JP6414893B2 - 減塩調味料 - Google Patents

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Description

本発明は、減塩調味料に関し、より詳細には、塩化カリウムで塩化ナトリウムの一部が代替された減塩調味料に関する。
食塩摂取量は、高血圧、脳卒中、癌などの様々な疾病のリスクと強く関連しており、これら疾病の予防の観点からWHOは一日の食塩摂取量を5g未満にすることを推奨している。日本は、醤油、味噌等の食塩を多く含む調味料を日常的に使用する食文化を有し、WHO推奨食塩摂取量を直ちに導入すると混乱を招く可能性もあるため、厚生労働省は一日の目標食塩摂取量を男性9.0g未満、女性7.5g未満としている。日本においても健康志向の高まりとともに食塩摂取量は年々減少傾向にあるものの、未だ一日の平均食塩摂取量は10.6g(男性:11.4g、女性:9.8g)であり、約70%の人は目標量以上の食塩を摂取しているのが現状である(2010年)。このため、さらなる減塩(本明細書では、調味料中の塩化ナトリウム含有量を低減することを意味する)が必要である。
減塩達成手段としては、塩化カリウムで塩化ナトリウムを代替することが古くから知られている。しかしながら、塩化カリウムは、塩化ナトリウムにはない特有のえぐみ、渋味及び苦味(以下では、総称して「異味」という)を有し、これが減塩手段としての利用を妨げている。このような異味を軽減する手段としては、例えば、塩化カリウムと共にグルタミン酸ナトリウム及びアスパラギン酸ナトリウムを含有する調味料(特許文献1〜3)、塩化カリウムと共に特定の範囲でグルタミン酸又はアスパラギン酸を含有する調味料(特許文献7)、および塩化カリウムと共にγ―ポリグルタミン酸を含有する調味料(特許文献4及び5)が提案されている。また、クエン酸、酒石酸、フマル酸、乳酸及びそれらの混合物からなる群から選択される酸味料;カリウム塩;カルシウム塩;マグネシウム塩;および米粉を含む減塩調味料組成物が提案されている(特許文献6)。しかしながら、これらの調味料では、塩化カリウムによる異味を軽減するために添加される物質による特有の風味が加わり、自然な風味が損なわれるとの問題がある。
また、塩味を増強すると共に塩化カリウムの異味を低減する添加物として、各種減塩食品用原料が市販されている。しかしながら、これらの原料も、独特の風味を有しており、添加前の調味料が有していた風味を損ねてしまう問題がある。また、塩化カリウムの異味の低減効果は、所望の効果は得られず、これら原料による塩化カリウムの異味の抑制は十分とはいえない。
他方、近年、塩化カリウムによる代替とは異なるアプローチから塩化ナトリウムの含有量を低減した調味料に関する研究が行われている。例えば、岩畑らは、酢酸及び乳酸から選ばれる少なくとも1種の酸を添加することにより塩味を補強して塩化ナトリウムの含有量を低減する調味料を提案している(特許文献7)。また、下田は、嗅覚情報が味覚に及ぼす影響を利用して塩化ナトリウムの含有量を低減する調味料を提案し(非特許文献1及び2)、食酢、メチオナール、4-ヒドロキシ-2-(又は5-)エチル-5-(又は2-)メチル-3(2H)-フラノン(以下、HEMFと省略することがある)、及びイソアミルアルコールが塩化ナトリウムの塩味を増強する効果を有することを報告している(非特許文献1から4、特許文献8)。また、東方らや熊沢らはHEMFなどのフラノン類が塩化ナトリウムの塩味を増強する効果を有することを開示している(特許文献9から12)。
しかしながら、これらの物質を添加した従来の減塩調味料では、塩味を増強する効果が必ずしも満足できるものではなく、非減塩調味料と同様の風味を得るには更なる工夫が必要であった。また、これらの文献は、上記香気化合物によって塩化カリウムによる異味の問題を解消しようとするものではない。
特許第4060843号公報 特開2007-89557号公報 特開2007-289083号公報 国際公開WO00/21390 国際公開WO2007/108558 特表2010-521974号公報 国際公開WO2011/040505 国際公開WO2013/172049 特開2012-147769公報 特開2012-224773公報 特開2012-223147公報 国際公開WO2012/144604
香料、No.248、p21-27(2010) 食品と開発、Vol.47、No.12、p4-6(2012) 日本食品科学工学会第59回大会要旨集、p196(2012) 平成24年度日本食品科学工学会西日本支部大会、p7(2012)
本発明は、上述した従来の減塩調味料に伴う問題を解決すること、すなわち、非減塩調味料に近似する又はそれと同様の風味を有しながらも、大幅に塩化ナトリウムの含有量を低減可能な調味料を提供することを目的とする。
本発明者らは、減塩調味料に関し種々の研究を行う中で、意外にも、本醸造醤油から抽出された特定の香気化合物の組合せが、塩化カリウムによる異味を抑制し得ることを見出した。そこで、塩化カリウムにより塩化ナトリウムを代替して塩化ナトリウムの含有量を低減した調味料に、特定の香気化合物を組合せて添加したところ、塩化カリウムによる異味が軽減されるのみならず、塩化カリウムと協働して口に入れた直後の塩味が増強されてすっきりした塩味や好ましい刺激感が得られ、味の厚みやコクが増大された結果、非減塩調味料に近い又は同様の風味を有する減塩調味料を提供できることを見出した。
すなわち、本発明は、塩化ナトリウムと共に塩化カリウムを含む減塩調味料において、
(a)酢酸、
(b)HEMF、
(c)イソアミルアルコール、及び
(d)メチオナール
の少なくとも2種と、
(e)下記式(I)

(Xは、炭素数3以下のアルキル基またはアルコキシ基を示す。)
の化合物とを含有することを特徴とする、減塩調味料を提供するものである。
本発明の調味料では、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムによって代替して塩化ナトリウムの含有量を低減する。一方、塩化カリウムは、調味料に異味をもたらすが、本発明の調味料では、特定の香気化合物を組み合せて調味料に含有させることで異味が軽減され、さらに口に入れた直後にすっきりした塩味や好ましい刺激感を与え、味の厚みやコクを付与・強化するため、塩化カリウムによって塩化ナトリウムが代替されていない非減塩調味料に近い又は同様の風味を奏することができる。また、本発明の調味料では、添加される香気化合物によって調味料の元々の風味を損なうことが無く、その調味料本来の風味を保持することができる。
ここで、本発明により上記効果を奏する機序を、図1を参照しながら説明する。図1は、非減塩調味料、単に塩化ナトリウムを減らした減塩調味料、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで代替した減塩調味料、塩化カリウムを添加せずに上述した香気化合物を添加した減塩調味料、および塩化カリウムと共に上述したa〜eの香気化合物を添加した減塩調味料の各調味料を摂取した際の風味の感じ方を模式的に示す。図中、縦軸は風味の強さを示し、横軸は調味料を摂取した後の経過時間を示す。
味の感じ方は、感じる味の強度の経時的変化によって全体として異なる風味として感得されるため、摂取後の時間経過によってどのように味の強度が変化するかは全体の風味に対する重要な要素となる。
非減塩調味料を摂取した場合、図1に示す通り、摂取直後に強い味を感じ(先味)、その後急速に味の強度が低下し(中味)、一定時間経過後にはわずかに味を感じるが(後味)、さらに時間が経過すると味を感じなくなる。これにより、非減塩調味料はメリハリがあり厚みのある風味をもたらす。
以下、非減塩調味料との風味の差異を示す。単に塩化ナトリウムを減らした減塩調味料では、摂取直後の味強度が非常に小さく(先味)、その後も低レベルの味強度で平坦なまま推移する(中味、後味)。これにより、単に食塩を減量しただけの薄味の食品は、メリハリや厚み(こく味)のない物足りない風味と感じられてしまう(1)。
次に、減塩調味料に塩化カリウムおよび/又はa〜eの香気化合物を添加することによる風味の変化を見る。塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで代替した減塩調味料では、摂取直後に感じる味(先味)の強度は小さく、その後経時的に増大し(中味)、一定時間経過後でも味が残存する(後味)。中味の強い味は塩味として感じられるが、後味は、塩化カリウム特有のえぐみ、渋味及び苦味(異味)であり、これが調味料に好ましくない風味をもたらす(2)。
塩化カリウムに代え上述した香気化合物を添加し、塩化ナトリウムを減らした調味料では、単に塩化ナトリウムを減らした減塩調味料に比べ、摂取直後の塩味が増強される(先味)。しかし、その強度は、非減塩調味料に比べ非常に低く、物足りない味わいとなる(3)。
これらに対して、塩化カリウムと共に上述したa〜eの香気化合物を添加した調味料では、驚くべきことに、摂取直後の味の強度が非減塩調味料と同じレベルまで増大され(先味)、口に入れた瞬間に塩味や好ましい刺激を感じ、しかも、塩化カリウムによる異味が抑制され、後味についても非減塩調味料及び塩化カリウムを添加しない調味料に非常に近似するか又はそれと同様になる。この結果、本発明による調味料では、非減塩調味料に近似する又はそれと同様の、メリハリがあり、厚み(こく味)のある風味をもたらす(4,5)。なお、塩化カリウムと共に上述したa〜dの少なくとも2種又は3種の香気化合物と上述したeの香気化合物を添加した調味料では、後述する実施例で実証する通り、程度の差こそあれ、同様の挙動を示す。
図1は、本発明の減塩調味料によって奏される風味を他の調味料と比較して模式的に示すものである。
本発明による調味料は、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで代替した減塩調味料において、
(a)酢酸、
(b)HEMF、
(c)イソアミルアルコール、及び
(d)メチオナール
の少なくとも2種と、
(e)下記式(I)

(Xは、炭素数3以下のアルキル基またはアルコキシ基を示す。)
の化合物とを含有することを特徴とする。
本発明の減塩調味料では、塩化ナトリウムの一部が塩化カリウムで代替され、塩化ナトリウム濃度が低減される。調味料中の塩化ナトリウム濃度は、調味料の種類に応じて調整すればよいが、本発明の減塩調味料では塩化カリウムと香気化合物との協働により塩化ナトリウム様の塩味を増強する結果、塩化ナトリウム濃度を大幅に低減することができるため、10%(w/v)以下の濃度に調整することが好ましく、0.5〜10.0%(w/v)の濃度に調整することがより好ましく、1.0〜5.0%(w/v)の濃度に調整することがさらに好ましい。また、調味料中の塩化カリウム濃度も、効果的な減塩を達成しながら、香気化合物と協働して塩化ナトリウム様の塩味を増強する点から、調味料の種類に応じて0.5〜9.0%(w/v)とすることが好ましく、0.8〜6.0%(w/v)とすることがより好ましく、1.0〜5.0%(w/v)とすることが特に好ましい。
また、塩化カリウムによる代替前の塩化ナトリウム濃度と比較して、調味料中の塩化ナトリウム濃度が代替前の80%以下となっていることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが特に好ましい。
塩化ナトリウムと塩化カリウムの重量比も、同様の観点から9:3〜3:9とすることが好ましく、9:3〜3:5とすることがより好ましく、7:4〜4:7とすることがさらに好ましい。
本発明の調味料に含まれる塩化ナトリウム及び塩化カリウムは、食品用として許容されるものであれば、如何なる資源によるものでも如何なる方法で得られるものでもよい。例えば、様々な天然資源から得ることができ、化学的に合成することもできる。また、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを含有する食材を通じて調味料に含有させることもできる。また、市販の食塩又はこれら化合物を含有する市販の食品添加物を通じて調味料に含有させてもよい。
本発明の調味料は、上述の通り、塩化ナトリウムの一部を代替した塩化カリウムと共に、
(a)酢酸、
(b)HEMF、
(c)イソアミルアルコール、及び
(d)メチオナール
の少なくとも2種と、
(e)下記式(I)

(Xは、炭素数3以下のアルキル基またはアルコキシ基を示す。)
の化合物とを含有する。
驚くべきことに、これら香気化合物を組み合せると、塩化カリウムによる異味が軽減されると共に先味としての塩味が増強され、味のメリハリ、すっきりした塩味、並びに味の厚み及びコクを感じ取ることができ、元の非減塩調味料に近い風味となる。これらの特長は、たとえば醤油系調味料の場合、非減塩調味料と同様の醤油の風味を付与する。
酢酸としては、工業的に合成された高純度の酢酸を用いてもよく、酢酸を多く含む食酢を用いることもできる。食酢としては、醸造酢、穀物酢、米酢、果実酢、黒酢などの市販の食酢類を使用することができる。また、高酸度食酢は、酢酸濃度が高く添加量を少なくできる点から好ましい食酢の1つである。
HEMFは、4−ヒドロキシ−2−エチル−5−メチル−3(2H)−フラノン、4−ヒドロキシ−5−エチル−2−メチル−3(2H)−フラノン又はこれらの化合物の任意の割合での混合物であるが、これらの化合物は互変異性体であるため、通常、混合物の状態で存在する。HEMFとしては、食品添加物として市販されている物やHEMFが含有されている塩味組成物等を使用して含有させてもよく、微生物発酵により生成されるHEMFを高濃度で含有する組成物や、味噌や醤油などの発酵食品又はこれら発酵食品から抽出した濃縮物を添加して含有させることができる。
イソアミルアルコールは、3-メチル-1-ブタノール又はイソペンチルアルコールとも称され、ラム酒又はウイスキー様の香気を有することが知られている。イソアミルアルコールは、果実、野菜、乳製品、酒類、発酵食品等に含まれているが、化学的方法または生化学的方法により合成されたものや、HEMFと同様に、微生物発酵により生成されるイソアミルアルコールを高濃度で含有する組成物や、味噌や醤油などの発酵食品又はこれら発酵食品から抽出した濃縮物を添加して含有させることができる。
メチオナールは、3−メチルチオプロパナール、3−(メチルチオ)プロパナール、又は3−(メチルチオ)メチオナールプロピオンアルデヒドとも称され、ジャガイモ様の香気を有することが知られている。メチオナールは、芋等に含まれているが、メチオニンと糖とのメイラード反応などにより化学合成されたものや、HEMFやイソアミルアルコールと同様に、微生物発酵により生成されるメチオナールを高濃度で含有する組成物や、味噌や醤油などの発酵食品又はこれら発酵食品から抽出した濃縮物を添加して含有させることができる。
式(I)の化合物は、上述の構造を有し、食用に使用可能であればいかなる化合物でもよい。式中のXは、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基であり、中でも炭素数1〜2のアルキル基またはアルコキシ基がより好ましく、メチル基又はメトキシ基が特に好ましい。
式(I)で表される具体的化合物としては、例えば、2−メチルフェノール、2−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、2−プロポキシフェノールなどを挙げることができ、中でも、2−メチルフェノールまたは2−メトキシフェノールが好ましい。
式(I)の化合物は、化学的方法または生化学的方法により合成されたものや、微生物発酵により生成される式(I)の化合物を高濃度で含有する組成物や、各種食品から抽出した濃縮物を添加して含有させることができる。
好ましい式(I)の化合物である2−メチルフェノールは、o−メチルフェノールまたはo−ヒドロキシトルエンとも称される。2−メチルフェノールは、各種の発酵食品や燻製食品等に含まれているが、化学的方法または生化学的方法により合成されたものや、HEMF、イソアミルアルコールやメチオナールと同様に、微生物発酵により生成される2−メチルフェノールを高濃度で含有する粗生物や、味噌や醤油などの発酵食品又はこれら発酵食品から抽出した濃縮物を添加して含有させることができる。
2−メトキシフェノールは、o−メトキシフェノール、グアイアコール、メチルカテコールまたはカテコールメチルエーテルとも称される。2−メトキシフェノールは、酒類やコーヒー、鰹節などに含まれているが、化学的方法または生化学的方法により合成されたものや、HEMF、イソアミルアルコールやメチオナールと同様に、微生物発酵により生成される2−メトキシフェノールを高濃度で含有する組成物や、味噌や醤油などの発酵食品又はこれら発酵食品から抽出した濃縮物を添加して含有させることができる。
上記の香気成分は、上記(a)〜(d)の2種以上と、式(I)の化合物の少なくとも1種とを組み合せればよいが、上記(a)〜(d)をより多く組み合わせるほど異味軽減効果及び塩味増強効果が増大し、元の非減塩調味料により近い風味が得られる。従って、上記(a)〜(d)の香気化合物の3種以上を式(I)の化合物と組み合せることがより好ましく、上記(a)〜(d)の香気化合物の4種を式(I)の化合物と組み合せることがさらに好ましい。
上記(a)〜(d)の2種と式(I)の化合物との好ましい組み合わせとしては、酢酸及びHEMFと式(I)の化合物(好ましくは2−メチルフェノール及び/又は2−メトキシフェノール)との組み合わせを挙げることができる。これらの組み合わせでは、塩化カリウムと協働して十分な塩味増強効果が得られると共に、塩化カリウムに起因する異味も十分に軽減することができる。
上記(a)〜(d)の3種と式(I)の化合物との好ましい組み合せとしては、酢酸、HEMF及びイソアミルアルコールと式(I)の化合物(好ましくは2−メチルフェノール及び/又は2−メトキシフェノール)との組合せ、並びに酢酸、HEMF及びメチオナールと式(I)の化合物(好ましくは2−メチルフェノール及び/又は2−メトキシフェノール)との組み合わせを挙げることができる。これらの組み合わせでは、より大きな塩味増強効果と異味軽減効果が得られる。
本発明における特に好ましい組合せは、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール及びメチオナールと式(I)の化合物(好ましくは2−メチルフェノール及び/又は2−メトキシフェノール)との組み合わせである。これらの香気化合物の組み合わせは、最も顕著な塩味増強効果及び異味抑制効果を奏し、非減塩調味料と遜色ない風味をもたらす。
これら香気化合物の調味料中の含有量は、十分な塩味増強効果及び異味抑制効果を発揮すると共に、調味料本来の風味に影響しない範囲とすることが好ましく、各成分の特性及び添加される調味料の種類に応じて適宜含有量を調整することが好ましい。
具体的には、式(I)化合物の含有量は、0.001ppm〜0.4ppmとすることが好ましく、0.005ppm〜0.3ppmとすることがより好ましく、0.01〜0.2ppmとすることがさらに好ましい。酢酸の含有量は、1ppm〜2,000ppmとすることが好ましく、20ppm〜1,500ppmとすることがより好ましく、30ppm〜800ppmとすることがさらに好ましい。HEMF含有量は、0.2ppm〜600ppmとすることが好ましく、1ppm〜400ppmとすることがより好ましく、3ppm〜100ppmとすることがさらに好ましい。イソアミルアルコール含有量は、0.1ppm〜50ppmとすることが好ましく、0.5ppm〜40ppmとすることがより好ましく、1ppm〜30ppmとすることがさらに好ましい。メチオナール含有量は、0.001ppm〜0.5ppmとすることが好ましく、0.005ppm〜0.4ppmとすることがより好ましく、0.01ppm〜0.3ppmとすることがさらに好ましい。
同様の点から、これら香気化合物全体の調味料中の含有量は、1〜3000ppmが好ましく、10〜1000ppmがより好ましい。また、塩化ナトリウム及び塩化カリウムに対する重量比は、できるだけ塩化ナトリウムの含有量を減らしつつ、元の非減塩調味料の塩味を含む風味にできるだけ近づけるために、NaCl:KCl:香気化合物=20〜400:20〜400:0.01〜1とすることが好ましく、NaCl:KCl:香気化合物=50〜200:50〜200:0.01〜1とすることが特に好ましい。
また、香気化合物間の重量比は、酢酸を、HEMF1重量部に対して0.1〜20重量部とすることが好ましく、1〜10重量部とすることがより好ましい。また、メチオナールを、同様の点から、HEMF1重量部に対して、0.0001〜5重量部とすることが好ましく、0.0005〜2重量部とすることがより好ましい。また、イソアミルアルコールも、同様の点から、HEMF1重量部に対して、0.001〜5重量であることが好ましく、0.01〜2重量であることがより好ましい。また、式(I)化合物も、同様の点から、HEMF1重量部に対して、0.0001〜2重量であることが好ましく、0.0005〜0.2重量であることがより好ましい。
なお、これら香気成分の調味料中の含有量は、食品添加物の添加量だけでなく、原料に使用する食品原料の配合量によっても調整することができる。また、対象とする調味料の種別や組成によっては、原料に由来する香気成分とは別に、上記の分量の各成分を、減塩した調味料に含有させることによって、本発明の目的を達成することができる。
本発明の減塩調味料は、上述した事項以外は、通常の調味料となんら変わるものではなく、調味料の種類に応じて他の成分を選択・添加してよく、調製方法についても特に制限はなく、従来の調味料の製法に従って調製すればよい。
他の成分としては、例えば、エキス類、タンパク加水分解物などの天然調味料、醤油、味噌、酸味料、香料、香辛料抽出物等が挙げられ、いずれも公知の方法で調製することができ、市販品を使用することもできる。これらの成分は、液体又は固体の何れの形態であってもよく、単独で又は2種以上を組み合せて添加することができる。
エキス類としては、特に限定されないが、例えば、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキス等の畜肉エキス;鰹エキス、牡蠣エキス、昆布エキス等の魚介エキス;オニオンエキス、椎茸エキス等の野菜エキス;酵母エキス等が挙げられる。
タンパク加水分解物としては、特に限定されないが、大豆、小麦、とうもろこし等の植物性タンパク質、または牛、豚、鶏、魚等の動物性タンパク質を、酵素を用いて加水分解した分解物、及び麹を利用して加水分解した分解物が挙げられる。
醤油としては、特に限定されないが、例えば、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、再仕込醤油、白醤油等の液状の醤油が挙げられる。味噌・麹としては、特に限定されないが、例えば、米味噌、麦味噌、豆味噌、調合味噌等、塩麹、米麹、しょうゆ麹が挙げられる。
酸味料としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸等が挙げられる。香料としては、例えば、植物性又は動物性の天然香料、合成香料等が挙げられる。
香辛料抽出物としては、例えば、コショウ抽出物、バニラ抽出物、ローレル抽出物、シナモン抽出物など既存添加物名簿収載品目リストに香辛料抽出物として掲載されているもの等が挙げられる。その他にも、乳糖、麦芽糖、デキストリン、澱粉、グラニュー糖、ザラメ糖、白糖等の糖類や、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、無機塩系調味料などの各種調味料も必要により使用可能である。
上記成分以外にも、水、味醂などの調味料、砂糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類、イノシン酸ナトリウムなどのうま味調味料、グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸、かつお節、昆布などの風味成分又はそのだし汁などを、その目的とする味覚に応じて適宜使用することができる。
本発明は、例えば、麺つゆ類、煮物つゆ類、鍋つゆ類、ぽん酢醤油類、だし醤油類、ドレッシング類、焼き肉用調味料類、洋食調味料類、中華調味料類、和食調味料類などの各種調味料の減塩化に適用でき、各調味料に応じて、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び上記香気成分の含有量、並びに他の成分及びその含有量を適宜調整して減塩調味料とすることができる。本発明は、これら調味料の実効性のある減塩化を可能とする。
以下、実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
1.塩味を増強する香気成分の探索
醤油を封入した低密度ポリエチレン(LDPE)パウチを溶媒に浸漬してLDPEフィルムを透過した香気成分を抽出するLDPEパウチ抽出法により、醤油由来の香気濃縮物を取得した。
具体的には、市販の本醸造醤油25mLをLDPEパウチ(9×5cm、フィルム厚40μm)に封入した試料を4個作製し、これらをジエチルエーテル40mLが入った200mL容の密閉容器に入れ、30℃で香気成分の抽出を行った。60分間経過後、ジエチルエーテルを採取し、常法により香気濃縮物を得た。
香気濃縮物は醤油のうまみと塩味を強く連想させるものであったので、これをGC−MSにおい嗅ぎ分析に供した。GC−MSにおい嗅ぎ分析とは、香気濃縮物を溶媒で順次希釈しながら、その一定量をGC−MS分析に供し、検出器の直前でキャリヤーガスを分割し、一方を検出器に、他方を外部に取り出し溶出してくるピークのにおいを醤油のにおい評価に熟練した者が嗅ぐ方法である。実施例1においては、3名で評価を行った。GC−MS−におい嗅ぎ分析の条件は、次の通りとした。
装置;島津製作所製GCMS−QP2010 Plus、におい嗅ぎ装置;島津製作所製Sniffer−9000、キャピラリーカラム;DB−WAX(30m×0.25mm i.d.、膜厚0.50μm)、カラム温度;40℃(3min)→4℃/min→230℃(10min)、キャリヤーガス;ヘリウム、イオン化法;電子衝撃型イオン化。
香気濃縮物のGC−MS−におい嗅ぎ分析の結果、下記表1に記載の26成分において明瞭なにおいが認められた。
酢酸、メチオナール、HEMF及びイソアミルアルコールの4種の香気成分によるにおい組成物は、醤油のうまみを連想させる穏やかなにおいであった。そこで、さらに醤油の塩辛い匂いを強くするための香気成分を得るため、醤油香気濃縮物のGC−MSにおい嗅ぎ分析の結果(表1)を精査した。
まず、対照として酢酸、HEMF、イソアミルアルコール及びメチオナールからなる香気組成物を作製した。これら4種の香気成分の混合比率は、重量比で酢酸:HEMF:イソアミルアルコール:メチオナール=2500:1:300:100とした。この4成分系組成物に対し、上記表1中の他の香気成分またはその関連化合物をさらに添加し、塩味および旨味を感じさせるにおいの強調度合いを官能評価した。結果を下記表2に示す。
以上の結果から、醤油由来の香気成分またはその関連化合物のうち、特に2−メトキシフェノールまたは2−メチルフェノールを、食酢、メチオナール、HEMF及びイソアミルアルコールの4成分系組成物に添加すると、醤油の塩味・うまみを感じさせる匂いを強く強調することが明らかになった。
2.ぽん酢醤油組成物での評価
2−1.各ぽん酢醤油組成物の調製
ベース調味料として、表3に示す組成のぽん酢醤油組成物を調製した。各成分をガラス製サンプル瓶に入れ、アルミ箔で蓋をして、湯煎で加熱(内容物の温度:75℃達温)した。次いで、閉栓し水冷して得られた液体をベース調味料とした。
なお、かつおだしは、鍋に水500mLを入れて火にかけ、沸騰したところでかつお節20gを加えた後、5分間加熱し、得られただしをクッキングペーパーで濾過、水冷した後、最初の水の量になるよう加水したものを用いた。
上述したベース調味料に対し、下記表4および5に示すような組成で塩化カリウムおよび各種香気成分を添加し、各実施例および比較例のぽん酢醤油組成物を調製した。
2−2.官能評価
(1)評価方法
得られた各実施例及び比較例の組成物について官能評価を行った。官能評価は、比較例1乃至3の組成物を対照として塩味及び異味をスコア化して行った。
比較例1の組成物は、減塩していない通常のぽん酢醤油である。口に入れたときに醤油の風味、塩味が感じられ、醤油由来のすっきりとした風味やメリハリ、味の厚みもあり、ぽん酢醤油として満足できるものであった。但し、調味料中の塩化ナトリウムの含有量は8%(w/v)である。
比較例2の組成物は、比較例1のぽん酢醤油の食塩を約63%減らした減塩調味料であり、調味料中の塩化ナトリウムの含有量は3%(w/v)である。口に入れた直後、醤油の風味や塩味はほとんど感じられず、抜けたような風味であり、その後も塩味がほとんど感じられずメリハリがなく、甘さが突出しており平坦な味で物足りなさを感じた。
比較例3の組成物は、比較例2の調味料に50g/Lの塩化カリウムを添加して塩味を補強した減塩調味料である。比較例3の調味料は、比較例2の調味料に比べると口に入れたときに塩味を感じたが、一方で塩化カリウム特有の残る異味(苦味・えぐみ)を有し、この異味が後味として強く残るため、好ましい風味ではなかった。
このような通常のぽん酢醤油である比較例1の組成物で感じる塩味の程度を塩味スコア「5」、比較例1の組成物から塩化ナトリウムを約63%減らした比較例2の組成物料で感じる塩味の程度を塩味スコア「1」として、これらの塩味を基準に、各実施例及び比較例の組成物の塩味をスコア化した。
同様に、通常のぽん酢醤油である比較例1の組成物、及び比較例1の組成物から塩化ナトリウムを約63%減らした比較例2の組成物で感じる異味の程度を異味スコア「1」とし、比較例1の組成物の調製で添加された塩化ナトリウムに代え、同量の塩化カリウムを添加した、比較例3の組成物で感じる異味の程度を異味スコア「5」として、これらの組成物で感じる異味を基準に、各実施例及び比較例の組成物の異味をスコア化した。
したがって、塩味スコアは値が大きいほど評価が良好であったことを、異味スコアは値が小さいほど評価が良好であったことを示す。
官能試験は訓練されたパネラー11名によって行われた。評価結果を下記表6及び表7に示す。表中の数値は、上記指標にしたがって採点した「塩味」および「異味」のスコアの平均を示したものである。
(2)評価結果
評価結果をまとめて表6及び表7に示す。
(2−1)香気成分の組合せに関する評価
比較例4の組成物は、比較例3の組成物に酢酸およびHEMFの2種の香気成分を添加した減塩調味料であり、2−メチルフェノールを含まない。比較例4の組成物は、比較例3の組成物に比べて塩化カリウム由来の異味が軽減されていたが、えぐみが残っていると評価された。また、比較例3の組成物に対して、塩味の増強効果は見出されなかった。
比較例5の組成物は、比較例2の組成物に香気成分の酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、メチオナール及び2−メチルフェノールの5種をすべて添加した減塩調味料であり、塩化カリウムを含まない。比較例5の組成物は、比較例2の組成物と比べて塩味の増強効果は認められたものの、比較例1の組成物と比べると塩味の増強効果は依然かなり低いスコアとなった。
実施例1の組成物は、比較例3の組成物に、酢酸、HEMF及び2−メチルフェノールの3種の香気成分を添加した減塩調味料である。実施例1の組成物は、酢酸及びHEMFの2種の香気成分を加えたが、2−メチルフェノールは加えなかった比較例4の組成物に比べて塩味が増強されていた。また、塩化カリウムに由来する異味は、比較例4の組成物に比べて軽減されていた。
実施例2および3の組成物は、比較例3の組成物に、酢酸、HEMF及び2−メチルフェノールに加えて、メチオナールまたはイソアミルアルコールのいずれかをさらに添加した、計4種の香気成分を含む減塩調味料である。実施例2および3の減塩調味料は、実施例1の組成物に比べて塩味がさらに増強された。
塩化カリウムに特徴的な、後味に強く残る苦味・えぐみは軽減されていたものの、香気成分全体の添加量が多くなることにより、口に入れた直後に香気成分そのものの風味が感じられる場合があり、そのために異味スコアは見かけ上やや高くなった。
全体的なバランスとしては、実施例1の組成物と比べて比較例1の非減塩調味料に近くなっており、良好な風味であった。
実施例4の組成物は、実施例1の組成物に、イソアミルアルコールおよびメチオナールを添加した、計5種の香気成分を含む減塩調味料である。実施例4の減塩調味料は、比較例4および実施例1〜3の組成物と比較して、塩味が最も増強された。また、計4種の香気成分を含む実施例2および3の組成物と比較して、異味が低減されていた。5種すべての香気成分が添加されることにより香気成分がバランスよく混ざり合い、香気成分そのものに由来する風味が軽減されたことによると考えられる。全体的なバランスとして、醤油の風味がよく感じられ、味のメリハリや厚みも十分であり、比較例1の対象の通常のぽん酢醤油に最も近いものであった。
(2−2)2−メチルフェノールの添加効果に関する評価
2−メチルフェノールの添加効果について検討すべく、実施例4の組成物から2−メチルフェノールのみを除き、他の組成を全く同一とした比較例6の減塩調味料を調製した。
次に、比較例4及び実施例1の組成物の官能評価を比較し、比較例6及び実施例4の組成物の官能評価を比較した。比較例4及び6の組成物は、それぞれ実施例1及び4の組成物から2−メチルフェノールのみを除いた減塩調味料である。
実施例1及び4の組成物は、それぞれ比較例4及び6の組成物に比べて、いずれも塩味が増強するとともに、塩化カリウム由来の異味が低減されていた。また、調味料を口に入れた瞬間に塩味や好ましい刺激を感じ、すっきりした香味で味にメリハリがあり、コクや味の厚みが増加していた。これらの特徴は、醤油などの発酵調味料と共通し、全体には2−メチルフェノールを添加することによって醤油らしい風味が向上していると評価された。
(3)まとめ
上記官能評価より、下記のような結果が導き出された。
1)酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、メチオナール、及び2−メチルフェノールの香気成分は、香気成分のみの添加でも塩味増強効果を有するが、塩化カリウムとの併用によってさらに増強されると共に、塩化カリウム由来の異味をも効果的に抑制する。
2)2−メチルフェノールを添加することで、塩味増強効果や塩化カリウム由来の異味の低減効果が増強される。これに加えて口に入れた瞬間に塩味を感じ、味のメリハリやすっきりした風味がもたらされ、味の厚み、コクなども加わる。このような特徴は、特に醤油のように同様の特徴を有する調味料をベースにする減塩調味組成物において、香味の向上をもたらす。
3)塩味増強および塩化カリウムの異味の軽減には、2−メチルフェノール以外の香気成分として、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール及びメチオナールのうちいずれか少なくとも3種を添加することがより効果的であり、4種総てを添加したときに最も良好な効果が得られる。
3.だし醤油組成物での評価
ベース調味料として、表8に示す組成のだし醤油組成物を調製した。各組成物をガラス製サンプル瓶に入れ、アルミ箔で蓋をして、湯煎で加熱(内容物の温度:75℃達温)した。次いで、閉栓し水冷して得られた液体をベース調味料とした。
なお、かつおだしは、鍋に水500mLを入れて火にかけ、沸騰したところでかつお節20gを加え、そのまま5分加熱した後、得られただしをクッキングペーパーで濾過、水冷した後、最初の水の量になるよう加水したものを用いた。昆布だしは、かつお節20gを昆布20gに替えた他は、かつおだしと同様に作製したものを用いた。
上述のベース調味料に、下記表9に示すような組成で塩化カリウムおよび各種香気成分を添加し、各実施例および比較例のだし醤油組成物を調製した。
得られた各実施例及び比較例の組成物について官能評価を行った。官能試験は訓練されたパネラー12名によって行われ、比較例7の減塩していない通常のだし醤油を基準に、塩味の強さ、塩化カリウム由来の異味の強さ、その他の官能上の特徴を評価した。評価結果を下記に示す。
比較例7の調味料は、減塩していない通常のだし醤油である。口に入れたときに醤油の風味、塩味が感じられ、醤油由来のすっきりとした風味、味のメリハリ、及び味の厚みがあり、満足できるものであった。但し、調味料中の塩化ナトリウムの含有量は13%(w/v)である。
比較例8の組成物は、比較例7の組成物の食塩を約30%減らし、塩化ナトリウムの含有量9%とした上で、3%の塩化カリウムを添加して塩味を補強した減塩調味料である。比較例8の組成物は、比較例7の組成物に比べると、口に入れたときに塩味は比較例7ほどには強く感じられず、塩化カリウム特有の残る異味(苦味・えぐみ)を有し、この異味が後味として強く残るため、好ましい風味ではなかった。
比較例9の組成物は、比較例8の組成物に酢酸、HEMF、イソアミルアルコール及びメチオナールを加えた減塩調味料である。また、実施例5は、比較例8の組成物に、さらに2−メチルフェノールを添加した減塩調味料である。
比較例9の組成物は、比較例8の組成物に比べて、塩味が増強され、塩化カリウム由来の異味が低減されていたが、実施例5の組成物は、比較例9の組成物に比べて、塩味がさらに増強され、塩化カリウム由来の異味がさらに低減されており、全体的なバランスはきわめて好ましいものであった。
実施例5の組成物では、これらの効果に加えて、調味料を口に入れた瞬間に感じる塩味や好ましい刺激感が顕著であり、すっきりした風味で味のメリハリが強化され、コクや味の厚みが増していた。全体的には2−メチルフェノールを添加することによって醤油らしい風味が向上していた。
本発明は、例えば、減塩醤油、麺つゆ類、煮物つゆ類、鍋つゆ類、ぽん酢醤油類、だし醤油類、ドレッシング類、焼き肉用調味料類、洋食調味料類、中華調味料類、和食調味料類などの各種調味料の減塩化に適用でき、これら調味料の実効性のある減塩化を可能とする。

Claims (9)

  1. 塩化ナトリウムと共に塩化カリウムを含有する減塩調味料の製造法において、
    (a)酢酸、(b)HEMF、及び(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを含有する組成物を調味料に添加すること、
    製造された減塩調味料がHEMF1重量部に対して、(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを0.0001〜2重量部の重量比で含有すること、及び
    (e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを0.001ppm〜0.4ppmで含有すること、
    を特徴とする、減塩調味料の製造法
  2. 塩化ナトリウムと共に塩化カリウムを含有する減塩調味料の製造法において、
    (a)酢酸、(b)HEMF、(c)イソアミルアルコール及び(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを含有する組成物を調味料に添加すること、
    製造された減塩調味料がHEMF1重量部に対して、(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを0.0001〜2重量部の重量比で含有すること、及び
    (e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを0.001ppm〜0.4ppmで含有すること、
    を特徴とする、減塩調味料の製造法
  3. 塩化ナトリウムと共に塩化カリウムを含有する減塩調味料の製造法において、
    (a)酢酸、(b)HEMF、(d)メチオナール及び(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを含有する組成物を調味料に添加すること、
    製造された減塩調味料がHEMF1重量部に対して、(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを0.0001〜2重量部の重量比で含有すること、及び
    (e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを0.001ppm〜0.4ppmで含有すること、
    を特徴とする、減塩調味料の製造法
  4. 塩化ナトリウムと共に塩化カリウムを含有する減塩調味料の製造法において、
    (a)酢酸、(b)HEMF、(c)イソアミルアルコール、(d)メチオナール及び(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを含有する組成物を調味料に添加すること、
    製造された減塩調味料がHEMF1重量部に対して、(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを0.0001〜2重量部の重量比で含有すること、及び
    (e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを0.001ppm〜0.4ppmで含有すること、
    を特徴とする、減塩調味料の製造法。
  5. 前記塩化ナトリウムの調味料中の濃度が9%(w/v)以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の減塩調味料の製造法
  6. 塩化ナトリウムと塩化カリウムとの重量比が、9:3〜3:9(NaCl:KCl)である、請求項1から5のいずれか1項に記載の減塩調味料の製造法
  7. 調味料中の、塩化ナトリウム:塩化カリウム:香味化合物((a)酢酸、(b)HEMF、(c)イソアミルアルコール、(d)メチオナール及び(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノール)の合計の重量比が20〜400:20〜400:0.01〜1である、請求項1からのいずれか1項に記載の減塩調味料の製造法
  8. (a)酢酸、(b)HEMF、及び(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを用いること、
    を特徴とする、塩化ナトリウムと共に塩化カリウムを含有する減塩調味料の、塩化カリウムによる異味の軽減法。
  9. (a)酢酸、(b)HEMF、(c)イソアミルアルコール、(d)メチオナール及び(e)2−メチルフェノールもしくは2−メトキシフェノールを用いること、
    を特徴とする、塩化ナトリウムと共に塩化カリウムを含有する減塩調味料の、塩化カリウムによる異味の軽減法。
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