JP6414319B2 - 熱間圧延鋼材および鋼部品 - Google Patents
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Description
本願は、2015年3月9日に、日本に出願された特願2015−045855号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
(2)上記(1)に記載の熱間圧延鋼材は、前記化学成分が、Ti:0.005〜0.050mass%、Nb:0.005〜0.030mass%、Mg:0.0005〜0.0050mass%、及びREM:0.0003〜0.0010mass%からなる群から選択される1種または2種以上を含有してもよい。
(3)本発明の別の態様に係る鋼部品は、化学成分がC:0.35〜0.45mass%、Si:0.6〜1.0mass%、Mn:0.60〜0.90mass%、P:0.010〜0.035mass%、S:0.06〜0.10mass%、Cr:0.02〜0.25mass%、V:0.20〜0.40mass%、Zr:0.0001〜0.0050mass%、N:0.0060〜0.0150mass%Ti:0〜0.050mass%、Nb:0〜0.030mass%、Mg:0〜0.0050mass%、およびREM:0〜0.0010mass%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、金属組織の90面積%以上がフェライトとパーライトとから構成され、圧延方向に平行な断面で測定される、前記圧延方向に沿って延伸されたアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の平均個数密度が50〜200個/mm2である。
(4)上記(3)に記載の鋼部品は、前記鋼部品を前記圧延方向に平行な引張応力によって引張破断させて破面を形成した場合に、前記圧延方向に平行な前記断面で観察される、前記引張応力に平行な方向に向けて80μm以上の高低差を有し、前記引張応力に平行な前記方向に対する角度が45度以下である段差が、前記破面に10mmあたり2箇所以上の平均個数密度で形成され、前記圧延方向に平行な前記断面で観察される、前記引張応力に平行な前記方向に対する角度が45度超であり、長さ80μm以上に渡って形成され、その一部が前記鋼部品の内部に進展したき裂または凹部の平均個数密度が、前記破面において10mmあたり3箇所未満に制限され、前記破面における脆性破壊破面が98面積%以上であってもよい。
(5)上記(3)または(4)に記載の鋼部品は、前記化学成分が、Ti:0.005〜0.050mass%、Nb:0.005〜0.030mass%、Mg:0.0005〜0.0050mass%、及びREM:0.0003〜0.0010mass%からなる群から選択される1種または2種以上を含有してもよい。
Cは、本実施形態の熱間圧延鋼材及び鋼部品の引張強さを確保する効果、および、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくして良好な破断分離性を実現する効果を有する。Cの増加に伴い、パーライト組織の体積分率が上昇することにより、引張強さが上昇し、並びに延性および靭性が低下する。これらの効果を最大限に発揮させるために、鋼中のC含有量を0.35〜0.45mass%に設定した。C含有量がこの上限量を超えると、熱間圧延鋼材のパーライト分率が過大となり、破断時の欠けの発生頻度が高くなる。また、C含有量が下限量に満たない場合は、熱間圧延鋼材の破断面近傍の塑性変形量が増加し、破断面の嵌合性が低下する。なお、C含有量の好ましい下限値は0.36mass%、または0.37mass%である。C含有量の好ましい上限値は0.44mass%、0.42mass%、または0.40mass%である。
Siは、固溶強化によってフェライトを強化させ、これにより熱間圧延鋼材及び鋼部品の延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下により、破断分離時の破断面近傍の塑性変形量が小さくなり、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分離性が向上する。この効果を得るためには、Si含有量の下限を0.6mass%にする必要がある。他方、Siが過剰に含有されると、破断面の欠けが発生する頻度が上昇するので、Si含有量の上限は1.0mass%とする。なお、Si含有量の好ましい下限値は0.7mass%である。Si含有量の好ましい上限値は0.9mass%である。
Mnは、固溶強化によってフェライトを強化させ、これにより熱間圧延鋼材及び鋼部品の延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下により、破断分離時の破断面近傍の塑性変形量が小さくなり、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分離性が向上する。また、MnはSと結合してMn硫化物を形成する。本実施形態の熱間圧延鋼材から得られる鋼部品を破断分割させる際に、圧延方向に伸長したMn硫化物に沿ってき裂が伝播するので、破断面の凹凸の圧延方向のサイズが増大する。従って、Mnは、破断面を嵌合する際に位置ずれを防止する効果がある。他方、Mnが過剰に含有する場合、フェライトが硬くなりすぎて破断時の欠けが発生する頻度が増加する。これらに鑑み、Mn含有量は0.60〜0.90mass%である。なお、Mn含有量の好ましい下限値は0.65mass%、0.70mass%、または0.75mass%である。Mn含有量の好ましい上限値は0.85mass%、0.83mass%、または0.80mass%である。
Pは、フェライト及びパーライトの延性及び靭性を低下させ、これにより熱間圧延鋼材及び鋼部品の延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下により、破断分離時の破断面近傍の塑性変形量が小さくなり、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分離性が向上する。ただし、Pは結晶粒界の脆化を引き起こし、破断面の欠けを発生しやすくする。従って、Pを利用して延性及び靭性を低下させることは、欠け発生の防止の観点からは好ましくない。以上を考慮して、P含有量の範囲は0.010〜0.035mass%とする。P含有量の好ましい下限値は0.012mass%、0.013mass%、または0.015mass%である。P含有量の好ましい上限値は0.030mass%、0.028mass%、または0.025mass%である。
SはMnと結合してMn硫化物を形成する。本実施形態の熱間圧延鋼材から得られる鋼部品を破断分割させる際に、圧延方向に伸長したMn硫化物に沿ってき裂が伝播するので、Mn硫化物は破断面の凹凸の破面垂直方向のサイズを大きくし、破断面を嵌合する際に位置ずれを防止する効果がある。その効果を得るためには、S含有量の下限を0.06mass%にする必要がある。他方、Sが過剰に含有されると、破断分割時の破断面近傍の塑性変形量が増大し、破断分離性が低下する場合が発生する。さらに、過剰量のSは破断面の欠けを助長することがある。以上の理由により、Sの好適な範囲を0.06〜0.10mass%とする。S含有量の好ましい下限値は0.07mass%である。S含有量の好ましい上限値は0.09mass%である。
Crは、Mnと同様に固溶強化によってフェライトを強化し、熱間圧延鋼材及び鋼部品の延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分離性を向上させる。その効果を得るためには、Cr含有量の下限を0.02mass%にする必要がある。しかし、Crを過剰に含有すると、パーライトのラメラー間隔が小さくなり、パーライトの延性及び靭性が高くなる。そのため、破断時の破断面近傍の塑性変形量が大きくなり、破断分離性が低下する。さらに、Crを過剰に含有するとベイナイト組織が生成しやすくなり、破断分離性が大幅に低下する場合がある。従って、Crを含有させる場合、その含有量を0.25mass%以下とする。Cr含有量の好ましい下限値は0.05mass%、0.08mass%、または0.10mass%である。Cr含有量の好ましい上限値は0.23mass%、0.20mass%、または0.18mass%である。
Vは、熱間鍛造後の冷却時に主に炭化物又は炭窒化物を形成することにより、フェライトを強化し、熱間圧延鋼材及び鋼部品の延性及び靭性を低下させる。熱間圧延鋼材及び鋼部品の延性及び靭性の低下は、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくして、熱間圧延鋼材からなる鋼部品の破断分離性を良好にする。また、Vは、炭化物又は炭窒化物の析出強化により、熱間圧延鋼材の降伏比を高めるという効果がある、これら効果を得るためには、V含有量の下限を0.20mass%にする必要がある。一方、Vを過剰に含有してもその効果は飽和するので、V含有量の上限は0.40mass%である。V含有量の好ましい下限値は0.23mass%、または0.25mass%である。V含有量の好ましい上限値は0.38mass%、または0.35mass%である。
Zrは酸化物を形成し、このZr酸化物はMn硫化物の晶出核または析出核となり、Mn硫化物を均一に微細に分散させる。この微細分散されたMn硫化物が、破断分割時のき裂の伝播経路となり、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、破断分離性を高める効果がある。ただし、Zrが過剰に含有されてもその効果は飽和するので、Zr含有量の上限を0.0050mass%とする。この効果を十分に発揮するためにはZr含有量の下限を0.0001mass%とする。Zr含有量の好ましい下限値は0.0005mass%、または0.0010mass%である。Zr含有量の好ましい上限値は0.0045mass%、0.0040mass%、または0.0030mass%である。
Nは、熱間鍛造後の冷却時に主にV窒化物又はV炭窒化物を形成してフェライトの変態核として働くことによって、フェライト変態を促進する。これにより、Nは、熱間圧延鋼材から得られる鋼部品の破断分離性を大幅に損なうベイナイト組織の生成を抑制する効果がある。この効果を得るためには、N含有量の下限を0.0060mass%とする。Nを過剰に含有すると、熱間圧延鋼材及び鋼部品の熱間延性が低下し、熱間加工時に割れ又は疵が発生しやすくなる場合がある。従って、N含有量の上限を0.0150mass%とする。なお、N含有量の好ましい下限値は0.0065mass%、0.0070mass%、または0.0080mass%である。N含有量の好ましい上限値は0.0140mass%、0.0130mass%、または0.0120mass%である。
Tiは、熱間鍛造後の冷却時に主に炭化物又は炭窒化物を形成して、析出強化によりフェライトを強化し、これにより熱間圧延鋼材及び鋼部品の延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、これにより熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分離性を向上させる。しかし、Tiを過剰に含有すると、その効果が飽和する。上述の効果を得るためにTiを含有させる場合は、Ti含有量の上限を0.050mass%とする。Tiの効果を十分に発揮させるためには、Ti含有量の下限を0.005mass%とすることが好ましい。より好適なTi含有量の下限値は0.015mass%、0.018mass%、または0.020mass%である。より好適なTi含有量の上限値は0.040mass%、0.035mass%、または0.030mass%である。
Nbは、熱間鍛造後の冷却時に主に炭化物又は炭窒化物を形成して、析出強化によりフェライトを強化し、これにより熱間圧延鋼材及び鋼部品の延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、これにより熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分離性を向上させる。しかし、Nbを過剰に含有すると、その効果が飽和する。上述の効果を得るためにNbを含有させる場合は、Nb含有量の上限を0.030mass%とする。Nbの効果を十分に発揮させるにためには、Nb含有量の下限を0.005mass%とすることが好ましい。より好適なNb含有量の下限値は0.010mass%である。より好適なNb含有量の上限値は0.030mass%、0.028mass%、または0.025mass%である。
Mgは、酸化物を形成してMn硫化物の晶出核または析出核となり、これによりMn硫化物を均一に微細に分散させる。このMn硫化物が、破断分割時のき裂の伝播経路となり、破断面近傍の塑性変形量を小さくし、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分離性を高める。ただし、Mgが過剰に含有されてもその効果が飽和するので、Mg含有量の上限を0.0050mass%とする。この効果を十分に発揮するためには、Mg含有量の下限を0.0005mass%とすることが好ましい。より好適なMg含有量の下限値は0.0006mass%である。より好適なMg含有量の上限値は0.0045mass%、0.0040mass%、0.0035mass%、0.0030mass%、または0.0025mass%である。
REMは、酸硫化物を形成してMn硫化物の晶出核または析出核となり、これによりMn硫化物を均一に微細に分散させる。このMn硫化物が、破断分割時のき裂の伝播経路となり、破断面近傍の塑性変形量を小さくし、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分離性を高める。ただし、REMが過剰に含有されると、鋼材製造段階において、鋳造工程でのノズル詰り等の不具合が生じる。従って、REM含有量の上限を0.0010mass%とする。この効果を十分に発揮するためにはREM含有量の下限を0.0003mass%とすることが好ましい。より好適なREM含有量の下限値は0.0004mass%、または0.0005mass%である。より好適なREM含有量の上限値は0.0009mass%、0.0008mass%、または0.0007mass%である。なお、「REM」との用語は、Sc、Yおよびランタノイドのからなる合計17元素を指し、上記「REMの含有量」とは、これらの17元素の合計含有量を意味する。ランタノイドをREMとして用いる場合、工業的には、REMはミッシュメタルの形で添加される。
本実施形態の熱間圧延鋼材及び鋼部品の金属組織は、いわゆるフェライト−パーライト組織とされる。金属組織中にベイナイト等が含まれる場合があるが、ベイナイトは破断分割性を損なうので好ましくない。そこで本発明者らは、本実施形態の熱間圧延鋼材及び鋼部品の金属組織が、合計90面積%以上のフェライトおよびパーライトを含むことと規定した。この規定により、ベイナイト量が10面積%以下に制限され、熱間圧延鋼材及び鋼部品の破断分割性が良好に保たれる。本実施形態の熱間圧延鋼材及び鋼部品の金属組織は、合計で92面積%、95面積%、又は98面積%以上のフェライト及びパーライトを含んでも良い。
本実施形態の熱間圧延鋼材及び鋼部品の内部には、Mn硫化物が形成される。Mn硫化物は、熱間圧延鋼材の圧延方向に沿って伸長化している。伸長化されたMn硫化物は、熱間圧延鋼材及び鋼部品を引っ張り破断させることにより得られた破面に凹凸形状を形成するために必須の介在物である。Mn硫化物の伸長化のためには、鋼材を熱間圧延で製造する際の、ビレットから棒鋼までの減面率を少なくとも80%以上にする必要がある。
まず、熱間圧延鋼材及び鋼部品を圧延方向に平行に切断し、切断面を研磨する。Mn硫化物は圧延方向に沿って延伸するので、熱間圧延鋼材及び鋼部品を切断する際は、Mn硫化物の延伸方向を、熱間圧延鋼材及び鋼部品の圧延方向とみなすことができる。
次いで、切断面の拡大写真を、光学顕微鏡または電子顕微鏡によって撮影する。この際の倍率は特に限定されないが、100倍程度が好ましい。Mn硫化物はほぼ均一に分布しているので、写真撮影を行う領域は特に限定されない。
そして、写真を画像解析することで、その写真が撮影された領域におけるアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の個数密度を求めることができる。なお、伸長化されたMn硫化物のなかには、分断されて圧延方向に列状に凝集して分布するものもある。しかし、間隔が10μm以下である2つのMn硫化物は、1つの伸長Mn硫化物とみなす。伸長方向に並んでおり、且つ間隔が10μm以下である2つのMn硫化物は、熱間圧延鋼材または鋼部品を引張破断させる際に生じるき裂を引張方向に伝播させるという点において、1つのMn硫化物と同じ効果を有していると考えられるからである。
さらに、写真撮影と解析とを少なくとも10回繰り返し、これにより得られた個数密度を平均することにより、熱間圧延鋼材及び鋼部品中の、圧延方向に沿って延伸されたアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の平均個数密度が求められる。
次に、本実施形態に係る熱間圧延鋼材及び鋼部品の製造方法について説明する。本実施形態に係る熱間圧延鋼材の製造方法は、本実施形態に係る熱間圧延鋼材と同じ化学成分を有する鋼を溶製及び連続鋳造してブルームを得る工程と、ブルームに分塊圧延等の熱間加工をしてビレットを得る工程と、ビレットを熱間圧延して丸棒を得る工程とを含み、Zrが溶製における二次精錬の初期段階で添加され、熱間圧延での総減面率が80%以上であり、且つ熱間圧延での1000℃以下での減面率が50%以上であることを特徴とする。本実施形態に係る鋼部品の製造方法は、本実施形態に係る熱間圧延鋼材を1150〜1280℃に加熱して熱間鍛造する工程および熱間鍛造された熱間圧延鋼材を室温まで空冷または衝風冷却する工程、または本実施形態に係る熱間圧延鋼材を冷間鍛造する工程と、冷却された熱間圧延鋼材を切削加工して所定形状を有する鋼部品を得る工程とを有する。
破断面に占める脆性破面の面積率は、通常の破面解析の手法に従って写真を分析することにより、へき開割れ、擬へき開割れもしくは粒界割れなどで構成される脆性破面が生じている領域を画定し、この脆性破面領域の面積が破断面全体の面積に占める割合を算出することにより求められる。
破断分割による変形量は、破断後の熱間圧延鋼材または鋼部品をつき合わせてボルト締めし、破断方向の内径と、破断方向に垂直な方向の内径との差を測定し、この差を破断分割による変形量とみなすことにより求められる。
破断面の欠け発生量は、破断面をつき合わせて20N・mのトルクでボルト締めして組み付け、次にボルトを緩めて破断面を放す作業を10回繰り返し、これにより脱落した破片の総重量を測定し、この総重量を破断面の欠け発生量みなすことにより求められる。
圧延方向に平行な断面で観察される、引張応力に平行な方向に向けて80μm以上の高低差を有し、引張応力に平行な方向に対する角度が45度以下である段差(引張方向段差)の個数密度、および圧延方向に平行な断面で観察される、引張応力に平行な方向に対する角度が45度超であり、長さ80μm以上に渡って形成され、その一部が鋼部品の内部に進展したき裂または凹部(破面方向き裂)の個数密度は、以下の方法によって評価される。まず、破面が形成された熱間圧延鋼材または鋼部品を引張方向に平行に切断し、破面形状を引張方向に垂直な方向から観察できるようにする。切断の前に破面を樹脂埋めすることにより、切断の際に破面形状が保たれるようにしてもよい。破面形状を上述の切断面において観察することにより、引張方向の凹凸、及び破面方向の凹凸を観察することができる。なお、切断面は、引張方向に平行である限り試験片の任意の場所に形成することができるが、便宜上、切断面における破面が可能な限り大きくなるように切断面を形成することが好ましい。観察は、切断面における任意の5視野以上で実施し、観察の際に、各視野における引張方向段差及び破面方向き裂の10mmあたりの個数密度を測定し、それらの平均値を求める。これにより、引張方向段差及び破面方向き裂の個数密度が求められる。
破断分離時の変形量の測定方法は、以下の通りとした。破断後の試験片をつき合わせてボルト締めし、破断方向の内径と、破断方向に垂直な方向の内径との差を測定した。この差を、破断分割による変形量とした。
破断面の欠け発生量の測定方法は、以下の通りとした。上述の変形量測定を行った後、破断面をつき合わせて20N・mのトルクでボルト締めして組み付け、次にボルトを緩めて破断面を放す作業を10回繰り返した。これにより脱落した破片の総重量を測定し、この総重量を破断面の欠け発生量とした。
実施例1〜28では、圧延方向に沿って延伸されたアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の平均個数密度が、1mm2あたり50個以上であった。さらに、実施例1〜28の化学成分は本発明の規定範囲内であった。これにより、実施例1〜28はいずれも、破断分離性に優れ、同時に嵌合性が良好であった。つまり、実施例1〜28は、熱間鍛造後に空冷または衝風冷却した後、破断分割を行った際に、破断面近傍の塑性変形量が小さく且つ破断面の欠け発生が少ない、優れた破断分離性を有した。破断面の塑性変形量が小さく、さらに欠け発生が少ないという特徴により、実施例1〜28は、破断面の嵌合時に位置ずれが生じることなく精度良く破断面を嵌合させることができ、部品製造の歩留まりを向上させる。また、この特徴により、実施例1〜28は欠けを振るい落とす工程を省略することができ、製造コストの低減につながり、このことは産業上極めて効果が大きい。
比較例102、104、106、および108は、それぞれC、Si、Mn、及びPの含有量が本発明の範囲の上限を超えていたので、破断分離時の欠け発生が1.0mgを超えた。これにより、比較例102、104、106、および108は、良好な破断分離性を有しないと判断された。
比較例105は、Mnの含有量が本発明の範囲の下限未満であるので、圧延方向に沿って延伸されたアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の平均個数密度が1mm2あたり50個未満であり、すなわち、Mn硫化物の個数及び伸長化度が不十分であった。これにより、比較例105は、破面の凹凸箇所数が不足し、良好な嵌合性を有しないと判断された。
比較例109は、Sの含有量が本発明の範囲の上限を超えていたので、圧延方向に沿って延伸されたアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の平均個数密度が1mm2あたり200個を超えた。これにより、比較例109は、破断時の欠け発生が1.0mgを超えるとともに、破断分離時の塑性変形量が100μmを超え、良好な破断分離性を有しないと判断された。
比較例110は、Sの含有量が本発明の範囲の下限未満であったので、圧延方向に沿って延伸されたアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の平均個数密度が1mm2あたり50個未満となり、即ちMn硫化物の個数及び伸長化度が不十分であった。これにより、比較例110は、破面の凹凸箇所数が不足し、良好な嵌合性を有しないと判断された。
比較例111は、Crの含有量が本発明の範囲の上限を超えたので、破断分離時の塑性変形量が100μmを超え、良好な破断分離性を有しないと判断された。
比較例113は、Zrが含有されておらず、アスペクト比が10超、30以下のMnS鋼中において1mm2あたりが50個未満であり、Mn硫化物の分布が粗に分散し、破面の凹凸箇所数が本発明の要件を満たさず、破断分離時の塑性変形量が良好な破断分離性の条件である100μmを超えた。
比較例114は、Nの含有量が本発明の範囲の上限を超えており、鋼材製造段階、すなわち、鋳造および熱間圧延段階で疵を多発させた。従って、比較例114は破断分割材として不適切な例であると判断され、破断分割性の評価は行われなかった。
比較例115は、Nの含有量が本発明の範囲の下限未満であるので、フェライト変態が促進されず、破断分離時の塑性変形量が100μmを超え、良好な破断分離性を有しないと判断された。
鋼1−2は、Zrが脱ガス処理開始から15分超経過してから添加された例である。Zr酸化物がMn硫化物を十分に微細化するための時間が確保されなかったので、鋼1−2においてアスペクト比10超30以下のMn硫化物の個数密度が不足したと推定される。
鋼1−3は、熱間圧延時の総減面率が80%未満である例であり、鋼1−4は、Mn硫化物が延伸しやすい温度域である1000℃以下の温度域での減面率が50%未満である例である。熱間圧延時にMn硫化物が十分に延伸されなかったので、鋼1−3及び1−4においてアスペクト比10超30以下のMn硫化物の個数密度が不足したと推定される。
2 穴
3 Vノッチ
4 貫通穴
10 鋼部品
11 Mn硫化物
12 き裂
21 破面方向き裂
22 引張方向段差
Claims (5)
- 化学成分が
C:0.35〜0.45mass%、
Si:0.6〜1.0mass%、
Mn:0.60〜0.90mass%、
P:0.010〜0.035mass%、
S:0.06〜0.10mass%、
Cr:0.02〜0.25mass%、
V:0.20〜0.40mass%、
Zr:0.0001〜0.0050mass%、
N:0.0060〜0.0150mass%
Ti:0〜0.050mass%、
Nb:0〜0.030mass%、
Mg:0〜0.0050mass%、および
REM:0〜0.0010mass%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
圧延方向に平行な断面で測定される、前記圧延方向に沿って延伸されたアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の平均個数密度が50〜200個/mm2である熱間圧延鋼材であって、
前記熱間圧延鋼材を1150〜1280℃に加熱してから熱間鍛造し、空冷または衝風冷却により室温まで冷却して鋼部品とし、前記鋼部品を前記圧延方向に平行な引張応力によって引張破断させて破面を形成した場合に、
前記圧延方向に平行な前記断面で観察される、前記引張応力に平行な方向に向けて80μm以上の高低差を有し、前記引張応力に平行な前記方向に対する角度が45度以下である段差が、前記破面に10mmあたり2箇所以上の平均個数密度で形成されるものであることを特徴とする熱間圧延鋼材。 - 前記化学成分が、
Ti:0.005〜0.050mass%、
Nb:0.005〜0.030mass%、
Mg:0.0005〜0.0050mass%、及び
REM:0.0003〜0.0010mass%
からなる群から選択される1種または2種以上を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延鋼材。 - 化学成分が
C:0.35〜0.45mass%、
Si:0.6〜1.0mass%、
Mn:0.60〜0.90mass%、
P:0.010〜0.035mass%、
S:0.06〜0.10mass%、
Cr:0.02〜0.25mass%、
V:0.20〜0.40mass%、
Zr:0.0001〜0.0050mass%、
N:0.0060〜0.0150mass%
Ti:0〜0.050mass%、
Nb:0〜0.030mass%、
Mg:0〜0.0050mass%、および
REM:0〜0.0010mass%
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
金属組織の90面積%以上がフェライトとパーライトとから構成され、
圧延方向に平行な断面で測定される、前記圧延方向に沿って延伸されたアスペクト比が10超30以下のMn硫化物の平均個数密度が50〜200個/mm2である
ことを特徴とする鋼部品。 - 前記鋼部品を前記圧延方向に平行な引張応力によって引張破断させて破面を形成した場合に、
前記圧延方向に平行な前記断面で観察される、前記引張応力に平行な方向に向けて80μm以上の高低差を有し、前記引張応力に平行な前記方向に対する角度が45度以下である段差が、前記破面に10mmあたり2箇所以上の平均個数密度で形成され、
前記圧延方向に平行な前記断面で観察される、前記引張応力に平行な前記方向に対する角度が45度超であり、長さ80μm以上に渡って形成され、その一部が前記鋼部品の内部に進展したき裂または凹部の平均個数密度が、前記破面において10mmあたり3箇所未満に制限され、
前記破面における脆性破壊破面が98面積%以上である
ことを特徴とする請求項3に記載の鋼部品。 - 前記化学成分が、
Ti:0.005〜0.050mass%、
Nb:0.005〜0.030mass%、
Mg:0.0005〜0.0050mass%、及び
REM:0.0003〜0.0010mass%
からなる群から選択される1種または2種以上を含有する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の鋼部品。
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