以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置が適用される印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、印刷システムは、クライアント端末100および画像形成システム200から構成される。クライアント端末100および画像形成システム200は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続されている。ネットワークNは、イーサネット(登録商標)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi−Fi(Wireless Fidelity)等の規格によりコンピューターやネットワーク機器同士を接続したLAN(Local Area Network)、あるいはLAN同士を専用線で接続したWAN(Wide Area Network)等からなる。なお、ネットワークNに接続される機器の種類および台数は、図1に示す例に限定されない。
クライアント端末100は、印刷データを含む印刷ジョブを作成し、画像形成システム200に送信するために使用される装置である。印刷データは、たとえば、PostScript(登録商標)やPCL(Printer Control Language)等のPDL(ページ記述言語:Page Description Language)の言語形式により記述されたデータである。印刷ジョブは、文書、図形、画像等により印刷物のページの内容を示す印刷データと、当該印刷データを記録媒体等に画像形成するための設定である印刷設定とを含む。
画像形成システム200は、画像形成装置300および後処理装置400から構成される。画像形成装置300および後処理装置400は、たとえば、IEEE1394シリアルバス、USB(Universal Serial Bus)等の専用インターフェース用バスを介して接続されている。また、画像形成装置300および後処理装置400は、ネットワークNを介して接続されていてもよい。
<画像形成装置300>
図2は、図1に示される画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、画像形成装置300は、CPU(Central Processing Unit)310、記憶部320、操作パネル部330、読取部340、用紙搬送部350、画像形成エンジン360、用紙センサー部370および通信インターフェース380を備える。これらの構成要素は、信号をやり取りするためのバス390を介して相互に接続されている。
CPU310は、記憶部320に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御や各種の演算処理を行う。CPU310は、たとえば、ネットワークN経由で受信した印刷ジョブに含まれる印刷データに対してレイアウト処理やラスタライズ処理を行い、ビットマップ形式の画像のデータである画像データを生成する。
記憶部320は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびハードディスク等により構成される。ROMは、各種プログラムや各種データを格納する。RAMは、CPU310により実行されるプログラムや、処理されるデータを一時的に格納する。ハードディスクは、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや、各種データを格納する。
操作パネル部330は、タッチパネル、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備えており、各種情報の表示および各種指示の入力に使用される。
読取部340は、原稿画像から画像データを生成するためのCCD(Charge Coupled Device)画像センサー等の撮像装置を備えるスキャナからなり、ADF(自動原稿搬送装置:Auto Document Feeder)を有する。読取部340は、所定の読み取り位置にセットされた原稿またはADFによって所定の読み取り位置に搬送された原稿に蛍光ランプ等の光源から光を当て、その反射光を撮像装置によって光電変換し、得られた電気信号から画像データを生成する。
用紙搬送部350は、搬送部として、印刷に使用される記録材としての用紙を搬送する。用紙は、給紙トレイに収容されており、給紙トレイに備えられる給紙機構によって画像形成装置300内の搬送路に1枚ずつ搬送される。用紙搬送部350の詳細については、後述する。
画像形成エンジン360は、電子写真方式により帯電、露光、現像、転写および定着の各工程を経て、用紙に画像データに基づく画像を形成する。
用紙センサー部370は、搬送路における用紙の位置を検出する。用紙センサー部370は、たとえば、搬送路上の所定の箇所に設けられた複数のラインセンサーにより構成される。
通信インターフェース380は、他の機器と通信するためのインターフェースである。ネットワークNを介してクライアント端末100とデータの送受信を行うためのインターフェースとしては、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi−Fi等の規格が用いられる。また、後処理装置400との間でデータの送受信を行うためのインターフェースとしては、イーサネット(登録商標)、IEEE1394シリアルバス、USB等の規格が用いられる。
CPU310は、制御部として、用紙搬送部350を制御して画像形成装置300内において用紙を搬送する。また、CPU310は、用紙センサー370により検出された搬送路における用紙の位置に基づいて、搬送路において発生したジャムを検出する。CPU310は、たとえば、用紙を搬送するための制御をしているにもかかわらず用紙の位置が変わらない場合に、ジャムを検出する。
CPU310は、ジャムを検出した場合に、さらなるジャムの発生を防ぐために、搬送路に残存する用紙の搬送を停止する。また、CPU310は、ジャムの起因となった用紙が取り除かれた後に、搬送路に残存する用紙を自動的に搬送して排出する自動パージを行う。
<後処理装置400>
図3は、図1に示される後処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、後処理装置400は、CPU410、記憶部420、用紙搬送部430、後処理部440、出力部450、用紙センサー部460および通信インターフェース470を備える。これらの構成要素は、信号をやり取りするためのバス480を介して相互に接続されている。なお、後処理装置400の上記各部のうち、画像形成装置300の上記各部と同様の機能を有する部分については、その説明を省略する。
CPU410は、プログラムに従って上記各構成要素の制御や各種の演算処理等を行う。CPU410は、受信した印刷ジョブに含まれる印刷設定に基づいて、後処理部440を制御して用紙の後処理を実行させる。
記憶部420は、CPU410が後処理装置400の各構成要素を制御するためのプログラム、および通信インターフェース470を通じて受信した印刷設定等の各種データを記憶する。記憶部420は、たとえば、RAMおよびハードディスクにより構成される。
用紙搬送部430には、画像形成装置300から出力された用紙が供給される。用紙搬送部430は、用紙を、後処理部440に搬送した後、出力部450に搬送する。
後処理部440は、用紙に対して、折り、綴じ、断裁等の各種の後処理を行う。
出力部450は、後処理が行われた用紙を印刷物として出力する。
用紙センサー460は、用紙の搬送路における位置を検出する。用紙センサー460は、たとえば、搬送路の必要な箇所に設けられたラインセンサーにより構成されることができる。
CPU410は、用紙センサー460により検出された搬送路における用紙の位置に基づいて後処理装置400において発生したジャムを検出する。CPU410は、たとえば、用紙を搬送するための制御をしているにもかかわらず用紙の位置が変わらない場合に、ジャムを検出する。CPU410は、後処理装置400におけるジャムの発生の情報を、通信インターフェース470を介して画像形成装置300へ送信する。
<画像形成システム200>
図4は、画像形成システムの概略構成を示す図である。図5は、画像形成装置の概略構成を示す図である。
図4に示すように、画像形成システム200は、画像形成装置300および後処理装置400を有し、これらの装置が連結されることにより構成される。用紙は、画像形成装置300、後処理装置400の順に各装置を通過する。画像形成装置300によって画像が形成された用紙は、後処理装置400に搬送される。後処理装置400に搬送された用紙は、後処理が施された後、印刷物として出力される。
画像形成装置300は、CPU310によって用紙搬送部350を制御し、給紙トレイT1、T2から給紙される用紙を搬送路351に沿って搬送する。また、画像形成装置300は、CPU310によって画像形成エンジン360の構成要素である転写部361および定着部362を制御し、用紙に画像を形成して定着させる。さらに、画像形成装置300は、CPU310によって用紙搬送部350を制御し、搬送路351の一部として設けられるADU(自動両面ユニット Auto Duplex Unit)352に用紙を通過させる。これにより、画像形成装置300は、搬送路351における用紙の表裏を反転し、用紙の両面に画像を形成できる。
転写部361は、画像形成部として、トナー画像を形成し、搬送される用紙にトナー画像を転写する。転写部361は、たとえば、感光体ドラムを有して構成される。感光体ドラムは、帯電部(不図示)により表面が均一に帯電され、光書込部(不図示)により画像情報信号に合わせてレーザー光が照射される。これにより、感光体ドラムに潜像が形成される。この潜像を現像器(不図示)により現像することにより、トナー画像が形成される。感光体ドラムは、搬送路351上を搬送される用紙に、トナー画像を転写する。
定着部362は、加熱ローラーと加圧ローラーとを有し、加熱ローラーが加圧ローラーにより押圧されることで形成された略円弧状のニップ領域を形成する。トナー画像が転写された用紙は、定着部362のニップ領域を通過することにより、トナー画像のトナーが加圧および加熱され、トナー画像が用紙に定着される。
後処理装置400は、CPU410により用紙搬送部430を制御して画像形成装置300から供給された用紙を搬送する。また、後処理装置400は、印刷ジョブの印刷設定に基づいて後処理部440を制御し、用紙の後処理を行う。後処理を行う用紙は、搬送路431aから分岐する3つの搬送路431b、431c、431dのうち搬送路431bにより後処理部440に搬送される。後処理が行われた用紙は、出力部450に出力される。後処理を行わない用紙は、搬送路431cにより搬送され、出力される。
画像形成装置300について、さらに詳細に説明する。
図5に示すように、用紙搬送部350は、搬送路351に沿って設けられる搬送ローラーR1〜R11を有する。搬送ローラーR1〜R11は、それぞれ搬送路351を挟んで対向する一対のローラーにより構成される。各搬送ローラーを構成する一対のローラーは、搬送路351に対して圧接しつつ回転することにより、搬送路351上の用紙を搬送する。また、各搬送ローラーを構成する一対のローラーは、CPU310によるモーターの駆動等によって、搬送路351から離間可能である。搬送路351から離間した搬送ローラーは、用紙の搬送を行わない。なお、画像形成装置300に設けられる搬送ローラーの数や位置等は、図5に示す例に限定されない。
搬送路351は、第1搬送路351a、第2搬送路351b、第3搬送路351c、第4搬送路351d、第5搬送路351eおよび第6搬送路351fから構成される。第3搬送路351c、第4搬送路351dおよび第5搬送路351eは、ADU352として使用される。搬送路351における経路の分岐点には、用紙の搬送経路を切り替えるガイド機構が設けられる。画像形成装置300は、CPU310により当該ガイド機構を制御して用紙の搬送経路を切り替える。
以下、搬送路351において用紙が搬送される手順について、図5を参照しつつ説明する。
まず、給紙トレイT1、T2から給紙された用紙は、搬送ローラーR10、R11によって第1搬送路351aから第2搬送路351bに搬送される。第2搬送路351bに搬送された用紙は、搬送ローラーR1によって転写部361および定着部362に搬送される。搬送ローラーR1は、用紙の曲り、傾き、片寄りを補正するレジストローラーとしても機能する。転写部361および定着部362において表面に画像が形成された用紙は、ADU352を構成する第3搬送路351cに搬送され、搬送ローラーR2、R3、R4によって第4搬送路351dに搬送される。用紙の全体が第4搬送路351dに収容されると、搬送ローラーR4は回転方向を逆転させ、用紙を第4搬送路351dから排出する方向に搬送する。逆回転する搬送ローラーR4によって、用紙は第4搬送路351dから排出され、第5搬送路351eに搬送される。
ここで、第3搬送路351c上においては、画像が形成された用紙の表面は、搬送路351の外側(図5中の左側)を向いているのに対し、第5搬送路351e上においては、用紙の表面は、搬送路351の内側(図5中の上側)を向いている。すなわち、用紙の裏面が搬送路351の外側を向いており、用紙は転写部361および定着部362において裏面に画像を形成できる向きとなっている。このように、ADU352は、搬送路351における用紙の表裏を反転する。
続いて、用紙は、搬送ローラーR5〜R9によって第5搬送路351e上を搬送され、再度第1搬送路351aに搬送される。第1搬送路351aに搬送された用紙は、第2搬送路351bに搬送され、転写部361および定着部362により裏面に画像が形成される。これにより、用紙の両面に画像が形成される。用紙は、第6搬送路351fを通じて画像形成装置300から排出され、後処理装置400に搬送される。
また、搬送路351は、搬送ローラーR6の下流側に、凹部A1を有する。凹部A1により、搬送路351において段差が形成され、凹部A1の上流側と下流側とにおいて用紙の搬送経路に高低差が発生する。これにより、凹部A1を通過した用紙は、凹部A1を通過する前または通過中の用紙よりも、鉛直方向において下方に位置する。
<画像形成装置300における用紙搬送停止処理の概要>
次に、画像形成装置300によって実行される用紙搬送停止処理について説明する。
図6は、画像形成装置において実行される用紙搬送停止処理の手順を示すフローチャートである。図6のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、画像形成装置300の記憶部320にプログラムとして記憶されており、CPU310によって実行される。
図6に示すように、CPU310は、印刷ジョブに基づく処理である画像形成処理や用紙搬送処理が完了しているか否かを判断する(ステップS101)。
印刷ジョブに基づく処理が完了している場合(ステップS101:YES)、CPU310は、画像形成装置300の動作を停止させ(ステップS106)、処理を終了する。
印刷ジョブに基づく処理が完了していない場合(ステップS101:NO)、CPU310は、画像形成装置300の本体部でジャムが発生しているか否かを判断する(ステップS102)。具体的には、CPU310は、用紙センサー370により検出された搬送路351における用紙の位置に基づいて、画像形成装置300の内部でジャムが発生しているか否かを判断する。
画像形成装置300の内部でジャムが発生している場合(ステップS102:YES)、CPU310は、ステップS106の処理において画像形成装置300の動作を停止させ、処理を終了する。
画像形成装置300の内部でジャムが発生していない場合(ステップS102:NO)、CPU310は、画像形成装置300の下流のユニットである後処理装置400においてジャムが発生しているか否かを判断する(ステップS103)。具体的には、CPU310は、後処理装置400のCPU410から送信される情報に基づいて、後処理装置400においてジャムが発生しているか否かを判断する。後処理装置400から送信される情報にジャムの発生を示す情報が含まれている場合、CPU310は、後処理装置400においてジャムが発生していると判断する。一方、後処理装置400から送信される情報にジャムの発生を示す情報が含まれていない場合、CPU310は、後処理装置400においてジャムが発生していないと判断する。
後処理装置400でジャムが発生していない場合(ステップS103:NO)、CPU310は、ステップS101の処理に戻る。CPU310は、ステップS101〜S103の処理を繰り返す。
後処理装置400でジャムが発生している場合(ステップS103:YES)、CPU310は、定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送して停止させるために、複数の用紙同士を重ねる必要があるか否かを判断する(ステップS104)。CPU310は、ステップS104の処理において、用紙同士を重ねる必要があるか否かを判断すると共に、それぞれの用紙を停止させる停止位置を決定する。さらに、CPU310は、用紙搬送部350を制御して、それぞれの用紙を停止位置まで搬送する。ステップS104の処理について、詳細は後述する。
続いて、CPU310は、画像形成装置300の搬送路351に残存する全ての用紙が、ステップS104の処理において決定された停止位置で停止しているか否かを判断する(ステップS105)。
全ての用紙が停止位置で停止していない場合(ステップS105:NO)、CPU310は、用紙の搬送を継続し、全ての用紙が停止位置で停止するまでステップS105の処理を繰り返す。
全ての用紙が停止位置で停止している場合(ステップS105:YES)、CPU310は、ステップS106の処理において画像形成装置300の動作を停止し、処理を終了する。
<ステップS104の用紙重ね判断処理>
図7は、図6のステップS104に示される用紙重ね判断処理の手順を示すフローチャートである。図7のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、画像形成装置300の記憶部320にプログラムとして記憶されており、CPU310によって実行される。
図7に示すように、CPU310は、用紙の長さが第1の閾値より短いか否かを判断する(ステップS201)。具体的には、CPU310は、用紙の搬送方向における長さが、記憶部320に予め記憶されている第1の閾値よりも短いか否かを判断する。ここで、第1の閾値は、たとえば、下流ユニットにおいてジャムが発生した場合に、画像形成装置300内の用紙同士を重ねなくても、定着部362に接触しない位置に退避させられる最大限の用紙の長さである。本実施形態では、第1の閾値として、図5に示す搬送ローラーR7から搬送ローラーR5までの距離L1が設定されるものとする。具体的には、搬送ローラーR7から搬送ローラーR5までの距離L1は、たとえば、搬送ローラーR7および搬送ローラーR5のそれぞれの最も上流側に位置する部分間の距離である。なお、第1の閾値は、搬送路351の経路長や形状、搬送ローラーの位置等に応じて適宜決定できる。
用紙の長さが第1の閾値よりも短い場合(ステップS201:YES)、CPU310は、用紙同士を重ねる必要がないと判断する。CPU310は、用紙同士を重ねることなく用紙を停止させる停止モード1の処理を行う(ステップS203)。停止モード1の処理の詳細については、後述する。
用紙の長さが第1の閾値以上の場合(ステップS201:NO)、CPU310は、用紙同士を重ねる必要があると判断し、用紙の長さが第2の閾値より短いか否かを判断する(ステップS202)。具体的には、CPU310は、用紙同士を重ねる量や方法を決定するために、用紙の搬送方向における長さが、記憶部320に予め記憶されている第2の閾値よりも短いか否かを判断する。ここで、第2の閾値としては、用紙同士を重ねる際に、上流側の用紙の先端部を、下流側の用紙を搬送する最上流の搬送ローラーよりも上流側に位置させることができる最大限の用紙の長さが設定される。本実施形態では、第2の閾値として、図5に示す搬送ローラーR7の最も上流側に位置する部分から、第5搬送路351eと第4搬送路351dとの分岐点までの距離L2が設定されるものとする。なお、第2の閾値は、搬送路351の経路長や形状、搬送ローラーの位置等に応じて適宜決定できる。
用紙の長さが第2の閾値よりも短い場合(ステップS202:YES)、CPU310は、用紙同士を重ねる際に、上流側の用紙の先端部を、下流側の用紙を搬送する搬送ローラーよりも上流側に位置させる停止モード2の処理を行う(ステップS204)。停止モード2の処理の詳細については、後述する。
用紙の長さが第2の閾値以上の場合(ステップS202:NO)、CPU310は、用紙を重ねる際に、下流側の用紙を搬送する搬送ローラーを搬送路351から離間させて上流側の用紙を通過させる停止モード3の処理を行う(ステップS205)。停止モード3の処理の詳細については、後述する。
<停止モード1の処理>
図8は、図7のステップS203に示される停止モード1の処理を説明するための図である。図8において、(A)は、後処理装置400においてジャムが発生し、停止モード1の処理が実行される前の搬送路351における用紙P1〜P4の配置を示す。(B)は、(A)に示す状態において停止モード1の処理が実行され、決定した停止位置まで用紙P1〜P4が搬送された状態を示す図である。
図8(A)に示すように、画像形成装置300の下流に位置するXマークの箇所においてジャムが発生している。画像形成装置300の搬送路351上には、搬送方向の下流側から順に、用紙P1、P2、P3、P4が残存している。ここで、用紙P4は、この後ADU352において反転させるために、第3搬送路351cに搬送される。したがって、用紙P4は、最も上流側に位置している。用紙P1は、この後第2搬送路351bおよび第6搬送路351fを通じて画像形成装置300から排出される。したがって、用紙P1は、最も下流側に位置している。
画像形成装置300の下流においてジャムが発生しているため、画像形成装置300は、用紙P1〜P4の搬送を停止する必要がある。しかし、図8(A)に示す状態で即時に用紙P1〜P4の搬送を停止すると、用紙P4は定着部362に接触した状態で停止することになる。したがって、本実施形態では、画像形成装置300は、用紙が定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送路351の下流側に搬送した後で、用紙の搬送を停止する。ここで、用紙の搬送方向における長さは、第1の閾値である距離L1よりも短い。したがって、画像形成装置300は、用紙同士を重ねることなく、定着部362に接触しない位置で用紙を停止させることができると判断し、停止モード1の処理を実行する。
図8(B)に示すように、画像形成装置300は、停止モード1の処理において用紙P1〜P4の停止位置を決定し、当該停止位置まで各用紙を搬送する。用紙P1の停止位置は、用紙P1の先端部が搬送ローラーR1に接触する位置である。用紙P2の停止位置は、用紙P2の先端部が搬送ローラーR9に接触する位置である。用紙P3の停止位置は、用紙P3の先端部が搬送ローラーR6に接触する位置である。用紙P4の停止位置は、用紙P4の先端部が搬送ローラーR4に接触する位置である。ここでは、ジャムが解消されて自動パージが実行される場合に搬送を開始しやすいように、用紙P1〜P4を、それぞれ、これらの先端部が搬送ローラーR1、R9、R6、R4に接触するようにしている。このように、画像形成装置300は、停止モード1の処理によって、用紙同士を重ねることなく、用紙が定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送して停止させる。
<停止モード2の処理>
図9は、図7のステップS204に示される停止モード2の処理を説明するための図である。図10は、比較例に係る画像形成装置における用紙搬送停止処理を説明するための図である。図9において、(A)は、後処理装置400においてジャムが発生し、停止モード2の処理が実行される前の搬送路351における用紙P1〜P4の配置を示す。(B)は、(A)に示す状態において停止モード2の処理が実行され、決定した停止位置まで用紙P1〜P4が搬送された状態を示す図である。
図9(A)に示すように、画像形成装置300の下流に位置するXマークの箇所においてジャムが発生している。画像形成装置300の搬送路351上には、搬送方向の下流側から順に、用紙P1、P2、P3、P4が残存している。用紙P1〜P4の搬送順は、図8に示す停止モード1の処理と同様である。用紙の搬送方向における長さは、第1の閾値である距離L1よりも長く、第2の閾値である距離L2よりも短い。画像形成装置300の下流においてジャムが発生しているため、画像形成装置300は、定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送路351の下流側に搬送した後に、用紙の搬送を停止する。
ここで、画像形成装置300が各用紙を停止モード1の処理と同様の停止位置まで搬送する場合、図10に示すように、用紙P3の後端部が第4搬送路351dに残った状態となる。この状態では、画像形成装置300は用紙P4を下流側の第4搬送路351dに搬送できず、用紙P4は定着部362に接触した状態で停止することになる。
したがって、画像形成装置300は、停止モード2の処理を実行し、搬送路351において用紙同士を重ねて停止させることにより、定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送する。
図9(B)に示すように、画像形成装置300は、停止モード2の処理において用紙P1〜P4の停止位置を決定し、当該停止位置まで各用紙を搬送する。用紙P1、P2の停止位置は、停止モード1の処理と同様である。
用紙P3の停止位置は、用紙P3の先端部が、用紙P2の後端部と重なり、用紙P2を搬送する最上流の搬送ローラーR7よりも上流側となる位置である。ここで、搬送路351は、搬送ローラーR6の下流側に凹部A1を有している。凹部A1を通過した用紙P2は、凹部A1を通過する前の用紙P3よりも鉛直方向において下方に位置している。これにより、用紙P3の先端部が用紙P2の後端部と衝突することなく、用紙P3の先端部と用紙P2の後端部とを重ねられる。その結果、用紙P3の後端部が、第4搬送路351dに残らなくなり、画像形成装置300は、用紙P4を第4搬送路351dに搬送できるようになる。用紙P4は、先端部が搬送ローラーR4に接触する位置で停止する。このようにして、画像形成装置300は、定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送して停止させる。
なお、図9(B)に示す状態となった後に、ジャムが解消されて自動パージが実行される場合、画像形成装置300は、まず搬送ローラーR1、R7〜R11を駆動させて用紙P1、P2を搬送する。そして、用紙P2と用紙P3との間に所定の間隔が形成された後に、画像形成装置300は、搬送ローラーR4〜R6を駆動させて用紙P3、P4を搬送する。
<停止モード3の処理>
図11は、図7のステップS205に示される停止モード3の処理を説明するための図である。図11において、(A)は、後処理装置400においてジャムが発生し、停止モード3の処理が実行される前の搬送路351における用紙P1〜P4の配置を示す。(B)は、(A)に示す状態において停止モード3の処理が実行され、決定した停止位置まで用紙P1〜P4が搬送された状態を示す図である。
図11(A)に示すように、画像形成装置300の下流に位置するXマークの箇所においてジャムが発生している。画像形成装置300の搬送路351上には、搬送方向の下流側から順に、用紙P1、P2、P3、P4が残存している。用紙P1〜P4の搬送順は、図8に示す停止モード1および図9に示す停止モード2の処理と同様である。用紙の搬送方向における長さは、第2の閾値である距離L2よりも長い。画像形成装置300の下流においてジャムが発生しているため、画像形成装置300は、定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送路351の下流側に搬送した後に、用紙の搬送を停止する。
ここで、画像形成装置300が各用紙を停止モード2の処理と同様の停止位置まで搬送する場合、用紙P3の後端部が第4搬送路351dに残った状態となる。この状態において、用紙P3の後端部が第4搬送路351dに残らないようにするために用紙P3をさらに下流側に搬送すると、用紙P3の先端部が、用紙P2を搬送している搬送ローラーR7に接触してしまう。この場合、自動パージを行う際に用紙P3が用紙P2と共に重送されてしまったり、再度ジャムが発生したりする原因となりうる。
したがって、画像形成装置300は、停止モード3の処理を実行し、下流側の用紙を搬送する搬送ローラーを搬送路351から離間させて、離間した搬送ローラーの間に上流側の用紙を通過させる。
図11(B)に示すように、画像形成装置300は、停止モード3の処理において用紙P1〜P4の停止位置を決定し、当該停止位置まで各用紙を搬送する。用紙P1、P2の停止位置は、停止モード1および停止モード2の処理と同様である。
用紙P3の停止位置は、用紙P3の先端部が、用紙P2の後端部に重ねられる位置であり、さらに用紙P2を搬送する最上流の搬送ローラーR7の間に存在する位置である。ここで、搬送ローラーR7を構成する一対のローラーは、搬送路351から離間可能である。画像形成装置300のCPU310は、搬送ローラーR7を構成するローラー対を搬送路351から離間させ、当該離間したローラー対の間に用紙P3を通過させる。これにより、用紙P3が搬送ローラーR7に接触することなく、用紙P3の一部と用紙P2の一部とを重ねられる。その結果、用紙P3の後端部が、第4搬送路351dに残らなくなり、画像形成装置300は、用紙P4を、第4搬送路351dに搬送できるようになる。用紙P4は、先端部が搬送ローラーR4に接触する位置で停止する。このようにして、画像形成装置300は、用紙の重送やジャムの再発生を防ぎつつ、定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送して停止させる。
なお、図11(B)に示す状態となった後に、ジャムが解消されて自動パージが実行される場合、画像形成装置300は、まず、搬送ローラーR1、R8〜R11を駆動させて用紙P1、P2を搬送する。そして、用紙P2と用紙P3との間に所定の間隔が形成された後に、画像形成装置300は、搬送路351から離間した搬送ローラーR7を搬送路351に圧接させ、搬送ローラーR4〜R7を駆動させて用紙P3、P4を搬送する。
以上のように、本実施形態の画像形成装置300によれば、ジャムが発生した際、定着部362に接触しない位置まで用紙を搬送するために、搬送路351において上流側に位置する用紙を下流側に位置する用紙の一部と重ねる。これにより、用紙のサイズが大きい場合でも、定着部362に接触しない位置で用紙を停止させられる。
また、画像形成装置300は、用紙の枚数およびサイズのうち少なくとも一つに基づいて、用紙を重ねる必要があるか否かを判断する。したがって、用紙を重ねる必要性の有無を適切に判断し、必要な場合にのみ用紙を重ねるように制御できる。これにより、用紙を重ねることによる搬送性の低下を抑止し、用紙の搬送性を高く維持できる。
また、画像形成装置300は、上流側の用紙を下流側の用紙と重なる位置まで搬送する際に、上流側の用紙の先端部が、下流側の用紙を搬送する搬送ローラーよりも上流側となる位置で上流側の用紙を停止させる。これにより、用紙の停止位置を調整するという簡単な制御を行うだけで、上流側の用紙が下流側の用紙と共に重送されてしまったり、再度ジャムを発生させたりすることを抑止できる。
また、画像形成装置300は、上流側の用紙を下流側の用紙と重なる位置まで搬送した際に、上流側の用紙の先端部が、下流側の用紙の後端部よりも鉛直方向において上方に位置するように構成される。これにより、下流側の用紙の上方から上流側の用紙を搬送して重ねるという簡単な構成によって用紙同士を確実に重ねられる。
また、画像形成装置300の搬送路351は、上流側の用紙と下流側の用紙とが重なる位置において、下流側の用紙の後端部を上流側の用紙の先端部よりも鉛直方向において下方に位置させるための凹部A1を有する。これにより、用紙同士が衝突することなく、円滑かつ確実に用紙同士を重ねられる。
また、画像形成装置300は、上流側の用紙を下流側の用紙と重なる位置まで搬送する際に、下流側の用紙を搬送する最上流の搬送ローラーを搬送路351から離間させ、上流側の用紙を離間した搬送ローラーの間に通過させる。これにより、サイズが大きい用紙でも、用紙の重送やジャムを発生させることなく用紙同士を重ねられる。
また、画像形成装置300は、用紙同士を重ねる際に、用紙の枚数およびサイズのうち少なくとも一つに基づいて、上流側の用紙を、下流側の用紙を搬送する搬送ローラーよりも上流側で停止させるか、下流側の用紙を搬送する搬送ローラーを離間させてその間を通過させるかを選択する。したがって、用紙同士を重ねる量を適切に判断し、必要な量だけ用紙を重ねるように制御できる。これにより、用紙を重ねることによる搬送性の低下を抑止し、用紙の搬送性を高く維持できる。
なお、上記の実施形態において、画像形成装置300は、用紙の長さに基づいて用紙同士を重ねる必要があるか否かを判断するものとして説明したが、これに限定されない。画像形成装置300は、たとえば、用紙の枚数に基づいて用紙同士を重ねる必要があるか否かを判断してもよい。たとえば、画像形成装置300は、用紙の長さに関わらず、搬送路351に残存する用紙の枚数が所定の枚数よりも少ない場合には、搬送路351上に用紙を停止させる十分なスペースがあるため用紙同士を重ねる必要はないと判断してもよい。
また、画像形成装置300は、用紙同士を重ねる際に、用紙の長さに基づいて搬送ローラーを離間させるか否かを判断するものとして説明したが、これに限定されない。画像形成装置300は、たとえば、用紙の枚数に基づいて搬送ローラーを離間させるか否かを判断してもよい。たとえば、画像形成装置300は、用紙の長さに関わらず、搬送路351に残存する用紙の枚数が所定の枚数よりも少ない場合には、搬送路351上に用紙を停止させる十分なスペースがあるため搬送ローラーを離間させる処理は不要と判断してもよい。
また、画像形成装置300は、定着部362に接触しない位置で用紙を停止させるものとして説明したが、接触を避ける対象は定着部362のみに限定されない。画像形成装置300は、定着部362に加えて転写部361にも接触しない位置で用紙を停止させるようにしてもよい。これにより、用紙が転写部361に接触した状態で停止することによる、用紙へのダメージや転写部361の汚損等を回避できる。さらに、画像形成装置300は、搬送路351上の特定の位置に用紙が停止しないようにしてもよい。
また、画像形成装置300は、搬送路351に凹部A1を設けることにより用紙同士を重ねるものとして説明したが、これに限定されない。画像形成装置300は、たとえば、搬送路351になだらかに隆起する凸部を設け、先行する下流側の用紙が凸部の上に停止した状態で、上流側の用紙を下流側の用紙の下方から搬送することにより、用紙同士を重ねてもよい。
また、画像形成装置300は、下流のユニットにおいてジャムが発生した場合にのみ、図6のステップS104に示す用紙重ね判断処理を行うものとして説明したが、これに限定されない。画像形成装置300は、搬送路351上でジャムが発生した場合であっても、用紙重ね判断処理を行ってもよい。たとえば、定着部362とジャムが発生した箇所との搬送路351上の距離が長い場合等には、用紙重ね判断処理を行い、用紙を定着部362に接触しない位置に停止させておくことにより、ジャムが解消した後の残存用紙の処理が容易となる。
また、画像形成装置300は、停止モード3の処理において、下流側の用紙を搬送する最上流の搬送ローラーを搬送路351から離間させて、その間に上流側の用紙を通過させるものとして説明したが、これに限定されない。画像形成装置300は、最上流の搬送ローラーだけでなく、その下流側にある搬送ローラーも搬送路351から離間させてもよい。少なくとも下流側の用紙を搬送する最下流の搬送ローラーさえ、下流側の用紙を挟んでいればよい。これにより、用紙のサイズがより大きい場合や、搬送路351の長さが短い場合等にも柔軟に対応できる。
また、上記実施形態においては、画像形成装置300の搬送路351にADU352が設けられ、ADU352の折り返し部分である第4搬送路351dの下流側において用紙同士を重ねる例について説明したが、これに限定されない。画像形成装置300は、ADU352を有していなくてもよい。また、用紙同士を重ねる位置は、第4搬送路351dの下流側に限定されず、搬送路351上において他の適切な位置が設定されてもよい。
また、上記実施形態においては、画像形成装置300が電子写真方式によりトナーを用いて画像形成を行う例について説明したが、これに限定されない。画像形成装置300は、たとえば、インクジェット方式によりインクを用いて画像形成を行うものであってもよい。
また、上記実施形態においては、定着部362に接触する用紙よりも下流側の用紙同士を重ねることにより、定着部362に接触する用紙を定着部362に接触しない位置に搬送するスペースを確保する例について説明したが、これに限定されない。定着部362に接触する用紙自体を下流側の用紙の一部と重ねることにより、定着部362に接触しない位置に搬送してもよい。
また、上記実施形態においては、画像形成装置300により用紙に画像を形成して搬送する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、画像形成装置300により画像が形成されて搬送される記録材は、用紙に限定されるものではなく、樹脂や金属等からなる種々の記録材であってもよい。
また、上記実施形態においては、用紙の両面に画像を形成する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、用紙の片面に画像を形成する場合にも適用できる。具体的には、用紙の片面への画像形成又は画像形成後の定着を行っているときに(用紙が転写部361又は定着部362に位置しているときに)上記実施形態と同様にXマークの箇所においてジャムが発生した場合、その位置で用紙の搬送を停止すると用紙がダメージを受けることが懸念される。よって、用紙の両面に画像を形成する場合の搬送路(第3搬送路351c、第4搬送路351d、第5搬送路351e)に用紙を搬送することで、転写部361、定着部362で用紙が停止することを回避することができる。
また、上記実施形態においては、停止モード1〜3の処理において、用紙P1を、その先端部が搬送ローラーR1に接触する位置まで搬送した。しかしながら、上記実施形態においては、用紙P2を下流側に搬送したとしても用紙P2の先端部が用紙P1に衝突しないため、停止モード1〜3の処理において用紙P1を搬送しなくてもよい。これにより、用紙P1を下流側に搬送するための搬送ローラー(ここでは、搬送ローラーR10、R11)を駆動しなくても良いので、搬送ローラーの劣化や消費電力を抑制できる。その他の用紙についても用紙の衝突等の問題がない場合は、搬送を停止してもよい。