以下、発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行う。尚、ここでは、現金自動預払機1の筐体2における、利用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、前側に対峙した顧客から見て上下左右をそれぞれ上側、下側、左側及び右側と定義する。
この現金自動預払機1は、筐体2の前面上部に、顧客応対部3が設けられている。顧客応対部3は、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7及びレシート発行口8等からなり、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う部分である。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分であり、カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客が入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。テンキー7は、数字等の入力を受け付ける物理的なキーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統轄制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部から所定のプログラムを読み出して実行することにより、各部を制御して入金取引や出金取引等の種々の処理を行う。
[1−2.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機10は、図2に示すように、箱状の入出金機筐体20を中心に構成され、制御部21(図1)が紙幣入出金機10を統轄制御する。制御部21は、図示しないCPUを中心に構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部22(図1)から所定のプログラムを読み出して実行することにより、各部を制御して入金取引や出金取引等の種々の処理を行う。
紙幣入出金機10内の上側には、入出金口5と繋がっている入出金部23と、紙幣の金種や真偽を鑑別する鑑別部24と、入金紙幣などを一時的に収納する一時保留部25が設けられている。入出金口5には、図示しないシャッタが設けられていて、このシャッタが開閉することで、入出金口5を開放及び閉塞するようになっている。尚、一時保留部25については、紙幣を順次ステージ上に重ねて集積する集積型でもよいし、紙幣を順次ドラムに巻いて収納するドラム型でもよいが、ここでは集積型とする。
また、紙幣入出金機10内の下側には、紙幣を金種別に収納する複数の紙幣収納カセット26(26A〜26C)と、リジェクト庫27が設けられている。さらに、紙幣入出金機10の内部には、搬送路28Rを介して各部へ紙幣を搬送する搬送部28が設けられている。搬送部28は、図示しないローラやベルト等により、搬送路28Rに沿って紙幣を搬送する。また、搬送路28Rの分岐点には、セレクタが設けられていて、このセレクタにより、紙幣の搬送先を切り替えることができるようになっている。
さらに、入出金部23、一時保留部25、紙幣収納カセット26(26A〜26C)のそれぞれには、内部に収納されている紙幣を1枚ずつ分離して搬送路28Rへと繰り出す紙幣分離装置23s、25s、26sが設けられている。
さらに、紙幣入出金機10は、紙幣収納カセット26(26A〜26C)とリジェクト庫27が含まれる下部が、下部ユニット30として、入出金機筐体20の外側に引き出すことができるようにもなっている。
紙幣入出金機10は、このような構成でなり、鑑別部24による紙幣の鑑別結果等をもとに、制御部21が各部を制御して、紙幣の入金処理及び出金処理を行う。
すなわち、現金自動預払機1は、入金取引時、シャッタを開き、顧客によって入出金口5に紙幣が投入されると、シャッタを閉じて、投入された紙幣を入出金部23から1枚ずつ繰り出して鑑別部24に搬送する。ここで現金自動預払機1は、鑑別部24の鑑別結果に基づき入金可能紙幣と判定された紙幣については一時保留部25に搬送して一時的に収納する一方で、入金に適さない入金不可紙幣と判定された紙幣については入出金部23へ戻して、シャッタを開くことで顧客に返却する。
その後、顧客との間で入金取引が確定すると、現金自動預払機1は、一時保留部25に収納している紙幣を鑑別部24に搬送して鑑別結果を得る。ここで、現金自動預払機1は、鑑別部24の鑑別結果に基づき収納可能紙幣と判定された紙幣については、その金種に対応する紙幣収納カセット26(26A〜26D)へ搬送して収納する。一方で現金自動預払機1は、収納に適さない収納不可紙幣と判定された紙幣については、リジェクト庫27に搬送して保管する。
また、現金自動預払機1は、出金取引時、顧客からの要求金額に応じて必要な金種毎の紙幣枚数を認識し、この金種毎の紙幣枚数に応じて紙幣収納カセット26(26A〜26D)から紙幣を繰り出して、鑑別部24に搬送して鑑別結果を得る。ここで、現金自動預払機1は、鑑別部24の鑑別結果に基づき出金可能紙幣と判定された紙幣については入出金部23に搬送する一方で、出金に適さない出金不可紙幣と判定された紙幣についてはリジェクト庫27へと搬送して保管する。そして、要求金額分の紙幣が入出金部23に集積されると、現金自動預払機1は、シャッタを開ける。これにより入出金部23内に集積されている紙幣の受け取りが可能な状態となり、顧客がこの紙幣を受け取る。
[1−3.入出金部に設けられた紙幣分離装置の構成]
次に、入出金部23に設けられた紙幣分離装置23sの構成についてさらに詳しく説明する。図3に示すように、入出金部23には、紙幣を前後方向に集積する収納部40の前部に、紙幣分離装置23sが設けられている。
紙幣分離装置23sは、収納部40に集積されている紙幣を繰り出すピックアップローラ41と、収納部40に集積されている紙幣をピックアップローラ41に押し当てるビルプレス42と、ピックアップローラ41により繰り出された紙幣を1枚ずつ分離するフィードローラ43及びゲートローラ44と、分離された紙幣を搬送路28Rへと送り出す送りローラ45とを有している。
ピックアップローラ41は、収納部40の前壁40fから一部が突出するようにして設けられている。このピックアップローラ41は、紙幣を確実に繰り出すことができるよう外周面の一部がゴムなどの摩擦部材で形成された摩擦部41fとなっている。また、このピックアップローラ41は、左右方向に延びるシャフト50上に複数個(例えば2個)設けられている。ビルプレス42は、収納部40の前壁40fと平行な状態で収納部40内を前後方向にスライド可能な板状部材である。
ビルプレス42は、ビルプレス42と収納部40の前壁40fとの間に紙幣が集積されている状態で、収納部40の前壁40fに近づく方向にスライドすることで、集積されている紙幣を、ピックアップローラ41に押し付けるようになっている。ピックアップローラ41は、図中反時計回り方向に回転することで、ビルプレス42により押し付けられた紙幣を、フィードローラ43及びゲートローラ44へと繰り出すようになっている。
フィードローラ43は、ピックアップローラ41の紙幣繰出方向の下流(すなわちピックアップローラ41の下方)に配置され、ピックアップローラ41と同様、外周面の一部が摩擦部43fとなっている。このフィードローラ43は、図4に示すように、左右方向に延びるシャフト51上に複数個(例えば9個)設けられている。尚、図4は、図3のA−A´矢示図であり、フィードローラ43及びゲートローラ44を、ピックアップローラ41側から見た図である。
具体的に、シャフト51には、左右方向の中央に、1個のフィードローラ43Aが設けられ、このフィードローラ43Aの左右に、それぞれ3個のフィードローラ43が一体となったフィードローラ部52A、52Bが設けられ、さらに左側のフィードローラ部52Aの左側と、右側のフィードローラ部52Bの右側とに、それぞれ1個のフィードローラ43B、43Cが設けられている。
ゲートローラ44は、ピックアップローラ41により繰り出された紙幣の厚さ方向にフィードローラ43と対向して配置(すなわちフィードローラ43の後方に対向配置)され、外周面全体が摩擦部となっている。このゲートローラ44は、図4に示すように、左右方向に延びるシャフト53上に複数個(例えば4個)設けられていて、複数個のフィードローラ43と入れ子状に噛み合うよう対向配置されている。
具体的に、シャフト53には、左右2個のフィードローラ部52A、52Bのそれぞれと対向する位置に、左右2個のゲートローラ44が一体となったゲートローラ部54A、54Bが配置されている。さらに、各ゲートローラ部54A、54Bは、左右2個のゲートローラ44の外周の一部が、左右3個のフィードローラ43の間に入れ子状に入り込んでいる。尚、この場合のフィードローラ43の外周面とゲートローラ44の外周面とのオーバーラップ量Lpが、フィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpである。
フィードローラ43とゲートローラ44は、入れ子状に噛み合っている状態で、フィードローラ43のみが図3中反時計回り方向に回転することにより、ピックアップローラ41により繰り出された紙幣を、フィードローラ43とゲートローラ44との間で1枚ずつ分離して繰り出すようになっている。
送りローラ45は、フィードローラ43の紙幣繰出方向の下流(すなわち下方)に、紙幣の厚さ方向にフィードローラ43と対向して配置されている。この送りローラ45も、左右方向に延びるシャフト55上に複数個(例えば3個)設けられている。具体的には、中央と左右の計3個のフィードローラ43A、43B、43Cと対向する位置に、それぞれ1個ずつ送りローラ45が配置されている。
送りローラ45は、フィードローラ43とは逆方向の図3中時計回り方向に回転することにより、フィードローラ43とゲートローラ44により繰り出された紙幣を、フィードローラ43との間で挟持しながら、入出金部23の外部の搬送路28Rへと送り出すようになっている。
尚、図3に示すように、入出金部23には、紙幣を収納部40から搬送路28Rへと繰り出す経路に沿ってガイド56が設けられていて、このガイド56に沿って紙幣を収納部40から搬送路28Rへと繰り出すようになっている。
このような構成にくわえて、紙幣分離装置23sは、フィードローラ43とゲートローラ44との間隔(すなわち噛合量)を調整する調整機構60を有している。調整機構60は、図4及び図5に示すように、紙幣分離装置23sの左右両端に設けられたフレーム61を有している。尚、調整機構60は、左右対称の構成である為、左右の同一部分には同一符号を付して説明する。
左右のフレーム61には、それぞれフィードローラ43のシャフト51の軸受となるベアリング62が固定される円形のベアリング用孔63(図5)が形成されている。このベアリング用孔63にベアリング62が取り付けられている。さらに左右のベアリング62にシャフト51の左右両端部が挿入されている。つまり、左右のフレーム61は、ベアリング62を介してフィードローラ43のシャフト51を回転可能に支持している。
さらに、左右のフレーム61には、それぞれベアリング用孔63の後方に、偏心プレート64が嵌入される円形のプレート用孔65(図5)が形成されている。偏心プレート64は、円形の板状でなり内側にベアリング用孔64hが形成された中空円板部64aと、略扇型の板状でなり円弧状の外周面に複数の溝64gが櫛歯状に形成された扇板部64bとで構成されている。
中空円板部64aは、外径の中心P1と、内径の中心(すなわちベアリング用孔64hの中心)P2とが所定方向に所定距離d1だけずれた偏心構造となっている。尚、この距離d1を偏心距離d1と呼ぶ。一方、扇板部64bは、扇型の中心側を三角形状に切り取ったような形状でなり、中空円板部64aと平行で且つ厚さ方向に一段ずれるようにして、中空円板部64aの厚さ方向の一面の外縁から外側に延びている。
この扇板部64bは、外周面が、中空円板部64aの中心P1と同心の円の円弧に沿うように形成されている。また、この扇板部64bは、中空円板部64aの外径の中心P1から見て、内径の中心P2とは逆側に形成されている。さらに、扇板部64bには、円弧状の外周面に7個の溝64gが形成されていて、7個の溝64gのうち、中央の溝64gが、中空円板部64aの外径の中心P1と内径の中心P2とを結ぶ線分上に形成されている。さらに、この中央の溝64gの両側には、円弧状の外周に沿って中央の溝64gから10度、20度、30度ずれた位置にそれぞれ1個ずつ溝64gが形成されている。
偏心プレート64は、このような構成でなり、左右のフレーム61のそれぞれのプレート用孔65に中空円板部64aが嵌入されることで、左右のフレーム61に回転可能に支持されている。また、図4に示すように、左右の偏心プレート64は、それぞれ中空円板部64aと厚さ方向にずれている扇板部64bが左右のフレーム61の外側に位置することにより、扇板部64bが中空円板部64aの回転を妨げないようになっている。つまり、左右の偏心プレート64は、中空円板部64aの外径の中心P1を回転中心として回転可能に左右のフレーム61に支持されている。
さらに、左右の偏心プレート64のそれぞれのベアリング用孔64h(図5)には、ベアリング70が取り付けられている。さらに左右のベアリング70にゲートローラ44のシャフト53の左右両端部が挿入されている。つまり、左右のフレーム61は、左右の偏心プレート64及び左右のベアリング70を介してゲートローラ44のシャフト53を回転可能に支持している。
尚、偏心プレート64の中空円板部64aの内径の中心P2とゲートローラ44のシャフト53の中心とが一致する為、ゲートローラ44のシャフト53の中心は偏心プレート64の回転中心P1に対して偏心していることになる。
尚、フィードローラ43のシャフト51と、ゲートローラ44のシャフト53を結ぶ線分と、偏心プレート64の中空円板部64aの外径の中心P1と内径の中心P2とを結ぶ線分が直交するときの偏心プレート64の回転角度(すなわち図5に示す回転角度)を基準角度とする。またこのときの偏心プレート64の偏心方向は下方であり、中空円板部64aの偏心方向とは逆方向でなる上方に扇板部64bが位置するとともに、偏心プレート64の外径の中心P1の真上に、扇板部64bの中央の溝64gが位置する。またこのときのフィードローラ43のシャフト51の中心P3とゲートローラ44のシャフト53の中心P2との距離(これをシャフト間距離と呼ぶ)を基準シャフト間距離d2´とし、このときのフィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpを基準噛合量とする。
さらに、調整機構60は、左右のフレーム61の上面の位置と左右の偏心プレート64の扇板部64bの外周面の位置がほぼ等しくなっていて、左右のフレーム61のそれぞれの上面には、基準角度にある偏心プレート64の扇板部64bの中央の溝64gと対向して連通する位置に、溝64gと同形状でなる1個の溝61gが形成されている。尚、調整機構60は、偏心プレート64を図5中時計回り方向又は反時計回り方向に回転させていくと、フレーム61の溝61gと連通する偏心プレート64側の溝64gが順に切り替わっていくようになっている。
さらに、左右のフレーム61のそれぞれの外側の面の上部には、溝61gの後方にトーションスプリング71の巻回部71aが嵌入される円柱部61sが突設されていて、左右の円柱部61sに、それぞれトーションスプリング71の巻回部71aが嵌入されている。さらに、左右のフレーム61のそれぞれの外側の面には、円柱部61sの下方にトーションスプリング71の一方のアーム71bを固定する固定部61fが設けられていて、左右の固定部61fに、それぞれトーションスプリング71の一方のアーム71bが固定されている。
トーションスプリング71の他方のアーム71cは、円柱部61sから溝61gへと延びていて且つ先端部分がフレーム61の外側から内側へ向かう方向に折り曲げられている。左右のトーションスプリング71は、外力が加えられていない自然状態のときに、それぞれ左右のフレーム61の溝61gと、当該溝61gと連通している偏心プレート64側の溝64gとの両方に先端の折り曲げ部分が入り込むことで、左右の偏心プレート64をそれぞれ左右のフレーム61に対して回転しないよう固定する。
また、左右のトーションスプリング71は、他方のアーム71cの先端の折り曲げ部分を溝61g、64gから外すよう上方に押し上げることで左右の偏心プレート64の固定を解除でき、また弾性力により元の位置に戻ることで、再び溝61g、64gに入り込んで左右の偏心プレート64を固定できるようになっている。
尚、調整機構60では、左右の偏心プレート64を、それぞれ個別に基準角度から図5中時計回り方向及び反時計回り方向にそれぞれ最大30度の範囲で回転させるようになっている。ここで、図中時計回り方向を+方向、反時計回り方向を−方向とすれば、調整機構60では、左右の偏心プレート64を、それぞれ個別に基準角度を中心に+30度〜−30度の範囲で回転させることになる。また、偏心プレート64を10度回転させるごとにフレーム61の溝61gと偏心プレート64の溝64gとが連通する為、左右の偏心プレート64をそれぞれ10度単位で固定できるようになっている。
調整機構60は、これら左右のフレーム61、左右の偏心プレート64、左右のトーションスプリング71により構成されている。
ここで、この調整機構によるフィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpの調整方法について説明する。上述したように、調整機構60の左右の偏心プレート64は、それぞれ左右のトーションスプリング71を上方に押し上げることで固定が解除され回転可能となる。
ここで、図6(A)に示すように、偏心プレート64を基準角度から図中時計回り方向に回転させると、偏心プレート64の回転中心(すなわち外径の中心)P1に対して、ゲートローラ44のシャフト53の中心P2が偏心していることにより、ゲートローラ44のシャフト53が、フィードローラ43のシャフト51から遠ざかる方向(すなわち後方)に移動することになる。つまり、調整機構60では、偏心プレート64を基準角度から図中時計回り方向に回転させることで、シャフト間距離d2を基準シャフト間距離d2´より広がる方向に調整することができる。
このときの基準角度からの回転角度をθ、偏心距離をd1、シャフト間距離d2と基準シャフト間距離d2´との差分でなる調整距離をd3とすると、調整距離d3=偏心距離d1×sinθとなる。
調整機構60では、上述したように、偏心プレート64を、基準角度から図中時計回り方向に10度単位で30度までの範囲で回転させるようになっている。つまり、調整機構60では、偏心プレート64を、基準角度から図中時計回り方向に10度(sinθ=0.17…)、20度(sinθ=0.34…)、30度(sinθ=0.5)と回転させることで、調整距離d3をほぼ一定量ずつ大きくしながらシャフト間距離d2を広げる方向に調整することができる。
このように調整機構60では、シャフト間距離d2を基準シャフト間距離d2´より広がる方向に調整することで、フィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpが基準噛合量より小さくなるように調整することができる。ちなみに、偏心プレート64を基準角度から図中時計回り方向(+方向)に回転させたときに、調整距離d3が大きくなり続けるのは、少なくとも基準角度から+90度回転するまでである。ゆえに、調整機構60では、偏心プレート64の基準角度から+方向への回転範囲を+90度以内の+30度に設定している。
一方、図6(B)に示すように、この偏心プレート64を基準角度から図中反時計回り方向に回転させると、ゲートローラ44のシャフト53が、フィードローラ43のシャフト51へ近づく方向に移動することになる。つまり、調整機構60では、偏心プレート64を基準角度から図中反時計回り方向に回転させることで、シャフト間距離d2を基準シャフト間距離d2´より狭まる方向に調整することができる。この場合も、調整距離d3=偏心距離d1×sinθとなる。
調整機構60では、上述したように、偏心プレート64を、基準角度から図中反時計回り方向に10度単位で30度までの範囲で回転させるようになっている。つまり、調整機構60では、偏心プレート64を、基準角度から図中反時計回り方向に10度(sinθ=0.17…)、20度(sinθ=0.34…)、30度(sinθ=0.5)と回転させることで、調整距離d3をほぼ一定量ずつ大きくしながらシャフト間距離d2を狭める方向に調整することができる。
このように調整機構60では、シャフト間距離d2を基準シャフト間距離d2´より狭まる方向に調整することで、フィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpを基準噛合量より大きくなるように調整することができる。ちなみに、偏心プレート64を基準角度から図中反時計回り方向(−方向)に回転させたときに、調整距離d3が大きくなり続けるのは、少なくとも基準角度から−90度回転するまでである。ゆえに、調整機構60では、偏心プレート64の基準角度から−方向への回転範囲を−90度以内の−30度に設定している。
尚、調整距離d3は偏心距離d1×sinθで表せる為、例えばフィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpをより細かく調整する為には、偏心距離d1を小さくしたり、偏心プレート64の回転間隔(すなわち溝64gの間隔)を10度より小さくしたりすればよい。
上述したように、調整機構60では、偏心プレート64を回転させるだけの簡単な操作でフィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpを調整できるようになっている。実際、作業者は、偏心プレート64を回転させて噛合量Lpを適切な噛合量Lpに調整した後、トーションスプリング71を元の位置に戻して偏心プレート64の回転角度を固定する。これにより、噛合量Lpが適切な噛合量Lpで固定される。
このようにして、入出金部23の調整機構60では、フィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpを調整するようになっている。
また、調整機構60は、ゲートローラ44のシャフト53の左右両端側にそれぞれ独立して回転可能な偏心プレート64を有している為、シャフト53の中央より左寄りに設けられたゲートローラ部54Aとフィードローラ部52Aとの噛合量Lpについては、主に左側のフレーム61に支持されている偏心プレート64の回転により調整し、シャフト53の中央より右側に設けられたゲートローラ部54Bとフィードローラ部52Bとの噛合量Lpについては、主に右側のフレーム61に支持されている偏心プレート64の回転により調整することができる。また、左右の偏心プレート64を独立して回転させることで、フィードローラ43のシャフト51とゲートローラ44のシャフト53が平行となるよう、フィードローラ43のシャフト51に対するゲートローラ44のシャフト53の傾きを調整することもできる。
また、調整機構60は、偏心プレート64の回転中心P1に対してゲートローラ44のシャフト53の中心P2が偏心していることにより、偏心プレート64を回転させることでフィードローラ43とゲートローラ44のシャフト間距離d2を調整できるようになっているが、この場合、ゲートローラ44のシャフト53の軌道が円軌道となる為、偏心プレート64を回転させると、ゲートローラ44のシャフト53が前後方向だけでなく上下方向にも僅かではあるが移動することになる。
このように、ゲートローラ44のシャフト53が左右方向だけでなく上下方向にも移動すると、例えば鉛直下方であるべきフィードローラ43とゲートローラ44による紙幣の繰出方向が、鉛直下方から前後方向にずれることになる。しかしながら、繰り出し方向が多少ずれても、フィードローラ43とゲートローラ44による紙幣の繰出方向の下流側にはガイド56が設けられている為、繰り出された紙幣はこのガイド56に沿って正常に搬送される。
ちなみに、このような入出金部23のフィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpの調整は、例えば、入出金部23の組み立て時に行われるようになっている。
[1−4.紙幣収納カセットに設けられた紙幣分離装置の構成]
次に、紙幣収納カセット26(26A〜26C)に設けられた紙幣分離装置26sの構成についてさらに詳しく説明する。尚、紙幣収納カセット26A〜26Cは、同一構成の為、ここでは、紙幣収納カセット26Aに設けられた紙幣分離装置26sの構成のみを説明する。図7に示すように、紙幣収納カセット26Aには、紙幣を上下方向に集積する収納部80の上部に、紙幣分離装置26sが設けられている。
紙幣分離装置26sは、収納部80に集積されている紙幣を繰り出すピックアップローラ81と、紙幣を載置するとともに収納部80に集積されている紙幣をピックアップローラ81に押し当てるステージ82と、ピックアップローラ81により繰り出された紙幣を1枚ずつ分離するフィードローラ83及びゲートローラ84と、分離された紙幣を搬送路28Rへと送り出す送りローラ85とを有している。
ピックアップローラ81は、収納部80の上壁80uから一部が突出するようにして設けられている。このピックアップローラ81は、紙幣を確実に繰り出すことができるよう外周面の一部が摩擦部81fとなっている。また、このピックアップローラ81は、左右方向に延びるシャフト90上に複数個(例えば2個)設けられている。ステージ82は、収納部80の上壁80uと平行な状態(水平な状態)で収納部80内を上下方向(垂直方向)にスライド可能な板状部材である。
ステージ82は、ステージ82上に紙幣が集積されている状態で、収納部80の上壁80uに近づく方向にスライドすることで、集積されている紙幣をピックアップローラ81に押し付けるようになっている。ピックアップローラ81は、図中反時計回り方向に回転することで、ステージ82により押し付けられた紙幣を、フィードローラ83及びゲートローラ84へと繰り出すようになっている。
フィードローラ83は、ピックアップローラ81の紙幣繰出方向の下流(すなわちピックアップローラ81の前方)に配置され、ピックアップローラ81と同様、外周面の一部が摩擦部83fとなっている。このフィードローラ83は、図8に示すように、左右方向に延びるシャフト91上に複数個(例えば9個)設けられている。尚、図8は、図7のB−B´矢示図であり、フィードローラ83及びゲートローラ84を、ピックアップローラ81側から見た図である。
具体的に、シャフト91には、左右方向の中央に、1個のフィードローラ83Aが設けられ、このフィードローラ83Aの左右に、それぞれ3個のフィードローラ83が一体となったフィードローラ部92A、92Bが設けられ、さらに左側のフィードローラ部92Aの左側と、右側のフィードローラ部92Bの右側とに、それぞれ1個のフィードローラ83B、83Cが設けられている。
ゲートローラ84は、ピックアップローラ81により繰り出された紙幣の厚さ方向にフィードローラ83と対向して配置(すなわちフィードローラ83の下方に対向配置)され、外周面全体が摩擦部となっている。このゲートローラ84は、図8に示すように、左右方向に延びるシャフト93上に複数個(例えば4個)設けられていて、複数個のフィードローラ83と入れ子状に噛み合うよう対向配置されている。
具体的に、シャフト93には、左右2個のフィードローラ部92A、92Bのそれぞれと対向する位置に、左右2個のゲートローラ84が一体となったゲートローラ部94A、94Bが配置されている。さらに、各ゲートローラ部94A、94Bは、左右2個のゲートローラ84の外周の一部が、左右3個のフィードローラ83の間に入れ子状に入り込んでいる。この場合のフィードローラ83の外周面とゲートローラ84の外周面とのオーバーラップ量Lpが、フィードローラ83とゲートローラ84の噛合量Lpである。
フィードローラ83とゲートローラ84は、入れ子状に噛み合っている状態で、フィードローラ83のみが図7中反時計回り方向に回転することにより、ピックアップローラ81により繰り出された紙幣を、フィードローラ83とゲートローラ84との間で1枚ずつ分離して繰り出すようになっている。
送りローラ85は、フィードローラ83の紙幣繰出方向の下流(すなわち前方)に、紙幣の厚さ方向にフィードローラ83と対向して配置されている。この送りローラ85も、左右方向に延びるシャフト95上に複数個(例えば3個)設けられている。具体的には、中央と左右の計3個のフィードローラ83A、83B、83Cと対向する位置に、それぞれ1個ずつ送りローラ85が配置されている。
送りローラ85は、フィードローラ83とは逆方向の図7中時計回り方向に回転することにより、フィードローラ83とゲートローラ84により繰り出された紙幣を、フィードローラ83との間で挟持しながら、紙幣収納カセット26Aの外部の搬送路28Rへと送り出すようになっている。
尚、紙幣収納カセット26Aには、紙幣を収納部80から搬送路28Rへと繰り出す経路に沿ってガイド96が設けられていて、このガイド96に沿って紙幣を収納部80から搬送路28Rへと繰り出すようになっている。
このような構成にくわえて、紙幣分離装置26sは、フィードローラ83とゲートローラ84との間隔(すなわち噛合量)を調整する調整機構100を有している。紙幣収納カセット26Aの紙幣分離装置26sが有する調整機構100は、入出金部23の紙幣分離装置23sが有する調整機構60の向きを、フィードローラ83とゲートローラ84の位置関係に応じて変えたものであり、構成については同一の為、詳しい説明については省略する。
すなわち、紙幣収納カセット26Aの紙幣分離装置26sが有する調整機構100においても、入出金部23に設けられた調整機構60と同様、偏心プレート64を回転させるだけの簡単な操作でフィードローラ83とゲートローラ84の噛合量Lpを調整できるようになっている。尚、このような紙幣収納カセット26Aのフィードローラ83とゲートローラ84の噛合量Lpの調整も、例えば、紙幣収納カセット26Aの組み立て時に行われるようになっている。
尚、一時保留部25の紙幣分離装置25sについては、紙幣収納カセット26Aの紙幣分離装置26sと同一構成の為、説明は省略する。また、この一時保留部25の紙幣分離装置25sにも、紙幣収納カセット26Aに設けられている調整機構100と同様の調整機構(図示せず)を設けることができ、これにより、一時保留部25においても、偏心プレートを回転させるだけの簡単な操作でフィードローラとゲートローラの噛合量を調整できる。
[1−5.まとめと効果]
ここまで説明したように、第1の実施の形態では、入出金部23の紙幣分離装置23sにフィードローラ43とゲートローラ44との間隔を調整する(すなわち噛合量Lpを調整する)調整機構60を設けた。調整機構60は、フィードローラ43のシャフト51及びゲートローラ44のシャフト53の左右両端側に設けられた左右のフレーム61を有し、左右のフレーム61により、ベアリング62を介してフィードローラ43のシャフト51の左右両端部を回転可能に支持する。
さらに、調整機構60は、左右のフレーム61により、中空円板部64aと扇板部64bとでなる偏心プレート64を回転可能に支持する。偏心プレート64は、中空円板部64aが、フレーム61に形成されたプレート用孔65に嵌入されることで、フレーム61に回転可能に支持される。
偏心プレートの中空円板部64aは、回転中心となる外径の中心P1と、内側に形成されたベアリング用孔64hの中心(つまり内径の中心)P2とがずれた偏心構造でなり、ベアリング用孔64hにベアリング70が固定され、さらにこのベアリング70にゲートローラ44のシャフト53の左右両端部が挿入されている。これにより、ゲートローラ44のシャフト53の中心P2が、偏心プレート64の回転中心P1に対して偏心する。
この為、調整機構60では、偏心プレート64が回転させられると、これに応じて、ゲートローラ44のシャフト53をフィードローラ43のシャフト51に対して遠ざかる方向及び近づく方向に移動させることができ、これにより、フィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpを調整することができる。
さらに、調整機構60では、ゲートローラ44のシャフト53と偏心プレート64の回転中心P2がともに偏心プレート64のベアリング用孔64h内に配置される為、ゲートローラのシャフトから離れた位置にゲートホルダの回転軸を設けるような従来の調整機構と比べて、容易に小型化することができる。またこのように調整機構60を容易に小型化できる為、調整機構60を有する入出金部23についても小型化できる。
さらに、調整機構60では、偏心プレート64の扇板部64bの外周に形成された複数の溝64gのうちの1つと、フレーム61に形成された1つの溝61gとが、偏心プレート64の回転角度に応じて連通するようになっていて、連通した状態の2つの溝64g、61gに、トーションスプリング71のアーム71cの先端部分を嵌合することで、偏心プレート64を所定の回転角度でフレーム61に固定して、フィードローラ43とゲートローラ44の噛合量を固定することができる。
このように、調整機構60では、従来の調整機構に設けられていた付勢部材などを別途必要としないので、従来の調整機構と比べて構成を簡易化することもできる。
また、調整機構60は、偏心プレート64の位置がフレーム61により固定されている為、フィードローラ43とゲートローラ44とに噛合量Lpを大きくする方向の力が加わっても、偏心プレート64自体がフィードローラ43から遠ざかるようなことはなく、フィードローラ43とゲートローラ44の噛合量を一定に保つことができる。この為、調整機構60では、ピックアップローラ41により重送された状態で紙幣が繰り出されても、フィードローラ43とゲートローラ44とで確実に1枚ずつ分離することができる。
[2.第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、調整機構の構成が第1の実施の形態とは異なる実施の形態である。調整機構以外の構成については、第1の実施の形態と同様である為、詳しい説明については第1の実施の形態を参照とする。
[2−1.調整機構の構成]
図9、10に、第2の実施の形態の調整機構200を示す。尚、ここでは、一例として入出金部23の紙幣分離装置23sに設けられる調整機構200について説明するが、第1の実施の形態と同様、紙幣収納カセット26及び集積型の一時保留部25にも、同様の調整機構が設けられているとする。
図9(A)は、入出金部23の外装カバー201に覆われた状態の調整機構200を示す側面図であり、図9(B)は偏心プレート202を示し、図10は外装カバー201に覆われた状態の調整機構200を示す上面図である。尚、図9、10では、第1の実施の形態の調整機構60と同一の部分には同一符号を付している。
図9(A)に示すように、第2の実施の形態では、入出金部23の外装カバー201の上面における、調整機構200の左右のフレーム61に形成された左右のプレート用孔65のそれぞれの上方に、偏心プレート202及びトーションスプリング71の操作を可能とする操作孔201hが形成されている。
左右のフレーム61に回転可能に支持されている左右の偏心プレート202は、それぞれ扇板部202bが中空円板部202aから上方の操作孔201hまで延びていて、扇板部202bの円弧状の外周面が、外装カバー201の上面に形成された操作孔201hから外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、左右の操作孔201hから露出している左右の偏心プレート202の外周面に触れて、左右の偏心プレート202を回転操作することができる。
扇板部202bの外周面には、第1の実施の形態と同様、7個の溝202gが形成されていて、7個の溝202gのうち、中央の溝202gが、中空円板部202aの外径の中心P10と内径の中心P11とを結ぶ線分上に形成されている。さらに、この中央の溝202gの両側には、円弧状の外周に沿って中央の溝202gから10度、20度、30度ずれた位置にそれぞれ1個ずつ溝202gが形成されている。
さらに、外装カバー201の上面に形成された左右の操作孔201hのそれぞれの内側には、基準角度にある偏心プレート202の扇板部202bの中央の溝202gと対向して連通する位置に、溝202gと同形状でなる1個の溝201gが形成されている。
さらに、外装カバー201の内側の上部には、溝201gの後方にトーションスプリング71の巻回部71aが嵌入される円柱部201sが突設されていて、左右の円柱部201sに、それぞれトーションスプリング71の巻回部71aが嵌入されている。さらに、外装カバー201の内側には、左右の円柱部201sのそれぞれの下方にトーションスプリング71の一方のアーム71bを固定する固定部201fが設けられていて、左右の固定部201fに、それぞれトーションスプリング71の一方のアーム71bが固定されている。
トーションスプリング71の他方のアーム71cは、円柱部201sから溝201gへと延びていて且つ先端部分がフレーム61の外側から内側へ向かう方向に折り曲げられている。そして、図10に示すように、左右のトーションスプリング71は、それぞれ左右の外装カバー201の溝201gと、当該溝201gと連通している偏心プレート202側の溝202gとの両方に先端の折り曲げ部分が入り込むことで、左右の偏心プレート202をそれぞれ外装カバー201に対して回転しないよう固定する。
また、左右のトーションスプリング71は、他方のアーム71cが操作孔201hから露出するようになっていて、作業者が操作孔201hから露出しているアーム71cの先端の折り曲げ部分を溝201g、202gから外すよう上方に押し上げることで左右の偏心プレート202の固定を解除でき、また弾性力により元の位置に戻ることで、再び溝201g、202gに入り込んで左右の偏心プレート202を固定できるようになっている。
尚、このような構成でなる調整機構200による調整方法については、第1の実施の形態と同様の為、説明を省略する。
このように、第2の実施の形態の調整機構200は、偏心プレート202の扇板部202bが、入出金部23の外装カバー201から露出して回転操作可能となっていることにより、入出金部23の組み立て完了後に、入出金部23のフィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpを調整することができるようになっている。
また、紙幣収納カセット26にも調整機構200と同様の調整機構を設けることで、紙幣収納カセット26の組み立て完了後に、紙幣収納カセット26のフィードローラ83とゲートローラ84の噛合量Lpを調整することができる。
さらに、集積型の一時保留部25にも同様の調整機構を設けることで、一時保留部の組み立て完了後に、一時保留部25のフィードローラとゲートローラの噛合量を調整することができる。
[2−2.まとめと効果]
ここまで説明したように、第2の実施の形態では、入出金部23の外装カバー201に左右2つの操作孔201hを設け、左右の操作孔201hのそれぞれから調整機構200の左右の偏心プレート202の扇板部202bの外周面(すなわち溝202gが形成されている部分)と左右のトーションスプリング71のアーム71cとを露出させるようにした。
これにより、偏心プレート202の回転操作、及びトーションスプリング71を用いた偏心プレート202の固定操作及び固定解除操作を、入出金部23の外装カバー201の操作孔201hから行うことができる。こうすることで、第2の実施の形態では、入出金部23の組み立て完了後に、入出金部23のフィードローラ43とゲートローラ44の噛合量Lpを調整することができる。
また、同様の調整機構を、紙幣収納カセット26や集積型の一時保留部25に設けることで、紙幣収納カセット26や集積型の一時保留部25においても、組み立て完了後に、フィードローラとゲートローラの噛合量を調整することができる。
また、このように組み立て完了後に、入出金部23、紙幣収納カセット26及び一時保留部25のフィードローラとゲートローラの噛合量を調整することが可能な為、例えば、フィードローラとゲートローラが磨耗で削れて噛合量が小さくなったときなどに、入出金部23、紙幣収納カセット26及び一時保留部25をわざわざ分解することなく、噛合量を調整することができる。
特に紙幣収納カセット26においては、入出金機筐体20から外側に引き出すことで作業者が外装カバーの操作孔に容易にアクセス可能な為、入出金部23や一時保留部25と比べて一段と容易にフィードローラとゲートローラの噛合量を調整することができる。
[3.他の実施の形態]
[3−1.他の実施の形態1]
尚、上述した第1の実施の形態では、偏心プレート64の扇板部64bの外周面に複数の溝64gを等間隔で形成するようにしたが、これに限らず、例えば中央の溝64gから離れるほど溝64g間の距離が広がるように複数の溝64gを形成するなどしてもよい。例えば、中央の溝64gの両側に、円弧状の外周に沿って、中央の溝64gから、15度(sinθ=0.26…)、31度(sinθ=0.52…)、50度(sinθ=0.77…)ずれた位置にそれぞれ溝64gを形成するなどしてもよい。尚、調整距離d3を溝64gごとに一定量ずつ増加させる為には、sinθの値の増加分が一定となるように、溝64gの位置を決定すればよい。
また、偏心プレート64の回転角度を10度ごとというように離散的に固定するのではなく、連続的に任意の角度で固定できるようにしてもよい。
具体的には、図11(A)に示すように、偏心プレート210の第2部材としての扇板部210bに、複数の溝64gに代えて、円弧状に延び厚さ方向に貫通する1本の孔210hを設けるようにする。この孔210hは、第1部材としての中空円板部210aの中心P20と同心の円の円弧に沿って設けられていて、中空円板部210aの外径の中心P20と内径の中心P21を結ぶ線分を中心に、図中時計回り方向及び反時計回り方向にそれぞれ30度の範囲で延びている。
一方、フレーム61側には、溝61gに代えて、プレート用孔65の中心の上方に、偏心プレート210の孔210hと対向する1個のネジ孔61hが設けられている。このネジ孔61hは、偏心プレート210が基準角度から図中時計回り方向及び反時計回り方向にそれぞれ30度の範囲で回転する間、常に偏心プレート210の孔210hと連通するようになっている。
さらに、このネジ孔61hに、偏心プレート210の孔210hに挿入可能で且つこの孔210hの幅より大径の頭部を有するネジ211を螺入すると、ネジ211の頭部とフレーム61との間に偏心プレート210の扇板部210bが挟持されることで、偏心プレート210がフレーム61に固定される。
つまり、この場合、図11(B)に示すように、偏心プレート210を任意の回転角度まで回転させた状態で、偏心プレート210の孔210hを通してフレーム61のネジ孔61hにネジ211を螺入することで、偏心プレート210をこのときの回転角度で固定することができる。このような構成とすれば、偏心プレート210の回転角度を連続的に任意の角度で固定することができる。尚、このような構成を、第2の実施の形態に適用してもよい。
[3−2.他の実施の形態2]
また、上述した第1の実施の形態では、偏心プレート64の回転角度を、固定部材としてのトーションスプリング71により固定するようにしたが、これに限らず、種々の弾性部材で固定するようにしてもよい。例えば、図12(A)、(B)に示すように、トーションスプリング71の代わりに、板バネ220や板バネ221を固定部材として用い、これら板バネ220や板バネ221により偏心プレート64の回転角度を固定するようにしてもよい。
具体的に、図12(A)に示す板バネ220は、一端側がフレーム61に固定されているとともに他端側が偏心プレート64の扇板部64bの外周面と対向する位置にあり、他端が扇板部64bの外周面側(すなわち下方)に折り曲げられた爪部220aとなっている。
このような構成でなる板バネ220は、自然状態のときに、爪部220aがフレーム61の溝61gと、当該溝61gと連通している偏心プレート64の溝64gとに嵌入することで、偏心プレート64をフレーム61に対して回転しないよう固定する。また、板バネ220は、先端の爪部220aを、溝61g、64gから外すよう上方に押し上げることで偏心プレート64の固定を解除でき、また弾性力により元の位置に戻ることで、再び爪部220aが溝61g、64gに入り込んで偏心プレート64を固定する。
一方、図12(B)に示す板バネ221は、偏心プレート64の扇板部64bを回転方向に跨ぐようにして両端がフレーム61に固定されていて、扇板部64b側の面(すなわち下面)の中央に、扇板部64bの外周面側(すなわち下方)に突出する突起部221aが設けられている。また、この板バネ221は、扇板部64b側の面とは反対側の面(すなわち上面)の中央に、突起部221aとは反対側に突出する突起部221bが設けられている。
このような構成でなる板バネ221は、自然状態のときに、突起部221aがフレーム61の溝61gと、当該溝61gと連通している偏心プレート64の溝64gとに嵌入することで、偏心プレート64をフレーム61に対して回転しないよう固定する。また、板バネ221は、作業者が突起部221bをつまんで、突起部221aを溝61g、64gから外すよう上方に持ち上げることで偏心プレート64の固定を解除でき、また弾性力により元の位置に戻ることで、再び突起部221aが溝61g、64gに入り込んで偏心プレート64を固定する。尚、このような構成でなる板バネ220、221を、第2の実施の形態に適用してもよい。
さらに、このような弾性部材に限らず、種々の固定部材を用いて、偏心プレート64の回転角度を固定するようにしてもよい。例えば、フレーム61の溝61gと、当該溝61gと連通している偏心プレート64の溝64gとに、金属などで形成された棒状の固定部材を嵌入することで、偏心プレート64の回転角度を固定するようにしてもよい。
[3−3.他の実施の形態3]
さらに、上述した第1の実施の形態では、偏心プレート64において、扇板部64bを、中空円板部64aの外径の中心P1から見て、内径の中心P2とは逆側に設けるようにしたが、これに限らず、例えば、図13(A)に示すように、中空円板部64aの外径の中心P1から見て、内径の中心P2と同じ側に、扇板部64bを設けるようにしてもよい。
このように、中空円板部64aの外径の中心P1から見た、内径の中心P2と扇板部64bの位置関係を変えると、偏心プレート64の回転方向とシャフト間距離d2の増減との関係も変わることになる。
すなわち、図13(B)に示すように、中空円板部64aの外径の中心P1から見て内径の中心P2と同じ側に扇板部64bが設けられた偏心プレート64xを、図中時計回り方向に回転させると、偏心プレート64を時計回り方向に回転させたときとは反対に、ゲートローラ44のシャフト53がフィードローラ43のシャフト51へ近づく方向に移動することになり、シャフト間距離d2が基準シャフト間距離d2´より狭まる方向に調整される。
一方で、図は省略するが、偏心プレート64xを、図中反時計回り方向に回転させると、偏心プレート64を反時計回り方向に回転させたときとは反対に、ゲートローラ44のシャフト53がフィードローラ43のシャフト51から遠ざかる方向に移動することになり、シャフト間距離d2が基準シャフト間距離d2´より広がる方向に調整される。
このように、中空円板部64aの外径の中心P1から見て内径の中心P2と同じ側に扇板部64bが設けられた偏心プレート64xでは、偏心プレート64xを時計周り方向に回転させるとシャフト間距離d2が狭まり、反時計回り方向に回転させるとシャフト間距離d2が広がる。
この場合、作業者から見ると、扇板部64bをフィードローラ43へ近づけるように偏心プレート64xを時計回り方向に回転させることでシャフト間距離d2が狭まり、扇板部64bをフィードローラ43から遠ざけるように偏心プレート64xを反時計回り方向に回転させることでシャフト間距離d2が広がる為、偏心プレート64xの回転方向とシャフト間距離d2の増減との関係がより直感的で分かり易くなり、一段と容易にフィードローラ43とゲートローラ44の噛合量を調整できる。
尚、第2の実施の形態についても同様に、扇板部202bを中空円板部202aの外径の中心P10から見て内径の中心P11と同じ側に設けるようにしてもよい。また、これに限らず、少なくとも、偏心プレート64の中空円板部64aの外径の中心P1と内径の中心P2とがずれていればよい。
[3−4.他の実施の形態4]
さらに、上述した第1の実施の形態では、偏心プレート64の扇板部64bの中央の溝64gが、フレーム61の溝61gと連通する位置にあるときの角度を、偏心プレート64の基準角度とした。ここで、例えば、中央の溝64gを他の溝64gとは異なる色で着色したり、中央の溝64gにシールを貼り付けたりして、中央の溝64gを他の溝64gと容易に区別できるようにしてもよい。
このようにすれば、作業者が、複数の溝64gのうちのどの溝64gが基準角度に対応する溝64gであるかを容易に確認できる為、偏心プレート64を基準角度からどの方向にどの程度回転させて噛合量を調整したのかを容易且つ正確に把握できるようになる。第2の実施の形態についても同様である。
[3−5.他の実施の形態5]
さらに、上述した第1の実施の形態では、偏心プレート64の中空円板部64aと厚さ方向にずれている扇板部64bを左右のフレーム61の外側に位置させることにより、扇板部64bが中空円板部64aの回転を妨げないようにした。これに限らず、例えば、左右のフレーム61に、扇板部64bの可動範囲以上の大きさでなる溝(図示せず)又は孔を設け、この溝又は孔内に扇板部64bを回動自在に収容するようにしてもよく、このようにすれば、扇板部64bが中空円板部64aの回転を妨げず、そのうえフレーム61の外側に突出しない為、扇板部64bの破損などを防止できる。
[3−6.他の実施の形態6]
さらに、上述した第1の実施の形態では、偏心プレート64の回転範囲を基準角度を中心に+30度〜−30度の範囲とした。これに限らず、偏心プレート64を+方向又は−方向に回転させたときに調整距離d3が大きくなり続ける範囲である+90度〜−90度の範囲内であれば、偏心プレート64の回転範囲をより広くしたり、狭くしたりしてもよい。また、左右のフレーム61に、偏心プレート64が回転範囲を超えて回転しないよう扇板部64bと接触するストッパを設けるなどしてもよい。
[3−7.他の実施の形態7]
さらに、上述した第2の実施の形態では、偏心プレート202の扇板部202bを外装カバー201の操作孔201hまで延ばして露出させるようにしたが、これに限らず、例えば第1の実施の形態と同一構成の偏心プレート64の扇板部64bにギヤ(図示せず)を介して操作ノブ(図示せず)を連結し、この操作ノブを操作孔201hから露出させ、この操作ノブの操作により、偏心プレート64が回転するようにしてもよい。
[3−8.他の実施の形態8]
さらに、上述した第1の実施の形態では、偏心プレート64の内側に形成された孔部としてのベアリング用孔64hにベアリング70を取り付け、このベアリング70にゲートローラ44のシャフト53を挿入することで、偏心プレート64が、ベアリング70を介してゲートローラ44のシャフト53を支持するようにした。
これに限らず、ベアリング70を省略して、偏心プレート64が、直接、ゲートローラ44のシャフト53を支持するようにしてもよい。この場合、例えば、偏心プレート64の内側に、ベアリング用孔64hの代わりに、シャフト53の径に対応する孔部としてのシャフト用孔(図示せず)を形成し、このシャフト用孔にシャフト53を嵌合することで、偏心プレート64が、直接、ゲートローラ44のシャフト53を支持するようにすればよい。尚、このシャフト用孔も、ベアリング用孔64hと同様、その中心が、偏心プレート64の外径の中心P1からずれていて、且つこの中心P1がシャフト用孔内に位置するように形成されるものとする。
このように、偏心プレート64の内側に形成された孔部に、ベアリング70を介してゲートローラ44のシャフト53を嵌合するようにしてもよいし、ベアリング70を介さず、直接、ゲートローラ44のシャフト53を嵌合するようにしてもよい。第2の実施の形態及び上述した他の実施の形態1〜7についても同様である。
[3−9.他の実施の形態9]
さらに、上述した各実施の形態では、本発明を、媒体処理装置及び媒体収納繰出部としての入出金部23、紙幣収納カセット26、及び一時保留部25に適用したが、本発明は、これに限らず、媒体を分離して繰り出す媒体分離装置を有するものであれば、入出金部23、紙幣収納カセット26、及び一時保留部25とは異なる構成の媒体処理装置及び媒体収納繰出部にも適用できる。
さらに、上述した各実施の形態では、本発明を、自動取引装置としての現金自動預払機1に適用したが、これに限らず、媒体を分離して繰り出す媒体分離装置を有する自動取引装置であれば、現金自動預払機1とは異なる構成の自動取引装置にも適用できる。例えば、紙、切符など、紙幣以外の媒体を扱う自動取引装置であっても、媒体を分離して繰り出す媒体分離装置を有する自動取引装置であれば適用できる。
さらに、上述した第1の実施の形態では、偏心プレート64を、第1部材としての中空円板部64aと第2部材としての扇板部64bとで構成した。また、上述した第2の実施の形態では、偏心プレート202を、第1部材としての中空円板部202aと第2部材としての扇板部202bとで構成した。これに限らず、第1部材については、内側に孔部が形成され、外径の中心が当該孔部内に位置しているとともに、前記外径の中心と孔部の中心である内径の中心とがずれた位置にある円板状の部材であれば、中空円板部64a、202aとは形や大きさが異なる部材を用いてもよい。また、第2部材については、第1部材と同心の円の一部である円弧状の外周面を有する部材であれば、扇板部64b、202bとは形や大きさが異なる部材を用いてもよい。
[3−10.他の実施の形態10]
さらに、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した第1及び第2の実施の形態と他の実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。