上記特許文献1のものによれば、基布の裏面にバッキング材によって覆われていない部位を形成することで、人工芝生の表面から人工芝生の下側へ雨水等を排水することが可能となる。
しかしながら、上記特許文献1のもののように、1列のステッチ列を覆うように1列の被覆材列を設ける場合、各ステッチ列を狙って被覆材を塗布しなければならず、その制御が難しいという問題がある。特に、一般的な人工芝生においては、ステッチ列は1〜6mmの幅寸法で形成されることから、各ステッチ列を狙ってバッキング材を塗布し、基布の裏面におけるそれ以外の部位をバッキング材で被覆しないように、人工芝生を製造することは比較的困難である。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基布の裏面に芝糸のバックステッチ部が複数連なったステッチ列が複数配列された人工芝生において、排水性を確保しつつ、より容易な製造を可能にすることにある。
前記目的を達成するため、本発明では、基布の裏面において、基布が露出している部分を残しながら、バッキング材を塗布する際に狙いとする領域を広くとるようにしている。
具体的には、本発明は、透水性を有する基布と、当該基布に植設される芝糸とを備え、当該基布の裏面に出た当該芝糸のバックステッチ部が直線状に複数連なったステッチ列が、間隔をあけて平行に複数配列された人工芝生を対象としている。
そして、上記基布の裏面には、上記芝糸を固定するためのバッキング材を塗布して硬化させた、上記ステッチ列と同じ方向に延びるバッキング材帯が、上記複数のステッチ列を所定列数ごとに覆うように、複数配列されており、上記各バッキング材帯は、2列以上の上記ステッチ列および当該2列以上のステッチ列の間の上記基布を覆うように形成されていて、当該各バッキング材帯によって当該各ステッチ列間の上記基布が上記バッキング材で覆われる基布被覆領域が形成されているとともに、相隣り合う上記バッキング材帯の間では上記基布が露出する基布非被覆領域が形成されており、上記各基布非被覆領域は相隣り合う上記ステッチ列の間のみに形成されており、全ての上記ステッチ列が、上記基布被覆領域を形成する上記バッキング材帯によって、当該各ステッチ列における少なくとも一部が覆われていることを特徴としている。
この構成によれば、各バッキング材帯は、2列以上のステッチ列のみならず、当該2列以上のステッチ列の間の基布(以下、基布被覆領域ともいう)をも覆っていることから、バッキング材帯を形成するバッキング材を、バックステッチ部からなるステッチ列ではなく、基布被覆領域を狙って塗布することができる。そうして、一般的な人工芝生においては、基布被覆領域の幅寸法はステッチ列の幅寸法よりも大きく形成されているので、基布被覆領域を狙ってバッキング材を塗布することにより、バッキング材帯をより容易に形成することができる。
また、相隣り合うバッキング材帯の間では基布(以下、基布非被覆領域ともいう)が露出していることから、換言すると、複数のバッキング材帯は基布非被覆領域を間に挟んで配列されていることから、透水性を有する基布非被覆領域から雨水等を排水することができる。しかも、ある程度の広さを有する基布非被覆領域から雨水等を排水するので、従来の所定範囲ごとに設けられた貫通孔による排水に比べて、排水性を大幅に向上させることができる。
以上により、本発明の人工芝生によれば、排水性を確保しつつ、より容易な製造が可能となる。
なお、各バッキング材帯は、「2列以上のステッチ列および当該2列以上のステッチ列の間の基布を覆って」いればよく、例えば、ステッチ列−基布被覆領域−ステッチ列というように、2列のステッチ列および当該2列のステッチ列の間の1つの基布被覆領域を覆ってもよいし、n(3以上の整数)列のステッチ列および当該n列のステッチ列の間の(n−1)個の基布被覆領域を覆ってもよい。
また、本発明において「2列以上の上記ステッチ列…を覆っている」とは、バッキング材帯を構成するバッキング材によって各ステッチ列が完全に覆われている場合のみならず、バッキング材によって各ステッチ列の一部が覆われている場合も含む。例えば、バッキング材帯によって覆われる2列以上のステッチ列のうち最外のステッチ列については、内側の側面のみがバッキング材によって覆われるようにバッキング材帯を形成してもよい。
ところで、人工芝生を施工する(敷き並べる)際には、寸法調整のため人工芝生の配列方向の端部をカットする場合があるが、この場合に基布非被覆領域をカットすると、基布が解(ほつ)れるおそれがある。
そこで、本発明の人工芝生は、透水性を有する基布と、当該基布に植設される芝糸とを備え、当該基布の裏面に出た当該芝糸のバックステッチ部が直線状に複数連なったステッチ列が、間隔をあけて平行に複数配列された人工芝生であって、上記基布の裏面には、上記芝糸を固定するためのバッキング材を塗布して硬化させた、上記ステッチ列と同じ方向に延びるバッキング材帯が、上記複数のステッチ列を所定列数ごとに覆うように、複数配列されており、上記各バッキング材帯は、2列以上の上記ステッチ列および当該2列以上のステッチ列の間の上記基布を覆っているとともに、相隣り合う上記バッキング材帯の間では上記基布が露出しており、上記基布における、上記ステッチ列が延びる方向と基布の厚さ方向とに直交する配列方向の両端に配置される上記各バッキング材帯は、当該基布の裏面における配列方向の端縁に至るように形成されているとともに、当該両端のバッキング材帯の少なくとも一方は、これら両端のバッキング材帯の間に配置される上記バッキング材帯よりも多数の上記ステッチ列を覆っていることを特徴としている。
バッキング材帯は、基本的にはステッチ列およびステッチ列の間の基布を覆うものであるが、基布における配列方向の端部においては、例外的にバッキング材帯の配列方向の端部を基布の配列方向の端縁に至るように積極的に延ばすことで、寸法調整のため人工芝生の配列方向の端部をカットする場合でも、バッキング材で覆われた部分がカットされることから、基布が解れるのを抑えることができる。さらに、両端のバッキング材帯の少なくとも一方は、これら両端のバッキング材帯の間に配置されるバッキング材帯よりも多数のステッチ列を覆っていることから、カット量の選択範囲が広がるので、施工自由度を高めることができる。
さらに、上記人工芝生では、上記各バッキング材帯における、上記ステッチ列が延びる方向と基布の厚さ方向とに直交する配列方向の両端部が、当該両端部に対応する位置に配置された上記各ステッチ列における少なくとも一部を覆うように配置されていることが好ましい。
この構成によれば、各バッキング材帯における配列方向の両端部がステッチ列またはその近傍に位置していることから、換言すると、相隣り合うバッキング材帯の間では、2列のステッチ列の間の基布がバッキング材でほとんど覆われていないことから、排水性をより一層高めることができる。また、バッキング材帯の配列方向の広がりを抑えることから、少ない材料でバッキング材帯を形成することができ、これにより、製造コストを削減することができる。
なお、「近傍」とは、距離寸法が特に規定されるものではなく、ステッチ列の間隔等を勘案して、バッキング材帯の配列方向の両端部がステッチ列に近接した状態をいう。
また、本発明では、上記のような人工芝生を容易且つ大量に製造することができるように、人工芝生の製造装置にも工夫を凝らしている。
具体的には、本発明は、基布の裏面に出たバックステッチ部が直線状に複数連なるステッチ列が、間隔をあけて平行に複数配列されるように、芝糸が植設された当該基布に、当該芝糸を固定するためのバッキング材を塗布する人工芝生の製造装置をも対象としている。
そして、上記製造装置は、上記基布の裏面が上方を向いた姿勢で、上記ステッチ列が延びる方向に当該基布を連続搬送する搬送手段と、上記バッキング材を、連続搬送される上記基布の裏面に供給する供給手段と、を備え、上記供給手段には、バッキング材を上記基布の裏面に導くためのバッキング材導入部が、搬送方向と上下方向とに直交する幅方向に間隔をあけて複数設けられており、上記各バッキング材導入部は、当該各バッキング材導入部を通じて上記基布上に導入されるバッキング材が、2列以上の上記ステッチ列および当該2列以上のステッチ列の間の上記基布を覆うように構成されているとともに、上記基布における相隣り合う当該バッキング材導入部の間に対応する位置に、当該相隣り合うバッキング材導入部を通じて導入されるバッキング材によって覆われずに、上記基布が露出した領域が形成されるように配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、搬送手段を用いて、基布の裏面が上方を向いた姿勢で、ステッチ列が延びる方向に基布を連続搬送するとともに、供給手段を用いてバッキング材をかかる連続搬送される基布の裏面に供給することから、ステッチ列と同じ方向に延びるバッキング材帯を間断なく形成することができる。
そうして、供給手段は、2列以上のステッチ列および当該2列以上のステッチ列の間の基布を覆うようにバッキング材を導入するバッキング材導入部を複数有していることから、複数のバッキング材帯を容易に形成することができる。
加えて、かかる複数のバッキング材導入部は、基布における相隣り合う当該バッキング材導入部の間に対応する位置に、バッキング材によって覆われずに、基布が露出した領域が形成されるように配置されていることから、相隣り合うバッキング材帯の間で基布(基布非被覆領域)を露出させることができる。
このようなバッキング材導入部の一つの具体例として、上記各バッキング材導入部を、塗出口を有するノズル部材とすることができる。そして、塗出口は、当該塗出口から塗出されるバッキング材が2列以上の上記ステッチ列および当該2列以上のステッチ列の間の上記基布を覆うように構成されているとともに、当該塗出口の端部が、上記バッキング材によって覆われる2列以上のステッチ列のうち幅方向両端に位置する各ステッチ列に対応する位置、または、当該各ステッチ列に対応する位置よりも幅方向内側に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、塗出口から塗出されるバッキング材が、当該バッキング材によって覆われる2列以上のステッチ列のうち幅方向両端に位置する各ステッチ列の内側に導入され易くなる。このため、硬化前のバッキング材が基布上を流れて広がる場合でも、基布上に突出している当該幅方向両端のステッチ列によって堰き止められるようにしてバッキング材の広がりが抑制されるので、2列以上のステッチ列および当該2列以上のステッチ列の間の基布を覆うバッキング材帯を良好に形成することができるとともに、各バッキング材帯の間にバッキング材によって覆われずに基布が露出した領域を形成することができる。
また、バッキング材導入部をノズル部材とする場合には、上記ノズル部材は、上記塗出口を複数有しており、上記複数の塗出口のうち幅方向両端に配置される塗出口の端部が、上記バッキング材によって覆われる2列以上のステッチ列のうち幅方向両端に位置するステッチ列に対応する位置よりも内側に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、相隣り合うステッチ列の間(基布被覆領域)で、バッキング材を基布被覆領域およびステッチ列またはその近傍へ確実に導入することができる。
ところで、バッキング材帯におけるステッチ列を覆っている部位は、芝糸をしっかりと固定するために厚い方が好ましい一方、バッキング材帯における基布被覆領域を覆っている部位は、基布とバッキング材との付着力を高める効果を奏するが、製造コスト(バッキング材の量を減らす)という観点からは、必要以上に厚くない方が好ましい。
そこで、上記構成において、2つの塗出口を有するノズル部材を採用すれば、ステッチ列またはその近傍に塗出されたバッキング材は、流動性を有するので各々配列方向に広がり、ステッチ列とステッチ列との間、すなわち、基布被覆領域の中央部で合流した後に硬化する。このとき、バッキング材は、導入された位置から配列方向に広がるに従って薄くなることから、バッキング材帯におけるステッチ列を覆っている部位を厚く形成するとともに、バッキング材帯における基布被覆領域を覆っている部位を薄く形成することができる。
さらに、上記各ノズル部材には、上記塗出口から相隣り合う上記ステッチ列の間に塗出されたバッキング材に当接して、当該バッキング材を幅方向に押し広げるように構成された補助部材が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、塗出口から相隣り合うステッチ列の間に塗出されたバッキング材に補助部材が当接することから、バッキング材が幅方向に押し広げられるので、より一層確実に、バッキング材帯における、ステッチ列を覆っている部位を厚く且つ基布被覆領域を覆っている部位を薄く形成することができる。
また、バッキング材導入部の他の具体例として、上記各バッキング材導入部は、上下に傾斜する溝であり、上記各溝の幅は、2列以上の上記ステッチ列のうち幅方向両端のステッチ列同士の間隔と略等しく設定されている一方、上記溝同士の間隔は、相隣り合う上記ステッチ列同士の間隔と略等しく設定されていることが好ましい。
この構成によれば、各溝が、2列以上のステッチ列のうち幅方向両端のステッチ列同士の間隔と略等しい幅を有していることから、2列以上のステッチ列および当該2列以上のステッチ列の間の基布被覆領域を覆うバッキング材帯を容易に形成することができる。また、溝同士の間隔が相隣り合うステッチ列同士の間隔と略等しく設定されていることから、相隣り合うバッキング材帯の間で基布(基布非被覆領域)を露出させることができる。
さらに、上記溝には、上記2列以上のステッチ列の間の上記基布に対応した位置に邪魔部材が設けられ、上記溝の内部を流れるバッキング材が、上記邪魔部材によって、上記基布に対応した位置から上記各ステッチ列側へ導かれるように構成されていることが好ましい。
この構成によれば、溝における基布被覆領域に対応した位置に邪魔部材が設けられていることから、バッキング材を基布被覆領域の中央よりもステッチ列またはその近傍へより多く導くことができる。そうして、邪魔部材によって振り分けられてステッチ列またはその近傍に導かれたバッキング材は、流動性を有するので各々配列方向に広がり、ステッチ列とステッチ列との間、すなわち、基布被覆領域の中央部で合流した後に硬化する。このとき、バッキング材は、導入された位置から配列方向に広がるに従って薄くなることから、バッキング材帯におけるステッチ列を覆っている部位を厚く形成するとともに、バッキング材帯における基布被覆領域を覆っている部位を薄く形成することができる。
また、本発明は、基布の裏面に出たバックステッチ部が直線状に複数連なるステッチ列が、間隔をあけて平行に複数配列されるように、芝糸が植設された当該基布に、当該芝糸を固定するためのバッキング材を塗布する人工芝生の製造方法をも対象としている。
この製造方法では、上記基布と、当該基布の裏面が上方を向いた姿勢で、上記ステッチ列が延びる方向に当該基布を連続搬送する搬送手段と、上記バッキング材を連続搬送される当該基布の裏面に導くためのバッキング材導入部が、搬送方向と上下方向とに直交する幅方向に間隔をあけて複数設けられた供給手段と、を用意する。
そして、上記製造方法は、上記各バッキング材導入部を、相隣り合う2列の上記ステッチ列の間の上記基布の真上に配置し、上記各バッキング材導入部を通じて上記相隣り合う2列のステッチ列の間の基布に導入したバッキング材によって、上記2列のステッチ列および当該2列のステッチ列の間の上記基布を覆うバッキング材帯を形成するとともに、上記基布における相隣り合う当該バッキング材導入部の間に対応する位置に、当該相隣り合うバッキング材導入部を通じて導入されるバッキング材によって覆われずに、上記基布が露出した領域を形成することを特徴としている。
この構成によれば、相隣り合う2列のステッチ列の間の基布上にバッキング材を導入するので、導入されたバッキング材が硬化前に基布上を流れて広がる場合でも、基布上に突出している2列のステッチ列によって堰き止められるようにしてバッキング材の広がりが抑制される。これにより、2列のステッチ列および当該2列のステッチ列の間の基布を覆うバッキング材帯を良好に形成することができるとともに、各バッキング材帯の間にバッキング材によって覆われずに基布が露出した領域を形成することができる。
また、上記製造方法は、上記各バッキング材導入部を、1列以上の上記ステッチ列を間に挟む2列のステッチ列の間に対応する位置に配置し、上記各バッキング材導入部を通じて上記2列のステッチ列の間に導入したバッキング材によって、上記2列のステッチ列、当該2列のステッチ列の間の上記基布、および、当該2列のステッチ列の間のステッチ列を覆うバッキング材帯を形成するとともに、上記基布における相隣り合う当該バッキング材導入部の間に対応する位置に、当該相隣り合うバッキング材導入部を通じて導入されるバッキング材によって覆われずに、上記基布が露出した領域を形成することを特徴とするものでもよい。
この構成によれば、3列以上のステッチ列およびこれらのステッチ列の間の基布を覆うバッキング材帯を良好に形成することができる。
以上のように、本発明に係る人工芝生、並びにその製造装置および製造方法によれば、排水性に優れる人工芝生をより容易に製造することができる。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、各図では、図を見易くするために、芝糸3および芝葉4の数を実際の数よりもかなり少なく表現している。
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る人工芝生1を表側から見た斜視図である。この人工芝生1は、ポリプロピレン製の平織りの織布を用いた透水性を有する基布2に対し、ポリエチレン製の芝糸3をカットパイル状に植設して芝葉4を形成し、基布2の裏面からウレタン樹脂製のバッキング材5(図10参照)を塗布して芝糸3を固定したものである。
なお、基布2は、ポリプロピレン製の平織りの織布に限るものではなく、織物、編物、不織布など、透水性を有しており、且つ芝糸3が植設されるものであればよい。また、芝糸3も、ポリエチレン製に限られず、他の材質のものを用いてもよい。
この人工芝生1では、タフティングマシン(図示せず)を用いて、芝葉4が直線状に連なる列が間隔をあけて複数列形成されるように、芝糸3を基布2に対して植設している。それ故、基布2の裏面には、図2に示すように、基布2の裏面に出た芝糸3のバックステッチ部3aが直線状に複数連なったステッチ列13が、間隔をあけて平行に複数配列されている。
ところで、従来の人工芝生では、バッキング材を基布の裏面全面に塗布して芝葉を固定するとともに、所定範囲ごとに、基布およびバッキング材を貫通する排水用の貫通孔を設けるのが一般的である。このような貫通孔を設けることで、従来の人工芝生では、雨水等を人工芝生の下方へ流下させるようにしている。しかしながら、かかる従来の人工芝生では、例えば人工芝生の上に敷設される弾性粒状体等によって排水用の貫通孔が目詰まりすると、雨水等が人工芝生の表面に溜まったままになるおそれがある。
また、バッキング材を、基布の裏面全面ではなく、ステッチ列だけを覆うように塗布することで、バッキング材で被覆されていない領域を形成して排水性を向上させることも考えられるが、これでは、基布とバッキング材との高い付着力が得られず、芝糸を基布に対して十分に固定することが困難になるおそれがある。さらに、一般的な人工芝生では、ステッチ列の幅寸法が1〜6mm程度であるため、バッキング材を導入する位置がずれて不良品が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態の人工芝生1では、図3に示すように、バッキング材5を塗布して硬化させたバッキング材帯15が、複数のステッチ列13を所定列数ごとに覆うように、基布2の裏面に複数配列されている。具体的には、各バッキング材帯15は、2列のステッチ列13および当該2列のステッチ列13の間の基布2を覆うとともに、相隣り合うバッキング材帯15の間では基布2が露出するように形成されている。なお、以下では、説明の便宜を考慮して、バッキング材帯15で覆われた(または、バッキング材帯15で覆われる予定の)ステッチ列13の間の基布2を基布被覆領域12aとも称し、相隣り合うバッキング材帯15の間で露出する基布2を基布非被覆領域12bとも称する。
このように、各バッキング材帯15は、2列のステッチ列13のみならず、当該2列のステッチ列13の間の基布被覆領域12aをも覆っていることから、ステッチ列13の側方における基布2とバッキング材5との接触面積を十分に確保して、基布2とバッキング材5との付着力を高めることができる。これにより、本実施形態の人工芝生1では、芝糸3を基布2に対して確実に固定することができる。なお、バッキング材帯15には孔等が形成されておらず、それ故、基布被覆領域12aでは、基布2とバッキング材5とが強力に密着している。また、一般的な人工芝生では、例えば、ステッチ列の幅寸法が1〜6mm程度であるのに対して、相隣り合うステッチ列の中心同士の間隔が7〜40mmという具合に、ステッチ列の幅寸法よりも相隣り合うステッチ列の間隔の方が大きくなるように形成されている。そうして、本実施形態の人工芝生1では、バッキング材帯15を形成するために基布2の裏面へバッキング材5を導入する際、基布被覆領域12aとなされるステッチ列13の間へバッキング材5を導入することができるので、バッキング材5を導入する位置がずれるような問題が生じ難く、不良品の発生を抑制することができる。
また、相隣り合うバッキング材帯15の間では透水性を有する基布2が露出していることから、相隣り合うバッキング材帯15の間に挟まれた基布非被覆領域12bから、雨水等を基布2の下方へ排水することができる。
このように構成された人工芝生1は、図4に示すように、例えば透水コンクリート等を打設することで形成された基礎層6の上面に、例えば天然ゴムや合成ゴム等からなるシート状の緩衝材7を介して敷設される。そうして、人工芝生1の上には、例えばSBR(スチレンブタジエンゴム)の粒を用いた下層8と、例えばSBRの粒と珪砂を配合した中層9と、例えばSBRの粒を用いた上層10とからなる三層構造の粒状体層が形成される。
なお、図3に示した人工芝生1では、各バッキング材帯15における配列方向(ステッチ列13が延びる方向と基布2の厚さ方向とに直交する方向)の両端部が、配列方向におけるステッチ列13よりも外側の領域を覆うようにバッキング材帯15を形成しているが、これに限らず、例えば、図5に示すように、各バッキング材帯15の配列方向の両端部を、これらの端部で覆われるステッチ列13またはその近傍に位置するようにしてもよい。このようにすれば、相隣り合うバッキング材帯15の間では、2列のステッチ列13の間の基布2がバッキング材5でほとんど覆われていないことから、排水性をより一層高めることができる。また、バッキング材帯15の配列方向の広がりを抑えることから、少ない材料でバッキング材帯15を形成することができ、これにより、製造コストを削減することができる。
また、本発明において「2列以上のステッチ列…を覆っている」とは、バッキング材帯15を構成するバッキング材5によって各ステッチ列13が完全に覆われている場合のみならず、バッキング材5によって各ステッチ列13の一部が覆われている場合も含む。それ故、図3や図5に示したように、2列のステッチ列13がバッキング材5によって完全に覆われていることは必須ではなく、例えば、図6(a)および(b)に示すように、2列のステッチ列13の内側の側面のみがバッキング材5によって覆われるようにバッキング材帯15を形成してもよい。このようにしても、バッキング材5がステッチ列13のバックステッチ部3aに絡むことから、芝糸3を基布2に対して固定することができるとともに、排水性をより一層高めることができる。また、バッキング材帯15の配列方向の幅寸法を最小限に抑えることから、より少ない材料でバッキング材帯15を形成することができ、これにより、製造コストをより一層削減することができる。
さらに、本実施形態の人工芝生1では、基布2における配列方向の両端部に、バッキング材帯15を形成し、これらのバッキング材帯15を配列方向外側に延長することによって、基布2における配列方向の両端部をバッキング材5で覆うようにしている。より詳しくは、図7に示すように、配列方向の両端に配置される各バッキング材帯15a,15bは、基布2の裏面における配列方向の端縁に至るように形成されているとともに、図7の右側のバッキング材帯15a(両端のバッキング材帯15a,15bの少なくとも一方)は、これら両端のバッキング材帯15a,15bの間に配置される、2列のステッチ列13を覆うバッキング材帯15よりも多数の5列のステッチ列13を覆っている。人工芝生1を施工する(敷き並べる)際には、寸法調整のため人工芝生1の配列方向の端部をカットする場合があるが、基布2における配列方向の両端部にこのようなバッキング材帯15a,15bを形成すれば、基布2の繊維がバッキング材5で固定されるので、例えば図7の一点鎖線で示すラインや二点鎖線で示すラインで人工芝生1をカットしても、基布2が解れるのを抑えることができる。例えば、少ないカット量で寸法調整を行う場合には、バッキング材帯15aまたはバッキング材帯15bにおける一点鎖線で示すラインで人工芝生1をカットすればよい一方、ある程度のカット量で寸法調整を行う場合には、カット量に合わせて、バッキング材帯15aにおける二点鎖線で示す4つのラインのいずれかで人工芝生1をカットすればよいので、施工自由度を高めることができる。
次に、本実施形態の人工芝生1の製造装置20および製造方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る人工芝生1の製造装置20を模式的に示す側面図である。この製造装置20は、上記図2に示したような、バックステッチ部3aが直線状に複数連なるステッチ列13が間隔をあけて平行に複数配列されるように、芝糸3が植設された基布2に、バッキング材5を塗布するものである。なお、以下では、説明の便宜を考慮して、図8の左右方向を「前後方向」といい、図8の左側を「前後方向前側」といい、図8の右側を「前後方向後側」といい、図8の紙面の奥行方向を「幅方向」という。
この製造装置20は、図8に示すように、ベルトコンベア21と、トラバース式供給パイプ22と、バケット23と、繰出しドラム24と、供給量調整部25と、ドクターブレード26と、傾斜供給部27と、検出カメラ28と、制御部29と、を備えている。
この製造装置20によって裏面にバッキング材5が塗布される基布2は、ステッチ列13が延びる方向に延びる長尺に形成されている。ベルトコンベア(搬送手段)21は、裏面が上方を向いた姿勢で搬送面に載置された基布2を、ステッチ列13が延びる方向と前後方向とが一致するように前後方向前側に連続搬送する。
トラバース式供給パイプ22は、粘性を有する液状のバッキング材5をバケット23に供給するものであり、供給されたバッキング材5が一箇所に溜まらないように、幅方向に往復移動しながらバッキング材5を供給する。
バケット23は、底壁部23aと、幅方向に対向する一対の側壁部23bと、前側壁部23cと、を有している。各側壁部23bの前後方向後側で且つ下側の隅部は、円弧状に切り取られている。そうして、このバケット23は、底壁部23aの前後方向後側の端部および一対の側壁部23bの円弧状の端部が繰出しドラム24の外周面に接触した状態で、フレーム30に支持されている。すなわち、バケット23は、バッキング材5の貯留槽を単独で構成しているのではなく、繰出しドラム24の外周面とともにバッキング材5の貯留槽を構成している。
繰出しドラム24は、架台31に支持されたドラム軸24aを中心として図8の時計回りに回転する。繰出しドラム24が回転することによって、繰出しドラム24の外周面に付着した、粘性を有する液状のバッキング材5が供給量調整部25に送られる。
供給量調整部25は、フレーム30の上端に設けられた、幅方向に対向する一対の支持板32aを有する支持架台32と、一対の支持板32aに回転可能に支持された軸部33(図10参照)と、軸部33を手動で回転させるためのハンドル34と、取付部材35(図10参照)を介して90°間隔で軸部33に固定された4枚のプレート36と、を有している。これら4枚のプレート36は、軸部33を中心とする径方向における長さが互いに異なっている。それ故、ハンドル34を回転させて、軸部33の下方で垂直な姿勢をとるプレート36を交替させることにより、プレート36の下端と繰出しドラム24の外周面との間の隙間h(図10(a)参照)を4段階に変化させることができる。これにより、繰出しドラム24の外周面に付着したバッキング材5のうち、隙間hを通過したバッキング材5だけがドクターブレード26に送られるので、バッキング材5の供給量を容易に調整することができる。
ドクターブレード26は、ブラケット26aを介して架台31に固定されている。このドクターブレード26は、下方に向かうほど前後方向後側に延びるように傾斜しており、その上端が繰出しドラム24の外周面に近接している一方、その下端が傾斜供給部27の前後方向後側の端部の上方に位置している。このように、ドクターブレード26を配置することで、繰出しドラム24の外周面に付着したバッキング材5がドクターブレード26の上端部によってこそぎ取られ、ドクターブレード26の傾斜面を伝って下方に流れ、傾斜供給部27に供給される。
傾斜供給部(供給手段)27は、下方に向かうほど前後方向前側に延びるように傾斜した姿勢で、ブラケット27aを介してフレーム30に支持されている。この傾斜供給部27は、ドクターブレード26の傾斜面を伝って流れてきたバッキング材5を、ベルトコンベア21によって連続搬送される基布2の裏面に供給するためのものである。
この傾斜供給部27には、バッキング材5を基布2の裏面に導くための溝(バッキング材導入部)37が、幅方向に間隔をあけて複数設けられている。より詳しくは、傾斜供給部27は、図9に示すように、矩形板状の底壁部37aと矩形板状の側壁部37bとによって区画された断面矩形状の溝37を有する複数の断面コ字状の部材を、角柱状の接続部40を介して幅方向に繋いだような形状に形成されている。そうして、ドクターブレード26から供給されたバッキング材5は、傾斜供給部27の傾斜に沿って溝37内を流下するようになっている。換言すると、傾斜供給部27には、その内部を傾斜に沿って流下するバッキング材5を基布2の裏面に導くための溝37が、搬送方向(前後方向)と上下方向とに直交する幅方向に間隔39をあけて複数設けられている。なお、本実施形態においては、図9の符号38で示す範囲が、本発明で言う溝37の幅に相当し、また、図9の符号39で示す範囲が、本発明で言う溝37同士の間隔に相当する。
各溝37の幅38は、当該各溝37を通じて流下するバッキング材5が、相隣り合う2列のステッチ列13および当該2列のステッチ列13の間の基布2(基布被覆領域12a)を覆うような幅に設定されている。一方、溝37同士の間隔39は、基布2における相隣り合う溝37の間に対応する位置に、当該相隣り合う溝37を通じて流下するバッキング材5によって覆われずに、基布2が露出した領域(基布非被覆領域12b)が形成されるような間隔に設定されている。そうして、基布2は、基布被覆領域12aが溝37の下方に位置し、且つ、基布非被覆領域12bが接続部40の下方に位置するように、ベルトコンベア21の搬送面に載置される。
例えば各溝37の幅38は、相隣り合うステッチ列13の間隔(2列以上のステッチ列13のうち幅方向両端のステッチ列13同士の間隔)と略等しく設定されている。より詳しくは、溝37の幅38は、図9に示すように、相隣り合うステッチ列13における各ステッチ列13の内面(うちづら)同士の間隔と略等しく設定されている。一方、例えば溝37同士の間隔39は、相隣り合うステッチ列13における各ステッチ列13の外面(そとづら)同士の間隔と略等しく設定されている。
そうして、基布2は、例えば、基布被覆領域12aを間に挟む2列のステッチ列13の内面と、溝37の両側面(2つの側壁部37bの対向面)とが面一になるように、ベルトコンベア21の搬送面に載置される。換言すると、基布2は、基布被覆領域12aが溝37の真下に位置し、且つ、基布非被覆領域12bが接続部40の真下に位置するように、ベルトコンベア21の搬送面に載置される。これを製造装置20の側から表現すれば、溝37は、基布被覆領域12aの真上に配置される。なお、ベルトコンベア21によって連続搬送される基布2におけるステッチ列13の幅方向の位置と、溝37の幅方向の位置とがずれているか否かは、検出カメラ28によってチェックされ、仮に両者がずれている場合には、ベルトコンベア21に設けられた位置調整機構(図示せず)によって位置修正が行われる。
制御部29は、繰出しドラム24の回転速度を調整したり、ベルトコンベア21の動きを制御したりするためのものであり、繰出しドラム24の回転速度の調整を通じて、バッキング材5の供給量を調整することが可能となっている。例えば、繰出しドラム24の回転速度が早くなれば、基布2の裏面に供給されるバッキング材5の量が増大する一方、繰出しドラム24の回転速度が遅くなれば、基布2の裏面に供給されるバッキング材5の量が減少する。なお、バケット23から傾斜供給部27にバッキング材5を直接供給してもよいが、本実施形態のように繰出しドラム24を用い、その外周面に付着したバッキング材5を傾斜供給部27に供給することで、供給されるバッキング材5の量を幅方向に均一にすることができる。
図10は、人工芝生1の製造装置20の動きを模式的に説明する図である。図10(a)に示すように、先ず、ハンドル34を回転させて、プレート36の下端と繰出しドラム24の外周面との間の隙間hを調整する。次いで、図10(b)に示すように、トラバース式供給パイプ22を幅方向に往復移動させながら、繰出しドラム24の外周面とバケット23とで区画される空間にバッキング材5を供給する。そうして、図10(c)に示すように、繰出しドラム24が回転すると、繰出しドラム24の外周面に付着したバッキング材5が上昇するが、プレート36の下端と繰出しドラム24の外周面との間の隙間hを通過したバッキング材5だけがドクターブレード26に送られる。次いで、図10(d)に示すように、繰出しドラム24の外周面に付着したバッキング材5がドクターブレード26の上端部によってこそぎ取られ、ドクターブレード26の傾斜面を伝って傾斜供給部27に供給される。このとき、ドクターブレード26によってこそぎ取られなかったバッキング材5は、図10(d)の黒塗矢印で示すように、仮受パン41に溜められる。次いで、図10(e)に示すように、ドクターブレード26によって傾斜供給部27に供給されたバッキング材5は、溝37のみを通って斜め下方に流れる。これに合わせて、ベルトコンベア21による基布2の連続搬送が開始される。そうして、図10(f)に示すように、ベルトコンベア21によって連続搬送される基布2の裏面にバッキング材5が間断なく供給される。
図11は、図10(e)から図10(f)にかけての、バッキング材5の塗布手順を模式的に説明する図である。図11(a)に示すように、各溝37の両側面と、基布被覆領域12aを間に挟む2列のステッチ列13の内面とが一致している状態で、基布2が連続搬送される。そうして、図11(b)の白抜き矢印で示すように、溝37から流れ出したバッキング材5は中央に集まりながら、連続搬送されている基布2における基布被覆領域12aに供給される。このようにして、供給されたバッキング材5は、当初は、図11(c)に示すように、2列のステッチ列13の間の基布被覆領域12aに堆積した状態となるが、時間の経過とともに、配列方向両側に広がる。その後、液状のバッキング材5は、図11(d)に示すように、2列のステッチ列13を覆った状態で硬化し、これにより、バッキング材帯15が形成されるとともに、相隣り合うバッキング材帯15の間では基布2(基布非被覆領域12b)が露出することになる。
以上のように、本実施形態の人工芝生1の製造装置20および製造方法によれば、排水性に優れ且つ丈夫な人工芝生1を得ることができ、しかも、かかる人工芝生1を容易且つ大量に製造することができる。加えて、バッキング材帯15を形成する際、ステッチ列13の間へバッキング材5を導入することができるので、バッキング材5を導入する位置がずれるような問題が生じ難く、不良品の発生を抑制することができる。
−実施形態1の変形例−
次に、実施形態1の変形例について説明する。本変形例は、傾斜供給部27の構成が上記実施形態1と異なるものである。以下では、実施形態1と異なる点について説明する。
バッキング材帯15におけるステッチ列13を覆っている部位は、芝糸3をしっかりと固定するために厚い方が好ましい一方、バッキング材帯15における基布被覆領域12aを覆っている部位は、基布2とバッキング材5との付着力を高める効果を奏するが、製造コスト(バッキング材5の量を減らす)という観点からは、必要以上に厚くない方が好ましい。それ故、バッキング材帯15の断面形状は、上記図4に示すような逆台形状よりも、図12に示すような、バッキング材帯15におけるステッチ列13を覆っている部位が厚く、基布被覆領域12aを覆っている部位が薄い形状が好ましい。
そこで、本実施形態では、図12に示すように、基布被覆領域12aを覆うバッキング材5をより薄く設けるため、上記人工芝生1の製造装置20に改良を加えている。具体的には、上記溝37を流れるバッキング材5が、基布被覆領域12aの中央よりも、ステッチ列13またはその近傍により多く導かれるように、上記各溝37における基布被覆領域12aに対応した位置に、邪魔部材を設けている。より具体的には、図13に示すように、各溝37の先端部における中央部に、円柱状のピン42を配置している。
図14は、バッキング材5が硬い状態におけるバッキング材5の塗布手順を模式的に説明する図である。図14(a)に示すように、各溝37の両側面と、基布被覆領域12aを間に挟む2列のステッチ列13の内面とが一致している状態で、基布2が連続搬送される。そうして、バッキング材5が硬い状態であれば、溝37内を流れるバッキング材5は、円柱状のピン42によって配列方向両側に振り分けられ、基布被覆領域12aの中央には供給されず、図14(b)の白抜き矢印で示すように、溝37の両端から流れ出して、ステッチ列13の近傍に供給される。このようにして、供給されたバッキング材5は、当初は、図14(c)に示すように、2列のステッチ列13乃至その近傍に堆積した状態となるが、時間の経過とともに、配列方向両側に広がる。その後、液状のバッキング材5は、図14(d)に示すように、2列のステッチ列13を厚く覆うとともに、当該2列のステッチ列13の間の基布被覆領域12aを薄く覆った状態で硬化する。また、ステッチ列13を基布非被覆領域12b側に乗り超えたバッキング材5は、ステッチ列13を乗り超えるのにある程度時間を要することから、ほとんど広がることなく硬化するので、相隣り合うバッキング材帯15の間では基布2(基布非被覆領域12b)が露出することになる。
一方、図15は、バッキング材5が柔らかい状態におけるバッキング材5の塗布手順を模式的に説明する図である。図15(a)に示すように、各溝37の両側面と、基布被覆領域12aを間に挟む2列のステッチ列13の内面とが一致している状態で、基布2が連続搬送される。バッキング材5が柔らかい状態であれば、溝37内を流れるバッキング材5は、円柱状のピン42の存在により、図15(b)の白抜き矢印で示すように、溝37の中央よりも溝37の両端からより多く流れ出すため、基布被覆領域12aの中央には少量のバッキング材5しか供給されない。このようにして、供給されたバッキング材5は、図15(c)に示すように、基布被覆領域12aの中央では薄く堆積する一方、2列のステッチ列13乃至その近傍では厚く堆積した状態となる。そうして、時間の経過とともに、2列のステッチ列13乃至その近傍で厚く堆積したバッキング材5は、配列方向両側に広がり、基布被覆領域12aの中央で薄く堆積したバッキング材5と合流する。その後、液状のバッキング材5は、図15(d)に示すように、2列のステッチ列13を厚く覆うとともに、当該2列のステッチ列13の間の基布被覆領域12aを薄く覆った状態で硬化する。また、ステッチ列13を基布非被覆領域12b側に乗り超えたバッキング材5は、ステッチ列13を乗り超えるのにある程度時間を要することから、ほとんど広がることなく硬化するので、相隣り合うバッキング材帯15の間では基布2(基布非被覆領域12b)が露出することになる。
以上のように、本実施形態によれば、各溝37の先端部における中央部に、円柱状のピン42を配置するという簡単な構造で、バッキング材5が硬い状態でも柔らかい状態でも、ステッチ列13を覆っている部位が厚い一方、基布被覆領域12aを覆っている部位が薄い、理想的なバッキング材帯15を形成することができる。
(実施形態2)
本実施形態は、製造装置50の構成が上記実施形態1と異なるものである。以下では、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
図16は、本実施形態に係る人工芝生1の製造装置50の要部を模式的に示す正面図であり、図17は、人工芝生1の製造装置50の要部を模式的に示す側面図である。製造装置50は、図17に示すように、ベルトコンベア(搬送手段)51と、ベルトコンベア51によって連続搬送される基布2にバッキング材5を供給する塗出供給部(供給手段)60と、を備えている。なお、図16では、ベルトコンベア51を図示省略している。また、以下では、説明の便宜を考慮して、図16の左右方向(図17の紙面の奥行方向)を「幅方向」といい、図17の左右方向(図16の紙面の奥行方向)を「前後方向」といい、図17の左側を「前後方向前側」といい、図17の右側を「前後方向後側」という。
ベルトコンベア51は、製造装置20のベルトコンベア21と同様に、裏面が上方を向いた姿勢で搬送面に載置された基布2を、ステッチ列13が延びる方向と前後方向とが一致するように前後方向前側に連続搬送する。
塗出供給部60は、図16および図17に示すように、支持板61と、支持架台62と、複数の塗出ヘッド66と、検出カメラ67と、制御部59と、を有していて、工場内に設置された幅方向に延びる箱桁68に支持されている。
支持板61は、箱桁68に幅方向に相対移動可能に支持されている。支持架台62は、支持板61に上下方向に相対移動可能に支持されている。なお、支持板61の幅方向の移動および支持架台62の上下方向の移動は駆動機器(図示せず)によって行われる。また、供給源から圧送された液状のバッキング材5は、ホースなどの配管部材(図示せず)を介して分岐ホース79から流出するようになっている。
複数の塗出ヘッド66は、幅方向に並び且つ下方に行くほど前側に傾斜して延びるように支持架台62に固定されている。各塗出ヘッド66は、分岐ホース79と接続されている。塗出ヘッド66は、分岐ホース79から流入したバッキング材5の経路を途中で分岐させて、先端に向かって開口する分岐路66aから流出させるように構成されている。また、各塗出ヘッド66の先端部には、基本的に4つのノズル部材80が取り付けられている。
ノズル部材(バッキング材導入部)80には、図18(a)および(b)に示すように、軸方向に延びる、液状のバッキング材5を導入するための導入路80aと、幅方向に並ぶ2つの断面円形状の塗出口80bとが形成されている。ノズル部材80を塗出ヘッド66の先端部に取り付けると、導入路80aと分岐路66aとが連通するようになっている。
各ノズル部材80における2つの塗出口80bは、各塗出口80bから塗出されるバッキング材5が2列のステッチ列13および当該2列のステッチ列13の間の基布2を覆うように構成されているとともに、基布2における相隣り合うノズル部材80の間に対応する位置に、当該相隣り合うノズル部材80を通じて導入されるバッキング材5によって覆われずに、基布非被覆領域12bが形成されるように配置されている。具体的には、2つの塗出口80bは、その端部が、2列のステッチ列13に対応する位置よりも若干内側に配置されている。換言すると、2つの塗出口80bの間隔は、2列のステッチ列13の間隔よりも若干小さく設定されている。つまり、各ノズル部材80における2つの塗出口80bは、2つの塗出口80bの外側同士の間隔(2つの塗出口80bの中心間隔と塗出口80bの直径との和)が、相隣り合うステッチ列13の内面同士の間隔L1と略等しく設定されている(図19(a)参照)。また、相隣り合うノズル部材80間における内側の塗出口80b同士の間隔は、これらの塗出口80bの内側同士の間隔(内側の塗出口80b同士の中心間隔と塗出口80bの直径との差)が相隣り合うステッチ列13の外面同士の間隔L2と略等しく設定されている(図19(a)参照)。
各ノズル部材80には、塗出口80bから相隣り合うステッチ列13の間に塗出されたバッキング材5に当接して、当該バッキング材5を幅方向に押し広げるように構成された補助部材81が設けられている。本実施形態では、2つの塗出口80bが形成された各ノズル部材80により1つの基布被覆領域12aにバッキング材5が供給されることから、各ノズル部材80に対して補助部材81が1つ設けられているが、例えば、各ノズル部材80により3つのステッチ列13および2つの基布被覆領域12aにバッキング材5が供給される場合には、各ノズル部材80に対して補助部材81が2つ設けられることになる。
補助部材81は、図18(a)および(c)に示すように、薄板状のプレートの先端部を折り曲げることで形成されており、長穴81aに挿通されたボルト等を介して、ノズル部材80の軸方向に延びるように当該ノズル部材80に取り付けられている。このように、長穴81aに挿通されたボルト等を介してノズル部材80に取り付けられることで、補助部材81の軸方向の突出量を調整することが可能となっている。また、補助部材81は、その先端部に、球面を有する当接部材82を有している。なお、当接部材82の球面の頂点は、補助部材81が取り付けられたノズル部材80における2つの塗出口80bの中心を結ぶ線に垂直で且つ当該2つの塗出口80bの中心の中間点を通る平面上に位置している。
制御部59は、塗出口80bからの塗出位置を調整したり、供給源からのバッキング材5の供給量を調整したりすることにより、製造装置50を統合的に制御するように構成されている。検出カメラ67は、支持板61に取り付けられており、ベルトコンベア51上の基布2を撮影する。制御部59は、検出カメラ67によって検出された、ステッチ列13の幅方向の位置情報に基づいて塗出口80bからの塗出位置を調整する。また、ベルトコンベア51によって連続搬送される基布2におけるステッチ列13の幅方向の位置と、塗出口80bの幅方向の位置とがずれているか否かは、検出カメラ67によってチェックされ、仮に両者がずれている場合には、ベルトコンベア51に設けられた位置調整機構(図示せず)によって位置修正が行われる。
以上のように構成された製造装置50では、先ず、ベルトコンベア51によって連続搬送される基布2におけるステッチ列13の幅方向の位置が検出カメラ67によって検出される。次いで、制御部59が、検出カメラ67によって検出された、ステッチ列13の幅方向の位置情報に基づいて支持板61を幅方向に移動させることで、各ノズル部材80を、相隣り合う2列のステッチ列13の間の基布の真上に配置し、ステッチ列13と塗出口80bとの幅方向の位置関係を調整する。塗出口80bの幅方向の位置が決まると、制御部59が、例えばノズル部材80の先端部と基布2との上下間隔が5〜10mmとなるように支持板61を下げる。
このように、ノズル部材80の幅方向および上下方向の位置が決まると、制御部59が、供給源から塗出供給部60へ液状のバッキング材5を供給する。供給された液状のバッキング材5は、ノズル部材80の導入路80aを通り、2つの塗出口80bから塗出される。
図19および図20は、バッキング材5の塗布手順を模式的に説明する図である。図19(a)に示すように、各ノズル部材80の2つの塗出口80bの幅方向における外側端と、基布被覆領域12aを間に挟む2列のステッチ列13の内面とが一致している状態で、図20(a)に示すように、基布2が前後方向前側へ連続搬送される。そうして、図19(b)および図20(b)の白抜き矢印で示すように、液状のバッキング材5が2つの塗出口80bから連続搬送されている基布2における基布被覆領域12a且つステッチ列13の近傍に供給される。図20(c)に示すように、バッキング材5が塗出供給されると、直ぐに、補助部材81の先端部に取り付けられた当接部材82が、2つの塗出口80bから塗出され基布被覆領域12aの中央部で合流したバッキング材5に当たる。上述の如く、当接部材82の球面の頂点は、各ノズル部材80における2つの塗出口80bの中心を結ぶ線に垂直で且つ2つの塗出口80bの中心の中間点を通る平面上に位置しているとともに、2つの塗出口80bの幅方向における外側端と2列のステッチ列13の内面とが一致していることから、当接部材82は2列のステッチ列13の幅方向の中央部でバッキング材5に当たる。これにより、図19(c)の白抜き矢印で示すように、当接部材82によってバッキング材5が幅方向両外側に押し広げられる。その後、液状のバッキング材5は、図19(d)に示すように、2列のステッチ列13を厚く覆うとともに、当該2列のステッチ列13の間の基布被覆領域12aを薄く覆った状態で硬化する。また、ステッチ列13を基布非被覆領域12b側に乗り超えたバッキング材5は、ステッチ列13を乗り超えるのにある程度時間を要することから、ほとんど広がることなく硬化するので、相隣り合うバッキング材帯15の間では、2列のステッチ列13の間の基布2(基布非被覆領域12b)がバッキング材5でほとんど覆われずに露出する。
以上のように、本実施形態の人工芝生1の製造装置50によれば、バッキング材5が2列のステッチ列13の近傍に導入され易くなることと、当接部材82によってバッキング材5が幅方向両外側に押し広げられることとが相俟って、バッキング材帯15におけるステッチ列13を覆っている部位を厚く形成するとともに、バッキング材帯15における基布被覆領域12aを覆っている部位を薄く形成することができる。これにより、製造コストを削減しながら、排水性を確保しつつ、芝糸3を基布2に対して確実に固定することができる。加えて、バッキング材帯15を形成する際、ステッチ列13の間へバッキング材5を塗出することができるので、バッキング材5を塗出する位置がずれるような問題が生じ難く、不良品の発生を抑制することができる。
しかも、複数の溝37から流れるバッキング材5の量を均一にするよりも、複数のノズル部材80から塗出されるバッキング材5の量を均一にする方が容易であることから、基布2上に形成される複数のバッキング材帯15の均質性を向上させることができる。
−実施形態2の変形例−
次に、上記実施形態2の変形例について説明する。本変形例は、ノズル部材80の塗出口80c〜80fの構成が実施形態2と異なるものである。以下では、実施形態2と異なる点について説明する。
<変形例1>
上記実施形態2では、ノズル部材80に2つの断面円形状の塗出口80bを設けたが、本変形例では、図21(a)に示すように、ノズル部材80に1つの断面長円形状の塗出口80cを設けている。この塗出口80cの端部は、相隣り合う2列のステッチ列13に対応する位置より幅方向内側に配置されている。これにより、塗出口80cから塗出されるバッキング材5が、相隣り合う2列のステッチ列13の内側に導入され易くなる。また、2つの塗出口80bから塗出されたバッキング材5が基布被覆領域12aの中央部で合流するのではなく、塗出口80cから基布被覆領域12a全体にバッキング材5が導入されるので、2列のステッチ列13および基布被覆領域12aを覆うバッキング材帯15を確実に形成することができる。
<変形例2>
本変形例では、図21(b)に示すように、ノズル部材80に3つの断面円形状の塗出口80dを設けている。3つの塗出口80dのうち幅方向中央に配置される塗出口80dは、相隣り合う2列のステッチ列13の中央部に対応する位置に設けられている一方、幅方向両端に配置される塗出口80dの端部は、相隣り合う2列のステッチ列13に対応する位置よりも若干内側に配置されている。これにより、幅方向両端の塗出口80dから塗出されるバッキング材5をステッチ列13またはその近傍へ確実に導入することができるとともに、3つの塗出口80dから塗出されたバッキング材5が合流し易くなるので、2列のステッチ列13および基布被覆領域12aを覆うバッキング材帯15を確実に形成することができる。
<変形例3>
本変形例では、図21(c)に示すように、実施形態2の2つの塗出口80bを繋いだような断面形状を有する1つの塗出口80eをノズル部材80に設けている。これにより、幅方向両端の断面略円形状の部分から塗出されるバッキング材5をステッチ列13またはその近傍へ確実に導入することができるとともに、基布被覆領域12a全体にバッキング材5が導入されるので、2列のステッチ列13および基布被覆領域12aを覆うバッキング材帯15を確実に形成することができる。
<変形例4>
本変形例では、図21(d)に示すように、2つの塗出口80fの端部が相隣り合う2列のステッチ列13に対応する位置より幅方向内側に配置されるように、ノズル部材80に2つの断面円形状の塗出口80fを設けている。これにより、塗出口80fから塗出されるバッキング材5が、相隣り合う2列のステッチ列13の内側に導入され易くなるとともに、基布被覆領域12aの中央部で合流し易くなるので、2列のステッチ列13および基布被覆領域12aを覆うバッキング材帯15を確実に形成することができる。
−参考例−
図22は参考例に係るノズル部材100の先端を正面から見た図である。ノズル部材100では、塗出口100bの端部が、相隣り合う2列のステッチ列13に対応する位置より幅方向外側に配置されているが、2列以上のステッチ列13および当該2列以上のステッチ列13の間の基布2を覆い且つ相隣り合うバッキング材帯15の間で基布2が露出するようなバッキング材帯15を形成することができるのであれば、このようなノズル部材100を適用することも可能である。
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
上記各実施形態および変形例では、各バッキング材帯15によって、2列のステッチ列13および当該2列のステッチ列13の間の基布被覆領域12aを覆うようにしたが、これに限らず、例えば、図23に示すように、3列のステッチ列13および当該3列のステッチ列13の間の2つの基布被覆領域12aを覆うようにしてもよいし、4列以上のステッチ列13および当該4列以上のステッチ列13の間の基布被覆領域12aを覆うようにしてもよい。
なお、製造装置20を用いて、図23に示すようなバッキング材帯15を形成する場合には、溝37の幅38は、3列のステッチ列13のうち幅方向両端のステッチ列13の内面(うちづら)同士の間隔と略等しく設定すればよい。一方、溝37同士の間隔39は、各バッキング材帯15によって覆われるステッチ列13が何列になっても、相隣り合うステッチ列13における各ステッチ列13の外面(そとづら)同士の間隔と略等しく設定すればよい。
また、製造装置50を用いて、図23に示すようなバッキング材帯15を形成する場合には、例えば、3つの塗出口80bを有するノズル部材を用いて、真ん中の塗出口80bから中央のステッチ列13へバッキング材5を塗出するとともに、両端の塗出口80bの外側同士の間隔(両端の塗出口80bの中心間隔と塗出口80bの直径との和)を、3列のステッチ列13のうち幅方向両端のステッチ列13の内面同士の間隔と略等しく設定すればよい。
さらに、上記実施形態1では、例えば繰出しドラム24や供給量調整部25や検出カメラ28等を備えた製造装置20を用いたが、ステッチ列13が延びる方向に基布2を連続搬送する搬送手段と、2列以上のステッチ列13および基布被覆領域12aを覆うバッキング材帯15が形成されるように、傾斜に沿って流下するバッキング材5を基布2の裏面に供給する供給手段と、を有しているのであれば、これに限らず、上述した装置構成の一部を省略してもよいし、他の装置構成を追加してもよい。
また、上記実施形態1の変形例では、邪魔部材を円柱状のピン42としたが、バッキング材5を狙いとする位置に振り分けることができるのであれば、例えば菱形やティアドロップ状や楕円形の断面を有する柱状のピンを設けてもよいし、ピンではなく例えば邪魔板等を設けてもよい。
さらに、上記実施形態2では、補助部材81の当接部材82を、球面を有する形状としたが、これに限らず、例えば、外形に球面以外の曲面を備える形状や、前後方向から見てV字状の断面を有する形状や、台形形状の断面を有する形状や、矩形の断面を有する形状など、バッキング材5を幅方向外側に押し広げられる他の形状に形成してもよい。
また、上記実施形態2では、ノズル部材80に補助部材81を設けたが、これに限らず、ノズル部材80からの塗出のみでバッキング材帯15を形成してもよい。逆に、上記実施形態1および変形例の傾斜供給部27に、上記実施形態2の補助部材81を設けて、溝37から流れたバッキング材5を、当接部材82によって幅方向両外側に押し広げるようにしてもよい。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。