JP6734210B2 - 脂質二分子膜基板、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、膜タンパク質を半導体基板上にアレイ化した超小型のバイオチップが実現できれば、多くの膜タンパク質の機能を同時かつ高速に解析することが可能となるため、新薬開発に要する時間の短縮や費用の低減など多くの効果が期待される。
前記微小井戸の前記開口部の周縁において、前記開口部を狭める方向に延びるオーバーハング部が配置されており、
前記脂質二分子膜が、秩序液体相及び無秩序液体相の2つの相状態を有し、
前記微小井戸の内部を満たして前記脂質二分子膜に接している第一溶液と、
前記微小井戸の外部で前記脂質二分子膜に接し、該脂質二分子膜を覆っている第二溶液と、を備え、
前記第二溶液は、前記第一溶液の浸透圧よりも低い浸透圧を有し、
前記脂質二分子膜は、前記開口部において前記微小井戸の外部に向かって膨らんでいることを特徴とする脂質二分子膜基板。
[2] 基板に微小井戸が形成され、該微小井戸の開口部が脂質二分子膜によって覆われている脂質二分子膜基板において、
前記微小井戸の前記開口部の周縁において、前記開口部を狭める方向に延びるオーバーハング部が配置されており、
前記脂質二分子膜が、秩序液体相及び無秩序液体相の2つの相状態を有し、
前記微小井戸の内部を満たして前記脂質二分子膜に接している第一溶液と、
前記微小井戸の外部で前記脂質二分子膜に接し、該脂質二分子膜を覆っている第二溶液と、を備え、
前記第二溶液は、前記第一溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有し、
前記脂質二分子膜は、前記開口部において前記微小井戸の内部に向かって凹んでいることを特徴とする脂質二分子膜基板。
[3] 前記微小井戸の内部に電極が配置されていることを特徴とする[1]又は[2]に記載の脂質二分子膜基板。
[4] 前記第一溶液中に蛍光分子が含まれていることを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載の脂質二分子膜基板。
[5] 前記脂質二分子膜が正電荷を有することを特徴とする[1]〜[4]の何れか一項に記載の脂質二分子膜基板。
[6] 微小井戸が形成された基板の表面に第一溶液を滴下し、前記第一溶液を前記微小井戸の内部に充填し、且つ前記基板の表面を前記第一溶液で覆う工程と、
前記基板の表面を覆う前記第一溶液に巨大脂質膜ベシクルを添加し、前記基板の表面で前記巨大脂質膜ベシクルを展開させることにより、前記微小井戸の開口部を脂質二分子膜で覆う工程と、
前記微小井戸の外部にある前記第一溶液を、該第一溶液の浸透圧よりも低い浸透圧を有する第二溶液に変えることにより、前記脂質二分子膜で隔てられた前記微小井戸の内部と外部との間に浸透圧差を生じさせ、前記微小井戸の開口部において、前記微小井戸の外部に向かって前記脂質二分子膜を膨らませ、前記開口部を覆う前記脂質二分子膜における秩序液体相及び/又は無秩序液体相の相状態を制御する工程と、を有し、
前記微小井戸の前記開口部の周縁において、前記開口部を狭める方向に延びるオーバーハング部が配置されている、脂質二分子膜基板の製造方法。
[7] 微小井戸が形成された基板の表面に第一溶液を滴下し、前記微小井戸の内部に前記第一溶液を充填し、且つ前記基板の表面を前記第一溶液で覆う工程と、
前記基板の表面を覆う前記第一溶液に巨大脂質膜ベシクルを添加し、前記基板の表面で前記巨大脂質膜ベシクルを展開させることにより、前記微小井戸の開口部を脂質二分子膜で覆う工程と、
前記微小井戸の外部にある前記第一溶液を、該第一溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二溶液に変えることにより、前記脂質二分子膜で隔てられた前記微小井戸の内部と外部との間に浸透圧差を生じさせ、前記微小井戸の開口部において、前記微小井戸の内部に向かって前記脂質二分子膜を凹ませ、前記開口部を覆う前記脂質二分子膜における秩序液体相及び/又は無秩序液体相の相状態を制御する工程と、を有し、
前記微小井戸の前記開口部の周縁において、前記開口部を狭める方向に延びるオーバーハング部が配置されている、脂質二分子膜基板の製造方法。
<脂質二分子膜基板>
[第一実施形態]
図1に示すように、本発明の脂質二分子膜基板1Aは、基板10に微小井戸20が形成され、該微小井戸20の開口部21が脂質二分子膜30によって覆われているものである。
秩序液体相30aはコレステロールと飽和脂質分子を含み、無秩序液体相30bよりも飽和脂質分子を多く含む。秩序液体相30aに含有される脂質分子100モル%に対する飽和脂質分子の割合は、例えば、50〜100モル%であってよく、80〜100モル%であってよく、90〜100モル%であってよい。飽和脂質分子としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)やスフィンゴミエリンなどを例示できる。
無秩序液体相30bは不飽和脂質分子を含み、秩序液体相30aよりも不飽和脂質分子を多く含む。無秩序液体相30bに含有される脂質分子100モル%に対する不飽和脂質分子の割合は、例えば、50〜100モル%であってよく、80〜100モル%であってよく、90〜100モル%であってよい。不飽和脂質分子としては、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)などを例示できる。
脂質二分子膜にドメイン状に存在する秩序液体相はラフト様構造とよばれ、ラフト様構造の直径は10〜1000nmであってもよく、20〜200nmであってもよく、30〜150nmであってもよく、50〜100nmであってもよい。ラフト様構造が真円でない場合の前記直径は、ラフト様構造を面積基準で真円に換算した場合の直径とする。
はじめ、第一溶液22の溶質濃度は第二溶液24の溶質濃度よりも高くなっているので、第一溶液22の浸透圧は第二溶液24の浸透圧よりも高くなっている。これにより、脂質二分子膜30を隔てて、微小井戸20の内外で(第一溶液22と第二溶液24との間で)浸透圧差が生じている。この結果、脂質二分子膜30を隔てて、微小井戸20の内外で浸透圧差が生じており、脂質二分子膜30は、開口部21において微小井戸20の外部に向かって膨らむ。
凸部34の頂部の膜面の高さ位置を測定する方法としては、例えば、波長500〜600nm程度のレーザーを膜面に照射した際に観察される干渉縞の周期性から見積もることができる。
上記範囲の下限値以上とすることにより、開口部21を覆う脂質二分子膜30に1個以上の膜タンパク質を配置することができる。上記範囲の上限値以下とすることにより、浸透圧差によって脂質二分子膜30に充分な応力(テンション)を負荷し、大きく変形した凹部32が得られる。
微小井戸20の深さは、凹部32を構成する脂質二分子膜30が微小井戸20の底面に接触しない深さであれば特に限定されず、開口部21の直径に応じて適宜設計すればよく、例えば0.1μm〜10μmの深さが挙げられる。
基板10の厚みや形状は用途に応じて適宜調整される。基板10に設けられた微小井戸20の数は特に限定されず、1個でもよく、2個以上でもよく、例えば1〜10000個とすることができる。
薄膜層11の厚さは、例えば、50nm〜500nmであることが好ましい。
サイズの揃ったベシクルを得るためには、ITO基板上に厚さ数十nm〜数μmの均一なリン脂質分子の膜を形成することが好ましく、また、交流電場は数百mV〜2V程度の印加条件が好ましい。
上記範囲の濃度であると、生理的条件(細胞や血液)に比較的近い状態を維持できるので、膜タンパク質の導入に適した環境となる。
第二溶液24の溶質の濃度としては、例えば、1mM〜1Mが好ましく、10mM〜0.5Mがより好ましく、50mM〜0.3Mがさらに好ましい。
上記範囲の濃度であると、生理的条件(細胞や血液)に比較的近い状態を維持できるので膜タンパク質の導入に適した環境となる。
上記範囲の濃度差であると、生理的条件(細胞や血液)に比較的近い状態を維持し、脂質二分子膜30の破れを抑制するとともに、脂質二分子膜30を変形させて凸部34が形成されるために充分な浸透圧差が得られる。
上記範囲の濃度比であると、生理的条件(細胞や血液)に比較的近い状態を維持し、脂質二分子膜30の破れを抑制するとともに、脂質二分子膜30を変形させて凸部34が形成されるために充分な浸透圧差が得られる。
図2に、本発明の第二実施形態の脂質二分子膜基板1Bを示す。第一実施形態の脂質二分子膜基板1Aと同じ構成には同じ符号を付している。
基板10の表面に微小井戸20が形成され、該微小井戸の開口部21が脂質二分子膜30によって覆われており、脂質二分子膜30は、秩序液体相30a及び無秩序液体相30bの2つの相状態を有し、微小井戸20の内部には第一溶液22が充填され、微小井戸の外部において脂質二分子膜30を覆う第二溶液24が配置されていることについては、上記の第一実施形態と同様である。
第二実施形態の脂質二分子膜基板1Bにおいては、はじめ、第一溶液22の溶質濃度は第二溶液24の溶質濃度よりも低くなっているので、第一溶液22の浸透圧は第二溶液24の浸透圧よりも低くなっている。これにより、脂質二分子膜30は、開口部21において微小井戸20の内部(底部)に向かって凹む。
凹部32の底部の膜面の深さ位置を測定する方法としては、例えば、波長500〜600nm程度のレーザーを膜面に照射した際に観察される干渉縞の周期性から見積もることができる。
第一溶液22の溶質の濃度としては、例えば、1mM〜1Mが好ましく、10mM〜0.5Mがより好ましく、50mM〜0.3Mがさらに好ましい。
上記範囲の濃度であると、生理的条件(細胞や血液)に比較的近い状態を維持できるので、膜タンパク質の導入に適した環境となる。
第二溶液24の溶質の濃度としては、例えば、5mM〜2Mが好ましく、50mM〜1Mがより好ましく、100mM〜0.4Mがさらに好ましい。
上記範囲の濃度であると、生理的条件(細胞や血液)に比較的近い状態を維持できるので、膜タンパク質の導入に適した環境となる。
上記範囲の濃度差であると、生理的条件(細胞や血液)に比較的近い状態を維持し、脂質二分子膜30の破れを抑制するとともに、脂質二分子膜30を変形させて凹部32が形成されるために充分な浸透圧差が得られる。
上記範囲の濃度比であると、生理的条件(細胞や血液)に比較的近い状態を維持し、脂質二分子膜30の破れを抑制するとともに、脂質二分子膜30を変形させて凹部32が形成されるために充分な浸透圧差が得られる。
図1,2に示す脂質二分子膜基板1A,1B(以下、まとめて脂質二分子膜基板1と記す。)を構成する凹部32及び凸部34に膜タンパク質を導入することができる。
前述したように、微小井戸20の外部において脂質二分子膜30を覆う第二溶液24に、リポソームを添加すると、リポソームは凹部32及び凸部34に対して優先的に融合する。この方法を応用して、予め目的の膜タンパク質が導入されたプロテオリポソームを公知方法により準備し、このプロテオリポソームを第二溶液24に添加することにより、プロテオリポソームを凹部32及び凸部34に対して優先的に融合させる。この結果、開口部21の直上又は近傍の脂質二分子膜30に目的の膜タンパク質を導入することができる。
上記効果を充分に得る観点から、脂質二分子膜30を構成する脂質分子の総質量に対する、カチオン性脂質分子又はアニオン性脂質分子の含有量は5質量%以上であることが好ましい。また、脂質二分子膜30の安定性を維持する観点から、上記含有量は40質量%以下であることが好ましい。なお、残部は中性脂質分子が構成する。
図1,2に示す脂質二分子膜基板1において、微小井戸20の底部には第一溶液22に接触する電極40が備えられており、微小井戸20の外部には第二溶液24に接触する対向電極41が備えられている。例えば、電極対間の電位差や、脂質二分子膜30を透過する電流(イオン流)等を計測することにより、凹部32及び凸部34に導入された膜タンパク質について、電気化学的な機能解析を行うことができる。電極40,41の材料としては、例えば、銀/塩化銀、金、白金などが挙げられる。脂質二分子膜基板1において、電極は微小井戸20の内部又は外部の何れか一方のみに備えられていてもよい。
脂質二分子膜で覆われた微小井戸内外の電位差、あるいは脂質二分子膜を透過する電流を計測する事により、脂質二分子膜に導入した膜タンパク質の機能解析が可能である。
図1,2に示す脂質二分子膜基板1において、微小井戸20の内部の第一溶液22には、蛍光分子23が含まれている。蛍光分子(蛍光プローブ)23としては、例えば、微小井戸20の内部の状態変化が起こった場合に蛍光を発する水溶性のものが挙げられる。蛍光分子の蛍光強度変化を計測する事により、脂質二分子膜に導入した膜タンパク質の機能解析が可能である。
蛍光分子の具体例としては、微小井戸20の内部のCa2+イオン濃度の変化に伴い蛍光強度が変化する、Fluo4、Quin2等が挙げられる。凹部32及び凸部34にCa2+イオン透過性の膜タンパク質を導入した場合、その膜タンパク質を介してCa2+イオンが脂質二分子膜30を透過し、微小井戸20内のCa2+イオン濃度が変化すると、蛍光分子からの蛍光強度が変化する。この変化を蛍光顕微鏡等によって検出することにより、膜タンパク質の機能を解析することができる。
[第一実施形態]
本発明の脂質二分子膜基板の製造方法の第二実施形態は、図1を参照して、微小井戸20が形成された基板10の表面を構成する薄膜層11に第一溶液22を滴下し、第一溶液22を微小井戸20の内部に充填し、且つ第一溶液22で基板10の表面を覆う工程と、基板10の表面(薄膜層11)を覆う第一溶液22に巨大脂質膜ベシクルを添加し、基板10の表面で前記巨大脂質膜ベシクルを展開させることにより、微小井戸20の開口部21を脂質二分子膜30で覆う工程と、微小井戸20の外部にある第一溶液22を、該第一溶液の浸透圧よりも低い浸透圧を有する第二溶液24(低張液)に変えることにより、脂質二分子膜30で隔てられた微小井戸20の内部と外部との間に浸透圧差を生じさせ、微小井戸20の開口部21において、微小井戸20の外部に向かって脂質二分子膜30を膨らませ、前記開口部を覆う前記脂質二分子膜における秩序液体相及び/又は無秩序液体相の相状態を制御する工程と、を有する。この一連の工程を経ることにより、図1に示す脂質二分子膜基板1Aが得られる。
浸透圧差によって微小井戸20の外部から内部へ第二溶液24の溶媒が移動するにつれて、第一溶液22の濃度が減少して浸透圧差が減少し、同時に第一溶液22の体積が増加し、開口部21を覆う脂質二分子膜30が微小井戸20の外部へ膨らむ。凸部34を構成する脂質二分子膜の変形に伴って上昇する負荷と浸透圧差が釣り合うと、溶媒の移動と脂質二分子膜30の膨らみが停止する。
本発明の脂質二分子膜基板の製造方法の第一実施形態は、図2を参照して、微小井戸20が形成された基板10の表面を構成する薄膜層11に第一溶液22を滴下し、第一溶液22を微小井戸20の内部に充填し、且つ第一溶液22で基板10の表面を覆う工程と、基板10の表面(薄膜層11)を覆う第一溶液22に巨大脂質膜ベシクルを添加し、基板10の表面で前記巨大脂質膜ベシクルを展開させることにより、微小井戸20の開口部21を脂質二分子膜30で覆う工程と、微小井戸20の外部にある第一溶液22を、該第一溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二溶液24(高張液)に変えることにより、脂質二分子膜30で隔てられた微小井戸20の内部と外部との間に浸透圧差を生じさせ、微小井戸20の開口部21において、微小井戸20の内部に向かって脂質二分子膜30を凹ませ、前記開口部を覆う前記脂質二分子膜における秩序液体相及び/又は無秩序液体相の相状態を制御する工程と、を有する。この一連の工程を経ることにより、図2に示す脂質二分子膜基板1Bが得られる。
浸透圧差によって微小井戸20の内部から外部へ第一溶液22の溶媒が移動するにつれて、第一溶液22の濃度が上昇して浸透圧差が減少し、同時に第一溶液22の体積が減少し、開口部21を覆う脂質二分子膜30が微小井戸20の内部に陥入する。凹部32を構成する脂質二分子膜の変形に伴い上昇する負荷と、浸透圧差が釣り合うと、溶媒の移動と脂質二分子膜30の陥入が停止する。
第一実施形態の脂質二分子膜基板1Aを以下の方法で製造した。
基板10の材料としてシリコン基板を用いた。基板10の上面に、120nmの厚さのシリコン酸化膜層(薄膜層)11を、熱酸化法により形成した。さらに、フォトリソグラフィ法とドライエッチング法を用いて、円形状の開口部(直径2μm又は4μm)を持つ微小井戸20を形成した。その深さは、1μmとした。さらに、水酸化カリウム溶液(濃度:10重量%)により、シリコン酸化膜層11の下に配置された基板10を、選択的にエッチングすることにより、微小井戸20の開口部21の四隅にオーバーハング部11aを形成した。
脂質二分子膜30を以下の方法で形成した。
まず、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)(30モル%)とジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)(40モル%)とコレステロール(30モル%)との混合クロロホルム溶液(濃度2.5mM、秩序液体相用蛍光ラベル剤としてローダン(Laurdan;6-Dodecanoyl-2-Dimethylaminonaphthalene)を0.2モル%添加、無秩序液体相用蛍光ラベル剤としてローダミン‐ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(Rhod−DPPE)を0.05モル%添加)を調製した。
続いて、ITO基板(ガラス上に膜厚100nmのITO薄膜が成膜された基板、サイズ40×40mm)上に、前記混合クロロホルム溶液200μLを均一に塗布した。この基板を、室温で2時間、減圧乾燥して、クロロホルム溶媒を完全に除去することで、均一な脂質分子薄膜をITO基板上に形成した。その上に、サイズ20×20mmでくり貫いた窓部を有するシリコーンゴム(外寸30×30mm、厚さ1mm)を密着して配置し、窓部に200mMのスクロース水溶液500μLを滴下した。さらに、その上部にITO基板を配置し、シリコーンゴムの窓部に滴下した溶液をITO基板で挟み込んだ。続いて、ITO基板にクリップ電極を接合し、室温で交流電場(正弦波、1V、10Hz)を2時間印加することで、電界形成法により巨大脂質膜ベシクルのスクロース分散液を作製した。
図3に示すように、得られた巨大脂質膜ベシクルには、秩序液体相30aと無秩序液体相30bに分離したドメイン構造が形成されていた。励起波長559nmを使用してベシクルの蛍光観察を行ったため、無秩序液体相30b中のローダミン分子の蛍光のみが観測されている。
前述のようにして作製した、微小井戸20を有する基板10の上に、第一溶液22(200mMグルコース,5mM塩化カルシウムの溶液)50μLを滴下した。さらに、前記巨大脂質膜ベシクルのスクロース分散液1μLを第一溶液22中に滴下して、2分間静置することで巨大脂質膜ベシクルを基板10の表面を構成するシリコン酸化膜層11上に展開し、脂質二分子膜30を得た。球状構造を有するベシクルは基板10に衝突し、その球状構造が破壊されることで微小井戸20の開口部21を覆うように脂質二分子膜を形成すると考えられる。その時の蛍光観察像を図4に示す。無秩序液体相30bを標識するRhod−DPPEに由来する蛍光が脂質二分子膜で覆われた微小井戸20aの開口部に観察された。秩序液体相にはRhod−DPPEが存在しないため薄膜層11表面は秩序液体相30aで覆われていることが観察された。
図5に、このときの脂質二分子膜基板の模式的な断面図を示す。ここに示すような構成を有する脂質二分子膜30が得られたことが推定された。すなわち、開口部21は無秩序液体相30bが覆い、その周囲である薄膜層11の表面を秩序液体相30aが覆い、各相が分離した構造を形成していると推定された。
膜層)、11a…オーバーハング部、20…微小井戸、21…開口部、22…第一溶液、
23…蛍光分子(蛍光プローブ)、24…第二溶液、30…脂質二分子膜(脂質二重膜)
、30a…秩序液体相、30b…無秩序液体相、32…凹部、34…凸部、40…電極、41…対向電極
Claims (7)
- 基板に微小井戸が形成され、該微小井戸の開口部が脂質二分子膜によって覆われている脂質二分子膜基板において、
前記微小井戸の前記開口部の周縁において、前記開口部を狭める方向に延びるオーバーハング部が配置されており、
前記脂質二分子膜が、秩序液体相及び無秩序液体相の2つの相状態を有し、
前記微小井戸の内部を満たして前記脂質二分子膜に接している第一溶液と、
前記微小井戸の外部で前記脂質二分子膜に接し、該脂質二分子膜を覆っている第二溶液と、を備え、
前記第二溶液は、前記第一溶液の浸透圧よりも低い浸透圧を有し、
前記脂質二分子膜は、前記開口部において前記微小井戸の外部に向かって膨らんでいることを特徴とする脂質二分子膜基板。 - 基板に微小井戸が形成され、該微小井戸の開口部が脂質二分子膜によって覆われている脂質二分子膜基板において、
前記微小井戸の前記開口部の周縁において、前記開口部を狭める方向に延びるオーバーハング部が配置されており、
前記脂質二分子膜が、秩序液体相及び無秩序液体相の2つの相状態を有し、
前記微小井戸の内部を満たして前記脂質二分子膜に接している第一溶液と、
前記微小井戸の外部で前記脂質二分子膜に接し、該脂質二分子膜を覆っている第二溶液と、を備え、
前記第二溶液は、前記第一溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有し、
前記脂質二分子膜は、前記開口部において前記微小井戸の内部に向かって凹んでいることを特徴とする脂質二分子膜基板。 - 前記微小井戸の内部に電極が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の脂質二分子膜基板。
- 前記第一溶液中に蛍光分子が含まれていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の脂質二分子膜基板。
- 前記脂質二分子膜が正電荷を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の脂質二分子膜基板。
- 微小井戸が形成された基板の表面に第一溶液を滴下し、前記第一溶液を前記微小井戸の内部に充填し、且つ前記基板の表面を前記第一溶液で覆う工程と、
前記基板の表面を覆う前記第一溶液に巨大脂質膜ベシクルを添加し、前記基板の表面で前記巨大脂質膜ベシクルを展開させることにより、前記微小井戸の開口部を脂質二分子膜で覆う工程と、
前記微小井戸の外部にある前記第一溶液を、該第一溶液の浸透圧よりも低い浸透圧を有する第二溶液に変えることにより、前記脂質二分子膜で隔てられた前記微小井戸の内部と外部との間に浸透圧差を生じさせ、前記微小井戸の開口部において、前記微小井戸の外部に向かって前記脂質二分子膜を膨らませ、前記開口部を覆う前記脂質二分子膜における秩序液体相及び/又は無秩序液体相の相状態を制御する工程と、を有し、
前記微小井戸の前記開口部の周縁において、前記開口部を狭める方向に延びるオーバーハング部が配置されている、脂質二分子膜基板の製造方法。 - 微小井戸が形成された基板の表面に第一溶液を滴下し、前記微小井戸の内部に前記第一溶液を充填し、且つ前記基板の表面を前記第一溶液で覆う工程と、
前記基板の表面を覆う前記第一溶液に巨大脂質膜ベシクルを添加し、前記基板の表面で前記巨大脂質膜ベシクルを展開させることにより、前記微小井戸の開口部を脂質二分子膜で覆う工程と、
前記微小井戸の外部にある前記第一溶液を、該第一溶液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する第二溶液に変えることにより、前記脂質二分子膜で隔てられた前記微小井戸の内部と外部との間に浸透圧差を生じさせ、前記微小井戸の開口部において、前記微小井戸の内部に向かって前記脂質二分子膜を凹ませ、前記開口部を覆う前記脂質二分子膜における秩序液体相及び/又は無秩序液体相の相状態を制御する工程と、を有し、
前記微小井戸の前記開口部の周縁において、前記開口部を狭める方向に延びるオーバーハング部が配置されている、脂質二分子膜基板の製造方法。
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