以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
この実施形態の椅子は、図1に示すように、脚体1の上方に座2を、座2の後方に背3を起立して配し、これらの座2及び背3を脚体1によって回転自在に支持させた回転椅子として構成したものである。
ここで、本願実施形態では方向を示す場合に、上下方向、前後方向、左右方向との語を用い、それぞれ図1のように起立した椅子を基準とした場合の一般の方向の呼びかたと同様、それぞれ鉛直方向(図中のZ方向)、背3に略垂直となる方向(図中のX方向)、上下方向及び前後方向に垂直となる方向(図中のY方向)を指す。
椅子の構成について具体的に説明すると、脚体1は、放射状に延び先端にキャスター11aを備えた5本の脚羽根11〜11の中心部に脚支柱12を回転可能に支持させてなるものであり、図2に示すように脚支柱12の上端12aには、背3や座2を支持するための基礎となる支持基部13が設けられている。脚支柱12は、内部にガススプリング(図示せず)が組み込まれており、これを操作することで脚支柱12の上端12aは支持基部13とともに昇降可能となっている。
支持基部13は、アルミダイキャスト等の剛体によって構成され、脚支柱12より前方のやや上方に向かって延在し、その先端13aが座受21の前部21aを支持している。座受21の上部には、内部にクッションを備える座面22が設けられており、これらによって座2が構成されている。
また、支持基部13は脚支柱12の左右の位置において、金属フレームによって構成された背支杆14を回転自在に支持しており、この背支杆14は後上方に向かって延在され、その先端14aには枠体としての背枠31が設けられている。さらには、背支杆14が支持基部13により支持される位置より先端14aに向かう中途の位置において、前述の座受21の後部21bが回転自在に支持されている。そのため、背枠31と座受21とは、一部の回転支点がスライドしながら支持基部13に対して連動して動作し、所謂シンクロロッキング動作が可能となっている。
背支杆14の内部には、ガススプリング式の反力機構14s(図7参照)が設けられており、背枠31の後傾に対して反力を生じるようになっている。同様に、支持基部13の内部にも反力機構(図示せず)が設けられており、座受21の移動に対して反力を生じるようになっている。また、背支杆14の周囲には、樹脂製のカバー15が複数に分割されて設けられており、上述した反力機構14sとともに背支杆14を覆うように構成している。
背枠31には、後述するように、張材であるメッシュ地38を取り付けるため、外周側を開放された取付溝Gが略全周に亘って形成されており、この取付溝Gにメッシュ地38の縁部38a(図10参照)を挿入することで取り付けることができ、メッシュ地38とともに背3を構成するようになっている。
背枠31は、図2に示すように、全体的にやや後傾して設けられるとともに、下方から上方に向かって湾曲されながら前後方向の寸法が小さくなるようにしている。また、この背枠31には、図1に示すように、オプション部材としてのランバーサポート6が設けられている。ランバーサポート6はメッシュ地38の背面に配されており、着座者が背3にもたれかかった場合に、メッシュ地38を介して腰部を支持することが可能となっている。
以下、まずは背枠31の構成を中心に説明を行う。そのため、図3,7,8については、ランバーサポート6(図1参照)を取り付けるための後述の取付部76(図14)は省略して記載している。
この椅子よりメッシュ地38及びランバーサポート6を取外して正面から見た状態を図3に示す。背枠31は、枠本体32と、これに取り付けることで枠本体32と協働して前述の取付溝G(図2参照)を形成する溝形成部材36とによって構成されている。
枠本体32は、上下方向に延在して形成された一対の縦杆33,33と、その上部同士と下部同士をそれぞれ連結する一対の横杆34,35によって構成されており、これらによって中央に略四角形状の開口OPが形成されている。枠本体32は、金型を用いた樹脂一体成形によって成形しているが、アルミ等の金属材料を用いて成形することも可能である。
左右に配置された縦杆33,33は左右対称の形状としているが、上下に配置された横杆34,35は互いに機能が異なることから形状は全く異なるものとなっている。そのため、以下において、上側の横杆は上枠部34、下側の横杆は下枠部35と区別して称する。
正面から見た場合、縦杆33,33同士は上方に向けてやや間隔を狭めながら配置されている。そのため、背3は上方に向かってやや小さくなるように構成される。これらと連結される上枠部34は、中心が上方に向かって凸となるようにやや湾曲して形成されており、縦杆33,33との連結部は滑らかな円弧によって構成されている。下枠部35も縦杆33,33との間で滑らかな曲線により連結されるように形成されており、左右方向両端よりも中央が前後方向の寸法が2倍程度に大きくなるように構成されており(図7参照)、この中央部に前述した背支杆14が接続されている。
縦杆33は、図2に示すように、側面視において、下方から上方に向けて湾曲した部分と傾斜した部分が設けられている。具体的には、下枠部15との連結部の直ぐ上には、支持面である前面33aを前方に向かって凸となるように湾曲させた湾曲部である第1領域R1と、その上方に設定され前面33aを前方に向かって凹となるよう第1領域R1とは逆向きに湾曲させた第2領域R2と、その上方に設定され前面33aを後方に向かって傾斜させた第3領域R3とを備える人間工学的見地に基づく形状とされている。図中で示すように、人間の背骨のラインLBは緩やかなS字カーブを描くものであることから、この縦杆33も側面視においてほぼ同様のカーブを描くようにしている。すなわち、第1領域R1は標準的な体型の人が着座した際の腰部の高さ位置に設定された腰部領域とされるとともに、第2領域R2は上記標準的な体型の人が着座した際の背の高さ位置に設定された背領域とされており、これら腰部領域と背領域が側面視において着座者の背骨の湾曲とほぼ一致する形状となっている。さらに、第3領域R3は、標準的な体型の人の肩の高さ位置に設けられ、着座者の肩より背枠31を離間させる形状にした肩領域となっている。前述したランバーサポート6(図1参照)は第1領域R1に設けられている。
このような縦杆33に対してメッシュ地38を取り付けることで、メッシュ地38を縦杆33の前面33aに沿った形状とすることができる。すなわち、背3における着座者の支持面全体に腰部領域(第1領域R1)、背領域(第2領域R2)、肩領域(第3領域)を形成することができる。そのため、人間工学的見地に基づき、人間の背骨の湾曲に沿って腰部と背を支持し、長時間着座しても疲労が少ない適切な姿勢で身体を保持することができる。また、肩領域においても、人間工学的見地に基づき、肩周りの空間を確保して腕を動かし易くして作業効率を高めることができるとともに、上体を反らしたリラックス時に対応するサポート領域としても利用することが可能となっている。なお、肩領域は肩よりも離間して形成するものであることから、背領域の上方である限り必ずしも肩と同一の高さ位置に設けることまでは要せず、肩よりもやや低い位置に形成した場合でも上述した効果を得ることができる。
ここで、図3のA−A位置、すなわち第2領域R2において縦杆33を切断した際の端面形状を図4に示す。この図に示すように、縦杆33は、メッシュ地38の支持面となる前面33aが前後方向に略直交する平面部として形成されており、全体的に前面33aに対して直交する方向、すなわち後方に向かって延在する形状となっている。さらに、前面33aの外側に連続する外側面33bは後方にいくほど内側に傾斜するように形成されている。前面33aの内側には、後方にいくほど内側に傾斜する逃げ面33cが形成され、この逃げ面33cと連続して、後方にいくほど外側に向かって傾斜する内側面33dが形成されている。そして、内側面33dと外側面33bとの間には後面33eが形成されている。また、これら前面33a、外側面33b、逃げ面33c、内側面33d及び後面33eの大半は隣接するもの同士が滑らかな曲面によってそれぞれ接続されている。前面33aと逃げ面33cとを接続する曲面に逃げ面33cを加えてなる領域は、前面33aより内側に設定され、内側に向かうに従って漸次メッシュ地38より離間する逃げ領域Rcとなっている。
外側面33bのうち前面33aの近傍の位置には前面33aとほぼ平行に、すなわち外周側を開放方向として取付溝33gが形成されており、この取付溝33gに縁部38a(図10参照)を挿入してメッシュ地38を取り付けた場合には、このメッシュ地38は外側面33bより前面33aを経由して内側に向かって張設される。従って、前面33aはメッシュ地38の位置を規制して全体形状の形成に寄与する支持面として機能している。また、支持面である前面33aの内側に逃げ領域Rcが形成されていることから、縦杆33全体の断面積にほとんど影響を与えることなく、すなわち、強度の低下を招くことなく、メッシュ地38の支持領域を減らして、撓みを生じ易くしている。さらには、逃げ面33cは、通常状態ではメッシュ地38と離間しているものの、人がもたれかかることでメッシュ地38が変形した場合に、メッシュ地38と接触して安定性を増すことが可能となっている。
前面33aは一定以上の面積となるようにしており、着座者が左右に体勢をずらした場合に背中に食い込んで不快感や違和感を生じさせることがないようにしている。また、前面33aの内側には、鋭角な角部が生じないように逃げ面33cが形成されることで、身体との接触を和らげるようになっている。そして、上枠部34は、着座者の身体に接触し得る前面と逃げ面33cより後方に向かって、翼断面のようにすぼめられた形状となっている。さらに、後面33eは、前面33aよりも十分に小さく形成されており、より形状の特徴が顕著に表れるようにしている。また、逃げ面33cを形成することなく、内側面33cと前面33aとを延長させたより単純な形状を想定した場合、断面視略三角形状になっているということもできる。縦杆33は、このような断面形状とすることで左右寸法L1よりも前後寸法L2を大きく(本実施形態ではほぼ2倍程度に)するようにしている。材料の使用量、強度及びデザインの観点からすると、前後寸法L2は左右寸法L1の1.5倍以上3倍以下とすることが好ましい。上記のような寸法の関係にしていることから、正面視においてメッシュ地38を介して縦杆33の見える部分が少なく、より洗練した印象を与えることが可能となっている。また、縦杆33には、主として、着座者が後方にもたれかかることによる後方への荷重が作用することから、前後寸法L2を大きくすることによって後方への荷重に対する強度を確保することが可能となっている。
換言すれば、縦杆33については、受圧面として機能する前面33a及び逃げ面33cや、張材取付箇所として機能する溝33gが形成された前半部の前後寸法に対して、逆三角形にすぼませた形状をなす後半部についてもほぼ同じかそれ以上の肉厚寸法を確保している。
縦杆33は、第2領域R2のみならず、第1領域R1を含め、上下方向に沿ってほぼ同一の形状をしている。すなわち、左右方向の寸法(左右寸法L1)よりも前後方向の寸法(前後寸法L2)が小さく形成されていることから、材料を削減しながら、上述した第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3を適切に形成することが可能となっている。
そして、上述したように、上部に行くに従って前後寸法L2が小さく(本実施形態では約1/2程度に)なるように構成されているが、左右寸法L1はほとんど変化しないようにしている(図3参照)。下部の前後寸法L2に対する上部の前後寸法の割合は、30〜60%程度にすることが好ましい。上記のような寸法関係にしていることから、正面視において上部と下部で縦杆33の寸法はほとんど変化していないように見え、安定した印象を与えることができる(図2参照)。また、着座者がもたれかかることによって生じる後方への荷重による曲げモーメントは、縦杆33の下側ほど大きく上側ほど小さくなるため、上述したように上部に向かって前後寸法L2を小さくするようにしても強度が不足することはなく、側面視において上部が細くなった洗練された印象を生じさせるとともに、材料を少なくして製造コストの低減を図ることも可能となっている。
次に、上枠部34の形状について説明を行う。図3のB−B位置において上枠部34を切断した際の断面形状を図5に示す。
この図に示すように、上枠部34は、前面34aが斜め上方に向かう平面部として形成されており、前面34aの上方に連続して後方にいくほど下方に向かって傾斜する上面34bが形成されている。また、前面の下方に連続して後方にいくほど下方に向かって傾斜する逃げ面34cが形成され、この逃げ面34cと連続して、後方にいくほど上方に向かって傾斜する下面34dが形成されている。これら前面34a、上面34b、逃げ面34c及び下面34dは隣接するもの同士が滑らかな曲面によってそれぞれ接続されている。上述した縦杆33(図4参照)と同様、前面34aと逃げ面34cとを接続する曲面に逃げ面34cを加えてなる領域は、前面34aより内側に設定され、内側に向かうに従って漸次メッシュ地38より離間する逃げ領域Rcとなっている。
前面34aと逃げ面34cとを接続する曲面のうち最も前方に突出する部分が、上枠部34の延在方向に沿って前縁Efを構成し、上面34bと下面34dとを接続する曲面のうち最も後方に突出する部分が、上枠部34の延在方向に沿って後縁Erを構成することになる。
上面34bのうち、前後方向の中心位置よりも前方よりの位置、具体的には前面34aの近傍の位置には前面34aとほぼ平行に、すなわち外周側を開放方向として取付溝34gが形成されており、この取付溝34gに縁部38a(図10参照)を挿入してメッシュ地38を取り付けた場合には、メッシュ地38は上面34bより前面34aに沿って延び、縦杆33の上部の形状に沿って斜め下方に向かって配されることになる。
前面34aは、縦杆33の前面33aと同様、メッシュ地38を支持する支持面として機能するものであり、支持面である前面34aの内側に逃げ領域Rcが形成されていることから、上枠部34全体の断面積にほとんど影響を与えることなく、すなわち、強度の低下を招くことなく、メッシュ地38の支持領域を減らして、撓みを生じ易くしている。さらには、前面34aは、一定以上の面積となるようにしており、着座者が身体を反らすようにして背中を上枠部34に当接させた際に、上枠部34が背中に食い込んで不快感や違和感を生じさせることがないようにしている。また、前面34aの下方には、鋭角な角部が生じないように逃げ面34cが形成されることで、身体との接触を和らげるようになっている。そして、上枠部34は、着座者の身体に接触し得る前面34a及び逃げ面34cより後方に向けて翼断面のようにすぼめられた形状となるようにしている。なお、逃げ面34cを設けない単純な形状を想定した場合には、前面34aより後縁Erに向かう断面視略三角形状に形成されているということができる。こうすることで、上下寸法L3よりも前後寸法L4が大きく(本実施形態ではほぼ1.7倍程度に)なるようにしている。材料の使用量、強度及びデザインの観点からすると、前後寸法L4は左右寸法L3の1.4倍以上2.5倍以下とすることが好ましい。上記のような寸法の関係にしていることから、縦杆33と同様、正面視においてメッシュ地38を介して上枠部34の見える部分が少なくより洗練した印象を与えることが可能である上に、主として作用する後方への荷重に対する強度を確保することが可能となっている。
換言すれば、縦杆33と同様、上枠部34も、受圧面として機能する前面34a及び逃げ面34cや、張材取付箇所として機能する溝34gが形成された前半部の前後寸法に対して、逆三角形にすぼませた形状をなす後半部についてもほぼ同じかそれ以上の肉厚寸法を確保している。
上枠部34と縦杆33とは図6に示すように滑らかに連続しており、それぞれに設けられた取付溝34g,33gも連続するように形成されている。そのため、メッシュ地38は、上枠部34と縦杆33にかけて滑らかな面を形成しながら張設される。
次に、下枠部35の形状について説明を行う。下枠部35は、上述した通り背支杆14に接続されることから、図7に示すように、他の縦杆33等に比べて大型に構成されている。下枠部35の下面には、背支杆14がねじ止めされ、その内部には上述した反力機構14sが設けられている。
下枠部35は、上述の開口の周縁の一部を構成する左右方向に延在する上板部35aと、この上板部35aの後部中央に接続され背支杆14を下面に取り付けられる下板部35bと、左右の縦杆33,33より下板部35b及び上板部35aに接続される側板部35c,35cとによって構成されており、互いに滑らかな曲面によって接続されている。これらによって下枠部35は、前方に向かって開放されて開口が略逆台形をなす凹状の内部空間Sを形成している。内部空間Sは、成形上の肉盗みとしても機能しており、材料の削減及び軽量化に寄与している。また、下板部35bは背3全体を支える背支杆14の取付しろを広く確保するために、上板部35aに比べて前後方向の寸法を大きく設定されている。下板部35bは、背支杆14に連続する支持杆としても機能しており、枠本体32と一体に形成されることで、部品点数を削減するとともに、全体の一体感が得られる良好な外観を得ることが可能となっている。こうした点を問題にしなければ、下板部35bや側板部35c,35cを枠本体32とは別に構成することもできる。下枠部35全体としては、縦杆33や上枠部34と同様、上下寸法に比べて前後方向に長い形状とされ、より統一感のある洗練性された優れた意匠性を与えるものとなっている。
ただし、縦杆33や上枠部34とは異なり、下板部35bや側板部35cに外周側を開放方向とする取付溝Gを形成したとしても、メッシュ地38は背支杆14と干渉するために取付けを行うことができなくなる。そのため、下枠部35のうち上板部35aの下方に外周側を開放方向とする取付溝35gを形成し、縦杆33や上枠部34の取付溝33g,34gと連続させる構成とすることが考えられる。しかしながら、下枠部35は上述したように前方に向かって開放された内部空間Sが形成されるものとしていることから、この下枠部35を金型を用いて成形した場合、その金型の抜き方向は前後方向に設定することになる。そのため、下方を下板部35bによって覆われた、すなわち外周側より見て下板部35bによってオーバーラップされた位置にある上板部35aには、スライド型を用いたとしても取付溝Gを形成することは困難である。上記の点について、取付溝Gを中心とする位置関係に着目した場合、メッシュ地38を取り付けるために下枠部35に形成する取付溝35gをその開口方向(外周方向)に延長した面と交差する位置に別の構造である下板部35bが一体に設けられているものとみることができる。
そこで、本実施形態においては、図8に示すように、下枠部35の内部空間Sにおいて上板部35aに沿って溝形成部材36を取り付けることで、取付溝35g(図9参照)を形成することが可能となっている。内部空間Sは、溝形成部材36に対して大きく開放されていることから、取付作業も容易に行うことが可能である。溝形成部材36は、上板部35aに沿った平板状の部材であり、貫通孔36aが左右方向に離間した5箇所の位置に形成されている。そして、この貫通孔36aと下枠部35に形成されたねじ孔35d1とを利用してねじ止めすることで枠本体32とともに枠体である背枠31を構成する。
具体的には、図9に示すように、上板部35aには後方向に凹ませて形成した段差部35dを設け、この段差部35dに上述したねじ孔35d1を形成している。そして、段差部35dの下側には、さらに凹ませて形成した凹部35eを設けている。そして、上記段差部35dに溝形成部材36を取り付けることによって、凹部35eと溝形成部材36との間で、取付溝35gを形成することが可能になっている。
この取付溝35gは、縦杆33や上枠部34に形成された取付溝33g,34gとともに、開口OPを設けられた背枠31の略全周に亘って形成され、メッシュ地38を取り付けるためのほぼ連続した一個の取付溝Gを構成する。図7に示すように、縦杆33に形成される取付溝33gは下枠部35に近接する位置で途切れており、下枠部35と溝形成部材36とによって形成される取付溝35gとは連続していない。しかしながら、双方の取付溝33g,35gの端部は、互いに延長した場合に連続する位置関係に形成されていることから、ほぼ連続しているものとして考えることができる。もちろん、各部材の形状を変更することにより、完全に取付溝Gが連続するように構成することもできる。
メッシュ地38を取り付けた際には、溝形成部材36は下枠部35とメッシュ地38とによって覆われることになるため、溝形成部材36はほとんど目立つことなく、背枠31を枠本体32と溝形成部材36とに分割して構成してもデザイン性が損なわれることはない。また、背枠31を構成する下枠部35にメッシュ地38が取り付けられることで、背枠31に形成される開口OP全体を覆い、背3全体の統一感を生じさせるとともに、この背3が正面視において座2よりも下側にまで配されるようにしていることから(図3参照)、より高級感のある意匠性を持たせることが可能となっている。
ここで、メッシュ地38は、図10に示すように、背の形状にカットされ取付溝G(図2参照)に挿入する縁部38aには帯状の補強帯39が縫製によって取り付けられている。そのため、メッシュ地38は補強帯39とともに縁部38aを取付溝Gに挿入されることで、しっかりと挿入された位置を保持して、形態を安定させることができるようになっている。縦杆33,33及び上枠部34に対応する部分は、一本の補強帯39を屈曲させながら立体的に縫製して取り付けており、下枠部35に対応する部分にのみ別の補強帯39を取り付けている。双方の補強帯39,39の間は、縦杆33に形成される取付溝33gと下枠部35に設けられた溝35gとの間に位置する部分となり、補強帯39を取り付けない単なる凹部38bとされており、メッシュ地38のほつれ処理のみを行っている。
このようにメッシュ地38を、背枠31のほぼ全周に亘って形成された取付溝Gに挿入することで背枠31の形状に沿って張設して、背3を構成するようにしている。取付溝Gは、各位置において外周側を開放方向として形成されていることから、メッシュ地38の縁部38aを容易に挿入することができ、簡単に取付作業を行うことが可能である。また、メッシュ地38は取付溝Gよりほぼ180°反対の方向に延在することになるため、張力が作用する方向と取付溝Gの開放方向がほぼ反対向きになり、簡単に外れることはない。
また、メッシュ地38を背枠31の取付溝Gに取り付けることで、背3の前面を適切な形状にすることができる。具体的には、図2を用いて上述したように縦杆33は側面視において、下方より、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3が形成されていることから、これに沿った形状にメッシュ地38は起伏や平面を生じながら張設され、簡単に背3全体をこの形状に維持することが可能となっている。そのため、メッシュ地38を背枠31に取り付けた比較的簡単な構造であるにも関わらず、背3の形状を、着座者の体に適した快適なものにすることが可能となっている。
以下、背枠31に取り付けるランバーサポート6の構成について詳細に説明を行う。図1に示すように、ランバーサポート6は背枠31を構成する縦杆33,33の第1領域R1(図2参照)に取り付けられており、背3を構成し、着座者の支持面となるメッシュ地38の背面側に配されることで、メッシュ地38を介して着座者の腰部を支持することが可能となっている。また、ランバーサポート6は、上述した縦杆31における逃げ領域Rc(図4参照)を利用して取り付け可能とされている。
ランバーサポート6は、図11に示すように、大きく分けて、可撓性を有し着座者の腰部を支持するためのランバーサポート本体61と、これを支持するための支持部70とから構成されている。なお、この図は、メッシュ地38(図1参照)を取り外して、ランバーサポート6を露出させた状態を示したものである。ランバーサポート本体61の一端部としての右側端部61aは、背枠31を構成する一方の縦杆33A(33)に取り付けられ、他端部としての左側端部61bは支持部70を介して他方の縦杆33B(33)に取り付けられる。以下、正面視におけるランバーサポート本体の右側に位置する端部を右側端部61aと称し、左側に位置する端部を左側端部61bと称する。ランバーサポート本体61の両側端部61a,61bは、直接又は間接に縦杆33に取り付けられるための取付部として機能している。支持部70は前後方向に薄い直方体の箱形とされており、主として本体部となる支持ケース71とその前面に取り付けられる規制部材である蓋部72とによって構成されている。
ランバーサポート本体61は、ポリプロピレン等の樹脂によって薄板状に成形されており、左右方向に延在する複数(本実施形態では6本)の帯状体62〜62を上下に等間隔に平行に配置した形状となっている。帯状体62〜62は6本に限ることなく、適宜変更することも可能である。帯状体62〜62は、左右方向にほぼ一定の幅で形成されており、それぞれが独立して撓み変形することが可能となっている。また、帯状体62〜62は背3を構成するメッシュ地38(図1参照)に略平行な平面内に配置されることで、いずれの帯状体62〜62も着座者の腰部を適切に支持することができるようになっている。上記のように構成されていることから、帯状体62〜62間では、左右方向にほぼ一定の幅を有するスリット63〜63が形成され、各帯状体62〜62の独立した撓み機能に加えて、見た目の印象をスッキリとした軽やかなものにするデザイン性を与えるようになっている。
さらに、このランバーサポート本体61は、半透明の素材によって形成されており、メッシュ地38による光の透過と相俟って、より背3の広い領域で光が透過して、より軽快な印象を与えることが可能となっている。
図12はこのランバーサポート6を背面から見たものである。支持ケース71の背面側には、ランバーサポート6の変位の規制量を変更するための操作部である操作レバー73が設けられている。
図13は、このランバーサポート6を分解した状態を示したものである。上述したようにランバーサポート本体61は、前後方向を厚み方向とする薄板状に形成されており、正面視において横長の長方形の外観形状をなしている。そして、右側端部61a側はやや厚みを大きく形成されており、背面側を縦杆33Aの逃げ面33c(図4,図11参照)に沿うテーパ面61dとされている。また、右側端部61a側の縁部には、上下に離間した2箇所にねじ挿通孔61e,61eが設けられており、これらの間には矩形状の取付片61cが後向きに突出するように形成されている。さらに、テーパ面61dの内側寄りの位置には、後方に向かって突出する突出片61fが形成されている。
さらに、ランバーサポート本体61の左側端部61b側には、縁部の上下方向に沿って、後方に向かって突出するストッパ受部64が形成されている。
そして、ランバーサポート本体61の右側端部61a近傍より、左側端部近傍61bまでの広い範囲が同一の厚みで形成され、この中に上述した5本のスリット63a〜63eが設けられることで、6本の帯状体62a〜63fが並行して形成されている。スリット63a〜63eのうち、上側のスリット63aと下側のスリット63eには、左側端部61b近傍の位置において、やや上下方向の幅の広い長孔部63a1,63e1が連続して設けられている。この長孔部63a1,63e1は後述する支持ケース71に設けられた円環部71gの外周に接することでガイドとして機能する。同様に、中央のスリット63cにも、左側端部61b近傍の位置において、長孔部63a1,63e1よりもやや大きい長孔部63c1が連続して設けられている。後述するストッパ部材74に形成された円環部74aの外周に接することでガイドとして機能するようになっている。
支持部70を構成する支持ケース71は、上述したようにほぼ箱形状とされており、箱の底面を構成する板部71eの前面に逆コ字状の段差部71dを同じ前後方向の厚みで形成することで、これらの内部で、ランバーサポート本体61の左側端部61を収容可能とするケース内空間Scを形成している。ケース内空間Scの右側には、段差部71dと同じ厚みに形成された矩形ブロック状のスリットガイド71fが形成されている。このスリットガイド71fは、ランバーサポート本体61のスリット63a〜63eよりもやや小さく形成され、これらに対応する位置に配されていることから、スリット63a〜63eの内縁を介してランバーサポート本体61を上下方向に拘束するようガイドすることが可能となっている。
また、板部71eの前面には、前述の円環部71gが上下に2個配置され、段差部71dと同じ厚みに形成されている。円環部71gは、後述する蓋部72を取り付けるために利用されるとともに、前述したとおり、スリット63a,63eに設けられた長孔部63a1,63e1をガイドするために利用される。板部71eの中央やや右寄りの位置には、円形の取付孔71hが形成されており、操作レバー73に設けた後述の細径部73aを挿通可能としている。
さらに、支持ケース71は、縦杆33B(図11参照)に取り付けるための図中左側の取付端71aの背面側を、上述したランバーサポート本体61の右側端部61aの背面側とほぼ左右対称の形状にしている。すなわち、取付端71aの背面を縦杆33Bの逃げ面33c(図4,図11参照)に沿うテーパ面71a1とされている。また、取付端71aの縁部には、上下に離間した2箇所にねじ挿通孔71a2,71a2が設けられており、これらの間には矩形状の取付片71bが後向きに突出するように形成されている。さらに、テーパ面71a1の内側寄りの位置には、後方に向かって突出する突出片71fが形成されている。
支持ケース71に取り付けられる蓋部72は、支持ケース71の段差部71dとほぼ同じ外形を備えた板状の部材である。上下に配置されたねじ挿通孔72aを介して支持ケース71に設けられた円環部71gの中心のねじ部にねじ(図示せず)を螺入することで、支持ケース71に取り付けることができる。支持ケース71に蓋部72を取り付けることで、これらが協働してほぼフラットな面を形成することができる。こうすることで、不要な凹凸を避けて、メッシュ地38(図1参照)の引っ掛かりや損傷を抑制するようになっている。
支持ケース71と蓋部72とは、ケース内空間Scの範囲において、ランバーサポート本体61の左側端部61bを左右方向へ移動可能に支持する支持部70を構成している。
そして、支持ケース71には、ランバーサポート本体61の左側端部61bの左右方向への変位を規制するためにストッパ部材74が設けられている。ストッパ部材74は、概ね長方形の板状をなすカムとして形成されており、法線方向に突出する細径部74aが、中心よりもやや長手方向内側寄りの位置に設けられている。また、ストッパ部材74はケース内空間Scで回転可能とするために、各角部を円弧状に切断している。ストッパ部材74は、ランバーサポート本体61の左側端部61bに設けられたストッパ受部64を係止するものであり、これらとの間で規制手段Mrを構成している。
また、支持ケース71の背面側には、操作レバー73が配置され、操作レバーに設けられた細径部73aを、上述した板部71eに設けた取付孔71hを挿通させるようにしている。そして、ストッパ部材74の細径部74aに設けたねじ挿通孔74bを介して、操作レバー73の細径部73aの中心に設けたねじ孔にねじ75を螺入することで、板部71eを挟んだ状態で、ストッパ部材74と操作レバー73とを一体化することができ、操作レバー73を回動させることで、ストッパ部材74の向きを変えることが可能となっている。操作レバー73の摘み73cを横向きにした際に、ストッパ部材74は長辺が左右方向になり、摘み73cが縦向きになるように回動させることで、ストッパ部材74は長辺が上下方向になる。
図14は、ランバーサポート6を取り付けるために縦杆33B(33)に形成された取付部76を拡大して示したものである。もう一方の縦杆33A(図11参照)も、縦杆33Bを左右対称に形成されているのみで、同一の形状の取付部76が形成されている。そのため、代表して縦杆33B(33)を例に採り説明を行う。
縦杆33には、前方に向けて突出するよう湾曲した第1領域R1(図2参照)に、取付部76が形成されている。また、取付部76は、上述した縦杆33における逃げ領域Rc近傍に形成されている。取付部76は、縦杆33の前面側、すなわち前方より視認できる前面33a及び逃げ面33cの一部を切り取ったような形状とされており、具体的には、逃げ面33cの一部と前面33aのごく僅かな部分を後退させ、前後方向にほぼ垂直とされた縦長の平面部76aが形成されている。平面部76aの内側には、上下方向を長辺方向とする矩形状の溝部76cが形成されている。また、平面部76aの上下2箇所には、ねじ孔76b,76bが設けられている。取付部76の位置は、正面視において背枠31が左右に最も広がった位置を起点として(図3参照)、そこから上方に向かって延びるように形成されている。そのため、最も幅が広くメッシュ地38が撓み易いポイントともいえ、ランバーサポート6を取り付けることによるサポートの効果が得られやすい位置となっている。
図13を参照しつつ図14を用いてさらに詳細に説明すると、縦杆33B側に支持ケース71を取り付ける場合には、支持ケース71の取付端71aの裏面を縦杆33Bに形成した取付部76の平面部76Bに当接させるように支持させる。この際、取付片71bが溝部76cに係合することで、左右方向に強固に支持させることができる。そして、2箇所のねじ挿通孔72a,72aを介してねじ孔76b,76bにねじ(図示せず)を螺入することで、前後方向に対してもしっかりと支持ケース71を固定させることができる。このように縦杆33に支持ケース71を取り付けた場合、図15に示すように、縦杆33の前面33aよりも、支持ケース71の内側(図中右側)が、より後方(図中上側)に向かって後退するよう傾斜している。そのため、支持ケース71によって支持されるランバーサポート本体61は、自然と中央が後方に向かって湾曲することになり、着座した際の腰部の支持をより柔らかく行うことができるようになっている。
再び、図13を参照しつつ図14を用いて、ランバーサポート本体61の右側端部61aと、縦杆33A(図11参照)との取付構造について説明する。なお、上述したように図14における取付部76は縦杆33Bと左右対称となっている。まず、ランバーサポート本体61の右側端部61aの裏面を取付部76の平面部76Bに当接させるように支持させる。この際、取付片61cが溝部76cに係合することで、左右方向に強固に支持させることができる。そして、2箇所のねじ挿通孔61e,61eを介してねじ孔76b,76bにねじ(図示せず)を螺入することで、前後方向に対してもしっかりとランバーサポート本体61の右側端部61aを固定させることができる。このように縦杆33に支持ケース71を取り付けた場合、支持ケース71と同様、図16に示すように、縦杆33の前面33aよりも、ランバーサポート本体61の内側(図中左側)がより後方(図中上側)に向かって後退するよう傾斜しており、ランバーサポート本体61の中央を後方に向かって湾曲させることが可能になっている。
上記のような取付構造とすることで、ランバーサポート6は、縦杆33の逃げ領域Rc内で取り付けることが可能となっている。そのため、ランバーサポート6はメッシュ地38に干渉することなく、メッシュ地38の面一性を保って外観に影響を与えないようになっている。
左右の縦杆33に設けたねじ孔76b,76bよりねじ(図示せず)を取り外すことによって、ランバーサポート6全体が背枠31より簡単に取り外せる構造となっている。そのため、使用者の好みによってランバーサポート6を設けないようにもすることができる。取付部76は上述したように前面側に設けられており、通常メッシュ地38によって隠されていることから目立つこともない。
なお、このランバーサポート6は、メッシュ地38により支持されることで位置を安定させることができるため、左右の縦杆33に設けたねじ孔76b,76bねじを挿入しなくても固定が不十分となることはない。そのためランバーサポート6をメッシュ地38がと彫りつけられている状態で、後付けで取り付けることも可能である。この際、上述したように縦杆33全体が前面33aに対して直交する方向、すなわち後方に向かって延在するように形成されていることから、メッシュ地38の後方が広く開放されており、ランバーサポート6を容易に取り付けることが可能となっている。
また、図16に示すように、ランバーサポート本体61を縦杆33Aに取り付けた際に、突出片61fが縦杆33Bの内側面33dに当接するようにしている。こうすることで、着座者がもたれかかることによってランバーサポート本体61の中央が後方に向かって撓むように湾曲した場合に、突出片61fは外方に広がるように変形しようとして、この変形を抑制するように内側面33dによって支持されることで大きな押圧力を生じる。そのため、この押圧力に対する縦杆33Bからの反力を復元力として、ランバーサポート本体61は元の形状に戻ろうとする。従って、着座者が離席した際に容易に復元して、通常の形状に戻ることができる。
同様の構成は、図15に示すように、支持ケース71側にも設けられており、突出片71cが、縦杆33の内側面33dに当接することで、ランバーサポート本体61の撓みに付随して支持ケース71が変形したとしても、当初の位置にしっかりと復元できるようにしている。
ここで、図15を基に、支持部70及び規制手段Mrの作用について説明を行う。支持部70には、前後方向に薄いケース内空間Scが形成されており、この中には、ランバーサポート本体61の左側端部61bとストッパ部材74とが並行に配される。着座者がもたれかかり、ランバーサポート本体61が後方(図中の上側)に向かって撓んだ場合、ランバーサポート本体61の右側端部61a(図16参照)は、縦杆33に固定されているため、ランバーサポート本体61の左側端部61bが、ケース内空間Scに沿って内側(図中の右方向)に向かって変位する。この際、ランバーサポート本体61に形成されたストッパ受部64が、ストッパ部材71に係止され位置規制を行われることで、それ以上ランバーサポート本体61が変形しないように撓み量の規制がなされる。
ケース内空間Scは前後方向の寸法、すなわち間隙に余裕を持たせて形成されており、ランバーサポート本体61は、ストッパ部材74と蓋部72の内面72cとの間で前後方向に移動し得るようになっている。この寸法は、ランバーサポート本体61aの中央の厚みに対して、1〜5倍程度とすることが好ましい。こうした前後方向の移動しろの分、ランバーサポート本体61の左側端部61bは、支持ケース71以上に後方(図中上側)に向かって傾斜することができ、より柔軟に支持することが可能となっている。
また、ランバーサポート本体61が撓み、傾斜が大きく生じた場合には、左側端部61bが蓋部72の内面72cに強く当接し押圧力を生じることになる。すなわち、蓋部72は、左側端部61bの撓み角を規制する規制部材として働き、上記の押圧力に対する反力を復元力として、より元の形態に戻りやすくすることが可能となっている。ここで、左側端部61bの撓み角とは、ランバーサポート本体61が撓み変形した際の角度であり、荷重が付与されていない自由状態を基準として表したものと定義する。
図17,19は、操作部73を操作することによって、ランバーサポート本体61の規制量を変更して、変形可能な撓み量を変更する様子を説明するものである。
図17(a)は、ランバーサポート6を後方より見た状態を示すであり、操作部73の摘み73cを左右方向の位置にしている。この際、ストッパ部材74は、長辺を左右方向に向けた状態となり、ランバーサポート本体61に形成されたストッパ受部64との間隔m1は比較的小さなものになる。従って、ランバーサポート本体61の端部61bは移動可能な距離を小さくされ、大きく規制が生じていることになる。
図17(b)は、図17(a)におけるV1−V1位置における断面を示したものである。ランバーサポート本体61に対して前後方向への荷重が作用していない通常の状態において、ランバーサポート本体61は自らの剛性によって平面状態に復元しようとする力が作用する。そして、ランバーサポート本体61の一方の端部61bは、左右方向に対して取付角度θをなすように傾斜して取り付けられた支持ケース71を介して支持されており、他方の端部61aも同一の角度で縦杆33Aに対して直接的に支持されている。そのため、ランバーサポート本体61はストッパ受部64がストッパ部材74に当接しない状態であっても、やや中央付近が後方に向かって突出するように湾曲した状態となる。
この状態より、ランバーサポート本体61全体に対して後方に向かう荷重を付与した状態を図18(a),(b)に示す。ランバーサポート本体61全体は後方に向かって中央が更に突出するべく湾曲しようとするが、ストッパ受部64とストッパ部材74との間隔m1が小さいため規制が大きく働いて、上下方向中央付近の帯状体62d(62c)における後方向への変位量Δx11はごく僅かなものになる。
この際、ランバーサポート本体61全体には左右方向への張力が作用することになるものの、ストッパ部材74による規制は上下方向中央付近の帯状体62d(62c)に大きく働き、これらの上下に位置する帯状体62a,62b,62e,62fには、ストッパ部材74による規制が直接的に働かないことから、ストッパ受部64の上下端64a,64bが内側に変位するように変形する。すなわち、帯状体62a,62b,62e,62fの周辺部位は、後述する変形許容部Be(図21参照)として弾性変形を行いながら左右方向に移動するようになっている。
そのため、上下方向中央付近の帯状体62c,62dに比べると、上下に位置する帯状体62b,62eはさらに後方に向かって撓むことができ、上下端に位置する帯状体62a,62fはさらに後方に向かって撓むことが可能となっている。図18(b)は、上下方向中央付近の帯状体62dと、最下端の帯状体62fの撓み形状を比較したものであり、最下端の帯状体62fは帯状体62dよりも大きな変位量Δx12を得ることができる。このことから、上下の帯状体62a,62b,62e,62fは中央付近の帯状体62c,62dの変形に倣いつつ、外力に応じて適切に変形することが可能になっているといえる。
なお、上記の動作例はランバーサポート本体61に対して上下方向にほぼ一様な力がかかった場合であって、下側よりも上側に極端に大きな力が作用した場合、逆に上側よりも下側に極端に大きな力が作用した場合には異なる挙動を示す。すなわち、上側の帯状体62a,62bに専ら力が作用した場合には、ストッパ部材74によって大きな力で規制される上下方向中央付近を支点として、上側の帯状体62a,62bは後方に変位するものの、下側の帯状体62e,62fは前方に変位することになる。また、下側の帯状体62e,62fに専ら力が作用した場合には、下側の帯状体62e,62fは後方に変位するものの、上側の帯状体62a,62bは前方に変位することになる。そのため、着座者の腰部がランバーサポート本体61に当接した場合、ランバーサポート本体61はより適切に位置を変更して着座者の腰部全体を支持することが可能となっている。
図19(a)は、図17(a)の状態より、操作部73の摘み73cを下方向の位置に回動させたものである。この際、ストッパ部材74は、長辺が上下方向となり、短辺が左右方向になる。こうすることで、ランバーサポート本体61に形成されたストッパ受部64との間隔m2は大きくなる。すなわち、ランバーサポート本体61の端部61bは移動可能な距離が大きくなり、規制は小さくなる。ただし、この場合においても、ランバーサポート本体61に対して前後方向への荷重を付与しない限り、図19(b)に示すようにランバーサポート本体61を自らの剛性によって当初の位置を保ったままとなる。
この状態より、ランバーサポート本体61全体に対して後方に向かう荷重を付与した状態を図20(a),(b)に示す。図20(b)に示すように、図18(b)の場合に比しランバーサポート本体61は後方に向かって大きく撓むことが可能となり、上下方向中央付近の帯状体62d(62c)における撓み量Δx21も、上下端の帯状体62f(62a)における撓み量Δx22も、当初の撓み量Δx11,Δx12(図18参照)よりも大きくすることができる。こうすることで、ランバーサポート6による腰部の規制を小さくすることができる。この場合においても、上下に配置された帯状体62a〜62fの関係は同様であり、互いに位置関係を調整することで着座者の腰部を適切に支持することが可能となっている。
また、ランバーサポート本体61の撓み量を規制するための規制手段Mrが、支持部70を介して縦杆33Bに設けられていることから、ランバーサポート本体61は左右方向のほぼ全体を撓ませることができ、より広い範囲で着座者の腰部を支持することが可能となり、快適性を向上することが可能となっている。さらに、この撓み量を変更するための操作レバー73が、同様に、支持部70を介して縦杆33Bに設けられていることから、着座者は着席したままの状態で後方に手を伸ばせば簡単に操作を行うことができ、好みに応じた撓み量に設定することが可能となっている。また、操作レバー73は、摘み73cの位置が内側向きの状態と下向きの状態との間で変更するよう回動させることにより操作できるため、後ろ手の状態であっても感覚的に分かりやすい操作性を備えているといえる。
さらには、操作レバー73や規制手段Mrを含む支持部70全体が端部に設けられていることから、背枠31にメッシュ地38(図1参照)を取り付ける構造と相俟って、前後から見た際に光の透過する部分を増やして、開放感を与えるものとなっている。さらには、上記支持部70が一方の縦杆33B(図11参照)にのみ設けられる左右非対称の構造となっており、これがメッシュ地38を介して容易に判別できる構造となっていることから、より高機能な印象を与える特徴のある外観を呈することが可能となっている。
また、本実施形態にかかる椅子は、図21に示すようにオプション部材であるハンガー41を背枠31の上枠部34に取り付けることが可能となっている。このハンガー41は図5に示す上枠部34の前縁Efと後縁Erとを挟み込むように下方より取り付けている。この場合においても、前面34aと逃げ面34cとを接続する曲面より逃げ面34cまでを含む逃げ領域Rcを利用してハンガー41を取付けていることから、ハンガー41の上枠部34との取付部がメッシュ地38に干渉することなく、外観への影響を与えないようになっている。
以上のように、本実施形態に係る椅子は、背枠31を構成する杆である縦杆33と横杆としての上枠部34と、これら縦杆33と上枠部34に沿って取り付けるメッシュ地38とを備えるものであって、縦杆33と上枠部34は、これらの縦杆33と上枠部34の延在する方向と前後方向とに直交する方向の寸法、すなわち縦杆33においては左右方向の寸法L1が、上枠部34においては上下方向の寸法L3が前後方向の寸法L2,L4より小さくなるように形成されるとともに、前部にメッシュ地38を支持するための支持面である前面33a,34aが設けられ、これら前面33a,34aよりも内側の位置に内側に向かうに従って漸次メッシュ地38より離間する逃げ領域Rcを形成されるように構成したものである。
このように構成しているため、縦杆33と上枠部34の前後方向の寸法L2,L4が比較的大きいことで、着座者が背にもたれることで生じる後方への荷重に対し高い剛性を得ることができるとともに、前後方向より見た場合にメッシュ地38による光の透過領域を広く確保することができ、意匠的な特徴を高めることが可能となっている。さらに、メッシュ地38を支持する前面33a,34aを縦杆33と上枠部34の前部に設定するとともに、その内側に逃げ領域Rcを形成するようにしていることから、メッシュ地38を撓みやすくしてより着座者のサポート性を高めて座り心地を向上することも可能となっている。
また、上記杆が上下方向に延びる縦杆33を含み、この縦杆33は上方向に向かうに従って前後方向の寸法L2が小さくなるように形成されていることから、材料を削減しながらも正面から見た際の印象の変化を生じること無く、同時に、各位置において十分な強度を得ることを可能とすることができる。
そして、縦杆33に設けられた前面33aが、前方に向かって凸となるように湾曲させた第1領域R1と、この第1領域R1の上方に設定され前面33aを前方に向かって凹となるように湾曲させた第2領域R2と、この第2領域R2の上方に設定され前面33aを後方に向かって傾斜させた第3領域R3とを備えるように構成しているため、着座者の身体の保持性能をさらに高めるとともに、腕動作の容易化を行うことができ、着座時の快適性を一層高めることができる。
また、第1領域R1は標準的な体型の人が着座した際の腰部の高さ位置に設定され、第2領域R2は標準的な体型の人が着座した際の背3の高さ位置に設定されており、これら第1領域R1と第2領域R2が側面視において着座者の背骨の曲線LBと略一致するように形成されていることから、第1領域R1と第2領域R2はそれぞれ腰部領域、背領域として機能し、着座者の姿勢を適切に保持して着座者の疲労軽減を図ることができる。
そして、杆が、縦杆33,33同士を接続する横杆としての上枠部34をさらに含むように構成しているため、より背枠31としての強度を高めることが可能となっている。
また、逃げ領域Rcにオプション部材であるランバーサポート6やハンガー41を取り付け可能に構成していることから、オプション部材を取り付けた場合でも、メッシュ地38に干渉することなく外観に影響を生じさせないようにすることもできる。
さらに、縦杆33と上枠部34に設けられた前面33a,34aが平面部として形成されるように構成していることから、この前面33a,34aを、メッシュ地38を支持するだけでなく着座者を支持するためにも有効に利用することができる。
加えて、縦杆33と上枠部34が後方に向かってすぼめられた形状をなすように構成していることから、一層材料の増加を抑制しながら、強度の維持との両立を適切に図ることも可能となっている。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態では、主として一対の縦杆33,33、上枠部34,下枠部35により構成され、中央に開口OPを形成された背枠31にメッシュ地38を取り付けることで背3を構成していたが、背3に第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3を形成するためには一対の縦杆33,33だけがあればよく、縦杆33,33のみから構成される背枠を用いて同様に構成しても、上記に準じた効果を得ることが可能である。
また、類似する形状を有する椅子のバリエーションとして背3の形状を上下方向に大きく又は小さくする場合には、第2領域R2を延長又は短縮することが好適であり、こうすることで着座者の快適性とデザイン性とを適切に維持することができる。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。