JP6410131B2 - 錫の高電流密度電解精製法 - Google Patents

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本発明は錫の高電流密度電解精製法に関するもので、詳しくは高電流密度で電解しても、アノード不動態化が発生することがなく、高純度の電気錫の生産性を大幅に改善可能とした錫の高電流密度電解精製法に関するものである。
錫の電解精製においては、通常、特許文献1、非特許文献1にも示されるように硫酸とケイフッ化水素酸の混酸液を電解液として用い、電流密度200A/平方メートル以下で、かつ電解槽あたりの電解液循環量が1時間あたり電解槽容量の1倍以下で電解している。通常用いられる電解槽の構造は、電解槽内に電極板であるアノード板及びカソード板を複数組、垂直に、かつ互いに平行に配列したものであって、このアノード板及びカソード板は、電解槽の長手方向の両側側壁に、電極板の上部、通称、ラグと呼ばれる部分で保持されているものであった。
この種の電解槽では、電解液は、電解槽の長手方向の前側下方から供給され、後ろ側からオーバーフローとして排出される。その結果、電解液のおもな流れは、電解槽側壁と電極群の側端間、あるいは電解槽底と電極群の下端間に、それぞれ生じるものが大半であった。電解槽の外部から付与(適用)されるこの流れ(強制対流)は、電極間、即ち、各アノード板とカソード板間の流れの状態には、ほんのわずかしか影響しないものであった。
この電解液の電極間の流れは、カソード板表面での電解液の密度差(錫イオンの枯渇によるより軽い電解液)及びアノード板表面での電解液の密度差(錫イオンの蓄積によるより重い電解液)から生じる自然対流によってそれぞれ決定されていた。
特開平11−217634号 公開特許公報 資源と素材、Vol.109,P.1069−1071(1993)
電流密度を、通常値よりさらに上げて錫を電解精製できれば電解槽の増設なしで電解精製錫(以下、電気錫という)の増産が可能である。しかし、電流密度を上げていくとアノード板での不動態化の発生や、カソード板でのデンドライト(樹枝状結晶)の発生につながり、ついには、電流効率の低下となるアノード板とカソード板間の電気的短絡や、電気錫品質の劣化に結果する。
そこで、本発明は、各アノード板とカソード板の間に電解液を平行に吐出するよう流入口を少なくとも1個以上設け、この流入口あたりの電解液吐出速度を5.0m/sec以上、かつ、電解槽の電解液中に浸漬されている各アノード板とカソード板がつくりだす電極間となる対面空間を流れる電解液流量が単位体積(リットル)あたり13リットル/min以上とすることにより、高電流密度で電解してもアノード不動態化を発生することなく、かつ、高純度の電気錫の生産性を大幅に改善可能とした錫の高電流密度電解精製法を提供しようとするものである。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究をおこなった結果、錫を高電流密度で電解精製するにあたり、以下の発明にたどりついた。
第1の発明は、電解液を循環させる循環ラインを備えた電解精製法であって、該循環ライン中に電解槽を配備し、該電解槽内に電解液の流入口と流出口を備え、該電解槽の長手方向に複数のアノード板及びカソード板を対面状態で垂直に、かつ互いに平行に配列し、電流密度200A/平方メートル以上で電解をおこなう錫の高電流密度電解精製法において、前記各アノード板とカソード板の間に前記電解液を、該アノード板とカソード板に対し、平行に吐出するよう前記流入口を少なくとも1個以上設け、前記流入口より、前記流入口あたりの電解液吐出速度を5.0m/sec以上、かつ、前記電解槽の電解液中に浸漬されている各アノード板とカソード板がつくりだす電極間となる対面空間を流れる電解液流量が単位体積(リットル)あたり13リットル/min以上の電解液を吐出することを特徴とする錫の高電流密度電解精製法である。
第2の発明は、第1の発明の電解液に、次の添加剤を加えた錫の高電流密度電解精製法である。
第1は、親水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー0.01から1.0グラム/リットル
第2は、リグニンスルホン酸塩0.01から1.0グラム/リットル
第3は、酸化防止剤として機能するピロガロールまたはハイドロキノンを0.1から10.0グラム/リットル
第4は、消泡剤として機能する疎水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー0.01から1.0グラム/リットル
第5は、鉛イオン抑制剤として機能する炭酸ストロンチウムまたは炭酸バリウムを0.01から1.0グラム/リットル
第3の発明は、上記第2の発明の添加剤に、さらに、陰イオン界面活性剤として機能する炭素数10前後のスルホン酸塩と硫酸塩から選ばれた1種または2種の添加剤0.001グラム/リットル以上を加えた錫の高電流密度電解精製法である。
第4の発明は、第2発明における添加剤の内、リグニンスルホン酸塩の代わりに陰イオン界面活性剤として機能する炭素数10前後のスルホン酸塩と硫酸塩から選ばれた1種または2種の添加剤0.001グラム/リットル以上を含有させたものを用いた錫の高電流密度電解精製法である。
第5の発明は、第1の発明に、電解液が、循環ライン中を循環させられるものであって、該電解液の循環ライン中にろ過器が備えられ、循環する電解液の一部または全部がろ過されることを付加した錫の高電流密度電解精製法である。
第6の発明は、第5の発明における電解液の循環ライン中に空電解槽を設け、電解液中に化学的に溶解した錫よりも貴な金属イオンを10から100A/平方メートルの低電流密度で電解除去することを付加した錫の高電流密度電解精製法である。
各アノード板とカソード板の間に電解液を平行に吐出するよう流入口を少なくとも1個以上設け、この流入口あたりの電解液吐出速度を速くし、かつ、各アノード板とカソード板がつくりだす対面空間を流れる電解液流量を増やすことにより、高電流密度で電解してもアノード不動態化を発生することなく、かつ、生成した電気錫の品質劣化をなくし、生産性を大幅に改善可能とした。
このようにして、本発明によれば、電流密度を500A/平方メートル程度まで高めても高純度の電気錫を生産することができるようになるという優れた効果を奏するものとなった。
電解槽の模式図であり、(ア)は電解槽の平面説明図であり、(イ)は電解槽の側面断面説明図である。 電解液循環ラインのフローチャート 実験例での電解条件を示す表 実験例での原料粗錫及び電気錫の詳細分析値を示す表
本発明を実施するための形態について、実験例(比較例1乃至9及び実施例1乃至11)とともに説明する。本発明に係る電解精製法は、図1に示される電解槽1で、電解液3を図2に示されるような循環ラインで循環させながら電解精製するものである。
電解槽1内に満たされる電解液3は、図3及び図4の実験例(比較例1乃至9及び実施例1乃至11)においては、硫酸とケイフッ化水素酸の混酸液が用いられている。この実験例は、錫濃度を約30グラム/リットル、電解液3の温度30℃の条件の電解液3にて、各種添加剤を加えながらおこなった。
以下、本発明に係る錫の高電流密度電解精製法を特徴にしたがって説明する。
第1に、本発明は、図1(ア)(イ)に示されるように、電解槽1内には、長手方向(図1(ア)中、左右方向)に、複数のアノード板A及びカソード板Kを対面状態で垂直に、かつ互いに平行に配列し、電流密度Dkを200A/平方メートル以上として電解をおこなうものとした。ここで、電流密度Dkとはアノード板Aと対面するカソード板Kの電解液浸漬部の単位面積あたりの電流値を示す。
実験例は、図1に示す電解槽1を小型化し、カソード板K1枚とアノード板A1枚を挿入した電解槽1内に、電解液浸漬部の面積が12cm×12cmのステンレスカソード板K1枚と10cm×10cmの粗錫アノード板A1枚を対面して吊り下げ、対面裏側にはビニールテープを貼りマスキングして、図2の電解液循環ラインを備えた電解システムにて、図3の表に示す電解条件にて6時間の電解精製をおこなった。
尚、図3の表では、電解条件のほか、電着状態、アノード板表面のスライム付着状況、電解液循環ラインでの泡発生状況、及び電気錫の純度が示されている。また、図4の表には、原料粗錫及び電気錫の詳細分析値が示されている。
第2に、電解槽1内では、各電極2の間、即ち、各アノード板Aとカソード板Kとの対面空間内に電解液3を平行に吐出する流入口となるノズル4を少なくとも1個以上設けてある。図示の電解槽1では、アノード板Aとカソード板Kがつくりだす対面空間ごとにノズル4を設けている。流入口としてはノズル4が好ましい。勿論、ノズル4ではなく、単なる吐出孔を各電極板間に設けて流入口とすることも可能である。
電解槽1内への電解液3の流入口であるノズル4の設置箇所と吐出角度に関して、各アノード板Aとカソード板K間にノズル4を1個設置する場合、電解槽1の長手方向の片側側壁6寄りの電解槽1の底部にあって、各アノード板Aとカソード板Kのほぼ中央に位置し、吐出方向は斜め上向きとするのが良い。
使用するアノード板A及びカソード板Kのサイズが大きく、ノズル1個では電極板全面への電解液3の液流が不十分となり、本発明の効果を十分に発揮できない場合はノズル4の個数を増やして複数個にすることで対応することができる。尚、電解液流量の増加にともない比較的軽いカソード板Kが液流により揺れる場合があるが、揺れ止め用の簡単なガイドを電解槽1の側壁6に設けることにより対応できる。
尚、電解槽1外への電解液3の排出は、図1に示されるように、前記ノズル4の吐出方向と反対側の電解槽1の側壁6上部からオーバーフローさせることが好ましい。この流入口と流出口5の組み合わせにより、アノード板Aから剥離したアノードスライム浮遊粒子を電解液3の流れに乗せて迅速に電解槽1外へ排出することが可能となるので、電解槽1内で生産される電気錫の品質管理の観点から好ましい。
第3に、電解槽1への電解液3の流入口であるノズル4からの電解液吐出速度は5.0m/sec以上とし、かつ、電解槽1の電解液3中に浸漬されている各アノード板Aとカソード板Kがつくりだす電極間となる対面空間を流れる電解液流量が単位体積(リットル)あたり13リットル/min以上とすることにより、アノード不動態化の発生がなくなり、また、カソード板Kの表面での電着状態が大幅に改善された。電解液吐出速度、及び、単位体積(リットル)あたり電解液流量がこれら以下ではその効果が十分ではなくなる。
また、電解液吐出速度は20m/sec以上としてもエネルギーコストや装置コストの割には見合わないので、好ましい範囲は5.0m/secから20m/secである。図3の実施例1から実施例4では6.5m/sec、実施例5から実施例11では9.7m/secで実施した結果がでている。この結果より推測して、より好ましい範囲は5.0m/secから10m/secと想定される。
さらに、単位体積(リットル)あたり電解液流量は、100リットル/min以上としてもエネルギーコストや装置コストの割には見合わないので、好ましい範囲は10リットル/minから100リットル/minであり、図3の実施例1から実施例4では20リットル/min、実施例5から9では30リットル/min、さらに実施例10から11では各々33リットル/min、50リットル/minで実施した結果がでている。この結果から推測して、より好ましい範囲は20リットル/minから50リットル/minと想定される。
そもそも、アノード不動態化は、電解の進行にともないアノード板A表面上に生成される錫よりも貴な不純物金属を主成分とするアノードスライムの厚みが次第に増加することにより、アノード板Aから電気的に溶解した錫イオンが電解中に拡散する抵抗となることでアノード過電圧が徐々に上昇し始め、ついにはこれが電解電圧の急激な上昇となり、電解が継続困難になる現象である。この現象は電流密度が高いほど起きやすい。
そこで、アノードスライムがアノード板A表面上で成長発達し、アノード板A表面で電気的に溶解した錫イオンが電解液中に拡散する際のアノード不動態化に至る抵抗になる前に、アノード板A表面への電解液3の強い流れを与え、アノードスライムをアノード板A表面から剥離することでアノード不動態化の問題を解決できたのである。
同時に、カソード板K表面への電解液3の強い流れにより、カソード板K表面への錫イオンや添加剤の円滑な供給のほか、電解槽1内での錫イオン濃度や電解液温度の均一化を達成できるので、カソード板K全面にわたり電解条件の均一化を図れることにより、高電流密度においても高純度の電気錫を生産することが可能となったのである。
通常、電解液3は、硫酸とケイフッ化水素酸の混酸液が用いられる。この種、電解液3にあっては、電解液3の流れとともに添加剤の種類が重要である。この電解液3中において、添加剤なしで電解をおこなうと電解開始後すぐにカソード板K表面にデンドライトが発生、成長し、アノード板Aとカソード板K間の電気的短絡につながり、その処置に多大な労力を必要とするほか、電気錫品質の劣化に結果する。
そのため、従来から、添加剤として、膠とリグニンスルホン酸塩が併用されてきたが、本発明の目的である錫の高電流密度電解精製においては、この問題を解決するには十分ではなかった。即ち、前記添加剤の組み合わせで電解をおこなうとカソード板Kのエッジ部にデンドライトが発生、成長しやすく、電着も全面が粗くなりやすく電気錫品質の劣化に結果する。したがって、電気錫品質劣化を抑制するため、第2乃至第4の発明を提供した。
第4に、添加剤として、親水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとリグニンスルホン酸塩の2種の添加剤の組み合わせを基本とすることでカソード板Kのエッジ部のデンドライトの発生が大幅に抑制され、また、電着面の粗さも同時に改善された。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーは非イオン性界面活性剤であり、ポリオキシプロピレン疎水性部分とポリオキシエチレン親水性部分との全分子量中に占める重量%によって化学的に定義される。全分子量中に占める親水基(ポリオキシエチレン)の割合が50から85重量%の範囲のものが望ましい。
親水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの電解液中の濃度は、0.01グラム/リットル以下では効果がなく、過剰ではコスト増となるので1.0グラム/リットル以下とするのが好ましい。図3の実施例1から実施例11では0.02グラム/リットルから0.1グラム/リットルで実施した結果がでている。この結果から、より好ましい濃度範囲は、0.01グラム/リットルから0.1グラム/リットルと想定される。
リグニンスルホン酸塩は、酸性電解液中において塩(Na、K、Ca)が電離し、スルホン酸基が負に帯電し陰イオン化する陰イオン界面活性剤であり、前記カソード板Kの電着の粗さ改善のほか、アノード板Aへ電気泳動しアノード板A表面で生成されるアノードスライムに化学的乃至物理的に吸着する。
リグニンスルホン酸塩は、高分子物質であり、粘結性を有し、このためアノードスライムを粘結させアノード板A表面に強く固着させる作用があり、アノードスライムをアノード不動態化防止のため意図的に電解液の強い流れで剥離する本発明においては過剰の添加は好ましくなく、1.0グラム/リットル以下とするのが好ましく、好ましい濃度範囲は0.01グラム/リットルから1.0グラム/リットルであり、図3の実施例1から実施例11では0.00グラム/リットルから0.1グラム/リットルで実施した結果がでている。この結果から、より好ましい濃度範囲は0.00グラム/リットルから0.1グラム/リットルと想定される。
第5に、上記基本的添加剤2種に加えて、電解液3の酸化防止剤として機能するピロガロールまたはハイドロキノンを電解液3に添加した。
本発明である錫の高電流密度電解精製において、電解液3の酸化は、電解液3が電解液循環ラインを循環する際に、具体的には、ポンプでの電解液3の吸い込み、あるいは各槽間での落差による電解液3の自然流下の際に生じる。さらに、電解液3の循環ラインを流れる循環液量が通常よりも多くなるため空気の巻き込みも多くなるので、より酸化される。電解液3が酸化されると、電解液3がアノード板A表面で酸化剤として作用し、アノード板Aに含有される錫よりも貴な不純物が酸化されて電解液3中に溶出し、カソード板K表面で還元されて析出する。
そこで、電解液3の酸化防止剤として機能するピロガロールまたはハイドロキノンを添加し、電解液3の循環ライン中で生じる空気の電解液3への巻き込みによる電解液3の酸化を抑制した。
これら酸化防止剤の濃度は、0.1グラム/リットル未満では酸化防止剤としての効果がなく、10グラム/リットルを超えると泡立ちが多くなるので好ましい範囲は0.1グラム/リットルから10グラム/リットルである。図3の実施例5から実施例11では0.1グラム/リットルから0.4グラム/リットルで実施した結果がでている。この結果から、より好ましい濃度範囲は0.1グラム/リットルから1.0グラム/リットルと想定される。
第6に、上記基本的添加剤2種に加えて、電解液3の消泡剤として機能する疎水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを電解液3に添加した。
本発明では、電解液3の循環ラインを流れる循環液量が通常よりも多くなるため、各槽間での落差による電解液3の自然落下の際に多量の泡が発生し、電解液循環ラインを流れる電解液流量の制限が発生したり、発生した泡の槽外への溢れ出しなどの問題が生じる。そこで、電解液3の消泡剤として機能する疎水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを添加し、この問題を解決することができた。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーは非イオン性界面活性剤であり、好ましくは疎水基(ポリオキシプロピレン)の分子量が1000から2500であり、全分子量中に占める親水基(ポリオキシエチレン)の割合が5から20重量%の範囲のものが望ましい。
この消泡剤の濃度は、0.01グラム/リットル未満では消泡剤としての効果がなく、1.0グラム/リットルを超えると曇点が50℃以下になるので、好ましい範囲は0.01グラム/リットルから1.0グラム/リットルであり、図3の実施例5から実施例11では0.01グラム/リットルから0.04グラム/リットルで実施した結果がでている。この結果から、より好ましい濃度範囲は0.01グラム/リットルから0.1グラム/リットルと想定される。
第7に、上記基本的添加剤2種に加えて、電解液3中に鉛イオン抑制剤として機能する炭酸ストロンチウムまたは炭酸バリウムを電解液3に添加した。粗錫(アノード板)中に含有される鉛は、電解の進行にともない、いったんアノードスライムを形成するが、溶解度により電解液中に鉛イオンとして微量であるが溶解する。鉛は錫よりも貴であるため、錫に優先してカソード板に電着し、品質を劣化させる。従来から、電解液中に鉛イオンの抑制剤として、炭酸ストロンチウムまたは炭酸バリウムが知られていて一般に使用されている。
この鉛イオン抑制剤の濃度は、0.01グラム/リットル未満では効果がなく、1.0グラム/リットル以上では効果が飽和する。好ましい濃度範囲は0.01グラム/リットルから1.0グラム/リットルであり、図3の実施例1から実施例11では0.02グラム/リットルから0.2グラム/リットルで実施した結果がでている。この結果から、より好ましい濃度範囲は0.02グラム/リットルから0.2グラム/リットルと想定される。
第8に、添加剤として、上記基本的添加剤2種に加えて、あるいはリグニンスルホン酸塩に代えて炭素数10前後のスルホン酸塩、硫酸塩から選ばれた1種または2種の陰イオン界面活性剤を電解液に0.001グラム/リットル以上の濃度で電解液に含有させた。
該陰イオン界面活性剤を電解液3中に添加すると、電解液3中で負に帯電し、電気泳動によりアノード板Aへ移動し、アノード板A表面で発生するアノードスライムに化学的乃至物理的に吸着し、アノードスライム表面を陰イオン化する。電解液の強い流れによりアノード板A表面から剥離したアノードスライム浮遊粒子は同じ負電荷のカソード板に対して反発力が働き、アノードスライムのカソード板Kへの付着、沈着を抑制する。
該陰イオン界面活性剤の濃度は0.001グラム/リットル以下ではこの効果は乏しく、また、過剰ではその効果が飽和するので、好ましい濃度範囲は0.001グラム/リットルから0.1グラム/リットルである。図3の実施例6から実施例11では0.001グラム/リットルから0.005グラム/リットルで実施した結果がでている。この結果から、より好ましい濃度範囲は0.001グラム/リットルから0.01グラム/リットルの範囲と想定される。
ここで添加剤としてスルホン酸塩、硫酸塩としたのは、錫の電解精製に使用される試薬であるリグニンスルホン酸塩、硫酸と相性が良いからである。炭素数10前後が好ましいとしたのは炭素数がこれ以上大きくなると疎水性が強くなり膜の生成がうまくいかず、一方、炭素数が小さくなると疎水性が弱くなりアノードスライムがアノード板A表面から剥離した段階での吸着性に乏しいと考えられるためである。
第9に、電解液3の循環ライン中にろ過器9を備え、循環する電解液3の一部または全部をろ過することである。
ここで循環ラインに沿って説明する。まず、アノード板Aとカソード板Kの間の対面空間に流す電解液流量を増加していくと、アノード板A表面に電解の進行にともなって生成されるアノードスライムが流れの力によってアノード板A表面から剥離し、電解槽1内を浮遊する。これら電解槽1内の浮遊粒子は、カソード板Kの電着面に付着し、電着面のざらつきを発生させ、かつそれにともなう粗な結晶の成長、粗な結晶中への電解液3の巻き込みや浮遊粒子のさらなる沈着が生じ、電気錫品質劣化の原因となる。
したがって、アノードスライム浮遊粒子を電解槽1外へ電解液3とともに迅速に排出し、スライム除去槽7に移す。ここで、アノードスライム粒子が含まれる電解槽1からのオーバーフロー排出液の一部または全部を連続的にろ過することが望ましい。
第10に、電解液1の循環ライン中に空電解槽8を設け、電解液3中に化学的に溶解した錫よりも貴な金属イオンを低電流密度で電解除去することである。即ち、電解槽1内の電解液流量や電解液循環ライン中の電解液循環量を増やしていくと、アノード板A表面から剥離したアノードスライム浮遊粒子が通常よりも流れの強い電解液3中に含まれる酸により化学的に溶解されやすく、溶解した錫よりも貴な不純物金属イオンは錫よりも優先的にカソード板K表面に電気的に析出し、電気錫の品質を劣化する。
したがって、電解液3の循環ライン中に空電解槽8を設け、連続的に低電流密度で前記不純物金属イオンを電解除去することにより、この問題を解決することができた。空電解槽8で採用する電流密度は10A/平方メートルから100A/平方メートルの低電流密度が好ましい。
以上のような構成により高電流密度で、高純度の電気錫を生産することを可能とする。
次に比較例及び実施例を観察すると次のことが判明した。
比較例1乃至4は、電解液3に加える添加剤が、従来の主添加剤である膠とリグニンスルホン酸塩の併用で、500A/平方メートルの高電流密度でおこなった実験例であるが、全面的に電着状態が粗雑で、特に、エッジ部は樹枝(デンドライト)の発生と大きな瘤が多発し、結果的に電気錫純度は不安定であり、満足すべきものではなかった。
比較例5乃至9は、上記、比較例1乃至4までと同様に、従来の主添加剤である膠とリグニンスルホン酸塩の併用であるが、ノズルサイズをワンランクアップしたものに代え(以下の実施例においてはすべて、このノズルを使用)、電解液流量を増加した。その結果、電着状態に改善効果が見られたが、満足すべきものではなく、電気錫純度も不安定であり、満足すべきものではなかった。
実施例1乃至4は、膠に代えて、親水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを使用し、これとリグニンスルホン酸塩の併用であり、カソード板K全面の電着状態が改善されたことに加え、特に、エッジ部の樹枝、瘤の発生はほとんどなくなった。また、あわせて、電解液吐出速度、及び電解液流量を増加したことで全体的に大幅な電着状態改善が達成できた。
しかしながら、これ以上の電解液流量増加は、電解液循環ラインでの多量の泡の発生と、それによる電解液の酸化が不純物、特に、ヒ素(As)の電着を促進すると推測され、電気錫純度が不安定であり、満足すべきものではない。
実施例5乃至8、及び実施例10、11は、上記、実施例1乃至4と同様に、膠に代えて、親水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとリグニンスルホン酸塩の併用であるが、これに加えて、酸化防止剤と消泡剤を加えることで、ヒ素(As)の電着を抑制でき、かつ、電解液流量を増加できたことにより、電着状態がさらに改善され、結果的に電気錫純度99.998%以上と安定し、500A/平方メートルから690A/平方メートルの高電流密度電解精製において、高純度の電気錫を安定して製造できる満足する結果となった。尚、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)は、価数が三価と五価が存在し、銅電解精製においては、硫酸酸性電解液中においてヒ素(As)はアンチモン(Sb)に優先して酸化され、電解液の酸化がさらに進むと、アンチモン(Sb)が五価に酸化され浮遊スライムを生成、電着が悪化することが知られている。
尚、実施例6乃至11は、本発明の陰イオン界面活性剤を少量、電解液3に加え、浮遊アノードスライムのカソード板Kへの付着抑制も試み、良好な結果を得た。
実施例9は、リグニンスルホン酸塩の使用を止めて、本発明の陰イオン界面活性剤単独での効果を確認した。リグニンスルホン酸塩を止めても、電着状態は良好であり、主添加剤として、親水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーと陰イオン界面活性剤の併用も十分可能性があることがわかった。
電解液流量や流速を増加していくと、一般的に、添加剤添加量は少なくて済む(特許文献1の発明など)。また、電流密度を増加していくと電着が粗雑になるので、一般的に、添加剤添加量を増やす。したがって、本発明においては、電流密度(200A/平方メートル以上)と電解液流量の組み合わせで、好適添加剤濃度は異なるので、必然的に濃度範囲はあるていど広がらざるを得ない。
1・・・・・電解槽
2・・・・・電極板
3・・・・・電解液
4・・・・・ノズル
5・・・・・流出口
6・・・・・側壁
7・・・・・スライム除去槽
8・・・・・空電解槽
9・・・・・ろ過器
A・・・・・アノード板
K・・・・・カソード板

Claims (6)

  1. 電解液を循環させる循環ラインを備えた電解精製法であって、該循環ライン中に電解槽を配備し、該電解槽内に電解液の流入口と流出口を備え、該電解槽の長手方向に複数のアノード板及びカソード板を対面状態で垂直に、かつ互いに平行に配列し、電流密度200A/平方メートル以上で電解をおこなう錫の高電流密度電解精製法において、
    前記各アノード板とカソード板の間に前記電解液を、該アノード板とカソード板に対し、平行に吐出するよう前記流入口を少なくとも1個以上設け、
    前記流入口より、前記流入口あたりの電解液吐出速度を5.0m/sec以上、かつ、前記電解槽の電解液中に浸漬されている各アノード板とカソード板がつくりだす電極間となる対面空間を流れる電解液流量が単位体積(リットル)あたり13リットル/min以上の電解液を吐出することを特徴とする錫の高電流密度電解精製法。
  2. 上記電解液には、添加剤が加えられるものであり、該添加剤として、
    親水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー0.01から1.0グラム/リットルと、
    リグニンスルホン酸塩0.01から1.0グラム/リットルと、
    酸化防止剤として機能するピロガロールまたはハイドロキノンを0.1から10.0グラム/リットルと、
    消泡剤として機能する疎水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー0.01から1.0グラム/リットルと、
    鉛イオン抑制剤として機能する炭酸ストロンチウムまたは炭酸バリウムを0.01から1.0グラム/リットルと、を含有することを特徴とする請求項1に記載の錫の高電流密度電解精製法。
  3. 上記添加剤には、陰イオン界面活性剤として機能する炭素数10前後のスルホン酸塩と硫酸塩から選ばれた1種または2種の添加剤0.001グラム/リットル以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の錫の高電流密度電解精製法。
  4. 上記電解液には、添加剤が加えられるものであり、該添加剤として、
    親水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー0.01から1.0グラム/リットルと、
    陰イオン界面活性剤として機能する炭素数10前後のスルホン酸塩と硫酸塩から選ばれた1種または2種の添加剤0.001グラム/リットル以上と
    酸化防止剤として機能するピロガロールまたはハイドロキノンを0.1から10.0グラム/リットルと、
    消泡剤として機能する疎水性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー0.01から1.0グラム/リットルと、
    鉛イオン抑制剤として機能する炭酸ストロンチウムまたは炭酸バリウム0.01から1.0グラム/リットルと、を含有することを特徴とする請求項1に記載の錫の高電流密度電解精製法。
  5. 上記電解液は、上記循環ライン中を循環させられるものであって、該電解液の循環ライン中にろ過器が備えられ、循環する電解液の一部または全部がろ過されることを特徴とする請求項1に記載の錫の高電流密度電解精製法。
  6. 上記電解液の循環ライン中に空電解槽を設け、上記電解液中に化学的に溶解した錫よりも貴な金属イオンを10から100A/平方メートルの低電流密度で電解除去することを特徴とする請求項5に記載の錫の高電流密度電解精製法。
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