JP6414958B2 - 缶の製造方法、ボトムリフォーム機構及びこれに用いるボトム支持部材 - Google Patents
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Description
従来、例えば下記特許文献1に示されるように、缶の缶底には、缶軸方向に沿う缶の内側へ向けて凹むドーム部と、ドーム部の外周縁部に連なり、缶軸方向に沿う缶の外側へ向けて突出するとともに缶軸回りの周方向に沿って延びる環状凸部(カウンターシンク)と、が形成されている。
耐圧強度が低くなると、内容物が封入された缶の内圧の作用(上昇)により、例えば下記特許文献1の図4に記載されるように、缶底の環状凸部が、缶軸方向に沿う缶の外側(缶の下方)へ突出しつつ、缶軸方向に直交する径方向の外側へ向けて変形する、いわゆるボトムグロースが発生する。
具体的には、絞りしごき加工(DI加工)を経た有底筒状の缶(缶底にドーム部及び環状凸部が成形された缶)を、缶軸方向及び径方向に支持しつつ、缶底の環状凸部の内周壁に対して、径方向外側へ向けて凹むとともに、缶軸回りの周方向に沿って延びる環状の凹部を成形する。
また、下記特許文献2では、該特許文献2のFig.6Aに記載されるように、缶胴における缶底側の端部と、缶底のうち、環状凸部における缶軸方向に沿う缶の外側の端縁(つまり缶の下端縁)と、をボトム支持部材により支持して、ボトムリフォーム加工している。
また、上記以外の手法として、環状凸部における缶軸方向に沿う缶の外側の端部に対応する形状とされた環状溝を、ボトム支持部材に形成し、この環状溝内に環状凸部の前記端部を挿入して、ボトムリフォーム加工するものが知られている。
すなわち、特許文献1では、缶胴の缶底側の端部と、缶底の環状凸部における凹曲面状の外周壁の全面と、をボトム支持部材で支持するようにしているが、このような手法では、缶底形状のばらつき(成形誤差)により、特に凹曲面状の外周壁に対して、ボトム支持部材を密着させることができない。なお、外周壁全面に対してボトム支持部材を密着させるため、缶軸方向への缶の支持荷重を増大させることが考えられるが、この場合、缶自体や設備に負荷がかかる。
そこで、生産速度を速めるために、マンドレルの代わりにトップ支持部材を用い、該トップ支持部材により缶胴の開口端部を支持することで、トップ支持部材のストロークを短くすることが考えられるが、この場合、上述したボトム支持部材による支持の不安定さの問題がより顕著となりやすい。
また、上記以外の手法として説明した、環状溝内に、環状凸部の缶軸方向に沿う缶の外側の端部を挿入して缶底を支持する手法では、缶底形状のばらつき(成形誤差)により、環状溝と環状凸部の前記端部との間にガタが生じやすい。このようなガタがあると、環状凸部の内周壁を径方向の外側に向けて押圧しボトムリフォーム加工するときに、成形荷重により缶が径方向に振れて(位置ずれして)しまい、成形精度が確保できない。
すなわち、本発明の缶の製造方法は、板材を絞りしごき加工して、缶胴と缶底とを有する有底筒状の缶としつつ、前記缶底に、缶軸方向に沿う当該缶の内側へ向けて凹むドーム部と、前記ドーム部の外周縁部に連なり、前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向けて突出するとともに缶軸回りの周方向に沿って延びる環状凸部と、を成形する絞りしごき工程と、前記缶底にボトム支持部材を当接させ、かつ、前記缶胴の開口端部にトップ支持部材を当接させて、前記缶を前記缶軸方向に沿う当該缶の内側へ向けて挟持し、かつ、缶軸に直交する径方向の内側へ向けて支持した状態で、前記環状凸部のうち、前記ドーム部に連なる内周壁にボトムリフォーム加工して、前記内周壁に前記径方向の外側へ向けて凹む凹部を成形するボトムリフォーム工程と、を備え、前記ボトムリフォーム工程では、前記ボトム支持部材により、前記缶胴における前記缶底側の端部と、前記缶底のうち、前記環状凸部における前記缶軸方向に沿う当該缶の外側の端縁と、前記缶底のうち、前記環状凸部における前記内周壁の前記径方向の外側に配置されるとともに、前記缶胴の前記缶底側の端部に接続し、前記缶胴の前記缶底側の端部から前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向かうに従い漸次前記径方向の内側へ向けて傾斜する凹曲面状をなす外周壁の、前記缶軸方向に沿う一部と、を支持することを特徴とする。
また本発明は、缶胴と缶底とを有する有底筒状の缶の、前記缶底に、缶軸方向に沿う当該缶の内側へ向けて凹むドーム部と、前記ドーム部の外周縁部に連なり、前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向けて突出するとともに缶軸回りの周方向に沿って延びる環状凸部と、が形成され、前記環状凸部のうち、前記ドーム部に連なる内周壁に、缶軸に直交する径方向の外側へ向けて凹む凹部を成形するボトムリフォーム機構であって、前記缶底に対して接近離間するとともに、前記缶底に当接可能なボトム支持部材と、前記缶胴の開口端部に対して接近離間するとともに、前記開口端部に当接可能なトップ支持部材と、前記内周壁に対して接近離間するとともに、前記内周壁に当接可能な凸部を有する成形部材と、を備え、前記ボトム支持部材は、前記缶胴における前記缶底側の端部と、前記缶底のうち、前記環状凸部における前記缶軸方向に沿う当該缶の外側の端縁と、前記缶底のうち、前記環状凸部における前記内周壁の前記径方向の外側に配置されるとともに、前記缶胴の前記缶底側の端部に接続し、前記缶胴の前記缶底側の端部から前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向かうに従い漸次前記径方向の内側へ向けて傾斜する凹曲面状をなす外周壁の、前記缶軸方向に沿う一部と、を支持するように構成され、前記ボトム支持部材及び前記トップ支持部材により、前記缶を缶軸方向に沿う当該缶の内側へ向けて挟持し、かつ、前記径方向の内側へ向けて支持した状態で、前記凸部が前記内周壁を前記径方向の外側に向けて押圧して前記凹部を成形するように構成されたことを特徴とする。
また、本発明のボトム支持部材は、前述のボトムリフォーム機構に用いられることを特徴とする。
このように、缶胴の開口端部にトップ支持部材を当接させて、缶を支持するようにしたので、缶に対するトップ支持部材のストロークを小さく抑えることができ、生産速度を速めることができる。
つまり、缶軸方向に沿う缶の縦断面視において、ボトム支持部材が缶を、径方向、缶軸方向、及びこれらの複合する方向へ向けて、3点支持するようにしたので、下記の効果が得られる。
また、ボトム支持部材が、環状凸部における缶軸方向に沿う缶の外側の端縁に当接して、該端縁を缶軸方向に沿う缶の内側へ向けて支持するので、缶が缶軸方向に振れるようなことが防止される。
また、ボトム支持部材が、環状凸部の外周壁に当接して、該外周壁を径方向の内側へ向けて、かつ、缶軸方向に沿う缶の内側へ向けて支持するので、上述した作用効果がより顕著に得られる。
また、ボトム支持部材が、環状凸部の外周壁に当接することで、環状凸部における缶軸方向に沿う缶の外側の端縁に作用する、缶軸方向への缶の支持荷重が分散されて、前記端縁の変形が抑制される。
これにより、ボトムリフォーム工程の前工程において、たとえ缶底形状のばらつき(成形誤差)が生じた場合であっても、ボトムリフォーム工程においては、環状凸部の凹曲面状の外周壁に対してボトム支持部材を確実に当接させることができ、上述した作用効果が安定して奏功されるのである。
さらに、ボトム支持部材を環状凸部の外周壁に対して、缶軸方向の一部で接触させるという簡単な構成によって、上述した優れた作用効果が得られるので、装置の構造を複雑にしてしまうこともない。
そして、ボトムリフォーム工程において、缶底にボトム支持部材を当接させ、かつ、ネック部にトップ支持部材を当接させて、缶を缶軸方向に沿う缶の内側へ向けて挟持し、かつ、径方向の内側へ向けて支持した状態で、環状凸部の内周壁をボトムリフォーム加工し、凹部を成形する。
その後、フランジング工程において、フランジ予定部をフランジング加工して、フランジ部を成形する。
本実施形態の缶10は、飲料等の内容物が充填、密封される2ピース缶である。
図1に示されるように、缶10は、缶胴(ウォール。なお、胴部という場合がある)1と、缶底(ボトム。なお、底部という場合がある)2と、を有する有底筒状をなしており、内部に内容物が充填された状態で、図示しない缶蓋を缶胴1の開口端部に巻締めることで、密封される。
また、缶軸Oに直交する方向を径方向といい、径方向のうち、缶軸Oに接近する向きを径方向の内側、缶軸Oから離間する向きを径方向の外側という。また、缶軸O回りに周回する方向を周方向という。
また、図1に示される縦断面視において、各構成要素の説明に用いる「曲線(凹曲線・凸曲線)」、「直線」、「接線」とは、特に説明を行わない限り、この縦断面視で缶10の外面における各種の線を表している。
また、缶胴1における下端部は、缶底2により閉じられている。缶胴1の外径は、例えば65〜67mmである。
また、外周壁9の上端部と缶胴1の下端部、及び、外周壁9の下端部(径方向内側の端部)と内周壁8の下端部(径方向外側の端部)は、図1に示される缶軸O方向に沿う缶10の縦断面視において、互いの接続部分において共通の接線を有するように、滑らかに連なっている。
図1の縦断面視で、外周壁9における上端部と下端部との間に位置する中間部は、径方向内側及び上方へ向けて(つまり内径側・斜め上方へ向けて)凹む曲線状(凹曲線)に形成されている。
また中間部は、この縦断面視における缶10の外面形状が、単一の円弧で形成されていなくてもよく、例えば、曲率半径が互いに異なる複数の円弧を組み合わせて形成されていてもよい。また、複数の円弧同士の間に、直線部分を有していてもよい。
また、内周壁8の上端部(凹部11)とドーム部5の下端部(外周縁部)は、図1の縦断面視で、互いの接続部分において共通の接線を有するように、滑らかに連なっている。
またこの縦断面視において、内周壁8の上方部分(凹部11)は、径方向外側へ向けて凹む曲線状をなしている。
図1の縦断面視で、内周壁8における上方部分と下方部分は、互いの接続部分において共通の接線を有するように、滑らかに連なっている。
本実施形態の缶10は、図3に示されるように、板材打ち抜き工程、絞りしごき工程(カッピング工程及びDI工程を含む)、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程、ボトムリフォーム工程、及び、フランジング工程をこの順に経て、製缶される。
Al合金材料からなる鋳塊に熱間圧延、冷間圧延及び焼鈍を施して所定板厚の中間板材を形成した後に、該中間板材に冷間仕上げ圧延を施すことにより最終板厚とされた圧延材を用意し、この圧延材を打ち抜いて、図2(a)に示されるように、円板状の板材(ブランク)Wを成形する(打ち抜き加工する)。
次に、図2(b)に示されるように、板材Wをカッピングプレスによって絞り加工して、カップ状体W1に成形する。
さらに、図2(c)に示されるように、DI加工装置によって、カップ状体W1に再絞りしごき加工を施して、有底筒状の缶W2に成形する。
つまり本明細書でいう「絞りしごき工程(絞りしごき加工)」には、カッピング工程(カッピング加工)及びDI工程(DI加工)が含まれる。
その結果、所定の内径を有する再絞り加工されたカップ状体(不図示)が成形される。引き続き、再絞り加工されたカップ状体を複数のアイアニング・ダイを順次通過させて徐々にしごき加工をして、カップ状体の周壁をしごいて該周壁を延伸させ、周壁高さを高くするとともに壁厚を薄くして、有底筒状の缶W2を成形する。
この缶W2は、上述のように周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高くされる。
このようにして、缶の胴部をなす缶胴1と、缶の底部をなすとともに、ドーム部5及び環状凸部6(ただし凹部11が成形されていないもの)を備えた缶底2と、を有する缶W2が成形される。
次に、缶W2の開口端部W2aをトリミングする。
すなわち、上記DI加工装置によって形成された缶W2の開口端部W2aは、耳が形成されて高さが不均一であるため、この缶W2の開口端部W2aを切断してトリミングすることにより、図2(d)に示されるように、缶胴1の開口端部W3aにおける缶軸O方向に沿う周壁の高さを、全周にわたって均等にする。
これにより、缶胴1の開口端部W3aに耳を有さない(耳が切除された)、トリミング加工後の缶W3が得られる。
この缶W3を洗浄し、潤滑油等を除去した後に、表面処理を施して乾燥し、次いで外面印刷、外面塗装を施し、その後内面塗装を施す。
外面塗装は、例えば、ポリエステル系塗料を使用して、缶W3の缶胴1の外面に印刷、塗装をし、この外面印刷及び外面塗装がされた缶W3をオーブンで加熱乾燥する。なお、オーブンにより加熱乾燥する際は、缶胴1の開口端部W3aから内部へ向けて、略水平方向に延在する搬送用ピンが挿入され、該搬送用ピンが缶W3を支持しつつ、チェーンやモータ等を備えた駆動機構により、移動させられる。また内面塗装は、缶W3の内面に、例えば、エポキシ系塗料を使用して塗装をした後、オーブンで加熱乾燥する。
次いで、缶W3にネッキング加工を施す。
すなわち、図2(d)に示される缶胴1の開口端部W3aをネッキング加工して、図4、図6及び図8の缶10に示されるように、缶胴1の開口端部以外の部位(缶10の最外径部分)よりも、缶軸O方向に沿う当該缶10の外側(缶10の上方)へ向かうに従い段階的に又は漸次縮径するネック部3と、ネック部3よりも缶軸O方向に沿う当該缶W3の外側に位置するフランジ予定部12と、を成形して、缶10とする。
図6に示される缶10の縦断面視で、ネック部3の複数の段部13a〜13dは、径方向外側及び上方へ向けて(つまり外径側・斜め上方へ向けて)凸となる曲線状(凸曲線)に形成されている。また、これら段部13a〜13dは、最も下方に位置する段部13aから最も上方に位置する段部13dへ向けて、徐々に外径が小さくされている。
なお、図示の例では、ネック部3の段部13a〜13dが、計4つ形成されているが、段部の数はこれに限定されるものではなく、3つ以下でもよいし、或いは5つ以上であってもよい。
図8に示される縦断面視で、ネック部3は、缶胴1における開口端部以外の部位、及び、フランジ予定部12に対して、それぞれの接続部分で共通の接線を有するように、滑らかに連なっている。
また、フランジ予定部12は、円筒状に成形される。
次いで、缶10の缶底2に、ボトムリフォーム機構30を用いてボトムリフォーム加工を施す。なお、ここでは主としてボトムリフォーム加工について説明し、ボトムリフォーム機構30の構成については、後述する。
図4〜図9に示されるように、ボトムリフォーム工程では、缶底2にボトム支持部材14を当接させ、かつ、缶胴1の開口端部に位置するネック部3にトップ支持部材15を当接させて、缶10を缶軸O方向に沿う当該缶10の内側へ向けて挟持し、かつ、缶軸Oに直交する径方向の内側へ向けて支持した状態で、環状凸部6のうち、ドーム部5に連なる内周壁8にボトムリフォーム加工して、内周壁8に径方向の外側へ向けて凹む凹部11(図1参照)を成形する。
図4〜図6に示されるように、缶胴1のネック部3に、缶軸O方向に並ぶ複数の段部13a〜13dが形成される場合には、ボトムリフォーム工程において、複数の段部13a〜13dのうち、いずれかの段部に対して、トップ支持部材15を当接させる。
より詳しくは、図6に示されるように、トップ支持部材15を、ネック部3の複数の段部13a〜13dのうち、缶軸O方向に沿う当該缶10の最も外側(最も缶10の上方)に位置する段部13d以外の段部13a〜13cのいずれかに、当接させる。或いは、トップ支持部材15を、ネック部3の複数の段部13a〜13dのうち、缶軸O方向に沿う当該缶10の最も内側(最も缶10の下方)に位置する段部13a以外の段部13b〜13dに、当接させる。
図4、図5及び図7に示されるように、ボトムリフォーム工程では、ボトム支持部材14により、缶胴1における缶底2側の端部(缶胴1の下端部)と、缶底2のうち、環状凸部6における缶軸O方向に沿う当該缶10の外側の端縁(つまり接地部7)と、缶底2のうち、環状凸部6における外周壁9の缶軸O方向に沿う一部と、を支持する。
ボトムリフォーム工程では、図5において、上述のようにトップ支持部材15及びボトム支持部材14により缶10を缶軸O方向に沿う両側から、かつ、径方向の内側へ向けて支持した状態で、リンク機構56を用いて成形ローラ16を缶底2に対して径方向に移動させて、内周壁8に成形ローラ16を当接させるとともに、この内周壁8上を周方向の全周にわたって転動させることにより、該内周壁8に、周方向の全周にわたって延びる環状の凹部11を成形する。
次いで、図6に示される、缶胴1の開口端部に位置するフランジ予定部12をフランジング加工して、図1に示されるフランジ部4を成形する。
なお、本実施形態のフランジング工程では、スピンフロー成形により、ネック部3の複数の段部13a〜13dを、缶胴1の開口端部以外の部位(缶胴1の最外径部分)から缶軸O方向に沿う当該缶10の外側(缶10の上方)へ向かうに従い漸次縮径するテーパ面に再成形(リフォーム)し、かつ、フランジ予定部12をフランジ部4に成形している。具体的には、成形後のネック部3及びフランジ部4の形状が、図1に示される缶10の開口端部の形状となるように、この開口端部をフランジング加工する。
ただしこれに限定されるものではなく、ネック部3の複数の段部13a〜13dを、上記テーパ面に再成形することなく、製缶された缶10の最終的な外観形状としてそのまま残してもよい。
このボトムリフォーム機構30は、上述したネッキング工程を経て、缶胴1の開口端部にネック部3とフランジ予定部12が成形された缶10の缶底2に対して、ボトムリフォーム加工を行うためのものであり、図示しないボトムリフォーム装置の一部(要部)を構成している。
なお、ボトムリフォーム装置のうち、本実施形態で説明するボトムリフォーム機構30以外の構造については、例えば上述の特許文献2(米国特許第5704241号明細書)に記載の缶底再成形装置と同様の構造を用いることができるため、本実施形態ではその説明を概ね省略する。
図4〜図9に示されるように、ボトムリフォーム機構30は、缶底2に対して接近離間するとともに、缶底2に当接可能なボトム支持部材14と、缶胴1の開口端部に対して接近離間するとともに、この開口端部に位置するネック部3に当接可能なトップ支持部材15と、内周壁8に対して接近離間するとともに、内周壁8に当接可能な凸部17を有する成形ローラ(成形部材)16と、を備えている。
なお、ボトム支持部材14及びトップ支持部材15の各中心軸は、ボトムリフォーム加工する缶10の缶軸Oに、同軸に配置されている。
具体的には、図4、図5及び図7に示されるように、ボトム支持部材14は、缶胴1における缶底2側の端部(缶胴1の下端部)に当接する缶胴支持部18と、缶底2のうち、環状凸部6における缶軸O方向に沿う当該缶10の外側の端縁(接地部7)に当接するノーズ支持部19と、缶底2のうち、環状凸部6における外周壁9の缶軸O方向に沿う一部に当接する外周壁支持部20と、を備えている。
ノーズ支持部19は、筒状体22の内周面から径方向内側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びるリング板状をなしており、その缶底2側を向く端面が、ボトム支持部材14の中心軸(缶軸O)に垂直な平面状に形成されているとともに、該端面が接地部7に当接する。
外周壁支持部20は、筒状体22の上端部に位置しているとともにリング状をなしており、缶胴支持部18とノーズ支持部19との間(詳しくはこれら18、19の前記中心軸方向の間であり、かつ前記中心軸に直交する径方向の間)に、配置されている。外周壁支持部20において前記中心軸方向のトップ支持部材15側及び前記径方向の内側を向く面は、缶10の外周壁9に対して缶軸O方向の一部において当接可能な凸曲面状をなしている。
また、缶胴支持部18、ノーズ支持部19、及び外周壁支持部20のうち、1つ(の支持部)が他の2つ(の支持部)とは別体とされ、或いは、これら3つ(の支持部)が互いに別体とされている。本実施形態では、缶胴支持部18と、ノーズ支持部19及び外周壁支持部20とが、互いに別体に形成されており、缶10の形状にあわせて個別に交換可能である。
図4〜図6に示されるように、トップ支持部材15が、ネック部3における複数の段部13a〜13dのいずれかを支持する場合には、図6に示される縦断面視で、ネック支持部21は、凹曲線状に形成される。具体的に本実施形態では、ネック支持部21が、段部13a〜13dのうち所定の段部の形状に対応して、トップ支持部材15の周壁の内周面から凹むとともに、周方向に沿って延びる環状の溝部に形成されている。
なお、この場合、ネック支持部21が前記中心軸(缶軸O)に対して傾斜する傾斜角θ(図9参照)は、例えば、20〜40°であり、本実施形態では30°である。
また、特に図示していないが、成形ローラ16は、その中心軸が缶軸O上と、缶軸Oから径方向に偏倚した位置との間を移動するように、缶10に対して径方向に往復移動可能である。
なお、本実施形態に用いられるボトムリフォーム装置は、上述したように、ボトムリフォーム機構30以外の構造は周知のものであるため、ここでは概略構成の説明にとどめ、また装置の図示については省略する。
ボトムリフォーム装置は、装置の基体となる装置フレームと、該装置フレームに対して回転軸回りに回転するスターホイール(ターレット)と、該スターホイールの外周に複数形成された各ポケットに対応してそれぞれ設けられるボトムリフォーム機構30と、を備えている。
具体的には、スターホイールの各ポケットに保持される缶10の缶軸Oに対して同軸となるように、各ボトムリフォーム機構30のトップ支持部材15及びボトム支持部材14が、配設されている。
前記カムは、スターホイールの中心軸回りへ向かうに従い該中心軸方向の位置が変位する所定の軌道を構成している。この軌道に沿ってボトム用カムフォロアが案内されることにより、該ボトム用カムフォロア及びボトム支持部材14は、スターホイールが保持する缶10に対して、缶軸O方向に沿って所定のストロークSBの範囲で往復移動する。
前記カムは、スターホイールの中心軸回りへ向かうに従い該中心軸方向の位置が変位する所定の軌道を構成している。この軌道に沿って案内されることにより、ローラ用カムフォロアは、スターホイールが保持する缶10に対して、缶軸O方向に沿って所定のストロークSRの範囲で往復移動する。なお、ローラ用カムフォロアのストロークSRは、ボトム用カムフォロアのストロークSBよりも大きく設定されている。そして、ローラ用カムフォロアに連結する成形ローラ16は、該ローラ用カムフォロアがカムに案内されることにより、スターホイールが保持する缶10に対して、缶軸O方向に沿って所定のストロークSBの範囲で往復移動し、かつ、リンク機構56によりストロークSRとSBの差分(SR−SB)に応じて径方向に変換されたストロークの範囲で、缶軸O上と缶軸Oから偏倚した位置との間を径方向にも往復移動する。
つまり成形ローラ16は、装置フレームに対してはスターホイールの中心軸回りに回転(公転)させられつつ、該スターホイールのポケットに保持された缶10に対しては缶軸O回りに回転(自転)させられる。
前記カムは、スターホイールの中心軸回りへ向かうに従い該中心軸方向の位置が変位する所定の軌道を構成している。この軌道に沿ってトップ用カムフォロアが案内されることにより、該トップ用カムフォロア及びトップ支持部材15は、スターホイールが保持する缶10に対して、缶軸O方向に沿って所定のストロークST1の範囲で往復移動する。ただし、トップ支持部材15は、缶10のネック部3に当接してからは弾性部材の作用により、それ以上の缶10へ向けた前進移動が規制されるようにされており、実際のストロークST2は、前記ストロークST1よりも僅かに小さく(数mm程度小さく)設定されている。また、上記弾性部材の作用により、トップ支持部材15は、缶10を缶軸O方向に沿う缶10の内側へ向けて付勢しつつ、支持するようになっている。
なお、本実施形態では、ボトムリフォーム機構30のボトム支持部材14、成形ローラ16、及びトップ支持部材15が、スターホイールに保持される缶10に対して、互いに係合するカムフォロア及びカムの作用によりそれぞれ移動させられる構成を用いて説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ボトムリフォーム機構30のボトム支持部材14、成形ローラ16、及びトップ支持部材15は、スターホイールが保持する缶10に対して、例えばエアシリンダやモータ等の駆動手段により移動させられる構成であってもよい。
このように、缶胴1の開口端部にトップ支持部材15を当接させて、缶10を支持するようにしたので、缶10に対するトップ支持部材15のストロークST1(ST2)を小さく抑えることができ、生産速度を速めることができる。
つまり、図5及び図7に示される缶軸O方向に沿う缶10の縦断面視において、ボトム支持部材14が缶10を、径方向、缶軸O方向、及びこれらの複合する方向へ向けて、3点支持するようにしたので、下記の効果が得られる。
また、ボトム支持部材14が、環状凸部6における缶軸O方向に沿う缶10の外側の端縁(接地部7)に当接して、該端縁を缶軸O方向に沿う缶10の内側(缶10の上方)へ向けて支持するので、缶10が缶軸O方向に振れるようなことが防止される。
また、ボトム支持部材14が、環状凸部6の外周壁9に当接して、該外周壁9を径方向の内側へ向けて、かつ、缶軸O方向に沿う缶10の内側へ向けて支持するので、上述した作用効果がより顕著に得られる。
また、ボトム支持部材14が、環状凸部6の外周壁9に当接することで、環状凸部6における缶軸O方向に沿う缶10の外側の端縁(接地部7)に作用する、缶軸O方向への缶10の支持荷重が分散されて、前記端縁の変形が抑制される。
これにより、ボトムリフォーム工程の前工程において、たとえ缶底2形状のばらつき(成形誤差)が生じた場合であっても、ボトムリフォーム工程においては、環状凸部6の凹曲面状の外周壁9に対してボトム支持部材14を確実に当接させることができ、上述した作用効果が安定して奏功されるのである。
さらに、ボトム支持部材14を環状凸部6の外周壁9に対して、缶軸O方向の一部で接触させるという簡単な構成によって、上述した優れた作用効果が得られるので、装置の構造を複雑にしてしまうこともない。
そして、ボトムリフォーム工程において、缶底2にボトム支持部材14を当接させ、かつ、ネック部3にトップ支持部材15を当接させて、缶10を缶軸O方向に沿う缶10の内側(缶10の中央)へ向けて挟持し、かつ、径方向の内側へ向けて支持した状態で、環状凸部6の内周壁8をボトムリフォーム加工し、凹部11を成形する。
その後、フランジング工程において、フランジ予定部12をフランジング加工して、フランジ部4を成形する。
なお、本実施形態では、ボトム支持部材14が備える缶胴支持部18と、ノーズ支持部19及び外周壁支持部20とが、互いに別体とされているので、これらの缶胴支持部18と、ノーズ支持部19及び外周壁支持部20と、を形状の異なるものに交換することにより、種々様々な缶10の形状に容易に対応できる。さらに、ノーズ支持部19と外周壁支持部20とを、互いに別体に形成してもよく、この場合、上述した作用効果がより顕著なものとなる。
すなわち、ネック部3に形成された複数の段部13a〜13dのうち、缶胴1の開口端部以外の部位(缶胴1の最外径部分)に最も近い段部13aよりは、それ以外の段部13b〜13dにおいて真円度(缶軸Oに垂直な横断面視における缶胴1の真円度)が確保されやすいことから、真円度の精度が高い段部13b〜13dにトップ支持部材15を当接させることで、成形精度を向上できるのである。
すなわち、ボトムリフォーム工程においては、上述したようにネック部3の段部13a〜13dを用いることにより、缶底2の成形精度を十分に確保して、缶10に所期する強度を付与することができ、かつ、ボトムリフォーム加工後には、ネック部3をテーパ面に再成形して、缶10の美観を高めることができる。
すなわち、内周壁8に、周方向に沿って延びる溝状の凹部11を、周方向に間隔をあけて複数成形してもよく、この場合、成形ローラ16以外の成形部材を用いてもよい。なお、成形ローラ16を使用する場合は、例えばこの成形ローラ16の外周縁部に、周方向に間隔をあけて複数の凸部17を突設すればよい。
前述の実施形態で説明した缶10の製造方法により、ネッキング工程において、ネック部3に計4つの段部13a〜13dを成形することとした。
また、トップ支持部材15として、缶10の下方から2段目の段部13bを支持可能なネック支持部21を有するもの(実施例1)と、最も缶10の上方に位置する最終段目の段部13dを支持可能なネック支持部21を有するもの(実施例2)と、を用意した。
上記条件にて缶10を製造して、生産ベースの缶10を任意に30缶抜き取り、検査金型を嵌めて缶10のがたつきを、人の手の感触により確認した。
実施例1では、すべての缶10に、がたつきは確認されなかった。
実施例2では、ほとんどの缶10にがたつきは確認されなかったが、検査金型との隙間(遊び)が若干大きい缶10が、極少量確認された。なお、これについて目視で確認したところ、ネック部3のうち段部13dに位置する部分に、周方向に僅かな波打ち状のしわが確認されたが、缶10の美観を損なうほどのものではなく、製品として出荷可能なレベルのものであった。
2 缶底
3 ネック部
4 フランジ部
5 ドーム部
6 環状凸部
7 接地部(環状凸部における缶軸方向に沿う缶の外側の端縁)
8 内周壁
9 外周壁
10 缶
11 凹部
12 フランジ予定部
14 ボトム支持部材
15 トップ支持部材
16 成形ローラ(成形部材)
17 凸部
18 缶胴支持部
19 ノーズ支持部
20 外周壁支持部
30 ボトムリフォーム機構
O 缶軸
W 板材
Claims (6)
- 板材を絞りしごき加工して、缶胴と缶底とを有する有底筒状の缶としつつ、
前記缶底に、
缶軸方向に沿う当該缶の内側へ向けて凹むドーム部と、
前記ドーム部の外周縁部に連なり、前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向けて突出するとともに缶軸回りの周方向に沿って延びる環状凸部と、を成形する絞りしごき工程と、
前記缶底にボトム支持部材を当接させ、かつ、前記缶胴の開口端部にトップ支持部材を当接させて、前記缶を前記缶軸方向に沿う当該缶の内側へ向けて挟持し、かつ、缶軸に直交する径方向の内側へ向けて支持した状態で、
前記環状凸部のうち、前記ドーム部に連なる内周壁にボトムリフォーム加工して、前記内周壁に前記径方向の外側へ向けて凹む凹部を成形するボトムリフォーム工程と、を備え、
前記ボトムリフォーム工程では、前記ボトム支持部材により、
前記缶胴における前記缶底側の端部と、
前記缶底のうち、前記環状凸部における前記缶軸方向に沿う当該缶の外側の端縁と、
前記缶底のうち、前記環状凸部における前記内周壁の前記径方向の外側に配置されるとともに、前記缶胴の前記缶底側の端部に接続し、前記缶胴の前記缶底側の端部から前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向かうに従い漸次前記径方向の内側へ向けて傾斜する凹曲面状をなす外周壁の、前記缶軸方向に沿う一部と、を支持することを特徴とする缶の製造方法。 - 請求項1に記載の缶の製造方法であって、
前記絞りしごき工程と、前記ボトムリフォーム工程と、の間に、
前記缶胴の開口端部をネッキング加工して、
前記開口端部以外の部位よりも、前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向かうに従い段階的に又は漸次縮径するネック部と、
前記ネック部よりも前記缶軸方向に沿う当該缶の外側に位置するフランジ予定部と、を成形するネッキング工程を備え、
前記ボトムリフォーム工程では、前記ネック部に前記トップ支持部材を当接させ、
前記ボトムリフォーム工程の後工程として、
前記フランジ予定部をフランジング加工して、フランジ部を成形するフランジング工程を備えることを特徴とする缶の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の缶の製造方法であって、
前記ボトムリフォーム工程では、前記内周壁に成形ローラを当接させるとともに、この内周壁上を缶軸回りの周方向の全周にわたって転動させることにより、前記内周壁に、前記周方向の全周にわたって延びる環状の前記凹部を成形することを特徴とする缶の製造方法。 - 缶胴と缶底とを有する有底筒状の缶の、
前記缶底に、
缶軸方向に沿う当該缶の内側へ向けて凹むドーム部と、
前記ドーム部の外周縁部に連なり、前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向けて突出するとともに缶軸回りの周方向に沿って延びる環状凸部と、が形成され、
前記環状凸部のうち、前記ドーム部に連なる内周壁に、缶軸に直交する径方向の外側へ向けて凹む凹部を成形するボトムリフォーム機構であって、
前記缶底に対して接近離間するとともに、前記缶底に当接可能なボトム支持部材と、
前記缶胴の開口端部に対して接近離間するとともに、前記開口端部に当接可能なトップ支持部材と、
前記内周壁に対して接近離間するとともに、前記内周壁に当接可能な凸部を有する成形部材と、を備え、
前記ボトム支持部材は、
前記缶胴における前記缶底側の端部と、
前記缶底のうち、前記環状凸部における前記缶軸方向に沿う当該缶の外側の端縁と、
前記缶底のうち、前記環状凸部における前記内周壁の前記径方向の外側に配置されるとともに、前記缶胴の前記缶底側の端部に接続し、前記缶胴の前記缶底側の端部から前記缶軸方向に沿う当該缶の外側へ向かうに従い漸次前記径方向の内側へ向けて傾斜する凹曲面状をなす外周壁の、前記缶軸方向に沿う一部と、を支持するように構成され、
前記ボトム支持部材及び前記トップ支持部材により、前記缶を缶軸方向に沿う当該缶の内側へ向けて挟持し、かつ、前記径方向の内側へ向けて支持した状態で、
前記凸部が前記内周壁を前記径方向の外側に向けて押圧して前記凹部を成形するように構成されたことを特徴とするボトムリフォーム機構。 - 請求項4に記載のボトムリフォーム機構であって、
前記ボトム支持部材は、
前記缶胴における前記缶底側の端部に当接する缶胴支持部と、
前記缶底のうち、前記環状凸部における前記缶軸方向に沿う当該缶の外側の端縁に当接するノーズ支持部と、
前記缶底のうち、前記環状凸部における前記外周壁の前記缶軸方向に沿う一部に当接する外周壁支持部と、を備え、
前記缶胴支持部、前記ノーズ支持部、及び前記外周壁支持部のうち、1つが他の2つとは別体とされ、或いは、これら3つが互いに別体とされていることを特徴とするボトムリフォーム機構。 - 請求項4又は5に記載のボトムリフォーム機構に用いられることを特徴とするボトム支持部材。
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