用磁束計10−aの近傍に配置
している。図26に示す配置例では,補償用磁束計60
1にも心臓から発生する磁場が殆ど入力せず,ほぼ純粋
な外来の妨害磁場を検出できる。
【0169】(第7の実施例)以上の説明した第1から
第6の各実施例では,検出用磁束計の数を4個として4
チャンネルの磁場計測装置について説明したが,検出用
磁束計の数はこれに限定されず,例えば,n=1,2,
〜15の何れかとして,n2チャンネルの磁場計測装置
としても良いことは言うまでもない。更に,補償用磁束
計10−a,10−b,601のそれぞれを,複数使用
しても良い。即ち,同じベースラインの大きさをもつ補
償用磁束計を複数使用して,同じ大きさのベースライン
をもつ複数の補償用磁束計による磁場波形の平均値を用
いて,以上説明した各実施例で説明した方法に従い妨害
磁場のキャンセルを行なっても良い。
【0170】(第8の実施例)以上の説明した第1から
第7の各実施例では,磁場の法線方向(z方向)の成分
を検出する検出用磁束計と補償用磁束計から構成される
磁場検出系を例にとり説明したが,本発明の妨害磁場の
キャンセル方法は,磁場の3方向(x,y,z方向)の
成分を検出する検出用磁束計と補償用磁束計とから構成
される磁場検出系にも,第1から第7の各実施例と同様
にして,適用可能なことは言うまでもない。
【0171】即ち,妨害磁場のx,y,z方向の磁場成
分を検出する第2のSQUID磁束計によって検出され
る信号を用いて,生体から発生する生体磁場のx,y,
z方向の磁場成分を検出する第1のSQUID磁束計に
よってそれぞれ検出される信号から,各方向毎に,妨害
磁場の各方向の磁場成分を除去(キャンセル)して,生
体磁場の各方向毎の磁場成分を分離抽出できる。
【0172】更に,磁気シールドルームの周波数特性に
よって生ずる,x,y,z方向の磁場成分の磁場波形の
歪みを理論計算式を用いて除去できる。
【0173】(第9の実施例)第2の実施例に於いて説
明した図21に示す構成では,妨害磁場が発生する初期
点の時刻上に直線を表示装置の画面に表示したが,以上
説明した第1から第8の各実施例の磁場計測装置に於い
て,更に,フラックスゲート磁束計により測定された磁
場波形(例えば,図9),フラックスゲート磁束計及び
SQUID磁束計により測定された磁場波形(例えば,
図10),SQUID磁束計により測定された磁場波形
(例えば,図11,図15),妨害磁場のキャンセルの
実行の経過を示す磁場波形(例えば,図12〜図13,
図16〜図17),妨害磁場のキャンセルの結果を示す
磁場波形(例えば,図14,図18,図21)等も,表
示装置の画面に表示する構成としても良い。このような
構成では,妨害磁場の発生状況,妨害磁場のキャンセル
の結果の状況を解析評価して,信号処理の結果,正常に
診断が可能な磁場波形が得られているか否かの評価を詳
細に実行することもできる。
【0174】(第10の実施例)以上説明した第1から
第9の各実施例では,差動型検出コイルとして1次微分
型検出コイルを使用する場合について説明したが,第1
から第8の各実施例に於いて,差動型検出コイルとして
2次微分型検出コイルを使用する場合にも,第1から第
9の各実施例と同様にして,妨害磁場のキャンセルを実
行できる。
【0175】差動型検出コイルが,2次微分型検出コイ
ルである場合,検出用磁束計,補償用磁束計の入力コイ
ルはそれぞれ,2次微分型検出コイルを構成するコイル
のうち,検査対象に最も近い位置に配置される第1のコ
イルである。
【0176】検出用磁束計,補償用磁束計の補償コイル
はそれぞれ,2次微分型検出コイルを構成するコイルの
うち,第1のコイルよりも検査対象から遠い位置に順次
配置され,第2のコイルの面に平行な面をもつ第2,第
3,第4のコイルである。ここでは,第2のコイルの面
積は,第3のコイルのコイルの面積に等しい構成とす
る。
【0177】検出用磁束計,補償用磁束計のベースライ
ンはそれぞれ,2次微分型検出コイルのベースラインを
意味し,第1のコイルの面と第2のコイルの面との間の
距離,第3のコイルの面と第4のコイルの面との間の距
離である。ここでは,第1のコイルの面と第2のコイル
の面との間の距離と,第3のコイルの面と第4のコイル
の面との間の距離とは等しい構成とする。
【0178】2次微分型検出コイルから構成される磁束
計では,第1のコイル(入力コイル)の面積をs1,第
2,第3のコイル(補償コイル)の面積をs2,第4の
コイル(補償コイル)の面積をs3を,ベースラインを
bとする時,磁束計で検出される磁束φは,1次微分型
検出コイルから構成される磁束計の場合と同様にして得
られ,(数42)となる。なお,第1のコイルの面はz
=z1に,第2のコイルの面はz=z2=z1+b,第3
のコイルの面はz=z2+Δ=z1+b+Δにあり,Δ≒
0とし,第4のコイルの面はz=z2+b=z1+2bに
あるとする。
【0179】
【数42】 φ=s1×B(z1)−2s2×B(z1+b)+s3×B(z1+2b) =s1×{β×z1+B(z0)}−2s2×{β×(z1+b)+B(z0)} +s3×{β×(z1+2b)+B(z0)} =β×{(s1−s2)−(s2+s3)}×z1 +{(s1−s2)−(s2−s3)}×B(z0)−2(s2−s3)×β×b …(数42) (数42)に於いて,(s1−s2)をS1に,(s2−s
3)をS2に,2×bをdにそれぞれ置き換えると,(数
42)は(数3)と等価となる。
【0180】α'を(数43)により定義すると,B'0
=φ/(s1−s2)は(数44)により得られる。
【0181】
【数43】 α'=(s2−s3)/(s1−s2) …(数43)
【0182】
【数44】 B'0=φ/(s1−s2) =β×(1−α')×z1+(1−α')×B(z0)−2α'×β×b …(数44) (数44)に於いて,α'をαに,2×bをdにそれぞ
れ置き換えると,(数44)は(数5)と等価となる。
【0183】(数44)に於いて,(1−α')の値
は,2次微分型検出コイルの一様磁場に対するキャンセ
ル率を示している。検出用磁束計,補償用磁束計が配置
される空間の磁場分布が(数2)により示される場合,
(数44)から明らかなように,検出される磁場は,キ
ャンセル率(1−α')を係数とする項とベースラインb
を係数とする項とを含んでいる。
【0184】第1の実施例の場合と同様に,心臓から発
生する磁場が補償用磁束計に混入しないようにするた
め,補償用磁束計のベースラインを,検出用磁束計のよ
り短くする。例えば,10mm,30mmの如く,異な
る値のベースラインをもつ補償用磁束計を複数配置す
る。従って,第1の実施例の場合と同様にして,図4,
図5に示す手順による第1の妨害磁場のキャンセル方法
に従い,妨害磁場のキャンセルを実行でき,検出用磁束
計のベースラインと補償用磁束計のベースラインの長さ
とが異なることにより生じる妨害磁場の混入量の違いを
補正できる。
【0185】第1の実施例と同様にして,(数30)に
示す磁場波形Br(t)を用いて,2次微分型検出コイ
ルから構成される検出用磁束計により計測される磁場の
磁場波形B'1(t)は(数45)により計算できる。但
し,検出用磁束計を構成する2次微分型検出コイルの第
1のコイル(入力コイル)の時定数をt1,第2及び第
3のコイル(補償コイル)の時定数をt2,第4のコイ
ル(補償コイル)の時定数をt3とする。(数45)を
テイラー展開すると,(数46)となる。
【0186】
【数45】 B'1(t)=exp(−t/t1)−2×exp(−t/t2) +exp(−t/t3) =−{1−exp(−t(1/t1−1/t2))}×exp(−t/t2) −{1−exp(−t(1/t3−1/t2))}×exp(−t/t2) …(数45)
【0187】
【数46】 B'1(t)={(1/t2−1/t1)−(1/t3−1/t2)}×t ×exp(−t/t2) …(数46) 同様にして,補償用磁束計を構成する2次微分型検出コ
イルの第1のコイル(入力コイル)の時定数をt'1,第
2及び第3のコイル(補償コイル)の時定数をt'2,第
4のコイル(補償コイル)の時定数をt'3とすると,補
償用磁束計により計測される磁場波形B'2(t)は,
(数47)により計算できる。
【0188】
【数47】 B'2(t)={(1/t'2−1/t'1)−(1/t'3−1/t'2)}×t ×exp(−t/t'2) …(数47) 検出用磁束計により計測される磁場波形B'1(t)か
ら,補償用磁束計により計測される妨害磁場の磁場波形
B'2(t)を,(数48)により定義されるδ'を用い
てキャンセルした磁場波形(B'1−δ'B'2)は,(数
49)となる。(数49)をテイラー展開すると(数5
0)となる。
【0189】
【数48】 δ'={(1/t2−1/t1)−(1/t3−1/t2)} /{(1/t'2−1/t'1)−(1/t'3−1/t'2)} …(数48) (数48)に於いて,(1/t2−1/t1)を(1/T
2)に,(1/t3−1/t2)を(1/T1)に,(1/
t'2−1/t'1)を(1/T4)に,(1/t'3−1/
t'2)を(1/T3)にそれぞれ置き換えると,(数4
8)は(数34)と等価となる。
【0190】
【数49】 (B'1−δ'B'2)={(1/t'2−1/t'1)−(1/t'3−1/t'2)} ×δ'×t×exp(−t/t2) −δ'×{(1/t'2−1/t'1)−(1/t'3−1/t'2)} ×t×exp(−t/t'2) ={(1/t'2−1/t'1)−(1/t'3−1/t'2)}×δ'×t ×{exp(−(1/t2−1/t'2)×t)−1}×exp(−t/t'2) …(数49)
【0191】
【数50】 (B'1−δ'B'2)=−(1/t2−1/t'2)×{(1/t'2−1/t'1) −(1/t'3−1/t'2)}×δ'×t2×exp(−t/t'2)…(数50) (数50)の振幅値のうち時間に依存しない項をη'
(数51)とすると,(数50)は(数52)に示す関
数となる。以上説明したように(数52)は,(数4
8)により求めたフィッティングパラメータδ'を用い
て,B'1(t)から妨害磁場B'2(t)をキャンセルし
た磁場波形を示している。
【0192】
【数51】 η'=−(1/t2−1/t'2)×{(1/t'2−1/t'1) −(1/t'3−1/t'2)}×δ' …(数51)
【0193】
【数52】 (B'1−δ'B'2)=−η'×t2×exp(−t/t'2) …(数52) (数52)に於いて,η'をηに,t'2をT3にそれぞれ
置き換えると,(数52)は(数38)と等価となる。
【0194】(数52)は(数38)と等価であるの
で,差動型検出コイルとして2次微分型検出コイルを使
用する場合にも,第1の実施例の場合と同様にして,図
7に示す第2の妨害磁場のキャンセル方法(磁気シール
ドルームの周波数特性に起因する妨害磁場をキャンセル
する方法)を適用できる。
【0195】以上説明したように,第1から第9の各実
施例に於いて,差動型検出コイルとして2次微分型検出
コイルを使用する場合にも,差動型検出コイルとして1
次微分型検出コイルを使用する場合と全く同様にして,
妨害磁場のキャンセルを実行できる。本発明で2次微分
型検出コイルを使用する場合には,広い範囲からの妨害
磁場をキャンセルできる。
【0196】
【発明の効果】本発明によれば,SQUID磁束計を構
成する差動型検出コイルの一様磁場に対するキャンセル
率の違い,及び,差動型検出コイルのベースラインの違
いを考慮に入れて妨害磁場をキャンセルするので,妨害
磁場を精度良くキャンセルできる。
【0197】また,磁気シールドルームの周波数特性に
起因する妨害磁場のキャンセルも精度よく実行でき,急
峻かつ大きな強度を持つ妨害磁場を精度良くキャンセル
できる。
【0198】更に,検査対象の心臓,母体内の胎児の心
臓から発する微弱な磁場の計測を感度良く可能とする生
体磁場計測装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の磁場計測装置の構成例
を示す図。
【図2】本発明の第1の実施例に於ける検出用磁束計及
び補償用磁束計の構成例を示す図。
【図3】本発明の第1の実施例に於いて,磁気シールド
ルームの内部の磁場勾配を示す図。
【図4】本発明の第1の実施例の第1の補償用磁束計を
用いて妨害磁場をキャンセルする例を示すフローチャー
トを示す図。
【図5】本発明の第1の実施例の第2の補償用磁束計を
用いて妨害磁場をキャンセルする例を示すフローチャー
トを示す図。
【図6】本発明の第1の実施例に於いて,理論計算によ
り求まる妨害磁場の磁場波形の例を示す図。
【図7】本発明の第1の実施例に於いて,磁気シールド
ルームの周波数特性に起因する妨害磁場をキャンセルす
るフローチャートの例を示す図。
【図8】本発明の第2の実施例の磁場計測装置の構成例
を示す図。
【図9】本発明の第2の実施例の磁場計測装置に於い
て,フラックスゲート磁束計により測定された磁場波形
の例を示す図。
【図10】本発明の第2の実施例の磁場計測装置に於い
て,フラックスゲート磁束計とSQUID磁束計により
測定された磁場波形の例を示す図。
【図11】本発明の第2の実施例の磁場計測装置に於い
て,検査対象がベッドに横たわっていない状態でSQU
ID磁束計により測定された磁場波形の例を示す図。
【図12】本発明の図11に示す磁場波形を,第1の実
施例の第1の補償用磁束計を用いた妨害磁場のキャンセ
ル処理(図4)実行後の磁場波形例を示す図。
【図13】本発明の図12に示す磁場波形を,第1の実
施例の第2の補償用磁束計を用いた妨害磁場のキャンセ
ル処理(図5)実行後の磁場波形の例を示す図。
【図14】本発明の図13に示す磁場波形を,磁気シー
ルドルームの周波数特性に起因する妨害磁場のキャンセ
ル処理(図7)実行後の磁場波形の例を示す図。
【図15】本発明の第2の実施例の磁場計測装置に於い
て,検査対象の心臓から発生する磁場をSQUID磁束
計により測定した磁場波形の例を示す図。
【図16】本発明の図15に示す磁場波形を,第1の実
施例の第1の補償用磁束計を用いた妨害磁場のキャンセ
ル処理(図4)実行後の磁場波形の例を示す図。
【図17】本発明の図16に示す磁場波形を,第1の実
施例の第2の補償用磁束計を用いた妨害磁場のキャンセ
ル処理(図5)実行後の磁場波形の例を示す図。
【図18】本発明の図17に示す磁場波形を,磁気シー
ルドルームの周波数特性に起因する妨害磁場のキャンセ
ル処理(図7)実行後の磁場波形の例を示す図。
【図19】本発明の図13に示す磁場波形をチャンネル
間で差分処理した後の磁場波形の例を示す図。
【図20】本発明の図17に示す磁場波形をチャンネル
間で差分処理した後の磁場波形の例を示す図。
【図21】本発明の第2の実施例に於ける,妨害磁場を
キャンセルした後の磁場波形の表示例を示す図。
【図22】本発明の第2の実施例の図13,及び図17
に示す波形から求めた時定数を示す図。
【図23】本発明の第3の実施例の磁場計測装置の構成
例を示す図。
【図24】本発明の第4の実施例の磁場計測装置の構成
例を示す図。
【図25】本発明の第5の実施例であり,第1の実施例
(図1,図2),第2の実施例(図8)に於ける補償用
磁束計と検出用磁束計の配置例を示す投影図。
【図26】本発明の第6の実施例であり,第3の実施例
(図23),第4の実施例(図24)に於ける補償用磁
束計と検出用磁束計の配置例を示す投影図。
【符号の説明】
1…クライオスタット,2…磁気シールドルーム,3…
ガントリー,4…ベッド,5…コネクタ,6…駆動回
路,7…アンプフィルタユニット,8…計算機,9,9
−a,9−b,9−c,9−d…検出用磁束計,10,
10−a,10−b,601…補償用磁束計,11−
a,11−b,11−c…ベースライン,12…磁場勾
配,13…磁気シールドルーム内でのz方向の位置,1
4…磁場強度,15,16,17,18,19,20…
処理,101…フラックスゲート磁束計本体,102…
フラックスゲート磁束計センサ部,201…測定区間,
301,302,303,304,305,306,3
07,308,309,310…処理,401…直線,
602…配線,603−a,603−b…コイル,60
4…制御装置,605…FLL回路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−84777(JP,A) 特開 平11−83965(JP,A) 特開2000−37362(JP,A) 特開 平11−104099(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61B 5/05 G01R 33/035 ZAA

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高周波電磁波を遮断する電磁シールドルー
    ムの内部で,検査対象から発生する磁場の法線方向の成
    分を検出する複数の第1のSQUID磁束計と,前記法
    線方向の妨害磁場を検出する複数の第2のSQUID磁
    束計と,前記第1及び第2のSQUID磁束計を冷却す
    る低温容器と,前記第1及び第2のSQUID磁束計を
    駆動する駆動回路と,前記検査対象を上下から挾んで配
    置され前記妨害磁場をキャンセルする磁場を発生するキ
    ャンセルコイルと,前記キャンセルコイルに流す電流を
    制御する制御手段と,前記第1及び第2のSQUID磁
    束計により検出される信号を収集して信号処理を行なう
    計算機とを具備し,前記第1及び第2のSQUID磁束
    計は差動型検出コイルを有し,前記第2のSQUID磁
    束計の前記差動型検出コイルのベースラインの長さが,
    前記第1のSQUID磁束計の前記差動型検出コイルの
    ベースラインの長さよりも短く,前記制御手段は,前記
    キャンセルコイルに流す電流を,前記複数の第2のSQ
    UID磁束計の1つのSQUID磁束計の出力に基づい
    て制御して,前記キャンセルコイルは,前記妨害磁場と
    逆方向の磁場を発生することを特徴とする磁場計測装
    置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の磁場計測装置に於いて,
    前記第2のSQUID磁束計の前記差動型検出コイルの
    入力コイルの面積が,前記第1のSQUID磁束計の前
    記差動型検出コイルの入力コイルの面積よりも大である
    ことを特徴とする磁場計測装置。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の磁場計測装置に於いて,
    前記複数の第2のSQUID磁束計の前記1つのSQU
    ID磁束計を駆動する前記駆動回路が独立に設けられ,
    前記キャンセルコイルが,前記独立に設けられた前記駆
    動回路で使用するフィードバックコイルを兼ねることを
    特徴とする磁場計測装置。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の磁場計測装置に於いて,
    前記キャンセルコイルが,前記電磁シールドルームの内
    部又は外部に配置されることを特徴とする磁場計測装
    置。
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