JP6417914B2 - 三次元造形装置、三次元造形方法およびコンピュータープログラム - Google Patents

三次元造形装置、三次元造形方法およびコンピュータープログラム Download PDF

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本発明は、三次元造形装置に関する。
近年、印刷技術を応用した三次元造形装置が注目されている。例えば、特許文献1〜3に記載された三次元造形装置では、印刷技術において一般的に用いられているインクジェット技術が採用されている。インクジェット技術を採用した三次元造形装置では、硬化性を有する液体を吐出して水平方向(XY方向)に沿った一層分の断面体を形成する工程を、高さ方向(Z方向)に何層にもわたって行うことで、三次元物体の造形が行われる。
特開平06−218712号公報 特開2005−67138号公報 特開2010−58519号公報
インクジェット方式の三次元造形装置は、予め定められた造形解像度において、指定された座標に液体を吐出してドットを形成することにより断面体を形成する。そのため、XまたはY方向に平行な輪郭については滑らかに形成することができるものの、これらの方向に対して傾斜した輪郭については、隣接するドット間に座標のずれが生じ、ジャギーが発生する。特に、XまたはY方向に対する傾斜角度が鋭角の場合には、ジャギーが目立ちやすくなる。
二次元画像の印刷技術では、座標のずれが生じる部分に、例えば、小さなドットを形成することによってジャギーの発生を抑制することが可能である。しかし、三次元の物体を造形する場合に、座標のずれが生じる部分に小さなドットを形成すると、その部分の高さが低くなってしまい、適切な三次元形状を造形することが困難になる。そのため、二次元画像の印刷技術を、三次元物体の造形処理に単純に適用することはできない。従って、液体を吐出して三次元物体を造形する三次元造形装置において、造形される物体にジャギーが発生することを効果的に抑制可能な技術が求められている。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、三次元の物体を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、前記物体の一材料である液体を、互いに交わる第1の方向と第2の方向と第3の方向のうち、前記第1の方向に沿って吐出可能なヘッド部と;前記ヘッド部を制御して、前記第2の方向の位置および前記第3の方向の位置を表す座標のうちの指定された座標に対して、それぞれ第1の量の前記液体を吐出させることにより前記物体の1層分の断面体を形成する断面体形成処理を、複数回実行することによって、複数の前記断面体を積層させて前記物体を造形する制御部と;を備え、前記制御部は、複数回実行される前記断面体形成処理のうちの第1の断面体形成処理において、前記断面体の輪郭が前記第2の方向および前記第3の方向に同時に変化する変化部分については、前記第1の量よりも少ない第2の量の前記液体を吐出することによって前記断面体を形成し、前記第1の断面体形成処理が実行された後、第2の断面体形成処理が実行される前に、前記第2の量の液体を吐出した部分に対して、前記第2の量に加算すると前記第1の量を超える第3の量の前記液体を吐出させる充填処理を実行する。このような形態の三次元造形装置であれば、断面体の輪郭が第2の方向および第3の方向に同時に変化する変化部分については、通常の量(第1の量)よりも少ない第2の量の液体が吐出されるため、他の部分よりも厚みが小さくなる。そして、その後、厚みが小さい部分に対して、第2の量に加算すると第1の量を超える量(第3の量)の液体が吐出される。そのため、第1の量を超える量の液体は、厚みの小さい部分から、断面体の外側に溢れ、第2の方向と第3の方向とが同時に変化する部分の段差を埋める。そのため、第2の方向または第3の方向に対して傾斜した輪郭にジャギーが発生することを効果的に抑制することができる。
(2)上記形態の三次元造形装置は、前記液体を硬化させるための硬化エネルギーを付与する硬化エネルギー付与部を備えてもよく、前記硬化エネルギー付与部は、前記第1の断面体形成処理において前記液体が吐出された後、第1の期間を空けて、前記充填処理が実行される前に、前記吐出された液体に硬化エネルギーを付与し、前記充填処理において前記液体が吐出された後、前記第1の期間よりも長い第2の期間を空けて、前記第2の断面体形成処理が実行される前に、前記吐出された液体に硬化エネルギーを付与してもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、断面体形成処理において、液体が吐出された後に、第1の期間を空けて硬化エネルギーを与えるため、断面体のうち、第2の量の液体が吐出されることにより他の部分よりも厚みが小さくなった部分の形状が歪んでしまうことを抑制することができる。そのため、その後の充填処理において、厚みの小さい部分に対して精度よく液体を吐出することができる。また、厚みの小さい部分に対して液体を吐出した後には、第1の期間よりも長い第2の期間を空けた後に硬化エネルギーを与えるため、その液体が段差を埋めるだけの時間を十分に与えることができる。そのため、輪郭にジャギーが発生することをより効果的に抑制することができる。
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記断面体形成処理において前記液体を吐出させる座標は、各座標に対応する要素を有し、前記各要素に階調値が対応づけられた二次元のラスターデータによって指定され、前記変化部分は、前記ラスターデータの前記断面体の輪郭に相当する部分を平滑化処理したときに、前記階調値が100%未満になる第1の要素の前記第2の方向側または前記第3の方向側の内側に接する第2の要素が存在する部分であってもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、断面体を表すラスターデータを平滑化処理したときに階調値が100%未満になる部分に対応する輪郭部分に対して、液体を溢れさせることができるので、ジャギーの発生を効果的に抑制することができる。
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記第2の量は、前記第1の要素の階調値に応じた量でもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、変化部分の厚みを確実に小さくすることができる。
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記第3の量は、前記第2の要素の階調値に応じた量でもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、段差部分に溢れさせる液体の量を的確な量にすることができる。
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記物体の形状は、複数のポリゴンの集合であるポリゴンデータによって表され、前記第1の要素は、前記ポリゴンが横切る位置に対応する要素でもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、平滑化処理において階調値が100%未満となる第1の要素を、三次元物体を表すポリゴンがその要素を横切るか否かに基づいて判断するので、第1の要素を的確に特定することができる。
(7)上記形態の三次元造形装置において、前記第1の要素の階調値は、前記第1の要素が三次元空間中に占める体積に対して、該体積を前記ポリゴンによって切断した場合に残存する体積の割合に応じた値でもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、平滑化処理において階調値が100%未満になる第1の要素の階調値を、的確に算出することができる。
(8)上記形態の三次元造形装置において、前記第2の要素は、前記第1の要素に接する前記第2の方向の要素、および、前記第1の要素に接する前記第3の方向の要素のうち、前記第1の要素を横切る前記ポリゴンの内向きの法線の前記第2の方向の成分および前記第3の方向の成分のうち、大きな成分の方向に接する要素でもよい。このような形態の三次元造形装置であれば、第2の量の液体を吐出して厚みを小さくする部分を的確に特定することができる。
本発明は、三次元造形装置としての形態以外にも、種々の形態で実現することが可能である。例えば、三次元造形装置が三次元の物体を造形する三次元造形方法や、コンピューターが三次元造形装置を制御して三次元の物体を造形するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムが記録された一次的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。 三次元造形処理のフローチャートである。 平滑化処理の詳細を示すフローチャートである。 対象要素とポリゴンとの位置関係を示す説明図である。 主データと副データとを形成する方法を示す説明図である。 第2の要素の特定方法の概念を示す図である。 ヘッド部により断面体が形成される様子を示す説明図である。 硬化エネルギー付与部の具体的な制御方法を示す説明図である。 硬化液とサポート材とによって断面体の輪郭部分を形成した様子を示す説明図である。 第3実施形態における平滑化処理のフローチャートである。 第4実施形態における平滑化処理のフローチャートである。 第5実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態としての三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。三次元造形装置100は、造形部10と、粉体供給部20と、平坦化機構30と、粉体回収部40と、ヘッド部50と、硬化エネルギー付与部60と、制御部70と、を備えている。制御部70には、コンピューター200が接続されている。三次元造形装置100とコンピューター200とをあわせて広義の三次元造形装置として捉えることもできる。図1には、互いに直行するX方向とY方向とZ方向とを示している。Z方向は、鉛直方向に沿った方向であり、X方向は、水平方向に沿った方向である。Y方向は、Z方向およびX方向に垂直な方向である。Z方向は第1の方向、X方向は第2方向、Y方向は第3の方向にそれぞれ相当する。
造形部10は、内部に三次元物体が造形される槽状の構造体である。造形部10は、XY方向に沿った平坦な造形ステージ11と、造形ステージ11の周囲を囲みZ方向に立設された枠体12と、造形ステージ11をZ方向に沿って移動させるアクチュエーター13とを備える。造形ステージ11は、制御部70がアクチュエーター13の動作を制御することにより、枠体12内においてZ方向に移動する。
粉体供給部20は、造形部10内に粉体を供給する装置である。粉体供給部20は、例えば、ホッパーやディスペンサーにより構成される。
平坦化機構30は、造形部10の上面を水平方向(XY方向)に移動することによって、造形部10内または、枠体12上に供給された粉体を平坦化し、造形ステージ11上に粉体層を形成するための機構である。平坦化機構30は、例えば、スキージやローラーによって構成される。平坦化機構30によって造形部10から押し出された粉体は、造形部10に隣接して設けられた粉体回収部40内に排出される。
第1実施形態における三次元造形装置100は、三次元物体の材料として、硬化性を有する液体(以下、「硬化液」という)と、上述した粉体とを用いる。硬化液としては、モノマーと、モノマーが結合したオリゴマーとを主成分とする液体の樹脂材料と、紫外光が照射されると励起状態となってモノマーあるいはオリゴマーに働きかけて重合を開始させる重合開始剤との混合物を用いる。また、硬化液をヘッド部50から液滴として吐出可能な程度の低粘度となるように、硬化液中のモノマーは比較的低分子量のモノマーが選択されており、更に1つのオリゴマーに含まれるモノマーの数も数分子程度に調整されている。この硬化液は、紫外光を浴びて重合開始剤が励起状態になると、モノマーが互いに重合してオリゴマーに成長し、またオリゴマー同士もところどころで重合して、速やかに硬化して固体となる性質を有している。また、本実施形態では、粉体として、その表面に、硬化液内に含まれているものとは別のタイプの重合開始剤が付着された粉体を用いる。粉体の表面に付着された重合開始剤は、硬化液と接触するとモノマーあるいはオリゴマーに働きかけて重合を開始させる性質を有している。そのため、造形部10内の粉体に硬化液を供給すると、硬化液が粉体の内部に浸透するとともに、粉体表面の重合開始剤に接触して硬化し、その結果、硬化液が吐出された部分では、粉体同士が硬化した硬化液によって結合された状態となる。なお、粉体として、その表面に重合開始剤が付着された粉体を用いる場合には、重合開始剤を含まない硬化液を用いることも可能である。
ヘッド部50は、ヘッド部50に接続されたタンク51から上述した硬化液の供給を受け、その硬化液をZ方向に沿って、造形部10中の粉体層に吐出する装置である。ヘッド部50は、造形部10中に造形される三次元物体に対して、X方向およびY方向に移動可能である。また、ヘッド部50は、造形部10内の造形ステージ11がZ方向に移動することによって、三次元物体に対して相対的にZ方向に移動可能である。本実施形態のヘッド部50は、いわゆるピエゾ駆動方式の液滴吐出ヘッドである。ピエゾ駆動方式の液滴吐出ヘッドは、微細なノズル穴が設けられた圧力室を硬化液で満たしておき、ピエゾ素子を用いて圧力室の側壁を撓ませることによって、圧力室の容積減少分に相当する体積の硬化液を液滴として吐出することが可能である。後述する制御部70は、ピエゾ素子に印加する電圧波形を制御することによって、ヘッド部50から吐出する一滴あたりの硬化液の量を段階的に調整することが可能である。ヘッド部50には、硬化液が吐出されるノズル穴が、Y方向に沿って複数配列されている。
硬化エネルギー付与部60は、ヘッド部50から吐出された硬化液を硬化させるためのエネルギーを付与するための装置である。本実施形態では、硬化エネルギー付与部60は、ヘッド部50をX方向に挟むように配置された本硬化用発光装置61と仮硬化用発光装置62とによって構成されている。ヘッド部50が移動すると、それに伴い、硬化エネルギー付与部60も移動する。本硬化用発光装置61および仮硬化用発光装置62からは、硬化液を硬化させるための硬化エネルギーとして、紫外線が照射される。仮硬化用発光装置62は、吐出された硬化液をその着弾位置に固定するための仮硬化を行うために用いられる。本硬化用発光装置61は、仮硬化後に、硬化液を完全に硬化させるために用いられる。仮硬化用発光装置62から照射される紫外線のエネルギーは、例えば、本硬化用発光装置61から照射される紫外線の20〜30%のエネルギーである。仮硬化のことを「ピニング」、本硬化のことを「キュアリング」ともいう。
制御部70は、上述したアクチュエーター13と、粉体供給部20と、平坦化機構30と、ヘッド部50と、硬化エネルギー付与部60と、を制御して三次元物体を造形する装置である。制御部70は、CPUとメモリーとを備えている。CPUは、メモリーあるいは記録媒体に記憶されたコンピュータープログラムをメモリーにロードして実行することによって、断面体形成機能と、充填機能と、を実現する。断面体形成機能は、ヘッド部50を制御して、X方向およびY方向の座標のうちの指定された座標に対して、それぞれ第1の量の硬化液を吐出させることにより三次元物体の1層分の断面体を形成する機能である。この断面体形成機能では、断面体の輪郭がX方向およびY方向に同時に変化する変化部分については、第1の量よりも少ない第2の量の硬化液が吐出されて断面体が形成される。充填機能は、断面体形成機能において第2の量の硬化液が吐出された部分に対して、第2の量に加算すると第1の量を超える第3の量の硬化液を吐出させる機能である。これらの機能を実現するための詳細な処理内容については後述する。なお、制御部70が有するこれらの機能は、コンピューター200側に備えられていてもよい。
三次元造形装置100によって三次元物体が造形される手順を簡単に説明する。まず、コンピューター200が、三次元物体の形状を表す三次元データを、Z方向の造形解像度(例えば、600dpi)に従ってスライスし、XY方向に沿った複数の断面データを生成する。この断面データは、所定の造形解像度(例えば、600dpi*600dpi)を有しており、各要素に対して階調値が格納された二次元のラスターデータによって表される。各要素に格納された階調値は、その要素に対応するXY座標に吐出する硬化液の量を表す。つまり、本実施形態では、ラスターデータにより、三次元造形装置100の制御部70に対して、硬化液を吐出させる座標と、吐出させる硬化液の量とが指定される。例えば、ある座標に対して、階調値として100%と指定された場合には、その座標に対応する三次元空間中の要素(ボクセル)の体積を100%満たすことが可能な量の硬化液がヘッド部50から吐出される。ただし、ヘッド部50から吐出される一滴あたりの硬化液の量は、有限の種類の量に限定されている。そのため、制御部70は、ラスターデータによって階調値を指定された際に、指定された階調値に対応する硬化液の量を、予め定められた種類の量の中から最も近い量に近似する。例えば、ヘッド部50から吐出可能な硬化液の量が、0%、25%、50%、75%、100%の、5種類であれば、制御部70は、この5種類の硬化液の量の中から、指定された階調値に最も近い量を選択する。なお、制御部70は、階調値を指定された際に、例えば、硬化液の硬化収縮率などに応じて、指定された階調値に対して所定の係数を乗じてもよい。
三次元造形装置100の制御部70は、コンピューター200から断面データを取得すると、粉体供給部20および平坦化機構30を制御して造形部10内に粉体層を形成する。そして、断面データに従ってヘッド部50を駆動して硬化液を粉体層に吐出し、その後、吐出された硬化液に向かって硬化エネルギー付与部60を制御して紫外光を照射する。すると、紫外光によって硬化液が硬化して粉体同士が結合し、造形部10内には、1層分の断面データに対応する断面体が形成される。こうして1層分の断面体を形成すると、制御部70は、アクチュエーター13を駆動して造形ステージ11を、Z方向の造形解像度に応じた積層ピッチ分、Z方向下向きに降下させる。造形ステージ11を降下させると、制御部70は、造形ステージ11上に既に形成された断面体の上に新たな粉体層を形成する。新たな粉体層を形成すると、制御部70は、コンピューター200から次の断面データを受け取って、新たな粉体層に硬化液を吐出して紫外光を照射することにより、新たな断面体を形成する。このように制御部70は、コンピューター200から各層の断面データを受け取ると、アクチュエーター13や粉体供給部20、平坦化機構30、ヘッド部50、硬化エネルギー付与部60を制御することにより、1層ずつ断面体を形成し、それを積層していくことにより、三次元物体を造形する。
続いて、本実施形態における三次元造形処理のより具体的な処理内容について説明する。
図2は、コンピューター200および三次元造形装置100によって実行される三次元造形処理のフローチャートである。本実施形態では、まず、コンピューター200が、記録媒体やネットワーク、コンピューター200において実行されているアプリケーションプログラム等から、三次元物体の形状を表す三次元データを取得する(ステップS100)。三次元データは、例えば、三次元ポリゴンデータや、断面毎の二次元ラスターデータ、断面毎の二次元ベクトルデータによって表される。本実施形態では、ポリゴンデータによって三次元データが表されているものとする。コンピューター200は、三次元データを取得すると、平滑化処理を行う(ステップS200)。
図3は、平滑化処理の詳細を示すフローチャートである。この平滑化処理では、三次元データから断面毎のラスターデータが生成される。まず、コンピューター200は、Z方向の造形解像度に応じた厚みの断面を、三次元ポリゴンデータから1つ切り出す(ステップS202)。断面を1つ切り出すと、コンピューター200は、以下の処理において階調値を決定するラスターデータ上の要素(座標)を特定する(ステップS204)。以下、この要素のことを、「対象要素」という。
対象要素を特定すると、コンピューター200は、対象要素が、ポリゴンの外側に存在するか否かを判断する(ステップS206)。対象要素が、ポリゴンの外側に存在すると判断すると(ステップS206:YES)、コンピューター200は、その対象要素の階調値を0%に決定する(ステップS208)。対象要素が、ポリゴンの外側に存在しないと判断すると(ステップS206:NO)、コンピューター200は、更に、その対象要素をポリゴンが横切るか否かを判断する(ステップS210)。
図4は、対象要素とポリゴンとの位置関係を示す説明図である。図4には、ポリゴンPLが、対象要素に対応する立体格子VXを横切る様子を示している。上記ステップS210において、図4に示すようにポリゴンが対象要素を横切ると判断すると(ステップS210:YES)、コンピューター200は、対象要素の階調値を、以下の式(1)に基づき算出する(ステップS212)。
階調値=最大階調値(100%)*ポリゴン体積率 ・・・(1)
ただし、ポリゴン体積率とは、対象要素に対応する立体格子VXの体積に対して、その体積をポリゴンによって切断した場合に残存する体積VLの割合である。
上記ステップS210において、ポリゴンが対象要素を横切らないと判断した場合には(ステップS210:NO)、ポリゴンが表す面と、対象要素が表す立体格子の外側の面とが一致することになるため、コンピューター200は、対象要素の階調値を100%に決定する(ステップS214)。
以上の処理によって、対象要素の階調値を決定すると、コンピューター200は、現在の断面内のすべての要素について階調値の決定が終了したか否かを判断する(ステップS216)。現在の断面内のすべての要素について階調値を決定していないと判断した場合には(ステップS216:NO)、コンピューター200は、処理をステップS204に戻して、他の要素について階調値の決定を行う。
現在の断面内のすべての要素について階調値を決定したと判断した場合には(ステップS216:YES)、コンピューター200は、全ての断面について階調値の決定が終了したか否かを判断する(ステップS218)。全ての断面について階調値の決定が終了していないと判断した場合には(ステップS218:NO)、コンピューター200は、処理をステップS202に戻して、次の断面の切り出しを行い、その断面内の全要素について階調値の決定を行う。全ての断面について階調値の決定が終了したと判断した場合には(ステップS218:YES)、コンピューター200は、決定したすべての要素の階調値が格納されたラスターデータを、断面データとして全ての断面について、メモリーや記録媒体に格納し(ステップS220)、当該平滑化処理を終了させる。
説明を図2に戻す。以上で説明した平滑化処理が終了すると、コンピューター200は、上記平滑化処理によってメモリー等に格納されたラスターデータに基づき、主データと副データの生成を行う(ステップS300)。主データとは、三次元造形装置100が断面体を造形する際に主として用いるデータである。副データとは、主データを用いて造形された断面体の一部に硬化液を補充するためのデータである。
図5は、1つの断面について、コンピューター200が主データと副データとを生成する方法を示す説明図である。図5(A)は、上述した平滑化処理が行われない場合のラスターデータの輪郭部分を示す参考図である。上述した平滑化処理が行われない場合には、ラスターデータの階調値は、0%か100%のいずれかで表されるため、ラスターデータが表す輪郭部分には、図5(A)に示すような段差状のジャギーが発生する。特に、X,Yの各方向に対する輪郭の傾斜角度が鋭角の場合には、ジャギーが目立ちやすくなる。これに対して、上述した平滑化処理が行われると、図5(B)に示すように、段差部分の階調値が中間調によって表されることになり、輪郭が滑らかに表される。図5には、階調値が、0%、25%、50%、75%、100%の5種類によって表されている例を示している。
コンピューター200は、図5(B)のように表される平滑化後のラスターデータから、図5(C)に示すように、階調値が100%未満になる第1の要素EL1と、その第1の要素EL1のX方向側またはY方向側の内側に接する第2の要素EL2とを特定し、第2の要素EL2の階調値を第1の要素EL1の階調値に置き換え、第1の要素EL1の階調値を削除する(0にする)ことによって、主データを生成する。そして、図5(D)に示すように、元々の第2の要素の階調値から、副データを生成する。なお、図5に示した例では、第2の要素の階調値は、いずれも100%であり、第1の要素の階調値よりも常に大きい。第1の要素EL1に対して、X方向側およびY方向側のどちらに接する要素を第2の要素EL2とするか、コンピューター200は、次のように判断する。
図6は、第2の要素EL2の特定方法の概念を示す図である。コンピューター200は、まず、第1の要素EL1を横切るポリゴンPLの内向きの法線ALを求める。そして、その法線のX成分ALXとY成分ALYとを求め、それらの成分のうち、大きな成分(図6の場合には、Y成分ALY)の方向に接する要素を第2の要素EL2として特定する。このように第2の要素EL2の位置を特定すれば、傾斜する輪郭に対して、階調値の置き換えを行う要素の位置を適切に判断することができる。
コンピューター200は、図5に示した処理を、すべての断面について実行することにより、各断面について、主データと副データとを生成する。コンピューター200は、主データと副データとを生成すると、それらのデータを断面データとして、全ての断面について、メモリーや記録媒体に格納する。
コンピューター200によって全ての断面について主データ及び副データが生成された後、三次元造形装置100の制御部70は、コンピューター200から最も最下層の断面を表す断面データ(主データおよび副データ)を取得する(図2のステップS400)。断面データを取得すると、制御部70は、その断面データのうちの主データを用いて断面体形成処理を実行する(ステップS500)。断面体形成処理とは、ヘッド部50をX方向およびY方向に移動させながら、X方向およびY方向の各座標に対して第1の量の硬化液を吐出させることにより、三次元物体の一部である断面体を形成する処理である。本実施形態において第1の量とは、階調値100%に対応する量であり、1つの座標に対応する要素(ボクセル)の体積を埋めるために必要な硬化液の量である。本実施形態では、主データによって形成されるドットは、いずれも第1の量の硬化液で形成されるものとするが、第1の量の硬化液と第1の量未満の硬化液とを打ち分けてドットを形成しても良い。なお、本実施形態では、X方向について硬化液の吐出が完了する毎に、ヘッド部50をY方向に移動させ、XY平面全体について断面体を形成する。
図7は、ヘッド部50によって断面体が形成される様子を示す説明図である。上記ステップS500による断面体形成処理によれば、図5(C)に示した主データに基づき断面体の形成が行われる。そのため、図7(A)に示すように、断面体の輪郭がX方向およびY方向に同時に変化する変化部分に、元々の第1の要素EL1の階調値(100%未満の階調値)に対応する第2の量のドットが吐出され、他の部分よりも厚みが小さく(つまり、高さが低く)形成される。図7では、厚みの小さい部分を、ハッチングを付して示している。図7(A)に示されているように、本実施形態では、輪郭の段差部分の内側の角部に、厚みの小さい部分が形成される。なお、図7では、理解の便のため、各ドットを格子状に表しているが、実際には、隣り合うドットはすべて連続的に繋がり合う。
制御部70は、主データに基づき断面体を形成すると、硬化エネルギー付与部60を制御して、吐出された硬化液の仮硬化を行う(図2のステップS600)。仮硬化を行うことにより、厚みの小さい部分の形状を固定することができる。ここで、ヘッド部50から硬化液が吐出されたタイミングからその硬化液に対して仮硬化のための硬化エネルギーが付与されるタイミングまでの期間のことを、「第1の期間t1」という。
上記ステップS600において仮硬化が行われた後、続いて、制御部70は、副データを用いた充填処理を行う(ステップS700)。充填処理とは、図7(B)に示すように、厚みが小さく形成された部分に対して、副データによって表される第3の量の硬化液を吐出する処理である。第3の量とは、第2の量に加算すると第1の量(100%)を超える量である。具体的には、本実施形態では、第3の量は、元々の第2の要素EL2の階調値(階調値100%)に対応する量と同じ量である。この第3の量は、硬化液の収縮率等に応じて、適宜、調整してもよい。このように、第3の量の硬化液を、厚みが小さく形成された部分に対して吐出すると、その部分に吐出された硬化液の量は、既に吐出された硬化液の量とあわせて、トータルで第1の量を超えることになる。そのため、図7(C)に示すように、厚みが小さく形成された部分からは、硬化液が断面体の外側に向けて溢れ、断面体の輪郭の段差部分を埋めることになる。本実施形態では、厚みが小さく形成された部分の周囲の断面体は、厚みが大きく形成されているため、硬化液は、断面体側ではなく、確実に、断面体の外側に向けて溢れる。なお、図7(B)では図示の都合上、断面体に対して+Y方向から第2の量の硬化液が打ち込まれているように示されているが、実際には、硬化液は、+Z方向から打ち込まれる。
以上のようにして、副データを用いた充填処理が行われると、続いて、制御部70は、仮硬化を行うことなく、第1の期間t1よりも長い第2の期間t2を空けた後に、硬化エネルギー付与部60を制御して断面体に対して本硬化を行う(図2のステップS800)。以上で説明したステップS400からステップS800までの処理により、断面体が一層分、形成される。
なお、上記ステップS800では、充填処理によって吐出した硬化液に対して仮硬化を行わない。そのため、厚みの小さい部分に吐出された硬化液は、すぐには硬化せず、表面張力および毛細管現象によって、段差部分に行き渡り、断面体の輪郭に生じている段差を滑らかに埋める。そして、上述した第1の期間t1よりも長い第2の期間t2が経過した後に、本硬化が行われることにより、主データによって形成された断面体と、副データによって形成された硬化液とが完全に硬化され、1つの断面体が完成することになる。
以上のようにして、断面体を一層分形成すると、制御部70は、全ての断面体を形成したか否かを判断する(図2のステップS900)。全ての断面体を形成していないと判断した場合には(ステップS900:NO)、制御部70は、処理をステップS400に戻して、次の断面データを読み込み、次の層の断面体を形成する。なお、次の層の断面体を形成するのに先立ち、制御部70は、造形ステージ11の降下と、粉体層の形成とを行う。上記ステップS900において、全ての断面体を形成したと判断した場合には(ステップS900:YES)、制御部70は、当該三次元造形処理を終了させる。以上で説明した一連の三次元造形処理によって、造形部10内に、三次元物体が造形される。
図8は、上述した三次元造形処理における硬化エネルギー付与部60の具体的な制御方法を示す説明図である。以下では、造形ステージ11上で、X方向の端から端までヘッド50が移動しながらドットを形成することを、「走査」という。図8に示す表は、+X方向にヘッド部50が走査する際に、主データによって断面体形成処理が行われ、その後、−X方向にヘッド部50が走査する際に、副データによって充填処理が行われることを表している。説明の簡単のため、図8では、Y方向へのヘッド部50の移動は省略している。
第1層目の断面体の形成において、主データに基づき断面体形成処理が行われる走査では、本硬化用発光装置61はオフにされ、仮硬化用発光装置62はオンにされる。そのため、硬化液がヘッド部50から吐出されて粉体層に着弾した後、ヘッド部50が+X方向に移動して、その硬化液上に仮硬化用発光装置62が到達したタイミングで仮硬化が行われることになる。なお、仮硬化は、硬化液がヘッド部50から吐出され、その硬化液が粉体層に着弾する前に行うことも可能である。
主データに基づく断面体形成処理が終了すると、ヘッド部50の走査方向が−X方向に変化し、副データに基づく充填処理が行われる。この充填処理が行われる際には、仮硬化用発光装置62はオフにされ、本硬化用発光装置61もオフにされる。そのため、上述したとおり、副データが生成された後には、仮硬化は行われないことになる。
続いて、第2層目の断面体の形成において、主データに基づき断面体形成処理が行われる走査では、本硬化用発光装置61と仮硬化用発光装置62とが両方、オンにされる。そのため、ヘッド部50が+X方向に走査している間に、まず、本硬化用発光装置61によって、前回の断面体形成処理および充填処理によって形成された第1層目の断面体に対して本硬化が行われ、その後、すぐさま、本硬化が行われた第1層目の断面体上に、第2層目の断面体を形成するための硬化液が主データに基づき吐出される。すると、その硬化液は、ヘッド部50が+X方向に移動し、その硬化液上に仮硬化用発光装置62が到達したタイミングで仮硬化される。つまり、第2層目では、第1層目の断面体に対する本硬化と、第2層目の断面体の形成と、第2層目の断面体に対する仮硬化とが、1回の走査において並行して行われることになる。以後、このような第2層目と同様の制御が硬化エネルギー付与部60に対して行われることにより、断面体が次々に仮硬化および本硬化されて積層されていくことになる。
図8に示した硬化エネルギー付与部60の制御方法によれば、副データに基づく充填処理が行われた直後には、仮硬化も本硬化も行われないことになるため、主データに基づく断面体形成処理において硬化液が吐出されてから仮硬化が行われるまでの第1の期間t1よりも、副データに基づく充填処理において硬化液が吐出されてから本硬化が行われるまでの第2の期間t2を、確実に長くすることができる。
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100によれば、断面体の輪郭がX方向およびY方向に同時に変化する変化部分については、通常の量(第1の量)よりも少ない第2の量の硬化液が吐出されるため、他の部分よりも厚みが小さくなる。そして、その後、厚みが小さい部分に対して、第2の量に加算すると第1の量を超える第3の量の液体が吐出される。そのため、第1の量を超える量の硬化液は、厚みの小さい部分から、断面体の外側に溢れ、X方向とY方向とが同時に変化する部分の段差を埋める。そのため、本実施形態によれば、X方向またはY方向に対して傾斜した輪郭にジャギーが発生することを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、厚みの小さい部分を有する断面体を形成した後には仮硬化を行うため、厚みの小さい部分の形状が歪むことを抑制することができる。そのため、その後の充填処理において、厚みの小さい部分に対して精度よく硬化液を吐出することができる。また、厚みの小さい部分に対して硬化液を充填した後には、仮硬化を行わないため、硬化液が段差部分を埋めるだけの時間を十分に与えることができる。そのため、輪郭にジャギーが発生することをより効果的に抑制することができる。
更に、本実施形態では、断面体を表すラスターデータを平滑化処理したときに階調値が100%未満になる部分に対応する輪郭部分対して、硬化液を溢れさせることができるので、ジャギーが発生することをより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、前述した第2の量を、第1の要素の階調値に応じた量とするため、変化部分の厚みを確実に小さくすることができる。また、本実施形態では、前述した第3の量を、第2の要素の階調値に応じた量とするため、段差部分に溢れさせる液体の量を的確な量にすることができる。
また、本実施形態では、平滑化処理において階調値が100%未満となる第1の要素を、三次元物体を表すポリゴンがその要素を横切るか否かに基づいて判断するので、第1の要素を的確に特定することができる。
また、本実施形態では、平滑化処理において階調値が100%未満になる要素の階調値を、その要素におけるポリゴンの体積分率に応じて算出するので、階調値を的確に算出することができる。
また、本実施形態では、断面体の輪郭に対して窪みを形成する方向を、ポリゴンの法線のX成分およびY成分の大きさに応じて特定するので、第2の量の液体を吐出して厚みを小さくする部分を、的確に特定することができる。
B.第2実施形態:
上記第1実施形態の三次元造形装置100は、硬化液と粉体とを用いて三次元物体を造形している。これに対して、第2実施形態の三次元造形装置100は、硬化液に加え、サポート材を用いて三次元物体を造形する。本実施形態におけるサポート材とは、硬化液を硬化させる硬化エネルギーと同等の硬化エネルギーによって硬化する液体であり、硬化後に、水や所定の溶液に晒すことで溶解し、簡単に除去することが可能な材料である。サポート材を、三次元物体の輪郭の外側に向けて吐出すれば、硬化液によって形成された三次元物体の輪郭が外側に向かって広がってしまうことを抑制することができる。第2実施形態の三次元造形装置100は、ヘッド部50に、硬化液とサポート材とを吐出するためのノズルがそれぞれ備えられ、また、ヘッド部50には、硬化液が収容されたタンクと、サポート材が収容されたタンクとが接続される。本実施形態では、ヘッド部50は、硬化液を吐出する走査と同じ走査においてサポート材を吐出する。なお、ヘッド部50は、硬化液を吐出する走査と異なる走査においてサポート材を吐出することも可能である。
図9は、硬化液とサポート材とによって、断面体の輪郭部分を形成した様子を示す説明図である。図9では、硬化液によって形成される部分を黒色の格子によって表し、サポート材によって形成される部分を白抜きの格子によって表している。厚みが小さく形成された部分については、便宜的に、硬化液およびサポート材ともハッチングを付した格子によって表している。本実施形態では、コンピューター200は、サポート材を吐出する部分(以下、サポート領域という)についても、硬化液を吐出する部分(以下、通常領域という)と同様に、平滑化処理後のラスターデータに基づき、主データおよび副データを生成する。サポート材を吐出するために用いるラスターデータの各要素の階調値は、100%から、硬化液を吐出するために用いるラスターデータの各要素の階調値の値を差し引いた値になる。そして、図9(A)に示すように、三次元造形装置100において、それぞれの主データに基づき断面体形成処理が実行されると、通常領域と、サポート領域との両方について、厚みが小さい部分が形成される。断面体形成処理の実行後、それぞれの副データに基づき充填処理が実行されると、通常領域の厚みが小さい部分に対して硬化液が吐出され、サポート領域の厚みが小さい部分に対してサポート材が吐出される。すると、図9(B)に示すように、X方向またはY方向に対して傾斜した部分において、硬化液によるドットと、サポート材によるドットとが隣接することになる。このように、傾斜部分において、硬化液によるドットと、サポート材によるドットが隣接すると、サポート材の存在によって、硬化液が輪郭の外側に向けて流れてしまうことを抑制することができる。そのため、第2実施形態によれば、三次元物体の輪郭にジャギーが生じることをより効果的に抑制することができる。
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態における平滑化処理のフローチャートである。上記第1実施形態では、三次元物体の形状を表す三次元データが、三次元ポリゴンデータによって表されている。これに対して、第3実施形態では、三次元データが、断面毎のラスターデータによって表されている。第3実施形態における三次元造形装置100およびコンピューター200の構成は、第1実施形態と同じである。
本実施形態の平滑化処理では、まず、コンピューター200は、三次元データの読み込みを行う(ステップS230)。上述したように、本実施形態では、三次元データが、断面毎のラスターデータによって構成されている。
続いて、コンピューター200は、読み込んだ三次元データのXY方向の解像度(XY入力解像度)と、三次元造形装置100のXY方向における造形解像度(XY造形解像度)とを比較し、XY入力解像度の方がXY造形解像度よりも高いか否かを判断する(ステップS232)。XY入力解像度の方がXY造形解像度よりも高いと判断すると(ステップS232:YES)、コンピューター200は、全ての断面のラスターデータに対して、一般的な平滑化処理を施して、各断面のラスターデータの解像度をXY造形解像度に一致させる(ステップS234)。これに対して、XY入力解像度の方がXY造形解像度よりも低いと判断すると(ステップS232:NO)、コンピューター200は、全ての断面のラスターデータに対して、一般的な画像処理技術における補間処理および平滑化処理を施し、各断面のラスターデータの解像度をXY造形解像度に一致させる(ステップS236)。
続いて、コンピューター200は、三次元データの高さ方向のピッチ(以下、積層ピッチという)が、三次元造形装置100のZ方向の造形解像度(以下、Z解像度という)に一致しているか否かを判断する(ステップS238)。積層ピッチがZ解像度に一致していると判断すると(ステップS238:YES)、コンピューター200は、これまでに平滑化処理したデータをメモリーや記録媒体に格納して(ステップS240)、処理を終了する。
上記ステップS238において、積層ピッチがZ解像度に一致していないと判断すると(ステップS238:NO)、コンピューター200は、積層ピッチがZ解像度よりも大きいか否かを判断する(ステップS242)。積層ピッチがZ解像度よりも大きいと判断すると(ステップS242:YES)、コンピューター200は、そのピッチの相違に応じて断面間の補間を行い、断面の数を増加させ、積層ピッチとZ解像度とを一致させる(ステップS244)。これに対して、積層ピッチがZ解像度よりも小さいと判断すると(ステップS242:NO)、コンピューター200は、断面データの間引きを行って、断面の数を減少させ、積層ピッチとZ解像度とを一致させる(ステップS246)。上記ステップS244あるいはステップS246の処理が完了すると、コンピューター200は、補間または間引きを行ったデータをメモリーや記録媒体に格納して(ステップS240)、処理を終了する。
以上で説明した第3実施形態の平滑化処理によれば、三次元データが、断面毎のラスターデータによって表されている場合にも、適切に平滑化処理を行うことができる。
なお、第3実施形態では、主データ生成時に第2の要素を特定するために用いるポリゴンが存在しない。そのため、第3実施形態では、第2の要素を次のように特定する。まず、コンピューター200は、階調値が100%未満となる第1の要素に外接する接線を求める。そして、その接線の法線のX成分とY成分とを算出し、図6に示した手法と同様に、それらの成分のうち、大きい成分が向く方向に隣接する要素を第2の要素として特定する。こうすることにより、第3実施形態においても、第2の要素を適切に特定することができる。
D.第4実施形態:
図11は、第4実施形態における平滑化処理のフローチャートである。上記第3実施形態では、断面毎のラスターデータによって三次元データが表されている。これに対して、第4実施形態では、三次元データが、断面毎のベクトルデータによって表されている。第4実施形態における三次元造形装置100およびコンピューター200の構成は、第1実施形態と同じである。
本実施形態の平滑化処理では、まず、コンピューター200は、三次元データの読み込みを行う(ステップS260)。上述したように、本実施形態では、三次元データが、断面毎のベクトルデータによって表されている。
続いて、コンピューター200は、読み込んだ三次元データの全ての断面について、一般的な画像処理技術におけるラスター変換および平滑化を行う(ステップS262)。ラスター変換とは、ベクトルデータからラスターデータへの変換を行う処理である。
ラスター変換および平滑化を行うと、コンピューター200は、第3実施形態におけるステップS238,S242〜S246と同様の処理を行うことにより、断面の補間や断面の間引きを行う(ステップSS264,S268〜S272)。そして、コンピューター200は、上述した各処理が施された三次元データをメモリーや記録媒体に格納して(ステップS266)、処理を終了する。
以上で説明した第4実施形態の平滑化処理によれば、三次元データが、断面毎のベクトルデータによって表されている場合にも、適切に平滑化処理を行うことができる。
なお、第4実施形態でも第3実施形態と同様に、主データ生成時に第2の要素を特定するために用いるポリゴンが存在しない。そのため、第4実施形態では、第2の要素を次のように特定する。まず、コンピューター200は、階調値が100%未満となる第1の要素を横切るベクトルを特定する。そして、そのベクトルの法線のX成分とY成分とを算出し、図6に示した手法と同様に、それらの成分のうち、大きい成分が向く方向に隣接する要素を第2の要素として特定する。こうすることにより、第4実施形態においても、第2の要素を適切に決定することができる。
E.第5実施形態:
図12は、第5実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。第1実施形態の三次元造形装置100は、造形部10内に供給された粉体に対して硬化液を吐出することによって三次元物体を造形している。これに対して、第5実施形態の三次元造形装置100aは、粉体を用いることなく、樹脂を含有する硬化液のみによって三次元物体を造形する。
三次元造形装置100aは、造形部10と、ヘッド部50と、硬化エネルギー付与部60と、制御部70と、を備えている。造形部10は、第1実施形態と同様に、造形ステージ11と枠体12とアクチュエーター13とを備えている。ただし、枠体12は、省略してもよい。ヘッド部50には、タンク51が接続されている。硬化エネルギー付与部60は、本硬化用発光装置61と仮硬化用発光装置62とを備えている。つまり、三次元造形装置100aは、多くの部分で第1実施形態の三次元造形装置100の構成と共通しており、第1実施形態の三次元造形装置100から、粉体供給部20と平坦化機構30と粉体回収部40とを省略した構成となっている。このような三次元造形装置100aであっても、粉体層を形成する処理を除き、第1実施形態の三次元造形装置100と同様の処理によって三次元物体を造形することができる。なお、この第5実施形態においても、第2実施形態と同様にサポート材を用いて三次元物体を造形することが可能である。第5実施形態においてサポート材を用いれば、下層よりも上層の断面体の面積が大きい場合に、その面積の大きな部分を、下層のサポート材によって支えることができる。
F.変形例:
<第1変形例>
上記実施形態において、硬化エネルギー付与部60によって仮硬化、本硬化を行うタイミングは、図8に示したタイミングに限らず、硬化液(あるいはサポート材。以下、同じ)の化学的性質や硬化液の飛翔速度などに応じて適宜設定できる。例えば、仮硬化は、断面体形成処理の実行中から充填処理が開始されるまでの間に実行すればよい。また、本硬化は、充填処理の実行中から次の断面体形成処理が実行されるまでの間のいずれかのタイミングで実行すればよい。本硬化は、充填処理によって厚みの小さい部分に吐出された硬化液が、段差部分を埋めるまでに十分な時間が経過した後に行えばよい。
<第2変形例>
上記実施形態では、硬化液の吐出後に、仮硬化と本硬化とを行っているが、仮硬化と本硬化のうち、いずれか一方を省略することも可能である。また、硬化液や粉体の材料によっては、仮硬化と本硬化の両方を省略してもよい。硬化処理を両方とも行わない例としては、硬化液として接着剤(バインダー)、粉体として石膏パウダーを用いる場合がある。また、硬化エネルギーの種類についても、紫外線に限らず、硬化液や粉体の性質に応じて適宜変更可能である。
<第3変形例>
上記実施形態では、造形ステージ11がZ方向に移動することによって、ヘッド部50が相対的にZ方向に移動する。これに対して、造形ステージ11の位置を固定し、ヘッド部50をZ方向に直接的に移動させてもよい。また、上記実施形態では、ヘッド部50がX方向およびY方向に移動するが、ヘッド部50のX方向およびY方向の位置を固定し、造形ステージ11をX方向およびY方向に移動させてもよい。
<第4変形例>
上記実施形態では、図2に示した三次元造形処理のうち、ステップS100における三次元データの取得と、ステップS200における平滑化処理と、ステップS300における主データと副データの生成とが、コンピューター200によって実行されている。これに対して、これらのステップは、三次元造形装置100によって実行されてもよい。つまり、三次元造形装置100が、単体で、三次元データの取得から三次元物体の造形までのすべてを実行してもよい。また、上記実施形態では、図2に示した三次元造形処理のステップS400〜S900が三次元造形装置100の制御部70によって実行されている。これに対して、これらのステップは、コンピューター200が三次元造形装置100の各部を制御することによって実行してもよい。つまり、コンピューター200が、三次元造形装置100の制御部70の機能を果たしてもよい。
<第5変形例>
上記実施形態では、ヘッド50は、鉛直方向に沿って硬化液を吐出するが、水平方向あるいはその他の方向に硬化液を吐出して三次元物体を造形してもよい。
<第6変形例>
上記実施形態では、制御部70は、階調値に応じた量の硬化液をヘッド部50に吐出させる際に、予め定められた種類の量の中から、指定された階調値に最も近い量を選択している。これに対して、制御部70は、単一の量の硬化液、あるいは、少ない種類の量の硬化液を、同一の位置に複数回吐出させることにより、より多くの種類の硬化液の量によってドットを形成可能としても良い。
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態や変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…造形部
11…造形ステージ
12…枠体
13…アクチュエーター
20…粉体供給部
30…平坦化機構
40…粉体回収部
50…ヘッド部
51…タンク
60…硬化エネルギー付与部
61…本硬化用発光装置
62…仮硬化用発光装置
70…制御部
100,100a…三次元造形装置
200…コンピューター
AL…法線
PL…ポリゴン
VL…三次元形状
VX…立体格子
EL1…第1の要素
EL2…第2の要素

Claims (10)

  1. 三次元の物体を造形する三次元造形装置であって、
    前記物体の一材料である液体を、互いに交わる第1の方向と第2の方向と第3の方向のうち、前記第1の方向に沿って吐出可能なヘッド部と、
    前記ヘッド部を制御して、前記第2の方向の位置および前記第3の方向の位置を表す座標のうちの指定された座標に対して、それぞれ第1の量の前記液体を吐出させることにより前記物体の1層分の断面体を形成する断面体形成処理を、複数回実行することによって、複数の前記断面体を積層させて前記物体を造形する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    複数回実行される前記断面体形成処理のうちの第1の断面体形成処理において、前記断面体の輪郭が前記第2の方向および前記第3の方向に同時に変化する変化部分については、前記第1の量よりも少ない第2の量の前記液体を吐出することによって前記断面体を形成し、
    前記第1の断面体形成処理が実行された後、第2の断面体形成処理が実行される前に、前記第2の量の液体を吐出した部分に対して、前記第2の量に加算すると前記第1の量を超える第3の量の前記液体を吐出させる充填処理を実行する、
    三次元造形装置。
  2. 請求項1に記載の三次元造形装置であって、
    前記液体を硬化させるための硬化エネルギーを付与する硬化エネルギー付与部を備え、
    前記硬化エネルギー付与部は、
    前記第1の断面体形成処理において前記液体が吐出された後、第1の期間を空けて、前記充填処理が実行される前に、前記吐出された液体に硬化エネルギーを付与し、
    前記充填処理において前記液体が吐出された後、前記第1の期間よりも長い第2の期間を空けて、前記第2の断面体形成処理が実行される前に、前記吐出された液体に硬化エネルギーを付与する、
    三次元造形装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の三次元造形装置であって、
    前記断面体形成処理において前記液体を吐出させる座標は、各座標に対応する要素を有し、前記各要素に階調値が対応づけられた二次元のラスターデータによって指定され、
    前記変化部分は、前記ラスターデータの前記断面体の輪郭に相当する部分を平滑化処理したときに、前記階調値が100%未満になる第1の要素の前記第2の方向側または前記第3の方向側の内側に接する第2の要素が存在する部分である、三次元造形装置。
  4. 請求項3に記載の三次元造形装置であって、
    前記第2の量は、前記第1の要素の階調値に応じた量である、三次元造形装置。
  5. 請求項3または請求項4に記載の三次元造形装置であって、
    前記第3の量は、前記第2の要素の階調値に応じた量である、三次元造形装置。
  6. 請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
    前記物体の形状は、複数のポリゴンの集合であるポリゴンデータによって表され、
    前記第1の要素は、前記ポリゴンが横切る位置に対応する要素である、三次元造形装置。
  7. 請求項6に記載の三次元造形装置であって、
    前記第1の要素の階調値は、前記第1の要素が三次元空間中に占める体積に対して、該体積を前記ポリゴンによって切断した場合に残存する体積の割合に応じた値である、三次元造形装置。
  8. 請求項6または請求項7に記載の三次元造形装置であって、
    前記第2の要素は、前記第1の要素に接する前記第2の方向の要素、および、前記第1の要素に接する前記第3の方向の要素のうち、前記第1の要素を横切る前記ポリゴンの内向きの法線の前記第2の方向の成分および前記第3の方向の成分のうち、大きな成分の方向に接する要素である、三次元造形装置。
  9. 三次元造形装置が三次元の物体を造形する三次元造形方法であって、
    前記三次元造形装置は、前記物体の一材料である液体を、互いに交わる第1の方向と第2の方向と第3の方向のうち、前記第1の方向に沿って吐出可能なヘッド部を備え、
    前記ヘッド部を制御して、前記第2の方向の位置および前記第3の方向の位置を表す座標のうちの指定された座標に対して、それぞれ第1の量の前記液体を吐出させることにより前記物体の1層分の断面体を形成する断面体形成処理を、複数回実行することによって、複数の前記断面体を積層させて前記物体を造形し、
    複数回実行される前記断面体形成処理のうちの第1の断面体形成処理において、前記断面体の輪郭が前記第2の方向および前記第3の方向に同時に変化する変化部分については、前記第1の量よりも少ない第2の量の前記液体を吐出することによって前記断面体を形成し、
    前記第1の断面体形成処理が実行された後、第2の断面体形成処理が実行される前に、前記第2の量の液体を吐出した部分に対して、前記第2の量に加算すると前記第1の量を超える第3の量の前記液体を吐出させる充填処理を実行する、
    三次元造形方法。
  10. コンピューターが三次元造形装置を制御して三次元の物体を造形するためのコンピュータープログラムであって、
    前記三次元造形装置は、前記物体の一材料である液体を、互いに交わる第1の方向と第2の方向と第3の方向のうち、前記第1の方向に沿って吐出可能なヘッド部を備え、
    前記ヘッド部を制御して、前記第2の方向の位置および前記第3の方向の位置を表す座標のうちの指定された座標に対して、それぞれ第1の量の前記液体を吐出させることにより前記物体の1層分の断面体を形成する断面体形成処理を、複数回実行することによって、複数の前記断面体を積層させて前記物体を造形する機能と、
    複数回実行される前記断面体形成処理のうちの第1の断面体形成処理において、前記断面体の輪郭が前記第2の方向および前記第3の方向に同時に変化する変化部分については、前記第1の量よりも少ない第2の量の前記液体を吐出することによって前記断面体を形成する機能と、
    前記第1の断面体形成処理が実行された後、第2の断面体形成処理が実行される前に、前記第2の量の液体を吐出した部分に対して、前記第2の量に加算すると前記第1の量を超える第3の量の前記液体を吐出させる充填処理を実行する機能と、
    を前記コンピューターに実現させるためのコンピュータープログラム。
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