JP6871575B2 - 生体分子移動制御方法およびデバイス - Google Patents

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Description

本発明は、生体分子移動制御方法およびデバイスに関する。
微量の分離対象物質を効率よく検出するためには、マイクロアレイが一般的に使われる。現在、ほとんどのマイクロアレイの作製には、固体基板表面に直接DNA、酵素、可水溶性タンパク質などを共有結合で固定化するという手法がとられている。DNAチップを代表とする、現在までに成功を収めている素子は、共有結合による固定化に際して、上記DNAなどの機能を維持できるものに限られている。
近年、マイクロアレイの材料として、膜タンパク質を代表とする膜関連生体分子を用いる試みが、精力的に行われている。このようなマイクロアレイの作製に際し、従来法である共有結合による固定化を膜関連生体分子について行った場合、膜関連生体分子の機能が失われることが多い。そこで、これを回避する方法の開発が重要な課題となっている。解決法の一つとして、生体膜を含む支持膜をマイクロアレイの固体基板表面に配置する手法が注目されている。自然界において効率よく特異的反応場として用いられている生体膜を、支持膜としてマイクロアレイの固体基板上に配置することで、より自然に近い環境を素子上へ実現し、これまで機能を維持した状態での固定化が難しかった膜タンパク質に代表される膜関連生体分子を、その機能を維持した状態で固体基板表面に担持することが可能になると期待されている。
このような支持膜は、固体基板表面に吸着していると共に、生体膜が有する最も重要な性質である流動性を維持している。そのため、上記生体膜は、膜関連生体分子の機能する場として最適な環境を与える。非特許文献1には、支持膜を用いた生体分子検出チップが記載されている。非特許文献1に記載の生体分子検出チップは、プラスチック、ガラス、シリコンなどの材料からなる固体基板の表面に、脂質分子などからなる支持膜を配置し、これら支持膜を隔壁で分離したものである。支持膜の流動性は、基板表面の支持膜に平行な電場を印可することにより、ゲルに担持されたタンパク質の電気泳動と同様に、支持膜に担持した生体分子を動かすことで証明されている。
非特許文献2には、生体分子が支持膜内で定常状態に達し、支持膜内を一定速度で移動するとき、電気泳動の際に受けるクーロン力、それとは反対方向に作用する対イオンのクーロン力、支持膜から受ける摩擦力、および支持膜外の水相から受ける抵抗力という4つの力が相殺され、釣り合った状態になることが記載されている。このとき、膜内の生体分子の濃度勾配や分離能は、外力と膜の流動性との競合となる。現在実現されている多くの支持膜実験系では、支持膜の流動性が外力に勝っており、外力がなくなった場合には速やかに均一な平衡状態へ移行する。
一方、支持膜内の特定の分子を、外場を利用して支持膜内で分離・分取するといった技術の要請が高まっている。この場合には、分子を分離しようとする外力と、分子を均一に分散させようとする流動性の競合を制御しなければならない。外場によって支持膜内に形成した生体分子の濃度勾配を維持できるように、支持膜の流動性を制御する技術が特に重要である。これによって、形成した濃度勾配が短時間で平衡状態へ移行するのを防ぎ、膜内で分離した生体分子を分取することが可能になる。
J. T. Groves and S. G. Boxer, " Micropattern Formation in Supported Lipid Membranes", Acc. Chem. Res., vol.35, pp. 149-157, 2002. M. Tanaka, J. Hermann, I. Haase, M. Fischer and S. G. Boxer, "Frictional Drag and Electrical Manipulation of Recombinant Proteins in Polymer-Supported Membrane", Langmuir, vol.23, pp.5638-5644, 2007. M. Tanaka, A. P. Wong, F. Rehfeldt, M. Tutus and S. Kaufmann, "Selective Deposition of Native Cell Membranes on Biocompatible Micropatterns", J. Am. Chem. Soc., vol.126, pp. 3257-3260, 2004.
従来、マイクロアレイの固体基板上に支持されている支持膜の流動性を制御するための手法として、例えば支持膜の成分を変える、固体基板を変える、電気泳動に用いる泳動槽の温度を変える、などの手法が提案・実証されている。
しかしながら、このような従来技術にもそれぞれ課題が指摘されている。例えば、生体膜の成分を変えると、担持する生体分子に最適な生体膜の構成成分を選択できない可能性がある。また、人工生体膜を利用する場合は、構成成分を変えることが困難であることが多い。一方、固体基板を変えた場合、支持膜内の膜関連生体分子との相互作用が生じ、膜関連生体分子の機能の維持を阻害する恐れがある。また、泳動槽の温度を変えた場合、生体膜の構成成分の相転移を促すことがあり、生体膜内の異なる成分の相分離を生じる可能性がある。また、膜タンパク質に代表される膜関連生体分子以外の、生体膜に担持される生体分子においても同様の課題が挙げられる。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、生体膜に担持される生体分子の機能を損なうことなく、当該生体分子の流動性を容易に制御できる生体分子移動制御方法およびデバイスを提供することを目的としている。
本発明の一態様は、固体基板と、固体基板の表面に支持された支持膜と、を有する生体分子移動制御基板を用い、支持膜は、脂質分子を構成材料とする生体膜と、生体膜に担持された生体分子と、を有し、生体分子移動制御基板を泳動液に浸漬させて、生体分子を電気泳動させるとき、生体分子の泳動液中での移動度と、泳動液の種類と濃度との少なくとも一方との関係に基づいて、泳動液の種類と濃度との少なくとも一方を制御し、前記泳動液として、第1泳動液と、前記第1泳動液よりも前記生体分子の移動度が高い第2泳動液とを用い、前記支持膜と接する前記泳動液の組成によって前記支持膜の流動性を変化させ、前記第1泳動液と前記第2泳動液とが境界面を形成するように前記第1泳動液と前記第2泳動液とを隣接させると共に、前記境界面と交差する方向に前記生体分子を電気泳動させる生体分子移動制御方法を提供する。
本発明の一態様においては、泳動液がイオン液体を含む方法としてもよい。
本発明の一態様は固体基板と、前記固体基板の表面に形成された流路と、前記流路の前記固体基板が露出した面に支持された支持膜と、を有する生体分子移動制御基板と、前記流路を流通する泳動液と、前記流路の内部に設けられた一対の電極と、を備え、前記支持膜は、脂質分子を構成材料とする生体膜と、前記生体膜に担持された生体分子と、を有し、前記流路は、第1流路と、第2流路と、前記第1流路および前記第2流路に接続される第3流路と、を有し、前記泳動液は、第1泳動液と、前記第1泳動液よりも前記生体分子の移動度が高い第2泳動液と、を含み、前記第1流路には前記第1泳動液が流通し、前記第2流路には前記第2泳動液が流通し、前記支持膜における前記第1泳動液と接する部分と前記支持膜における前記第2泳動液と接する部分の流動性が異なり、前記第3流路には、前記第3流路の延在方向と前記一対の電極の配列方向とが交差するように、前記一対の電極が設けられているデバイスを提供する
本発明の生体分子移動制御方法およびデバイスによれば、生体膜に担持される生体分子の機能を損なうことなく、当該生体分子の流動性を容易に制御することが可能となる。
図1は、第1実施形態の生体分子移動制御方法を適用可能なデバイスの一例を示す模式断面図である。 図2は、生体分子検出チップCP1における生体分子21に対する力の作用を示す模式断面図である。 図3は、生体分子検出チップCP2を示す模式斜視図である。 図4は、生体分子検出チップCP2の製造方法における工程1を示す模式斜視図である。 図5は、生体分子検出チップCP2の製造方法における工程2を示す模式斜視図である。 図6は、生体分子検出チップCP2の製造方法における工程3を示す模式斜視図である。 図7は、第2実施形態の生体分子移動制御方法を適用可能なデバイスの一例を示す模式平面図である。 図8は、電気泳動装置110の動作原理を説明する模式平面図である。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
[生体分子移動制御方法]
まず、図1を参照して、本実施形態の生体分子移動制御方法について説明する。
本実施形態の生体分子移動制御方法は、固体基板と、固体基板の表面に支持された支持膜と、を有する生体分子移動制御基板を用いる。本実施形態の生体分子移動制御方法は、生体分子検出基板の支持膜上に生体分子を担持させ、前記生体分子を担持させた生体分子検出基板を泳動液に浸漬させて、生体分子を電気泳動させるとき、少なくとも一種の生体分子の移動度(流動性)と、泳動液の種類との関係に基づいて泳動液の種類を制御する。
[デバイス]
図1は、第1実施形態の生体分子移動制御方法を適用可能なデバイスの一例を示す模式断面図である。図1に示すように、デバイスの一例である電気泳動装置10は、泳動槽11、正電極12、負電極13、電源14、泳動液15、および生体分子検出チップCP1を備えている。また、電気泳動装置10は、電源14のON、OFFを切り換えるスイッチや、ON、OFFの切り替えや印加電圧を制御する制御部も備えている(図示なし)。電気泳動装置10は、検出分子20を電気泳動させて分離する。
泳動槽11は、上方が開口した収容部11aを有する容器である。収容部11aは、生体分子検出チップCP1、正電極12、負電極13および泳動液15を収容可能な容積を有する。泳動槽11の材料は通常知られたものを使用することができる。
正電極12および負電極13は、泳動槽11の収容部11aで泳動液15に浸漬されている。図1に示す電気泳動装置10においては、正電極12と負電極13とが泳動槽11の一端側と他端側とにそれぞれ配置されている。また、正電極12と負電極13との間には生体分子検出チップCP1が配置されている。
図1の電気泳動装置10では、正電極12および負電極13が生体分子検出チップCP1とは別体に設けられているが、これら電極を生体分子検出チップCP1に形成してもよい。
電源14は、正電極12と負電極13との間に電圧Eを印加する。電源14は、通常のゲル電気泳動と同じものを用いることができる。
[生体分子検出チップ]
生体分子検出チップCP1は、泳動槽11の収容部11aで泳動液15に浸漬されている。生体分子検出チップCP1は、固体基板SUB1および支持膜SLB1を有する。生体分子検出チップCP1は、検出分子20を検出する。
本実施形態の生体分子検出チップCP1は、特許請求の範囲における「生体分子移動制御基板」に相当する。
固体基板SUB1は、隔壁BARを有する。隔壁BARは、金、ニッケル、クロムなどの金属材料から形成されている。通常、隔壁BARは、加熱蒸着やスパッタ蒸着などの方法で固体基板SUB1の表面に上記金属材料を蒸着することにより作製することができる。
固体基板SUB1において、隔壁BARが形成されている領域が疎水性表面として機能し、隔壁BARの形成されていない領域が親水性表面として機能する。
固体基板SUB1において、隣接する親水性表面は、疎水性表面を有する隔壁BARでそれぞれ分離されている。
親水性表面は、シリコンウエハ、石英ウエハ、ガラスウエハ、サファイア、マイカなどから形成されている。
固体基板SUB1の表面は高分子薄膜でコーティングされていてもよい。高分子薄膜材料として、再生セルロースのスピンコート膜、またはラングミュア−ブロジェット膜を用いることができる。一般に、固体基板SUB1の表面を高分子薄膜でコーティングすることにより、固体基板SUB1に人工生体膜だけでなく天然生体膜を配置できることが知られている(M. Tanaka, A. P. Wong, F. Rehfeldt, M. Tutus and S. Kaufmann, "Selective Deposition of Native Cell Membranes on Biocompatible Micropatterns", J. Am. Chem. Soc., vol.126, pp. 3257-3260, 2004.参照)。
固体基板SUB1の親水性表面には、支持膜SLB1が配置されている。支持膜SLB1は、脂質分子を構成材料とする生体膜LMと、生体膜LMに担持された生体分子21と、を有している。支持膜SLB1は、流動性を有する。支持膜SLB1の拡散は、隔壁BARによって制限されている。本実施形態では、支持膜SLB1の生体膜LMとして脂質二分子膜を例示して説明する。
脂質二分子膜は、一般的に、極性頭部と疎水性炭化水素鎖を併せ持つ両親媒性の脂質分子からなる単一膜が、疎水性炭化水素鎖が内側となるよう形成される構造体である。本明細書では、生体膜LMを固体基板SUB1の表面に配置した状態において、生体膜LMが泳動液と接する面を生体膜LMの表面と呼び、生体膜LMが存在する領域を生体膜LMの内部と呼ぶこととする。
生体膜LMの構成材料として、脂質分子の他に、脂質分子にスフィンゴミエリン、コレステロールなどを混合させた混合物を用いることができる。さらに、支持膜SLB1の構成材料として、脂質分子にプロテオソームをベシクル融合させた分子を用いてもよい。なお、上記脂質分子は、単一種類であってもよいし、複数種類の混合物であってもよい。
また、生体膜LMとしては、人工生体膜だけでなく小胞体や筋小胞体、単離した細胞膜などの生体由来の膜(天然生体膜)を直接利用することもできる。
生体分子21は、検出分子20と結合する部位を有している。そのため、電気泳動装置10において、検出分子20は生体分子21と結合する。生体分子21は、生体膜LMの内部または生体膜LMの表面に担持されている。脂質分子にプロテオソームをベシクル融合させる場合、生体分子21として、膜タンパク質を用いることができる。生体分子21としては、膜貫入型タンパク質(細胞接着レセプター、イオンチャネル)やグリセロフォスファチジルイノシトール脂質結合型タンパク質、またビオチンやヒスチジンオリゴマーでタグ付けされた人工再構成タンパク質なども挙げられる。
本実施形態の電気泳動装置10においては、固体基板SUB1が親水性表面および疎水性表面を有しているので、電気泳動法を用いて支持膜SLB1で生体分子21を濃縮したり、生体分子21の濃度勾配を与えたりする際に有用である。
[泳動液]
泳動液15としては、一般的な電気泳動法に用いられる無機塩水溶液の他に、イオン液体またはその水溶液が挙げられる。イオン液体は無機塩と同様に電解質であり、ある種のイオン液体は室温付近で液体として存在する。これらのイオン液体は水溶液とせずに泳動液として用いることができる。また、ある種のイオン液体は水と混じりやすく、得られたイオン液体水溶液を泳動液として用いることもできる。泳動液15としてイオン液体水溶液を用いる場合、無機塩水溶液に比べ泳動液15の濃度範囲を広く変えることが可能である。このため、泳動液15としては、イオン液体またはその水溶液が好ましい。
イオン液体の具体例として、コリンリン酸、コリン二水素リン酸、コリンビストリフルオロメチルメチルスルフォニルイミド、1−ブチルイミダゾリウムジシアナイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホン酸、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。なかでも、イオン液体としては、コリンリン酸、コリン二水素リン酸が好ましい。イオン液体としてコリンリン酸を用いる場合、支持膜SLB1の流動を停止させることができる。具体的には、生体膜LMおよび生体分子21の流動を停止させることができる。
本実施形態の生体分子移動制御方法は、本発明の効果を損なわない範囲において、泳動液15の種類を変更する。泳動液15の種類は、生体分子21や生体膜LM、泳動液15以外の電気泳動条件などに応じて決定するとよい。泳動液15以外の電気泳動条件が同じであるならば、泳動液15の種類と、生体分子21や生体膜LMの種類との関係に応じて、支持膜SLB1の流動性が定められる。なお、本実施形態では、泳動液15の種類を変更する例を示しているが、泳動液15の濃度を変更してもよいし、泳動液15の種類と濃度との両方を変更してもよい。
図2は、生体分子検出チップCP1における生体分子21に作用する力を示す概略断面図である。支持膜SLB1の生体膜LM内で生体分子21の移動度が定常状態に達し、生体分子21が一定速度vで移動するとき、下式(1)が成り立つと考えられる。
Fe=Fr+Ff+Fc …(1)
Feは、生体分子21が受けるクーロン力の大きさを表す。Frは、Feとは反対方向に作用する対イオンの力の大きさを表す。Ffは、生体膜LM内から生体分子21が受ける摩擦力の大きさを表す。Fcは、生体膜LM内外の泳動液15からなる相から生体分子21が受ける抵抗力の大きさを表す。
このとき、支持膜SLB1での生体分子21の濃度勾配や分離能は、外力(Fe、Fr、Ff、Fc)と生体膜LMの流動性とが競合した結果に基づいて定められる。現在実現されている多くの支持膜実験系では、生体膜の流動性が外力に勝っており、外力がなくなった場合には速やかに均一な平衡状態へ移行する。
発明者らは、Fr、FfおよびFcに着目し、Fr、FfおよびFcが泳動液の種類または濃度に基づいて制御可能であることを明らかにした。さらに、Fr、FfおよびFcを制御することにより、生体膜LMに担持された生体分子21の移動度を制御可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本実施形態の生体分子移動制御方法は、生体分子21の移動度と泳動液15の種類との関係に基づいて、泳動液15の種類との関係を制御する。本実施形態の生体分子移動制御方法によれば、生体分子21の流動性を制御することができる。また、本実施形態の生体分子移動制御方法は、生体分子21を担持する生体膜LMの流動性も同様に制御することができる。生体分子21および生体膜LMの流動性を制御できるので、支持膜SLB1の流動性をより制御しやすい。以上をふまえると、本実施形態の生体分子移動制御方法は、検出分子20を電気泳動法により分離する技術に貢献できる。具体的には、生体分子21の移動度を制御することにより、生体分子検出チップCP1の支持膜SLB1で生体分子21を濃縮したり、生体分子21の濃度勾配を与えたりすることができる。この方法を適用すれば、電気泳動装置10を用い、生体分子検出チップCP1の支持膜SLB1で検出分子20を濃縮したり、検出分子20の濃度勾配を与えたりすることができる。
なお、本発明を支持膜という観点から見れば、本発明にかかる支持膜は、泳動液に浸漬された固体基板の表面に配置されるものであって、脂質分子を構成材料とする生体膜と、生体膜に担持された生体分子と、を有し、生体分子の移動度は、生体分子の移動度と、泳動液の種類との関係に基づいて、泳動液の種類を制御することにより、制御可能である。
また、本発明を生体分子検出チップという観点から見れば、本発明にかかる生体分子検出チップは、固体基板と、固体基板の表面に支持された支持膜と、を有し、生体分子の移動度と、泳動液の種類との関係に基づいて泳動液の種類を制御するものであり、生体分子の移動度を制御可能である。
<変形例>
[生体分子検出チップ]
上述した本実施形態の生体分子検出チップCP1に代わって、以下の生体分子検出チップCP2を用いることができる。本変形例の生体分子検出チップCP2は、特許請求の範囲における「生体分子移動制御基板」に相当する。
図3は、生体分子検出チップCP2を示す模式斜視図である。図3に示すように、生体分子検出チップCP2は、固体基板SUB2、支持膜SLB21および支持膜SLB22を有する。
支持膜SLB21および支持膜SLB22は、互いに異なる流動性を有する。支持膜SLB21および支持膜SLB22は、例えば生体膜の種類が異なっていてもよいし、生体膜に担持される生体分子の種類が異なっていてもよいし、生体膜および生体分子の両方の種類が異なっていてもよい。支持膜SLB21および支持膜SLB22は、固体基板SUB2の表面に配置されている。支持膜SLB21および支持膜SLB22は、後述する方法を用いて特定の形状に形成されている。
[生体分子検出チップの製造方法]
生体分子検出チップCP2の製造方法における工程1〜3をそれぞれ図4〜6に示す。
支持膜SLB21および支持膜SLB22の構成材料としては、上述の支持膜SLB1と同様の材料を用いることができる。また、固体基板SUB2の材質としては、上述の固体基板SUB1と同様の材料を用いることができる。
まず、工程1では、図4に示すように、固体基板SUB2の上面に薄膜層Lを形成し、フォトリソグラフィを用いて切削加工を施し、任意の形状のキャビティ構造を作製する。薄膜層Lは、ピンセットなどで固体基板SUB2から剥離することができるものである。また、薄膜層Lは、対応するエッチャントにより除去できるものである。さらに、薄膜層Lは、展開する生体分子に対して反応したり、混合したりしない薄膜材料で形成されている。例えば、高分子薄膜材料としては、透明性の高い剛直な高分子であるポリパラキシレンやポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。
次に、工程2では、図5に示すように、特定の形状を有する支持膜SLB21を与える混合分子M1と、特定の形状を有する支持膜SLB22を与える混合分子M2とをパターニングされた薄膜層Lの表面に展開する。混合分子M1または混合分子M2は、上述した脂質分子および生体分子を含む。
次に、工程3では、図6に示すように、薄膜層Lをピンセットなどで固体基板SUB2から剥離する。このようにして、固体基板SUB2の表面に特定の形状を有する支持膜SLB21および支持膜SLB22を形成し、生体分子検出チップCP2を得る。
このような薄膜層Lを用いた手法は、細胞パターニングに際し、接着タンパク質の位置制御などに用いられている。しかし、本実施形態の支持膜SLB21および支持膜SLB22を構成する生体分子のパターニングに応用された例は少なく、有用である。
一般に、マイクロアレイは、複数の異なる条件を同一基板上に集積可能であることがメリットとなる。支持膜内で分離した複数の検出分子のパターンを同一基板上で維持するため、異なる流動性パターンを有する支持膜を同一基板上に形成するには、従来型の手法では困難である。例えば、同一基板上に成分(脂質分子)が異なる支持膜を隣接させた場合、支持膜の持つ流動性に起因して、異なる脂質分子が混在して上記パターンを消失するか、形状の制御不能な相分離構造を形成してしまう恐れがある。一方で、同一基板上で場所により基板の温度を変える場合、マイクロスケールで異なる温度パターンを形成することは、支持膜の流動や泳動液の対流による熱拡散が起こるため、長時間の維持は困難である。
これに対し、本実施形態の生体分子移動制御方法は、支持膜SLB21および支持膜SLB22の流動性を制御することができる。そのため、支持膜SLB21および支持膜SLB22が特定の形状を保った状態で維持されやすい。支持膜SLB21および支持膜SLB22によって運ばれる検出分子も同様に特定の形状に維持されると考えられる。
生体分子検出チップCP2は、支持膜SLB21または支持膜SLB22を構成する生体分子の挙動や展開速度などを同時に観察することができる。
第1実施形態の生体分子移動制御方法によれば、生体膜に担持される生体分子の機能を損なうことなく、当該生体分子の流動性を容易に制御できる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
[デバイス]
図7は、第2実施形態の生体分子移動制御方法を適用可能なデバイスの一例を示す概略図である。
図7に示すように、電気泳動装置110は、正電極112、負電極113、電源14、泳動液15および生体分子検出チップCP3を備えている。また、電気泳動装置110は、電源14のON、OFFを切り換えるスイッチや、ON、OFFの切り替えや印加電圧を制御する制御部も備えている(図示なし)。電気泳動装置110は、検出分子20を電気泳動させて分離する。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、図7の矢印は、泳動液15の流動方向を表している。
正電極112および負電極113は、第3流路111Cの幅方向の両端に設けられている。正電極112および負電極113は、金属薄膜から構成される。
本実施形態の正電極112および負電極113は、特許請求の範囲における「一対の電極」に相当する。
泳動液15は、第1泳動液15Aおよび第2泳動液15Bを含む。第2泳動液15Bは、第1泳動液15Aと種類が異なる。本実施形態では、支持膜SLB1を第1泳動液15Aまたは第2泳動液15Bに接触させたときに、支持膜SLB1の流動性が相対的に低い方を第1泳動液15Aとし、支持膜SLB1の流動性が相対的に高い方を第2泳動液15Bとする。例えば、第1泳動液15Aとしてコリンリン酸を用いる場合、第2泳動液15BとしてNaCl水溶液を用いる。なお、第1泳動液15Aの種類と第2泳動液15Bの種類とが異なればよく、無機塩水溶液同士やイオン液体同士またはイオン液体水溶液同士であってもよい。
[生体分子検出チップ]
生体分子検出チップCP3は、固体基板SUB1、流路111および支持膜SLB1を有する。生体分子検出チップCP3は、検出分子20を検出する。
本実施形態の生体分子検出チップCP3は、特許請求の範囲における「生体分子検出基板」に相当する。
流路111には、泳動液15が流通する。流路111は、固体基板SUB1の表面に形成されている。流路111の固体基板SUB1が露出した面には、支持膜SLB1が配置されている。
図7に示す流路111は、第1流路111A、第2流路111B、第3流路111C、第4流路111Dおよび第5流路111Eからなる。これらの流路は、数μm〜数100μm程度の幅および深さを有する。
第1流路111Aおよび第2流路111Bはそれぞれ第3流路111Cの一端側(上流側)に接続する。また、第4流路111Dおよび第5流路111Eはそれぞれ第3流路111Cの他端側(下流側)に接続する。図7に示す流路111の平面視形状は、X型を呈する。
第1流路111Aは第1泳動液15Aが流通する。一方、第2流路111Bは第2泳動液15Bが流通する。
第4流路111Dは第1泳動液15Aが流通する。一方、第5流路111Eは第2泳動液15Bが流通する。
第3流路111Cには、第3流路111Cの延在方向と、正電極112および負電極113の配列方向とが交差するように、正電極112および負電極113が設けられている。
第3流路111Cでは、第1泳動液15Aの層流と第2泳動液15Bの層流とが互いに交わることなく境界面を形成する。その結果、第1泳動液15Aの層流と第2泳動液15Bの層流とが隣接したバンド構造が形成される。一般に、このような現象はシアバンディング現象と呼ばれる。シアバンディング現象は、流路壁面での流体の流速がゼロに近似され、かつ流体の粘性(動粘度)、流路幅、流速の三要素で規定されるレイノルズ数が10以下であると見積もられるために起こる現象である。例えば常温でNaCl溶液を10μL/hで流した際、近似矩形断面半径が100μmの流路ではレイノルズ数はおよそ1.0と見積もられる。ここで、「近似矩形断面半径」とは、「水力直径」とも呼ばれ、断面積A、断面周長Bの矩形管内の圧力損失を計算する場合、4A×B−1で近似される値に相当する。このバンドの幅は流束や溶液の粘性によって調節可能なので、目的に応じて第1泳動液15Aと第2泳動液15Bとの組み合わせを変更することにより、バンドの幅を変更することができる。
上述したように、支持膜SLB1を第1泳動液15Aまたは第2泳動液15Bに接触させたときに、支持膜SLB1の流動性が相対的に低い方を第1泳動液15Aとし、支持膜SLB1の流動性が相対的に高い方を第2泳動液15Bとする。第1泳動液15Aの層流と第2泳動液15Bの層流との境界面を境に、第3流路111Cに存在する支持膜SLB1の流動性は、第2流路111B側から第1流路111A側に向かって低くなる。
流路111には、導入口116、導入口117、排出口118および排出口119が設けられている。
導入口116は、第1流路111Aに第1泳動液15Aを導入する。導入口116は、第1流路111Aの一部に設けられている。
導入口117は、第2流路111Bに第2泳動液15Bを導入する。導入口117は、第2流路111Bの一部に設けられている。
排出口118は、第4流路111Dから第1泳動液15Aを排出する。排出口118は、第4流路111Dの一部に設けられている。
排出口119は、第5流路111Eから第2泳動液15Bを排出する。排出口119は、第5流路111Eの一部に設けられている。
電気泳動装置110は、以下の手順で作製することができる。まず、固体基板SUB1の表面に流路111、正電極112、負電極113および電源14を形成する。流路111は、例えばポリジメチルシロキサンなどの高分子樹脂をフォトリソグラフィで作製した鋳型を用いて成形することができる。
次に、導入口116および導入口117に面した流路111の底面(露出した固体基板SUB1の表面)に、ガラスキャピラリーを用いて支持膜SLB1の原料を付着させた後、導入口116および導入口117から流路111に第2泳動液15Bを導入して静置し、流路111の底面に支持膜SLB1を形成する。このようにして、電気泳動装置110を作製することができる。
[デバイスの動作原理]
図8を参照しながら、電気泳動装置110の動作原理について説明する。図8は、電気泳動装置110の動作原理を説明する平面図である。
図8に示すように、電気泳動装置110において、まず、導入口116および導入口117から流路111に、検出分子20を添加した第2泳動液15Bを導入し、支持膜SLB1に検出分子20を担持させる。このとき、検出分子20は支持膜SLB1中の生体分子21と結合する。次に、導入口116から第1流路111Aに第1泳動液15Aを導入する。一方、導入口117から第2流路111Bに第2泳動液15Bを導入する。
第1泳動液15Aおよび第2泳動液15Bの導入方法は特に限定されないが、生体分子21や生体膜LM(図2参照)の支持膜SLB1の条件や、電気泳動条件などに応じて第1泳動液15Aの流量および第2泳動液15Bの流量を制御しながら導入できる方法が好ましい。
第1流路111Aを通過した第1泳動液15Aは、第3流路111C、第4流路111Dの順で通過する。一方、第2流路111Bを通過した第2泳動液15Bは、第3流路111C、第5流路111Eの順で通過する。このとき、第3流路111C内部では、第1泳動液15Aの層流と第2泳動液15Bの層流とが互いに交わることなく第1泳動液15Aおよび第2泳動液15Bからなるバンド構造が形成される。
1泳動液15A中では支持膜SLB1の流動性がくなっている。そのため、生体分子21は第1泳動液15Aの流れに取り残される。一方、第2泳動液15B中では、支持膜SLB1の流動性がくなっている。そのため、第2泳動液15Bの流れに乗って生体分子21が流動する
このような生体分子検出チップCP3に対し、正電極112と負電極113との間に電源14から電圧を印加すると、生体分子検出チップCP3の支持膜SLB1中の生体分子21が電気泳動する。上述したように、支持膜SLB1の流動性が相対的に低い方を第1泳動液15Aとし、支持膜SLB1の流動性が相対的に高い方を第2泳動液15Bとする。第1泳動液15Aの層流と第2泳動液15Bの層流との境界面を境に、境界面の第2流路111B側から第1流路111A側に向かって、支持膜SLB1の流動性が低くなる。第3流路111Cに位置する支持膜SLB1中の生体分子21は、正電極112側から負電極113側に移動するが、支持膜SLB1の流動性が高い方から低い方に変化する境界面を越えて移動することは難しいと考えられる。また、第3流路111Cの延在方向と、正電極112および負電極113の配列方向とが交差するので、この境界面と支持膜SLB1や生体分子21の移動方向とが交差する。その結果、この境界面で目的の生体分子21を濃縮することができる。
なお、本実施形態では、第1泳動液15Aの種類と第2泳動液15Bの種類とが異なる例を示したが、これに限定されない。例えば、第1泳動液15Aの濃度と第2泳動液15Bの濃度とが異なっていてもよい。また、別の例として、第1泳動液15Aの種類および濃度と第2泳動液15Bの種類および濃度とが異なっていてもよい。
なお、本実施形態では、流路111を1つ設ける例を示したが、固体基板SUB1上に流路111を複数設けてもよい。固体基板SUB1上に流路111を複数設ける場合、本実施形態の電気泳動装置110はマイクロアレイとして用いることができる。
上述したように、マイクロアレイは、複数の異なる条件を同一基板上に集積可能であることがメリットとなる。支持膜内で分離した複数の生体分子のパターンを同一基板上で維持するため、異なる流動性パターンを有する支持膜を同一基板上に形成するには、従来型の手法では困難である。例えば、同一基板上に成分(脂質分子)が異なる支持膜を隣接させた場合、支持膜の持つ流動性に起因して、異なる脂質分子が混在して上記パターンを消失するか、形状の制御不能な相分離構造を形成してしまう恐れがある。一方で、同一基板上で場所により基板の温度を変える場合、マイクロスケールで異なる温度パターンを形成することは、支持膜の流動や泳動液の対流による熱拡散が起こるため、長時間の維持は困難である。
一方、本実施形態では、用いる泳動液の種類や濃度と流路111と組み合わせることにより、同一基板上において、微小領域ごとに生体分子21の流動性を制御できる技術が提供可能となる。
その応用として、タンパク質に代表される生体分子の移動速度を生体膜で制御し、検出分子のパターンを作製することができる。
第2実施形態の生体分子移動制御方法によれば、生体膜に担持される生体分子の機能を損なうことなく、当該生体分子の流動性を容易に制御できる。
次に、本発明の実施例について説明する。以下の実施例では、図7の例と同様の構成を有するデバイス(電気泳動装置)を作製した。
[支持膜の原料の調製]
それぞれのクロロホルム溶液を用いて、卵黄由来脂質分子L-α-PCと、16:0biotinyl DPPEと、16:0NBD-DPPEとを、97:2:1のモル比の割合で含む混合物を、クロロホルム溶液として調製した。得られたクロロホルム溶液は、はじめに窒素気流下においてクロロホルムを蒸発させ、次に真空下に1晩おいてクロロホルムをさらに除去し、支持膜SLB1の原料を得た。
[泳動液の調製]
コリンリン酸(分子量201.16)2gを純水に溶解して100mLとし、100mMコリンリン酸水溶液を得、第1泳動液15Aとした。また、NaClを純水に溶解して100mMNaCl水溶液を得、第2泳動液15Bとした。
[検出分子]
実施例で用いる検出分子20として、赤色蛍光色素であるTexas Redが結合したストレプトアビジン(TR−sAV)を用いた。
[デバイスの作製]
以下の手順で、図7の例と同様の構成を有するデバイス(電気泳動装置)を作製した。なお、支持膜SLB1および検出分子20の確認には共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いた。具体的に、支持膜SLB1の確認には、支持膜SLB1の原料として用いたNBD由来の緑色蛍光(488nm励起、505−525nm発光)を用いた。一方、検出分子20の確認には、Texas Red由来の赤色蛍光(543nm励起、>580nm発光)を用いた。
まず、SiO酸化膜(300nm厚)を有するSiウエハ(以下、SiO/Si基板)を5mm×15mmに切断し固体基板SUB1を作製した。得られた固体基板SUB1に対して水洗(5分間)、濃硫酸(純度96質量%):過酸化水素水(濃度30質量%)=4:1(体積比)混酸(ピラニア)処理(5分間)、水洗(5分間)、フッ化アンモニウム水溶液(5分間)処理、水洗(5分間)の順で施して洗浄した。
洗浄後の固体基板SUB1に、幅500μm、深さ50μmの流路を形成したポリマーシートを密着させて搭載することで、固体基板SUB1上に第1泳動液15Aを送液可能な流路111を形成した。流路111を形成したポリマーシートはポリジメチルシロキサンをフォトリソグラフィで作製した鋳型を用いて成形した。また、流路の一部には、2つの導入口(導入口116、導入口117)および2つの排出口(排出口118、排出口119)を設けた。
第3流路111C内部に、正電極112と負電極113を形成した。正電極112および負電極113には、金属薄膜を用いて形成した微小電極を用いた。なお、第3流路111Cの第1流路111Aに近い側に負電極113、第3流路111Cの第2流路111Bに近い側に正電極112を配置した。
導入口116および導入口117に面する流路の底面(露出した固体基板の表面)に,ガラスキャピラリーを用いて支持膜の原料を付着させた後、導入口116および導入口117から100mMNaCl水溶液(第2泳動液15B)を導入して静置し、流路111全体に脂質膜(支持膜)SLB1を形成した。共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて第3流路111C内部を観察すると、一様な緑色蛍光を確認した。この緑色蛍光により,第3流路111C内部に一様な支持膜が形成されていることを確認した。このとき赤色蛍光は確認されなかった。
[実施例1]
引き続き、共焦点レーザ走査型顕微鏡で観察しながら、導入口116および導入口117からTR−sAVを添加した100mMNaCl水溶液(第2泳動液15B)を導入した。TR−sAV濃度は100mMNaCl水溶液100μLに対して2μgとした。導入後、緑色蛍光は導入前と同様に確認された。また、支持膜部分は速やかに赤色発光を示すことを確認した。このことからTR−sAVが支持膜中のビオチンと相互作用し、TR−sAVが支持膜に担持されたことを確認した。このようにして、図7の例と同様の構成を有するデバイスを作製した。
次に、導入口116から第1流路111Aに100mMコリンリン酸水溶液(第1泳動液15A)を、導入口117から第2流路111Bに100mMNaCl水溶液(第2泳動液15B)を導入した。このとき支持膜の内部および支持膜の表面に担持された検出分子20(TR−sAV)は、置換された泳動液に応じた移動特性(移動度、流動性)を示すと考えられる。検出分子20の移動特性を以下の方法で確認した。
作製したデバイスについて、共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて、FRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)実験を行った。第3流路111C内部に、直径50μmの円領域にレーザを高強度で照射し、この領域の色素分子を退色させた。その前後で、20秒毎に赤色蛍光および緑色蛍光を、共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて観察した。FRAP実験では、脂質分子(支持膜SLB1)の移動はNBD-DPPE由来の緑色蛍光から、生体分子21であるストレプトアビジンの移動はTR−sAV由来の赤色蛍光から、それぞれ評価した。
第3流路111C内部の第1流路111Aに近い側では、退色後の緑色蛍光強度がほとんど回復しなかった.よって、100mMコリンリン酸水溶液(第1泳動液15A)に置換された部分では,脂質膜(支持膜)SLB1の流動性は抑制されてほぼ停止していることが分かった.同様に,第3流路111C内部の第2流路111Bに近い側においては、緑色蛍光強度が一定時間経過後にほぼ初期値レベルまで回復していた。このことから、支持膜SLB1の流動性が担保されていることが分かった。また、支持膜SLB1の流動性が高い方から低い方へと変化する境界領域は、第3流路111C内部で流れ方向に平行に形成されており、第1泳動液15Aおよび第2泳動液15Bの層流によってパターン(バンド)が形成されていることも示された。
同様に,赤色蛍光を用いて,TR−sAVと結合したビオチン脂質の移動を観察すると,第3流路111C内部の第1流路111Aに近い側では、退色後の赤色蛍光強度がほとんど回復しなかった。一方、第3流路111C内部の第2流路111Bに近い側においては、赤色蛍光強度が一定時間経過後にほぼ初期値レベルまで回復していた。このことから、TR−sAVと結合したビオチン脂質についても流動性が担保されていることが分かった。TR−sAVと結合したビオチン脂質の流動性が高い方から低い方へと変化する境界領域は、緑色蛍光を用いた評価で観測されたパターンと一致していた。このことから、支持膜SLB1に担持された生体分子21(TR−sAV)の移動抑制が,脂質膜(支持膜)SLB1の流動性の抑制と関連していることが示された。
作製したデバイスを用い、正電極112および負電極113を電源14と接続して電圧を印加して電気泳動を行った。そして、共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いて、赤色蛍光によりTR−sAVと結合したビオチン脂質の移動を観察した。
第3流路111C内部の第1流路111Aに近い側では、電圧印加の前後で赤色蛍光の分布の変化はほとんど観測されなかった。一方、第3流路111C内部の第2流路111Bに近い側においては、緑色蛍光で観測された流動性が異なる境界領域で赤色蛍光強度が強くなり、TR−sAVと結合したビオチン脂質が濃縮されていることが示された。これは、TR−sAVと結合したビオチン脂質は、電気泳動によって負電極113側に移動しようとするが、脂質膜(支持膜)SLB1やビオチンの流動性が抑制されている境界を越えては移動できず、停止したためだと考えられる。
本発明によれば、生体膜に担持された生体分子の流動性を容易に制御することが可能となる。また、支持膜での検出分子の分離・分取が可能となることが示された。
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、泳動液中にある固体基板の表面に配置される生体膜に対し、生体分子の移動度と、当該泳動液の種類と濃度との少なくとも一方との関係に基づいて当該泳動液の種類と濃度との少なくとも一方を制御することにより、当該生体膜に担持された生体分子の移動度を制御可能にしたものである。
これにより、生体膜に担持された生体分子の機能を損なうことなく、当該生体分子の流動性を容易に制御することが可能となる。その結果、このような支持膜での検出分子の分離・分取技術に貢献する。その応用として、例えば、定常状態のタンパク質の移動、すなわち濃度勾配のスロープやpH勾配下での等電点電気泳動のバンド幅など、支持膜での生体分子のパターンを作製することができる。さらに本発明の技術は、これまで提案のあった手法と同時に適用可能な手法であることから、さらに広範囲な制御を可能とする。
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の効果を損なわない範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
15…泳動液、15A…第1泳動液、15B…第2泳動液、20…検出分子、21…生体分子、111…流路、111A…第1流路、111B…第2流路、111C…第3流路、LM…生体膜、SLB1,SLB21,SLB22…支持膜、SUB1,SUB2…固体基板

Claims (3)

  1. 固体基板と、
    前記固体基板の表面に支持された支持膜と、
    を有する生体分子移動制御基板を用い、
    前記支持膜は、脂質分子を構成材料とする生体膜と、前記生体膜に担持された生体分子と、を有し、
    前記生体分子移動制御基板を泳動液に浸漬させて、前記生体分子を電気泳動させるとき、
    前記生体分子の前記泳動液中での移動度と、前記泳動液の種類と濃度との少なくとも一方との関係に基づいて、前記泳動液の種類と濃度との少なくとも一方を制御し、
    前記泳動液として、第1泳動液と、前記第1泳動液よりも前記生体分子の移動度が高い第2泳動液とを用い、前記支持膜と接する前記泳動液の組成によって前記支持膜の流動性を変化させ、
    前記第1泳動液と前記第2泳動液とが境界面を形成するように前記第1泳動液と前記第2泳動液とを隣接させると共に、前記境界面と交差する方向に前記生体分子を電気泳動させる生体分子移動制御方法。
  2. 前記泳動液がイオン液体を含む請求項1に記載の生体分子移動制御方法。
  3. 固体基板と、前記固体基板の表面に形成された流路と、前記流路の前記固体基板が露出した面に支持された支持膜と、を有する生体分子移動制御基板と、
    前記流路を流通する泳動液と、
    前記流路の内部に設けられた一対の電極と、を備え、
    前記支持膜は、脂質分子を構成材料とする生体膜と、前記生体膜に担持された生体分子と、を有し、
    前記流路は、第1流路と、第2流路と、前記第1流路および前記第2流路に接続される第3流路と、を有し、
    前記泳動液は、第1泳動液と、前記第1泳動液よりも前記生体分子の移動度が高い第2泳動液と、を含み、
    前記第1流路には前記第1泳動液が流通し、前記第2流路には前記第2泳動液が流通し、前記支持膜における前記第1泳動液と接する部分と前記支持膜における前記第2泳動液と接する部分の流動性が異なり、
    前記第3流路には、前記第3流路の延在方向と前記一対の電極の配列方向とが交差するように、前記一対の電極が設けられているデバイス。
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