JP6414500B2 - 鉄道車両用ヨーダンパ装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載のヨーダンパ装置は、高速走行の安定性と小曲線軌道の走行性能という相反する2つの問題を解決するために、ヨーダンパの減衰力を可変とし、高速走行時にはヨーダンパの減衰力を大きくし(有効にし)、小曲線軌道の走行時には減衰力を開放する(無効にする)ものである(例えば、特許文献1の段落0013)。
より具体的には、特許文献1に記載のヨーダンパ装置においては、鉄道車両が緩和曲線区間(入口側緩和曲線区間)に進入する際に、制御装置がヨーダンパに取り付けられた電磁弁に信号を与え、ヨーダンパの減衰力を開放する。一方、鉄道車両が緩和曲線区間(出口側緩和曲線区間)を脱出する際に、制御装置がヨーダンパに取り付けられた電磁弁に信号を与え、ヨーダンパの減衰力を回復させている(例えば、特許文献1の段落0016)。
換言すれば、特許文献1に記載のヨーダンパ装置においては、入口側緩和曲線区間、円曲線区間及び出口側緩和曲線区間ではヨーダンパの減衰力を無効にし、それ以外の直線区間ではヨーダンパの減衰力を有効にしているといえる。
しかしながら、本発明者らが見出した知見によれば、特許文献1に記載のヨーダンパ装置のように、鉄道車両が緩和曲線区間を走行する際にヨーダンパの減衰力を無効にしても、緩和曲線区間で車輪に生じる横圧は必ずしも十分に低減するわけではない。このため、乗り上がり脱線が生じる危険性を排除できないという問題がある。
(1)鉄道車両が入口緩和曲線区間を走行する際に、後側の台車に取り付けられたヨーダンパの減衰力を無効にした場合、後側の台車の向き(後側の台車が具備する車輪の向き)が軌道の向き(レールの接線方向)に沿わない状態となるため、後側の台車が具備する前側の輪軸の外軌側の車輪に生じる横圧が低減しない。この横圧を低減するには、後側の台車に取り付けられたヨーダンパの減衰力を有効にして、後側の台車の向きが軌道の向きに沿うような向きのモーメントを後側の台車に与えてやればよい。
(2)鉄道車両が出口緩和曲線区間を走行する際に、前側の台車に取り付けられたヨーダンパの減衰力を無効にした場合、前側の台車の向き(前側の台車が具備する車輪の向き)が軌道の向き(レールの接線方向)に沿わない状態となるため、前側の台車が具備する前側の輪軸の外軌側の車輪に生じる横圧が低減しない。この横圧を低減するには、前側の台車に取り付けられたヨーダンパの減衰力を有効にして、前側の台車の向きが軌道の向きに沿うような向きのモーメントを前側の台車に与えてやればよい。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、車体と、該車体に連結された前後1対の台車とを具備する鉄道車両に用いられるヨーダンパ装置であって、前記車体と前記1対の台車のそれぞれとの間に取り付けられたヨーダンパと、前記ヨーダンパの減衰力を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記鉄道車両が曲線軌道の入口側緩和曲線区間を走行する際には、前側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を無効にする一方、後側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を有効にし、前記鉄道車両が曲線軌道の出口側緩和曲線区間を走行する際には、前側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を有効にする一方、後側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を無効にする、ことを特徴とする鉄道車両用ヨーダンパ装置を提供する。
また、鉄道車両が曲線軌道の出口側緩和曲線区間を走行する際には、制御手段が、前側の台車に取り付けられたヨーダンパの減衰力を有効にする一方、後側の台車に取り付けられたヨーダンパの減衰力を無効にする。このため、前側の台車の向きが軌道の向きに沿うような向きのモーメントが前側の台車に与えられる結果、前側の台車が具備する前側の輪軸の外軌側の車輪に生じる横圧が低減する。
以上のように、本発明に係るヨーダンパ装置によれば、鉄道車両が曲線軌道の円曲線区間を走行する際のみならず、緩和曲線区間を走行する際にも車輪に生じる横圧を低減可能であるため、曲線軌道の走行性能を向上させることが可能である。
なお、鉄道車両が曲線軌道の円曲線区間を走行する際には、制御手段が、前側の台車に取り付けられたヨーダンパの減衰力を無効にすると共に、後側の台車に取り付けられたヨーダンパの減衰力も無効にする。このため、特許文献1に記載のヨーダンパ装置と同様に、1対の台車が具備する何れの車輪に生じる横圧も低減する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鉄道車両用ヨーダンパ装置の概略構成を説明する説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る鉄道車両用ヨーダンパ装置(以下、適宜、単に「ヨーダンパ装置」という)100は、車体3と、車体3に連結された台車4とを具備する鉄道車両に用いられるものである。図1では、便宜上、1台の台車4のみを図示しているが、実際には、車体3に前後1対の台車4が連結されている。
台車4は、前後1対の輪軸4a、4bと、台車枠4cと、車体3と台車枠4cとを連結し車体3を支持する空気ばね4dとを備えている。台車4が備える上記の構成要素及びその他の構成要素は、周知慣用の台車と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
ヨーダンパ1は、内部で粘性流体が流通する際の粘性抵抗により、前後方向に伸縮する際に抵抗力(減衰力)を付与するものであり、各台車4の左右にそれぞれ1つずつ取り付けられている。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、各台車4の左右にそれぞれ複数のヨーダンパ1を取り付けることも可能である。本実施形態のヨーダンパ1としては、減衰力可変型のヨーダンパが用いられている。ヨーダンパ1の更に具体的な構成は、公知のヨーダンパと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
制御手段2は、車体3に取り付けられたシーケンサ等から構成されるコントローラ2aと、ヨーダンパ1に取り付けられた電磁弁2bとを具備する。電磁弁2bは、コントローラ2aからの制御信号に基づき、ヨーダンパ1内部の粘性流体の流通をオン・オフすることで、ヨーダンパの減衰力を有効(減衰力が作用する状態)にしたり、無効(実質的に減衰力が作用しない状態)にする機能を果たす。
図2(a)に示すように、鉄道車両が曲線軌道R(外軌R1、内軌R2)の入口側緩和曲線区間を走行する際、制御手段2(図2(a)には図示せず)は、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を無効にする一方、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を有効にする。具体的には、制御手段2のコントローラ2aに鉄道車両が現在走行している軌道情報が入力され、鉄道車両が入口側緩和曲線区間に進入した時点で、コントローラ2aから電磁弁2bに対して、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を無効にする一方、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を有効にするための制御信号を送信する。後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を有効にするため、後側の台車4Bの向き(図2(a)において矢符4Dで示す向き)が軌道Rの向き(図2(a)において矢符RDで示す向き)に沿うような向きのモーメント(図2(a)において白抜き矢符で示す向きのモーメント)が後側の台車4Bに与えられる結果、後側の台車4Bが具備する前側の輪軸4aの外軌R1側の車輪40Bに生じる横圧が低減する。
さらに、鉄道車両が直線軌道を走行する際、制御手段2は、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を有効にすると共に、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力も有効にする。これにより、鉄道車両が直線軌道を走行する際にヨーダンパ1の減衰力によってヨーイングが減衰するため、鉄道車両の高速走行の安定性を確保することができる。
図3は、従来技術1のヨーダンパ装置が取り付けられた鉄道車両の車体3及び台車4と曲線軌道Rとの位置関係を模式的に説明する説明図である。図3(a)は鉄道車両が曲線軌道Rの入口側緩和曲線区間を走行する場合の位置関係を、図3(b)は鉄道車両が曲線軌道Rの出口側緩和曲線区間を走行する場合の位置関係を示す。従来技術1のヨーダンパ装置は、構成自体は本実施形態に係るヨーダンパ装置100の構成と同様であるものの、その動作が異なる。
図3(a)及び図3(b)に示すように、従来技術1においては、鉄道車両が曲線軌道Rの入口側緩和曲線区間を走行する際、及び、出口側緩和曲線区間を走行する際の双方において、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力が有効であると共に、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力も有効である。また、図示は省略するが、鉄道車両が曲線軌道Rの円曲線区間を走行する際にも、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力が有効であると共に、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力も有効である。さらに、鉄道車両が直線軌道を走行する際にも、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力が有効であると共に、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力も有効である。すなわち、従来技術1においては、全ての軌道において、前側の台車4A及び後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力が常に有効である。
また、図3(b)に示すように、鉄道車両が曲線軌道Rの出口側緩和曲線区間を走行する際、後側の台車4Bの向き(図3(b)において矢符4Dで示す向き)が軌道Rの向き(図3(b)において矢符RDで示す向き)から離れるような向きのモーメント(図3(b)において白抜き矢符で示す向きのモーメント)が後側の台車4Bに与えられる結果、後側の台車4Bのアタック角が大きくなり、後側の台車4Bが具備する前側の輪軸4aの外軌R1側の車輪40Bに生じる横圧が大きくなる。
このため、従来技術1のヨーダンパ装置によれば、例えば乗り上がり脱線が生じる危険性が増すことになる。
図4は、従来技術2(特許文献1)のヨーダンパ装置が取り付けられた鉄道車両の車体3及び台車4と曲線軌道Rとの位置関係を模式的に説明する説明図である。図4(a)は鉄道車両が曲線軌道Rの入口側緩和曲線区間を走行する場合の位置関係を、図4(b)は鉄道車両が曲線軌道Rの出口側緩和曲線区間を走行する場合の位置関係を示す。従来技術2のヨーダンパ装置は、構成自体は本実施形態に係るヨーダンパ装置100の構成と同様であるものの、その動作が異なる。
図4(a)及び図4(b)に示すように、従来技術2においては、鉄道車両が曲線軌道Rの入口側緩和曲線区間を走行する際、及び、出口側緩和曲線区間を走行する際の双方において、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を無効にすると共に、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力も無効にする。また、図示は省略するが、鉄道車両が曲線軌道Rの円曲線区間を走行する際にも、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を無効にすると共に、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力も無効にする。すなわち、従来技術2においては、全ての曲線軌道Rにおいて、前側の台車4A及び後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力が無効である。なお、鉄道車両が直線軌道を走行する際には、前側の台車4Aに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力を有効にすると共に、後側の台車4Bに取り付けられたヨーダンパ1の減衰力も有効にする。
また、図4(b)に示すように、鉄道車両が曲線軌道Rの出口側緩和曲線区間を走行する際、前側の台車4Aの向き(図4(b)において矢符4Dで示す向き)が軌道Rの向き(図4(b)において矢符RDで示す向き)に沿わない状態となって前側の台車4Aのアタック角が大きくなる結果、前側の台車4Aが具備する前側の輪軸4aの外軌R1側の車輪40Aに生じる横圧が低減しない。
このため、従来技術2のヨーダンパ装置によれば、例えば乗り上がり脱線が生じる危険性を排除できない。
以上に説明したように、各ヨーダンパ装置に応じてその動作が異なる。
図5は、鉄道車両が走行する軌道を構成する各区間における、本実施形態に係るヨーダンパ装置(図5では「本発明」と記載)、従来技術1のヨーダンパ装置及び従来技術2のヨーダンパ装置のそれぞれが備えるヨーダンパ1の減衰力の有効・無効の状態を纏めたものである。図5において、「〇」で示す箇所はヨーダンパ1が有効であり、「×」で示す箇所はヨーダンパ1が無効であることを意味する。
図5から分かるように、鉄道車両が直線軌道(入口側直線区間及び出口側直線区間)を走行する際には、いずれのヨーダンパ装置のヨーダンパ1も全て減衰力が有効であり、差が無い。鉄道車両が曲線軌道R(入口側緩和曲線区間、円曲線区間及び出口側緩和曲線区間)を走行する際に、各ヨーダンパ装置に応じてヨーダンパ1の減衰力の有効・無効の状態が異なる。
図6は、運動解析によって横圧を評価する際に用いた軌道条件及び走行条件を示す。図6に示す「曲線半径」は、円曲線区間における曲線半径を示す。図6に示す「条件1」では、円曲線区間における曲線半径を200mに固定するものの、入口側緩和曲線区間の長さと出口側緩和曲線区間の長さを18〜45mの範囲で各種の値に変更すると共に、均衡速度を40km/hとし、30〜60km/hの範囲で走行速度を各種の値に変更して運動解析を行った。また、図6に示す「条件2」では、円曲線区間における曲線半径を400mに固定するものの、入口側緩和曲線区間の長さと出口側緩和曲線区間の長さを9〜22.5mの範囲で各種の値に変更すると共に、均衡速度を40km/hとし、30〜60km/hの範囲で走行速度を各種の値に変更して運動解析を行った。さらに、図6に示す「条件2」では、円曲線区間における曲線半径を400mに固定するものの、入口側緩和曲線区間の長さと出口側緩和曲線区間の長さを9〜22.5mの範囲で各種の値に変更すると共に、均衡速度を40km/hとし、30〜60km/hの範囲で走行速度を各種の値に変更して運動解析を行った。
図7(a)から分かるように、従来技術1のヨーダンパ装置を用いた場合には、鉄道車両が曲線軌道Rの入口側緩和曲線区間を走行する際(走行距離が100〜118mの間)に、前側の台車4Aが具備する前側の輪軸4aの外軌R1側の車輪40Aに生じる横圧が増大しているのに対し、本実施形態に係るヨーダンパ装置100を用いた場合には低減している。
また、図7(b)から分かるように、従来技術1のヨーダンパ装置を用いた場合には、鉄道車両が曲線軌道Rの出口側緩和曲線区間を走行する際(走行距離が318〜336mの間)に、後側の台車4Bが具備する前側の輪軸4aの外軌R1側の車輪40Bに生じる横圧が増大しているのに対し、本実施形態に係るヨーダンパ装置100を用いた場合には低減している。
図8から分かるように、従来技術2のヨーダンパ装置を用いた場合には、鉄道車両が曲線軌道Rの出口側緩和曲線区間を走行する際(走行距離が318〜336mの間)に、前側の台車4Aが具備する前側の輪軸4aの外軌R1側の車輪40Aに生じる横圧が、本実施形態に係るヨーダンパ装置100を用いた場合に比べて低減しない。
図9から分かるように、従来技術2のヨーダンパ装置を用いた場合には、鉄道車両が曲線軌道Rの入口側緩和曲線区間を走行する際(走行距離が100〜118mの間)に、後側の台車4Bが具備する前側の輪軸4aの外軌R1側の車輪40Bに生じる横圧が、本実施形態に係るヨーダンパ装置100を用いた場合に比べて低減しない。
2・・・制御手段
2a・・・コントローラ
2b・・・電磁弁
3・・・車体
4・・・台車
100・・・ヨーダンパ装置
Claims (3)
- 車体と、該車体に連結された前後1対の台車とを具備する鉄道車両に用いられるヨーダンパ装置であって、
前記車体と前記1対の台車のそれぞれとの間に取り付けられたヨーダンパと、
前記ヨーダンパの減衰力を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記鉄道車両が曲線軌道の入口側緩和曲線区間を走行する際には、前側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を無効にする一方、後側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を有効にし、
前記鉄道車両が曲線軌道の出口側緩和曲線区間を走行する際には、前側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を有効にする一方、後側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を無効にする、
ことを特徴とする鉄道車両用ヨーダンパ装置。 - 前記制御手段は、前記鉄道車両が曲線軌道の円曲線区間を走行する際には、前側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を無効にすると共に、後側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力も無効にする、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用ヨーダンパ装置。 - 前記制御手段は、前記鉄道車両が直線軌道を走行する際には、前側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力を有効にすると共に、後側の前記台車に取り付けられた前記ヨーダンパの減衰力も有効にする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両用ヨーダンパ装置。
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