JP6415033B2 - キャリア付銅箔、銅張積層板の製造方法、及び、プリント配線板の製造方法 - Google Patents

キャリア付銅箔、銅張積層板の製造方法、及び、プリント配線板の製造方法 Download PDF

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本発明は、キャリア付銅箔、キャリア付銅箔の製造方法、プリント配線板、プリント回路板、銅張積層板、及び、プリント配線板の製造方法に関し、特に、ファインパターン用のプリント配線基板の製造時に用いるキャリア付銅箔、キャリア付銅箔の製造方法、プリント配線板、プリント回路板、銅張積層板、及び、プリント配線板の製造方法に関する。
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められており、特にプリント配線板上にICチップを載せる場合、L(ライン)/S(スペース)=20μm/20μm以下のファインピッチ化が求められている。
プリント配線板はまず、銅箔とガラスエポキシ基板、BT樹脂、ポリイミドフィルムなどを主とする絶縁基板を貼り合わせた銅張積層体として製造される。貼り合わせは、絶縁基板と銅箔を重ね合わせて加熱加圧させて形成する方法(ラミネート法)、または、絶縁基板材料の前駆体であるワニスを銅箔の被覆層を有する面に塗布し、加熱・硬化する方法(キャスティング法)が用いられる。
ファインピッチ化に伴って銅張積層体に使用される銅箔の厚みも9μm、さらには5μm以下になるなど、箔厚が薄くなりつつある。ところが、箔厚が9μm以下になると前述のラミネート法やキャスティング法で銅張積層体を形成するときのハンドリング性が極めて悪化する。そこで、厚みのある金属箔をキャリアとして利用し、これに剥離層を介して極薄銅層を形成したキャリア付銅箔が登場している。極薄銅層の表面を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後に、キャリアを剥離層を介して剥離するというのがキャリア付銅箔の一般的な使用方法である。
従来、キャリア箔の表面に、拡散防止層、剥離層、電気銅めっきをこの順番に形成し、剥離層としてCrまたはCr水和酸化物層を、拡散防止層としてNi、Co、Fe、Cr、Mo、Ta、Cu、Al、Pの単体または合金を用いることで加熱プレス後の良好な剥離性を保持する方法が特許文献1に開示されている。
または、剥離層としてCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pまたはこれらの合金またはこれらの水和物で形成することが知られている。更に、加熱プレス等の高温使用環境における剥離性の安定化を図る上で、剥離層の下地にNi、Feまたはこられの合金層をもうけると効果的であることが特許文献2および3に記載されている。
特開2006−022406号公報 特開2010−006071号公報 特開2007−007937号公報
キャリア付銅箔においては、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅箔が容易に剥離してはならず、一方、絶縁基板への積層工程後に極薄銅箔からキャリアが容易に剥離する必要がある。また、積層後に極薄銅箔からキャリアを剥離した後、極薄銅箔上にセミアディティブ法で回路を形成するため、良好なエッチング性を保持させるために有機物やエッチングされ難い金属および金属酸化物、金属水和酸化物の存在量を低減させる必要がある。
特許文献1については、加熱プレス後の剥離性は良好であるが、極薄銅箔表面の状態に関しては言及されていない。
また、同特許文献では、拡散防止層と剥離層の順番はどちらでも良いと記載されているが、記載の実施例は全てキャリア箔、剥離層、拡散防止層、電気銅めっきの順番であり、剥離の際に剥離層/拡散防止層界面は剥離する恐れがある。そうなると電気銅めっき(極薄銅層)の表面に拡散防止層が残り、回路を形成する際のエッチング不良に繋がる。
特許文献2、3については、キャリア/極薄銅箔間の剥離強度等の特性を十分に検討したと考えられる記載が見られず、未だ改善の余地が残っている。
そこで、本発明は、絶縁基板への積層工程前にはキャリアと極薄銅箔の密着力が高い一方で、絶縁基板への積層工程によるキャリアと極薄銅箔の密着性の極端な上昇や低下がなく、キャリア/極薄銅箔界面で容易に剥離でき、かつ極薄銅箔のエッチング性が良好なキャリア付銅箔提供することを課題とする。
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ねたところ、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がしたときの、極薄銅層の剥離側表面のNiの量を制御することが、キャリア/極薄銅箔界面での剥離性及び極薄銅箔のエッチング性の向上に極めて効果的であることを見出した。
本発明は上記知見を基礎として完成したものであり、一側面において、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層表面には粗化処理層が形成され、前記極薄銅層の粗化処理層表面を非接触式粗さ計で測定したRzが1.6μm以下であり、前記中間層はNiを含み、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のクロムの原子濃度(%)をe(x)とし、亜鉛の原子濃度(%)をf(x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の合計原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の原子濃度(%)をk(x)とすると、
前記極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が5.0%以下を満たすキャリア付銅箔である。
本発明は別の一側面において、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層表面には粗化処理層が形成され、前記極薄銅層の粗化処理層表面を非接触式粗さ計で測定したRaが0.3μm以下であり、前記中間層はNiを含み、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のクロムの原子濃度(%)をe(x)とし、亜鉛の原子濃度(%)をf(x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の合計原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の原子濃度(%)をk(x)とすると、
前記極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が5.0%以下を満たすキャリア付銅箔である。
本発明は更に別の一側面において、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層表面には粗化処理層が形成され、前記極薄銅層の粗化処理層表面を非接触式粗さ計で測定したRtが2.3μm以下であり、前記中間層はNiを含み、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のクロムの原子濃度(%)をe(x)とし、亜鉛の原子濃度(%)をf(x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の合計原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の原子濃度(%)をk(x)とすると、前記極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が5.0%以下を満たすキャリア付銅箔である。
本発明は更に別の一側面において、キャリア上に、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層を形成した後、クロム、クロム合金またはクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層を形成し、少なくとも前記ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、または、クロム、クロム合金またはクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層のいずれかに亜鉛が含まれている中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む本発明のキャリア付銅箔の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、キャリア上に、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層を形成した後、クロム、クロム合金またはクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層を形成し、少なくとも前記ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、または、クロム、クロム合金またはクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層のいずれかに亜鉛が含まれている中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む本発明のキャリア付銅箔の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、キャリア上に、ニッケルおよび亜鉛を含むめっき層を形成した後、クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む本発明のキャリア付銅箔の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、キャリア上に、ニッケルを含むめっき層を形成した後、クロムと亜鉛を含むめっき層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む本発明のキャリア付銅箔の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、キャリア上に、ニッケルおよび亜鉛を含むめっき層を形成した後、クロムと亜鉛を含むめっき層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む本発明のキャリア付銅箔の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、キャリア上に、ニッケルめっき層を形成した後、電解クロメートにより亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する、又は、ニッケル-亜鉛合金めっき層を形成した後、電解クロメートにより純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層を形成することで中間層を形成する工程と、前記中間層上に電解めっきにより極薄銅層を形成する工程とを含む本発明のキャリア付銅箔の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いて製造したプリント配線板である。
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いて製造したプリント回路板である。
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いて製造した銅張積層板である。
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法である。
本発明によれば、絶縁基板への積層工程前にはキャリアと極薄銅箔の密着力が高い一方で、絶縁基板への積層工程によるキャリアと極薄銅箔の密着性の極端な上昇や低下がなく、キャリア/極薄銅箔界面で容易に剥離でき、かつ極薄銅箔のエッチング性が良好なキャリア付銅箔提供することができる。
A〜Cは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、回路めっき・レジスト除去までの工程における配線板断面の模式図である。 D〜Fは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、樹脂及び2層目キャリア付銅箔積層からレーザー穴あけまでの工程における配線板断面の模式図である。 G〜Iは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、ビアフィル形成から1層目のキャリア剥離までの工程における配線板断面の模式図である。 J〜Kは、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例に係る、フラッシュエッチングからバンプ・銅ピラー形成までの工程における配線板断面の模式図である。 実施例における回路パターンの幅方向の横断面の模式図、及び、該模式図を用いたエッチングファクター(EF)の計算方法の概略である。 実施例5の極薄薄銅表面(基板圧着前)の深さ方向のプロファイルである。 実施例5の極薄薄銅表面(基板圧着後)の深さ方向のプロファイルである。 比較例5の極薄薄銅表面(基板圧着前)の深さ方向のプロファイルである。 比較例6の極薄薄銅表面(基板圧着後)の深さ方向のプロファイルである。 原子濃度の積分方法を説明するための概略図である。
<キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有する。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板、プリント回路板、又は、銅張積層板等を製造することができる。
キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がしたときに、極薄銅層の中間層側の表面に残存するNiの量が多いと、極薄銅層がエッチングされ難くなり、ファインピッチ回路を形成することが困難となる。このため、本発明のキャリア付銅箔は、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のクロムの原子濃度(%)をe(x)とし、亜鉛の原子濃度(%)をf(x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の合計原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の原子濃度(%)をk(x)とすると、極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx +∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が5.0%以下を満たすように制御されている。当該Ni量が、区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が5.0%を超えると、極薄銅層をエッチングして、L/S=20μm/20μmよりも微細な配線、例えばL/S=15μm/15μmの微細な配線を形成することが困難となり、極薄銅箔のエッチング性が不良となる。また、区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が3.0%以下を満たすように制御されているのが好ましく、2.0%以下を満たすと更に好ましく、1.0%以下を満たすと更に好ましい。このような構成によれば、エッチング性がさらに良好となる。
本発明のキャリア付銅箔は、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が1.0%以下を満たすように制御されているのが好ましい。このような構成によれば、エッチング性がさらに良好となる。
上記のようなキャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が少な過ぎると、キャリアのCuが極薄銅層側へ拡散する場合がある。そのような場合は、キャリアと極薄銅層の結合の程度が強くなり過ぎてしてしまい、極薄銅層を剥がす際に極薄銅層にピンホールが発生しやすくなる。このため、当該Ni量は、区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.1%以上5.0%以下、且つ、区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.1%以上1.0%以下を満たすように制御されているのが好ましい。また、当該Ni量は、区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.2%以上4.0%以下、且つ、区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.2%以上0.8%以下を満たすように制御されているのがより好ましい。さらに、当該Ni量は、区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.5%以上3.0%以下、且つ、区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.3%以上0.7%以下を満たすように制御されているのがより好ましい。
また、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、極薄銅層の表面のCr量が少なすぎると、極薄銅箔の表面が酸化変色する恐れがある。極薄銅層の中間層側のXPSによる表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫e(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が2.0%以下を満たすのが好ましい。さらに、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、極薄銅層の中間層側のXPSによる表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫e(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.1%以上2.0%以下を満たすのがより好ましく、0.2%以上1.0%以下を満たすのがさらにより好ましい。
本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件化で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のクロムの原子濃度(%)をe(x)とし、亜鉛の原子濃度(%)をf(x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の合計原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の原子濃度(%)をk(x)とすると、極薄銅層の中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が20.0%以下を満たすように制御されているのが好ましく、15%以下を満たすように制御されているのがより好ましく、10%以下を満たすように制御されているのが更により好ましく、5%以下を満たすように制御されているのが更により好ましい。また、本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件化で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のクロムの原子濃度(%)をe(x)とし、亜鉛の原子濃度(%)をf(x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の合計原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の原子濃度(%)をk(x)とすると、極薄銅層の中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が10.0%以下を満たすように制御されているのが好ましく、7%以下を満たすように制御されているのがより好ましく、5%以下を満たすように制御されているのが更により好ましく、3%以下を満たすように制御されているのが更により好ましい。キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングするが、このとき、極薄銅層の中間層側の表面に残存するNiの量が多いと、極薄銅層がエッチングされ難くなり、ファインピッチ回路を形成することが困難となる。このため、本発明のキャリア付銅箔は、上記のような剥離後の極薄銅層の表面のNi量が制御されている。当該Ni量が、区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が20.0%を超える、或いは、区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が10.0%を超えると、極薄銅層をエッチングして、L/S=20μm/20μmよりも微細な配線、例えばL/S=15μm/15μmの微細な配線を形成することが困難となることがあり、極薄銅箔のエッチング性が不良となる可能性がある。なお、「220℃×2時間の条件化で熱圧着」は、キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着する場合の典型的な加熱条件を示している。
上記のような熱圧着したキャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が少な過ぎると、キャリアのCuが極薄銅層側へ拡散する場合がある。そのような場合は、キャリアと極薄銅層の結合の程度が強くなり過ぎてしてしまい、極薄銅層を剥がす際に極薄銅層にピンホールが発生しやすくなる。このため、当該Ni量は、区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が1.0%以上20.0%以下を満たすように制御されているのが好ましく、2.0%以上18.0%以下を満たすように制御されているのがより好ましく、3.0%以上15.0%以下を満たすように制御されているのが更により好ましい。また、当該Ni量は、区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が1.0%以上10.0%以下を満たすように制御されているのが好ましく、∫g(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が2.0%以上8.0%以下を満たすように制御されているのがより好ましく、3.0%以上7.0%以下を満たすように制御されているのが更により好ましい。
また、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件化で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側のXPSによる表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫e(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が3.0%以下を満たすのが好ましく、2.0%以下を満たすのが更に好ましく、1.0%以下を満たすのが更により好ましい。さらに、極薄銅層の表面のCr量が少なすぎると、極薄銅箔の表面が酸化変色する恐れがあるため、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件化で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、極薄銅層の中間層側のXPSによる表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫e(x)dx/(∫e(x)dx +∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.1%以上3.0%以下を満たすのがより好ましく、0.2%以上1.5%以下を満たすのがさらにより好ましい。
なお、上記各元素の濃度の積分値は、台形公式により求めた。
以下台形公式による濃度の積分方法を説明する。ここではニッケルの原子濃度を中間層表面からの深さ方向分析の区間[0.0、4.0]において積分することを例に挙げて説明する。また、説明を簡潔にするため、区間[0.0、4.0]において6点測定した場合を例に挙げて説明する。図10に、原子濃度の積分方法を説明するための概略図を示す。
図10は横軸を中間層表面からの深さx(nm)とし、縦軸をニッケル原子濃度(at%)としたグラフである。点a、b、c、d、e、fはそれぞれ中間層表面からの深さl、k、j、i、h、g(nm)におけるニッケル原子濃度の測定結果を示す。
図10に示すように、XPSにより、中間層表面からの深さ方向分析の区間[0.0、4.0]において数点の所定深さ(l〜g)でそれぞれニッケルの原子濃度を測定する。そして、台形abklの面積S1、台形bcjkの面積S2、台形cdijの面積S3、台形dehiの面積S4、台形efghの面積S5を求める。そして、S1からS5までの合計の面積の値が中間層表面からの深さ方向分析の区間[0.0、4.0]におけるニッケルの原子濃度の積分値∫g(x)dxとする。すなわち、中間層表面からの深さ方向分析の区間[0.0、4.0]における∫g(x)dx=S1+S2+S3+S4+S5として算出した。
ここで、例えば、台形abklの面積S1は{(点aのニッケルの原子濃度(at%))+(点bのニッケルの原子濃度(at%))}×(点a、b間の深さx1(nm))/2によって求める。同様にして、台形bcjkの面積S2、台形cdijの面積S3、台形dehiの面積S4、台形efghの面積S5の面積を求める。
なお、点aは中間層表面からの深さ0.0nmに最も近い深さlのニッケル原子濃度の測定結果であり、点fは中間層表面からの深さ4.0nmに最も近い深さgのニッケル原子濃度の測定結果である。
各点の測定間隔(図10ではx1、x2、x3、x4、x5)の好ましい値は0.10〜0.30nm(SiO2換算)である。
従って、区間[0.0、4.0]という場合は、積分を開始する深さが0.0nm(SiO2換算)(つまり分析対象物の表面)であり、積分を終了する深さが4.0nm(SiO2換算)(表面から4.0nmの深さ)であることを意味する。同様に、区間[4.0、12.0]という場合は、積分を開始する深さが4.0nm(SiO2換算)(表面から4.0nmの深さ)であり、積分を終了する深さが12.0nm(SiO2換算)(表面から12.0nmの深さ)であることを意味する。
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム(例えばポリイミドフィルム、液晶ポリマー(LCP)フィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等)の形態で提供される。
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供することができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば12μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。
<中間層>
キャリアの片面又は両面上にはNiを含む中間層を設ける。なお、キャリアと中間層との間に他の層を設けてもよい。
中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されているのが好ましい。そして、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及び/または、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層に亜鉛が含まれているのが好ましい。ここで、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム合金とはクロムと、コバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。クロム合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層はクロメート処理層であってもよい。ここでクロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、純クロメート処理層や亜鉛クロメート処理層等が挙げられる。本発明においては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層を純クロメート処理層という。また、本発明においては無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層を亜鉛クロメート処理層という。
また、中間層は、キャリア上にニッケル、ニッケル-亜鉛合金、ニッケル-リン合金、ニッケル-コバルト合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されているのが好ましく、中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケル-亜鉛合金層、及び、亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されている、又は、ニッケル-亜鉛合金層、及び、純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されているのが更に好ましい。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロメート処理層との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。また、中間層にクロムめっきではなくクロメート処理層を形成するのが好ましい。クロムめっきは表面に緻密なクロム酸化物層を形成するため、電気めっきで極薄銅箔を形成する際に電気抵抗が上昇し、ピンホールが発生しやすくなる。クロメート処理層を形成した表面は、クロムめっきとくらべ緻密ではないクロム酸化物層が形成されるため、極薄銅箔を電気めっきで形成する際の抵抗になりにくく、ピンホールを減少させることができる。ここで、クロメート処理層として、亜鉛クロメート処理層を形成することにより、極薄銅箔を電気めっきで形成する際の抵抗が、通常のクロメート処理層より低くなり、よりピンホールの発生を抑制することができる。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
中間層のうちクロメート処理層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。ニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)を設けずにクロメート処理層をキャリアと極薄銅層の境界に存在させた場合は、剥離性はほとんど向上しないし、クロメート処理層がなくニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)と極薄銅層を直接積層した場合は、ニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)におけるニッケル量に応じて剥離強度が強すぎたり弱すぎたりして適切な剥離強度は得られない。
また、クロメート処理層がキャリアとニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)の境界に存在すると、極薄銅層の剥離時に中間層も付随して剥離されてしまう、すなわちキャリアと中間層の間で剥離が生じてしまうので好ましくない。このような状況は、キャリアとの界面にクロメート処理層を設けた場合のみならず、極薄銅層との界面にクロメート処理層を設けたとしてもクロム量が多すぎると生じ得る。これは、銅とニッケルは固溶しやすいので、これらが接触していると相互拡散によって接着力が高くなり剥離しにくくなる一方で、クロムと銅は固溶しにくく、相互拡散が生じにくいので、クロムと銅の界面では接着力が弱く、剥離しやすいことが原因と考えられる。また、中間層のニッケル量が不足している場合、キャリアと極薄銅層の間には微量のクロムしか存在しないので両者が密着して剥がれにくくなる。
中間層のニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル-亜鉛合金層)は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。なお、キャリアが樹脂フィルムの場合には、CVD及びPDVのような乾式めっきまたは無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっきにより中間層を形成することができる。
また、クロメート処理層は、例えば電解クロメートや浸漬クロメート等で形成することができるが、クロム濃度を高くすることができ、キャリアからの極薄銅層の剥離強度が良好となるため、電解クロメートで形成するのが好ましい。
また、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2、クロムの付着量が5〜100μg/dm2、亜鉛の付着量が1〜70μg/dm2であるのが好ましい。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する金属種(Cr、Zn)を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、中間層のNi含有量は、100〜40000μg/dm2であるのが好ましく、200μg/dm2以上20000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、500μg/dm2以上10000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、700μg/dm2以上5000μg/dm2以下であるのが更に好ましい。また、Crは5〜100μg/dm2含有するのが好ましく、8μg/dm2以上50μg/dm2以下であるのが更に好ましく、10μg/dm2以上40μg/dm2以下であるのが更に好ましく、12μg/dm2以上30μg/dm2以下であるのが更に好ましい。Znは1〜70μg/dm2含有するのが好ましく、3μg/dm2以上30μg/dm2以下であるのが更に好ましく、5μg/dm2以上20μg/dm2以下であるのが更に好ましい。
本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層、及び、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2であってもよい。なお、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でもよい。また、本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上に窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2であってもよい。なお、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でもよい。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、中間層のNi含有量は、100〜40000μg/dm2であるのが好ましく、200μg/dm2以上20000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、300μg/dm2以上10000μg/dm2以下であるのが更に好ましく、500μg/dm2以上5000μg/dm2以下であるのが更に好ましい。また、当該窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物としては、BTA(ベンゾトリアゾール)、MBT(メルカプトベンゾチアゾール)等が挙げられる。
また、中間層が含有する有機物としては、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いることが好ましい。窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物は、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的な窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
カルボン酸としては、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
前述の有機物は厚みで25nm以上80nm以下含有するのが好ましく、30nm以上70nm以下含有するのがより好ましい。中間層は前述の有機物を複数種類(一種以上)含んでもよい。
なお、有機物の厚みは以下のようにして測定することができる。
<中間層の有機物厚み>
キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とすることができる。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO2換算)
中間層が含有する有機物の使用方法について、以下に、キャリア箔上への中間層の形成方法についても述べつつ説明する。キャリア上への中間層の形成は、上述した有機物を溶媒に溶解させ、その溶媒中にキャリアを浸漬させるか、中間層を形成しようとする面に対するシャワーリング、噴霧法、滴下法及び電着法等を用いて行うことができ、特に限定した手法を採用する必要性はない。このときの溶媒中の有機系剤の濃度は、上述した有機物の全てにおいて、濃度0.01g/L〜30g/L、液温20〜60℃の範囲が好ましい。有機物の濃度は、特に限定されるものではなく、本来濃度が高くとも低くとも問題のないものである。なお、有機物の濃度が高いほど、また、上述した有機物を溶解させた溶媒へのキャリアの接触時間が長いほど、中間層の有機物厚みは大きくなる傾向にある。そして、中間層の有機物厚みが厚い場合、Niの極薄銅層側への拡散を抑制するという、有機物の効果が大きくなる傾向にある。また、中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金とがこの順で積層されて構成されていることが好ましい。ニッケルと銅との接着力は、モリブデンまたはコバルトと銅との接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。
なお、前述のニッケルはニッケルを含む合金であっても良い。ここで、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。また、前述のモリブデンはモリブデンを含む合金であっても良い。ここで、モリブデンを含む合金とはモリブデンと、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。また、前述のコバルトはコバルトを含む合金であっても良い。ここで、コバルトを含む合金とはコバルトと、モリブデン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。
モリブデン−コバルト合金はモリブデン、コバルト以外の元素(例えばコバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素)を含んでも良い。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
中間層のうちモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。ニッケル層を設けずにモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層をキャリアと極薄銅層の境界に存在させた場合は、剥離性はほとんど向上しない場合があり、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層がなくニッケル層と極薄銅層を直接積層した場合はニッケル層におけるニッケル量に応じて剥離強度が強すぎたり弱すぎたりして適切な剥離強度は得られない場合がある。
また、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層がキャリアとニッケル層の境界に存在すると、極薄銅層の剥離時に中間層も付随して剥離されてしまう場合がある、すなわちキャリアと中間層の間で剥離が生じてしまうので好ましくない場合がある。このような状況は、キャリアとの界面にモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けた場合のみならず、極薄銅層との界面にモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けたとしてもモリブデン量またはコバルト量が多すぎると生じ得る。これは、銅とニッケルとは固溶しやすいので、これらが接触していると相互拡散によって接着力が高くなり剥離しにくくなる一方で、モリブデンまたはコバルトと銅とは固溶しにくく、相互拡散が生じにくいので、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層と銅との界面では接着力が弱く、剥離しやすいことが原因と考えられる。また、中間層のニッケル量が不足している場合、キャリアと極薄銅層の間には微量のモリブデンまたはコバルトしか存在しないので両者が密着して剥がれにくくなる場合がある。
中間層のニッケル及びコバルトまたはモリブデン−コバルト合金は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。また、モリブデンはCVD及びPDVのような乾式めっきのみにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。
中間層において、ニッケルの付着量は100〜40000μg/dm2であり、モリブデンの付着量は10〜1000μg/dm2であり、コバルトの付着量は10〜1000μg/dm2である。上述のように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後の極薄銅層の表面のNi量が制御されているが、このように剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御するためには、中間層のNi付着量を少なくするとともに、Niが極薄銅層側へ拡散するのを抑制する金属種(Co、Mo)を中間層が含んでいることが好ましい。このような観点から、ニッケル付着量は100〜40000μg/dm2とすることが好ましく、200〜20000μg/dm2とすることが好ましく、300〜15000μg/dm2とすることがより好ましく、300〜10000μg/dm2とすることがより好ましい。中間層にモリブデンが含まれる場合には、モリブデン付着量は10〜1000μg/dm2とすることが好ましく、モリブデン付着量は20〜600μg/dm2とすることが好ましく、30〜400μg/dm2とすることがより好ましい。中間層にコバルトが含まれる場合には、コバルト付着量は10〜1000μg/dm2とすることが好ましく、コバルト付着量は20〜600μg/dm2とすることが好ましく、30〜400μg/dm2とすることがより好ましい。
なお、上述のように中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金とがこの順で積層した場合には、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層を設けるためのめっき処理での電流密度を低くし、キャリアの搬送速度を遅くするとモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層の密度が高くなる傾向にある。モリブデン及び/またはコバルトを含む層の密度が高くなると、ニッケル層のニッケルが拡散し難くなり、剥離後の極薄銅層表面のNi量を制御することができる。
<ストライクめっき>
中間層の上には極薄銅層を設ける。その前に極薄銅層のピンホールを低減させるために銅−リン合金によるストライクめっきを行ってもよい。ストライクめっきにはピロリン酸銅めっき液などが挙げられる。
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。なお、中間層と極薄銅層との間には他の層を設けてもよい。
極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には2〜5μmである。
<粗化処理>
極薄銅層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設ける。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理層は、ファインピッチ形成の観点から微細な粒子で構成されるのが好ましい。粗化粒子を形成する際の電気めっき条件について、電流密度を高く、めっき液中の銅濃度を低く、又は、クーロン量を大きくすると粒子が微細化する傾向にある。
粗化処理層は、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる電着粒で構成することができる。
また、粗化処理をした後、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子及び/又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。
粗化処理等の各種表面処理を施した後の極薄銅層の表面(「粗化処理面」ともいう。)は、非接触式粗さ計で測定したときにRz(十点平均粗さ)を1.6μm以下とすることがファインピッチ形成の観点で極めて有利となる。Rzは好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.4μm以下であり、更により好ましくは1.3μm以下である。但し、Rzは、小さくなりすぎると樹脂との密着力が低下することから、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
粗化処理等の各種表面処理を施した後の極薄銅層の表面(「粗化処理面」ともいう。)は、非接触式粗さ計で測定したときにRa(算術平均粗さ)を0.30μm以下とすることがファインピッチ形成の観点で極めて有利となる。Raは好ましくは0.27μm以下、0.26μm以下、0.24μm以下、より好ましくは0.23μm以下であり、更により好ましくは0.20μm以下である。但し、Raは、小さくなりすぎると樹脂との密着力が低下することから、0.005μm以上であることが好ましく、0.009μm以上、0.01μm以上、0.02μm以上であることがより好ましい。
粗化処理等の各種表面処理を施した後の極薄銅層の表面(「粗化処理面」ともいう。)は、非接触式粗さ計で測定したときにRtを2.3μm以下とすることがファインピッチ形成の観点で極めて有利となる。Rtは好ましくは2.2μm以下、好ましくは2.1μm以下、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.9μm以下であり、より好ましくは1.8μm以下であり、更により好ましくは1.5μm以下である。但し、Rtは、小さくなりすぎると樹脂との密着力が低下することから、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
また、粗化処理等の各種表面処理を施した後の極薄銅層の表面は、非接触式粗さ計で測定したときにSsk(スキューネス)を−0.3〜0.3とすることがファインピッチ形成の観点で好ましい。Sskは好ましくは−0.2〜0.2であり、より好ましくは−0.1〜0.1である。
また、粗化処理等の各種表面処理を施した後の極薄銅層の表面は、非接触式粗さ計で測定したときにSku(クルトシス)を2.7〜3.3とすることがファインピッチ形成の観点で好ましい。Skuは好ましくは2.8〜3.2であり、より好ましくは2.9〜3.1である。
本発明において、極薄銅層表面のRz、Raの粗さパラメータについてはJIS B0601−1994に準拠して、Rtの粗さパラメータについてはJIS B0601−2001に準拠して、Ssk、Skuの粗さパラメータについてはISO25178ドラフトに準拠して非接触式粗さ計で測定する。
なお、プリント配線板または銅張積層板など、極薄銅層表面に樹脂などの絶縁基板が接着されている場合においては、絶縁基板を溶かして除去することで、銅回路または銅箔表面について、前述の表面粗さ(Ra、Rt、Rz)を測定することができる。
ファインピッチ形成のためには、粗化粒子層のエッチング量を減少させるために、粗化処理面の体積を制御することも重要である。ここでいう体積とは、レーザー顕微鏡にて測定される値を指し、粗化処理面に存在する粗化粒子の体積を評価する指標となる。粗化処理面の体積が大きい場合、極薄銅層と樹脂との密着力が高くなる傾向にある。そして、極薄銅層と樹脂との密着力が高くなると耐マイグレーション性が向上する傾向にある。具体的には、体積は粗化処理面の面積66524μm2当たり300000μm3以上であるのが好ましく、350000μm3以上であるのがより好ましい。但し、体積が大きくなり過ぎるとエッチング量が増加し、ファインピッチを形成できないことから、体積は500000μm3以下とするのが好ましく、450000μm3以下とするのがより好ましい。
更に、ファインピッチ形成のためには、微細粗化粒子による樹脂との密着性を確保するために、粗化処理面の表面積比を制御することも重要である。ここでいう表面積比とは、レーザー顕微鏡にて測定される値であって、エリア及び実エリアを測定したときの、実エリア/エリアの値である。エリアとは測定基準面積を指し、実エリアとは測定基準面積中の表面積を指す。表面積比は大きくなりすぎると密着強度が増すがエッチング量が増加しファインピッチが形成できない一方で、小さくなりすぎると密着強度が確保できないので、1.05〜1.5であることが好ましく、1.07〜1.47であることが好ましく、1.09〜1.4であることが好ましく、1.1〜1.3であることがより好ましい。
<プリント配線板、プリント回路板及び銅張積層板>
キャリア付銅箔を極薄銅層側から絶縁樹脂板に貼り付けて熱圧着させ、キャリアを剥がすことで銅張積層板を作製することができる。また、その後、極薄銅層部分をエッチングすることにより、プリント配線板やプリント回路板の銅回路を形成することができる。ここで用いる絶縁樹脂板はプリント配線板やプリント回路板に適用可能な特性を有するものであれば特に制限を受けないが、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等を使用する事ができる。このようにして作製したプリント配線板、プリント回路板、銅張積層板は、搭載部品の高密度実装が要求される各種電子部品に搭載することができる。
また、銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に中間層が積層され、中間層の上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔は、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群のから選択された層を一つ以上備えても良い。
また、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えても良い。
また、前記キャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。
前記樹脂層は接着用樹脂、すなわち接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ状態)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。前記樹脂層は公知の樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでよい。また、前記樹脂層は例えば国際公開番号WO2008/004399号、国際公開番号WO2008/053878、国際公開番号WO2009/084533、特開平11−5828号、特開平11−140281号、特許第3184485号、国際公開番号WO97/02728、特許第3676375号、特開2000−43188号、特許第3612594号、特開2002−179772号、特開2002−359444号、特開2003−304068号、特許第3992225、特開2003−249739号、特許第4136509号、特開2004−82687号、特許第4025177号、特開2004−349654号、特許第4286060号、特開2005−262506号、特許第4570070号、特開2005−53218号、特許第3949676号、特許第4178415号、国際公開番号WO2004/005588、特開2006−257153号、特開2007−326923号、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、特開2009−67029号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、特開2009−173017号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、国際公開番号WO2008/114858、国際公開番号WO2009/008471、特開2011−14727号、国際公開番号WO2009/001850、国際公開番号WO2009/145179、国際公開番号WO2011/068157、特開2013−19056号に記載されている物質(樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等)および/または樹脂層の形成方法、形成装置を用いて形成してもよい。
また、前記樹脂層は、その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリマレイミド化合物、マレイミド系樹脂、芳香族マレイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、ゴム性樹脂、ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボン酸の無水物、多価カルボン酸の無水物、架橋可能な官能基を有する線状ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、リン含有フェノール化合物、ナフテン酸マンガン、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパン、ポリフェニレンエーテル−シアネート系樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、シアノエステル樹脂、フォスファゼン系樹脂、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂、イソプレン、水素添加型ポリブタジエン、ポリビニルブチラール、フェノキシ、高分子エポキシ、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ビスフェノール、ブロック共重合ポリイミド樹脂およびシアノエステル樹脂の群から選択される一種以上を含む樹脂を好適なものとして挙げることができる。
また前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。また、前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましい。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン化合物、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができ、又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。
前記リン含有エポキシ樹脂として公知のリンを含有するエポキシ樹脂を用いることができる。また、前記リン含有エポキシ樹脂は例えば、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
この9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドにナフトキノンやハイドロキノンを反応させて、以下の化1(HCA−NQ)又は化2(HCA−HQ)に示す化合物とした後に、そのOH基の部分にエポキシ樹脂を反応させてリン含有エポキシ樹脂としたものである。
上述の化合物を原料として得られた前記E成分であるリン含有エポキシ樹脂は、以下に示す化3〜化5のいずれかに示す構造式を備える化合物の1種又は2種を混合して用いることが好ましい。半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に難燃性効果が高いためである。
また、前記ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂として、公知のブロム化(臭素化)されているエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、前記ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂は分子内に2以上のエポキシ基を備えるテトラブロモビスフェノールAからの誘導体として得られる化6に示す構造式を備える臭素化エポキシ樹脂、以下に示す化7に示す構造式を備える臭素化エポキシ樹脂の1種又は2種を混合して用いることが好ましい。
前記マレイミド系樹脂または芳香族マレイミド樹脂またはマレイミド化合物またはポリマレイミド化合物としては、公知のマレイミド系樹脂または芳香族マレイミド樹脂またはマレイミド化合物またはポリマレイミド化合物を用いることができる。例えばマレイミド系樹脂または芳香族マレイミド樹脂またはマレイミド化合物またはポリマレイミド化合物としては4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン並びに上記化合物と、上記化合物またはその他の化合物とを重合させたポリマー等の使用が可能である。また、前記マレイミド系樹脂は、分子内に2個以上のマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂であってもよく、分子内に2個以上のマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂とポリアミンまたは芳香族ポリアミンとを重合させた重合付加物であってもよい。
前記ポリアミンまたは芳香族ポリアミンとしては、公知のポリアミンまたは芳香族ポリアミンを用いることができる。例えば、ポリアミンまたは芳香族ポリアミンとして、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、2,6−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3−メチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、1,3−ビス[4−アミノフェノキシ]ベンゼン、3−メチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジクロロ−4−アミノフェニル)プロパン、ビス(2,3−ジメチル−4−アミノフェニル)フェニルエタン、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン並びに上記化合物と、上記化合物またはその他の化合物とを重合させたポリマー等を用いることができる。また、公知のポリアミンおよび/または芳香族ポリアミンまたは前述のポリアミンまたは芳香族ポリアミンを一種または二種以上用いることができる。
前記フェノキシ樹脂としては公知のフェノキシ樹脂を用いることができる。また、前記フェノキシ樹脂として、ビスフェノールと2価のエポキシ樹脂との反応により合成されるものを用いることができる。エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂および/または前述のエポキシ樹脂を用いることができる。
前記ビスフェノールとしては、公知のビスフェノールを使用することができ、またビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、HCA(9,10−Dihydro−9−Oxa−10−Phosphaphenanthrene−10−Oxide)とハイドロキノン、ナフトキノン等のキノン類との付加物として得られるビスフェノール等を使用することができる。
前記架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしては、公知の架橋可能な官能基を有する線状ポリマーを用いることができる。例えば、前記架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは水酸基、カルボキシル基等のエポキシ樹脂の硬化反応に寄与する官能基を備えることが好ましい。そして、この架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤に可溶であることが好ましい。ここで言う官能基を有する線状ポリマーを具体的に例示すると、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等である。
前記樹脂層は架橋剤を含んでもよい。架橋剤には、公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤として例えばウレタン系樹脂を用いることができる。
前記ゴム性樹脂は公知のゴム性樹脂を用いることができる。例えば前記ゴム性樹脂とは、天然ゴム及び合成ゴムを含む概念として記載しており、後者の合成ゴムにはスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム(アクリル酸エステル共重合体)、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム等がある。更に、形成する樹脂層の耐熱性を確保する際には、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の耐熱性を備えた合成ゴムを選択使用することも有用である。これらのゴム性樹脂に関しては、芳香族ポリアミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂と反応して共重合体を製造するようにするため、両末端に種々の官能基を備えるものであることが望ましい。特に、CTBN(カルボキシ基末端ブタジエンニトリル)を用いることが有用である。また、アクリロニトリルブタジエンゴムの中でも、カルボキシル変性体であると、エポキシ樹脂と架橋構造を取り、硬化後の樹脂層のフレキシビリティを向上させることができる。カルボキシル変性体としては、カルボキシ基末端ニトリルブタジエンゴム(CTBN)、カルボキシ基末端ブタジエンゴム(CTB)、カルボキシ変性ニトリルブタジエンゴム(C‐NBR)を用いることができる。
前記ポリアミドイミド樹脂としては公知のポリイミドアミド樹脂を用いることができる。また、前記ポリイミドアミド樹脂としては例えば、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物及びビトリレンジイソシアネートをN−メチル−2−ピロリドン又は/及びN,N−ジメチルアセトアミド等の溶剤中で加熱することで得られる樹脂や、トリメリット酸無水物、ジフェニルメタンジイソシアネート及びカルボキシル基末端アクリロニトリル−ブタジエンゴムをN−メチル−2−ピロリドン又は/及びN,N−ジメチルアセトアミド等の溶剤中で加熱することで得られるものを用いることができる。
前記ゴム変成ポリアミドイミド樹脂として、公知のゴム変成ポリアミドイミド樹脂を用いることができる。ゴム変成ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて得られるものである。ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて用いるのは、ポリアミドイミド樹脂そのものの柔軟性を向上させる目的で行う。すなわち、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させ、ポリアミドイミド樹脂の酸成分(シクロヘキサンジカルボン酸等)の一部をゴム成分に置換するのである。ポリアミドイミド樹脂には公知のポリアミドイミド樹脂を用いることができる。また、ゴム性樹脂には公知のゴム性樹脂または前述のゴム性樹脂を用いることができる。ゴム変成ポリアミドイミド樹脂を重合させる際に、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂との溶解に使用する溶剤には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、ニトロエタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン等を、1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
前記フォスファゼン系樹脂として、公知のフォスファゼン系樹脂を用いることができる。フォスファゼン系樹脂は、リン及び窒素を構成元素とする二重結合を持つフォスファゼンを含む樹脂である。フォスファゼン系樹脂は、分子中の窒素とリンの相乗効果により、難燃性能を飛躍的に向上させることができる。また、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体と異なり、樹脂中で安定して存在し、マイグレーションの発生を防ぐ効果が得られる。
前記フッ素樹脂として、公知のフッ素樹脂を用いることができる。また、フッ素樹脂として例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))、ポリアリルスルフォン、芳香族ポリスルフィドおよび芳香族ポリエーテルの中から選ばれるいずれか少なくとも1種の熱可塑性樹脂とフッ素樹脂とからなるフッ素樹脂等を用いてもよい。
また、前記樹脂層は樹脂硬化剤を含んでもよい。樹脂硬化剤としては公知の樹脂硬化剤を用いることができる。例えば樹脂硬化剤としてはジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン等のアミン類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA等のフェノール類、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のノボラック類、無水フタル酸等の酸無水物、ビフェニル型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂等を用いることができる。また、前記樹脂層は前述の樹脂硬化剤の1種又は2種以上を含んでもよい。これらの硬化剤はエポキシ樹脂に特に有効である。
前記ビフェニル型フェノール樹脂の具体例を化8に示す。
また、前記フェノールアラルキル型フェノール樹脂の具体例を化9に示す。
イミダゾール類としては、公知のものを用いることができ、例えば、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられ、これらを単独若しくは混合して用いることができる。
また、中でも、以下の化10に示す構造式を備えるイミダゾール類を用いる事が好ましい。この化10に示す構造式のイミダゾール類を用いることで、半硬化状態の樹脂層の耐吸湿性を顕著に向上でき、長期保存安定性に優れる。イミダゾール類は、エポキシ樹脂の硬化に際して触媒的な働きを行うものであり、硬化反応の初期段階において、エポキシ樹脂の自己重合反応を引き起こす反応開始剤として寄与するからである。
前記アミン類の樹脂硬化剤としては、公知のアミン類を用いることができる。また、前記アミン類の樹脂硬化剤としては例えば前述のポリアミンや芳香族ポリアミンを用いることが出来、また、芳香族ポリアミン、ポリアミド類及びこれらをエポキシ樹脂や多価カルボン酸と重合或いは縮合させて得られるアミンアダクト体の群から選ばれた1種又は2種以上を用いてもよい。また、前記アミン類の樹脂硬化剤としては、4,4’−ジアミノジフェニレンサルフォン、3,3’−ジアミノジフェニレンサルフォン、4,4−ジアミノジフェニレル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンまたはビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]サルフォンのいずれか一種以上を用いることが好ましい。
前記樹脂層は硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては公知の硬化促進剤を用いることができる。例えば、硬化促進剤としては、3級アミン、イミダゾール、尿素系硬化促進剤等を用いることができる。
前記樹脂層は反応触媒を含んでもよい。反応触媒としては公知の反応触媒を用いることができる。例えば反応触媒として微粉砕シリカ、三酸化アンチモン等を用いることができる。
前記多価カルボン酸の無水物はエポキシ樹脂の硬化剤として寄与する成分であることが好ましい。また、前記多価カルボン酸の無水物は、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テトラヒドロキシ無水フタル酸、ヘキサヒドロキシ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロキシ無水フタル酸、ナジン酸、メチルナジン酸であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂はエポキシ樹脂と重合可能なアルコール性水酸基以外の官能基を有する熱可塑性樹脂であってもよい。
前記ポリビニルアセタール樹脂は酸基および水酸基以外のエポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有してもよい。また、前記ポリビニルアセタール樹脂はその分子内にカルボキシル基、アミノ基または不飽和二重結合を導入したものであってもよい。
前記芳香族ポリアミド樹脂ポリマーとしては、芳香族ポリアミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて得られるものが挙げられる。ここで、芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香族ジアミンとジカルボン酸との縮重合により合成されるものである。このときの芳香族ジアミンには、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシレンジアミン、3,3’−オキシジアニリン等を用いる。そして、ジカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸等を用いる。
前記芳香族ポリアミド樹脂と反応させる前記ゴム性樹脂とは、公知のゴム性樹脂または前述のゴム性樹脂を用いることができる。
この芳香族ポリアミド樹脂ポリマーは、銅張積層板に加工した後の銅箔をエッチング加工する際に、エッチング液によりアンダーエッチングによる損傷を受けないことを目的に用いたものである。
また、前記樹脂層は銅箔側(すなわちキャリア付銅箔の極薄銅層側)から順に硬化樹脂層(「硬化樹脂層」とは硬化済みの樹脂層のことを意味するとする。)と半硬化樹脂層とを順次形成した樹脂層であってもよい。前記硬化樹脂層は、熱膨張係数が0ppm/℃〜25ppm/℃のポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、これらの複合樹脂のいずれかの樹脂成分で構成されてもよい。
また、前記硬化樹脂層上に、硬化した後の熱膨張係数が0ppm/℃〜50ppm/℃の半硬化樹脂層を設けてもよい。また、前記硬化樹脂層と前記半硬化樹脂層とが硬化した後の樹脂層全体の熱膨張係数が40ppm/℃以下であってもよい。前記硬化樹脂層は、ガラス転移温度が300℃以上であってもよい。また、前記半硬化樹脂層は、マレイミド系樹脂または芳香族マレイミド樹脂を用いて形成したものであってもよい。前記半硬化樹脂層を形成するための樹脂組成物は、マレイミド系樹脂、エポキシ樹脂、架橋可能な官能基を有する線状ポリマーを含むことが好ましい。エポキシ樹脂は公知のエポキシ樹脂または本明細書に記載のエポキシ樹脂を用いることができる。また、マレイミド系樹脂、芳香族マレイミド樹脂、架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしては公知のマレイミド系樹脂、芳香族マレイミド樹脂、架橋可能な官能基を有する線状ポリマー又は前述のマレイミド系樹脂、芳香族マレイミド樹脂、架橋可能な官能基を有する線状ポリマーを用いることができる。
また、立体成型プリント配線板製造用途に適した、樹脂層を有するキャリア付銅箔を提供する場合、前記硬化樹脂層は硬化した可撓性を有する高分子ポリマー層であることが好ましい。前記高分子ポリマー層は、はんだ実装工程に耐えられるように、150℃以上のガラス転移温度をもつ樹脂からなるものが好適である。前記高分子ポリマー層は、ポリアミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、アラミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂のいずれか1種又は2種以上の混合樹脂からなることが好ましい。また、前記高分子ポリマー層の厚さは3μm〜10μmであることが好ましい。
また、前記高分子ポリマー層は、エポキシ樹脂、マレイミド系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂のいずれか1種又は2種以上を含むことが好ましい。また、前記半硬化樹脂層は厚さが10μm〜50μmのエポキシ樹脂組成物で構成されていることが好ましい。
また、前記エポキシ樹脂組成物は以下のA成分〜E成分の各成分を含むものであることが好ましい。
A成分: エポキシ当量が200以下で、室温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上からなるエポキシ樹脂。
B成分: 高耐熱性エポキシ樹脂。
C成分: リン含有エポキシ系樹脂、フォスファゼン系樹脂のいずれか1種又はこれらを混合した樹脂であるリン含有難燃性樹脂。
D成分: 沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に可溶な性質を備える液状ゴム成分で変成したゴム変成ポリアミドイミド樹脂。
E成分: 樹脂硬化剤。
B成分は、所謂ガラス転移点Tgの高い「高耐熱性エポキシ樹脂」である。ここで言う「高耐熱性エポキシ樹脂」は、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂であることが好ましい。
C成分のリン含有エポキシ樹脂として、前述のリン含有エポキシ樹脂を用いることができる。また、C成分のフォスファゼン系樹脂として前述のフォスファゼン系樹脂を用いることができる。
D成分のゴム変成ポリアミドイミド樹脂として、前述のゴム変成ポリアミドイミド樹脂を用いることができる。E成分の樹脂硬化剤として、前述の樹脂硬化剤を用いることができる。
以上に示した樹脂組成物に溶剤を加えて樹脂ワニスとして用い、プリント配線板の接着層として熱硬化性樹脂層を形成する。当該樹脂ワニスは、上述の樹脂組成物に溶剤を加えて、樹脂固形分量が30wt%〜70wt%の範囲に調製し、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%〜35%の範囲にある半硬化樹脂膜の形成が可能である。溶剤には、公知の溶剤または前述の溶剤を用いることができる。
前記樹脂層は銅箔側から順に第1熱硬化性樹脂層と、当該第1熱硬化性樹脂層の表面に位置する第2熱硬化性樹脂層とを有する樹脂層であって、第1熱硬化性樹脂層は、配線板製造プロセスにおけるデスミア処理時の薬品に溶解しない樹脂成分で形成されたものであり、第2熱硬化性樹脂層は、配線板製造プロセスにおけるデスミア処理時の薬品に溶解し洗浄除去可能な樹脂を用いて形成したものであってもよい。前記第1熱硬化性樹脂層は、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンオキサイドのいずれか一種又は2種以上を混合した樹脂成分を用いて形成したものであってもよい。前記第2熱硬化性樹脂層は、エポキシ樹脂成分を用いて形成したものであってもよい。前記第1熱硬化性樹脂層の厚さt1(μm)は、キャリア付銅箔の粗化面粗さをRz(μm)とし、第2熱硬化性樹脂層の厚さをt2(μm)としたとき、t1は、Rz<t1<t2の条件を満たす厚さであることが好ましい。
前記樹脂層は骨格材に樹脂を含浸させたプリプレグであってもよい。前記骨格材に含浸させた樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましい。前記プリプレグは公知のプリプレグまたはプリント配線板製造に用いるプリプレグであってもよい。
前記骨格材はアラミド繊維又はガラス繊維又は全芳香族ポリエステル繊維を含んでもよい。前記骨格材はアラミド繊維又はガラス繊維又は全芳香族ポリエステル繊維の不織布若しくは織布であることが好ましい。また、前記全芳香族ポリエステル繊維は融点が300℃以上の全芳香族ポリエステル繊維であることが好ましい。前記融点が300℃以上の全芳香族ポリエステル繊維とは、所謂液晶ポリマーと称される樹脂を用いて製造される繊維であり、当該液晶ポリマーは2−ヒドロキシル−6−ナフトエ酸及びp−ヒドロキシ安息香酸の重合体を主成分とするものである。この全芳香族ポリエステル繊維は、低誘電率、低い誘電正接を持つため、電気的絶縁層の構成材として優れた性能を有し、ガラス繊維及びアラミド繊維と同様に使用することが可能なものである。
なお、前記不織布及び織布を構成する繊維は、その表面の樹脂との濡れ性を向上させるため、シランカップリング剤処理を施す事が好ましい。このときのシランカップリング剤は、使用目的に応じて公知のアミノ系、エポキシ系等のシランカップリング剤または前述のシランカップリング剤を用いることができる。
また、前記プリプレグは公称厚さが70μm以下のアラミド繊維又はガラス繊維を用いた不織布、あるいは、公称厚さが30μm以下のガラスクロスからなる骨格材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグであってもよい。
(樹脂層が誘電体(誘電体フィラー)を含む場合)
前記樹脂層は誘電体(誘電体フィラー)を含んでもよい。
上記いずれかの樹脂層または樹脂組成物に誘電体(誘電体フィラー)を含ませる場合には、キャパシタ層を形成する用途に用い、キャパシタ回路の電気容量を増大させることができるのである。この誘電体(誘電体フィラー)には、BaTiO3、SrTiO3、Pb(Zr−Ti)O3(通称PZT)、PbLaTiO3・PbLaZrO(通称PLZT)、SrBi2Ta29(通称SBT)等のペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の誘電体粉を用いる。
誘電体(誘電体フィラー)は粉状であってもよい。誘電体(誘電体フィラー)が粉状である場合、この誘電体(誘電体フィラー)の粉体特性は、まず粒径が0.01μm〜3.0μm、好ましくは0.02μm〜2.0μmの範囲のものである必要がある。ここで言う粒径は、粉粒同士がある一定の2次凝集状態を形成しているため、レーザー回折散乱式粒度分布測定法やBET法等の測定値から平均粒径を推測するような間接測定では精度が劣るものとなるため用いることができず、誘電体(誘電体フィラー)を走査型電子顕微鏡(SEM)で直接観察し、そのSEM像を画像解析し得られる平均粒径を言うものである。本件明細書ではこの時の粒径をDIAと表示している。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される誘電体(誘電体フィラー)の粉体の画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行い、平均粒径DIAを求めたものである。
上述の実施の形態により、当該内層コア材の内層回路表面と誘電体を含む樹脂層との密着性を向上させ、低い誘電正接を備えるキャパシタ回路層を形成するための誘電体を含む樹脂層を有するキャリア付銅箔を提供することができる。
前述の樹脂層に含まれる樹脂および/または樹脂組成物および/または化合物を例えばメチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、メタノール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶剤に溶解して樹脂液(樹脂ワニス)とし、これを前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング剤層の上に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。前記樹脂層の組成物を、溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分3wt%〜70wt%、好ましくは、3wt%〜60wt%、好ましくは10wt%〜40wt%、より好ましくは25wt%〜40wt%の樹脂液としてもよい。なお、メチルエチルケトンとシクロペンタノンとの混合溶剤を用いて溶解することが、環境的な見地より現段階では最も好ましい。なお、溶剤には沸点が50℃〜200℃の範囲である溶剤を用いることが好ましい。
また、前記樹脂層はMIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%〜35%の範囲にある半硬化樹脂膜であることが好ましい。
本件明細書において、レジンフローとは、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して、樹脂厚さを55μmとした樹脂付銅箔から10cm角試料を4枚サンプリングし、この4枚の試料を重ねた状態(積層体)でプレス温度171℃、プレス圧14kgf/cm2、プレス時間10分の条件で張り合わせ、そのときの樹脂流出重量を測定した結果から数1に基づいて算出した値である。
前記樹脂層を備えたキャリア付銅箔(樹脂付きキャリア付銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついでキャリアを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、そこに所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
この樹脂付きキャリア付銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
この樹脂層の厚みは0.1〜120μmであることが好ましい。
樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。一方、樹脂層の厚みを120μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる場合がある。
なお、樹脂層を有するキャリア付銅箔が極薄の多層プリント配線板を製造することに用いられる場合には、前記樹脂層の厚みを0.1μm〜5μm、より好ましくは0.5μm〜5μm、より好ましくは1μm〜5μmとすることが、多層プリント配線板の厚みを小さくするために好ましい。
また、樹脂層が誘電体を含む場合には、樹脂層の厚みは0.1〜50μmであることが好ましく、0.5μm〜25μmであることが好ましく、1.0μm〜15μmであることがより好ましい。
また、前記硬化樹脂層、半硬化樹脂層との総樹脂層厚みは0.1μm〜120μmであるものが好ましく、5μm〜120μmであるものが好ましく、10μm〜120μmであるものが好ましく、10μm〜60μmのものがより好ましい。そして、硬化樹脂層の厚みは2μm〜30μmであることが好ましく、3μm〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。また、半硬化樹脂層の厚みは3μm〜55μmであることが好ましく、7μm〜55μmであることが好ましく、15〜115μmであることがより望ましい。総樹脂層厚みが120μmを超えると、薄厚の多層プリント配線板を製造することが難しくなる場合があり、5μm未満では薄厚の多層プリント配線板を形成し易くなるものの、内層の回路間における絶縁層である樹脂層が薄くなりすぎ、内層の回路間の絶縁性を不安定にする傾向が生じる場合があるためである。また、硬化樹脂層厚みが2μm未満であると、銅箔粗化面の表面粗度を考慮する必要が生じる場合がある。逆に硬化樹脂層厚みが20μmを超えると硬化済み樹脂層による効果は特に向上することがなくなる場合があり、総絶縁層厚は厚くなる。
なお、前記樹脂層の厚みを0.1μm〜5μmとする場合には、樹脂層とキャリア付銅箔との密着性を向上させるため、極薄銅層の上に耐熱層および/または防錆層および/またはクロメート処理層および/またはシランカップリング処理層を設けた後に、当該耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の上に樹脂層を形成することが好ましい。
なお、前述の樹脂層の厚みは、任意の10点において断面観察により測定した厚みの平均値をいう。
更に、この樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
更に、この樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
<プリント配線板の製造方法>
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されていない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。
まず、図1−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、図1−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、図1−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、図2−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、図2−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、図2−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、図3−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、図3−Hに示すように、ビアフィル上に、上記図1−B及び図1−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、図3−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、図4−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、図4−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、図3−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
1.キャリア付銅箔の製造
キャリアとして、厚さ35μmの長尺の電解銅箔(JX日鉱日石金属社製JTC)及び圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製 タフピッチ銅箔 JIS H3100 合金番号C1100)を用意し、表面に中間層を形成した。中間層の形成は、表の「中間層形成方法」の項目に記載の処理順により行った。すなわち、例えば「Ni/亜鉛クロメート」と表記されているものは、まず「Ni」の処理を行った後、「亜鉛クロメート」の処理を行ったことを示している。また、当該「中間層」の項目において、「Ni」と表記されているのは純ニッケルめっきを行ったことを意味し、「Ni−Zn」と表記されているのはニッケル亜鉛合金めっきを行ったことを意味し、「Mo−Co」と表記されているのはモリブデンコバルト合金めっきを行ったことを意味し、「スパッタNi」と表記されているのはスパッタリングでNiめっきを形成したことを意味し、「純クロメート」と表記されているのは純クロメート処理を行ったことを意味し、「亜鉛クロメート」と表記されているのは亜鉛クロメート処理を行ったことを意味し、「スパッタCr」と表記されているのはスパッタリングでCrめっきを形成したことを意味し、「BTA処理」と表記されているのはベンゾトリアゾールを用いた防錆処理を行ったことを意味し、「MBT処理」と表記されているのはメルカプトベンゾトリアゾールを用いた防錆処理を行ったことを意味する。以下に、各処理条件を示す。なお、Ni、Zn、Cr、Mo、Coの付着量を多くする場合には、電流密度を高めに設定すること、および/または、めっき時間を長めに設定すること、および/または、めっき液中の各元素の濃度を高くすることを行った。また、Ni、Zn、Cr、Mo、Coの付着量を少なくする場合には、電流密度を低めに設定すること、および/または、めっき時間を短めに設定すること、および/または、めっき液中の各元素の濃度を低くすることを行った。また、めっき液等の液組成の残部は水である。
・「Ni」:ニッケルめっき
(液組成)硫酸ニッケル:270〜280g/L、塩化ニッケル:35〜45g/L、酢酸ニッケル:10〜20g/L、クエン酸三ナトリウム:15〜25g/L、光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等、ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
(pH)4〜6
(液温)55〜65℃
(電流密度)1〜11A/dm2
(通電時間)1〜20秒
・「Ni−Zn」:ニッケル亜鉛合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中に硫酸亜鉛(ZnSO4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整してニッケル亜鉛合金めっきを形成した。
・「Ni−Mo」:ニッケルモリブデン合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にモリブデン酸ナトリウムの形態のモリブデンを添加し、モリブデン濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルモリブデン合金めっきを形成した。
・「Ni−Co」:ニッケルコバルト合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中に硫酸コバルトの形態のコバルトを添加し、コバルト濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルコバルト合金めっきを形成した。
・「Ni−W」:ニッケルタングステン合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にタングステン酸ナトリウムの形態のタングステンを添加し、タングステン濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルタングステン合金めっきを形成した。
・「Ni−Sn」:ニッケルスズ合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にスズ酸ナトリウムの形態のスズを添加し、スズ濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルスズ合金めっきを形成した。
・「Cr」:クロムめっき
(液組成)CrO3:200〜400g/L、H2SO4:1.5〜4g/L
(pH)1〜4
(液温)45〜60℃
(電流密度)10〜40A/dm2
(通電時間)1〜20秒
・「純クロメート」:電解純クロメート処理
(液組成)重クロム酸カリウム:1〜10g/L、亜鉛:0g/L
(pH)2〜4、7〜10
(液温)40〜60℃
(電流密度)0.1〜2.6A/dm2
(クーロン量)0.5〜90As/dm2
(通電時間)1〜30秒
・「亜鉛クロメート」:亜鉛クロメート処理
上記電解純クロメート処理条件において、液中に硫酸亜鉛(ZnSO4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整して亜鉛クロメート処理を行った。
・BTA処理:ベンゾトリアゾールを用いた防錆処理
(液組成)ベンゾトリアゾール:0.1〜20g/L
(pH)2〜5
(液温)20〜40℃
(浸漬時間)5〜30s
・MBT処理:メルカプトベンゾチアゾールを用いた防錆処理
(液組成)2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム:0.1〜20g/L
(pH)7〜10
(液温)40〜60℃
(電圧)1〜5V
(通電時間)1〜30秒
・「スパッタNi」:スパッタリングによるNiめっき
Ni:99mass%の組成のスパッタリングターゲットを用いてニッケル層を形成した。
ターゲット:Ni:99mass%
装置:株式会社アルバック製のスパッタ装置
出力:DC50W
アルゴン圧力:0.2Pa
・「スパッタCr」:スパッタリングによるCrめっき
Cr:99mass%の組成のスパッタリングターゲットを用いてクロム層を形成した。
ターゲット:Cr:99mass%
装置:株式会社アルバック製のスパッタ装置
出力:DC50W
アルゴン圧力:0.2Pa
・「Mo−Co」:モリブデンコバルト合金めっき
(液組成)硫酸コバルト:10〜200g/L、モリブデン酸ナトリウム:5〜200g/L、クエン酸ナトリウム:2〜240g/L
(pH)2〜5
(液温)10〜70℃
(電流密度)0.5〜10A/dm2
中間層の形成後、中間層の上に厚み1〜10μmの極薄銅層を以下の条件で電気めっきすることにより形成し、キャリア付銅箔を製造した。
・極薄銅層
銅濃度:30〜120g/L
2SO4濃度:20〜120g/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:10〜100A/dm2
次いで、極薄銅層表面に以下に示す、粗化処理A、B、C、Dのいずれかの処理を行い、各処理A〜Dにおいて、それぞれ粗化処理1、粗化処理2、防錆処理、クロメート処理、及び、シランカップリング処理をこの順におこなった。
<粗化処理A>
(液組成1)
Cu:10〜30g/L
2SO4:10〜150g/L
W:0〜50mg/L
ドデシル硫酸ナトリウム:0〜50mg/L
As:0〜200mg/L
(電気めっき条件1)
温度:30〜70℃
電流密度:25〜110A/dm2
粗化クーロン量:50〜500As/dm2
めっき時間:0.5〜20秒
・粗化処理2
(液組成2)
Cu:20〜80g/L
2SO4:50〜200g/L
(電気めっき条件2)
温度:30〜70℃
電流密度:5〜50A/dm2
粗化クーロン量:50〜300As/dm2
めっき時間:1〜60秒
・防錆処理
(液組成)
NaOH:40〜200g/L
NaCN:70〜250g/L
CuCN:50〜200g/L
Zn(CN)2:2〜100g/L
As23:0.01〜1g/L
(液温)
40〜90℃
(電流条件)
電流密度:1〜50A/dm2
めっき時間:1〜20秒
・クロメート処理
2Cr27(Na2Cr27或いはCrO3):2〜10g/L
NaOH又はKOH:10〜50g/L
ZnOH又はZnSO4・7H2O:0.05〜10g/L
pH:7〜13
浴温:20〜80℃
電流密度:0.05〜5A/dm2
時間:5〜30秒
・シランカップリング処理
0.1vol%〜0.3vol%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン水溶液をスプレー塗布した後、100〜200℃の空気中で0.1〜10秒間乾燥・加熱する。
<粗化処理B>
・粗化処理1
液組成:銅10〜20g/L、硫酸50〜100g/L
液温:25〜50℃
電流密度:1〜58A/dm2
クーロン量:4〜81As/dm2
・粗化処理2
液組成:銅10〜20g/L、ニッケル5〜15g/L、コバルト5〜15g/L
pH:2〜3
液温:30〜50℃
電流密度:24〜50A/dm2
クーロン量:34〜48As/dm2
・防錆処理
液組成:ニッケル5〜20g/L、コバルト1〜8g/L
pH:2〜3
液温:40〜60℃
電流密度:5〜20A/dm2
クーロン量:10〜20As/dm2
・クロメート処理
液組成:重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH:3〜4
液温:50〜60℃
電流密度:0〜2A/dm2(浸漬クロメート処理のため無電解での実施も可能)
クーロン量:0〜2As/dm2(浸漬クロメート処理のため無電解での実施も可能)
・シランカップリング処理
ジアミノシラン水溶液の塗布(ジアミノシラン濃度:0.1〜0.5wt%)
<粗化処理C>
・粗化処理1
液組成:銅10〜20g/L、ニッケル2〜20g/L、コバルト2〜20g/L
pH2〜4
液温:30〜50℃
電流密度:24〜50A/dm2
クーロン量:30〜48As/dm2
・防錆処理
液組成:ニッケル5〜20g/L、コバルト1〜8g/L
pH:2〜3
液温:40〜60℃
電流密度:5〜20A/dm2
クーロン量:10〜20As/dm2
・クロメート処理
液組成:重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH:3〜4
液温:50〜60℃
電流密度:0〜2A/dm2(浸漬クロメート処理のため無電解での実施も可能)
クーロン量:0〜2As/dm2(浸漬クロメート処理のため無電解での実施も可能)
・シランカップリング処理
ジアミノシラン水溶液の塗布(ジアミノシラン濃度:0.1〜0.5wt%)
<粗化処理D>
・粗化処理1
(液組成1)
Cu:31〜45g/L
2SO4:10〜150g/L
As:0.1〜200mg/L
(電気めっき条件1)
温度:30〜70℃
電流密度:25〜110A/dm2
粗化クーロン量:50〜500As/dm2
めっき時間:0.5〜20秒
・粗化処理2
(液組成2)
Cu:20〜80g/L
2SO4:50〜200g/L
(電気めっき条件2)
温度:30〜70℃
電流密度:5〜50A/dm2
粗化クーロン量:50〜300As/dm2
めっき時間:1〜60秒
・防錆処理
(液組成)
NaOH:40〜200g/L
NaCN:70〜250g/L
CuCN:50〜200g/L
Zn(CN)2:2〜100g/L
As23:0.01〜1g/L
(液温)
40〜90℃
(電流条件)
電流密度:1〜50A/dm2
めっき時間:1〜20秒
・クロメート処理
2Cr27(Na2Cr27或いはCrO3):2〜10g/L
NaOH又はKOH:10〜50g/L
ZnOH又はZnSO4・7H2O:0.05〜10g/L
pH:7〜13
浴温:20〜80℃
電流密度:0.05〜5A/dm2
時間:5〜30秒
・シランカップリング処理
0.1vol%〜0.3vol%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン水溶液をスプレー塗布した後、100〜200℃の空気中で0.1〜10秒間乾燥・加熱する。
2.キャリア付銅箔の評価
上記のようにして得られたキャリア付銅箔について、以下の方法で各評価を実施した。
<中間層の金属付着量>
ニッケル、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト付着量はサンプルを硝酸と塩酸の混合液(硝酸濃度:20質量%、塩酸濃度:12質量%)で溶解してSII社製のICP発光分光分析装置(型式:SPS3100)を用いてICP発光分析によって測定した。また、ニッケル、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトのいずれかの付着量が50μg/dm2未満の場合には、当該付着量が50μg/dm2以下の元素については、VARIAN社製の原子吸光分光光度計(型式:AA240FS)を用いて原子吸光で分析した。測定条件は各測定装置において推奨されている条件とした。なお、前記ニッケル、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト付着量の測定は以下のようにして行った。まず、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後、極薄銅層の中間層側の表面付近のみを溶解して(表面から0.5μm厚みのみ溶解する。すなわち、後述の表に示すように極薄銅層の厚みが10μmであるものについては、極薄銅層の厚みの5%溶解する。また、極薄銅層の厚みが5μmであるものについては、極薄銅層の厚みの10%溶解する。また、極薄銅層の厚みが3μmであるものについては、極薄銅層の厚みの16.7%溶解する。また、極薄銅層の厚みが2μmであるものについては、極薄銅層の厚みの25%溶解する。)、極薄銅層の中間層側の表面の付着量を測定する。また、極薄銅層を剥離した後に、キャリアの中間層側の表面付近のみを溶解して(例えば表面から0.5μm厚みのみ溶解する)、キャリアの中間層側の表面の付着量を測定する。そして、極薄銅層の中間層側の表面の付着量とキャリアの中間層側の表面の付着量とを合計した値を、中間層の金属付着量とした。
<表面粗さ>
極薄銅層の表面粗さ(Ra、Rt、Rz、Ssk、Sku)を非接触式粗さ測定機(オリンパス製 LEXT OLS 4000)を用いて、Ra、RzについてはJIS B0601−1994に準拠して、RtについてはJIS B0601−2001に準拠して、またSsk、SkuについてはISO25178ドラフトに準拠して以下の測定条件で、測定した。
(測定条件)
カットオフ:無
基準長さ:257.9μm
基準面積:66524μm2
測定環境温度:23〜25℃
<表面積比>
非接触式粗さ測定機(オリンパス製 LEXT OLS 4000)を用いて、以下の測定条件で、測定した。表面積比は、エリア及び実エリアを測定し、実エリア/エリアの値を表面積比とした。ここで、エリアとは測定基準面積を指し、実エリアとは測定基準面積中の表面積を指す。
(測定条件)
カットオフ:無
基準長さ:257.9μm
基準面積:66524μm2
測定環境温度:23〜25℃
<粗化処理面の体積>
非接触式粗さ測定機(レーザー顕微鏡、オリンパス製 LEXT OLS 4000)を用いて、以下の測定条件で、測定した。なお、粗化処理面の体積は以下の様に測定される。
(1)レーザー顕微鏡がサンプルの表面に焦点の合う高さに合わせる。
(2)明るさを調整し、全体照度が飽和点の約80%になるよう調節する。
(3)レーザー顕微鏡をサンプルに近づけ、画面照度が完全に消失した地点をゼロとする。
(4)レーザー顕微鏡をサンプルから遠ざけ、画面照度が完全に消失した地点を上限高さとする。
(5)高さゼロから上限までの粗化処理面の体積を測定する。
(測定条件)
カットオフ:無
基準長さ:257.9μm
基準面積:66524μm2
測定環境温度:23〜25℃
<極薄銅層表面のNi、Cr量>
キャリア付銅箔を極薄銅層側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に、大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件化で熱圧着させて貼り付けた。その後、JIS C 6471(方法A)に準拠して極薄銅層をキャリアから剥がした。続いて、極薄銅層の中間層側の表面について、以下の条件によってXPSによる表面からの深さ方向分析によって深さ方向(x:単位nm)の金属の原子濃度を測定した。また、上記樹脂との加熱圧着前の各試料についても、同様にしてXPSによる表面からの深さ方向分析によって深さ方向(x:単位nm)の金属の原子濃度を測定しておいた。なお、xの値が大きいほど、金属の原子濃度の測定位置が表面から深い(遠い)ことを意味する。なお、深さ方向(x:単位nm)の金属の原子濃度の測定間隔は0.18〜0.30nm(SiO2換算)とするとよい。本発明においては、深さ方向の金属の原子濃度を0.28nm(SiO2換算)間隔で測定した(スパッタリング時間で、0.1分おきに測定した)。
(XPS分析条件)
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO2換算)
<剥離強度>
キャリア付銅箔を極薄銅層側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に、大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件化で熱圧着させて貼り付けた。続いて、ロードセルにてキャリア側を引っ張り、90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して剥離強度を測定した。また、上記樹脂との加熱圧着前の各試料についても、同様に剥離強度を測定しておいた。
<エッチング性>
キャリア付銅箔をポリイミド基板に貼り付けて220℃で2時間加熱圧着し、その後、極薄銅層をキャリアから剥がした。続いて、ポリイミド基板上の極薄銅層表面に、感光性レジストを塗布した後、露光工程により50本のL/S=5μm/5μm幅の回路を印刷し、銅層の不要部分を除去するエッチング処理を以下のスプレーエッチング条件にて行った。
(スプレーエッチング条件)
エッチング液:塩化第二鉄水溶液(ボーメ度:40度)
液温:60℃
スプレー圧:2.0MPa
エッチングを続け、回路トップ幅が4μmになるまでの時間を測定し、さらにそのときの回路ボトム幅(底辺Xの長さ)及びエッチングファクターを評価した。エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図5に、回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。回路ボトム幅Xは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。b(μm)は極薄銅層の厚み(μm)とした。なお、a=(X(μm)−4(μm))/2で計算した。エッチングファクターは回路中の12点を測定し、平均値をとったものを示す。これにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。また、12点のエッチングファクターの標準偏差も算出することで、エッチングにより形成した回路の直線性の良し悪しを判定することができる。
本発明では、エッチングファクターが5以上をエッチング性:○、2.5以上5未満をエッチング性:△、2.5未満或いは算出不可または回路形成不可をエッチング性:×、剥離不可をエッチング性:−と評価した。また、エッチングファクターの標準偏差は小さいほど回路の直線性が良好であると云える。エッチングファクターの標準偏差が0.5未満を直線性:○、0.5〜1.0未満を直線性:△、1.0以上を直線性:×と判断した。
<中間層の有機物厚み>
樹脂との加熱圧着前の各試料について、キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とした。なお、xの値が大きいほど、金属の原子濃度の測定位置が表面から深い(遠い)ことを意味する。なお、深さ方向(x:単位nm)の金属の原子濃度の測定間隔は0.18〜0.30nm(SiO2換算)とするとよい。本願においては、深さ方向の金属の原子濃度を0.28nm(SiO2換算)間隔で測定した(スパッタリング時間で、0.1分おきに測定した)。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO2換算)
上述の通り、中間層の有機物厚みを測定した結果、実施例6の中間層の有機物厚みは38nm、実施例7の中間層の有機物厚みは40nm、実施例16の中間層の有機物厚みは31nm、実施例17の中間層の有機物厚みは35nm、比較例6の中間層の有機物厚みは15nmであった。
結果を表1〜4に示す。
実施例1〜18は、いずれも、キャリア付銅箔について、JIS C 6471(方法A)に準拠して極薄銅層を剥がしたとき、極薄銅層の中間層側の表面のNi量が区間[0、1.0]において5.0%以下であったため、極薄銅層の剥離性及びエッチング性が良好であった。
比較例1、2は、中間層を形成していないため、加熱圧着後で剥離できなかった。比較例3、4は、中間層にNiが存在しないため極薄銅層を剥離できなかった。比較例5、7、9、11は、加熱圧着前に極薄銅層に存在するNiの濃度が高く、加熱圧着後に剥離できなくなった。比較例6、8、10、12は、中間層に存在するNiの濃度が高く、その結果、加熱圧着前に極薄銅層に存在するNiの濃度が高くなったため、エッチング後の回路の直線性が悪かった。比較例8、11、13、14は、極薄銅層の粗化処理層表面のRzが大きいため、回路のエッチングファクターと直線線が悪かった。
図6に実施例5の極薄薄銅表面(基板圧着前)の深さ方向のプロファイルを示す。図7に実施例5の極薄薄銅表面(基板圧着後)の深さ方向のプロファイルを示す。図8に比較例5の極薄薄銅表面(基板圧着前)の深さ方向のプロファイルを示す。図9に比較例6の極薄薄銅表面(基板圧着後)の深さ方向のプロファイルを示す。

Claims (11)

  1. キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層表面には粗化処理層を有し、
    以下の(A)〜(C)のいずれか一つ以上を満たし、
    (A)前記極薄銅層の粗化処理層表面を非接触式粗さ計で測定したRzが1.6μm以下である、
    (B)前記極薄銅層の粗化処理層表面を非接触式粗さ計で測定したRaが0.3μm以下である、
    (C)前記極薄銅層の粗化処理層表面を非接触式粗さ計で測定したRtが2.3μm以下である、
    前記極薄銅層表面は、Skuが2.7〜3.3であり、
    前記中間層はNiを含み、さらに、前記中間層はCr又はZn又はCo又はMo又は有機物を含み、
    前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2であり、前記中間層がCrを含む場合は前記中間層におけるCrの付着量が5μg/dm2以上であり、前記中間層がZnを含む場合は前記中間層におけるZnの付着量が1μg/dm2以上であり、前記中間層がCoを含む場合は前記中間層におけるCoの付着量が10μg/dm2以上であり、前記中間層がMoを含む場合は前記中間層におけるMoの付着量が10μg/dm2以上であり、
    JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のクロムの原子濃度(%)をe(x)とし、亜鉛の原子濃度(%)をf(x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、酸素の合計原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)とし、その他の原子濃度(%)をk(x)とすると、
    前記極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx + ∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が5.0%以下を満たすキャリア付銅箔。
  2. JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx + ∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が1.0%以下を満たす請求項1に記載のキャリア付銅箔。
  3. 以下の(D)〜(F)を一つ以上満たす請求項1または2のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
    (D)前記極薄銅層表面は、Sskが−0.3〜0.3である、
    (E)極薄銅層表面の表面積比が1.05〜1.5である、
    (F)極薄銅層表面の面積66524μm2当たりの体積が300000〜500000μm3である。
  4. JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx + ∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.1%以上5.0%以下、且つ、区間[1.0、4.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx + ∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が0.1%以上1.0%以下を満たす請求項1〜3のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
  5. JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側の表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫g(x)dx/(∫e(x)dx + ∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が3.0%以下を満たす請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
  6. JIS C 6471に準拠して前記極薄銅層を剥がしたとき、前記極薄銅層の前記中間層側のXPSによる表面からの深さ方向分析の区間[0、1.0]において、∫e(x)dx/(∫e(x)dx + ∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx+ ∫k(x)dx )が2.0%以下を満たす請求項1〜5のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
  7. 以下の(H)〜(Q)のいずれか一つを満たす請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
    (H)前記中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されている、
    (I)前記(H)を満たし、且つ、前記クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がクロメート処理層を含む、
    (J)前記中間層は、亜鉛を含む、
    (K)前記中間層は、前記キャリア上にニッケル、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−リン合金、ニッケル−コバルト合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されている、
    (L)前記中間層は、前記キャリア上に、
    ニッケル層またはニッケル−亜鉛合金層、及び、亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されている、又は、
    ニッケル−亜鉛合金層、及び、純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されており、
    前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2、クロムの付着量が5〜100μg/dm2、亜鉛の付着量が1〜70μg/dm2である、
    (M)前記中間層は、前記キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層、及び、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、
    前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2である、
    (N)前記中間層は、前記キャリア上に窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の順で積層されて構成されており、
    前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2である、
    (O)前記中間層が有機物を厚みで25nm以上80nm以下含有する、
    (P)前記(M)または前記(N)を満たし、且つ、前記中間層が有機物を厚みで25nm以上80nm以下含有する、
    (Q)前記中間層は、前記キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層および、モリブデン、コバルト、モリブデンコバルト合金のいずれか1種以上を含む層の順で積層されて構成されており、
    前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2であり、モリブデンが含まれる場合にはモリブデンの付着量が10〜1000μg/dm2、コバルトが含まれる場合にはコバルトの付着量が10〜1000μg/dm2である。
  8. 以下の(R)〜(T)のいずれか一つを満たす請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
    (R)前記粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する、
    (S)前記粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有し、且つ、当該耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える
    (T)前記粗化処理層上に樹脂層を備える。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔を用いてプリント配線板を製造する方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔を用いて銅張積層板を製造する方法。
  11. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
    前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
    前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、
    その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法。
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