JP5917420B2 - 基板、前記基板を生体分子の機能測定に使用する方法、及び前記基板の製造方法 - Google Patents

基板、前記基板を生体分子の機能測定に使用する方法、及び前記基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、生体分子の機能測定に有用な基板、前記基板を生体分子の機能測定に使用する方法、及び前記基板の製造方法に関する。
基板に、タンパク質、核酸、糖鎖、脂質、細胞等を備えたバイオチップが、新薬探索(Drug Discovery)や創薬において盛んに利用されている。タンパク質の中でも、細胞膜においてレセプターやチャネルとして機能する膜タンパク質が、創薬標的として非常に注目されている。2000年度の米国における医薬の売り上げトップ20のうち、膜タンパク質(GPCR,イオンチャネルを含む)を標的とする医薬が約50%を占めている(非特許文献1参照)。膜タンパク質の重要性は今後も益々高まると考えられ、種々の膜タンパク質の機能測定を行うことが可能な実験系やバイオチップの開発は非常に重要である。
しかしながら、創薬標的となるような膜タンパク質は巨大で複雑な構造を有しており、細胞膜(脂質二分子膜)の中でのみ本来の機能を示す。このため、正常な機能を維持した状態で膜タンパク質をバイオチップ等のin vitro測定系に組み込むための技術開発が進められている。この測定系の一例として、脂質分子をn−デカンなどの有機溶媒に溶解し、水溶液中でその有機溶媒をプラスチック板等に設けられた小穴に塗りつけることにより黒膜を形成し、形成した黒膜に膜タンパク質を融合させた測定系を準備し、この測定系において、膜タンパク質の電解質溶液中におけるイオン透過性の変化を電流の変化として計測する技術が知られている(例えば非特許文献2)。
しかしながら、上述の黒膜化法では下記のような問題がある。
1)脂質分子を溶解している有機溶媒は高沸点であるため、膜形成後も残留してしまう。
2)小穴に塗りつけた脂質溶液の自発的膜形成に頼るため、形成された膜は脂質二分子膜とその周囲を取り囲む環状バルク層との混合状態であり、小穴全面を均一な脂質二分子膜で覆うことが困難である。
3)測定のたびに小穴を手作業で作成する必要があるため、穴の径が不均一で、測定結果にばらつきが生じてしまう。
通常、細胞膜は全面が脂質二分子膜で形成されており、その中で膜タンパク質は機能している。残留有機溶媒や脂質二分子膜の不均一性は、膜タンパク質の機能又は形態に影響を与える可能性がある。このため、膜タンパク質の機能を正確に測定するためには、従来よりも細胞膜に近い状態、つまり、全面が脂質二分子膜で覆われた系における測定が必要である。また、測定毎の結果のばらつきを解消するためには、均一な穴径の小穴を複数作製することが望ましい。それによって、一度の測定で多点計測が可能になり、測定結果のばらつきを容易に平均化することが可能になる。
そこで、本発明者らは、基板に設けた微小穴(マイクロキャビティ)の開口部をオーバーハング形状にして、その開口部を覆うように、膜タンパク質を含む脂質二分子膜を展開した構成を、上記問題を改善する技術として過去に提案している(特許文献1)。この構成を作製するため脂質二分子膜の材料として、均一な脂質二分子膜から成る巨大ベシクルを用いているため、残留溶媒や膜の不均一性の問題が解決されている。また、基板上に複数の微小穴をアレイ化しているため、測定結果を平均化することが可能であり、迅速かつ高感度な測定が可能になる。このような基板は、in vivoに類似した条件下でのin vitro測定系を実現するものとして期待されている(例えば、特許文献1、非特許文献3)。また、固体基板上に微小穴を有する構造は、膜タンパク質の機能を利用するバイオセンサへの応用も期待されている(例えば、非特許文献4)。
特開2008−275481号公報
Drews J. Science, 287: 1960-1964 (2000) 「新パッチクランプ実験技術法」岡田泰伸 編 (2001年,吉岡書店) K. Sumitomo et al. Applied Physics Express Vol. 3, 107001 (2010) K. Sumitomo et al. NTT Technical Review Vol. 4, No.9 pp40-47
特許文献1に示すような基板を用いて、少量の膜タンパク質の機能を、感度良く、定量的に測定するためには、マイクロキャビティを覆う脂質二分子膜をより安定化する必要がある。また、基板に配置された脂質二分子膜に膜タンパク質を効率よく挿入するとともに、S/N比を向上させるためには、マイクロキャビティの開口部のサイズが大きい方が望ましい。しかしながら、その開口部のサイズを大きくすると脂質二分子膜の被覆効率や安定性が低下してしまうという問題点がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、マイクロキャビティの開口部を覆う脂質二分子膜の安定性をより向上させることが可能な基板、その基板を生体分子の機能測定に使用する方法、及びその基板の製造方法の提供を目的としている。
[1] マイクロキャビティを有する基板本体と、前記基板本体上に積層され、前記マイクロキャビティの開口部を覆う支持層とが少なくとも備えられ、前記開口部の上方に、前記支持層を貫通する複数の微小孔が設けられていることを特徴とする基板。
前記基板には、マイクロキャビティの開口部に微小孔(以下、ナノホールと呼ぶことがある。)を有する支持層が存在する。このマイクロキャビティの開口部のサイズ(直径)が従来よりも大きい場合においても、支持層が脂質二分子膜を支持するため、前記開口部を被覆する脂質二分子膜を安定化することができる。また、当該支持層によって脂質二分子膜を充分に支持することにより、脂質二分子膜を配置した基板におけるマイクロキャビティ内外の浸透圧変化や当該基板を運搬する際の振動等の影響も受け難くなる。
前記開口部の1μm 当たり、2〜400個の前記微小孔が設けられていることが好ましい。
前記開口部の口径面積に対する前記複数の微小孔の合計の口径面積が、1〜60%であることが好ましい。
[2] 前記支持層及び前記複数の微小孔の上に、脂質二分子膜が配置されていることを特徴とする前記[1]に記載の基板。
この構成によれば、前記基板のマイクロキャビティ上で脂質二分子膜が支持層に支えられていることにより、当該脂質二分子膜の安定性が向上している。更に、当該支持層によって支えられた脂質二分子膜は、細胞膜を模した均一な膜構造を形成し易い。このように優れた特性を有する脂質二分子膜は、細胞膜の様にマイクロキャビティの内部と外部を隔てることができるため、例えば膜タンパク質の機能解析に有用である。
[3] 前記脂質二分子膜の前記複数の微小孔を覆っている部分に、膜タンパク質が含まれていることを特徴とする前記[2]に記載の基板。
この構成によれば、膜安定性が向上した脂質二分子膜において、当該膜タンパク質の機
能を生理的な状態で解析することができる。
[4] 前記マイクロキャビティ内に蛍光物質が配置されていることを特徴とする前記[2]又は[3]に記載の基板。
この構成によれば、脂質二分子膜でシールされたマイクロキャビティ内の状態を当該蛍光物質によって調べることができる。また、当該脂質二分子膜により、当該蛍光物質がマイクロキャビティの外部へ流出することを抑制できる。
[5] 前記マイクロキャビティ内に電極が配置されていることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の基板。
この構成によれば、脂質二分子膜でシールされたマイクロキャビティ内の状態を当該電極によって、マイクロキャビティ内外の電位差又は電流値の変化として検出することができる。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の基板を生体分子の機能測定に使用する方法。
この使用方法においては、前記基板の脂質二分子膜が支持層により安定化されているため、当該脂質二分子膜に配置した生体分子の機能測定を従来よりも容易に、高感度で行うことができる。また、従来よりもサイズが大きい脂質二分子膜を使用できるため、測定データのS/N比を向上させることができる。
[7] 前記[1]に記載の基板の製造方法であって、基板本体の第一面に支持層を積層し、前記支持層のうち、前記基板本体に形成されるマイクロキャビティが接する領域に複数の微小孔を形成し、前記複数の微小孔を通して、前記基板本体の第一面をエッチングすることにより、前記複数の微小孔の直下に前記マイクロキャビティを形成することを特徴とする基板の製造方法。
この製造方法によれば、予めマイクロキャビティが形成された基板表面に支持層を形成する場合と比べて、支持層の形成が容易である。また、この製造方法によれば、支持層に形成した微小孔(ナノホール)の直下にマイクロキャビティを形成することが可能であり、微小孔とマイクロキャビティの位置がずれたり、微小孔が非貫通孔になることがない。この結果、当該基板の製造効率を向上させることができる。
[8] 前記[1]に記載の基板の製造方法であって、基板本体の第一面の上部に導電層を積層し、前記導電層が配置された前記基板本体の第一面上に絶縁層及び支持層をこの順で積層し、
前記支持層のうち、前記絶縁層に形成されるマイクロキャビティが接する領域に複数の微小孔を形成し、前記複数の微小孔を通して、前記絶縁層の上面をエッチングすることにより、前記複数の微小孔の直下に前記マイクロキャビティを形成し、前記マイクロキャビティの底部に前記導電層の少なくとも一部を露出させることを特徴とする基板の製造方法。
この製造方法によれば、マイクロキャビティの底部に電極として機能可能な導電層が配置された基板を容易に製造することができる。また、この製造方法によれば、予めマイクロキャビティが形成された基板表面に支持層を形成する場合と比べて、支持層の形成が容易である。また、この製造方法によれば、支持層に形成した微小孔(ナノホール)の直下にマイクロキャビティを形成することが可能であり、微小孔とマイクロキャビティの位置がずれたり、微小孔が非貫通孔になることがない。この結果、当該基板の製造効率を向上させることができる。
本発明の基板によれば、マイクロキャビティの第一面(上面)に微小孔(ナノホール)を有する支持層が存在するため、マイクロキャビティの開口部のサイズ(直径)が従来よりも大きい場合においても、当該開口部を脂質二分子膜で被覆することができる。また、当該支持層によって脂質二分子膜を充分に支持することにより、脂質二分子膜の安定性が向上し、浸透圧やpH等の化学的な変化や、振動等の物理的な衝撃に対する脂質二分子膜の耐性を向上させることができる。膜安定性が向上した脂質二分子膜に、例えば膜タンパク質を配置することによって、当該膜タンパク質の機能解析を安定に行えるようになり、信頼性の高いデータを得ることができる。
本発明にかかる脂質二分子膜基板の第一実施形態の模式的な上面図および断面図である。 本発明にかかる脂質二分子膜基板の第二実施形態の模式的な断面図である。 本発明にかかる脂質二分子膜基板の第三実施形態の模式的な断面図である。 ナノホールを有する支持層が設けられたマイクロキャビティの開口部の一部を上方から観察した電子顕微鏡像である。 ナノホールを有する支持層が設けられたマイクロキャビティの断面を観察した電子顕微鏡像である。 ナノホールを有する支持層が設けられたマイクロキャビティの断面を観察した電子顕微鏡像である。 実施例1で作製した脂質二分子膜基板の上面の蛍光観察像である。
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されない。
<第一実施形態>
図1に示すように、本発明の第一実施形態の基板として、脂質二分子膜基板1が挙げられる。脂質二分子膜基板1においては、基板本体10にマイクロキャビティ20が設けられ、マイクロキャビティ20の開口部25及び基板本体の第一面10a(上面10a)が支持層11によって覆われ、更に支持層11が脂質二分子膜30によって覆われている。
マイクロキャビティの開口部25を覆う支持層11には、支持層11の厚み方向に貫通する複数の微小孔21(ナノホール21)が設けられている。ナノホール21はマイクロキャビティ20の内部と外部を連通しているが、脂質分子膜30及び膜タンパク質31によって前記内部と外部とが隔てられている。
マイクロキャビティの開口部25を覆う支持層11に設けられるナノホール21の数は、マイクロキャビティ1個当たり、1個でもよいが、2個以上であることが好ましい。図1の例では、1個の開口部25を覆う支持層11に20個のナノホール21が設けられている。ナノホール21の数は、開口部25の面積とナノホール21の大きさ(口径)に応じて適宜設定すればよく、通常、2〜400個/μm程度が好ましく、5〜100個/μm程度がより好ましく、10〜25個/μm程度が更に好ましい。また、1個のマイクロキャビティの開口部25の口径面積に対する複数のナノホール21の合計の口径面積が占める割合は特に制限されないが、例えば1〜60%が好ましく、10〜40%がより好ましく、20〜25%が更に好ましい。
1個のナノホール21の口径は特に制限されないが、極端に小さいと、マイクロキャビティ20の内部に測定用の溶液22(マイクロキャビティ充填用水溶液22)等を注入することが困難になる。また、ナノホール21の口径が極端に大きいと、当該ナノホール21を有する支持層11の構造的強度が弱まる可能性がある。このような事情と脂質二分子膜の形成の容易さを考慮して、通常、ナノホール21の口径は、15nm〜10000nmが好ましく、30nm〜500nmがより好ましく、100nm〜300nmが更に好ましい。なお、1個のマイクロキャビティの開口部25に配置される複数のナノホール21の口径は、全て同一であってもよいし、それぞれ独立に異なっていてもよい。
ナノホール21の開口部(開口)の形状は特に制限されず、通常は、製造が容易な略円形又は略楕円形で構わない。複数のナノホール21の開口部の形状は、全て同一であってもよいし、それぞれ独立に異なっていてもよい。
ナノホール21の長さ、即ちナノホールを設ける支持層11の厚さは特に制限されず、例えば1nm〜1000nmが好ましく、50nm〜300nmがより好ましく、100〜150nmが更に好ましい。
ナノホール21が形成される支持層11の厚さは薄いほど好ましい。この理由は、マイクロキャビティの内部に注入した蛍光物質を励起するために、ナノホール21を通してマイクロキャビティの外部から内部へ励起光を照射する場合、ナノホール21の口径が励起光の波長よりも小さくても、支持層11の厚さが薄い場合には、当該励起光の少なくとも一部をマイクロキャビティの内部へ透過させることができるからである。励起光が減衰しつつもナノホールを透過可能であることは、本発明者らが実験的に確認している。
ただし、支持層11の厚さが極端に薄くなると、その構造的強度が弱まる可能性がある。このような事情を考慮すると、上述した厚さの範囲が好ましい。
ナノホール21を形成する支持層11の材料は特に制限されず、従来公知のスパッタ法、CVD法等の成膜の技術分野で用いられる材料が適用可能である。このような材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタル等が挙げられる。また、支持層11は、基板本体10の表面を酸化させることによって形成された層であってもよい。このような支持層は、例えば基板本体の材料としてシリコン基板を用い、その第一面(上面)を熱酸化させることにより形成できる。
本実施形態において、マイクロキャビティ20の開口部25の形状は特に限定されない。
開口部25を上面側から見た場合の形状としては、例えば円形、楕円形、三角形、矩形、多角形等の形状が挙げられる。
マイクロキャビティ20の開口部25の口径(直径)または開口部25を構成する多角形の一辺は特に制限されないが、0.1μm〜10μm程度が好ましい。
上記範囲の下限値0.1μm以上とすることにより、脂質二分子膜30内に充分な量の膜タンパク質31を配置し、当該膜タンパク質の機能をより容易に測定することができる。また、支持層11が設けられていない場合(従来の基板)では、脂質二分子膜30が自重によって開口部25からマイクロキャビティ20の内部へ落ち込む可能性があるために、開口部25の口径を3μm以上にすることが困難であった。しかし、本実施形態においては開口部25を覆う支持層11が設けられているため、脂質二分子膜30の落ち込みが防止されているので、開口部25の口径を従来よりも大きくすることができる。この結果、脂質二分子膜30内の膜タンパク質31の機能測定をより容易に高感度で行うことができる。
マイクロキャビティ20の深さは特に制限されず、開口部25のサイズやマイクロキャビティ20の内部に充填する実験用の溶液22の体積に応じて適宜設計すればよい。前記深さは、例えば0.1μm〜10μmとすることができる。
基板本体10の材料は特に制限されず、例えば、シリコン、ガラス、プラスチックなどが挙げられる。また、基板本体10の厚みや形状は用途に応じて適宜調整すればよい。
脂質二分子膜30の脂質分子の種類は、脂質二分子膜(脂質二重膜)を形成できるものであれば特に制限されず、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールホスフェイト(PIP)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルグリセロール(PG)、スフィンゴ脂質などが挙げられる。これらの脂質は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
脂質二分子膜30の形成方法としては、例えば、その直径が10μm以上の巨大脂質ベシクルを支持層11上で展開する方法が挙げられる。
ベシクルを形成する代表的な従来手法としては、静置水和法やエレクトロスウェリング法(電解形成法)が例示できる。ベシクルの作製手法は特に限定されないが、巨大ベシクルを作製しやすく、反応時間や反応プロセスが簡易であるという観点から、電解形成法を採用することが好ましい。電解形成法は、酸化インジウムスズ(ITO)などの電極上に、リン脂質を薄膜化した後、交流電場をかけて水溶液中に巨大ベシクルを形成する手法である。サイズのそろったベシクルを得るためには、ITO基板上に厚さ数十nm〜数μmの均一なリン脂質分子の膜を形成することが好ましく、また、交流電場は数百mV〜2V程度の印加条件が好ましい。
本実施形態においては、マイクロキャビティ20の開口部25を覆う支持層11の上を被覆する脂質二分子膜30に、膜タンパク質31が配置されているため、脂質二分子膜基板1は膜タンパク質固定化基板1と読み換えてもよい。脂質二分子膜30はマイクロキャビティ20の外部にある外部溶液Lによって覆われている。例えば、外部溶液Lに医薬候補物質等を添加することにより、膜タンパク質31の機能を解析することができる。
脂質二分子膜30に、機能測定の対象である膜タンパク質31を再構成する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ベシクルフュージョン法が挙げられる。具体的には、プロテオリポソームと呼ばれる膜タンパク質31を含有するベシクルを、脂質二分子膜30上に添加することにより、プロテオリポソームと脂質二分子膜30が融合し、膜タンパク質31を脂質二分子膜30中に再構成することができる。
脂質二分子膜30に融合する膜タンパク質31としては、脂質二分子膜30に保持され、かつ、当該脂質二分子膜30を境界として、マイクロキャビティ20の内部と外部のイオン濃度を変化させる機能を有する膜タンパク質が好ましい。このような膜タンパク質31としては、例えば、イオンチャネル型受容体が挙げられる。
イオンチャネル型受容体としては、例えば、細胞間情報伝達や温度の感受、炎症や痛み
に関与するTRP(transient receptor potential)チャネル、細胞間情報伝達や痛みに関与するATP受容体、細胞間情報伝達や情動に関与するセロトニン受容体、細胞間情報伝達や興奮性神経伝達に関与するNMDA受容体、細胞間情報伝達や興奮性神経伝達に関与するAMPA受容体、細胞間情報伝達や興奮性神経伝達に関与するカイニン酸受容体、細胞間情報伝達や抑制性神経伝達に関与するGABA受容体等が挙げられる。
マイクロキャビティ20の内部および外部に電解質溶液を配置する場合、その電解質溶液は、膜タンパク質31を埋め込んだ脂質二分子膜30が安定に保持されるものが好ましい。前記電解質溶液としては、例えば、100mM NaCl, 5mM KCl, 2mM CaCl2, 10mM Tris-HCl (pH7.4)を含む水溶液などが挙げられる。前記内部と外部に配置する電解質溶液の組成は、同じであってもよく、異なってもよい。
<第二実施形態>
図2に示すように、本発明の第二実施形態の基板として、脂質二分子膜基板2が挙げられる。脂質二分子膜基板2は、第一実施形態の構成に加えて、マイクロキャビティ20の内部に蛍光物質23(蛍光分子23)が含まれている。
この構成以外は、前述した第一実施形態の脂質二分子膜基板1(膜タンパク質固定化基板1)と同様であるので、同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
以下に、第二実施形態の脂質二分子膜2が第一実施形態の脂質二分子膜基板1と相違する点を説明する。
蛍光物質23は、マイクロキャビティ20の内部の状態変化が起こった場合に蛍光を発する水溶性の蛍光分子であることが好ましい。前記蛍光分子としては、マイクロキャビティ20の内部のイオン濃度の変化に伴って、その蛍光強度が変化する蛍光分子がより好ましい。具体的には、例えば、カルシウムイオン濃度変化を検出可能なFluo-4、Fura-2、Fluo-3等を例示できる。
蛍光分子23を用いることによって、例えば脂質二分子膜30にイオン透過性の膜タンパク質31を配置して、その膜タンパク質31を介してマイクロキャビティ20の内外へイオンが流入又は流出した際、マイクロキャビティ20内の蛍光分子23の蛍光強度が変化したことを蛍光顕微鏡等によって検出することができる。
上記の様に、マイクロキャビティ20の開口部25を覆っている脂質二分子膜30に膜タンパク質31を配置し、マイクロキャビティ20内の蛍光強度の変化を測定することによって、脂質二分子膜30に配置された膜タンパク質31の機能をマイクロキャビティ20内の蛍光強度の変化として検出することができる。
<第三実施形態>
図3に示すように、本発明の第三実施形態の基板として、脂質二分子膜基板3が挙げられる。脂質二分子膜基板3は、第一実施形態の構成に加えて、マイクロキャビティ20の中に電極40を備え、マイクロキャビティ20の外部溶液Lの中に対向電極41を備えている。
この構成以外は、前述した第一実施形態の脂質二分子膜基板1(膜タンパク質固定化基板1)と同様であるので、同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
以下に、第三実施形態の脂質二分子膜基板3が第一実施形態の脂質二分子膜基板1と相違する点を説明する。
第三実施形態の脂質二分子膜基板3は、電気生理的手法を用いて膜タンパク質31の機能測定を行う目的に好適な膜タンパク質固定化基板3である。
膜タンパク質31の機能測定に際しては、マイクロキャビティ20の外部溶液Lに対向電極41を配置することが好ましい。電極40および対向電極41は、パッチクランプ測定装置に接続して使用することが好ましい。
例えば、膜タンパク質31としてイオンチャンネル型タンパク質を配置した場合には、イオンチャンネル型タンパク質を透過したイオン電流を電気計測計で計測することにより、膜タンパク質31の機能測定を行うことができる。
この例のように、マイクロキャビティ20の開口部25を覆っている脂質二分子膜30に膜タンパク質31を配置し、マイクロキャビティ20の内部と外部の電位差又は、マイクロキャビティの内部と外部の間に流れる電流を測定することによって、脂質二分子膜30に配置された膜タンパク質31の機能をマイクロキャビティ20内外の電位差又は電流値の変化として検出することができる。
電極40の配置方法としては、例えば、脂質二分子膜基板3の製造時に、スパッタリング等の成膜法によって金属層40を形成し、エッチング等により金属層40を適宜パターニングして、当該金属層40のうちマイクロキャビティ20の内部に露出する部分を除く領域を絶縁層13(第二の絶縁層13)で被覆することによって、電極40をマイクロキャビティ20の内部に露出するように埋め込んで配置することができる。ここで、金属層40を基板本体10に埋め込んで形成する場合、当該基板本体は絶縁性であることが必要である。この場合、基板本体の材料としては、シリコン酸化物やシリコン窒化物、アルミナ、酸化タンタル、レジスト膜等を用いることができる。また、基板本体10が半導体又は導電体である場合は、当該基板本体10の上面10aに第一の絶縁層12(基板絶縁層12)を形成し、その第一の絶縁層の上面12aに金属層40を配置すればよい。第一の絶縁層12及び第二の絶縁層13(堆積絶縁層13)の材料は特に制限されず、例えばシリコン酸化物やシリコン窒化物、アルミナ、酸化タンタル等が挙げられる。第一の絶縁層12と第二の絶縁層13を構成する材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
電極40の材料としては、銀、塩化銀や、金、白金などが例示できる。
<脂質二分子膜基板の製造方法>
本発明にかかる基板に脂質二分子膜を配置することによって、脂質二分子膜基板を製造することができる。その好適な方法を、図1を参照して説明する。
当該製造方法としては、充填工程及び脂質二分子膜形成工程を、この順で行う方法が好ましい。なお、本発明の趣旨を逸脱しない限り、ここで挙げた2つの工程以外の他の工程を追加しても良い。
[充填工程]
充填工程は、支持層の上面11aに水溶液を注いで、基板本体10に設けられたマイクロキャビティ20の中に前記水溶液を充填する工程である。
支持層の上面11aに注ぐ前記水溶液の組成は特に制限されず、例えば、グルコースと塩化カルシウムを含む水溶液Lが挙げられる。
支持層の上面11aに注ぐ水溶液Lの量は、マイクロキャビティ20を充填できる量であれば特に制限されないが、上面11aの上方に水溶液Lを溜めることが可能な量を注ぐことが好ましい。
支持層の上面11aに水溶液Lを注ぐ方法は特に制限されず、ピペット等で上面11aに前記水溶液を滴下した後、必要に応じて当該基板本体10および滴下した水溶液Lを超音波処理又は真空処理等することによって、マイクロキャビティ20から気泡を排出させて、マイクロキャビティ20の内部に当該水溶液Lを充填することができる。
[脂質二分子膜形成工程]
脂質二分子膜工程は、支持層の上面11a上にある水溶液Lに巨大ベシクルを添加し、前記巨大ベシクルを支持層11の上面11aに沈降させ、マイクロキャビティ20の近傍で前記巨大ベシクルを展開し、マイクロキャビティ20の開口部25及び該開口部25を覆う支持層11に設けられたナノホール21を脂質二分子膜30で覆う工程である。
巨大ベシクルは、前述のとおり公知の方法で調製したものを使用できる。巨大ベシクルの大きさ(直径)は、マイクロキャビティの開口部25よりも充分に大きいものであることが好ましく、例えば10μm以上の直径を有する巨大ベシクルを使用することができる。また、例えば10μm〜100μmの大きさの巨大ベシクルを使用できるが、この大きさの範囲に限定されず、他の大きさの巨大ベシクルを使用しても構わない。
巨大ベシクルを支持層の上面11a上にある水溶液Lに添加する方法は特に制限されず、例えば、巨大ベシクルを含むベシクル分散液を調製して、これをピペット等を用いて添加する方法が挙げられる。
前記ベシクル分散液における巨大ベシクルの濃度の目安としては、添加した巨大ベシクルが、支持層の上面11aの広い領域、例えば上面11aの80%以上の領域、を占有して拡がる程度の濃度であることが好ましい。例えば、0.1mM〜10mMの濃度で巨大ベシクルを含むベシクル分散液を使用することができるが、この濃度範囲に限定されず、他の濃度のベシクル分散液を使用しても構わない。
上記の様に、本発明にかかる基板の上面11aにある溶液に巨大ベシクルを添加し、前記巨大ベシクルを沈降させ、マイクロキャビティ20の近傍で前記巨大ベシクルを展開し、マイクロキャビティ20の開口部25を脂質二分子膜30で覆う方法によって、マイクロキャビティ20のサイズに依存せずに開口部25を均一な脂質二分子膜30で覆った脂質二分子膜基板を製造することができる。
また、当該脂質二分子膜30に膜タンパク質31を配置することにより、当該膜タンパク質31の機能を高感度で測定可能な膜タンパク質固定化基板を製造することができる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
図2で模式的に表された第二実施形態の脂質二分子膜基板2(膜タンパク質固定化基板2)の作製例を具体的に説明する。
<マイクロキャビティの形成>
基板本体10として、シリコン基板(Si(001)基板)を用いた。基板本体10の上面10aに、120nmの厚さの酸化シリコンからなる支持層11を熱酸化膜法により形成した。
次に、EB(電子線)リソグラフィ法によって、支持層11のナノホール21を形成する領域を改質し、その改質部をドライエッチング法によって除去して、開口が円形状のナノホール21を複数形成し、4×5個に配列したグリッドパターンを形成した(図1参照)。各ナノホール21の開口の直径は、約100nm、約200nm又は約300 nmの何れかのサイズであった。各ナノホール21を形成するための前記ドライエッチングは、基板本体の上面10aに到達するまで行った。
次に、複数のナノホール21からなる前記パターンをマスクとして機能させて、SF6を用いたドライエッチングにより基板本体の上面10aに深さ2μmの円柱状の井戸を形成した。続いて、KOH水溶液(10重量%、60℃)に当該基板本体を浸漬させて、10分間、シリコンからなる基板本体10を選択的にウェットエッチングすることにより、前記井戸を幅方向及び縦方向に拡張した。この結果、複数のナノホール21からなる前記パターンが設けられた支持層11の下部に、1個のマイクロキャビティ20を形成した。このマイクロキャビティ20のサイズは、上面から見ると縦4μm、横4μmの四角形であり、側面(基板本体の厚さ方向に切った断面)から見た高さ(深さ)は最大で約4μmであった。また、その側面から見たマイクロキャビティ20の輪郭は変形した五角形(図5参照)または六角形(図6参照)であった。
図5,6の電子顕微鏡写真から理解されるように、マイクロキャビティ20の最深部の断面の輪郭は前記五角形(図5)であり、最深部を外れた位置の断面の輪郭は前記六角形(図6)であった。マイクロキャビティ20の全体の立体形状は、正八面体からその上端の頂点を含む三角錐を切り取った様な(上端が欠けた様な)変形した九面体であった。この九面体の下端の頂点がマイクロキャビティ20の最深部に相当する。よって、最深部の頂点を含む前記断面の輪郭は前記五角形となり、その頂点を含まない断面の輪郭は前記六角形になる。本発明にかかる製造方法によって形成したマイクロキャビティ20の立体形状は、通常、ここで説明したような変形した九面体になる傾向がある。
このように、ナノホール21が形成された支持層11をマスクとして機能させて、ドライエッチング法及びウェットエッチング法を組み合わせて用いることにより、ナノホール21の下部の基板本体10を選択的にエッチングして、ナノホール21が形成された支持層11で覆われたマイクロキャビティ20を形成することができた。
本発明にかかる基板の具体的な作製例について、ナノホール21が設けられたマイクロキャビティ20の開口部を上方から観察した電子顕微鏡像を図4に示す。図4において、7個のナノホール21が支持層11に形成されている様子がわかる。
また、複数のナノホール21が備えられたマイクロキャビティ20の断面を観察した電子顕微鏡像を図5に示す。
<巨大ベシクルの準備>
脂質二分子膜30は巨大ベシクルを支持層11の上で展開することで形成した。脂質二分子膜の展開に用いた巨大ベシクルは、以下のようにして形成した。
ジフィタニルホスファチジルコリン(DPhPC)(80モル%)とコレステロール(20モル%)の混合クロロホルム溶液(濃度2.5mM)を調製した。続いて、表面に膜厚100nmのITOが薄膜化されたガラス基板(サイズ40×40mm、50〜100Ω/cm)上に、前記クロロホルム溶液200μLを均一に塗布した。この基板を、室温で2時間、減圧乾燥して、クロロホルム溶媒を完全に除去することによって、均一なリン脂質薄膜をITO基板上に形成した。次に、そのリン脂質薄膜の上に、窓部を有するシリコーンゴムを密着して配置した。この窓部は、外寸30×30mm、厚さ1mmのシリコーンゴムを20×20mmのサイズでくり貫いて形成されている。続いて、この窓部に200mMのスクロース水溶液を400μL滴下し、さらに、そのスクロース水溶液の上部にITO基板を配置し、シリコーンゴムの窓部にある溶液を2枚のITO基板で挟み込んで密閉した。続いて、各ITO基板にクリップ電極を接続し、60℃のホットプレート上で、交流電場(正弦波、1V、10Hz)を2時間印加することによって、電界形成法により巨大ベシクルを作製した。
<脂質二分子膜の形成>
マイクロキャビティ20を充填するための水溶液22として、塩化カルシウムを含む200mMグルコース水溶液を準備した。この充填用水溶液22を支持層の上面11aに滴下し、マイクロキャビティ20の内部に充填するとともに、支持層の上面11aの上部にも充分に溢れさせた。溢れさせた充填用水溶液22中に巨大ベシクルを添加し、更に巨大ベシクルを支持層11の上面11aに沈降させて、その上面11a上に巨大ベシクルを展開することにより脂質二分子膜30を形成した。
上記方法により、図2に示すマイクロキャビティ20を有する、脂質二分子膜基板2を作製した。なお、脂質二分子膜30に膜タンパク質31を配置した場合、本発明にかかる脂質二分子膜基板を膜タンパク質固定化基板と読み換えることができる。膜タンパク質31を脂質二分子膜30へ配置する方法は、前述した公知の方法を適用できる。
マイクロキャビティ20の内部に蛍光分子23としてカルセインを充填し、カルセインとは異なる色の蛍光を示すローダミンを含む脂質二分子膜30を基板10の支持層の上面11aに展開した場合の蛍光観察結果を、図7に示す。
ほぼ全面にローダミン由来の蛍光が観察されたことから、脂質二分子膜30が支持層の上面11aのほぼ全面に形成されていることがわかる。更に、マイクロキャビティ20aからは、カルセイン由来の蛍光が観察された。一方で、脂質二分子膜30で覆われていないマイクロキャビティ20bからは、カルセイン由来の蛍光は観察されなかった。
以上から、ナノホールを備えたマイクロキャビティ20の開口部が脂質二分子膜30で覆われたとき、マイクロキャビティ20の内部に蛍光色素23が保持されることが示された。図7の例における、脂質二分子膜30によるマイクロキャビティ20の被覆効率に関しては、1個のマイクロキャビティ20bが被覆されなかった以外は、7×7個のマイクロキャビティ配列の被覆(シール)に成功している。このことから、高効率かつ安定に脂質二分子膜30による複数のマイクロキャビティ20の被覆を実現していることがわかる。上記の方法で作製した脂質二分子膜基板に膜タンパク質を配置することによって、膜タンパク質固定化基板を作製することができる。
[実施例2]
第二実施形態の脂質二分子膜基板2(膜タンパク質固定化基板2)の別の作製例を、図2の模式図を参照して具体的に説明する。
本実施例においては、膜タンパク質31としてα−ヘモリシンを脂質二分子膜30に配置した。また、この膜タンパク質固定化基板2のマイクロキャビティ20の内部に、イオンの流入により蛍光強度が変化する蛍光分子23を配置した。これらの構成以外は、前述した実施例1と同様であるので、同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
以下に、実施例2の膜タンパク質固定化基板2が実施例1の膜タンパク質固定化基板2と相違する点を説明する。
マイクロキャビティ20の内部には、カルシウムイオンの濃度によって蛍光強度が変化する蛍光色素Fluo4を最終濃度で10μMとなるように含む水溶液を充填し、脂質二分子膜30をナノホール21を備えたマイクロキャビティの開口部25に展開し、脂質二分子膜基板2を得た。
得られた脂質二分子膜基板2を用いて、脂質二分子膜30にα−ヘモリシンを配置することによって、カルシウムイオンが透過する膜貫通チャネル(膜タンパク質31)を形成させた膜タンパク質固定化基板2を得た。これを用いて、マイクロキャビティ20の外部の水溶液Lを1mM塩化カルシウム水溶液に置換したときのFluo4の蛍光強度変化を測定することにより、α−ヘモリシンを介したカルシウムイオンの膜透過を定量的に検出することができた。
[実施例3]
第三実施形態の脂質二分子膜基板3(膜タンパク質固定化基板3)の作製例を、図3の模式図を参照して具体的に説明する。
本実施例においては、イオンの流入を電気生理的手法によって検出するために、マイクロキャビティ20の内部に電極40を配置し、外部に対向電極41を配置した。この構成以外は、前述した実施例1及び実施例2と同様であるので、同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
以下に、実施例3の膜タンパク質固定化基板3が実施例1及び実施例2の膜タンパク質固定化基板2と相違する点を説明する。
まず、基板本体10(Siウエハー)の上面10aを被覆する厚さ200nmの熱酸化膜からなる第一の絶縁層12(基板絶縁層12)の上に、チタン、金、白金の順に堆積させた金属層を形成して、フォトリソグラフィ法により所定の電極形状にパターニングすることによって、厚さ約60nmの電極40(電極層40)を形成した。この電極40は、例えば約300μm四方の十分に大きなサイズのパッド部(不図示)を介して、外部の電気生理測定装置(不図示)へ接続することができる。
つぎに、電極40を形成した基板本体10の上に、第二の絶縁層13(堆積絶縁層13)として厚さ1μmのシリコン酸化膜をスパッタ法により成膜した。この第二の絶縁層13の上に、支持層11として厚さ100nmのシリコン窒化膜を熱CVD法により成膜した。
続いて、EBリソグラフィ法とドライエッチング法を組み合わせて、開口の直径が約100nmの複数のナノホール21が20×20個配列したナノホールアレイを形成した。支持層11にナノホールアレイを形成する際のドライエッチングは、当該ナノホールの先端が第二の絶縁層13(シリコン酸化膜)に到達するまで行った。さらに、フッ酸(濃度15%)を用いて、ナノホールアレイの下部の第二の絶縁層13をウェットエッチングすることによって、マイクロキャビティ20を形成した。このウェットエッチングは、マイクロキャビティ20の底面が電極40に到達するまで行った。このウェットエッチングの過程において、シリコン窒化膜(支持層11)とシリコン酸化膜(堆積絶縁層13)の間のエッチング選択性を利用することによって、マイクロキャビティ20の上面にナノホール21を構成する支持層11bを形成した。
本実施例において、マイクロキャビティ20と電極40の個数比は、1:1である。
本実施例の変形例として、1つの電極40に対して複数のマイクロキャビティ20を設けてもよいが、この構成の場合、当該1つの電極40で測定する際に、全てのマイクロキャビティ20を脂質二分子膜30で覆う必要があるため、測定準備や測定条件が煩雑となる。従って、一つの電極40には、一つのマイクロキャビティ20を形成することが望ましい。
次に、実施例1と同様に、マイクロキャビティ20の内部に水溶液22を充填し、支持層の上面11aにある水溶液22中に巨大脂質膜ベシクルを展開することにより、マイクロキャビティ20の開口部25及びナノホールアレイを脂質二分子膜30で覆った。さらに実施例2と同様に、支持層11上の脂質二分子膜30に膜タンパク質31としてα−ヘモリシンを配置して、膜タンパク質固定化基板3を得た。この基板を用いて、電極40と対向電極41の間に電圧を印加した時にその間に流れる電流を計測することで、α−ヘモリシンを介したイオンの膜透過を定量的に検出することができた。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
本発明にかかる基板は、生体分子の機能測定の分野に広く適用可能である。
1〜3…基板(脂質二分子膜基板、膜タンパク質固定化基板)、10…基板本体、10a…基板本体の第一面(上面)、11…支持層、11a…支持層の上面、11b…マイクロキャビティ上面の支持層、12…第一の絶縁層、12a…第一の絶縁層の上面、13…第二の絶縁層、20…マイクロキャビティ、20a…脂質二分子膜で覆われたマイクロキャビティ、20b…脂質二分子膜で覆われていないマイクロキャビティ、21…微小孔(ナノホール)、22…マイクロキャビティ充填用水溶液、23…蛍光物質、25…マイクロキャビティの開口部(開口)、30…脂質二分子膜、31…膜タンパク質、40…電極、41…対向電極、L…外部溶液

Claims (10)

  1. マイクロキャビティを有する基板本体と、
    前記基板本体上に積層され、前記マイクロキャビティの開口部を覆う支持層とが少なくとも備えられ、
    前記開口部の上方に、前記支持層を貫通する複数の微小孔が設けられていることを特徴とする基板。
  2. 前記支持層及び前記複数の微小孔の上に、脂質二分子膜が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板。
  3. 前記脂質二分子膜の前記複数の微小孔を覆っている部分に、膜タンパク質が含まれていることを特徴とする請求項2に記載の基板。
  4. 前記マイクロキャビティ内に蛍光物質が配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の基板。
  5. 前記マイクロキャビティ内に電極が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板。
  6. 前記開口部の1μm 当たり、2〜400個の前記微小孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板。
  7. 前記開口部の口径面積に対する前記複数の微小孔の合計の口径面積が、1〜60%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の基板を生体分子の機能測定に使用する方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板の製造方法であって、
    基板本体の第一面に支持層を積層し、
    前記支持層のうち、前記基板本体に形成されるマイクロキャビティが接する領域に複数の微小孔を形成し、
    前記複数の微小孔を通して、前記基板本体の第一面をエッチングすることにより、前記複数の微小孔の直下に前記マイクロキャビティを形成することを特徴とする基板の製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板の製造方法であって、
    基板本体の第一面の上部に導電層を積層し、
    前記導電層が配置された前記基板本体の第一面上に絶縁層及び支持層をこの順で積層し、
    前記支持層のうち、前記絶縁層に形成されるマイクロキャビティが接する領域に複数の微小孔を形成し、
    前記複数の微小孔を通して、前記絶縁層の上面をエッチングすることにより、前記複数の微小孔の直下に前記マイクロキャビティを形成し、
    前記マイクロキャビティの底部に前記導電層の少なくとも一部を露出させることを特徴とする基板の製造方法。
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