しかしながら、特許文献1に記載の一対の起立壁に螺挿される押付ねじの挟圧保持によって手摺支柱を固定する構造では、十分な強度が得られず、手摺支柱が変形する懸念がある。
特許文献1に記載の一対の起立壁の直交方向の対向する一対の固定壁を介して配設された貫通ボルトとナットの締着によって手摺支柱を固定する構造や、特許文献2に記載の固定構造によれば、挟圧保持による固定に比べて強度をもたせることができるが、この構造のものは、いずれも手摺支柱に孔開け加工を施す必要があるため、施工が面倒であるという懸念がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、手摺支柱に加工を施すことなく、強固かつ容易に固定することができる手摺支柱の固定構造を提供する。
上記課題を解決するために、この発明に係る手摺支柱の固定構造は、手摺支柱の下端部を手摺設置部にブラケットを用いて固定する手摺支柱の固定構造であって、上記ブラケットは、上記手摺設置部にアンカーによって固定されるベース部と、上記ベース部上に上記支柱の下端部の三方面を包囲すべく立設される支柱挿入壁と、上記支柱挿入壁の開口側に面して上記支柱挿入壁内に挿入される上記支柱に所定の間隔をおいて立設される挟持壁と、が設けられ、上記支柱挿入壁における上記挟持壁と対向する上部側部位の左右両側に一対の貫通孔が設けられ、上記挟持壁の外側面を包囲して上記貫通孔を貫通する挟持部材の突出部をねじ固定による締付けにより上記挟持壁を上記支柱挿入壁側に移動させ、上記支柱の下端部を挟持固定する、ことを特徴とする(請求項1)。この場合、上記挟持壁は外側面が膨隆する半円柱状に形成され、上記挟持部材は、上記挟持壁の外側面に対応した円弧部を有するU字ボルトにて形成され、該U字ボルトの両端部に設けられたねじ部にナットが螺合されるのが好ましい(請求項2)。
このように構成することにより、挟持壁の外側面を包囲して支柱挿入壁に設けられた貫通孔を貫通する挟持部材の突出部をねじ固定による締付けにより挟持壁を支柱挿入壁側に移動させて支柱の下端部を挟持固定することができる。この場合、挟持壁を外側面が膨隆する半円柱状に形成し、挟持部材を、挟持壁の外側面に対応した円弧部を有するU字ボルトにて形成し、該U字ボルトの両端部に設けられたねじ部にナットを螺合することで、更に確実に支柱の下端部を挟持固定することができると共に、支柱に加わる荷重を分散させて固定することができる(請求項2)。
この発明において、上記支柱挿入壁における上記挟持壁と対向する壁部の上部側に、高さ固定用ねじ孔を貫穿し、上記支柱の高さ調整後に、上記高さ固定用ねじ孔に支柱高さ固定用ねじを螺挿して上記支柱を固定するのが好ましい(請求項3)。
このように構成することにより、支柱挿入壁と挟持壁との間に挿入される支柱を上下移動して高さ調整を行った後、高さ固定用ねじ孔に螺挿される支柱高さ固定用ねじを支柱の側面に当接して支柱を固定することができる。
また、この発明において、上記挟持壁及び該挟持壁と対向する上記支柱挿入壁における壁部の下部側の対向する部位に、それぞれ角度調整用ねじ孔を貫穿し、上記角度調整用ねじ孔に螺挿される一対の角度調整用ボルトを進退移動させて上記支柱の側面に当接することにより上記支柱の角度を調整するのが好ましい(請求項4)。
このように構成することにより、支柱挿入壁と挟持壁との間に挿入される支柱の下端部側面に一対の角度調整用ボルトを進退移動させて当接させるので、支柱の挿入部における上部の移動を最小限にして支柱の角度を調整して支柱を鉛直状に設置することができる。
また、この発明において、上記支柱を中空状に形成した場合は、上記支柱の少なくとも上記支柱挿入壁内に挿入される部分を含む下端側の中空部には、上記挟持壁と該挟持壁と対向する上記支柱挿入壁の壁部に対向する辺を連結する補強部材が設けられ、上記挟持壁及び該挟持壁と対向する上記支柱挿入壁における壁部の下部側の対向する部位に、それぞれ角度調整用ねじ孔を貫穿し、上記角度調整用ねじ孔に螺挿される一対の角度調整用ボルトを進退移動させて上記支柱の下端部より突出する上記補強部材の側面に当接することにより上記支柱の角度を調整するのが好ましい(請求項5)。
このように構成することにより、中空状の支柱に強度をもたせることができると共に、支柱に圧痕を残すことなく支柱の角度を調整して支柱を鉛直状に設置できる。また、支柱挿入壁と挟持壁との間に挿入される支柱の下端部より突出する補強部材の側面に一対の角度調整用ボルトを進退移動させて当接させるので、支柱の挿入部における上部の移動を最小限にして支柱の角度を調整することができる。
また、この発明において、上記ブラケットのベース部と上記手摺設置部との間に介在されるスペーサを更に具備し、上記スペーサは、上記ベース部を載置する面が上記支柱挿入壁と上記挟持壁とが対向する方向に傾斜しているのが好ましい(請求項6)。
このように構成することにより、手摺設置部の上面の傾斜角度が大きい場合においても、手摺設置部の上面の傾斜に対応して支柱を鉛直状に設置することができる。
加えて、この発明において、上記ブラケットを包囲するカバーを更に具備し、上記カバーは、上記ブラケットの左右半分を包囲すると共に、上記支柱を包囲する切欠部を有する一対のカバー半体からなり、上記カバー半体は、カバー半体同士の接合面に互いに係合する接合凸部と接合凹部を有すると共に、上記ブラケットの上面に突設された係止突起に係合する係止凹部を有し、かつ、上記ベース部に設けられたねじ孔に螺合する固定ねじの貫通孔を有するのが好ましい(請求項7)。
このように構成することにより、カバー半体同士を接合させ、固定ねじをカバー半体に設けられた貫通孔を介してベース部に設けられたねじ孔に螺合して、ブラケットに取り付けることができ、ブラケットの外部をカバーによって覆うことができる。
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
(1)請求項1記載の発明によれば、挟持部材の締付けにより挟持壁を支柱挿入壁側に移動させて支柱の下端部を挟持固定することができるので、支柱に孔開け加工等を施すことなく、支柱を強固かつ容易に固定することができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更に確実に支柱の下端部を挟持固定することができると共に、支柱に加わる荷重を分散させて支柱の変形を防止することができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、支柱挿入壁と挟持壁との間に挿入される支柱を上下移動して高さ調整を行った後、高さ固定用ねじ孔に螺挿される支柱高さ固定用ねじを支柱の側面に当接して支柱を固定することができるので、上記(1),(2)に加えて、更に支柱の高さ調整を容易にすることができる。
(4)請求項4記載の発明によれば、上記(1)〜(3)に加えて、更に支柱の挿入部における上部の移動を最小限にして支柱の角度を調整して支柱を鉛直状に設置することができる。
(5)請求項5記載の発明によれば、上記(1)〜(3)に加えて、中空状の支柱に強度をもたせることができると共に、支柱に圧痕を残すことなく支柱の角度を調整して支柱を鉛直状に設置できる。また、支柱の挿入部における上部の移動を最小限にして支柱の角度を調整して支柱を鉛直状に設置することができる。
(6)請求項6記載の発明によれば、上記(1)〜(5)に加えて、更に手摺設置部の上面の傾斜角度が大きい場合においても、手摺設置部の上面の傾斜に対応して支柱を鉛直状に設置することができる。
(7)請求項7記載の発明によれば、カバー半体同士を接合させ、固定ねじをカバー半体に設けられた貫通孔を介してベース部に設けられたねじ孔に螺合して、ブラケットに取り付けるので、上記(1)〜(6)に加えて、更に支柱固定後に容易にブラケットの外部をカバーによって覆うことができる。
以下に、この発明に係る手摺支柱の固定構造の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る手摺支柱の固定構造をベランダ用手摺に適用した場合について説明する。
図1ないし図5に示すように、上記ベランダ用手摺は、手摺支柱10の下端部をベランダのコンクリート製の手摺設置部1にブラケット20を用いて固定されている。
上記手摺支柱10(以下に支柱10という)は、例えばアルミ合金製の四角筒状の押出形材にて形成されており、支柱10の対向する2辺の内側面には長手方向に沿う互いに平行な凸条11aによって嵌合溝部11が形成されており、支柱10の下端部側の両嵌合溝部11には鋼製の板状の補強部材12が嵌挿され、支柱10の対向する2面に補強部材12が連結される。この場合、補強部材12の下部は支柱10の下端より下方に突出し、上部は手摺の支柱ピッチ(支柱スパン)や支柱10の先端に加わる荷重等を考慮してブラケット20で固定される部分より上方に所定の長さの位置まで延びた状態で取り付けられている。このように構成することにより、中空状の支柱10に強度をもたせることができる。なお、補強部材12の下端部は、傾斜している(図7〜図9参照)。なお、補強部材12の下端部を傾斜させた理由は、手摺設置部1の設置面が外方側からベランダ側に向かって水切り角度(水勾配)を有するので、支柱10が角度調整により傾斜した際に、後述する角度調整用ねじ孔27aに螺合された角度調整用ボルト28の先端が補強部材12の下端を外れるのを防止するためである。
ブラケット20はアルミニウム合金製ダイカストにて形成されており、手摺設置部1に4本のアンカー2(具体的には、アンカーボルト2a)によって固定される矩形状のベース部21と、ベース部21上に支柱の下端部の三方面を包囲すべく立設される支柱挿入壁22と、支柱挿入壁22の側方の開口側に面して支柱挿入壁22内に挿入される支柱10との間に所定の間隔(隙間)をおいて立設される挟持壁23と、が設けられている。この場合、支柱挿入壁22は、対向する一対の側壁部22aと、両側壁部22aの一端側同士を連結すると共に側壁部22aより上方に伸びる壁部22bとからなる平面視がコ字状に形成されている。また、挟持壁23は、支柱挿入壁22の側方の開口側の両側壁部22a間に位置し、外側面が膨隆する半円柱状に形成されている。上記のように構成される支柱挿入壁22と挟持壁23とで支柱挿入部24が形成される。なお、ベース部21における両側壁部22aより外側の辺部には、後述するカバー50を構成するカバー半体51a,51bを固定する固定ねじ56が螺合可能なねじ孔21aを有するねじ受け部21bが立設され、ねじ受け部21bを挟んだ両側にはアンカーボルト2aが挿通可能な長孔21cが設けられている。また、ベース部21の4箇所の角部には、後述するL字状ライナー61の固定用ねじ孔21dが設けられている。
また、支柱挿入壁22における挟持壁23と対向する上部側部位の左右両側に一対の貫通孔22cが設けられ、挟持壁23の外側面を包囲して貫通孔22cを貫通する挟持部材30の突出部をねじ固定による締付けにより挟持壁23を支柱挿入壁22側に移動させて、支柱10の下端部が挟持固定されるようになっている。この場合、挟持部材30は、挟持壁23の外側面に対応した円弧部30bを有するU字ボルト30aにて形成され、該U字ボルト30aの両端部に設けられたねじ部30cに締結用のナット31が螺合されることで、締付けにより挟持壁23を支柱挿入壁22側に移動させて、支柱10の下端部が挟持固定される。なお、ブラケット20の支柱挿入部24に挿入される支柱10は、補強部材12を嵌挿した面が支柱挿入壁22の壁部22bと挟持壁23の間に位置すると共に、補強部材12の下端部の傾斜が挟持壁23側に位置するようにして挿入される。
支柱挿入壁22における挟持壁23と対向する壁部22bの上部側の中間部に、高さ固定用ねじ孔25が貫穿されている。この高さ固定用ねじ孔25に、六角穴付き剣先ねじにて形成される支柱高さ固定用ねじ26(以下に高さ固定用ねじ26という)が螺挿される。支柱10がブラケット20の支柱挿入部24に挿入された後、高さ固定用ねじ26の尖端部を支柱10の側面に当接して支柱10を高さ調整可能に固定することができる。
一方、挟持壁23及び該挟持壁23と対向する支柱挿入壁22における壁部22bの下部側の対向する部位に、それぞれ角度調整用ねじ孔27a,27bが貫穿されている。これら角度調整用ねじ孔27a,27bには、六角穴付きの角度調整用ボルト28が螺挿される。この場合、支柱挿入壁22の壁部22bに貫穿される角度調整用ねじ孔27aは、外側から内側に向かって斜め下方に傾斜している。その傾斜角は8度である。一方、挟持壁23に貫穿される角度調整用ねじ孔27bは、挟持壁23に対して直交状に設けられている。支柱挿入壁22の壁部22bに貫穿される角度調整用ねじ孔27aを斜め下方に傾斜させた理由は、手摺設置部1の設置面が外方側からベランダ側に向かって水切り角度(水勾配)を有するので、支柱10を鉛直状に設置するにはベランダの外側に支柱10を傾斜させる際、角度調整用ねじ孔27aに螺挿される角度調整用ボルト28の先端を確実に支柱10に当接できるようにするためである。
上記のように形成される角度調整用ねじ孔27a,27bに螺挿される一対の角度調整用ボルト28を進退移動させて支柱10の下端部より突出する補強部材12の側面に当接することにより支柱10の角度を調整することができる。この場合、手摺設置部1の設置面の水切り角度(水勾配:概ね8度程度)と、ブラケット20が大きくなるデメリットを考慮して、支柱10の傾斜の角度調整幅は0〜7度としてある。
したがって、図7に示すように、手摺設置部1の設置面が水平である場合は、支柱10の下端部をブラケット20の支柱挿入部24に挿入し、高さ固定用ねじ26の尖端部を支柱10の側面に当接して支柱10を高さ調整した後、角度調整用ねじ孔27a,27bに螺挿される一対の角度調整用ボルト28を進退移動させて支柱10の下端部より突出する補強部材12の側面に当接して支柱10を鉛直状態に固定することができる。これにより、支柱10に圧痕を残すことなく支柱10の角度を調整して支柱10を鉛直状に設置できる。
上記のようにして、補強部材12を嵌挿した支柱10は高さ固定用ねじ26によって固定され、支柱10に固定されていない補強部材12は角度調整用ボルト28によって固定される。
また、図8に示すように、手摺設置部1の設置面が7度以内で傾斜している場合は、支柱10の下端部をブラケット20の支柱挿入部24に挿入し、高さ固定用ねじ26の尖端部を支柱10の側面に当接して支柱10を高さ調整した後、角度調整用ねじ孔27a,27bに螺挿される一対の角度調整用ボルト28を進退移動させて支柱10の下端部より突出する補強部材12の側面に当接して支柱10の角度を調整して鉛直状態に固定することができる。この際、支柱10は、ブラケット20の上部側に位置する高さ固定用ねじ26を支点として下端側が変位するので、ブラケット20の支柱挿入部24の開口側においては支柱10の変位を小さくすることができる。なおこの場合、挟持壁23及び挟持壁23に対向する壁部22bの支柱挿入面側には、上下方向に凸円弧状の円弧面29が形成されており、円弧面29の頂点に高さ固定用ねじ26が位置している(図7参照)。
なお、手摺設置部1の設置面の水切り角度(水勾配)が8度より大きい場合、例えば水切り角度(水勾配)が最大15度である場合に対応させるためには、ブラケット20のベース部21と手摺設置部1との間にスペーサ40を介在させる必要がある。
この場合、スペーサ40はアルミ合金製ダイキャストにて形成され、ベース部21を載置する面が支柱挿入壁22の壁部22bと挟持壁23とが対向する方向に傾斜する傾斜角が8度の傾斜面41を有する矩形ブロック状に形成されている。また、スペーサ40は、内方の中心に対して対称の4箇所に矩形孔42が設けられ、傾斜方向と直交する対向辺部の中心部には、スペーサ40をブラケット20のベース部21に固定するスペーサ固定ねじ(図示せず)を貫挿する貫通孔43を有するボス部44が突設され、ボス部44の両側にはアンカーボルト2aが挿通可能な長孔45が設けられている。スペーサ40は、ボス部44の貫通孔43に貫挿される上記スペーサ固定ねじ(図示せず)をベース部21の底面に設けられたねじ孔(図示せず)に螺合してブラケット20の底部に固定される。
図9に示すように、手摺設置部1の設置面が最大15度傾斜している場合は、上記のように構成されるスペーサ40を用いて支柱10を鉛直状に設置することができる。すなわち、ブラケット20の下部にスペーサ40を固定して手摺設置部1にアンカー固定した後、支柱10の下端部をブラケット20の支柱挿入部24に挿入し、高さ固定用ねじ26の尖端部を支柱10の側面に当接して支柱10を高さ調整した後、角度調整用ねじ孔27a,27bに螺挿される一対の角度調整用ボルト28を進退移動させて支柱10の下端部より突出する補強部材12の側面に当接して支柱10の角度を調整して鉛直状態に固定することができる。
また、ブラケット20の外部はカバー50によって包囲されている。このカバー50は、ブラケット20の左右半分を包囲すると共に、支柱10を包囲する切欠部52を有する一対のカバー半体51a,51bによって構成されている。この場合、カバー半体51a,51bは、例えばアルミニウム合金を絞り加工したもの、あるいは、合成樹脂を射出成形したものを使用することができる。
上記カバー半体51a,51bは、カバー半体51a,51b同士の接合面に互いに係合する接合凸部53aと接合凹部53bを有すると共に、ブラケット20の上面に突設された係止突起20aに係合する係止凹部54を有し、かつ、ベース部21に設けられたねじ孔21aに螺合する固定ねじ56の貫通孔55を有している。この場合、一方のカバー半体51aは、図6に示すように、切欠部52を挟んだ接合面の一方に接合凸部53aを設け、他方に接合凹部53bを設けている。また、他方のカバー半体51bは、切欠部52を挟んだ接合面の一方に、カバー半体51aの接合面に設けられた接合凸部53aと係合可能な接合凹部53bが設けられ、他方にカバー半体51aの接合面に設けられた接合凹部53bと係合可能な接合凸部53aが設けられている。
上記のように構成されるカバー半体51aの切欠部52を挟んだ接合面に設けられた接合凸部53aと接合凹部53bと、カバー半体51bの切欠部52を挟んだ接合面に設けられた接合凹部53bと接合凸部53aとを係合させて両カバー半体51a,51bを接合することができる。
また、接合されたカバー半体51a,51bは、カバー半体51a,51bに設けられた係止凹部54がブラケット20の上面に突設された係止突起20aに係合した状態(図7(b)参照)で、貫通孔55を貫通する固定ねじ56をベース部21に設けられたねじ孔21aに螺合して固定される。なお、切欠部52の開口縁部には薄肉部57が突設されている(図6(d)参照)。
ベランダの出隅部に支柱10を固定する場合は、図10に示すように、ベランダ側のブラケット20のベース部21の1箇所のアンカー固定部に隙間が生じるので、隙間が生じるアンカーボルト2aにステンレス鋼製のスペーサ用座金60を介在してベース部21を固定すればよい。
また、ベランダの入隅部に支柱10を設置する場合は、図11に示すように、ベランダ側のブラケット20のベース部21の3箇所のアンカー固定部に隙間が生じるので、隙間が生じる3本のアンカーボルト2aにステンレス製のL字状ライナー61を介在してベース部21を固定すればよい。
次に、既存の支柱を撤去して新しい支柱に交換する支柱の固定手順について説明する。まず、既存の支柱を撤去して、手摺設置部1の内部に溜まっている水や錆汚れを取り除いた後、既存の支柱を撤去した後の穴をモルタルで埋め戻す。その後、所定の位置にドリルで穴を明け、ケミカルアンカーを使ってアンカーボルト2aを手摺設置部1に固定する。
次に、スペーサ40、スペーサ用座金60やL字状ライナー61を併用してブラケット20をセットする。この場合、手摺設置部1の設置面の傾斜が7度を超える場合はスペーサ40を使用する。また、手摺設置部1の設置面が傾斜しているときの出隅部は、スペーサ用座金60を使ってレベル調整する。また、手摺設置部1の設置面が傾斜しているときの入隅部は、アンカーボルト2aの挿通長孔62とブラケット20への固定ねじ64の貫通孔63を有するL字状ライナー61を使ってレベル調整する。ブラケット20の固定は、平座金3とばね座金4を介在してアンカーボルト2aにナット5を螺合して固定する。
一方、所定長さに切断した支柱10を準備し、支柱10に補強部材12を嵌挿し、補強部材12の下端部を支柱10の下端より突出させる。
支柱10に嵌挿固定された補強部材12がブラケット20の支柱挿入壁22の壁部22bと挟持壁23と直交するように支柱10をブラケット20の支柱挿入部24内に挿入し、支柱10の高さを調整して高さ固定用ねじ26の先端部を支柱10の側面に締め込む。その後、角度調整用ねじ孔27a,27bに螺挿される一対の角度調整用ボルト28を進退移動させて支柱10の下端部より突出する補強部材12の側面に当接して支柱10の角度を調整して鉛直状態に固定する。
支柱10の高さ調整と角度調整を行った後、挟持壁23の外側面を包囲するU字ボルト30aの両端のねじ部30cを、支柱挿入壁22の壁部22bに設けられた貫通孔22cに貫通し、その突出部に座金32を介して締結用のナット31を螺合して締め付ける。この締付けにより挟持壁23が支柱挿入壁22側に移動して、支柱10の下端部が挟持固定される。
次に、カバー半体51a,51bをブラケット20の両側から移動し、カバー半体51a,51bの接合凸部53aと接合凹部53bとを係合させてカバー半体51a,51bを接合すると共に、ブラケット20の上面に突設された係止突起20aに係止凹部54を係合させる。そして、カバー半体51a,51bに設けられた貫通孔55を貫通する固定ねじ56をブラケット20のベース部21に設けられたねじ孔21aに螺合して固定する。
上記のようにして、支柱10を固定したブラケット20の外方をカバー半体51a,51bにて構成されるカバー50によって包囲する。この際、カバー半体51a,51bの切欠部52内に支柱10が位置するが、上述したように、支柱10は、ブラケット20の上部側に位置する高さ固定用ねじ26を支点として下端側が変位するので、カバー50の開口側においては支柱10の変位を小さくすることができる。したがって、カバー50の開口(具体的には、切欠部52)をさほど大きくする必要はない。なお、切欠部52の開口縁部には薄肉部57が突設されているので、支柱10の角度調整に伴う傾斜を薄肉部57が吸収することができる。
なお、出隅部や入隅部においては、ブラケット20の下部にスペーサ用座金60やL字状ライナー61が露呈するので、合成樹脂製のカバー50の場合は、通常より下端が長いスカート部を設け、下端を切断加工して施工する。また、カバー50がアルミ合金製の場合は、コーキングで隙間を埋める。
また、上記実施形態では、ブラケット20のベース部21における両側壁部22aより外側の辺部に、カバー50を構成するカバー半体51a,51bを固定する固定ねじ56のねじ孔21aを有するねじ受け部21bを立設したが、図5Aに示すように、ブラケット20Aのベース部21Aを厚くし、ベース部21Aの側面にねじ孔21aを設けてもよい。
このように構成することにより、ベース部21Aを厚くする分ブラケット20Aに剛性をもたせることができるので、支柱挿入壁22及び挟持壁23の高さを低くしてブラケット20Aの高さ寸法を小さくすることができる。なお、図5Aにおいて、その他の部分は上記実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
また、上記実施形態では、支柱10に強度をもたせるために、補強部材12を用いているが、支柱自体に強度がある場合は、補強部材12を用いなくてもよい。例えば、図12(a),(b),(c)に示すように、支柱10Aを肉厚の中空状に形成し、角度調整用ねじ孔27a,27bに螺挿される一対の角度調整用ボルト28を進退移動させて支柱10Aの下端側の側面に当接して支柱10Aの角度を調整して鉛直状態に固定することができる。なお、支柱10Aの下端を傾斜させて、支柱10Aが角度調整により傾斜した際に手摺設置部1に干渉するのを防止している。
なお、図12(a),(b),(c)において、その他は上記実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
上記のように構成される実施形態の手摺支柱の固定構造によれば、挟持部材30の締付けにより挟持壁23を支柱挿入壁22側に移動させて支柱の下端部を挟持固定することができるので、支柱10,10Aに孔開け加工等を施すことなく、支柱10,10Aを強固かつ容易に固定することができる。
また、挟持壁23を外側面が膨隆する半円柱状に形成し、挟持部材30を、挟持壁の外側面に対応した円弧部30bを有するU字ボルト30aにて形成し、U字ボルト30aの両端部に設けられたねじ部30cにナット31を螺合することで、更に確実に支柱10,10Aの下端部を挟持固定することができると共に、支柱10,10Aに加わる荷重を挟持壁23の外側面に対応した円弧部30bによって分散させて固定することができ、支柱10の変形を防止することができる。
また、支柱挿入壁22と挟持壁23との間に挿入される支柱10,10Aを上下移動して高さ調整を行った後、高さ固定用ねじ孔25に螺挿される高さ固定用ねじ26を支柱10,10Aの側面に当接して支柱を固定することにより、支柱10,10Aの高さ調整を容易にすることができる。
また、支柱10,10Aは、ブラケット20の上部側に位置する高さ固定用ねじ26を支点として下端側が変位するので、支柱10,10Aの挿入部における上部の移動を最小限にして支柱10,10Aの角度を調整して支柱10,10Aを鉛直状に設置することができる。
中空状の支柱10の場合は、支柱10の中空部に補強部材12を嵌挿固定することにより、中空状の支柱10に強度をもたせることができると共に、支柱10に圧痕を残すことなく支柱10の角度を調整して支柱10を鉛直状に設置できる。
また、手摺設置部1の上面の傾斜角度(水切り角度、水勾配)が大きい場合は、ブラケット20と手摺設置部1との間に傾斜面41を有するスペーサ40を介在することにより、手摺設置部1の上面の傾斜に対応して支柱10を鉛直状に設置することができる。
また、カバー半体51a,51b同士を接合させ、固定ねじ56をカバー半体51a,51bに設けられた貫通孔55を介してベース部21に設けられたねじ孔21aに螺合して、ブラケット20に取り付けることで、支柱固定後に容易にブラケット20の外部をカバー50によって覆うことができる。