以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施形態のみに限らず、本発明の概念に帰属する他の吸収性物品も包含するものである。
[実施形態1]
まず、本発明の実施形態1に係る吸収性物品を応用したパンツ型使い捨ておむつの全体形状について、図1から図4を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る吸収性物品を応用したパンツ型使い捨ておむつの正面側から見た外観を示す立体投影図である。図2は、本実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつの展開図である。
本実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつ10は、前身頃領域10Fと、後身頃領域10Rと、前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rをつなぐ股下領域10Cとを有する。また、着用時に前身頃領域10Fと後身頃領域10Rとで着用者のウエストの部分を取り囲むウエスト周り開口部10Wが形成されている。同様に、前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rの下端部と股下領域10Cとで着用者の両脚の付け根から太ももあたりに至る領域のいずれかを取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lが形成されている。
使い捨ておむつ10の着用時に、前身頃領域10Fは着用者の腹側に位置し、後身頃領域10Rは着用者の背側に位置する。そして、股下領域10Cは、着用者の股下を覆い、左右一対の脚周り開口部10Lに、着用者の脚がそれぞれ通された形となる。
使い捨ておむつ10は、股下領域10Cと共に前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rを覆うようにカバーシート11が設けられ、カバーシート11の左右両側縁部が相互に接合されて閉じ合わせ部10Jを形成している。これにより、ウエスト周り開口部10Wと左右一対の脚周り開口部10Lとが画成されている。
本実施形態に係る使い捨ておむつ10では、使い捨ておむつ10の幅方向の中央またはその付近において腹側から背側に向かって、股下領域10Cを通って延びる仮想線Pを想定している。具体的には、仮想線Pは、例えば、使い捨ておむつ10の着用時のウエスト側を上、股下側を下とすると、使い捨ておむつ10の腹側表面に沿って、かつ上下方向に延びると共に、股下領域10Cを経由して、背側においてもおむつ10の表面に沿って上下方向に延びるものである。
図2に示すように、カバーシート11の長手方向の左右両側縁部の中央には、それぞれ図1の脚周り開口部10Lとなる半円弧状をなす一対の切欠き部11Aが形成されている。カバーシート11の着用者の肌に接触する面には、前身頃領域10F、股下領域10Cおよび後身頃領域10Rにわたるように、細長い矩形の形状をした吸収体13が配されている。吸収体13は、バックシート12と接合される。吸収体13と接合したバックシート12は、その長手方向が仮想線Pと略平行となる方向であって、その幅方向の中央またはその付近を仮想線Pが通る位置となるようにカバーシート11上に接合される。吸収体13の表面上には、着用者の肌に触れる液透過性のトップシート14が接合されている。
カバーシート11には、脚周りギャザーを形成するための糸ゴム15と、ウエスト周りギャザーを形成するための糸ゴム17とがそれぞれ伸長状態で接合されている。
また、トップシート14の左右両側縁部には、立体ギャザーを形成する一対のサイドシート18が備えられている。一対のサイドシート18は、着用時に吸収体13の両側縁部に沿って起立し、着用者が排泄した尿の横漏れを防止するための部材である。サイドシート18のそれぞれには、その内側端縁部を吸収体13側に折り返して把持させる形で立体ギャザー伸縮材としての糸ゴム19が配置されており、糸ゴム19が収縮した際に、着用者の肌当接方向に向かって立ち上がる。立体ギャザーは従来の使い捨ておむつに用いられている公知の構成を採用することができる。例えば、撥水性シートの層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材を挟み込んで固定することにより、形成することができる。
図3は、本実施形態に係る使い捨ておむつ10を破断展開した分解状態を示す立体投影図である。図3を用いて、使い捨ておむつ10の積層構造について説明する。
図3に示すように、使い捨ておむつ10は、外側から順にカバーシート11と、液不透過性のバックシート12と、吸収体13と、トップシート14とを順に重ねて接合している。
一対の切欠き部11Aが形成されたカバーシート11は、着用者の肌側のインナーカバーシート11Bおよびインナーカバーシート11Bの外側に接合されたアウターカバーシート11Cで形成されている。インナーカバーシート11Bは、バックシート12に接合される。吸収体13は、バックシート12とトップシート14との間に配され、吸収体13を介してトップシート14がバックシート12に接合される。アウターカバーシート11Cは、良好な手触りを得るために薄い不織布で形成され、インナーカバーシート11Bとアウターカバーシート11Cとの間には、糸ゴム15および17がそれぞれ伸長状態で接合されている。また、トップシート14の左右両側縁部には、立体ギャザーを形成する一対のサイドシート18が備えられている。一対のサイドシート18は、着用時に吸収体13の両側縁部に沿って起立し、着用者が排泄した尿の横漏れを防止するための部材である。サイドシート18のそれぞれには、その内側端縁部を吸収体13側に折り返して把持させる形で、立体ギャザー伸縮材として糸ゴム19が配置されている。
なお、バックシート12、吸収体13およびトップシート14で、下着等に接合させて液体を吸収する吸収性物品を形成することもできる。
図4は、本実施形態に係る使い捨ておむつ10を図2のIV−IV断面線で切断した断面図である。図4を用いて、使い捨ておむつ10の吸収体13の断面形状について説明する。
トップシート14の表面には、間欠的なエンボス加工により、吸収体13およびトップシート14を圧縮して、一体として四辺形状の複数の凹部が形成される。複数の凹部は、間隔を空けて配列されることにより、尿などの液体を通過させる溝401を形成している。溝401は、吸収体13のトップシート14側の面から、バックシート12側の面に向かってその深さを有するものである。吸収体13の表面に形成した溝401で取り囲まれた部分を型崩れ抑制部402と称する。型崩れ抑制部402の詳細については後述する。なお、溝401の上部の稜線は、断面で切断した際に見える、溝401でない部分の輪郭線403を示している。
次に、本実施形態に係る使い捨ておむつ10の吸収体13について、図5および図6を用いて説明する。図5は、本実施形態に係る使い捨ておむつ10の吸収体13のトップシート14側の面を上とした上面図である。図5を用いて、吸収体13の表面形状について説明する。
吸収体13は、主にパルプとSAPからなるものである。吸収体13は、前身頃領域10F、股下領域10Cおよび後身頃領域10Rにわたるように、細長い矩形の形状をしている。吸収体13は、長手方向に、前身頃部分M1、股下部分M2、後身頃部分M3に三区分されている。なお、股下部分M2には、着用者の両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lに合わせて、円弧状をなす一対の切欠き部を形成してもよい。吸収体13は、股下部分M2から前身頃部分M1の方向を前(上)方向とし、股下部分M2から後身頃部分M3の方向を後(下)方向とし、前後方向(長手方向)に直交する方向を左右方向(幅方向)とする。また、吸収体13は矩形であるが、本発明における吸収体の形状はこれに限られない。例えば、吸収体の形状は、前後(上下)端の角が丸く落とされているもの、前後(上下)に延びる楕円形のもの、円形のもの、前後(上下)左右の長さが同程度の矩形のものなど、さまざまな形状を含む。
さらに、吸収体13には、斜め格子状に延びる溝501が形成されている。本実施形態は、溝形成領域N1の一方端から他方端に向かって、溝501が斜め格子状に不連続に延びるものである。そして、吸収体13の凹部502を中心として圧縮した結果として形成される溝501は、凹部502の間隔および深さなどにより間欠的である場合であっても連続している場合であってもよく、両者の混合であってもよい。また、吸収体13は、不図示のコアラップ(ティシュ)で包まれている。コアラップは親水性の薄いシートである。なお、本実施形態では、コアラップで包まれた吸収体13を用いているが、本発明における吸収体は、コアラップで包まれていなくてもよい。
図5に示すように、本実施形態では、溝形成領域N1に、複数の凹部502が所定間隔で並ぶパターンによって、溝501が形成されている。溝501は、吸収体13の長手方向に平行な方向である仮想線Pで示す方向(長手方向)と直交する吸収体13の幅方向(左右方向)の一方上側から他方下側(図5中の紙面に向かって右上側から左下側)に傾斜して延びる第1の方向の複数の第1の溝(第1のパターン)501aと、他方上側から一方下側(図5中の紙面に向かって左上側から右下側)に傾斜して延びる第2の方向の複数の第2の溝(第2のパターン)501bとによって構成される。各第1の溝501aは、互いに平行かつ所定間隔で配置されている。同様に、各第2の溝501bは、互いに平行かつ所定間隔で配置されている。ただし、複数の溝501は互いに完全に平行でなくてもよく、また、互いの間隔は、一定でなくてもよい。
図5では、複数の第1の溝501aは仮想線Pに対しそれぞれ同じ角度で傾斜し、所定間隔で配置されている。すなわち、各第1の溝501aが平行かつ所定間隔で配置されているが、本発明はこれに限らず、溝の間隔が一定でないものや、各溝の傾斜角度が異なるものも含む。第2の溝501bについても同様である。また、吸収体13には、第1の溝501aおよび第2の溝501bが、いずれも複数本形成されているが、斜め方向に伸びる第1の溝および第2の溝が形成されているものであれば溝の本数は限定されない。両者は交差しているのが好ましいが、本発明はこれに限らず、両者が交差しないものなども含む。溝の作用の詳細については後述する。
また、吸収体13は、溝形成領域N1を幅方向の中央領域に有し、その両側に溝非形成領域N2を有している。吸収体13の幅方向の両側縁部は、溝非形成領域N2であり、中央領域に仮想線Pで示す方向の一方端から他方端に向かって帯状に溝形成領域N1が延びている。
図6は、本実施形態に係る使い捨ておむつ10の図5のVI−VI断面線による部分断面図である。
溝501は、吸収体13のトップシート14側の面から、所定の溝パターンが形成された部材で、吸収体13を場合によっては熱を加えつつ圧縮することによって形成される。そして、各溝501の幅および深さは、均一であってもよいし、隣接する溝との間隔、溝の位置などに応じて変化してもよい。また、溝501の側壁は、図6に示すように、吸収体表面から斜めに傾斜したV字状であってもよいし、略垂直に延びるものであってもよい。なお、凹部502の上部の稜線は、断面で切断した際に見える、溝501でない部分の輪郭線601を示している。
溝501を形成するための上記圧縮により、吸収体13の溝501部分および場合によってはその近傍は、他の部分に比べて圧縮され、吸収体13の密度が高められている。最も圧縮された溝501部分の圧縮率は、約4倍から7倍程度が好ましいが、吸収体13の材質や吸収する液体に応じて、他の圧縮率の範囲も含むものである。また、圧縮された部分の吸収体密度は、非圧縮部分に比べて2倍以上となっている。吸収体密度は、主にパルプの密度である。
上述したように、吸収体13における溝501部分は、吸収体13が圧縮されて形成されたものである。したがって、溝501部分および場合によってはその近傍は、吸収体13の他の部分よりも吸収体13が圧縮されて硬くなっている。
また、型崩れ抑制部402は、溝501によって型崩れ抑制部402内の吸収体外周が押さえられているため、変形しづらいものとなっている。したがって、長手方向に対して斜め方向に引っ張り力が発生しても、吸収体13は、溝501の剛性で斜めにしわがよりにくい上に、型崩れ抑制部402は変形しづらいので、結果として斜め方向に関する変形が抑制されることとなる。故に、脚の前後運動によっても、吸収体13が大きくよれて型崩れすることがない。吸収体13がよれないので、股間へのフィット性を維持でき、体液漏れが起こりにくい。また、変形によって、吸収体13が切れてしまうことも抑制できるので、吸収性能を維持できる。
なお、本実施形態では、溝形成領域N1は、吸収体13の前身頃部分M1から後身頃部分M3に渡って延びるものであるが、本発明はこれに限らない。すなわち、溝形成領域N1は、股下部分M2のみに形成されているものであってもよい。また、溝形成領域N1は、前身頃部分M1のみ、後身頃部分M3のみに形成されているものであっても、長手方向端部に形成されないものであってもよい。ウエスト部分に近い部分は、ウエストギャザーによって皮膚と密着するので、溝501の硬い部分が皮膚に当たらないようにすることで、着用感が向上する。
本実施形態に係る使い捨ておむつ10は、吸収体13の表面にトップシート14を積層した構成で、トップシート14の表面から圧縮して溝501を形成するものである。すなわち、トップシート14は溝501に密着した状態で固定されることとなる。このように、トップシート14も共に圧縮することにより、トップシート14にも型崩れ抑制部402が形成され、歩行時の動きに対し、よれたり、切れたりすることが抑制される。
上記に示すように、吸収体13の上に積層されたシートも共に圧縮して溝501を形成する場合、この圧縮によって、吸収体13上のトップシート14は、溝501部分においては、吸収体13側に食い込んで、吸収体13と一体化される。このような強固な吸収体13と各種シートとの固定により、脚の前後運動によっても、吸収体13のよれや偏りは抑制される。
図7は、本実施形態に係る吸収体13上面の溝501の一部(図5中の破線楕円VIIで取り囲んだ吸収体13の溝501)を表す拡大図である。
溝501は、複数の凹部502が間隔L1を空けて配列されることにより構成されることができる。凹部502は例えば四辺形状であり、同形状のエンボス型で吸収体13を圧縮することにより形成される。間隔L1は、約2mmである。また、凹部の長さL2は約2.4mmである。また凹部の幅L3は、約2mmである。L1、L2およびL3は、それぞれ1mm≦L1≦5mm、1mm≦L2≦50mm、および1mm≦L3≦5mmの範囲が好ましい。なお、凹部502は模式的に示したものであり、その数や大きさは、この範囲に従う。
凹部502は間隔L1を空けて配列されているが、隣接する凹部502間の隙間701は、溝501で取り囲まれた型崩れ抑制部402よりも凹んでいる。すなわち、凹部502を形成する際の圧縮に伴って、この隙間701部分の吸収体13が引っ張られ、凹部502は型崩れ抑制部402に比べて凹むこととなる。したがって、凹部502と隙間701との間に高低差はあるが、いずれも非圧縮部分に比べて低く、全体として型崩れ抑制部402よりも低い溝501を形成することとなる。
このような、間欠的なエンボス加工により構成される溝501において、圧縮率は、凹部502の部分で約4から7倍程度が好ましいが、この範囲に限定されるものではなく、吸収体13の材質や吸収する液体に応じて、他の範囲も含むものである。
このように、溝501は、間欠的なエンボス加工によって構成することができる。これにより、脚の前後運動等に起因する吸収体のよれや変形を抑制することができる。加えて、溝501のエンボス加工が間欠的である場合は、溝501自身も曲がりやすくなり、より身体にフィットするとともに、身体の動きに追従しやすくなり、ごわつき感を抑制することができる。
図8は、本実施形態に係る吸収体13の上面に形成された溝501の一部(図5における破線円Qで囲まれた溝形成領域N1内の格子形状の一部)を示す拡大図である。図8において、溝501は、複数の凹部502が間隔を空けて配列されることにより4本の圧縮線AB、BC、CDおよびDAを構成し、これらが交点A、B、CおよびDで直交することで斜め格子ABCDAを形成している。凹部502は、吸収体13に凹凸形状を与えて、吸収体13上の液体等を拡散させる役割を持つ。なお、図8における圧縮線AB、BC、CDおよびDAは、模式的に示したものである。本実施形態では、一例として、凹部502は四辺形状であり、同形状のエンボス型で吸収体13を圧縮することにより形成される。また、複数の凹部502の間隔は1mm〜5mm、凹部502の長さは1mm〜50mm、および、凹部502の幅は1mm〜5mmの範囲が好ましい。
図8に示すように、線分AB上には、3つの凹部502が間欠的に配列されている。線分AB上の中点付近に位置する凹部502が最も深く圧縮され、線分AB上の交点Aおよび交点B付近は凹部502よりも浅く圧縮されている。なお、凹部502の数は、本実施形態のように3つに限られない。
図9は、本実施形態に係る吸収体13の上面に形成された溝501の図8のIX−IX断面線における断面図である。図9に示すように、線分AB上の交点Aから交点Bまで間欠的に凹部502が配列されている溝501において、圧縮線ABおよびDAの交差領域(交点Aおよびその付近)901と圧縮線ABおよびBCの交差領域(交点Bおよびその付近)902が一番浅く圧縮され、隣接する2つの交差領域901および902の間に位置する中間領域903の凹部502が一番深く圧縮されている。このように、圧縮線ABは、複数の深さの圧縮された領域によって形成されている。なお、本実施形態では、溝501は凹部502が間欠的に形成されている例を示しているが、本発明はこれに限らない。例えば、凹部502が連続的に連なって溝501を形成し、中間領域903の中央部から交差領域901および902に向かって徐々に凹部502の深さが浅くなっていてもよい。
圧縮線AB間において、溝501の深さが最も深い凹部502の底部には、凹部502の深さよりもさらに深い層間接合圧縮部904が間欠的に形成されている。層間接合圧縮部904が形成されることにより、吸収体13と吸収体13に重ねられた裏面シート12とを圧縮によって一体的な状態にすることができる。なお、層間接合圧縮部904は、1つ形成されていてもよく、複数形成されていてもよい。また、凹部502の上部の稜線は、断面で切断した際に見える、溝501でない部分の輪郭線905を示している。
次に、図8および図9を用いて、本実施形態に係る吸収体13の表面形状の加工方法の一例について説明する。
本実施形態に係る吸収体13の上面に斜め格子ABCDAを形成する場合には、通常、エンボス加工の技術を利用して凹部502を配列させ、圧縮線AB、BC、CDおよびDAを構成することにより、斜め格子ABCDAを形成する。具体的には、例えば、成形ロールをその回転軸の延在方向に直交する方向に回転させて凹部502を形成する。図8では、成形ロールの回転軸の延在方向を線分CAと直交させ、線分CAに平行に交点Cから交点Aへ向けて成形ロールを回転させる(図8の矢印方向)。ここで、圧縮線ABおよびDAの溝501を形成する凹部の深さが一定の場合には、成形ロールが、交点A付近の交差領域901に近づくと、吸収体13表面の素材が交点Aに寄って行き、ひきつれを起こしてしまうおそれがある。
しかしながら、本実施形態の溝501を形成する凹部502は、交差領域901の深さが中間領域903の深さよりも浅くなっているため、吸収体13表面の素材が交点Aに寄ってしまうのを防止することができる。これにより、中間領域903では、吸収体13を裏面シート12へ圧縮しつつ、交差領域901ではひきつれを起こさないため、交点A付近の吸収体13の素材が破れることなく、吸収体13のしなやかさを向上させることができる。さらに、吸収体13の表面の硬さを低減させることができるため、着用者の追従性を高めるとともに、履き心地や肌触りを向上させることができる。
なお、溝の形状は、本実施形態の形状に限らず、延在方向に溝を連続線に形成したり、あるいは延在方向に直交する断面の幅に関してこれを中間領域で広くして、交差領域で狭く形成したりすることもできる。また、溝をその一部につき連続線で形成し、その余を間欠的に形成してもよいし、溝の延在方向に直交する断面積をその幅、その深さの変化の組合せにより変化せてもよい。
[実施形態2]
図10は、本発明の実施形態2に係る吸収体13の上面に形成された溝501の一部(図5における破線円Qで囲まれた溝形成領域N1内の格子形状の一部)を示す拡大図である。本実施形態の吸収体13の形状が実施形態1の吸収体13の形状と相違する点は、圧縮線上の凹部1002が連続的に連なって溝1001を形成し、交差領域よりも凹部の深さが深い中間領域の中央部にさらに深い凹部が形成されている点である。
図10に示すように、圧縮線AB上において、交点A付近(点Aa間)および交点B付近(点dB間)の凹部1002が一番浅く圧縮され、点Aa間および点dB間に隣接する点ab間および点cd間の凹部1002が相対的に深く圧縮されている。そして、圧縮線AB上の中央部に位置する点bc間の凹部1002が一番深く圧縮されている。
図11は、本実施形態に係る吸収体13の図10のXI−XI断面線における断面図である。図11に示すように、線分AB上の交点Aから交点Bまで連続的に凹部1002が連なって形成されている溝1001において、圧縮線ABおよびDAの交差領域(点Aa間)1101と圧縮線ABおよびBCの交差領域(点dB間)1102の凹部1002が一番浅く圧縮され、隣接する2つの交差領域1101および1102の間に位置する中間領域1103および1104(点ab間および点cd間)の凹部1002が相対的に深く圧縮されている。そして、中間領域1103および1104の間に位置する中間領域1105(点bc間)の凹部1002が一番深く圧縮されている。このように、圧縮線ABは、段階的に複数の深さの圧縮された領域によって形成されている。なお、本実施形態では、溝1001は凹部1002が連続的に連なって形成されている例を示しているが、本発明はこれに限らない。例えば、凹部1002が間欠的に配列されて溝1001を形成してもよく、段階的な深さは、2段階だけでなく3段階以上であってもよい。
圧縮線AB間において、凹部1002の深さが最も深い中間領域1105の底部には、中間領域1105の深さよりもさらに深い層間接合圧縮部1106が間欠的に形成されている。層間接合圧縮部1106が形成されることにより、吸収体13と吸収体13に重ねられた裏面シート12とを圧縮によって一体的な状態にすることができる。なお、層間接合圧縮部1106は、1つ形成されていてもよく、複数形成されていてもよい。また、凹部1002の上部の稜線は、断面で切断した際に見える、溝1001でない部分の輪郭線1107を示している。
本実施形態の吸収体13は、交差領域1101および1102の凹部1002の深さが中間領域1103ないし1105の凹部1002の深さよりも段階的に浅くなっているため、実施形態1と同様に、吸収体13表面の素材が交点Aに寄ってしまうのを防止することができる。これにより、中間領域1103ないし1105(特に中間領域1105)では、吸収体13を裏面シート12へ圧縮しつつ、交差領域1101ではひきつれを起こさないため、交点A付近の吸収体13の素材が破れることなく、吸収体13のしなやかさを向上させることができる。さらに、吸収体13の表面の硬さを低減させることができるため、着用者の追従性を高めるとともに、履き心地や肌触りを向上させることができる。
ここで、実施形態1の吸収体13は、輪郭線905と中間領域903との深さの差が小さい。これに対し、本実施形態の吸収体13は、輪郭線1107と中間領域1103および1004との深さの差が大きいため、凹部1002に沿って吸収体13が屈曲しやすい。これにより、本実施形態では実施形態1よりも、さらに吸収体13のしなやかさを向上させることができる。
[実施形態3]
図12は、本発明の実施形態3に係る吸収体13の上面に形成された溝1201の一部(図5における破線円Qで囲まれた溝形成領域N1内の格子形状の一部)を示す拡大図である。本実施形態の吸収体13の形状が実施形態1および2の吸収体13の形状と相違する点は、圧縮線上の凹部1202が連続的に連なって溝1201を形成し、交差領域よりも凹部1202の深さが深い中間領域にさらに深い凹部が間欠的に2箇所形成されている点である。
図12に示すように、圧縮線AB上において、交点A付近(点Aa間)および交点B付近(点fB間)の凹部1202が一番浅く圧縮され、点Aa間および点dB間に隣接する点af間の凹部1202が相対的に深く圧縮されている。そして、圧縮線AB上の点af間の中点から見て両側に位置する点bc間および点de間の凹部1202がさらに一番深く圧縮されている。
図13は、本実施形態に係る吸収体13の図12のXIII−XIII断面線における断面図である。図13に示すように、線分AB上の交点Aから交点Bまで連続的に凹部1202が連なって形成されている溝1201において、圧縮線ABおよびDAの交差領域(点Aa間)1301と圧縮線ABおよびBCの交差領域(点fB間)1302の凹部1202が一番浅く圧縮され、隣接する2つの交差領域1301および1302の間に位置する中間領域1303、1304および1305(点ab間、点cd間および点ef間)の凹部1202が相対的に深く圧縮されている。そして、中間領域1303および1304の間に位置する中間領域1306(点bc間)と中間領域1304および1305の間に位置する中間領域1307(点de間)の凹部1202が一番深く圧縮されている。このように、圧縮線ABは、段階的に複数の深さに圧縮され、かつ一番深く圧縮された領域が複数形成されている。なお、本実施形態では、溝1201は凹部1202が連続的に連なって形成されている例を示しているが、本発明はこれに限らない。例えば、凹部1202が間欠的に配列されて溝1201を形成してもよく、段階的な深さは、2段階だけでなく3段階以上であってもよい。さらに、最も深い凹部1202の領域が3つ以上あってもよい。
圧縮線AB間において、凹部1202の深さが最も深い中間領域1306および1307の底部には、中間領域1306および1307の深さよりもさらに深い層間接合圧縮部1308および1309が間欠的に形成されている。層間接合圧縮部1308および1309が形成されることにより、吸収体13と吸収体13に重ねられた裏面シート12とを圧縮によって一体的な状態にすることができる。なお、層間接合圧縮部1308および1309は、それぞれ1つ形成されていてもよく、複数形成されていてもよい。また、凹部1202の上部の稜線は、断面で切断した際に見える、溝1201でない部分の輪郭線1210を示している。
本実施形態の吸収体13は、交差領域1301および1302の凹部1202の深さが中間領域1303ないし1307の凹部1202の深さよりも段階的に浅くなっているため、実施形態1および2と同様に、吸収体13表面の素材が交点Aに寄ってしまうのを防止することができる。これにより、中間領域1303ないし1307(特に中間領域1306および1307)では、吸収体13を裏面シート12へ圧縮しつつ、交差領域1301ではひきつれを起こさないため、交点A付近の吸収体13の素材が破れることなく、吸収体13のしなやかさを向上させることができる。さらに、吸収体13の表面の硬さを低減させることができるため、着用者の追従性を高めるとともに、履き心地や肌触りを向上させることができる。
また、本実施形態の吸収体13は、中間領域1303ないし1307に、さらに凹部1202の深さが深い中間領域1306および1307を形成したことにより、中間領域1303ないし1307が屈曲しやすい波状に形成されているので、より吸収体13のしなやかさを向上させることができる。
本発明の吸収体は、親水性シート(コアラップ等)でくるみ、親水性シートとともに圧縮して凹部を形成してもよい。また、吸収体、親水性シートおよびトップシートを、トップシートの表面からともに圧縮して、凹部を形成してもよい。
また、凹部の形状は、四辺形状に限らず、様々な形を用いてよい。例えば、円、楕円、正方形、三角形などである。これら、いずれの形においても、溝を吸収体の表面に形成することができればよい。なお、上記実施形態では、各凹部の幅や深さ等の数値は、各凹部中においてその幅や深さが最大値近傍となる中央付近を基準として測定したものである。このように、各凹部の幅や深さ等の数値は、各凹部の中心付近を基準として測定した値を用いるのが原則であるが、各凹部の形状が複雑である場合などにおいては、各凹部の他の部分を、幅や深さ等数値の測定基準としてもよい。
本発明の使い捨ておむつの構造は、上述したようなパンツ型に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に規定された吸収性物品の構成を含むおむつであれば、どのような構成であってもよい。例えば、周知の展開型の使い捨ておむつや、尿漏れパッドなどであっても本発明を適用可能である。
加えて、本発明は、乳幼児向けのおむつに限らず、成人向けおむつ、尿漏れパッドなど、各種の吸収性物品および吸収性本体に適用可能である。
本発明は、上述の効果に加えて、斜め格子形状によって吸収体表面での液体の拡散性を向上させることで、吸収体の利用効率を高め、かつコストの低減が可能となる。なお、本発明の実施形態1ないし3の吸収体13の形態は、互いに組み合わせることも可能である。