JP6415089B2 - 複合微細組織を有する耐摩耗性合金 - Google Patents

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Description

本発明は、複合微細組織を有する耐摩耗性合金に係り、より詳しくは、耐摩耗性の硬質粒子および自己潤滑性の軟質粒子から構成される複合微細組織を有する耐摩耗性合金に関する。
一般に、自動車部品用耐摩耗性アルミニウム合金としては、主にシリコン(Si)13.5〜18wt%(すなわち、12wt%以上)および銅(Cu)2〜4wt%を含む過共晶Al−Si合金が使用されている。前記過共晶Al−Si合金は、微細組織上に粒径30〜50μmの初晶シリコン(Si)粒子が生成されており、一般Al−Si合金に比べて優れた耐摩耗性を有し、自動車部品のうち耐摩耗性を要求する部品、例えばシフトフォーク、リアカバー、スワッシュプレートなどに多く用いられている。
代表的な商用合金としては、リヨービ株式会社のR14合金、これと類似した韓国開発の合金K14合金、およびモノブロックやアルミニウムライナーに使用されるA390合金などがある。
ところが、このような過共晶合金は、高いSiの含量により鋳造性に劣るうえ、Si粒子のサイズおよび分布の調節が困難であり、耐衝撃性にも劣るという欠点がある。さらに、特殊開発された合金であって、一般アルミニウム合金に比べて価格が非常に高いという欠点もある。
次に、自動車部品用自己潤滑性アルミニウム合金としてはAl−Sn系合金がある。この合金の場合、スズ(Sn)を8〜15wt%も含有しており、微細組織上に自己潤滑性スズ(Sn)軟質粒子を生成させて摩擦を低減させる特徴を持っているため、主に摩擦の激しいところに使用される金属系ベアリング用原素材として用いられている。
しかしながら、本合金の場合、シリコン(Si)による強度補強効果にもかかわらず、150MPa以下の低い強度を持っているため、構造用部品には使用が不可能という欠点がある。
韓国特許公開第10−2008−0102560号明細書 特開2011−213511号公報
本発明が目的とするところは、過共晶Al−Si系合金の耐摩耗性およびAl−Sn系の自己潤滑特性を同時に有する新概念の自己潤滑特性をもつ高強度耐摩耗性合金を得るために、微細組織上に硬質粒子および軟質粒子を同時に有する複合微細組織新合金を提供することにある。
本発明の複合微細組織を有する耐摩耗性合金は、
亜鉛(Zn)9〜17wt%、スズ(Sn)5〜8wt%、シリコン(Si)9.4〜12.6wt%、及び残部のアルミニウム(Al)および不可避不純物からなる組成を持つことを特徴とする。
また、銅(Cu)1〜3wt%をさらに含む組成を持つことを特徴とする。
また、マグネシウム(Mg)0.3〜0.8wt%をさらに含む組成を持つことを特徴とする。
また、銅(Cu)1〜3wt%およびマグネシウム(Mg)0.3〜0.8wt%をさらに含む組成を持つことを特徴とする。
本発明の複合微細組織を有する耐摩耗性合金によれば、過共晶Al−Si系合金の耐摩耗性とAl−Sn系の自己潤滑特性とを同時に有する新概念の自己潤滑特性を有する高強度耐摩耗性合金を得ることができる。
本発明の一実施例に係る複合微細組織を有する耐摩耗性合金の軟質粒子による低摩擦特性を確認するための実施例および比較例に関するグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例に係る複合微細組織を有する耐摩耗性合金について説明する。
本発明は、アルミニウム組織内に硬質粒子と軟質粒子を同時に持つ、複合微細組織を有する新合金に関するものである。
一般に、アルミニウム合金において自己潤滑性粒子を生成させる合金元素としてはSn、Pb、Bi、Znなどがある。これらの元素は、アルミニウムとの化学的反応性がないため、金属間化合物を生成せず、相分離される独特な特性を持っている。さらに、相対的に低い融点を持っているため、摩擦の激しい条件で部分的に溶融されながら潤滑膜を形成する自己潤滑性を有する独特の特性を持つ。
自己潤滑性およびコストの観点からみると、前述した4つの化学元素のうち、Pbが最も良い自己潤滑性の粒子生成元素であるが、有害金属元素に分類され、自動車分野では使用が不可能な状況である。よって、SnがPbの代替元素として最も広く用いられており、一部ではBiを同一用途で使用している事例もある。
これに対し、Znは、SnとBiに比べて融点が高くて自己潤滑特性が大きく低下する欠点のため、相対的に多くの量を添加しなければならない欠点を持っているが、価格が非常に低いため、素材のコスト競争力を確保するために高価のSnまたはBiの含量を一部代替する軟質粒子生成元素として使用される。
次に、硬質粒子生成のための合金元素としてはSiとFeがある。SiとFeは、Alとの共晶反応(Eutectic reaction)特性を有し、特定含量以上で添加される場合には角付き形状の硬質粒子を生成する特性を持っている。Siは、アルミニウム合金において最も代表的な硬質粒子生成元素であって、Al−Si二元系合金において12.6wt%以上添加する場合には初晶Si粒子を生成し、耐摩耗性を有する特性を持っている。ところが、軟質粒子生成元素であるZnと共に添加される場合には、硬質粒子の生成のためにはZnの含量によってSiの含量が異なるが、例えばZnの含量が10wt%内外であれば、Siの含量は最小7wt%〜最大14wt%の範囲である。この際、最小量未満でSiが添加される場合には硬質粒子が生成されなくなり、最大量以上でSiが添加される場合には硬質粒子が大きくなりすぎて機械的物性および耐摩耗性に悪影響を及ぼすという問題点が発生する。
Feは、一般にAl−Si系合金では不純物として知られているが、SiのないAl−Fe二元系合金では、0.5wt%以上で添加される場合には耐摩耗性を有するAl−Fe系金属間化合物粒子を形成し、耐摩耗性を有する。反面、3wt%以上で添加される場合には金属間化合物が過度に生じて機械的性質が低下し、溶融点が上昇する問題点がある。
アルミニウム合金の基本強度補強のための合金元素としてCuとMgがある。Cuの場合、Alとの化学反応を介して金属間化合物を形成しかつ強度を高める効果を持つが、Cuの含量、合金の鋳造/冷却条件および熱処理条件によってその効果が異なる。Mgの場合、Si或いはZnとの化学反応を介して金属間化合物を形成しかつ強度を高める効果を持つが、Cuと同様に、含量、合金の鋳造/冷却条件および熱処理条件によってその効果が異なる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明に係るアルミニウム合金は、アルミニウム(Al)を主成分とし、ここに亜鉛(Zn)8〜17wt%、スズ(Sn)5〜8wt%、銅(Cu)1〜3wt%、マグネシウム(Mg)0.3〜0.8wt%、および硬質粒子を生成するシリコン(Si)9.4〜12.6wt%を添加したものである。
この際、前記亜鉛は、8wt%以下で添加される場合には軟質粒子であるZn相の生成量が少なくて十分な自己潤滑性を得ることが難しく、17wt%以上で添加される場合には合金の固相線が低くなりすぎて鋳造上不利である。
亜鉛(Zn)よりさらに強力な自己潤滑性を有するスズ(Sn)も、5wt%以下で添加される場合には軟質粒子であるSn相の生成量が少なくてZn相の足りない自己潤滑性を補完することが難しく、8wt%以上で添加される場合には合金の融点が低くなりすぎて商用素材として使用することが難しい欠点を持つ。
硬質粒子を生成するためのシリコン(Si)は、9.4%以下で添加される場合には硬質粒子たる初晶Siが十分に生成(0.5%未満)されないため耐摩耗性を確保することが難しく、12.6%以上で添加される場合には硬質粒子が過量(5%超過)生成されて粗大化されながらむしろ耐摩耗性および機械的性質に悪影響を及ぼす。
機械的性質の向上のために添加される銅(Cu)は、適正の機械的性質を確保するために1wt%以上添加しなければならないが、3wt%を超える場合にはその他元素と金属間化合物を生成し、機械的性質を低下させるおそれがあるから、その量を制限する。その代り、マグネシウム(Mg)を0.3wt%以上添加してさらなる機械的性質の向上を図ることができる。
また、マグネシウム(Mg)も、0.8wt%以上添加される場合には機械的性質に不利な化合物を形成するおそれがあるから、その量を制限する。
本発明に係るAl−Zn−Sn系合金における軟質粒子による低摩擦特性を確認するための実施例および比較例として、図1のグラフに示すように、ZnとSnの含量を変化させて合金を製造し、合金別摩擦係数の変化を観察した。
その結果、5wt%Snの条件で、実施例である5Sn−9Zn合金では要求される低摩擦特性(摩擦係数0.150以下)を、比較例である5Sn−5Zn合金と5Sn−7Zn合金では不満足な結果をそれぞれ得た。この結果より、最小Sn含量5wt%でZnが少なくとも8wt%以上添加されれば所望の低摩擦特性を得ることができることを確認した。さらにSn、Znの含量を高める場合にもすべて満足すべき低摩擦特性を得ることができた。
次に、耐摩耗性および機械的性質を評価するための比較例および実施例として、下記表1のようなAl−15Zn−5Sn−xSi系合金を製造し、評価を行った。
Figure 0006415089
表1におけるAl−15Zn−5Sn−xSi合金系をみると、Siの含量が9.2wt%である比較例の場合、硬質粒子であるSi粒子が0.3%しか生成されないため十分な摩耗性を得ることが難しいが、Siの含量が9.4〜12.6wt%である実施例の場合、 硬質粒子が最大5%まで生成されて十分な耐摩耗性を確保することができることを確認した。ところが、Siが12.8wt%以上添加されて5%超過の初晶Si粒子が生成される場合、Si粒子の粗大化および偏析の問題が大きいと判断されるので、その量を制限する。
該当範囲内ではSiの含量を問わず290〜300MPaの強度を有するものと確認され、構造材として使用するには無理がないことが分かる。
一方、本発明の他の実施例に係る複合微細組織を有する耐摩耗性合金は、亜鉛(Zn)8〜17wt%、ビスマス(Bi)5〜8wt%およびシリコン(Si)9.4〜12.6wt%を含有し、残部がアルミニウム(Al)および不可避不純物からなる組成を持ってもよい。スズ(Sn)と同様に、ビスマス(Bi)の場合も、強力な自己潤滑性材料であって、スズ(Sn)の代用として使用できる。
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。

Claims (4)

  1. 亜鉛(Zn)9〜17wt%、スズ(Sn)5〜8wt%、シリコン(Si)9.4〜12.6wt%、及び残部のアルミニウム(Al)および不可避不純物からなる組成を持つことを特徴とする複合微細組織を有する耐摩耗性合金。
  2. 銅(Cu)1〜3wt%をさらに含む組成を持つことを特徴とする請求項1に記載の複合微細組織を有する耐摩耗性合金。
  3. マグネシウム(Mg)0.3〜0.8wt%をさらに含む組成を持つことを特徴とする請求項1に記載の複合微細組織を有する耐摩耗性合金。
  4. 銅(Cu)1〜3wt%およびマグネシウム(Mg)0.3〜0.8wt%をさらに含む組成を持つことを特徴とする請求項1に記載の複合微細組織を有する耐摩耗性合金。
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