以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明は、以下本明細書において詳細に説明するような多様な形態で実施され得る。また、各実施形態による施封小束支払機1(媒体処理装置)は、
A.媒体束を上面に載置したステージ(45)を昇降移動させる昇降部(42)と、
B.前記媒体束を収納する収納部(18)と、
C.前記ステージが昇降移動する際に前記媒体束が通過する媒体通過範囲と交差する水平移動範囲に渡り前記媒体束を前記昇降部と前記収納部との間で移動させる水平移動部(50)と、
を備え、
D.前記昇降部は、前記水平移動部により把持される前記媒体束を押さえる媒体押さえ部(小束ストッパ73、紙幣押さえ部90)を有する。
このような施封小束支払機1について、まず施封小束支払機1を搭載する出納システム(図示しない)の概要を説明してから、各実施形態を参照して説明する。
<1.出納システムの概要>
出納システムは、例えば金融機関の営業店において接客用カウンタの後方に設置され、金銭に関する入金や出金等の各種処理を総合的に実行するようになされている。出納システムは、紙幣入出金機、施封小束支払機1、紙幣補充回収機、新券支払機、棒金支払機、硬貨入出金機、認証プリンタ、現金外ポスト、制御装置、及び操作表示部を有している。
紙幣入出金機は、紙幣を1枚単位で入出金する。施封小束支払機1は、金種別の紙幣を所定枚数(例えば100枚)毎に施封して紙幣小束にした状態で収納し、また当該紙幣小束を出金する。紙幣補充回収機は、例えば金融機関の営業店、小売店や公共施設等に設置される現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine、図示せず)に着脱可能で、当該現金自動預払機で行われる取引用の紙幣を収納する補充回収カセットに紙幣を補充し、また補充回収カセットから紙幣を回収する。
新券支払機は、紙幣補充回収機の上側に組み込まれて一体化されており、各金種の新券(新札)を出金する。棒金支払機は、金種別の一定枚数毎に棒状に重ねて包まれた硬貨(いわゆる棒金)を出金する。硬貨入出金機は、硬貨を1枚単位で入出金する。認証プリンタは、紙幣補充回収機に載置され、紙幣入出金機や施封小束支払機1、紙幣補充回収機、新券支払機、棒金支払機及び硬貨入出金機で行われる入金や出金等の処理内容を認証して所定の帳票等に印字し排出する。現金外ポストは、硬貨入出金機に載置されており、現金以外の小切手や定期預金証書等の有価証券を取り込んで入金処理する。
操作表示部は、例えばディスプレイとキーボードとにより構成されている。ディスプレイは、紙幣入出金機に正面を前方向に向けて載置されており、入金や出金等の各種処理に関する種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、金種等を入力するタッチパネルとが一体化されている。キーボードは、ディスプレイの前に載置されており、入金や出金等の各種処理に関する種々の情報や指示等を入力する。制御装置は、出納システム全体を統括制御する。
出納システムは、これら各種装置の少なくとも一部については比較的自由に配置することができるものの、例えば、棒金支払機、施封小束支払機1、紙幣補充回収機、紙幣入出金機、制御装置及び硬貨入出金機が、各々の正面を同一方向に向け互いに隣接するよう横一列に配置されている。以下の説明では、出納システムにおける棒金支払機、施封小束支払機1、紙幣補充回収機、紙幣入出金機、制御装置及び硬貨入出金機各々の正面が向く方向を前方向と定義し、その反対を後方向と定義して、さらに当該出納システムの前側に対峙したときの左右方向及び上下方向をそれぞれ定義する。
<2.施封小束支払機の内部構成>
続いて、本実施形態による施封小束支払機1について図1を参照して説明する。図1は、施封小束支払機1の内部構成を示す略線図である。図1に示すように、施封小束支払機1は、箱状の施封小束支払機筐体10を中心に構成されており、当該施封小束支払機筐体10の前面に入出金口40が設けられている。
施封小束支払機筐体10の内部には、上側に配置された上部ユニット14と、下側に配置された下部ユニット16とが設けられている。上部ユニット14には、主に制御部20、装置間搬送部32、集積部34、紙幣クランプ移動部36、施封部38及び入出金口40が設けられている。下部ユニット16には、主に昇降部42、オーバーフロー庫48、水平移動部50、小束押込部51、認識部52及び複数の小束金庫(小束収納庫)18が設けられている。
この施封小束支払機1では、制御部20が上述の各部を制御して、紙幣小束Tの施封処理、入金処理、出金処理、小束金庫18に収納された紙幣小束Tの金種及び束数を確認する自動精査処理等を行うようになっている。
制御部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣小束Tの施封処理等の種々の処理を行うようになっている。また制御部20は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させるようになっている。
施封小束支払機筐体10は、前側に内部空間と外部とを連通させる連通孔が形成されており、当該内部空間内に下部ユニット16を収納している。下部ユニット16はスライドレール(図示せず)を介して施封小束支払機筐体10に取り付けられており、当該施封小束支払機筐体10に対し前方向又は後方向へ直線的に且つ円滑に移動する。
下部ユニット16の前面には、当該下部ユニット16が施封小束支払機筐体10内部に収納された際に当該施封小束支払機筐体10の連通孔を閉鎖する前側壁12が形成されている。すなわち施封小束支払機1は、オペレータとの間で現金に関する取引を行う取引動作時には、図1に示したように下部ユニット16を施封小束支払機筐体10内部に収納することにより、内部に保有している紙幣等を保護する。一方施封小束支払機1は、金融機関の職員等の保守作業者が紙幣小束の補充・回収等を行う保守作業時には、施封小束支払機筐体10内部から下部ユニット16を引き出させることにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせる。
また施封小束支払機筐体10には、下部ユニット16が当該施封小束支払機筐体10に収納されているか又は引き出されているかを検出する下部ユニットセンサ(図示せず)が設けられ、検出結果を制御部20へ供給する。
装置間搬送部32は、施封小束支払機1内の上側後端に配置され、紙幣補充回収機(図示せず)又は紙幣入出金機(図示せず)から搬送された紙幣を受け取り、集積部34(34a又は34b)へ1枚ずつ搬送する。集積部34は、装置間搬送部32の前方に配置され、装置間搬送部32から搬送された紙幣を金種毎に分類計数すると共に、当該紙幣を100枚ずつ集積させる。
紙幣クランプ移動部36は、装置間搬送部32と集積部34との間に配置され、当該集積部34に集積された100枚の紙幣を施封部38まで搬送する。施封部38は、紙幣クランプ移動部36の前方下側に配置され、当該紙幣クランプ移動部36により搬送された100枚の紙幣の束を紙幣小束Tとして結束帯で施封し、昇降部42に搬送する。
昇降部42は、施封小束支払機1内の前端に設けられ、施封小束支払機筐体10の底板近傍を下端として入出金口40の近傍まで上方に延在する昇降路46と、当該昇降路46内を上下方向に移動する昇降機構部44とにより構成されている。
この昇降路46の上端側には入出金口40が設けられている。入出金口40は、内部に紙幣小束Tを収納する空間を有すると共に、前面に開閉可能なシャッタ(図示せず)を有している。この入出金口40は、通常時にはシャッタを閉塞して内部へのアクセスを抑制する一方、オペレータへ出金する紙幣小束Tを取り出させるとき、及びオペレータにより紙幣小束Tが投入されるときに、当該シャッタを開放する。
さらに昇降部42より後方下側に、上部ユニット14と所定の間隔を空けるようにして、4個の小束金庫18が前後方向に並んで配置されている。小束金庫18は、例えば金種毎に用意され、内壁により囲まれた内部空間に、それぞれ指定された金種の紙幣小束Tを例えば20束ずつ収納する。
オーバーフロー庫48は、昇降部42と小束金庫18との間に配置されている。すなわち下部ユニット16内には、前方から順に、昇降部42、オーバーフロー庫48及び4個の小束金庫18が直列に並ぶように配置されている。オーバーフロー庫48は、囲まれた内部空間を有し、後述する認識部52において金種を識別できなかった紙幣小束Tや、入金時に小束金庫18が満杯で収納できなかった紙幣小束T等を収納する。
上部ユニット14と下部ユニット16における小束金庫18との間には、前後方向に沿って水平移動範囲としての水平搬送路17が形成されている。この水平搬送路17内には、水平移動部50及び小束押込部51が前後方向に移動可能に設けられている。水平移動部50及び小束押込部51は、水平移動部50が前側、小束押込部51が後側となる位置関係を維持しながら水平搬送路17内を移動する。
水平移動部50は、1束の紙幣小束Tを把持して、昇降機構部44と小束金庫18との間で前後方向に搬送する。また水平移動部50は、昇降機構部44又は小束金庫18からオーバーフロー庫48へも紙幣小束Tを搬送する。
小束押込部51は、入金処理時において水平移動部50から小束金庫18へ紙幣小束Tを押し込むと共に、出金処理時において、小束金庫18に対し、当該小束金庫18内に収納された紙幣小束Tを上方へ押し上げさせる。
また、小束押込部51には、紙幣小束Tの金種の識別、束数の計数、紙幣小束Tが正常に施封されているか否かの施封状態の検出を行う認識部52が設けられている。認識部52は、水平移動部50により把持された紙幣小束Tが当該認識部52を通過する際に当該紙幣小束Tの金種を識別し、束数を計数し、施封状態を検出し、識別結果、計数結果及び検出結果を認識結果として制御部20に供給する。
このように施封小束支払機1は、昇降部42のステージ45上に1束若しくは2束以上の紙幣小束Tを載置し、当該ステージ45を昇降路46に沿って上下方向へ移動させることにより、当該紙幣小束Tを上下に搬送するようになっている。
また施封小束支払機1では、水平移動部50により1束の紙幣小束Tを把持して、当該水平移動部50を水平搬送路17に沿って前後方向へ移動させることにより、当該紙幣小束Tを前後方向へ搬送するようにもなっている。
(本発明の背景)
本発明の実施形態は、上述した出納システムに含まれる施封小束支払機1に関し、特に、施封小束支払機1における昇降部42の構成に関する。ここで、まず、本発明の背景として、従来の昇降部から水平移動部50により紙幣小束Tを把持して搬送する際における問題点について、図2〜図4を参照して説明する。
図2、図3は、従来の紙幣小束の搬送動作を示す略線図である。ここでは、水平移動部50が、昇降路46と水平搬送路17(図1)とが交差する箇所において、両者を連通させている連通孔63に向かって水平移動し、昇降部100を上下方向に移動するステージ45に載置された紙幣小束Tを把持して小束金庫18へ搬送する場合について説明する。なお図2及び以降の図においては、説明の都合上、水平移動部50のうち脚部83を透過させ、その外形を破線で表している。
また、水平移動部50の左右それぞれの両端近傍、すなわち脚部83の内側に、下方に向けて紙幣小束Tを把持する一対の可動式クランプアームが設けられている。図2に示す例では、右側のクランプアーム55が図示され、左側のクランプアームは隠れて見えない。また、水平移動部50の左右それぞれの両端近傍には、前後方向に伸び、先端が下方に突出したピッカアームが設けられている。図2に示す例では、右側のピッカアーム56が図示され、左側のピッカアームは隠れて見えない。また、水平移動部50の前面上端近傍には、左右に2カ所の円板状の当接体88が設けられている。この当接体88は、水平移動部50の前面上端近傍から前方に向けて設けられた当接体支持部89により回転可能に支持されている。
制御部20は、駆動部(図示せず)を制御して、図2に示すように小束ストッパ120を起立状態のままとする。さらに制御部20は、ベルト駆動部(図示せず)を制御して、図2に示すように水平移動部50を前方へ移動させていく。なお水平移動部50は、紙幣小束Tを把持しておらず、クランプ駆動機構(図示せず)により右側のクランプアーム55と左側のクランプアーム(図示せず)の間隔を広げている。
このとき水平移動部50は、前方へ移動する過程において、前面上端近傍に設けられた当接体88を可動ガイド65に当接させ、そのまま前方へ進行することにより、回動軸69を中心に当該可動ガイド65を右側から見て時計回りに回動させ、その下端を上方へ押し上げていく。
やがて制御部20は、水平移動部50を水平搬送路17における最も前方、すなわち当接体88を前側板28の後面に極めて近接させ、昇降路46内に到達させて静止させる。これにより可動ガイド65は、当接体88によってその下端を水平移動部50よりも上方に位置させ、連通孔63を開放した開放状態とする。すなわち、前方向へ移動する水平移動部50から当接体88を介して加えられる力を利用することで、連通孔63を閉塞状態から開放状態へ遷移することができる。
続いて制御部20は、昇降機構部44を制御することによりステージ45を上昇させ、当該ステージ45上に載置されている紙幣小束Tの最上面を高さH1に、すなわち水平移動部50が有するピッカアーム56の当接面56Sに当接する高さに到達させる。
このとき水平移動部50のピッカアーム56における前側先端部の下方に突出した部分(先端突出部56P)は、最上段の紙幣小束Tにおける前側面の前方に位置している。また小束ストッパ120は、起立状態を継続しており、ステージ45上に積み重ねられている紙幣小束Tのうち上から2束目の後側面と対向する。
次に、図3に示すように、水平移動部50は、制御部20の制御に基づいて、紙幣小束Tにおける短辺方向の長さ(すなわち前後方向の長さ)の約半分だけ後方へ移動する。このときステージ45上に集積されている紙幣小束Tは、ピッカアーム56の先端突出部56Pにより最上段の紙幣小束Tに対し後方へ向けて力が加えられ、隣接する紙幣小束T同士の間に作用する摩擦力により、上から2束目以下の紙幣小束Tに対しても後方向へ進行しようとする力が加えられる。
しかしながら、上から2束目以下の紙幣小束Tに対しては、小束ストッパ120により後方向への移動を阻止する力が作用する。このためステージ45上に集積されている紙幣小束Tは、最上段の紙幣小束Tのみが短辺方向の長さの約半分だけ後方へ移動し、その下面の後側部分を露出させる。
続いて制御部20は、水平移動部50のクランプ駆動機構を制御することにより、右側のクランプアーム55および左側のクランプアームの間隔(すなわちクランプ間隔)を狭めて、ステージ45上の最上段の紙幣小束Tを把持する。
さらに制御部20は、ベルト駆動部を制御することにより、水平移動部50を後方へ進行させ、小束金庫18の上方まで移動させる。このとき可動ガイド65は、当該水平移動部50の当接体88が後方へ移動するに連れて、自重の作用によって下端を下降させ、すなわち右側から見て反時計回りに回動して、やがて閉塞状態に戻る。
また、水平移動部50により把持されている紙幣小束Tは、小束押込部51(図1)に受け渡された後、当該小束押込部51により小束金庫18内に押し込まれ、積み重ねられた状態で収納される。
ここで、水平移動部50により把持される紙幣小束Tが変形している場合、正常に把持できないまま搬送してしまい、小束押込部51に紙幣小束Tを受け渡す際にジャムが発生するという問題がある。以下、図4を参照して説明する。
図4は、変形した紙幣小束の把持における問題点を示す略線図である。図4上に示すように、水平移動部50により紙幣小束Tが把持される位置まで昇降部100のステージ45が上昇する際、紙幣小束Tの上部に位置する媒体が変形していると、図4中央に示すように、ピッカアーム56、58の各当接面56S、58Sで媒体を押さえきれない。
次いで、水平移動部50が後方へ移動し、ステージ45上に集積されている最上段の紙幣小束Tのみを後方へ移動させ、その下面の後端部分を露出させる。続いて、制御部20は、右側のクランプアーム55および左側のクランプアーム57を、回動軸53、54をそれぞれ支点として回動させてクランプ間隔を狭めて、図4下に示すように紙幣小束Tを把持させる。この際、変形した媒体は正常に把持されず、一部がはみ出した状態となる。
そして、図4下に示す状態のまま水平移動部50が後退して小束押込部51に紙幣小束Tを受け渡すと、変形した媒体が小束押込部51の機構に干渉してジャムが発生し、エラーや故障の原因となっていた。
そこで、本実施形態では、水平移動部に把持される媒体束の変形を押さえて正常に把持させることができる昇降部42を提案する。以下、複数の実施形態を用いて詳細に説明する。
<3.昇降部の構成および動作>
[3−1.第1の実施形態による昇降部]
まず、図5〜図8を参照して本発明の第1の実施形態による昇降部42−1について説明する。
(3−1−1.構成)
図5は、本発明の第1の実施形態による昇降部42−1周辺の構成を示す斜視図である。昇降部42−1は、図5に示すように、下部ユニット16の前側に取り付けられた前側板28の後側に、上下方向を長手方向とする直方体状の空間である昇降路46を形成している。この昇降路46は、その下端から中程に渡る範囲が下部ユニット筐体19の内部に位置しているものの、それよりも上側の部分が当該下部ユニット筐体19よりも上方に突出している。
媒体通過範囲としての昇降路46は、ステージ45(図1)上に紙幣小束Tが載置された状態で、当該ステージ45を上下方向へ移動させた際に当該紙幣小束Tが通過する空間に相当する。すなわち昇降路46における左右方向及び前後方向の長さは、それぞれ紙幣小束Tにおける長辺方向及び短辺方向の長さと同等ないしこれらをやや上回る長さとなっている。
前側板28の後側における上端には、昇降路46の上端近傍において左右及び後側を囲む上ガイド61が取り付けられている。この上ガイド61は、昇降路46の後側、左側及び右側にそれぞれ位置する板状の後側部61B、左側部61L及び右側部61Rにより構成されている。
また前側板28の後側における中程から下端に渡る範囲には、昇降路46の中程から下端に渡る範囲において、上ガイド61との間に比較的大きな隙間を空けるように、昇降路46の左右及び後側を囲む下ガイド62が取り付けられている。下ガイド62は、下部ユニット筐体19における左右の側板における前側部分と、昇降路46及びオーバーフロー庫48(図1)の間を前後に仕切る仕切板とにより構成されている。
すなわち昇降路46には、上下方向の中央よりもやや上側の箇所において、後側及び左右両側に渡り比較的大きな孔部(以下これを連通孔63と称す)が形成されている。すなわち連通孔63は、昇降路46と水平搬送路17(図1)とが交差する箇所において、両者を連通させている。
なお昇降部42−1は、ステージ45を昇降路46内で最も下方へ移動させたとき、当該ステージ45上に最大で20束の紙幣小束Tを載置し、これを下ガイド62の内部に保持することができる。
(可動ガイドの構成)
また、上ガイド61の下側には、可動ガイド65が設けられている。可動ガイド65は、前後方向に薄く左右方向に長い板状に形成された基板66に対し、左右の端部から前方へ向けて、左右方向に薄い板状の左側板67及び右側板68がそれぞれ延接された形状となっている。
基板66は、左右方向の長さが上ガイド61の後側部61Bにおける左右方向の長さよりも僅かに短くなっており、上下方向の長さが連通孔63における上下方向の長さよりもやや短くなっている。また基板66の下端には、中央よりも左右外方に、矩形状に切り落とされた切欠66Cがそれぞれ形成されている。
右側板68の下端は、前端部分が斜めに切り落とされている。また右側板68における後上端近傍には、左右方向に貫通する回動孔が穿設されている。左側板67は、右側板68とほぼ左右対称に形成されており、後上端近傍に回動孔が穿設されている。
一方、上ガイド61の右側部61R及び左側部61Lには、内側面の後下端から内側に向けて、左右方向に沿った小さな円柱状でなる回動軸69がそれぞれ立設されている。可動ガイド65は、右側板68及び左側板67それぞれに設けられた回動孔がこの回動軸69にそれぞれ挿通されることにより、上ガイド61に対し回動可能に支持されている。
かかる構成による可動ガイド65は、特に外力が加えられていないとき、自重の作用により、基板66の板面を前後方向に向けるように、すなわち当該基板66により連通孔63における後側部分を大きく塞ぐように位置する。このとき左側板67及び右側板68は、連通孔63における左右それぞれの部分における後側の約半分を塞ぐように位置する。以下では、このように可動ガイド65が連通孔63を概ね閉塞した状態を閉塞状態と称す。
一方、可動ガイド65は、例えば基板66の後面に対し前方向へ向かう力が作用すると、回動軸69を中心として右方向から見て時計回りに回動する。この結果可動ガイド65は、基板66の板面を上下に向けると共に、左側板67及び右側板68を上ガイド61の左側部61L及び右側部61Rそれぞれの内側に重ねた状態とする。以下では、このように可動ガイド65が回動して連通孔63を大きく開いた状態を開放状態と呼ぶ。
(小束ストッパの構成)
一方、下ガイド62における後面部分の上端には、図5に示すように、左右に離れた2箇所に矩形状に切り落とされた切欠部が形成されており、この切欠部を埋めるように、媒体押さえ部としての小束ストッパ73がそれぞれ設けられている。なお下ガイド62の切欠部は、図5に示したように、閉塞状態にある可動ガイド65における切欠66Cのほぼ真下に位置している。このように、本実施形態による媒体押さえ部の一例である小束ストッパ73は、媒体通過範囲としての昇降路46と、水平移動範囲としての水平搬送路17の交差個所における下側角部に設けられる。
小束ストッパ73は、全体として上下方向に長い直方体状に形成されているものの、前後方向の厚さが上端へ向かうに連れて薄くなるように、すなわち左右方向から見て上端側が狭められた楔形状となっている。なお前後方向の厚さが薄い方の端部である先端部には後方に突出する突起を有する。さらに、小束ストッパ73の昇降部側の面には、媒体通過範囲である昇降路46と交差する水平方向に突出した弾性部材である毛足状の部材(以下、モヘア74と称す)が設けられる。また小束ストッパ73の下端近傍には、左右方向貫通する貫通孔が穿設されている。
一方、下ガイド62における後面部分の上端近傍には、左右方向に細長い回動軸75(図6)が挿通されている。この回動軸75は、制御部20(図1)により制御される駆動部から駆動力が伝達されると、下ガイド62に対し回動するようになっている。また回動軸75には、小束ストッパ73が挿通され、且つ固定されている。
このため小束ストッパ73は、制御部20の制御に基づいて回動軸75と共に回動することにより、図5に示したように、先端部を上方に向けた状態(以下これを起立状態と呼ぶ)と、図6左に示すように、先端部を後方に向けた状態(以下これを横倒状態と呼ぶ)とに遷移することができる。
このように小束ストッパ73は、下ガイド62における後面部分の上端に回動可能に設けられており、起立状態(図5)又は横倒状態(図6左)に遷移することにより、モヘア74を昇降路46と交差する水平方向に突出した状態と、昇降路46から退避した状態とに切り替える。
(水平移動部の構成)
次に、水平移動部50の構成について説明する。水平移動部50は、図5に示したように、下部ユニット筐体19の上側に設けられている。水平移動部50は、左右方向に長い直方体状の本体部を中心に構成されており、その左右両端から下方へ向けて脚部82及び83がそれぞれ延接されている。
一方、下部ユニット16の下部ユニット筐体19には、図5に示したように、左右の側面板における上端近傍に、前後方向に沿ったガイドレール19Gが設けられると共に、前後に配置されたローラ19Rの周囲に掛け回されたベルト19Bがそれぞれ設けられている。このうち一方のローラ19Rは、制御部20(図1)に制御されるベルト駆動部(図示せず)からの駆動力が伝達されることにより、双方向に回転する。これに伴いベルト19Bは、前後の2個のローラ19Rの周囲を回るように走行する。
水平移動部50の脚部82及び83には、それぞれの内側面に、図示しない複数のローラが回転可能に取り付けられている。これらのローラは、水平移動部50が下部ユニット筐体19の上側に組み付けられる際、その周側面をガイドレール19Gにおける上下の側面にそれぞれ当接させる。
また脚部82及び83は、その下端近傍において、ベルト19Bに対し固定されている。このため水平移動部50は、ベルト19Bの走行に伴い、ガイドレール19Gに沿って前後方向へ移動することができる。
特に前側のローラ19Rは、下部ユニット筐体19の前端近傍、すなわち前側板28の近傍であり昇降路46の左右外方に位置している。このため水平移動部50は、最も前方へ移動したとき、昇降部42の連通孔63を介して昇降路46内に位置することができる。
水平移動部50の本体部の下面には、左右それぞれの両端近傍、すなわち脚部82及び83の内側に、下方に向けてクランプアーム55及び57がそれぞれ立設されている。右側のクランプアーム55は、紙幣小束Tの厚さに相当する長さだけ外側方向へ突出しており、その端部において内側方向へ向けて屈曲されている。左側のクランプアーム57は、右側のクランプアーム55とほぼ左右対称に構成されている。
また本体部は、クランプ駆動機構により、クランプアーム55及び57をそれぞれ左右方向へ変位させ、両者の間隔(クランプ間隔)を調整することができる。
かかる構成により水平移動部50は、予めクランプ駆動機構によりクランプ間隔を広げておき、1束の紙幣小束Tを把持する位置において、クランプ間隔を狭めて、紙幣小束Tを把持する(クランプする)ことができる。
また水平移動部50は、紙幣小束Tを把持している状態でベルト19B(図5)により前後方向へ所望の位置まで移動された後、クランプ駆動機構によりクランプアーム55及び57のクランプ間隔を広げることで、当該紙幣小束Tに対する把持を終了し、この位置から落下させることができる。
さらに水平移動部50の本体部の下端には、左右それぞれの両端近傍に、前後方向に伸び、先端が下方に突出したピッカアーム56、58が立設されている。ピッカアーム56及び58の両端は、紙幣小束Tの厚さよりもやや短い長さだけ下方へ突出している。
また、水平移動部50の前面上端近傍には、左右の2箇所に中心軸を左右方向に向けた小さな円板状の当接体88が設けられている。この当接体88は、水平移動部50の前面上端近傍から前方に向けて立設された当接体支持部89(図7)により回転可能に支持されている。当接体88における左右方向の位置は、可動ガイド65における左側板67及び右側板68の位置と対応している。また当接体88における前後方向の位置は、その前端がピッカアーム56及び58の前側面とほぼ同等となるよう、調整されている(図7)。
このように水平移動部50は、ベルト19Bの駆動によりガイドレール19Gに沿って前後方向へ移動することに加えて、ピッカアーム56及び58により紙幣小束Tを後方へ押し出し、クランプアーム55及び57により当該紙幣小束Tを把持するようになっている。
(3−1−2.入金動作)
以上の構成を有する昇降部42−1について、まず、紙幣小束Tの入金動作について図6を参照して説明する。図6は、第1の実施形態による紙幣小束Tの入金動作を示す略線図である。
入金動作の際、可動ガイド65は、連通孔63のうち、後側部分を基板66(図5)により閉塞し、左側部分及び右側部分のうち後寄りの約半分を左側板67及び右側板68によりそれぞれ閉塞する(図6左)。また、施封小束支払機1の制御部20は、駆動部を制御することにより、小束ストッパ73を横倒状態に遷移させる(図6左)。
昇降部42−1は、可動ガイド65の内側面、具体的には基板66の前側面、左側板67の右側面及び右側板68の左側面を、前側板28、上ガイド61及び下ガイド62と共に、昇降路46の側面として機能させることができる。
このため昇降部42−1は、ステージ45の上面に1束以上の紙幣小束Tを載置した状態で上下方向へ移動させたとしても、連通孔63から当該紙幣小束Tが後方若しくは左右へ滑り落ちることを防止し、当該紙幣小束Tを昇降路46内に止めるよう案内できる。
ここで、施封小束支払機1において、入出金口40から紙幣小束Tを入金する場合を想定する。制御部20は、昇降機構部44を制御することにより、ステージ45を入出金口40の近傍まで上昇させ、入金された紙幣小束Tをステージ45上に載置させる。そして、制御部20は、図6左に示すように、昇降機構部44を制御することにより、ステージ45を下降させる。この際、制御部20は、小束ストッパ73を横倒状態(先端を後方に向けた状態)に遷移させることで、小束ストッパ73のモヘア74を昇降路46から退避させ、ステージ45の下降を妨げないようにする。
次いで、ステージ45が下降すると、図6右に示すように、制御部20は、小束ストッパ73を起立状態に遷移させる。なお小束ストッパ73は、回動軸75を支点として回動軸75と共に回動する。制御部20は、回動軸75を回動させることで、左右に設けられた複数の小束ストッパ73(図5)を同時に起立状態に遷移させることができる。
なお入金される紙幣小束Tは、図6に示すように上部に位置する媒体が一部変形している場合がある。この場合、紙幣小束Tは変形したままステージ45に載置され、施封小束支払機1内に入金される。
(3−1−3.搬送動作)
続いて、ステージ45に載置された紙幣小束Tを水平移動部50が把持して搬送する際の動作について図7及び図8を参照して説明する。図7、図8は、第1の実施形態による紙幣小束Tの搬送動作を示す略線図である。本実施形態による昇降部42−1は、図6に示すような変形した紙幣小束Tがステージ45に載置された場合であっても、当該変形を押さえ、水平移動部50に正常に把持させることを可能とする。
具体的には、制御部20は、図2に示す場合と同様に、ベルト駆動部を制御して、水平移動部50を前方へ移動させていく。水平移動部50は紙幣小束Tを把持しておらず、クランプ駆動機構により右側のクランプアーム55と左側のクランプアーム(図示せず)の間隔を広げている。また、水平移動部50は、前方へ移動する過程において、前面上端近傍に設けられた当接体88を可動ガイド65に当接させ、そのまま前方へ進行することにより、回動軸69を中心に当該可動ガイド65を右側から見て時計回りに回動させ、図7左に示すように、その下端を上方へ押し上げる。
次に、制御部20は、昇降機構部44を制御し、下降に位置していたステージ45を、水平移動部50により紙幣小束Tが把持される位置、すなわち紙幣小束Tの最上面が高さH1に到達する位置まで上昇させる。この際、制御部20は、小束ストッパ73を起立状態に遷移させたままにする。これにより、小束ストッパ73に設けられたモヘア74は、昇降路46に対して水平方向に突出した状態となる。
このような状態において、紙幣小束Tを載置したステージ45が上昇すると、図7左に示すように、ステージ45は小束ストッパ73に設けられているモヘア74を接触通過する。このとき、ステージ45の上昇に応じて紙幣小束Tの最上面が下方向からモヘア74を押し上げる力の反作用により、紙幣小束Tの最上面がモヘア74により上から一時的に押さえられる。これにより、昇降部42−1は、変形した紙幣小束Tを一時的に伸ばすことができる。
そして、紙幣小束Tの変形個所が一時的に伸ばされた状態で、図7右に示すように、紙幣小束Tの最上面がピッカアーム56に当接する。
その後、図8に示すように、水平移動部50は、制御部20の制御に基づいて、紙幣小束Tにおける短辺方向の長さ(すなわち前後方向の長さ)の約半分だけ後方へ移動し、最上段の紙幣小束Tのみを短辺方向の長さの約半分だけ後方へ移動し、その下面の後側部分を露出させる(図3に示す動作と同様)。
続いて制御部20は、水平移動部50のクランプ駆動機構を制御することにより、右側のクランプアーム55および左側のクランプアーム(図示しない)の間隔(すなわちクランプ間隔)を狭めて、ステージ45上の最上段の紙幣小束Tを把持させる。
この時、上述したように、紙幣小束Tが変形していた場合であっても、ステージ45と共に上昇する際にモヘア74により一時的に伸ばされた状態でピッカアーム56に当接するため、水平移動部50はクランプアームで紙幣小束Tを正常に把持することができる。よって、図4に示すような媒体を把持しきれないといった状態を回避することができる。また、水平移動部50により把持された紙幣小束Tを小束押込部51(図1)に受け渡す際も、水平移動部50が変形した紙幣小束Tを正常に把持できていることにより、ジャムの発生を防止することができる。
[3−2.第2の実施形態による昇降部]
以上、第1の実施形態による昇降部42−1について説明した。第1の実施形態では、上昇するステージ45に載置された紙幣小束Tの変形を押さえる媒体押さえ部の一例として、モヘア74が設けられた小束ストッパ73を用いた。しかしながら、紙幣小束Tの変形個所によっては、第1の実施形態による小束ストッパ73のモヘア74では押さえられない場合もある。例えば、図9の上面図で示すように、複数の小束ストッパ73は紙幣小束Tの後ろ側長辺に沿って設けられているため、前側長辺と右または左側短辺にかけて媒体が変形している場合、小束ストッパ73のモヘア74では押さえることができない。
そこで、第2の実施形態では、媒体押さえ部の他の一例として、小束ストッパ73のモヘア74が押さえる紙幣小束Tの辺部と異なる辺部を押さえる紙幣押さえ部90を有する昇降部42−2を提案する。以下、図10〜図14を参照して第2の実施形態による昇降部42−2について具体的に説明する。
(3−2−1.構成)
図10は、本発明の第2の実施形態による昇降部42−2周辺の構成を示す斜視図である。図10に示すように、昇降部42−2の構成は、図5に示す第1の実施形態による昇降部42−1の構成と比較すると、紙幣押さえ部90、ストッパ部94、及びアーム96以外は同様であるため、ここでの各構成の説明は省略する。
(紙幣押さえ部)
図10に示すように、昇降部42−2の前側板28に、紙幣押さえ部90が内側に向けて回動可能に設けられている。紙幣押さえ部90は板状部材により形成され、回動軸81を支点として内側に向けて回動することで、媒体通過範囲である昇降路46と交差する水平方向に板状部材が突出した状態となる。
また、紙幣押さえ部90は、トーションバネでなるスプリング90Sにより、前側板28に対し右側面から見て時計回りに付勢されている。また、紙幣押さえ部90は、板状部材から下方向に伸びる一方の脚部におけるストッパ受け部92を有し、ストッパ受け部92がストッパ部94と当接することにより、紙幣押さえ部90の回動(時計回り)が規制される。
ストッパ部94は、トーションバネでなるスプリング94Sにより反時計回りに付勢され、紙幣押さえ部90のストッパ受け部92に背面から当接することで紙幣押さえ部90の時計回りの回動を規制する。一方、ストッパ部94の回動は、当接するベアリング97により規制される。
ベアリング97は、アーム96の下端に設けられ、アーム96は、回動軸99を支点として前側板28に対し右側面から見て時計回りに回動する。また、アーム96の中央付近であって、ベアリング97が設けられた面とは反対側の面には、ベアリング98が設けられている。水平搬送路17を前方に移動してきて前側板28に近接した水平移動部50の左側のピッカアーム58に設けられた突出部材59(図12)により、ベアリング98が押されると、アーム96は回動軸99を支点として時計回りに回動する。
かかる構成により、紙幣押さえ部90は、紙幣小束Tの入金時などにステージ45が昇降路46を移動する際は、ストッパ部94により回動が規制され、紙幣押さえ部90の板状部材が昇降路46から退避してステージ45の移動を妨げない状態とされる。
一方、水平移動部50が連通孔63に移動してきて突出部材59によりベアリング98が押されると、アーム96が回動軸99を支点として時計回りに回動し、これに伴いアーム96の下端に設けられたベアリング97がストッパ部94を時計回りに回動させる。これにより、紙幣押さえ部90のストッパ受け部92に当接して紙幣押さえ部90の回動を押さえていたストッパ部94が離れるため、紙幣押さえ部90はスプリング90Sの付勢により時計回りに回動し、板状部材が昇降路46と交差する水平方向に突出した状態となる。すなわち、水平移動部50がステージ45に載置された紙幣小束Tを把持する際、紙幣押さえ部90の板状部材が昇降路46と交差する水平方向に突出する状態となり、紙幣小束Tの最上面を押さえ、変形媒体を一時的に伸ばすことが可能となる。
なお、上述したストッパ部94及びアーム96は、紙幣押さえ部90の回動を実現するための機構の一例であって、本実施形態はこれに限定されない。例えば、紙幣押さえ部90は、水平移動部50が連通孔63まで移動したことに応じて、板状部材が昇降路46と交差する水平方向に突出する状態となるよう遷移される構成であればよい。
(3−2−2.入金動作)
以上の構成を有する昇降部42−2について、まず、紙幣小束Tの入金動作について図11を参照して説明する。図11は、第2の実施形態による紙幣小束Tの入金動作を示す略線図である。
入金動作は、図6に示す場合と同様に、可動ガイド65が連通孔63を閉塞した状態において、可動ガイド65の内側面、具体的には基板66(図5)の前側面、左側板67の右側面及び右側板68の左側面を、前側板28、上ガイド61及び下ガイド62と共に、昇降路46の側面として機能させる(図11左)。
また、小束ストッパ73は、図6に示す場合と同様に、制御部20の制御に基づいて、横倒状態に遷移することで、モヘア74によりステージ45の下降を妨げないようにする(図11左)。
また、紙幣押さえ部90は、ストッパ部94及びアーム96の機構により、板状部材が昇降路46から退避した位置で停止することで、板状部材によりステージ45の下降を妨げないようにする(図11左)。
ここで、施封小束支払機1において、入出金口40から紙幣小束Tを入金する場合を想定する。制御部20は、昇降機構部44を制御することにより、ステージ45を入出金口40の近傍まで上昇させ、入金された紙幣小束Tをステージ45上に載置させる。そして、制御部20は、図11左に示すように、昇降機構部44を制御することにより、ステージ45を下降させる。
次いで、ステージ45が下降すると、図11右に示すように、制御部20は、小束ストッパ73を起立状態に遷移させる。一方、紙幣押さえ部90は、ストッパ部94及びアーム96の機構により、板状部材が昇降路46から退避した位置で停止したままとなっている。
なお入金される紙幣小束Tは、図11に示すように上部に位置する媒体が一部変形している場合がある。この場合、紙幣小束Tは変形したままステージ45に載置され、施封小束支払機1内に入金される。
(3−2−3.搬送動作)
続いて、ステージ45に載置された紙幣小束Tを水平移動部50が把持して搬送する際の動作について図12及び図13を参照して説明する。図12、図13は、第2の実施形態による紙幣小束Tの搬送動作を示す略線図である。本実施形態による昇降部42−2は、図11に示すような変形した紙幣小束Tがステージ45に載置された場合であっても、当該変形を押さえ、水平移動部50に正常に把持させることを可能とする。また、図12、図13では、説明の都合上、左側のピッカアーム58及び左側のクランプアーム57を図示し、図7、図8で図示していた右側のピッカアーム56及び右側のクランプアーム55は図示しない。
具体的には、制御部20は、図2に示す場合と同様に、ベルト駆動部を制御して、水平移動部50を前方へ移動させていく。水平移動部50は、前方へ移動する過程において、前面上端近傍に設けられた当接体88を可動ガイド65に当接させ、そのまま前方へ進行することにより、回動軸69を中心に当該可動ガイド65を右側から見て時計回りに回動させ、図12左に示すように、その下端を上方へ押し上げる。
また、この時、水平移動部50が前方へ移動することにより、水平移動部50の左側のピッカアーム58の前方側先端に設けられた突出部材59が、前側板28に設けられたアーム96のベアリング98を押し上げ、回動軸99を中心にアーム96を時計回りに回動させる。これに伴い、アーム96の下端に設けられたベアリング97が時計周りの方向に移動し、ストッパ部94を時計周りに回動させる。これにより、ストッパ部94による回動の規制が外れるので、紙幣押さえ部90は、スプリング90S(図10)による付勢に応じて、回動軸91を支点として時計周りに回動し、板状部材が昇降路46に対して水平に突出した状態となる。なお、紙幣押さえ部90の回動域は、板状部材が紙幣小束Tの最上面がピッカアーム58に当接する高さH1と同じ高さになる位置までであるよう、ストッパ部94により制限される。
次に、制御部20は、昇降機構部44を制御し、下降に位置していたステージ45を、水平移動部50により紙幣小束Tが把持される位置まで上昇させる。この際、制御部20は、小束ストッパ73を起立状態に遷移させたままにするため、小束ストッパ73に設けられたモヘア74は、昇降路46に対して水平方向に突出した状態となる。したがって、紙幣小束Tを載置したステージ45が上昇すると、図12左に示すように、ステージ45は小束ストッパ73に設けられているモヘア74を接触通過する。このとき、紙幣小束Tの最上面がモヘア74により一時的に押さえられるが、紙幣小束Tの変形個所によっては押さえられない場合もある(図9)。
ここで、本実施形態では、小束ストッパ73と対向する側に設けられた紙幣押さえ部90により、紙幣小束Tの変形をより確実に押さえることができる。
具体的には、図12右に示すように、ステージ45が、紙幣小束Tの最上面がピッカアーム58に当接する高さH1まで上昇する際に、紙幣押さえ部90の板状部材により上から押さえられ、変形した紙幣小束Tを一時的に伸ばすことができる。また、紙幣小束Tの変形個所が一時的に伸ばされた状態で、紙幣小束Tの最上面がピッカアーム56に当接する。
その後、図13に示すように、水平移動部50は、制御部20の制御に基づいて、紙幣小束Tにおける短辺方向の長さの約半分だけ後方へ移動し、最上段の紙幣小束Tのみを短辺方向の長さの約半分だけ後方へ移動し、その下面の後側部分を露出させる。
続いて制御部20は、水平移動部50のクランプ駆動機構を制御することにより、右側のクランプアーム(図示しない)および左側のクランプアーム57の間隔(すなわちクランプ間隔)を狭めて、ステージ45上の最上段の紙幣小束Tを把持させる。
この時、上述したように、紙幣小束Tが変形していた場合であっても、紙幣押さえ部90により一時的に伸ばされた状態でピッカアーム56に当接するため、水平移動部50はクランプアームで紙幣小束Tを正常に把持することができる。すなわち、図14に示すように、小束ストッパ73のモヘア74で押さえられなかった変形個所を確実に押さえることが可能となる。
また、本実施形態による紙幣押さえ部90は、水平移動部50の移動に応じて機械的に操作し、駆動部を持たないことで余分な機構を持たずにコンパクトな構成を実現する。
また、水平移動部50により把持された紙幣小束Tを小束押込部51(図1)に受け渡す際も、水平移動部50が変形した紙幣小束Tを正常に把持できていることにより、ジャムの発生を防止することができる。
[3−3.変形例]
以上、第1、第2の実施形態による昇降部42の構成及び動作について具体的に説明した。なお、上記第2の実施形態では、第1の実施形態による昇降部42−1の構成に加えて、紙幣押さえ部90を設ける構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の実施形態による紙幣押さえ部90のみで紙幣小束Tの変形を押さえる昇降部42であってもよい。
<4.まとめ>
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、昇降部42において、水平移動部50に把持される媒体束の変形を押さえて正常に把持させることが可能となる。
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。