JP6404785B2 - 生体分子移動度制御方法および電気泳動槽 - Google Patents

生体分子移動度制御方法および電気泳動槽 Download PDF

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本発明は、脂質分子からなる支持膜に担持される生体分子の移動度を制御するための技術に関する。
微量の生体分子を効率よく検出するためには、マイクロアレイが一般的に使われる。現在、ほとんどのマイクロアレイの作製には、固体表面に直接生体分子(DNA、酵素、可水溶性タンパク質)を共有結合で固定化するという手法がとられている。DNAチップを代表とする、現在までに成功を収めている素子は、共有結合による固定化に際して、生体分子の機能を維持できるものに限られている。
近年、マイクロアレイを、膜タンパク質を代表とする膜関連生体分子へ拡張する試みが、精力的に行われている。このようなマイクロアレイにおいて、従来法である共有結合による固定化を行った場合、生体分子の機能が失われることが多く、これを回避する方法の開発が重要な課題となっている。解決法の一つとして、生体膜からなる支持膜をマイクロアレイの固体表面に支持させる手法が注目されている。自然界において効率よく特異的反応場として用いられている生体膜を、支持膜としてマイクロアレイの固体基板上に支持させることで、より自然に近い環境を素子上へ実現し、これまで機能を維持したままでの固定化が難しかった膜タンパク質に代表される生体分子を、その機能を失わせることなく固体表面に担持することが可能になると期待されている。
このような支持膜は固体表面に吸着しているが、生体膜が有する最も重要な性質である流動性を維持している。そのため、生体分子の機能する場として最適な環境を与える。図8は、支持膜を用いた生体分子検出チップの構成例である。この生体分子検出チップCPは、プラスチック、ガラス、シリコンなどの基板からなる固体SUBの表面に、脂質分子などからなる支持膜を配置し、これら支持膜を隔壁BARで分離したものである。支持膜の流動性は、例えば図8に示す生体分子検出チップにおいて、基板表面の支持膜に平行な電場を印加することにより、ゲルに担持されたタンパク質の電気泳動と同様に、支持膜に担持した生体分子を動かすことで証明されている(非特許文献1)。
支持膜内で定常状態に達し、生体分子が一定速度で移動するとき、電気泳動、それとは逆向きの対イオンの逆流、支持膜から受ける摩擦力、および支持膜外の水相から受ける抵抗力という4つの力が相殺され、釣り合った状態になる(非特許文献2)。このとき、膜内の生体分子の濃度勾配や分離能は、外力と膜の流動性との競合となる。現在実現されている多くの支持膜実験系では、支持膜の流動性が外力に勝っており、外力がなくなった場合には速やかに均一な平衡状態へ移行する。
一方、支持膜内の特定の分子を、外場を利用して支持膜内で分離・分取するといった技術の要請が高まっている。この場合には、分子を分離しようとする外力と、分子を均一に分散させようとする流動性の競合を制御しなければならない。外場によって支持膜内に形成した生体分子の濃度勾配を維持できるように、支持膜の流動性を抑制・制御する技術が特に重要である。これによって、形成した濃度勾配が短時間で平衡状態へ移行するのを防ぎ、膜内で分離した生体分子を分取することが可能になる。
J. T. Groves and S. G. Boxer, " Micropattern Formation in Supported Lipid Membranes", Acc. Chem. Res., vol.35, pp. 149-157, 2002. M. Tanaka, J. Hermann, I. Haase, M. Fischer and S. G. Boxer, "Frictional Drag and Electrical Manipulation of Recombinant Proteins in Polymer-Supported Membrane", Langmuir, vol.23, pp.5638-5644, 2007. M. Tanaka, A. P. Wong, F. Rehfeldt, M. Tutus and S. Kaufmann, "Selective Deposition of Native Cell Membranes on Biocompatible Micropatterns", J. Am. Chem. Soc., vol.126, pp. 3257-3260, 2004.
従来、マイクロアレイの固体基板上に支持されている支持膜の流動性を抑制・制御するための手法として、例えば支持膜の成分を変える、支持基板を変える、温度を変える、などが提案・実証されている。
しかしながら、このような従来技術にもそれぞれ課題が指摘されている。例えば、支持膜の成分を変えると、目的対象物に最適な成分支持膜を選択できない可能性がある。また、人工生体膜を利用する場合は、成分を変えることが困難であることが多い。一方、支持基板を変えた場合、支持膜内の生体分子との相互作用が生じ、生体分子の機能の維持を阻害する恐れがある。また、温度を変えた場合、支持膜成分の相転移を促すことがあり、支持膜内の異なる成分の相分離を生じる可能性がある。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、生体分子の機能を損なうことなく、固体基板上に支持されている支持膜の流動性を容易に制御できる技術を提供することを目的としている。
このような目的を達成するために、本発明にかかる生体分子移動度制御方法は、電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜に対し、当該支持膜の膜内および/または膜表面に担持した生体分子の移動度を、当該電解質溶液の粘度により制御し、この際、前記電解質溶液に溶解している電解質の濃度により当該電解質溶液の粘度を制御するようにしたものである。
また、本発明にかかる他の生体分子移動度制御方法は、電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜に対し、当該支持膜の膜内および/または膜表面に担持した生体分子の移動度を、当該電解質溶液の粘度により制御し、この際、前記電解質溶液がイオン液体からなるものである。
また、本発明にかかる他の生体分子移動度制御方法は、電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜に対し、当該支持膜の膜内および/または膜表面に担持した生体分子の移動度を、当該電解質溶液の粘度により制御し、この際、前記電解質溶液の電解質としてイオン液体を用い、当該イオン液体の種類および濃度により、当該電解質溶液の粘度を制御するようにしたものである。
また、本発明にかかる電気泳動漕は、電解質溶液中で生体分子を電気泳動させる電気泳動槽であって、電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜と、当該支持膜の膜内および/または膜表面を電気泳動する生体分子の移動度を、粘度に応じて制御する前記電解質溶液とを備え、前記電解質溶液に溶解している電解質の濃度により当該電解質溶液の粘度を制御するようにしたものである。
また、本発明にかかる他の電気泳動漕は、電解質溶液中で生体分子を電気泳動させる電気泳動槽であって、電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜と、当該支持膜の膜内および/または膜表面を電気泳動する生体分子の移動度を、粘度に応じて制御する前記電解質溶液とを備え、前記電解質溶液がイオン液体からなるものである。
また、本発明にかかる他の電気泳動漕は、電解質溶液中で生体分子を電気泳動させる電気泳動槽であって、電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜と、当該支持膜の膜内および/または膜表面を電気泳動する生体分子の移動度を、粘度に応じて制御する前記電解質溶液とを備え、前記電解質溶液の電解質としてイオン液体を用い、当該イオン液体の種類および濃度により、当該電解質溶液の粘度を制御するようにしたものである。
本発明によれば、生体分子の機能を損なうことなく、固体基板上に支持されている支持膜の流動性を容易に制御することが可能となり、支持膜内での生体分子の分離・分取技術に貢献する。その応用として、例えば、定常状態のタンパク質の移動度、すなわち濃度勾配のスロープやpH勾配下での等電点電気泳動のバンド幅など、支持膜内・膜表面での生体分子のパターンを作製することができる。さらに本発明の技術は、これまで提案のあった手法と同時に適用可能な手法であることから、さらに広範囲な制御を可能とする。
本発明の生体分子移動度制御方法が適用される電気泳動槽を示す概略図である。 支持膜内を定速移動する生体分子への力の作用を示す説明図である。 支持膜の顕微鏡観察結果を示す画像である。 TR−sAv添加前における脂質の蛍光強度変化(コリン二水素リン酸水溶液)を示すグラフである。 TR−sAv添加後における脂質の蛍光強度変化(コリン二水素リン酸水溶液)を示すグラフである。 TR−sAv添加前における脂質の蛍光強度変化(コリン二水素リン酸濃厚水溶液)を示すグラフである。 TR−sAv添加後における脂質の蛍光強度変化(コリン二水素リン酸濃厚水溶液)を示すグラフである。 支持膜を用いた生体分子検出チップの構成例である。
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[生体分子移動度制御方法]
まず、図1を参照して、本発明にかかる生体分子移動度制御方法について説明する。図1は、本発明の生体分子移動度制御方法が適用される電気泳動槽を示す概略図である。
本発明にかかる生体分子移動度制御方法は、電解質溶液の粘度により、支持膜の膜内および/または膜表面を電気泳動する生体分子の移動度を制御するようにしたものである。
電解質溶液中を電気泳動する生体分子を、電解質溶液に浸漬させた生体分子検出チップ(バイオチップ)の支持膜の膜内および/または膜表面に担持することにより、目的の生体分子を分離・分取する際、電気泳動するこれら生体分子の移動度を制御するために、本発明にかかる生体分子移動度制御方法が用いられる。
図1において、電気泳動漕10は、主な構成として、槽11、正電極12、負電極13、電源14、電解質溶液15、および生体分子検出チップCPを備えている。
槽11に収容されている電解質溶液15に生体分子検出チップCPを浸漬し、正電極12と負電極13との間に電源14から電圧を印加することにより、生体分子検出チップCPの支持膜SLBに担持された生体分子20が電気泳動によって支持膜SLB内で分離・分取される。
[生体分子検出チップCP]
生体分子検出チップCPにおいて、固体SUBの表面には、親水表面と支持膜SLBが形成されない疎水表面とが設けられている。一般には疎水表面を持つ材料により隔壁BARが形成されればよい。このうち、親水表面は、隔壁BARでそれぞれ分離されて、脂質二分子膜などの脂質分子LMからなる支持膜SLBが形成されている。図1の例では、正電極12および負電極13が生体分子検出チップCPとは別個に設けられているが、これら電極を固体SUBに形成してもよい。
脂質二分子膜は、一般的に、極性頭部と疎水性炭化水素鎖を併せ持つ両親媒性の脂質分子からなる単一膜が、疎水性炭化水素鎖が内側となるよう形成される構造体である。本発明では、脂質二分子膜を固体表面に支持した状態において、脂質二分子膜が電解質溶液と接する面を支持膜の膜表面と呼び、脂質二分子膜が存在する領域を支持膜の膜内と呼ぶ。
支持膜の材料には、脂質分子およびその混合物、さらにここにスフィンゴミエリン、コレステロールなどを混合したものを用いることができる。さらにここにプロテオソームをベシクル融合させることで、膜タンパク質を担持させることができる。支持膜に担持するタンパク質としては、膜貫入型タンパク質(細胞接着レセプター、イオンチャネル)やグリセロフォスファチジルイノシトール脂質結合型タンパク質、またビオチンやヒスチジンオリゴマーでタグ付けされた人工再構成タンパク質などが挙げられる。また、人工膜だけでなく小胞体や筋小胞体、単離した細胞膜などの生体由来の膜を直接利用することもできる。
支持膜を形成する固体の基板材質としては、シリコンウエハ、石英ウエハ、ガラスウエハ、サファイア、マイカ等を用いることができる。さらにその表面を高分子薄膜でコーティングしたものも用いることができる。高分子薄膜材料としては再生セルロースのスピンコート膜、もしくはラングミュア−ブロジェット膜を用いる。これを用いることにより、人工生体膜だけでなく天然の生体膜をも固体基板に保持することができる(例えば、非特許文献3など参照)。
電気泳動で支持膜内の生体分子を濃縮させたり、濃度勾配を与えたりする際には、基板表面に予め金、ニッケル、クロムなどの金属を加熱蒸着やスパッタ蒸着等の方法で蒸着したパターンを作製する。これは支持膜の拡散を制限する拡散バリアとして機能する。電気泳動の電源は通常のゲル電気泳動と同じものを用いる。
図2は、支持膜内を定速移動する生体分子への力の作用を示す説明図である。支持膜内で定常状態に達し、生体分子が一定速度で移動するとき、電気泳動の力Fe、それとは逆向きの対イオンの逆流の力Fr、支持膜から受ける摩擦力Ff、および支持膜外の水相から受ける抵抗力Fcという4つの力が相殺され、釣り合った状態になる。このとき、膜内の生体分子の濃度勾配や分離能は、外力と膜の流動性との競合となる。現在実現されている多くの支持膜実験系では、支持膜の流動性が外力に勝っており、外力がなくなった場合には速やかに均一な平衡状態へ移行する。
本発明は、このような生体分子への力の作用において、支持膜外の水相から受ける抵抗力Fcが電解質溶液の粘度により制御可能であることに着目し、電解質溶液の粘度により支持膜の膜内および/または膜表面を移動する生体分子の移動度を制御するようにしたものである。
ここで、電解質溶液の粘度を変える副作用として、生体分子の機能を損なうことがあってならない。電解質溶液の粘度を変えるためには、電解質濃度を変える方法と、電解質の種類を変える方法がある。前者は、例えば一般的な電解質である無機塩の濃度を変えればよいが、その範囲は溶解度以下の範囲であり、粘度もそれに応じた変化を示す。
電解質濃度を変える場合、電解質としては、一般的な無機塩の他に、生体分子の機能を損なわず粘度を変化させられる電解質として、イオン液体が挙げられる。イオン液体は無機塩に変わる電解質であり、ある種のイオン液体は室温付近で液体である。これらのイオン液体は水溶液とせずに電解質溶液の代わりに用いることができる。また、ある種のイオン液体は水と無限大に混じり、得られたイオン液体水溶液を電解質溶液に用いることができる。このため、無機塩に比べ濃度範囲を広く変えることができ、したがって粘度を広範に変化させることが可能である。
一方、電解質の種類を変える場合、イオン液体の具体例な種類としては、コリン二水素リン酸、コリンビストリフルオロメチルメチルスルフォニルイミド、1−ブチルイミダゾリウムジシアナイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホン酸、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムテトラフルオロボレート、他が挙げられる。
なお、本発明を支持膜という観点から見れば、本発明にかかる支持膜は、電解質溶液中におかれた固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜の膜内および/または膜表面に生体分子を担持する支持膜であって、前記電解質溶液の粘度に応じて、当該支持膜の膜内および/または膜表面に置かれた生体分子の移動度が制御されるものである。
また、本発明を生体分子検出チップという観点から見れば、本発明にかかる生体分子検出チップは、本発明にかかる電解質溶液中におかれた固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜において、当該支持膜の膜内および/または膜表面に担持する生体分子が、前記電解質溶液の粘度に応じて、当該支持膜の膜内および/または膜表面を電気泳動する生体分子の移動度が制御された検出チップである。
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。
それぞれのクロロホルム溶液を用いて、卵黄由来脂質分子L−α−PCと、16:0 biotinyl DPPEと、16:0 NBD−DPPEとを、97:2:1のモル比の割合で含む混合物を、クロロホルム溶液として調製した。得られたクロロホルム溶液は、はじめに窒素気流下においてクロロホルムを蒸発させ、次に真空下に1晩おいてクロロホルムをさらに除去した。ここに混合物濃度が1g/Lになるようにコリン二水素リン酸水溶液(100mM)を加えた。これに超音波照射を5分間行い、混合物のベシクルを含む黄色透明水溶液を得た。これをさらに遠心(毎分150000回転、15分間)することで不溶物を沈殿させ、均一な黄色透明水溶液を得た。
SiO2酸化膜(300nm)を有するSiウエハ(SiO2/Si)を5mm×15mmに切断し、これに対して水洗(5分間)、濃硫酸:過酸化水素水=4:1(体積比)混酸(ピラニア)処理(5分間)、水洗(5分間)、フッ化アンモニウム水溶液(5分間)処理、水洗(5分間)、の順で洗浄した。
コリン二水素リン酸(分子量201.16)2グラムを純水に溶解して100mLとし、100mMコリン二水素リン酸水溶液を調製した。またコリン二水素リン酸60グラムを純水30グラムに溶解して、コリン二水素リン酸濃厚水溶液を調製した。逆流形キャノン−フェンスケ不透明液用粘度計を用いて測定した室温(25℃)における動粘度は、それぞれ0.936、30.8(mm2/s)であった。
図3は、支持膜の顕微鏡観察結果を示す画像である。SiO2/Si基板表面に黄色透明水溶液50μLを滴下して5分間静置した後、コリン二水素リン酸水溶液(100mM)で洗浄した。洗浄後のSiO2/Si基板は、常にコリン二水素リン酸水溶液(100mM)に浸漬した状態に保ち、蛍光顕微鏡で観察した。これにより、B励起で緑色に光る一様な支持膜を確認した。
次に、共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いてこの支持膜を時間発展観察しながら、赤色蛍光色素であるTexas Redが結合したストレプトアビジン(TR−sAv)のコリン二水素リン酸水溶液(100mM)を途中で添加した。添加時のTR−sAv濃度は2μg/100μLとした。
TR−sAv添加前においては、支持膜のある領域からは、図3(a)に示すように、緑色蛍光(488nm励起、505−525nm発光、NBD由来)が観察された。また、図3(b)に示すように、赤色蛍光(543nm励起、>580nm発光、Texas Red由来)は観察されなかった。
一方、TR−sAv添加後においては、図3(c)に示すように、緑色蛍光は添加前と同様に確認された。また、図3(d)に示すように、膜部分は速やかに赤色発光を示すことを確認し、TR−sAvが膜に含まれるビオチンと結合したことを確認した。
次に、共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて、FRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)実験を行った。直径50μmの円領域にレーザを高強度で照射し、この領域の色素分子を退色させた。その前後で、20秒毎に、赤色蛍光および緑色蛍光を、共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて観察した。色素退色させた領域の蛍光強度(任意単位)の時間変化をプロットし、拡散係数を求めた。実験はTR−sAv添加後の支持膜を用いて行い、脂質分子の移動度はNBD−DPPE由来の緑色蛍光から、ストレプトアビジンの移動度はTR−sAv由来の赤色蛍光から、それぞれ評価した。
図4は、コリン二水素リン酸水溶液中(100mM)における緑色蛍光強度変化を示すグラフである。緑色蛍光はNBD由来であり、NBDが結合した脂質の拡散係数を与える。緑色蛍光強度が初期蛍光強度の1/2に回復する時間から求めた拡散係数は3.1μm2/sであった。
図5は、コリン二水素リン酸水溶液中(100mM)における赤色蛍光強度変化を示すグラフである。赤色蛍光はTexas Red由来であり、ストレプトアビジンが結合したビオチン脂質の移動度を与える。赤色蛍光強度が初期蛍光強度の1/2に回復する時間から求めた拡散係数は1.0μm2/sであった。
次に、コリン二水素リン酸水溶液(100mM)をコリン二水素リン酸濃厚水溶液に置換した。その後、蛍光顕微鏡で観察すると、B励起で緑色に光る一様な膜を確認し、この溶液の置換によって支持膜が維持されていることを確認した。この後、引き続き、上記と同様に共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて、FRAP実験を行った。
図6は、コリン二水素リン酸水溶液中における緑色蛍光強度変化を示すグラフである。緑色蛍光の回復からNBDが結合した脂質の拡散係数を求めると、1.4μm2/sであった。このことから、電解質溶液の粘度を増大させることによって、NBD結合脂質の移動度を制御できることが示された。
図7は、コリン二水素リン酸水溶液中における赤色蛍光強度変化を示すグラフである。緑色蛍光の回復が見られた一方、赤色蛍光は、ほとんど回復が見られなかった。電解質溶液の粘度により、ストレプトアビジン結合したビオチン脂質の移動度は、NBD結合脂質の移動度に比べて、大幅に低下した。これはストレプトアビジンがNBDに比べて体積が大きく、粘度の高い電解質溶液から受ける抵抗が大きいためであることが示された。
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜に対し、当該支持膜の膜内および/または膜表面に担持した生体分子の移動度を、当該電解質溶液の粘度により制御するようにしたものである。
より具体的には、電解質溶液に溶解している電解質の濃度により当該電解質溶液の粘度を制御してもよく、電解質溶液としてイオン液体を用いてもよく、また電解質溶液に電解質として溶解しているイオン液体の種類により、当該電解質溶液の粘度を制御してもよい。
これにより、生体分子の機能を損なうことなく、固体基板上に支持されている支持膜の流動性を容易に制御することが可能となり、支持膜内での生体分子の分離・分取技術に貢献する。その応用として、例えば、定常状態のタンパク質の移動度、すなわち濃度勾配のスロープやpH勾配下での等電点電気泳動のバンド幅など、支持膜内・膜表面での生体分子のパターンを作製することができる。さらに本発明の技術は、これまで提案のあった手法と同時に適用可能な手法であることから、さらに広範囲な制御を可能とする。
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
10…電気泳動漕、11…槽、12…正電極、13…負電極、14…電源、15…電解質溶液、20…生体分子、CP…生体分子検出チップ、SLB…支持膜、SUB…固体(基板)。

Claims (6)

  1. 電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜に対し、当該支持膜の膜内および/または膜表面に担持した生体分子の移動度を、当該電解質溶液の粘度により制御し、この際、前記電解質溶液に溶解している電解質の濃度により当該電解質溶液の粘度を制御することを特徴とする生体分子移動度制御方法。
  2. 電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜に対し、当該支持膜の膜内および/または膜表面に担持した生体分子の移動度を、当該電解質溶液の粘度により制御し、この際、前記電解質溶液がイオン液体からなることを特徴とする生体分子移動度制御方法。
  3. 電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜に対し、当該支持膜の膜内および/または膜表面に担持した生体分子の移動度を、当該電解質溶液の粘度により制御し、この際、前記電解質溶液の電解質としてイオン液体を用い、当該イオン液体の種類および濃度により、当該電解質溶液の粘度を制御することを特徴とする生体分子移動度制御方法。
  4. 電解質溶液中で生体分子を電気泳動させる電気泳動槽であって、
    電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜と、
    当該支持膜の膜内および/または膜表面を電気泳動する生体分子の移動度を、粘度に応じて制御する前記電解質溶液とを備え
    前記電解質溶液に溶解している電解質の濃度により当該電解質溶液の粘度を制御する
    ことを特徴とする電気泳動槽。
  5. 電解質溶液中で生体分子を電気泳動させる電気泳動槽であって、
    電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜と、
    当該支持膜の膜内および/または膜表面を電気泳動する生体分子の移動度を、粘度に応じて制御する前記電解質溶液とを備え、
    前記電解質溶液がイオン液体からなる
    ことを特徴とする電気泳動槽。
  6. 電解質溶液中で生体分子を電気泳動させる電気泳動槽であって、
    電解質溶液中にある固体表面に支持した脂質分子および生体分子からなる支持膜と、
    当該支持膜の膜内および/または膜表面を電気泳動する生体分子の移動度を、粘度に応じて制御する前記電解質溶液とを備え、
    前記電解質溶液の電解質としてイオン液体を用い、当該イオン液体の種類および濃度により、当該電解質溶液の粘度を制御する
    ことを特徴とする電気泳動槽。
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