本発明は、マイクロリアクタ、分析システム、分析方法、反応システム、反応方法、分離システム、分離方法、抽出システム、抽出方法、タンパク質合成システム及びタンパク質合成方法に関する。
(1)マイクロリアクタの応用および脂質二分子膜の作製方法に関する背景技術
従来の大型反応系において、反応系のスケールアップにより、さまざまな反応工学的問題が生じる。これらの問題は例えば以下のように挙げることができる。攪拌混合による系内の均一化は濃度及び温度分布が生じやすい。反応系が大きいほど、不均一化が起こりやすい。管型反応において、管内での反応熱が高い場合、管内での温度分布が生じるので、反応速度の制御ができなくなり、さらに、副産物ができやすく、多量な副産物は環境にも大きな負荷をもたらす。又、系の温度と濃度の均一性を保つために、攪拌動力が大きくなるので、省エネルギー型ではない。
上記の諸問題を解決できる系として、マイクロリアクタ系が考えられる。マイクロリアクタの主な反応工学的特長を以下のように示す。
1)副反応が殆ど生じない。
2)反応温度の制御は容易であり、反応速度の制御ができる。
3)濃度分布が生じにくいので、反応系のスケールアップが容易である。
4)比表面積と比界面積が大きいため、分子拡散距離が短く、拡散律速反応が劇的に加速される。
5)強制対流を起こさせるための攪拌動力を必要としないため、省エネルギー型の反応システムを構築することができる。
6)反応熱を素早く拡散させることができるため、急激な反応を起こさせることができる。
上述のように、マイクロリアクタは高効率、省エネルギー、低環境負荷及び迅速反応の特徴を有することで、環境、医療、製薬、食品産業や科学に関連した超微量試薬に含まれる超微量成分の反応の場として、非常に有用であると思われる。更に、マイクロリアクタの集積化は、有用物質の大量生産の実現が可能であるので、新たな有用物質の工業生産方法として、近年、非常に注目され、これらに関する研究が盛んに行われている。
一方、マイクロリアクタは化学反応の場として利用するためにマイクロチャンネル内への酵素固定化などの研究も行われている。例えば、マイクロチャンネル内の水/油の界面に界面重合により高分子膜の作製、高分子膜への酵素固定化及び酵素反応が試みられた(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、多種酵素の固定化が困難であり、劣化膜の再生が困難である。又、高分子膜であるため、膜の流動がないなどの問題点もある。
又、従来の生体高分子による有用物質の生産では、以下のような問題がある。
1)目的物質の低い生産性。
2)産物の細胞内での蓄積。
3)不活性、不溶性凝集体の形成。
4)目的物質の回収効率、選択性を低下させるさまざまな問題がある。
他方、生体膜のモデルとして活躍する脂質二分子膜の成膜方法に関する研究開発も従来盛んに行われている。すでに、パッチクランプ法(patch-clamp)(例えば、非特許文献2参照)、筆塗布法(Brush Technique)、ディッピング法(Dipping Technique)、バブル法(Bubble Technique)、シリンジ法(Syringe technique)、単分子膜法(Monolayer Technique)の作製法が開発された(例えば、非特許文献2参照。)。その他に、自動脂質液滴吐出法などの方法より、脂質二分子膜の作製方法が開発されつつある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの方法はいずれも、下記のような問題がある。
1)膜の自然薄化などによる脂質二分子膜の作製は時間がかかる。
2)膜の面積が小さく、用途が限られる。
3)系のスケールダウン又はスケールアップが困難である。
4)膜は不安定である。
5)膜の流動性がないため、膜の更新及び連続使用が困難である。
上述のような問題があるが、脂質二分子膜、逆二分子膜、単分子、ミセル、逆ミセルなどの分子膜はさまざまな手法で作製され、さまざまな分野、特にセンサ分野への応用が試みられている。又、マイクロリアクタ内での高分子膜の作製と高分子膜への酵素固定化についての研究が行なわれたが、マイクロチャンネル内での分子膜の形成、例えば、液/液層流界面および液/気層流界面などの間で作製される前例がまだない。又、生体膜である脂質二分子膜およびマイクロドメイン類似機能膜の迅速、大面積作製技術も又確立されていないのが現状である。
H.Hisamoto,et al., Anal. Chem., 2003, 75, 350-354.
ネヘル・イー(Neher E.)、サックマン・ビー(Sakmann B.)「単一流路記録」("Single Channel Recording")、Plenum Press、 New York(1983)
ティエン・エイチ・ティー(Tien H. T.)、「二分子膜:理論と実践」("Bilayer Lipid Membranes(脂質二分子膜):Theory and Practice")、Marcel Dekker、Inc.、NY、pp.672(1974)
特願2001−91494号(段落「0008」、第1図)(2)アミロイド型タンパク質およびウィルスを検出する背景技術 従来、ゲノム構造解析の目覚ましい進展により、様々な物質に関する塩基配列の情報を把握することが可能になった。しかしながら、ゲノムの構造解析が解明できるのは遺伝子候補及びその転写産物(タンパク質)の静的推定構造である。外界環境条件の変化に伴うタンパク質の高次構造変化などの動的情報を把握することは極めて困難である。換言すれば、DNAチップは同じ塩基配列を有する試料を検出の対象とし、同じ塩基配列すなわちこれより生合成されたタンパク質のアミノ酸配列(一次構造)が同じで、高次構造(二次構造、三次構造、四次構造)が異なるもの同士を検出することができないのが現状である。
一方、タンパク質の機能はその高次構造と密接に関わっており、外界環境条件によるタンパク質の構造変化は元の生体機能を損なう。例えば、タンパク質の構造異常に起因するアミロイド繊維の形成及びアミロイド繊維の沈着により、狂牛病、ヒトのクロイツフェルトヤコブ病、クールー病、羊のスクレイピーなどのプリオン病、アルツハイマー痴呆病、透析アミロイド-シス、甲状腺髄様がん、ALアミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、家族性アミロイド-シス、パーキンソン病、ハンチントン病などの病気を引き起こすことが知られている。
アミロイド繊維はアミロイド型タンパク質もしくは10残基程度のペプチドから形成され、アミロイド繊維の沈着により引き起こされた病気はアミロイド病(もしくはアミロイド-シス)と呼ばれている。
アミロイド病の一種であるプリオン病は致死的な神経変性疾患で、未だに治療法が見つかっていない(Nature、 vol422、 2002)。アルツハイマー患者は米国だけでも400万人近くにのぼり、今後30年間にその3倍に増えると予想されている(Nature Medicine、 4、 2003.)。
透析アミロイド-シスは10年以上、血液の長期透析治療を受ける患者に見られる“医原病”(医療行為が作り出した病気)の一つである。米国と日本では現在、各約20万人が血液透析の治療を受けている。この病気は手根管症候群という手首の痛みや運動障害を伴う症状が現れるが、未だに有効な治療法が確立されていない。
他方、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)などのウィルスはウィルスの遺伝子情報となる核酸と転写酵素が脂質膜で包まれており、ウィルス膜と細胞膜の融合により、ウィルス核酸と転写酵素が宿主の細胞内に放出される。そして、宿主の細胞内で、HIVの逆転写酵素によって、DNAを合成し、新たなHIVを体内で作り出す。このHIVは免疫をつかさどる重要なリンパ球(T細胞)と特異的に結合し、リンパ球の中で大量なコピーを作り出すとともに、リンパ球を破壊してしまい、やがて、ヒトは免疫不全に陥れ、死に至る。
したがって、上記タンパク質の構造異常に伴った各種疾病ならびにHIVの早期迅速診断が不可欠であり、極めて重要であると考えられる。又、各種病気のメカニズム解明、新薬開発の加速も必要とされる。
一方、生体試料を対象とする検出方法としては、従来では、生体分子間の相互作用による検出法がいろいろある。例えば、バイオアッセイ及び抗原又は抗体を酵素で標識化して対象物質を検出する方法(ELISA法)、水晶振動子法、ゲルシフトアッセイ法、表面プラズマ共鳴(SPR)法、マイクロカロリメトリー法などがある。これらの検出法の検出範囲は約10ng〜100pgである。この中で特にELISA法、ゲルシフトアッセイ法の測定時間は非常に長く、迅速、高感度測定、及びマイクロカロリメトリーと同様に経時変化の測定に適していない。表面プラズマ共鳴(SPR)法では試料の絶対量の検出は困難とされる。
又、近年、センサとして期待されている水晶子振動子は、〜10ngの生体試料を検出できるが、センサとしての機能を持たせるために、一連の複雑な反応を施すことにより、水晶振動子の電極表面に色々な試料認識修飾基を修飾しなければならない。しかしながら、表面修飾による試料の検出は不可逆反応であり、電極の繰り返し使用は不可能であるなど、迅速性、簡便性、経済性および汎用性などの面においてなお未解決な問題が山積になっている。
上記ように生体試料を対象とする従来の測定方法は又いろいろな問題が存在し、特に、アミロイド型タンパク質のようなタンパク質の構造異常を区別するための超微量、迅速、高感度、簡便、経済的な検知法は、未だに開発されていない。
(3)逆ミセルを利用した生体関連物質の抽出などに関する背景技術
バイオ生産物には、アミノ酸、蔗糖やエタノールなど低分子物質のものからタンパク質、デンプンやポリヌクレオチド(核酸)などの高分子物質まで多種多様な物質が存在する。これらの物質には、熱や圧力あるいは酸やアルカリなどにより容易に変性・失活して本来の生理機能等を失うものが多い。更に、これらは通常希薄な多成分混合溶液として存在するため、目的物質を安定かつ高選択的に分離・精製することは容易ではない。そこで、医薬品、食品、化成品などの製造工程において、いかに迅速、高効率ならび選択的にバイオ生産物から有用生体関連物質を分離・精製することが非常に重要とされている。
従来の逆ミセル抽出は注入法、液相接触法などがあるが、これらの系では通常、大型反応槽を用いて抽出を行なわせた場合、以下のような問題が生じる。
1)抽出の速度が遅い。
2)生体関連物質の変性・失活が起こりやすい。
3)系の温度の温度制御が困難である。
4)抽出系が大きいほど、不均一化が起こりやすい。
即ち、抽出速度を高めるために、油水界面積を増やす必要があるので、攪拌を行わなければならない。攪拌動力が大きいとエマルジョンの分散滴径が小さくなり、油水界面積が大きくなる。そのことによって、油水界面での物質移動速度が速くなり、抽出速度が大きくなる。しかしながら、系内に界面活性剤が存在するため、攪拌により乳化が進み、相分離が困難になる。その原因で、逆ミセル抽出は規模可変性ではあるが、現状では大規模での抽出を行うのは困難である。又、攪拌により、特にタンパク質のずり変性が起こり、変性・失活してしまうなどの問題がある。
逆ミセル抽出系は規模が大きければ大きいほど、安定な逆ミセル構造を再現することが困難である。更に、界面活性剤はさまざまな分子集合形態、例えば逆ベシクルなどをとりやすいので、逆ミセルのサイズを制御するのは困難であるのが現状である。
この他に、中空糸モジュール法があるが、この方法では、安定形状の逆ミセルを形成するための膜を介しての各相への送液圧力の調整が難しい。従って、未だにその実用化が実現されていない。
更に、遺伝子組換え技術を用いて、細胞内に封入体として生産された凝集状態のタンパク質は変性している。そこで、まず細胞を破壊し、変性剤を加えて、タンパク質を溶解させた後、崩れたタンパク質の立体構造を修復するために、リフォールディングを行わなければならないのが現状である。
(4)無細胞タンパク質合成の背景技術
生細胞は、タンパク質をコードしている伝令RNA(mRNA)から転移RNAやタンパク質性の翻訳因子群などの作用により目的とするタンパク質を生合成する。同様のタンパク質合成を生細胞由来の抽出液あるいは細胞破壊液を用いても試験管内で行うことができる。このような合成システムを無細胞タンパク質合成という。この系においては、鋳型としてDNAを用い転写と翻訳を共役させることもある。更に、生きた細胞の生命維持という制約がないので、系の自由度が飛躍的に増大する。したがって、以下のような特徴がある。
1)タンパク質に非天然型アミノ酸ならびに放射能標識したアミノ酸を構成成分として自由に取り組ませることができる。
2)細胞においては毒性となるようなタンパク質もこの系で合成することができる。
3)複数の鋳型から迅速かつ同時にタンパク質を合成することができる。
4)この系に添加する物質の種類と濃度の制約がない。
5)合成反応にかかる時間は一般に短い。
しかしながら、従来の無細胞タンパク質合成系に使われる細胞液は細胞粉砕により細胞液を抽出するため、細胞液の濃度が低く、更に、抽出条件が過酷なため、細胞の防衛機構が起動され、タンパク質の翻訳因子群の1つであるリボソームなどの不活性化が生じる。したがって、実際の無細胞系でタンパク質を合成する場合、合成反応持続時間が短く、得られた収量は生細胞の約0.1%から1%までに留まり、タンパク質合成法として実用的ではないとされている。
(1)そこで、本発明は、上記の従来技術における問題点に鑑み、マイクロリアクタ中に単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセルなど分子膜の自動、迅速、連続作製方法を提供するとともに、この系を用いた様々な迅速化学反応、バイオリアクタ、構造異常タンパク質および変性タンパク質のリフォールディング、分離(抽出)システムおよび分析システムを提供することを目的とするものである。
(2)又、本発明は、構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)或いはウィルスのマイクロリアクタ中に自動、迅速および連続的に作製される分子膜との相互作用により、これらの物質やウィルスの微量、簡便、迅速および高感度検出マイクロチップ、バイオセンシングシステムを提供し、もしくは分子膜を備えるマイクロリアクタを利用した構造異常タンパク質のリフォールディング、分離(抽出)を行うことで、難病の早期診断および治療システムを提供することを目的とするものである。
(3)又、本発明は簡便、短時間、省エネルギー、且つ温和な反応・抽出条件で、物質の高効率および迅速抽出、タンパク質などの生体関連物質の高活性、高効率および迅速抽出、変性タンパク質の迅速リフォールディングを行なう逆ミセルによるマイクロ抽出システムを提供することを目的とするものである。
(4)又、本発明は分子膜を備えるマイクロリアクタ、逆ミセルによるマイクロ抽出システムを利用して、生体模擬タンパン質合成システムを提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備え、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成するマイクロリアクタであることを要旨とする。
本発明の第2の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する第3の導入口とを備え、第1の流体とマイクロチャンネルの壁面との境界面に分子膜を形成するマイクロリアクタであることを要旨とする。
第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタによると、単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセルなど分子膜の自動、迅速、連続作製を行うことができる。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタ内に生成された分子膜は、単分子膜、二分子膜、脂質二分子膜、逆二分子膜、分子多重層膜、ミセル、逆ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョン、LB膜のいずれか一つ、もしくはこれらが混在した構造であってもよい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタ内に生成された分子膜は、平面構造と立体構造が混在する形状を有してもよい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタ内の両親媒性分子混合液は、蛋白質、核酸、糖脂質、コレステロール、蛍光色素、リガンド、光感応性分子、架橋剤、イオンチャンネル、電子共役系物質、重合剤、助界面活性剤、クラウンエーテル、フラーレン、カーボンナノチューブ、ポルフィリン類、分子トング、酸化還元剤、ステロイド、シクロデキストリン、ポリペプチド、ペプチドを1種類以上含むことが望ましい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタのマイクロチャンネルは、直管、エルボ、或いはベンドのいずれか1つ、もしくはこれらが混在する構造であってもよい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタのマイクロチャンネルの壁面は、平滑状、凹凸状、あるいは表面修飾のいずれか1つ、もしくはこれらが混在する構造であってもよい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタのマイクロチャンネルを単独或いは複数集積してもよい。
又、第1の特徴に係るマイクロリアクタは、第1の流体、前記第2の流体、前記両親媒性分子混合液をそれぞれの導入口から前記マイクロチャンネル内へ送り込む、もしくは引き出すための自動制御ポンプを備えてもよい。
又、第2の特徴に係るマイクロリアクタは、第1の流体、両親媒性分子混合液をそれぞれの導入口からマイクロチャンネル内へ送り込む、もしくは引き出すための自動制御ポンプを備えてもよい。
又、第1の特徴に係るマイクロリアクタにおいて、マイクロチャンネル、あるいは第1の導入口、第2の導入口あるいは第3の導入口にバルブを1つ以上備えてもよい。
又、第2の特徴に係るマイクロリアクタにおいて、マイクロチャンネル、あるいは第1の導入口、あるいは第3の導入口にバルブを1つ以上備えてもよい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタのマイクロチャンネルから分岐する分岐チャンネルと、試料を注入する注入口とを更に備えてもよい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタのマイクロチャンネルの一部に電極を備えてもよい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタのマイクロチャンネル内の温度、圧力、pH、電流、電圧、磁場、超音波、あるいは応力を制御する手段を更に備えてもよい。
又、第1及び第2の特徴に係るマイクロリアクタにおいて、光照射による、マイクロチャンネル内の温度変化、あるいは物質の分子膜への吸着、付着、沈着および透過の変化、あるいは光化学反応を制御する手段を更に備えてもよい。
又、第1の特徴に係わるマイクロリアクタにおいて、塩橋を一つ以上更に備えてもよい。
本発明の第3の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備え、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成するマイクロリアクタと、第1の流体、あるいは第2の流体、あるいは第1の流体および第2の流体に含まる物質と、分子膜との相互作用による膜への付着、吸着、沈着或いは透過によって、分子膜の表面状態の変化、もしくは分子膜或いは流体の化学的、或いは物理的特性の変化を引き起こす反応部と、反応部の条件を制御する条件制御部と、反応部の変化信号を検知するための検知部と、反応部で生成された生成物を分離・回収する分離・回収部と、流体及び両親媒性分子を循環する循環部と、分子膜を作製・再生する作製・再生部とを備える分析システムであることを要旨とする。
第3の特徴に係る分析システムによると、マイクロリアクタ中に単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセルなど分子膜の自動、迅速、連続作製方法を提供するとともに、この系を用いた様々な分析を行うことができる。
又、第3の特徴に係る分析システムの条件制御部は、マイクロチャンネル内の温度、圧力、pH、電流、電圧、磁場、超音波、光、あるいは応力を制御してもよい。
又、第3の特徴に係る分析システムの検出部は、マイクロチャンネル内、もしくはマイクロチャンネル外において、分子膜と前記物質との相互作用により、温度、濃度、pH、電気信号変化の検知、分子膜における表面状態変化の観測を行ってもよい。
本発明の第4の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備えるマイクロリアクタ内で、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成するステップと、第1の流体、あるいは第2の流体、あるいは第1の流体および第2の流体に含まれる物質と、分子膜との相互作用による膜への付着、吸着、沈着或いは透過によって引き起こされる分子膜の表面状態の変化、もしくは分子膜或いは流体の化学的、或いは物理的特性の変化を引き起こさせるステップと、物質の分子膜との相互作用の条件を制御するステップと、分子膜の表面状態の変化、分子膜或いは流体の化学的、或いは物理的特性の変化、或いは分子膜への物質の透過の変化を検知するステップと、反応部で生成された生成物を分離・回収するステップと、流体及び両親媒性分子を循環するステップと、分子膜を作製・再生するステップとを含む分析方法であることを要旨とする。
第4の特徴に係る分析方法によると、マイクロリアクタ中に単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセルなど分子膜の自動、迅速、連続作製方法を提供するとともに、この系を用いた様々な分析を行うことができる。
本発明の第5の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備え、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成し、マイクロチャンネル内に存在する分子膜に固定化される酵素、もしくはマイクロチャンネルの一定空間内に固定化される酵素によって、マイクロチャンネル内の流体に含まれる基質の酵素反応が行われる反応部と、酵素反応の未反応の基質および酵素を循環する循環部と、酵素が固定化される分子膜を作製・再生する作製・再生部と、酵素反応によって生成される生成物を分離・回収する分離・回収部と、酵素反応の結果を検知する検知部とを備える反応システムであることを要旨とする。
第5の特徴に係る反応システムによると、マイクロリアクタ中に単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセルなど分子膜の自動、迅速、連続作製方法を提供するとともに、この系を用いた様々なバイオリアクタを行うことができる。
本発明の第6の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備えるマイクロリアクタ内で、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成するステップと、マイクロチャンネル内に存在する分子膜に固定化される酵素、もしくはマイクロチャンネルの一定空間内に固定化される酵素によって、マイクロチャンネル内の流体に含まれる基質の酵素反応を行うステップと、酵素反応の未反応の基質および酵素を循環するステップと、酵素が固定化される分子膜を作製・再生するステップと、酵素反応によって生成される生成物を分離・回収するステップと、酵素反応の結果を検知するステップとを含む反応方法であることを要旨とする。
第6の特徴に係る反応方法によると、マイクロリアクタ中に単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセルなど分子膜の自動、迅速、連続作製方法を提供するとともに、この系を用いた様々なバイオリアクタを行うことができる。
本発明の第7の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備え、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成し、マイクロチャンネル内の水相に含まれる構造異常タンパク質および変性タンパク質のリフォールディングが行われるリフォールディング部と、リフォールディングされたタンパク質を分離・回収する分離・回収部と、水相に含まれる未反応の構造異常タンパク質および変性タンパク質を循環する循環部と、分子膜を作製・再生する作製・再生部と、リフォールディングされたタンパク質を検知する検知部とを備える反応システムであることを要旨とする。
第7の特徴に係る反応システムによると、構造異常タンパク質および変性タンパク質とマイクロリアクタ中に自動、迅速および連続的に作製される分子膜との相互作用により、構造異常タンパク質および変性タンパク質の微量、簡便、迅速および高感度検出マイクロチップ、バイオセンシングシステムを提供し、もしくは分子膜を備えるマイクロリアクタを利用して、簡便、短時間、省エネルギー、且つ温和な条件で構造異常タンパク質および変性タンパク質のリフォールディング、分離(抽出)を行うことができるので、難病の早期診断および治療システムを提供することができる。
本発明の第8の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備えるマイクロリアクタ内で、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成するステップと、マイクロチャンネル内の水相に含まれる構造異常タンパク質および変性タンパク質のリフォールディングを行うステップと、リフォールディングされたタンパク質を分離・回収するステップと、水相に含まれる未反応の構造異常タンパク質および変性タンパク質を循環するステップと、分子膜を作製・再生するステップと、リフォールディングされたタンパク質を検知するステップとを含む反応方法であることを要旨とする。
第8の特徴に係る反応方法によると、構造異常タンパク質および変性タンパク質とマイクロリアクタ中に自動、迅速および連続的に作製される分子膜との相互作用により、構造異常タンパク質および変性タンパク質の微量、簡便、迅速および高感度検出マイクロチップ、バイオセンシングシステムを提供し、もしくは分子膜を備えるマイクロリアクタを利用して、簡便、短時間、省エネルギー、且つ温和な条件で構造異常タンパク質および変性タンパク質のリフォールディング、分離(抽出)を行うことができるので、難病の早期診断および治療システムを提供することができる。
本発明の第9の特徴は、流体の流れの方向に沿って、一定間隔を有する一対の電極、もしくは電極系を配置するマイクロチャンネルと、マイクロチャンネル内へ流体(61)、絶縁性媒体(62)、物質を含む流体(63)、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液(64)、物質を含む流体(65)、絶縁性媒体(66)、流体(67)の順で繰り返し流し、流体(63)と流体(65)の境界面に分子膜を形成するマイクロリアクタと、流体(63)および流体(65)に含まれる物質と分子膜との相互作用による膜への付着、吸着、沈着或いは透過によって、分子膜の表面状態の変化、もしくは分子膜或いは流体の化学的、或いは物理的特性の変化を引き起こす反応部と、反応部の条件を制御する条件制御部と、反応部の変化信号を検知するための検知部と、流体、両親媒性分子および絶縁性媒体を循環する循環部と分子膜を作製・再生する作製・再生部とを備える分析システムであることを要旨とする。
第9の特徴に係る分析システムによると、マイクロリアクタ中に単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセルなど分子膜の自動、迅速、連続作製方法を提供するとともに、この系を用いた様々な分析および電気化学反応を行うことができる。
又、第9の特徴に係る分析システムは、マイクロチャンネル内の流体、両親媒性分子混合液、絶縁性媒体は、形成される分子膜の安定状態を保持するために、マイクロチャンネル内に滞留或いは流動してもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムにおける絶縁性媒体は、イオンを透過せず、低誘電率を有し、流体、物質を含む流体と分子膜に起因する電極の汚れを洗浄してもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムにおける一定間隔を有する電極対はマイクロチャンネル内に、複数対を配置してもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムにおける電極系は2電極系、3電極系もしくは4電極系であり、作用電極と対極は同じ流体側に配置、もしくは分子膜を隔てて、分別して配置されてもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムにおける流体(67)は電極を洗浄するための純水、有機溶媒、硫酸、塩酸、フッ化水素酸および硝酸、もしくは過塩素酸および過酸化水素を少量に添加した酸溶液、アルカリ性溶液のいずれの溶液であり、一種類以上を連続して流してもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムにおける電極対もしくは電極系の電極は流体(67)において、化学的洗浄もしくは電気化学的洗浄により、リニューアルしてもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムにおける試料は、(63)および流体(65)が留まるところであって、マイクロチャンネルと連接する微細チャンネルにより流体(63)もしくは流体(65)に注入されてもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムは、マイクロチャンネル内の温度、圧力、pH、電流、電圧、磁場、超音波、光、あるいは応力を制御する手段を更に備えてもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムにおけるマイクロリアクタは、イオンチャンネルを含有する分子膜、もしくは塩橋を更に備えてもよい。
又、第9の特徴に係る分析システムの検知部は、分子膜および流体の温度、濃度、
pH、電気信号の変化、前記分子膜の表面状態の変化をマイクロチャンネル内、もしくはマイクロチャンネル外で検知を行ってもよい。
本発明の第10の特徴は、流体の流れの方向に沿って、一定間隔を有する一対の電極、もしくは電極系を配置するマイクロチャンネルと、マイクロチャンネル内へ流体(61)、絶縁性媒体(62)、物質を含む流体(63)、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液(64)、物質を含む流体(65)、絶縁性媒体(66)、流体(67)の順で繰り返し流し、流体(63)と流体(65)の境界面に分子膜を形成するステップと、流体(63)および流体(65)に含まれる物質と分子膜との相互作用による膜への付着、吸着、沈着或いは透過によって、分子膜の表面状態の変化、もしくは分子膜或いは流体の化学的、或いは物理的特性の変化を引き起こさせるステップと、反応部の条件を制御するステップと、反応部の変化信号を検知するステップと、流体、両親媒性分子および絶縁性媒体を循環するステップと、分子膜を作製・再生するステップとを含む分析方法であることを要旨とする。
第10の特徴に係る分析方法によると、マイクロリアクタ中に単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセルなど分子膜の自動、迅速、連続作製方法を提供するとともに、この系を用いた様々な分析および電気化学反応を行うことができる。
本発明の第11の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備え、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成し、マイクロチャンネル内の水相に含まれる構造異常タンパク質、もしくはウィルスと分子膜との相互作用を行う反応部と、反応部の変化信号を検知する検知部と相互作用によって分子膜への付着、吸着、沈着或いは透過により、構造異常タンパク質、もしくはあるいはウィルスを分離、除去する分離・回収部とを備える分離システムであることを要旨とする。
第11の特徴に係る分離システムによると、構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)とウィルスのマイクロリアクタ中に自動、迅速および連続的に作製される分子膜との相互作用により、異常タンパク質やウィルスの微量、簡便、迅速および高感度検出マイクロチップおよびバイオセンシングシステムを提供し、もしくは分子膜を備えるマイクロリアクタを利用した構造異常タンパク質やウィルスの分離を行うことで、難病の早期診断および治療システムを提供することができる。
本発明の第12の特徴は、マイクロチャンネルと、第1の流体をマイクロチャンネルに導入する第1の導入口と、第2の流体をマイクロチャンネルに導入する第2の導入口と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液をマイクロチャンネルに導入する、第1の導入口と第2の導入口の間に設けられた第3の導入口とを備えるマイクロリアクタ内で、第1の流体と第2の流体との境界面に分子膜を形成するステップと、マイクロチャンネル内の水相に含まれる構造異常タンパク質、もしくはウィルスと分子膜との相互作用を行うステップと、相互作用によって引き起こされる分子膜表面状態の変化、分子膜或いは流体の化学的、或いは物理的特性の変化、或いは分子膜への構造異常タンパク質、もしくはウィルスの吸着、付着、沈着および透過の変化を検知するステップと、相互作用によって分子膜への付着、吸着、沈着或いは透過により、構造異常タンパク質、もしくはウィルスを分離、除去するステップとを含む分離方法であることを要旨とする。
第12の特徴に係る分離方法によると、構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)とウィルスのマイクロリアクタ中に自動、迅速および連続的に作製される分子膜との相互作用により、構造異常タンパク質やウィルスの微量、簡便、迅速および高感度検出マイクロチップおよびバイオセンシングシステムを提供し、もしくは分子膜を備えるマイクロリアクタを利用した構造異常タンパク質或いはウィルスの分離を行うことで、難病の早期診断および治療システムを提供することができる。
本発明の第13の特徴は、マイクロチャンネルと、逆ミセル溶液をマイクロチャンネルに導入する第6の導入口と、物質を含む原料水溶液をマイクロチャンネルに導入する第7の導入口と、酸化還元剤、分子シャペロン、水、金属イオンを含む逆ミセル溶液を導入する第10の導入口とを備え、マイクロリアクタ内で、逆ミセル溶液へ原料水相中の物質が正抽出され、もしくは抽出に伴う変性タンパク質のリフォールディングが行なわれる正抽出部と、原料水溶液の回収もしくは再循環を行う原料回収部と、マイクロチャンネルと、正抽出した逆ミセル溶液をマイクロチャンネルに導入する第11の導入口と、回収水溶液をマイクロチャンネルに導入する第12の導入口とを備え、マイクロリアクタ内で、正抽出した逆ミセル溶液から物質、あるいはリフォールディングされたタンパク質の逆抽出を行う逆抽出部と、逆ミセル溶液を循環させる循環部と、逆抽出された物質或いはリフォールディングされたタンパク質を回収する生成物回収部とを備える抽出システムであることを要旨とする。
第13の特徴に係る抽出システムによると、簡便、短時間、省エネルギー、且つ温和な反応・抽出条件で、物質の高効率および迅速抽出、タンパク質などの生体関連物質の高活性、高効率および迅速抽出、変性タンパク質の迅速リフォールディングを行なう逆ミセルによるマイクロ抽出システムを提供することができる。
又、第13の特徴に係る抽出システムにおいて、逆ミセルは少なくとも一種類以上の両親媒性分子からなる逆ミセルと、少なくとも一種類以上の両親媒性分子と少なくとも一種類以上の助界面活性剤、リガンド、リン脂質、糖脂質、コレステロール、タンパク質、スフィンゴ脂質、酸化還元種、細胞認識分子、受容体からなる混合型逆ミセルであってもよい。
又、第13の特徴に係る抽出システムにおいて、逆ミセルの中心に存在するウォータープールの中に、核酸関連物質、タンパク質がいずれか1つ、もしくはこれらが混在し、そこへ生体関連物質が取り込まれてもよい。
又、第13の特徴に係る抽出システムにおいて、変性タンパク質を含む逆ミセルのウォータープール中に酸化還元剤、分子シャペロン、金属イオンが取り込まれ、逆ミセルのウォータープール内で、タンパク質の立体構造および活性の回復を行ってもよい。
又、第13の特徴に係る抽出システムにおいて、逆抽出部は、回収水相のpH或いは塩濃度を制御する分岐チャンネル、あるいは親水性有機溶媒を添加する分岐チャンネルを具備し、さらに、マイクロチャンネルの温度条件を制御する装置を備えてもよい。
本発明の第14の特徴は、マイクロチャンネルと、逆ミセル溶液をマイクロチャンネルに導入する第6の導入口と、物質を含む原料水溶液をマイクロチャンネルに導入する第7の導入口と、酸化還元剤、分子シャペロン、水、金属イオンを含む逆ミセル溶液を導入する第10の導入口とを備え、マイクロリアクタ内で、逆ミセル溶液へ原料水相中の物質が正抽出され、もしくは抽出に伴う変性タンパク質のリフォールディングが行なわれるステップと、原料水溶液の回収もしくは再循環を行うステップと、マイクロチャンネルと、正抽出した逆ミセル溶液をマイクロチャンネルに導入する第11の導入口と、回収水溶液をマイクロチャンネルに導入する第12の導入口とを備え、マイクロリアクタ内で、正抽出した逆ミセル溶液から物質、あるいはリフォールディングされたタンパク質の逆抽出を行うステップと、逆ミセル溶液を循環させるステップと、逆抽出された物質或いはリフォールディングされたタンパク質を回収するステップとを含む抽出方法であることを要旨とする。
第14の特徴に係る抽出方法によると、簡便、短時間、省エネルギー、且つ温和な反応・抽出条件で、物質の高効率および迅速抽出、タンパク質などの生体関連物質の高活性、高効率および迅速抽出、変性タンパク質の迅速リフォールディングを行なう逆ミセルによるマイクロ抽出システムを提供することができる。
本発明の第15の特徴は、細胞を供給する細胞供給系と、無細胞液を生成する無細胞液生成系と、アミノ酸を供給するアミノ酸供給系と、核酸を供給する核酸供給系と、エネルギ-を供給するエネルギ-供給系と、タンパク質を合成する無細胞タンパク質合成系と、無細胞タンパク質合成系で合成されたタンパク質の抽出或いはリフォールディングを行う抽出・リフォールディング系と、無細胞タンパク質合成系から、もしくは抽出・リフォールディング系からATPを回収・再生するATP再生系と、無細胞タンパク質合成系から、もしくは抽出・リフォールディング系からタンパク質を回収するタンパク質回収系とを備えるタンパク質合成システムであることを要旨とする。
第15の特徴に係るタンパク質合成システムによると、分子膜を備えるマイクロリアクタ、逆ミセルによるマイクロ抽出システムを利用して、生体模擬タンパン質合成システムを提供することができる。
又、第15の特徴に係るタンパク質合成システムは、無細胞液生成系は、分子膜を備えるマイクロリアクタ内で、細胞と分子膜、特に脂質二分子膜との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーによる膜融合によって、もしくは分子膜に刺激を与えることによって、細胞内の小器官及び細胞質基質を抽出してもよい。
又、第15の特徴に係るタンパク質合成システムにおいて、無細胞タンパク質合成系は、分子膜を備えるマイクロリアクタ内でタンパク質を合成し、合成されたタンパク質は分子膜との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーによって、分子膜への付着、吸着、沈着、透過もしくは分子膜の中に取り込まれることで抽出し、タンパク質の凝集によるタンパク質の変性を避けることができることとしてもよい。
又、第15の特徴に係るタンパク質合成システムにおいて、タンパク質の抽出・リフォールディング系は、分子膜を備えるマイクロリアクタ、もしくは逆ミセルによるマイクロリアクタ抽出システムにおいて、タンパク質の抽出とリフォールディングを行ってもよい。
又、第15の特徴に係るタンパク質合成システムにおいて、ATP再生系は、分子膜を備えるマイクロリアクタ内で電気化学的反応、光電気化学反応、及び化学反応によってATPを再生してもよい。
本発明の第16の特徴は、無細胞液生成系へ細胞供給系から無細胞液を供給し、無細胞生成系において無細胞液を抽出・生成するステップと、無細胞タンパク質合成系へ無細胞液生成系から無細胞液と、アミノ酸供給系からアミノ酸と、核酸供給系から核酸と、ATP生成系からATPと、エネルギー供給系によるエネルギーを供給し、無細胞タンパク質合成系においてタンパク質を合成するステップと、無細胞タンパク質合成系によって合成されたタンパク質を抽出とリフォールディングを行うステップと、抽出・リフォールディング系からATPを回収・再生するステップと、抽出・リフォールディング系によって生成されたタンパク質を回収するステップとを含むタンパク質合成方法であることを要旨とする。
第16の特徴に係るタンパク質合成方法によると、分子膜を備えるマイクロリアクタ、逆ミセルによるマイクロ抽出システムを利用して、生体模擬タンパン質合成システムを提供することができる。
(1)本発明によると、マイクロリアクタ中に単分子膜、二分子膜、逆二分子膜、脂質二分子膜、分子多重層膜、逆ミセル、ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョン、LB膜などの分子膜の自動、迅速、連続作製方法を提供するとともに、この系を用いた様々な迅速化学反応、バイオリアクタ、構造異常タンパク質および変性タンパク質のリフォールディング、分離(抽出)システムおよび分析システムを提供することができる。
(2)又、本発明によると、構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)或いはウィルスのマイクロリアクタ中に自動、迅速および連続的に作製される分子膜との相互作用により、これらの物質やウィルスの微量、簡便、迅速および高感度検出マイクロチップ、バイオセンシングシステムを提供し、もしくは分子膜を備えるマイクロリアクタを利用した構造異常タンパク質のリフォールディング、分離(抽出)を行うことで、難病の早期診断および治療システムを提供することができる。
(3)又、本発明によると、簡便、短時間、省エネルギー、且つ温和な反応・抽出条件で、物質の高効率および迅速抽出、タンパク質などの生体関連物質の高活性、高効率および迅速抽出、変性タンパク質の迅速リフォールディングを行なう逆ミセルによるマイクロ抽出システムを提供することができる。
(4)又、本発明によると、分子膜を備えるマイクロリアクタ、逆ミセルによるマイクロ抽出システムを利用して、生体模擬タンパン質合成システムを提供することができる。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では単分子膜、二分子膜、脂質二分子膜、逆二分子膜、分子多重層膜、脂質多重層膜、ミセル、逆ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョン、LB膜のいずれか一つ、もしくはこれらが混在した構造を有する分子膜を、自動的に、迅速に、連続的に作製することが可能なマイクロリアクタについて説明する。又、このマイクロリアクタを用いた様々な迅速化学反応、バイオリアクタ、構造異常タンパク質および変性タンパク質のリフォールディング、分離(抽出)システム及びバイオセンシングシステム(マイクロ分析システム)について説明する。
(第1の実施の形態に係るマイクロリアクタの特徴)
第1の実施の形態では、マイクロチャンネル内で形成される液層流/液層流間、気相/液層流間及び液層流/固相間の安定な接触界面を利用し、これらの界面間の層流方向に沿って、分子膜を作製するための両親媒性分子混合液を連続又は断続的に流出させることで、従来、困難とされる大面積、異なる形状を有し、しかも容易に更新可能な安定な分子膜を作製することを特徴とするものである。
更に、マイクロ空間に存在する分子膜の特徴を生かし、さまざまな物質の透過、化学反応、膜と物質の相互作用によるマイクロリアクタを実現することを特徴とするものである。
特に、マイクロチャンネル内で形成される脂質二分子膜は生体膜モデルとして利用可能なことを知見し、本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、第1の実施の形態では、分子膜を備えるマイクロリアクタであって、マイクロリアクタは両親媒性分子混合液を導入する第3の導入口、水相、油相もしくは気相を導入する第1の導入口もしくは第2の導入口を具備し、これらの導入口はリング形状、楕円形状、半円形状、四角形状、不等辺多角形状であることを特徴とする。
第1の実施の形態に係るマイクロリアクタは、少なくとも一種類以上の蛋白質、核酸、糖脂質、コレステロール、蛍光色素、リガンド、光感応性分子、イオンチャンネル、電子共役系の物質、助界面活性剤、クラウンエーテル、フラーレン、カーボンナノチューブ、ポルフィリン類、シクロデキストリン、分子トング、酸化還元剤、ステロイド、ポリペプチド或いはペプチドなどの物質を含んでなる少なくとも一種類以上の両親媒性分子、脂質、スフィンゴ脂質、境界脂質と蛍光分子で修飾した脂質と有機溶媒からなる両親媒性分子混合液25を導入する第3の導入口21と、生体関連物質、各種物質を含んでなる第1の流体26及び第2の流体27を導入する第1の導入口22及び第2の導入口23を具備し、これらの導入口の一方は上記両親媒性分子混合液25、第1の流体26及び第2の流体27の注入チャンネル及び自動制御機能を有するポンプに連接し、もう一方は各種立体形状を有するマイクロチャンネルに連接し、マイクロチャンネル内の第1の流体26及び第2の流体27の層流間もしくは第1の流体26及び第2の流体27とマイクロチャンネル壁面間において、両親媒性分子混合液からなるマイクロチャンネルを貫通した二次元(平面)もしくは三次元(円筒状、楕円筒状など)構造を有する物質と分子を含んでなる分子膜が自動、迅速及び連続的に形成され、分子膜は静止もしくは流動状態に存在し、脂質二分子膜の場合は人工生体膜モデルとして機能し、物質透過及び化学反応の場もしくは両側に接した両流体の境界を提供し、マイクロリアクタはマイクロチャンネル内の温度、圧力、pH、電流、電圧、磁場、超音波、あるいは応力の実験条件を制御する機能を具備し、又はチャンネル内への光の入射、光照射に伴う物質の分子膜への吸着、付着、沈着および透過および化学反応を制御する機能を具備し、更にマイクロチャンネル内で起こるさまざまな化学反応を制御及び検知するための制御及び検出手段とを具備し、又は第1の流体26及び第2の流体27に含まれる一種類以上の物質の分子膜体との相互作用による膜への付着、吸着、沈着ならびにこれらの物質の膜への透過、もしくは第1の流体26及び第2の流体27に存在する小胞体の分子膜と融合によって、小胞体内に含まれる物質の放出の挙動を検知できる装置を具備することを特徴とするものである。
第1の実施の形態における分子膜は、生体関連物質、分子を含んでなる単分子膜、二分子膜、脂質二分子膜、逆二分子膜、分子多重層膜、脂質多重層膜、ミセル、逆ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョン、LB膜のいずれか一つ、もしくはこれらが混在した構造で存在することを特徴とするものである。
又、第1の実施の形態における分子膜は二次元の平面状、三次元の柱状、円錐状、切頭円錐状、円筒状、楕円筒状、多角状の少なくとも一つ以上の形状を有することを特徴とするものである。
更に、第1の実施の形態における分子膜は脂質、境界脂質、蛍光分子で修飾した脂質、蛋白質(酵素、分子シャペロン、抗原、抗体)、核酸、糖脂質、コレステロール、蛍光色素、リガンド、スフィンゴ脂質、光感応性分子、イオンチャンネル、電子共役系の物質、助界面活性剤、クラウンエーテル、フラーレン、カーボンナノチューブ、ポルフィリン類、シクロデキストリン、分子トング、ポリペプチド或いはペプチドなどの物質を含んでなることを特徴とするものである。
第1の実施の形態における第1の導入口22、第2の導入口23および第3の導入口21は、リンク状、楕円状、角状、六角状、不等辺多角状などであることを特徴とするものである。
なお、第3の導入口21、第1の導入口22、第2の導入口23は同じ平面に設計されなくてもよい。
第1の実施の形態におけるマイクロリアクタの温度は、マイクロチャンネル内への光照射、ホットプレート、恒温槽もしくはマクロリアクタと一体化したマイクロ温度コントロールチップにより、系全体の温度を制御することできるシステムを具備することを特徴とするものである。
第1の実施の形態におけるマイクロチャンネル内に起こるさまざまな化学反応及び分子膜への物質透過を検知するための検知手段として、マイクロチャンネル内に形成される分子膜と水相、油相および気相内(第1の流体26及び第2の流体27)に含まれる物質成分との相互作用により引き起こされる電気信号変化の測定、pH、粘度、密度、屈折率、吸収スペクトル変化および蛍光スペクトル変化の測定、分子膜を透過した蛍光物質、イオン、酸化還元種、および分子の検出、分子膜における表面状態変化の観測、又は水相および油相(第1の流体26及び第2の流体27)中の温度変化の測定による各種変化信号を検出することを特徴とするものである。
第1の実施の形態における水相、油相もしくは気相(第1の流体26及び第2の流体27)は水媒体、有機媒体もしくは気体、超臨界流体であり、蛋白質、核酸、核酸関連物質、アミノ酸、リガンド、ポリペプチド、ペプチドおよび糖などの生体関連物質、もしくは、基質、無機物、蛍光物質、有機物などの非生体関連物質と、これら生体関連物質もしくは非生体関連物質を少なくとも一種類以上含んでなる小胞体とを、少なくとも一種以上を(水相、油相もしくは気相の各特性に応じて)含有することを特徴とするものである。
第1の実施の形態における第1の流体26及び第2の流体27は水と水、油と油、気体と気体、気体と水、水と超臨界流体、気体と油、又は水と油などで組み合わせた第1の流体26及び第2の流体27であることを特徴とするものである。
第1の実施の形態における第1の流体26、第2の流体27および両親媒性分子混合液25のマイクロチャンネルの導入口と出口にバルブが設置され、安定した分子膜が形成された際、両端のバルブを同時に閉めることによって、もしくは導入口から流入される第1の流体26、第2の流体27、両親媒性分子混合液の流入圧力を制御することによって、静止系の溶液プールを提供することできることを特徴とするものである。
第1の実施の形態における透過及び化学反応を検出する手段のひとつとして、分子膜を境界に両側のマイクロチャンネルの内側に、もしくは第1の流体26及び第2の流体27に電気信号を検知できるマイクロ電極もしくは入射光を反射できる鏡面を設置することを特徴とするものである。
第1の実施の形態におけるマイクロリアクタを構成する単マイクロチャンネルの幅、長さ及び形状は可変であり、単一マイクロチャンネルは一種類以上の立体構造から構成されることを特徴とするものである。
第1の実施の形態における分子膜を備えるマイクロリアクタは、シングルマイクロチャンネルから、もしくはマルチマイクロチャンネルから構成・集積することを特徴とするものである。
第1の実施の形態における化学場は、第1の流体26及び第2の流体27で行われる酵素反応、タンパク質合成などの化学反応の生成物を、分子膜を境界としたその反対側の流体に抽出されることを特徴とするものである。
第1の実施の形態では、分子膜、特に、生体膜である脂質二分子膜は細胞融合において、小胞、生体膜を持つ生体関連物質との膜融合を行う際、膜の揺らぎが伴うことに着目し、膜の揺らぎをマイクロリアクタ内で再現することを特徴とする。
又、物質の分子膜5への拡散及び透過するドライビングフォースは、例えば、濃度勾配もしくは電位勾配がある。即ち、物質の濃度勾配による自然拡散と、膜の両側に印加される電圧に起因する電位勾配による物質移動の促進を利用して、物質は拡散、移動する。
又、物質は以下のような方法で膜を透過することができる。
1)直接透過:分子膜(脂質二分子膜)を直接に透過する(有機物などの疎水性物質)。
2)イオンチャンネルなどによる膜透過(各種イオン)。
3)膜受容体による膜透過(味物質)。
3)エレクトロポーレーションの技術を用いて、脂質二分子膜に電気的な刺激で小さな穴をあけ、物質(DNA、RANなどの核酸関連物質、タンパク質など)を膜の相反側に送り込む。
又、第1の実施の形態においては、マイクロチャンネル内で形成された二分子膜を重合させることもできる。
又、マイクロチャンネル内でマイクロドメインが部分的に形成される二分子膜を形成させることができる。もしくは、マイクロドメイン類似機能を有する二分子膜を層流間で形成させることもできる。特に、後者の場合は、膜全体はマイクロドメインの特性を有するので、生体膜より遥かにアミロイド型タンパク質及びウィルスなどの物質と感度よく作用することができる。従って、後者のマイクロドメイン類似膜を有するマイクロセンサを用いる場合、より高感度、迅速に試料を検知することができる。
上記のマイクロドメイン類似膜はマイクロチャンネル内に限らず、溶液中に微小孔を有する基板に作製される場合も、同様に試料と相互作用する特性を有するので、これらの構成系でマイクロドメイン類似機能膜を構築した場合、同様にアミロイド型タンパク質もしくはウィルスなどのセンサとして応用することができる。
(マイクロリアクタの材料、作製方法及び大きさ)
第1の実施の形態に係るマイクロリアクタ1及びマイクロチャンネル3を構成する材料としは、絶縁性を有する1種類以上の材料を用いるならば特に限定されるものではない。
例えば、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、シリカ、高分子、セラミックス、SiCセラミックス、ゲル、フォトレジスト、プラスチック、シリコン樹脂を用いることができる。又、これらの材料を溶融と陽極接合などの方法で接合し、多層の材料からなる絶縁材料を用いることもできる。
マイクロチャンネルは鋳型法などにより作製することができる。又、化学的もしくは電気化学的な方法で作製することができる。又、上記の絶縁材料を用いて溶接、陽極接合もしくは張り合わせなどにより、異なる材料から成るマイクロチャンネルを作製することができる。更に、光反応性を有するフォトレジスト、又は熱可塑性を有するプラスチックを用いることにより、光照射や鋳型加熱等の方法でマイクロチャンネルを作製することができる。
鋳型法などで作製したマイクロチャンネルは異なる材料からなる基板との張り合わせにより、マイクロリアクタを構成することもできる。
上述のように、マイクロリアクタを作製する材料および方法がさまざまあるが、本発は特に、これらの材料および作製方法に限定されるものではない。
又、マイクロチャンネル3は、数10μm〜数1000μmの溝であり、マイクロチャンネル3が形成される流路基板は、数cm〜数10cm角のマイクロチップを使用することができるが、マイクロチャンネル3は、特に、上記の大きさに限定されるものではない。
(分子膜などの種類)
第1の実施の形態に係る分子膜5は、マイクロチャンネル内の液/液層流間、気/液層流間、もしくは液層流/壁面間で、二次元もしくは三次元的に、流動もしくは静止で分子膜は、単分子膜、二分子膜、脂質二分子膜、逆二分子膜、分子多重層膜、脂質多重層膜、ミセル、逆ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョン、LB膜のいずれか一つ、もしくはこれらが混在した構造で構成される。
分子膜5は、少なくとも一種類以上の両親媒性分子、脂質、境界脂質、スフィンゴ脂質と蛍光分子で修飾した脂質からなり、もしくは蛋白質(酵素、分子シャペロン、抗原、抗体、ホルモン)、核酸、分子、糖脂質、コレステロール、蛍光色素、リガンド、光感応性分子、イオンチャンネル、電子共役系の物質、助界面活性剤、クラウンエーテル、フラーレン、カーボンナノチューブ、ポルフィリン類、シクロデキストリン、分子トング、酸化還元剤、ステロイド、ポリペプチド或いはペプチドなどの物質など少なくとも1種類以上の物質を含む膜である。
又、分子膜を構成する両親媒性分子として、例えば脂質を用いることができる。脂質として、特に脂質二分子膜を形成する脂質としては、トリオレイン、モノオレイン、卵黄レシチン、リン脂質類、合成脂質類、リゾリン脂質類、グリコシルジアシルグリセロール類、プラズマローゲン類、スフィンゴミエリン類、ガングリオシド類、蛍光脂質、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質、レシチン、ステロイト、ステロール類、コレステロール、酸化コレステロール、シヒドロコレステロール、グリセリル・ジステアレート、グリセリル・モノオレアート、グリセリル・ジオレアート、イソソルベイト・モノブラシデイド、ソルビタン・トリステアレート、ソルビタン・モノオレアート、ソルビタン・モノパルミトレアート、ソルビタン・モノラウレート、ソルビタン・モノブラシデート、ドデシル酸・リン酸塩、ジオクタデシル・リン酸塩、トコフェノール、クロロフィル、キサントフィル、ホスファチジル・エタノールアミン、ホスファチジル・セリン、イノシトール、臭化へキサデシルトリメチルアンモニウム、ジグルコシル・ジグリセリド、ホスファチジル・コリン、レチナール/酸化コレステロール/レクチン/ロドプシン、脳全脂質、ヒト赤血球全脂質などを用いることができるが、その他、分子膜の形成が可能な脂質および合成脂質などのものならば、特に限定されるものではない。
又、分子膜を作製するために、両親媒性分子(脂質)を溶解する溶媒としては、例えば、C4〜C6炭化水素、C6〜C12炭化水素、デカン、オクタン、ドデカン、ヘキサン、ブタノール、ヘキサンデカンおよびクロロホルムなどの疎水性溶媒、もしくはメタノール及びアセトニトリルなどの親水性溶媒を用いることができる。通常、クロロホルムなどの極性溶媒よりも、デカンなどの無極性溶媒を用いることが望ましい。又、上述の溶媒は、単独もしくは混合して用いることも可能であり、又、水溶性の生体関連物質を溶解させるために、少量の水を溶媒中に添加してもよい。両親媒性分子(脂質)を溶解、分散できる溶媒及び混合溶媒であれば、特に溶媒の種類、混合比及び混合状態に限定されるものではない。
又、分子膜の一種である逆ミセル型分子膜を形成するための界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤があり、具体的、以下のようなものを挙げることができる。
例えば、アルキル四級アンモニウム塩(CTAB、TOMAC等)、アルキルピリジニウム塩(CPC等)、ジアルキルスルホコハク酸塩(AOT等)、ジアルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩(SDS等)、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン系界面活性剤(Tween系、Brij系、Triton系等)、アルキルソルビタン(Span系等)、レシチン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
又、逆ミセル溶液を構成する溶媒としては、特に限定されないが、有機溶媒を用いる場合、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素等を用いることができる。
又、有機溶媒の代わりに、例えば、超臨界流体や高圧流体を用いて、逆ミセル溶液を調製することができる。例えば、エタン、プロパン、二酸化炭素などの超臨界流体や高圧流体を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
又、逆ミセルを安定化させるために助界面活性剤を添加する場合がある。例えば、オクタノールなどの高級アルコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
又、分子膜に含まれる生体関連物質として、糖脂質、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、核酸関連物質、アミノ酸などがある。
その中のタンパク質は、更に、酵素、糖タンパク質、分子シャペロン、ミオグロビン、ヘモグロビン、ATPアーゼ、抗原と抗体などに分類されることができる。以下、特に、本発明に係わるバイオリアクタ、バイオセンサで用いられる酵素、抗原及び抗体などのタンパク質を列挙して説明するが、本発明は特に、これらに限定されるものではない。
分子膜の脂質分子間に取り込まれている酵素、分子膜の表面に静電的、親水的、疎水的相互作用およびイオン的相互作用、バイオアフィにティーなどにより固定化される酵素、マイクロチャンネルの一定空間内に存在する酵素として、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、脱離酵素、異性化酵素、合成酵素を用いることができる。以下これらの種類を示すが、本発明に用いる酵素はこれらに限定されるものではない。
例えば、アシル−CoAオキシダーゼ、アシル−CoAシンセターゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、アスパアラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸β−脱炭酸酵素、アスパルターゼ、アセテートキナーゼ、アミノアシラーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラニン脱水素酵素、アラバナーゼ、アラビノシダーゼ、RNAポリメラーゼ、アルカリキシラナーゼ、アルカリセルラーゼ、アルカリプロテアーゼ、アルカリリパーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルドラーゼ、α−アセト乳酸脱炭酸酵素、α−キモトリプシン、イソアミラーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、インベルターゼ、ウリカーゼ、ウレアーゼ、ウロキナーゼ、エステラーゼ、N-アセチルノイラミン酸リアーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、ω−ヒドロキシラーゼ、カタラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、γ−グルタミントランスペプチダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、キシランアセチルエステラーゼ、キシロースイソメラーゼ、キモシン、グアノシン5’−リン酸シンセターゼ、クエン酸シンセターゼ、グリセロールオキシダーゼ、グリセロールキナーゼ、グリセロール3−リン酸オキシダーゼ、グルコアミラーゼ、グルコシダーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、グルコースイソメラーゼ、グルコース−1−オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース脱水素酵素、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デカルボキシダーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、クレアチニナーゼ、クレアチニンデイミナーゼ、クレチナーゼ、クロロペルオキシダーゼ、5’−アデニル酸デアミナーゼ、コリパーゼ、コリンエステラーゼ、コリンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、サーモライシン、ザルコシンオキシダーゼ、ザルコシンデヒドロゲナーゼ、3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3−クロロ−D−アラニンクロリドリアーゼ、ジアホラーゼ、シアン酸アルドラーゼ、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、ジヒドロピリミジナーゼ、ストレプトキナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スブチリシン、セファロスポリンアシラーゼ、セファロスポリンアミダーゼ、セルラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、チトクロムC、チミディレートシンターゼ、DNAポリメラーゼ、デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ、デキストラナーゼ、ドーパデカルボキシラーゼ、トランスグルタミナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、トリプシン、トリプトファナーゼ、トリプトファンシンセターゼ、ナリンギナーゼ、ニトリルヒドラターゼ、乳酸脱水素酵素、ノイラミニダーゼ、ハロヒドリンエポキシダーゼ、ハロヒドリンハロゲンハライドリアーゼ、ハロペルオキシダーゼ、ヒスチジンアンモニアリアーゼ、ヒダントイナーゼ、ピラノース−2−オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、フェニルアラニンアンモニアリナーゼ、フェノールオキシダーゼ、プトレッシンオキシダーゼ、フラビン酵素、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、プルラナーゼ、プロテアーゼ、プロウロキナーゼ、プロティナーゼ、プロリンイミノペプチダーゼ、ブロモペルオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、ペクチントランスエリミナーゼ、β−エーテラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルカナーゼ、β−グルコアミラーゼ、β−フルクトフラノシダーゼ、β−フラクトフラシノダーゼ、ペプチダーゼ、ヘミセルラーゼ、ペニシリンアミラーゼ、ペニシリンアミダーゼ、ペルオキシダーゼ、ペントサナーゼ、ホスホジエステラーゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、マンナナーゼ、ムタナーゼ、ムタロターゼ、ラクターゼ、ラクトノヒドロラーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラク又ゼ、ラセマーゼ、ラッカーゼ、リアーゼ、リガーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、リジルエンドペプチダーゼ、リジンオキシダーゼ、リジンデカルボキシラーゼ、リゾチーム、リパーゼ、リブロース1、5−ビスホスフェイトカルボキシラーゼ、リポプロテインリパーゼ、リボヌクレアーゼA、リンゴ酸デヒドロキナーゼ、ルシフェラーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、ロダナーゼなど酵素を用いることができ、又は、遺伝子組み替えで、新たに創出される、人工酵素を用いることのできるが、これらに限定されるものではない。
又、アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸などが用いられるが、これに限定されるものではない。
又、ペプチドとしては、リジルリジルグリシルグルタミン酸、システイルセリルアスパラギニルオリシルセリルチロシルセリルバリルロイシルグリシルリジン、トリプトファニルグリシン、トリプトファニルグリシルグリシン、トリプトファニルフェニルアラニン、トリプトファニルトリプトファン、フェニルアラニルグリシン、フェニルアラニルグリシルグリシン、グリシルチロシン、チロシルグリシルグリシン、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、トリプトファニルグリシン、フェニルアラニルグリシン、チロシルグリシン、フェニルアラニルバリン、チロシルバリン、ロイシルグリシルグリシン、グリシルセリルフェニルアラニン、グリシルフェニルアラニルセリン、チロシルグリシルグリシン、グリシルフェニルアラニルアラニン、グリシルアラニルチロシン、グリシルフェニルアラニルフェニルアラニン、グリシルリシルフェニルアラニン、リシルセリルフェニルアラニン、フェニルアラニルフェニルアラニン、フェニルアラニルフェニルアラニルフェニルアラニン、リシルリシルチロシン、チロシルチロシルフェニルアラニン、チロシルチロシルチロシン、アラニルトリプトファン、グリシルフェニルアラニルフェニルアラニンなどが用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
又、タンパク質としては、眼にある光情報を受け取るロドプシンからはじめ、体を疾病から守る免疫グロブリン、抗体などのタンパク質、ホルモン、外界のさまざまな味、においなどの情報を感知、伝達、処理及び記憶するタンパク質、消化タンパク質、輸送タンパク質、受容体タンパク質などが用いられる他、自然界に存在するヒトもくしは生物などに由来するタンパク質に係わらず、遺伝子組み替えにより、新たに創出された遺伝子組み替え人工タンパク質を用いることもできる。
又、分子膜に導入可能な光を感応する分子として、例えば、アゾベンゼン、スチルベン、アントラセン、ナフタレン、ピレン、カルバソールなどのさまざまなπ電子系発色団を持つものを用いることができる。又、光誘起電子移動反応が可能な分子として、例えば、トリス(2、2’ビピリジル)ルテニウムニ塩化物などのものを用いることができる。又、光異性化を行う誘導体として、例えば、光スピロピランなどを用いることができる。その他、ロドプシン、バクテリオロドプシン、葉緑素、クロロフィルなどの光感応性分子を用いることができるが、特に、これらに限定されるものではない。
又、核酸関連物質として、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、アデノシン三リン酸、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)などが用いられるが、特に、これらに限定されるものではない。
脂質二分子膜を透過する有機物質の種類として、例えば、インドール-3-エタノール、インドール、5-ヒドロキシインドール、セロトニン、トリプトファン、プロカイン、p-アミノ安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、スルファニルアミド、3、4-ジヒドロキシフェニルアラニン、ピリドキサミン、ピリドキシン、キニジン、キューネ、アセチルコリン、サリシルアミド、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、D-マンノース、D-リボース、D-フルクトース、2-デオキシ-D-グルコース、3-O―メチル-D-グルコースなどが用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(マイクロ分析システム)
次に、マイクチャンネル内で形成された単分子膜、二分子膜、脂質二分子膜、逆二分子膜及び分子膜にタンパク質(酵素、抗体)、核酸、スフィンゴ脂質と蛍光分子で修飾した脂質、糖脂質、コレステロール、蛍光色素、リガンド、光感応性分子、助界面活性剤、クラウンエーテル、フラーレン、カーボンナノチューブ、ポルフィリン類、シクロデキストリン、分子トング、酸化還元剤、ステロイド、ポリペプチドおよびペプチドなどを組み込んだバイオセンサチップ、マイクロリアクタ分析システム(バイオセンシングシステム)について、図1、図6〜図8を用いて説明する。
(マイクロ分析システムの構造)
本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ分析システムは、図1に示すように、分子膜を作製する作製・再生部11と、マイクロリアクタ1で起こる様々な反応の反応条件を制御する条件制御部12と、これらの反応及び変化の結果を検知、観測する検知部13と、さまざまな化学反応、物理的及び化学的現象を起こさせる反応部14と、反応の効率を上げる循環部15と、生成物を回収する分離・回収部16とを備える。これらの構成部は、バイオリアクタ及びバイオセンサの種類に対応して、自由に組み合わせることができる。
作製・再生部11は、図2に示すように、両親媒性分子混合液25を微細流路(マイクロチャンネル)3に導入する第3の導入口21、第1の流体26をマイクロチャンネル3に導入する第1の導入口22、第2の流体27をマイクロチャンネル3に導入する第2の導入口23を備える。マイクロチャンネル3内では、両親媒性分子混合液25を境界壁として、第1の流体26と第2の流体27が拡散すると、分子膜のみが両液界面に残る。両親媒性分子混合液25、第1の流体26及び第2の流体27の種類によって、図2(a)に示すように、異なる分子膜が形成される。例えば、水相(W)/油相(O)および気相(V)/水相(W)界面では単分子膜が形成され、油相(O)/油相(O)界面では、逆二分子膜が形成され、水相(W)/水相(W)界面では、二分子膜が形成される。その他にも、ミセル、逆ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョンなどの分子膜の構造が形成される。
又、マイクロチャンネル3は、直管、エルボ、或いはベンドのいずれか1つ、もしくはこれらが混在する構造であってもよい。
又、マイクロチャンネル3の壁面は、平滑状、凹凸状、あるいは表面修飾のいずれか1つ、もしくはこれらが混在する構造であってもよい。
マイクロチャンネル3は、図2に示すように、マイクロリアクタ1に形成された溝形状としてもよく、図4に示すように、リング状としてもよい。その他、用途、脂質の種類及び分子膜の構成成分などの条件に応じて、楕円状、角状、六角状などの多角状の形状を有してもよい。又、マイクロチャンネル3の形状により、作製される分子膜は、平面状や円筒状の形状となる。図2(b)は、平面二分子膜の模式図であり、図4(b)は、円筒状二分子膜35の模式図である。
又、マイクロリアクタ1は、第1の流体26、第2の流体27、両親媒性分子混合液25をそれぞれの導入口からマイクロチャンネル3内へ送り込む、もしくは引き出すための自動制御ポンプを備える。又、マイクロリアクタ1は、マイクロチャンネル3、あるいは第1の導入口22、第2の導入口23、あるいは第3の導入口21にバルブを1以上備える。又、マイクロリアクタは、マイクロチャンネル3から分岐する分岐チャンネルと、試料を注入する注入口を備える。
又、マイクロリアクタ1のマイクロチャンネル3において、塩橋を備える。
又、作製・再生部11は、図3に示すように、マイクロチャンネル3と、第1の流体26をマイクロチャンネル3に導入する第1の導入口22と、両親媒性分子を含む両親媒性分子混合液25をマイクロチャンネル3に導入する第3の導入口21とを備え、第1の流体26とマイクロチャンネルの壁面との境界面に分子膜を形成する構成としてもよい。
又、図5(a)に示す単管式マイクロチャンネルを集積することにより、図5(b)に示す多管式マイクロチャンネルを提供することができる。尚、第1の実施の形態において、同様な分子膜を備えるマイクロリアクタ機能を有するものであれば、系のスケールアップ方法は特に限定されるものではない。
尚、安定且つ静止もしくは流動的な分子膜を作製することができれば、第3の導入口21の形状及び第3の導入口21と接続した注入チャンネルの構造は特に限定されるものではない。第1の導入口22及び第2の導入口23は、図2及び図3に示したように、それぞれ独立した注入チャンネルと接続し、それぞれ異なる組成や種類の流体からなる第1の流体26と第2の流体27を流出させることができる。
又、第1の導入口22、第2の導入口23及び第3の導入口21は半円状(図2)リング状及び円筒状(図4)の形状を有し、第1の導入口22、第2の導入口23及び第3の導入口21の形状にそれぞれ対応して同様なマイクロチャンネル構造(図2)と接続、もしくはマイクロチャンネルの構造を徐々に変化させるマイクロチャンネルと接続することができる。その他、用途、両親媒性分子(脂質)の種類及び分子膜の構成成分などの条件に応じて、楕円状、角状、六角状などの多角状の形状を有する第1の導入口22、第2の導入口23及び第3の導入口21、もしくはさまざまな形状のマイクロチャンネルを用いることができる。本発明は、安定且つ静止もしくは流動的な分子膜を作製することができれば、第1の導入口22、第2の導入口23及び第3の導入口21の形状は特に限定されるものではない。又、第1の導入口22、第2の導入口23及び第3の導入口21と接続するマイクロチャンネルの構造も特に限定されるものではない。
条件制御部12は、マイクロリアクタ1内で起こるさまざまな化学反応、物理的現象もしくは化学的現象を最適な条件で行せるために適宜に制御可能な部分、電極および装置などの部分を指す。これらの装置及び電極は、マイクロリアクタ1内の温度、圧力、pH、電流、電圧、磁場、超音波、光、あるいは応力などの条件を適宜に制御するために、マイクロリアクタ1内、或いはマイクロリアクタ1外に設置もしくは組み合わせて使用することができる。
条件制御部の一つである電圧を制御する装置として、例えば、ファンクション・ジェネレータ、オシロスコープ、ポテンショスタットおよびエレクトロポーレーションなどの装置を用いることができるが、分子膜に異なる強度、パターン(例えば、連続三角波、ステップ波、単発矩形波、連続矩形波、ランプ波、正弦波など)および振動数(周波数)の電圧を与えることができれば、特に限定されるものではない。
例えば、マイクロリアクタ1を図4(a)に示すような二重円筒状の構造とした場合、マイクロリアクタ1内部の円筒部に電極を備え、条件制御部12は、この電極を制御することができる。
検知部13では、以下に列挙した測定装置、電極によって分子膜の観測を行うが、これらに特に限定されるものではない。
膜の表面状態の観測装置としては、光学顕微鏡、電子顕微鏡、レーザー電子顕微鏡、微分干渉位相差顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、フーリエ変換赤外分析装置、レーザーラマン分光装置、蛍光顕微鏡、偏光顕微鏡、X線解析装置と原子間力顕微鏡(AFM)などの分析装置を用いることができるが、特に、これらの測定装置に限定されるものではない。
又、分子膜の特性として、例えば、膜の流動性、充填状態などの物理的性質、膜表面の電荷密度、疎水的と親水的特性を膜電位、膜のインピーダンス、膜もしくは溶液の誘電率測定で調べることができる。膜電位、電圧、電流などの電気信号を測定する装置として、エレクトロメーター、デジタルマルチメーター、ポテンショスタット、ファンクション・ジェネレータ、オシロスコープなどがあるが、高抵抗、ローパスフィルタ、シグナル電気信号を増幅できるアンプなどを備える高感度エレクトロメーターの使用が望ましい。膜のインピーダンスおよび電気容量を測定する装置として、インピーダンスアナライザー、LCRメーター、ベクトルインピーダンスメーターなどを用いることができるが、ポテンショスタット、特に、ピコアンペアより小さいシグナル電気信号の測定及び高速掃引が可能であり、ローパスフィルタを備えた超高感度ポテンショスタットなどの装置との併用が望ましい。その他の電気化学測定装置として、バイポテンシオスタット(デュアルポテンジョスタット)を用いることができる。又、電気的ノイズを防ぐために、上記の測定をシールドボックス内で行うことが望ましい。
一方、ポリペプチド、糖類、タンパク質等の生体関連物質及びウィルスは膜との相互作用による膜へ付着、吸着、沈着、融合の変化は上記膜の特性を検知する装置と手法及び膜の表面状態を観察する装置を用いることができる。
更に、有機物、糖類、アミノ酸及びイオンなど物質の膜透過、又は、ポリペプチド、糖類、苦味物質、甘味物質、うま味物質、匂い物質、揮発性物質およびタンパク質等の物質やウィルスは膜との相互作用による溶液相のイオン、分子などの物質の膜への透過変化、もしくは電気信号の変化、もしくは膜の特性変化を間接的に、もしくは直接的に検知・観察することができる。
又、流体、或いは流体中に含まれる物質と、分子膜との相互作用によって引き起こされるさまざまな信号の変化、もしくは分子膜を透過したイオン、分子及び物質を直接的及び間接的に検知する手法について、以下に説明する。
直接的な検出手法とは、マイクロチャンネル内で、分子膜に起因するさまざまな反応や信号の変化をその場で、直接的に観測、検知する手法である。
信号の変化としては、例えば、分子膜や流体の電気信号、pH、粘度、密度、屈折率、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび熱などの信号の変化、もしくは分子膜の表面状態などに係わる信号の変化が挙がられる。
上記電気信号の変化を、例えば、マイクロチャンネル内に、エレクトロメータ−、ポテンショスタット、ファンクション・ジェネレータ、オシロスコープ及びガルバノスタット装置のセンサ端子であるイオンセンサー、微小電極、センサ電極などの電極を設置し、これらの電極によって、マイクロチャネル内において、局所的、in-situで検出することができる。
上記pH、粘度、密度および屈折率の変化を、pHメータ、粘度計、密度計、屈折率計によって測定することができる。
上記吸収スペクトルおよび蛍光スペクトル信号の変化を、例えば、マイクロチャンネルへ直接に該当光源を導入、透過させることによって、その透過光および蛍光変化の測定によって、検知することができる。
間接的な検出手法としては、例えば、マイクロチャンネルの出口で該当流体の区分を収集し、各区分の電気信号、pH、粘度、密度、屈折率、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび熱などの信号の変化を検知する方法である。
間接的な検出手法において、マイクロチャンネルから流出されるそれぞれの区分に含まれる検出対象物質の特性と検出の目的などに応じて、ポテンショスタット、pHメータ、粘度計、密度計、屈折率計、吸光光度計、蛍光分光装置、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC/MS)、薄層クロマトグラフィー分析装置(TLC)、フーリエ変換赤外分光分析装置(FTIR)などの化学分析装置を適宜に用いることができる。
概略すれば、検出対象の物質は蛍光物質でなければ、物質の電気信号、pH、粘度、密度、屈折率、吸収スペクトル及び熱信号の測定により、定性及び定量することができる。又、検出対象の物質は、蛍光物質である場合、蛍光スペクトルの変化の検出により、定性、定量ができる。
又、ペプチド、ポリペプチドやタンパク質の分析として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光光度法及び円偏光二色スペクトル法を用いることができる。フーリエ変換赤外スペクトル法を用いて、タンパク質の二次構造を分析することができる。
第1の実施の形態において、マイクロリアクタにおいて分子膜を透過した物質、もしくは化学反応によって、新たに生成された物質の検出として、マイクロチャンネル内に適切に配置されるセンサ電極、微小電極で検出することができる。これらの電極としては、それらの物質を検知可能なものならば特に限定されるものではないが、目的とする物質のみを感度よく検出するため、物質選択的な検出ができる電極が好ましい。例えば、一つの方法は、イオン選択性電極を用いる方法である。これは、特定のイオンに応答するイオン選択性膜の測定対象イオンの濃度差に伴う膜電位変動を検出するものであり、用いる膜の種類により、水素イオン、ヨウ素イオン、臭化物イオンなどのハロゲンイオ等種々のイオンを検出することができる。これらの電極の作製には、通常、微細化した飽和カロメル電極あるいは銀・塩化銀電極のような参照電極の表面にイオン選択性膜を直接もしくは内部基準液を介して固定化するか、あるいは、微細加工された電解効果トランジスター(FET)のゲート絶縁膜上にイオン選択性膜を配置した微小イオン選択性FET電極を用いることができる。
又、上記のイオン選択性膜を用いる電位測定の他に、目的とする原子、分子あるいはそれらのイオン等の酸化還元種の酸化還元に伴う電流を検出する方法も用いることができる。この場合、電極を構成する物質としては、化学的な安定性及び表面における反応活性の点から、通常、白金、金、カーボン等が用いられるが、用いられる媒体中の検出物質によっては、白金―カーボン電極、非金属、有機導電体、半導体電極、ダイヤモンド電極等を用いても差し支えない。この方法は電極の電位を操作することにより媒体中任意の酸化還元電位の異なる物質の高感度な検出が可能であると共に、電極の構造が単純なため微細化加工が極めて容易であるという特徴を有している。
又、膜への物質透過及び物質の膜への付着、吸着、沈着ならびに膜との相互作用により、膜電位の変化を引き起こした場合、膜電位を検知することができる電極を用いることができる。膜電位はドナン電位、拡散電位及び表面電位(界面電位)があるが、これらの電位を検知できる電極であれば、特に限定されることがない。飽和カロメル電極、銀・塩化銀電極、銀・銀イオン電極(例:Ag/0.01M AgClO4+支持電解質)、基準酸化還元系{フェロセン/フェリシニウム(Fc/Fc+)系又はビスフェニルクロム(0)/(1)(BCr/BCr+)系}の電極、金、白金、カーボン電極、白金―カーボン電極、タングステン、チタン、半導体電極(例:二酸化チタン)などの電極を用いることができる。
又、マイクロリアクタ内のイオン及び物質の検出及び膜電位の検知を行うために、微小電極、半導体電極(例:二酸化チタン)、半導体修飾電極、n−型半導体電極、導電性ポリマーでコートしたn−型半導体電極、p−型半導体電極、光感応性薄膜、液/液界面に新たに生成された物質に1本ないし複数本を配置することができる。
上記の電極は、マイクロチャンネルを構成する材料と一体化にすることもできるし、分離して配置することもできる。
又、これら検出微小電極の対極もしくは参照電極(あるいは塩橋)は、上記作用電極と同じ液相側に分子膜からの物質の拡散の妨げにならない位置に配置することが望ましいが、分子膜を隔てた液相側に配置しても構わない。
反応部14は、マイクロリアクタ1内で、光照射などにより、分子膜5や流体に、さまざまな化学反応、物理的及び化学的現象を起こさせる。
循環部15は、マイクロリアクタ1内で反応に使用した流体等を回収し、第1の導入口22、第2の導入口23、或いは第3の導入口21などに循環させ、反応の効率を上げる。
分離・回収部16は、マイクロリアクタ1内で生成された生成物を回収する。例えば、限外濾過、クロマトグラフィーや晶析などの方法により生成物を回収することなどを行う。
図6にマイクロリアクタ分析システムの具体例1を示す。この場合は、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)の分子膜(脂質二分子膜)との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーによって、引き起こされる分子膜(脂質二分子膜)の電流、電位、抵抗、電気容量および電気信号パターンなど、膜の電気化学的特性の変化を観測することによって、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)もしくは試料の定性及び定量測定を行なう。もしくは、マイクロリアクタ1内の分子膜(脂質二分子膜)に電圧を印加、又は光を照射することにより、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)の分子膜(脂質二分子膜)との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用の変化、バイオアフィニティーの変化、もしくは分子膜(脂質二分子膜)に含まれる光感応性物質、光感応性分子や光チャンネルの構造変化によって、引き起こされる分子膜(脂質二分子膜)へのイオン、酸化還元種などの物質(B)の透過変化に起因する膜の電流、電位、抵抗、電気容量および電気信号パターンの変化など、膜の電気化学的特性変化を観測することで、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)もしくは試料の定性及び定量測定を行なうマイクロリアクタ分析システム(1)(バイオセンシングシステム)である。
又、図7にマイクロリアクタ分析システムの具体例2を示す。この場合は、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)の分子膜(脂質二分子膜)との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーによって、マイクロチャンネル内の流体および分子膜の吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび熱の変化を直接に検知することによって、物質(B)を検知することである。又は、上記相互作用によって、引き起こされる分子膜(脂質二分子膜)へのイオンなどの物質(B)の透過変化を、分子膜を透過した物質(B)の蛍光又は吸光スペクトルの測定、第1の流体26もしくは第2の流体27の熱信号測定、もしくは透過した物質(B)によって引き起こされる第1の流体26もしくは第2の流体27の蛍光スペクトルの変化を測定することにより、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)もしくは試料の定量もしくは定性を行う。
もしくは、マイクロリアクタ1内の分子膜(脂質二分子膜)に電圧を印加、又は光を照射することにより、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)の分子膜(脂質二分子膜)との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーの変化、もしくは分子膜に含まれる光感応性物質、光感応性分子や光チャンネルの構造変化によって、引き起こされる分子膜(脂質二分子膜)へのイオン、酸化還元種などの物質(B)の透過変化を、分子膜を透過した物質(B)の蛍光又は吸光スペクトルの測定、第1の流体26もしくは第2の流体27の熱信号測定、もしくは透過した物質(B)によって引き起こされる第1の流体26及び第2の流体27の蛍光スペクトルの変化を測定することにより、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)もしくは試料の定量もしくは定性を行うマイクロリアクタ分析システム(2)(バイオセンシングシステム)である。
又、図8にマイクロリアクタ分析システムの具体例3を示す。この場合は、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)の分子膜(脂質二分子膜)との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーによって、引き起こされる分子膜(脂質二分子膜)へのイオン、酸化還元種などの物質(B)の透過変化をマイクロチャンネル内および外に設置される微小電極によって検知することによって、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)もしくは試料の定性、定量測定を行なう。
もしくは、マイクロリアクタ1内の脂質二分子膜に電圧を印加、又は光を照射するに伴い、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)の分子膜(脂質二分子膜)との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーの変化、もしくは分子膜に含まれる光感応性物質、光感応性分子や光チャンネルの構造変化によって、引き起こされる分子膜(脂質二分子膜)へのイオン、酸化還元種などの物質(B)の透過変化をマイクロチャンネル内および外に設置される微小電極によって検知することによって、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)もしくは試料の変化定性、定量測定を行なうマイクロリアクタ分析システム(3)(バイオセンシングシステム)である。
上記に示す3タイプのマイクロリアクタ分析システムの他に、第1の流体26もしくは第2の流体27に含まれる物質(B)の分子膜との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーによって、引き起こされる分子膜表面状態の変化を光学顕微鏡、電子顕微鏡、レーザー電子顕微鏡、微分干渉位相差顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、フーリエ変換赤外分析装置、レーザーラマン分光装置、蛍光顕微鏡、偏光顕微鏡、X線解析装置と原子間力顕微鏡(AFM)など表面分析装置を用いて、第1の流体26と第2の流体27に含まれる物質(2)もしくは試料を分析することができるマクロリアクタ分析システム(4)(バイオセンシングシステム)がある。
(分子膜の作製方法)
次に、分子膜の作製方法に関して説明する。
(イ)まず、図2に示すように、第1の導入口22及び第2の導入口23から第1の流体26もしくは第2の流体27を導入させ、マイクロチャンネル内で、安定な液/液層流を形成させる。
(ロ)次に、一定量の両親媒性分子混合液25を第3の導入口21から連続、断続もしくは一定時間、導入させる。
もしくは両親媒性分子混合液25、第1の流体26もしくは第2の流体27をマイクロチャンネルの導入口より、同時にマイクロチャンネル内へ導入する。
両親媒性分子混合液25、第1の流体26もしくは第2の流体27の流量及び流速は送液ポンプの圧力、系の温度、両親媒性分子混合液25、第1の流体26或いは第2の流体27の組成に由来する粘度、マイクロチャンネルの断面積、注入チャンネルもしくはマイクロチャンネルを構成する材料、長さと立体形状など、さまざまな要素に関係するが、第1の実施の形態においては、安定、大面積、且つ静止もしくは流動の分子膜を形成することができれば、第3の導入口21、第1の導入口22及び第2の導入口23から、両親媒性分子混合液25、第1の流体26もしくは第2の流体27を導入するためのさまざまな条件を限定するものではない。
マイクロチャンネル3は、図2に示すように、マイクロリアクタ1に形成された溝形状としてもよく、図4に示すように、リング状としてもよい。その他、用途、両親媒性分子(脂質)の種類及び分子膜の構成成分などの条件に応じて、楕円状、角状、六角状などの多角状の形状を有してもよい。又、マイクロチャンネル3の形状により、作製される分子膜は、平面状や円筒状の形状となる。図2(b)は、平面二分子膜の模式図であり、図4(b)は、円筒状二分子膜35の模式図である。
又、図5(a)に示す単管式マイクロチャンネルを集積することにより、図5の(b)に示す多管式マイクロチャンネルを提供することができる。尚、第1の実施の形態において、同様な分子膜を備えるマイクロリアクタ機能を有するものであれば、系のスケールアップ方法は特に限定されるものではない。
又、マイクロチャンネル内で層流を形成させるために、レイノルズ数ReはRe≦2100でなければならない。一方、Reはマイクロチャンネル径(D)、流速(ν)、密度(ρ)及び溶液の粘度(μ)と以下のような関係がある。
Re=Dνρ/μ
従って、本発明はマイクロチャンネルの径、流速、密度及び溶液の粘度を適切に組み合わせることにより、層流が得られた場合、流体の種類、チャンネル基板の材料、送液ポンプの種類、チャンネル径の大きさなどの条件に限定されるものではない。
又、安定な脂質二分子膜を形成するためにマイクロチャンネル内の各層流の線速度(L)は同じであることが望ましい。線速度は流体の密度(ρ)と管の断面積(S)と以下のような関係がある。
ρ1×L1×S1=ρ2×L2×S2 ……(1)
線速度(L)が同じである場合、即ち、L1=L2の場合、式(1)により、
ρ1×S1=ρ2×S2 ……(2)
が得られる。すなわち、流体の密度と管の断面積は式(3)のような関係がある。
S1/S2=ρ2/ρ1 ……(3)
上記の関係式から明らかなように、一定の線速度を得るために、異なる密度を有する流体を流す場合、管の断面積を調整することで実現することができる。
(ハ)第3の導入口21から導入された両親媒性分子混合液25は、液/液層流間、気/液層流間もしくは液層流/壁面間に導入される。そして、液/液層流間、気/液層流間もしくは液層流/壁面間において、両親媒性分子混合液25を溶解するための溶媒が徐々に各層流相もしくはチャンネルの壁面に拡散され、残されたもので、液/液層流間、気/液層流間もしくは液層流/壁面間で、二次元もしくは三次元の安定した大面積の静止分子膜を作製することができる。
次に、集積膜(分子集積膜)の作製方法について、図9及び図10を参照して説明する。
図9(a)に示すように、まず、第3の導入口21から両親媒性分子混合液を、第1の導入口22から流体を導入する。第3の導入口21及び第1の導入口22は可動であり、出口にも可動性のバリア40bを設置する。そして、第1層目の脂質二分子膜(分子膜)5が作製されると、図9(b)第3の導入口21と一体となったバリア40a及び出口に設けられたバリア40bを下方へ移動させ、第2層目、第3層目、・・・・・・、と集積膜(分子集積膜)が徐々に形成されていく。このとき、第1の導入口22の下方に設けられたバリア40cも徐々に上方へ移動させてもよい。又、集積膜7が増えると同時に、流体が流れるチャンネルが狭くなると同時に、流速も早くなる傾向を示すが、これは、チャンネルの幅と大きさに応じて、流体の流入流速を徐々に減少させることにより制御することができる。尚、第1の導入口22および第3の導入口21にかかる圧力は、P1>P2となる。
又、図10に示すように、第3の導入口21の出口に設けられたバリア40d、40e、40fを、両親媒性分子混合液が導入される方向に吸引することにより、分子膜5を形成するようにしてもよい。
第1の実施の形態に係る分子膜5は、両親媒性分子混合液25と第1の流体26及び第2の流体27の種類と組成、又流出速度などのさまざまな分子膜の作製条件に応じて、単分子膜、二分子膜、脂質ニ分子膜、逆二分子膜、脂質多重層膜、分子多重層膜、ミセル、逆ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョン及びLB膜などの構造で単独もしくは混合な形態で存在可能である。
第1の実施の形態に係る分子膜の作製方法によると、マイクロチャンネル内の両液相は層流のため、安定した分子膜あるいは脂質二分子膜を作製することができる。又、チャンネルの長さを伸ばすことにより大面積の二分子膜あるいは脂質二分子膜を作製することができる。又、両親媒性分子あるいは脂質を溶解させる溶媒の迅速拡散により、二分子膜あるいは脂質二分子膜の迅速作製が可能となる。更に、劣化膜の再生が容易となる。
(分子膜を備えるマイクロリアクタの特性と応用)
分子膜を備えるマイクロリアクタの典型的な反応工学的特徴としては、以下の点が挙げられる。
1)攪拌に伴う酵素のずり変性が生じない。
2)繁雑な酵素固定化処理が不必要であり、更に、固定化処理による酵素活性の劣化がない。
3)副反応が殆ど生じない。
4)反応温度の制御は容易であり、反応速度の制御ができる。
5)濃度分布が生じ難いので、反応系のスケールアップが容易である。
6)比表面積と比界面積が大きいため、分子拡散距離が短く、拡散律速反応が劇的に加速される。
7)強制対流を起こさせるための攪拌動力を必要としないため、省エネルギー型の反応システムを構築することができる。
8)反応熱を素早く拡散させることができるため、急激な反応を起こさせることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る分子膜を備えるマイクロリアクタの特徴として、更に、以下の点が挙げられる。
1)バイオリアクタもしくはバイオセンサへの応用において、繁雑な酵素の固定化処理が不必要であり、更に、固定化処理による酵素活性の劣化がない。
2)劣化膜の再生が容易である。
3)脂質ニ分子膜を有すマイクロリアクタは生体膜のすべての機能を有する。
例えば、生体膜に流動性があることの利点と同様に、マイクロチャンネル内の脂質二分子膜も流動性がある。膜の流動性により、以下の利点が挙げられる。
1)分子代謝交換が連続的に行われ、膜は細胞と同様に新しい環境に適応できるようになる。
2)膜中のタンパク質の移動が可能である。
又、マイクロチャンネル内の脂質二分子膜は生体膜と同じ特性を有する。例えば、
1) 膜タンパク質分子やこの複合体の機能発現は膜脂質の間には密接な関係がある。
2) 膜には、脂肪酸組成やリン脂質/コレステロール比に依存した流動性がある。
3) 膜には表と裏がある。
又、マイクロチャンネル内の脂質二分子膜は生体膜と同じ機能を果たすことができる。例えば、
(1)両液相の境界になる。
(2)物質の輸送を行う。
(3)物質及びエネルギーの変換を行う場となる。
(4)情報の受容、伝達と処理を行う。
上記の生体膜の機能を概略すると、生体膜である脂質二分子膜は細胞膜を外界や他の細胞から隔離する隔壁であるだけではなく、物質認識や透過、情報の変換や伝達、酵素反応などの場として重要な役割を果たしている。生体膜の機能と同様に、本発明は、さまざまな生体機能、又は新機能を持った人工細胞膜モデルを創出し、その機能をマイクロリアクタによって発現・実現することができる。
(分子膜を備えるマイクロバイオリアクタ)
具体的に、上記のような生体膜機能の特徴を利用して、例えば、生体膜などの分子膜を有するマイクロリアクタ系をバイオリアクタプロセスに応用すれば、酵素反応系において、100%の反応率を達成することができる。このバイオリアクタプロセスについて、図11〜図19を用いて説明する。
なお、図11〜図19に示された脂質混合液とは、両親媒性分子混合液を調製する際、その両親媒性分子として、脂質を用いた場合である。分子膜を備えるマイクロバイオリアクタの分子膜を形成する両親媒性分子として、特に脂質に限定されるものではない。
又、図11〜図19に、分子膜を備えるマイクロバイオリアクタの反応系は均相系{水相(W)/水相(W)}および{油相(O)/油相(O)}、もしくは異相系{油相(O)/水相(W)}の例を列挙して、マイクロバイオリアクタのプロセスを説明するが、異相系の場合は{水相(W)/気相(V)}或いは{油相(O)/気相(V)}の組み合わせであっても構わない。
例えば、図11に示すように、マイクロリアクタ1内に、第3の導入口21から両親媒性分子混合液(脂質混合液25)(L)、第1の導入口22から基質(S)を含む溶液、第2の導入口23から酵素+基質(E+S)あるいは酵素(E)を含む溶液をそれぞれ導入し、均相系{水相(W)/水相(W)}あるいは、異相系{油相(O)/水相(W)}とする。基質(S)は、分子膜5を通過し、酵素(E)と複合体を形成し、生成物(P)が生成される。生成物(P)は分子膜5を透過することができる。このように生成される生成物として、抗生物質が挙げられる。例えば、図11のプロセスにおいて、図12に示すように、7−アミノセファロスポラン酸が生成される。又、生成物(P)を回収する際、未反応の基質(S)を第1の導入口22へ戻す。このプロセスにおける酵素はマイクロチャンネルの一定空間内に固定化されている。
図11に示すバイオリアクタプロセスによると、抗生物質などの生産を行うことができる。
又、図13に示すように、マイクロリアクタ1内に、第3の導入口21から酵素(E)を含む脂質混合液(L)、第1の導入口22から基質(S)を含む溶液{水相(W)或いは油相(O)}、第2の導入口23から溶液{水相(W)或いは油相(O)}をそれぞれ導入し、均相系{水相(W)/水相(W)}あるいは{油相(O)/油相(O)}とする。基質(S)は、分子膜5内の酵素(E)と複合体を形成し、生成物(P)が生成される。このプロセスにおける酵素は分子膜に固定化される。このように生成される生成物として、ステロイドが挙げられる。例えば、図13のプロセスにおいて、図14に示すように、ステロイドが生成される。又、生成物(P)を回収する際、未反応の基質(S)を第1の導入口22へ戻す。
図13に示すバイオリアクタプロセスによると、ステロイドなどの生産を行うことができる。又、拡散系反応の場合は、基質又は生成物の拡散律速の問題が反応系のマイクロ化により解消することができる。
又、図15に示すように、図11で説明したバイオリアクタプロセスは、分子膜5を通過していない生成物(P)、及び分子膜を透過する生成物(P)を回収するとともに、酵素(E)と未反応の基質(S)をリサイクルする構造を更に備えてもよい。図15は、図11と同様、マイクロリアクタ1内に、第3の導入口21から脂質混合液(L)、第1の導入口22から基質(S)を含む水相(W)あるいは油相(O)、第2の導入口23から酵素+基質(E+S)を含む水相(W)を導入し、均相系{水相(W)/水相(W)}あるいは、異相系{油相(O)/水相(W)}とする。基質(S)は、分子膜5を通過し、酵素(E)と複合体を形成し、生成物(P)が生成される。このとき、分子膜5を通過していない生成物(P)を限外濾過、クロマトグラフィーや晶析などの方法で回収するとともに、酵素(E)及び未反応の基質(S)を第2の導入口23へ戻す。又、分子膜を透過する生成物(P)は限外濾過、クロマトグラフィーや晶析などの方法で分離し、生成物(P)を回収するとともに、未反応基質(S)を第1の導入口22或いは第2の導入口23へ戻す。
図15に示すバイオリアクタプロセスによると、生成物(P)、酵素(E)及び未反応基質(S)の迅速回収が可能となる。
又、図16に示すように、図13で説明したバイオリアクタプロセスは、分子膜5の両側のマイクロチャンネル内で生成される生成物(P)を限外濾過、クロマトグラフィーや晶析などの方法で回収するとともに、未反応の基質(S)をリサイクルする構造を更に備えてもよい。図16は、図13と同様、第3の導入口21から酵素(E)を含む脂質混合液(L)、第2の導入口23から水相(W)あるいは油相(O)、第1の導入口22から基質(S)を含む水相(W)或いは油相(O)をそれぞれ導入し、均相系{水相(W)/水相(W)}あるいは{油相(O)/油相(O)}とする。基質(S)は、分子膜5内の酵素(E)と複合体を形成し、生成物(P)が生成される。このとき、分子膜5の両側に生成される生成物(P)を限外濾過、クロマトグラフィーや晶析などの方法で回収するとともに、未反応の基質(S)を第2の導入口及び第2の導入口23へ戻す。
図16に示すバイオリアクタプロセスによると、生成物(P)及び未反応基質(S)の迅速回収が可能となる。
又、図17に示すように、マイクロリアクタ1内に、第3の導入口21から脂質混合液(L)、第1の導入口22から基質(S2)を含む溶液、第2の導入口23から酵素+基質(E+S1)を含む溶液を導入し、均相系{水相(W)/水相(W)}あるいは、異相系(油相(O)/水相(W))とする。基質(S2)は、分子膜5を通過し、基質(S1)と共に酵素(E)と複合体を形成し、生成物(P1)及び生成物(P2)が生成される。生成物(P2)のみは、分子膜5を透過することができる。そして、生成物(P1)を回収する際、酵素(E)及び未反応の基質(S1、S2)を第2の導入口23へ戻す。一方、生成物(P2)を回収する際、未反応の基質(S2)を第1の導入口22へ戻す。
図17に示すバイオリアクタプロセスによると、生成物(P1、P2)の分離、及び未反応基質(S1、S2)の迅速回収が可能となる。
又、図18に示すように、マイクロリアクタ1内に、第3の導入口21から酵素(E)を含む脂質混合液(L)、第1の導入口22から基質(S2)を含む溶液、第2の導入口23から基質(S1)を含む溶液をそれぞれ導入し、異相系{油相(O)/水相(W)}とする。基質(S1、S2)は、分子膜5内の酵素(E)と複合体を形成し、生成物(P1、P2)が生成される。そして、生成物(P1)を回収する際、未反応の基質(S1)を第2の導入口23へ戻す。一方、生成物(P2)を回収する際、未反応の基質(S2)を第1の導入口22へ戻す。
図18に示すバイオリアクタプロセスによると、生成物(P1、P2)の分離、及び未反応基質(S1、S2)の迅速回収が可能となる。
又、図19に示すように、マイクロリアクタ1内に、第3の導入口21から酵素(E)を含む脂質混合液(L)、第1の導入口22から基質(S2)を含む溶液、第2の導入口23から基質(S1)を含む溶液をそれぞれ導入し、均相系{水相(W)/水相(W)}あるいは{油相(O)/油相(O)}とする。基質(S1、S2)は、分子膜5内の酵素(E)と複合体を形成し、生成物(P1、P2)が生成される。そして、生成物(P1)を回収する際、未反応の基質(S1)を第2の導入口23へ戻す。一方、生成物(P2)を回収する際、未反応の基質(S2)を第3の導入口21へ戻す。
図19に示すバイオリアクタプロセスによると、生成物(P1、P2)の分離、及び未反応基質(S1、S2)の迅速回収が可能となる。
(分子膜を備えるマイクロリアクタによる膜融合と抽出)
又、第1の実施形態では、図20に示すように、脂質二分子膜5との膜融合により、細胞内もしくは脂質二分子膜をもつウィルス内のタンパク質、核酸などの生体関連物質9を抽出することができる。この方法を用いる場合、ウィルスを検知するために、細胞粉砕など一連の抽出・精製過程を経る必要がなく、直接、原因タンパク及びウィルスの核酸を抽出することができる。
又、第1の実施形態は、図20においては、条件制御部12の一つである電圧印加装置によって膜の両側に設置された電極51a、51bに、瞬間的に直流の高電圧、或いは交流の電圧を印加する。このとき、脂質二分子膜5が乱れるため、細胞融合が起こりやすくなる。細胞8は、脂質二分子膜5と膜融合する際、生体内の細胞融合と同様に、細胞内の小器官(核酸、タンパク質、小胞体、ゴルジ体とリボソームなど)を放出する。又、他の検出手法(例えば、プロテインセンサ及び遺伝子センサ)と併用することにより、高感度、簡便、迅速に抽出された原因タンパク質、核酸を検知することができる。なお、分子膜に与える刺激は上記の電気的な刺激に限らず、流体のpH、流体および分子膜の温度などを変化させることによって、電気的刺激と同様な効果が得られる。
又、図21に示すように、脂質二分子膜5に電圧を印加することにより、流体中の生体関連物質9、特にタンパク質を脂質二分子膜5の反対側の液相に抽出する。電極51a、51bとしては、線状、点状などの電極面を有する微小電極を用いることが可能である。同様の抽出方法により、無細胞タンパク質合成で合成されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質などを抽出することができる。この場合、生成されたタンパク質は直ちに抽出、分離されるため、タンパク質の凝集を防ぐことができる。
(第1の実施の形態に係るマイクロリアクタの作用及び効果)
第1の実施の形態に係るマイクロリアクタによると、滞留もしくは流動させることができ、安定した大面積を有し、様々な物質が導入可能な単分子膜、二分子膜、脂質二分子膜、逆二分子膜、分子多重層膜、脂質多重層膜、ミセル、逆ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョン、LB膜のいずれか一つ、もしくはこれらが混在した構造、二次元の平面状、三次元の柱状、円錐状、切頭円錐状、円筒状、楕円筒状と、多角状の少なくとも1つ以上の形状からなる分子膜を自動、迅速、連続に作製することができる。又、第1の実施の形態に係るマイクロリアクタを用いることにより、様々な迅速化学反応、バイオリアクタ、分離(抽出)システム及びバイオセンシングシステムを提供することができる。
又、第1の実施の形態に係るマイクロリアクタによると、生体膜と同様な機能を有する脂質二分子膜を作製でき、新たなマイクロ化学反応場として提供すると共に、生体膜における様々な情報伝達及び物質透過機構の解明に寄与することができる。
又、第1の実施の形態に係るマイクロリアクタによると、新規化学物質や新薬などが生体系に与える影響を確認、予測することができる。更に、新規微量・高感度バイオセンシング、高効率(100%)バイオリアクタ(常温、常圧)及び高効率、連続、低副産物の迅速化学反応システムを提供することができる。
以下、本発明の第1の実施の形態に係る実施例について説明する。
(比較例1)
図22に示すように、30℃の恒温条件に調整した石英セルに第1の流体26として3 M エタノールと0.5 mM NAD+を含む50 mMトリス緩衝液(pH 8.5)3 mlを入れる。第2の流体27として30μg/lアルコールデヒドロゲナーゼを含む50 mMトリス緩衝液(pH 8.5)100 μlを入れて反応を開始する。
反応の進行は、吸光度340 nm(NADHの特性吸収波長)で追跡する。
比較例1の反応はマイクロリチャンネル内に分子膜が存在しない場合の反応である。
(実施例1)
図22に示すように、均相系{水相(W)/水相(W)}において、両親媒性分子混合液(脂質混合液25)として5 mg/ml レシチンを含むn-デカン溶液、第1の流体26として0.3 M エタノールと0.1%牛血清アルブミンを含む50 mMトリス緩衝液(pH 8.5)、第2の流体27として0.5 mM NAD+ と1μg/lアルコールデヒドロゲナーゼと0.1%牛血清アルブミンを含む50 mMトリス緩衝液(pH 8.5)を用いる。その他の条件及び生成物は以下の通りである。
実施例1の反応はマイクロチャンネル内に分子膜が存在するときの反応である。
酵素:アルコールデヒドロゲナーゼ
基質:エタノール
補酵素:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化型)(NAD+)
生成物:アセトアルデヒド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型)(NADH)
30℃の恒温条件に調整したマイクロリアクタの第1の導入口22より所定流速で第1の流体26を流す。一方、第2の導入口23より第1の導入口22と同じ流速で第2の流体27を流す。更に、第3の導入口21より両親媒性分子混合液(脂質混合液25)を所定流速で流す。マイクロリアクタ1内では、以下の反応が起こる。
CH3CH2OH + NAD+ =CH3CHO + NADH + H+
反応の進行は、吸光度340 nm(NADHの特性吸収波長)で追跡する。
(結果)
実施例1の系は比較例1の系と比較して、反応速度および一定反応時間におけるアセトアルデヒドの転化率が共に向上した。具体的に、反応速度は約4倍向上し、5分経過後のアセトアルデヒドの転化率は約3倍向上した(図23参照)。
第1の実施の形態に係る分子膜を備えるマイクロリアクタを用いた酵素反応系に示した高反応速度と高転化率の特徴は、下記のような二つの典型的な特徴によるものであると考えられる。
(1)基質であるエタノールは溶液中で酵素の変性剤としても働くため、脂質二分子膜がない場合、エタノールの濃度が高くなると、酵素は活性の安定性を失ってしまう。脂質二分子膜がある場合、脂質二分子膜を介してエタノールが徐々に酵素が存在する側の水相に拡散してくるため、このような酵素の変性が避けられる。又、従来系では、酵素の活性を失わないために、低濃度のエタノールを含む溶液で反応を行わなければならないので、低濃度の反応生成物であるアセトアルデヒドしか得られない。高濃度のアセトアルデヒドを得るためには、更に、別の手段を用いて、濃縮させなければならない問題がある。この系を用いることにより、上記の問題を解決され、高濃度のアセトアルデヒトの生産が可能になる。
(2)化学平衡がシフトし、転化率及び反応収率を上げることができる。この酵素反応系は可逆系であり、脂質二分子膜がない場合は、生成物であるアセトアルデヒドの生産は化学平衡に達した時点で反応がストップしてしまう問題があり、高反応収率を得ることができない。分子膜を備えるマイクロリアクタを用いることにより、酵素反応で生成されたアセトアルデヒドは速やかに脂質二分子膜の反対側に拡散され、酵素反応側から除外されるため、化学平衡がアセトアルデヒドを生成する反応方向へシフトし、高い反応収率を得ることが出来る。
(実施例2)
図24に示すように、異相系{油相(O)/水相(W)}において、両親媒性分子混合液(脂質混合液25)として5 mg/ml ジオレインを含むn-デカン溶液、第1の流体26として0.1 mM N−アセチル−L−トリプトファンと10m Mエタノールを含むクロロホルム溶液、第2の流体27として0.5 g/lのα―キモトリプシンを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH 6.8)を用いる。その他の条件及び生成物は以下の通りである。
酵素:α―キモトリプシン
基質:N−アセチル−L−トリプトファン(AT-OH)、エタノール(EtOH)
生成物:N−アセチル−L−トリプトファンエチルエステル(AT-OEt)、水
30℃の恒温条件に調整したマイクロリアクタの第1の導入口22より所定流速で第1の流体26を流す。一方、第2の導入口23より第1の導入口22と同じ流速で第2の流体27を流す。更に、第3の導入口21より両親媒性分子混合液(脂質混合液25)を所定流速で流す。マイクロリアクタ1内では、以下の反応が起こる。
AT-OH+EtOH=AT-OEt +H2O
(結果)
高速液体クロマトグラフィーにて反応生成物であるN−アセチル−L−トリプトファンエチルエステルを検出、定量した。
なお、高速液体クロマトグラフィーの測定条件は以下の通りである。
カラムにODS(0.15 mX6.0 mmφ)を用い、流動相として純水とアセトニトリルの混合溶液(体積比で1:1)を流速1 ml/min-1で流した。紫外吸収検知器(波長270 nm)を用いた。
図25に、N−アセチル−L−トリプトファンエチルエステルの収率と流速比の関係を示す。図25に示したように、流速比が増すとともにN−アセチル−L−トリプトファンエチルエステルの収率が減少した。すなわち、実施例2は、流速比を変化させることにより、単位時間当たりの生産量を直接的に自由に制御することができる。さらに、単分子膜の形成により、クロロホルムと水界面の酵素の接触による活性の劣化を防ぐことができる。
(実施例3)
図26に示すように、均相系{油相(O)/油相(O)}において、両親媒性分子混合液(脂質混合液25)として5 mg/mlスブチリシン Carlsbergと少量の水と5 mg/mlレシチンを含むヘキサン溶液、第1の流体26として200 mM S−α−メチルベンジルアルコールを含むヘキサン溶液、第2の流体27として200 mMブタン酸ビニルを含むヘキサン溶液を用いる。その他の条件及び生成物は以下の通りである。
酵素:スブチリシン Carlsberg
基質:S−α−メチルベンジルアルコール{C6H5CH(CH3)OH}
ブタン酸ビニル(CH3CH2CH2COOCH=CH2)
生成物:ブタン酸α−メチルベンジルエステル(CH3CH2CH2COOCH(CH3)C6H5)、
ビニルアルコール(CH2=CHOH)
30℃の恒温条件に調整したマイクロリアクタの第1の導入口22より所定流速で第1の流体26を流す。一方、第2の導入口23より第1の導入口22と同じ流速で第2の流体27を流す。更に、第3の導入口21より両親媒性分子混合液(脂質混合液25)を所定流速で流す。マイクロリアクタ1内では、以下の反応が起こる。
C6H5CH(CH3)OH + CH3CH2CH2COOCH=CH2
= CH3CH2CH2COOCH(CH3)C6H5 + CH2=CHOH
(結果)
ガスクロマトグラフィーにより、反応生成物であるブタン酸α−メチルベンジルエステルを検出、定量した。
なお、ガスクロマトグラフィーの測定条件は以下の通りである。
カラムとしてChirasil-DEX CBキャピラリーカラム(Chrompack)を用い、キャリアーガスとして窒素を0.5 ml/minで流した。又、水素炎イオン化検出器(FID)を用いた。
(実施例4)
図22(実施例1)と同様の構成の均相系{水相(W)/水相(W)}において、両親媒性分子混合液(脂質混合液25)として5 mg/mlモノオレインを含むn-デカン溶液、第1の流体26として0.1 M グルタリル7−アミノセファロスポラン酸と0.1g/l GL7-ACAアミダ−ゼを含む50 mMトリス緩衝液(pH 8.5)、第2の流体27として50 mMトリス緩衝液(pH 8.5)を用いる。その他の条件及び生成物は以下の通りである。
酵素:GL7-ACAアミダ−ゼ(Pseudomonas sp. GK-16起源)
基質:グルタリル7−アミノセファロスポラン酸(グルタリル7−ACA)
生成物:7−アミノセファロスポラン酸(7−ACA)
20℃の恒温条件に調整したマイクロリアクタの第1の導入口22より所定流速で第1の流体26を流す。一方、第2の導入口23より第1の導入口22と同じ流速で第2の流体27を流す。更に、第3の導入口21より両親媒性分子混合液(脂質混合液25)を所定流速で流す。マイクロリアクタ1内では、図12に示した実施例4の反応が起こる。
(結果)
高速液体クロマトグラフィーによって反応生成物である7−アミノセファロスポラン酸が検出、定量された。
なお、高速液体クロマトグラフィーの測定条件は以下の通りである。
カラムにODS(0.15 mX6.0 mmφ)を用い、流動相として純水とアセトニトリルの混合溶液(体積比で1:1)を流速1 ml/min-1で流した。又、示差屈折検知器を用いた。
(実施例5)
図22(実施例1)と同様の構成の均相系(水相(W)/水相(W))において、両親媒性分子混合液(脂質混合液25)として5 mg/mlモノオレインを含むn-デカン溶液、第1の流体26として10 mg/ml Arthrobacter simplexのアセトン乾燥菌体、第2の流体27として0.5 g/l ヒドロコルチゾンと20% エタノールを含む20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)を用いる。その他の条件及び生成物は以下の通りである。
菌体:Arthrobacter simplexのアセトン乾燥菌体
基質:ヒドロコルチゾン
生成物:プレドニソロン
30℃の恒温条件に調整したマイクロリアクタの第1の導入口22より所定流速で第1の流体26を流す。一方、第2の導入口23より第1の導入口22と同じ流速で第2の流体27を流す。更に、第3の導入口21より両親媒性分子混合液(脂質混合液25)を所定流速で流す。マイクロリアクタ1内では、図14に示した実施例5の反応が起こる。
(結果)
反応生成物であるプレドニソロンは、高速液体クロマトグラフィーによって検出、定量された。
なお、高速液体クロマトグラフィーの測定条件は以下の通りである。
カラムにODS(0.15 mX6.0 mmφ)を用い、流動相として純水とアセトニトリルの混合溶液(体積比で1:1)を流速1.5 ml/min-1で流した。又、紫外吸収検知器(波長230 nm)を用いた。
(実施例6)
図27に分子膜を備えるマイクロリアクタを用いた光を感知するセンシング方法の一例を示す。図27に示すように、両親媒性分子混合液(脂質混合液25)としてアゾベンゼン(p-Benzoquinone)/モノオレイン(1:10)5%を含むデカン(クロロホルムをアゾベンゼンが溶解するまで添加する)溶液、第1の流体26として純水、第2の流体27として0.1Mベンゾキノン(Q)溶液を用いた。脂質二分子膜5は、光感応性分子アゾベンゼンを含有する。
脂質二分子膜へ0.5秒間づつ20秒間隔で断続的にUV光(レーザー)(波長:355nm)を照射した。
そして、光照射によって、脂質二分子膜を透過したベンゾキノンを膜の反対側のチャンネル内に設置される微小白金円盤電極(直径=10μm)の73によって検出した。具体的に、微小白金円盤電極に銀/塩化銀電極に対してー500mVの定電位を印加し、3電極系で超高感度ポテンシオスタット(EG&G PARC社製の283型)を用いて、ベンゾキノンのヒドロキノンへの還元反応により発生した還元電流を測定した。
(結果)
脂質二分子膜へ光を照射した場合、微小白金円盤電極によって、ベンゾキノンの還元電流の変化が観察された。一方、光を照射しない場合、ベンゾキノンの還元電流の変化が観察されなかった。
これは、脂質二分子膜に含まれるアゾベンゼンは、光感応性分子であり、膜へUV光(355nm)を照射することによって、アゾベンゼンはトランス型からシス型へ光異性化反応が起こる。この光異性化反応に起因する脂質二分子膜構造の乱れがベンゾキノンの膜透過の変化を引き起こすため、膜の反対側でベンゾキノンに起因する還元電流の変化が検出された。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るマイクロチャンネルセンサは、図28に示すように、マイクロチャンネル内において、流体の流れの方向に沿って、一定間隔を有する一対の電極、もしくは電極系を配置し、マイクロチャンネル内へ流体61(W)、絶縁性媒体62(O)、流体63(W)、両親媒性分子混合液(M)、流体65(W)もしくは物質を含有する流体65(S)、絶縁性媒体66(O)と流体67(W)の順で流す。
図28(a)は、流体63(W)と流体65(W)、もしくは流体63(W)と物質を含有する流体65の層が両親媒性分子混合液64を隔てて、電極72a、72bの下に到達した図である。分子膜と流体に含まれる物質との相互作用により引き起こされる膜の電気信号(例えば、膜電位、抵抗、電流、誘電率、電気容量など)と、膜の表面状態の変化と、流体に含まれ物質の吸収スペクトルと濃度の変化を測定することにより、流体中の物質の定量及び定性を行う。
又、図28(b)は、流体65(W)もしくは物質を含有する流体65(S)が、センサ電極73、参照電極74、及び対極75の下に到達した図である。同様に、図28(c)は、流体63(W)が、センサ電極73、参照電極74及び対極75の下に到達した図である。
図29に示すように、絶縁性媒体62(O)、あるいは、絶縁性媒体66(O)は、電界セルの境界壁としての機能を有するので、マイクロチャンネル内において、絶縁性媒体62(O)、流体63(W)、両親媒性分子混合液64(M)、流体65(W)もしくは物質を含有する流体65(S)、絶縁性媒体66(O)は、一つのマイクロ電界セルとして機能することができる。従って、分子膜中に光感応性分子や物質が含まれる場合、光照射により、分子膜中の光感応性分子や物質の光励起によって、電子やホールが生成する。これらの電子もしくはホールは、流体63もしくは流体65中の電気化学酸化還元種を酸化もしくは還元し、又、酸化もしくは還元される物質を流体に配置される電極系により、検知することができる。
図29と同様に、図30に示すように、絶縁性媒体62(O)、あるいは、絶縁性媒体66(O)は、電界セルの境界壁としての機能を有するので、マイクロチャンネル内において、絶縁性媒体62(O)、流体63(W)、両親媒性分子混合液64(M)、流体65(W)もしくは物質を含有する流体65(S)、絶縁性媒体66(O)は、一つのマイクロ電界セルとして機能することができる。図30(f)は、例えば、イオンチャンネルを含有する分子膜を隔膜として利用し、流体63及び流体65で電気化学反応を起こさせることができる。図30(g)は、例えば、分子膜の両側の流体と連接する塩橋77を設置することによって、分子膜を隔膜とした電気化学反応を流体63と流体65で起こさせることができる。
図31に示すように、流体65に含まれる物質(ウィルス、アミロイド型タンパク質など)と分子膜との相互作用により引き起こされる分子膜の表面状態の変化を調べることにより、物質を検知することができる。測定方法としては、チャンネルの片方から入射光を分子膜に導入し、膜から反射される光を光学顕微鏡、微分干渉位相差顕微鏡などの装置により膜の表面状態を調べることができる。
図32(c)の場合は、流体65に含まれる物質(ウィルス、有機物などの疎水性物質)の分子膜との相互作用により引き起こされるイオン、疎水性物質などの透過性の変化を吸収スペクトルの変化として観測することにより、該当物質を検知する。又、流体65に含まれる物質(ウィルス、有機物などの疎水性物質)の分子膜との相互作用(膜融合)によって、ウィルス内のRNA、DNAと酵素など、細胞内の小器官(核酸、タンパク質など)が放出され、放出された物質の吸収スペクトルなどを測定することで、該当物質を検知する。
図32(c)の吸収スペクトル測定は、流体63で行っているが、図32(c)と同様に、分子膜との相互作用により、放出もしくは生成されたものが流体65に存在する場合、図32(d)のように流体65での測定を行っても良い。
図33(e)の場合は、流体65に含まれる物質(ウィルス、アミロイド型タンパク質など)の分子膜との相互作用により引き起こされるイオンなどの透過と、透過したイオンと流体63に存在する蛍光剤との相互作用により発する蛍光を検出することで、物質を検知する。
図33(f)の場合は、流体65に含まれる物質(ウィルス、細胞など)の分子膜との相互作用(例えば膜融合)によって、ウィルス内のRNA、DNAと酵素などもしくは細胞内の小器官(核酸、タンパク質など)が放出され、放出されたものが流体63に存在する蛍光剤との相互作用により発する蛍光を測定することで、物質を検知する。
図33(e)及び(f)の蛍光測定は、流体63で行っているが、図33(e)及び(f)と同様に分子膜との相互作用により、放出もしくは生成されたものが流体65に存在する蛍光剤との相互作用により蛍光を発する場合、流体65側で蛍光測定を行っても良い。
図34に示すように、出口より流体63もしくは流体65等の各区分を選択的に収集し、各種分析手法と適宜に併用することにより、イオン、タンパク質、核酸、アミノ酸、有機物などを定性、定量する。各種分析法は、例えば、pH、粘度、密度、屈折率、蛍光スペクトル、吸収スペクトルの測定、HPLC、GC、GC/MS、FTIRによる測定、電気化学的測定などがあるが、第2の実施の形態に係わる分析方法は第1の実施の形態の分析方法と同じであってもよい。
(第2の実施の形態に係るマイクロチャンネルセンサの特徴)
マイクロチャンネル内の流体、両親媒性分子混合液、絶縁性媒体は、形成される分子膜の安定状態を保持するために、マイクロチャンネル内に滞留或いは流動する。
又、絶縁性媒体は、イオンを透過せず、低誘電率を有し、流体、物質を含む流体と分子膜に起因する電極の汚れを洗浄する効果がある。絶縁性媒体としては、例えば、疎水性有機溶媒(例えば、ヘキサン、デカン、イソオクタン、オクタン、ヘキサデカン)、シリコンオイル、フッ化オイル(例えば、ドデカフルオロテトラデカンとトリデカフルオロオクタノール(10:1)混合物)を用いることができるが、絶縁性媒体としての効果があれば、特に限定されるものではない。なお、この液滴は、電気的絶縁効果を有すると共に電極を洗浄する効果を有することが好ましい。
又、一定間隔を有する電極対はマイクロチャンネル内に、複数対を配置してもよい。
又、電極系は2電極系、3電極系もしくは4電極系であり、作用電極と対極は同じ溶液側に配置され、もしくは分子膜を隔てて、分別して配置されてもよい。
又、分子膜は、少なくとも一種類以上の蛋白質、核酸、糖脂質、コレステロール、蛍光色素、リガンド、光感応性分子、イオンチャンネル、電子共役系の物質、助界面活性剤、クラウンエーテル、フラーレン、カーボンナノチューブ、ポルフィリン類、シクロデキストリン、分子トング、ポリペプチド或いはペプチドなどを含有してもよい。
又、流体63と流体65は溶液であることが好ましいが、気体であっても構わない。溶液の場合、タンパク質、核酸、核酸関連物質、アミロイド型タンパク質、ウィルス、アミノ酸と糖などの生体関連物質、もしくは有機物、無機物、イオン、などの非生体関連物質と、これらの生体関連物質もしくは非生体関連物質を少なくとも一種類以上含んでなる小胞体とを、少なくとも一種類以上を含有してもよい。
又、分子膜を備えるマイクロリアクタセンサの分子膜は電気化学セルの隔膜としての機能を有してもよい。
又、分子膜を備えるマイクロリアクタセンサはチャンネル内の温度、圧力、pH、電流、電圧、磁場、超音場、光或いは応力などを制御する機能を有してもよい。
又、分子膜型マイクロチャンネルセンサはイオンチャンネルを含有する分子膜、もしくは塩橋を設置することにより、マイクロ電解セルとして機能してもよい。
又、流体65が留まるマイクロチャンネルの部分において、マイクロチャンネルの壁面及び電極の表面に分子膜形成液の通過によって分子膜を形成してもよい。
又、第2の実施の形態はマイクロチャンネルへ流す各種流体は層流でなくでも構わない。
又、流体67は電極を洗浄するための純水、有機溶媒、硫酸、塩酸、フッ化水素酸および硝酸の酸溶液、もしくは過塩素酸および過酸化水素を少量に添加した酸溶液、アルカリ性溶液のいずれの溶液であり、一種類以上に連続に流してもよい。
又、電極対もしくは電極系の電極は流体67において、化学的洗浄もしくは電気化学的洗浄により、リニューアルすることができる。
又、第2の実施の形態に係わる検知部は、分子膜および流体の温度、濃度、pH、電気信号の変化、分子膜の表面状態の変化をマイクロチャンネル内、もしくはマイクロチャンネル外で検知することができる。
又、物質を含む流体63もしくは流体65が留まるところにマイクロチャンネルと連接する微細チャンネルにより流体63もしくは流体65に注入することができる。
以下、本発明の第2の実施の形態に係わる実施例について説明する。
(比較例)
図35に示すように、マイクロチャンネル内へ溶液80a(純水)、絶縁性媒体78[ドデカフルオロテトラデカンとトリデカフルオロオクタノール(10:1)混合物]、溶液80b[0.1Mトリス緩衝液(pH=7.5)]、両親媒性分子混合液79[95% 1-Palmitoyl-2-oleoylphosphatidylcholine(POPC)+5%Galactosylceramide(GalCer)]、溶液81[0.1Mトリス緩衝液(pH=7.5)]、絶縁性媒体78[ドデカフルオロテトラデカンとトリデカフルオロオクタノール(10:1)混合物]、純水80cをそれぞれ流し、溶液80bと溶液81は電極の下に達した際、溶液の流れを止め、分子膜の両側に設置される微小電極によって、分子膜の膜電位を測定した。さらに、膜電位が安定に達した後、ブランク試料として0.5μlの0.1Mトリス緩衝液(pH=7.5)を試料注入口100より注入し、膜電位変化を測定した。
(実施例)
次に、上記のと同じ流速、容量、溶液の種類と溶液順を流し、だだし、試料の注入口100より溶液81へ0.5μlの25nM HIV−1を含む0.1Mトリス緩衝液(pH=7.5)を注入し、分子膜の膜電位とHIV−1を含む試料を注入した後の膜電位変化を測定した。
(結果)
比較例の場合は、膜電位が安定した際、ブランクの試料を溶液81に注入されても、膜電位の変化が観察されなかった。
一方、実施例の場合、HIV−1を含む試料を溶液81へ注入された際、数mVの膜電位が観測された。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、第1の実施の形態において説明した、分子膜を備えるマイクロリアクによって、構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)、ウィルスの検知、分離及びタンパク質のリフォールディングを行うことについて説明する。
第3の実施の形態では、アミロイド型タンパク質とウィルスのマイクロリアクタ中に自動、迅速及び連続的に作製される分子膜との相互作用により、構造異常タンパク質やウィルスの微量、簡便、迅速及び高感度検出マイクロチップ及びバイオセンシングシステムを提供し、もしくは分子膜を備えるマイクロリアクタを利用した構造異常タンパク質のリフォールディングを行うことで、難病の早期診断及び治療に役立つことマイクロリアクタについて説明する。
(第3の実施の形態に係るマイクロリアクタの特徴)
第3の実施の形態では、色々な疾病を引き起こす共通な構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)ならびにウィルスを高感度、微量、簡便、迅速に検出する次世代検出チップ及びシステムを提供し、難病の早期診断に役立つことを特徴とする。又、構造異常(病因)タンパク質の分子膜への吸着、沈着及び付着により、試料溶液から構造異常タンパク質を分離、除去することができるシステムを提供し、難病の治療に役立つことを特徴とするものである。
第3の実施の形態では、構造異常タンパク質と分子膜との相互作用などによるタンパク質のリフォールディングによる難病の治療に役立つことを特徴とするものである。
第3の実施の形態では、各種タンパク質、薬物と分子膜の一種である脂質二分子膜(生体膜)との相互作用により、疾病のメカニズム解明及び薬物効果の確認により、新薬開発に役立つことを特徴とするものである。
すなわち、第3の実施の形態では、構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)、もしくはウィルスのマイクロチャンネル内の第1の流体26もしくは第2の流体27の間で形成された分子膜との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーなどの相互作用による膜への付着、吸着、沈着ならびに、膜との相互作用による流体中に含まれる物質の分子膜への透過変化に基づくバイオセンサーチップ、バイオセンシングシステムであり、又はアミロイド型タンパク質もしくはウィルスの分子膜への付着、吸着、沈着および透過により分離・除去、構造異常のアミロイドタンパク質のリフォールデングシステムを具備することを特徴とするものである。
第3の実施の形態における分子膜は、単分子膜、二分子膜、脂質二分子膜、逆二分子膜、脂質多重層膜、分子多重層膜、ミセル、逆ミセル、ベシクル、逆ベシクル、エマルジョン、LB膜のいずれか一つ、もしくはこれらが混在した構造であることを特徴とするものである。
第3の実施の形態におけるアミロイド型タンパク質、もしくはウィルスは、第1の流体26もしくは第2の流体27に少なくとも一種以上を含んでなることを特徴とするものである。
第3の実施の形態における分子膜は二次元の平面状、三次元の、三次元の柱状、円錐状、切頭円錐状、円筒状、楕円筒状と、多角状の少なくとも1つ以上の形状を有することを特徴とする。
第3の実施の形態における分子膜は少なくとも一種類以上の脂質からなり、もしくは少なくとも一種類以上の脂質と少なくとも一種類以上の蛍光分子で修飾した脂質、蛋白質(酵素、分子シャペロン、抗原、抗体)、核酸、糖脂質、糖タンパク質、コレステロール、蛍光色素、スフィンゴ脂質、リガンド、ポリペプチド、シクロデキストリン、フラーレン、カーボンナノチューブ、クラウンエーテル、ステロイド、ポルフィリン類、イオンチャンネル、電子共役系物質、酸化還元剤などの分子を含んでなる分子膜であり、分子膜においてマイクロドメインを形成することを特徴とするものである。
第3の実施の形態におけるマイクロドメインはマイクロチャンネルにおいて、形成される分子膜の中、特に脂質二分子膜の中に部分的に形成される。或いは、マイクロチャンネルの中で、マイクロドメイン類似機能膜を形成させることを特徴とするものである。
第3の実施の形態における分子膜はチャンネル内でリンク状、中空の楕円状、中空の角状、中空の六角状、など中空の多角状の導入口から第1の流体26と第2の流体27の間もしくは流体とチャンネル壁の間で形成されることを特徴とするものである。
第3の実施の形態における両親媒性分子混合液、第1の流体26および第2の流体27の導入口はリング状、楕円状、半円状、四角状、不等辺多角状の立体構造を有することを特徴とするものである。
第3の実施の形態におけるウィルスはキャプシドと核酸だけからなる正二十面体のウィルスと、キャプシドの外側にエンペロープと呼ばれる皮膜を持つウィルスと、キャプソマーが螺旋状につらなったキャプシドの外側にエンペロープを持つウィルスとB型肝炎ウィルスであることを特徴とするものである。
又、ウィルスから抽出される成分の内、キャプシドなどの夾雑タンパク質は陰イオンの場合、陽イオン界面活性剤からなる逆ミセルにより抽出除去することを特徴とするものである。もしくは正電荷を持つ脂質二分子膜により、負電荷の夾雑タンパク質を吸着分離することを特徴とするものである。
これらの方法により、ウィルスから抽出される夾雑タンパク質とDNAを分離することができ、夾雑タンパク質を除去した後のDNAを夾雑タンパク質の影響を受けることなくDNAセンサにより検知できることを特徴とするものである。
(第3形態に係わる分析システムの構造)
本発明の第3の実施の形態に係る分析システムは、図1、図6〜8に示す第1の実施の形態に係るマイクロリアクタ分析システム(1)からマイクロリアクタ分析システム(4)と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図36は、図1に示す作製・再生部11及び反応部14を構成するマイクロリアクタの模式図である。図36に示すように、マイクロリアクタ1は、第3の導入口21、第1の導入口22、フィルタ41を具備する出口を有する。このフィルタ41は、水溶液及び低分子量の物質を透過させるが、高分子量のタンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はウィルスを透過させない特性がある。又、フィルタ41の種類によって、特定の試料及び試料溶液に微少量に存在するアミロイド型タンパク質及びウィルスの濃縮、あるいは、高感度検出に非常に有効である。マイクロリアクタ1はマイクロセンサチップとして繰り返しの使用は可能であり、非常に経済的である。
(試料)
第3の実施の形態に係る分析システムの試料は、構造異常タンパク質とウィルスである。その他、分子膜との相互作用により、膜に細孔(pore)の形成をもたらすタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、膜結合性薬物、および抗生物質なども試料とすることができる。これらの試料としては、例えば、アラメシチン、グラミシジン、ハチ毒メリチンなどがある。
又、分子膜との相互作用によって、膜の電気化学的特性、もしくは膜の表面構造および蛍光の変化を引き起こすことができる物質を試料とすることができる。このような試料としては、例えば、コレラ毒素、破傷風(テタヌストキシン)、ボツリヌス毒素、ダイオキシン、砒素(亜砒素)、テトロドトキシン、シガトキシン、αブンガロトキシン、リシンやサキシトキシンなどの毒物が挙げられる。又、抗生物質としてペニシリンG、カナマイシンA、テトラサイクリン、スプレトマイシンなどが挙げられる。
(タンパク質構造異常及びウィルス感染により引き起こされる病気)
構造異常タンパク質により引き起こされる病気は、コンフォメーション病、あるいはフォールディング病と呼ばれる。コンフォメーション病の一つに、アミロイド繊維はアミロイド型タンパク質もしくは10残基程度のペプチドから形成され、アミロイド繊維の沈着により引き起こされる、アミロイド病(もしくはアミロイド-シス)がある。
アミロイド型タンパク質の機能はその高次構造と密接に関わっており、外界環境条件によるタンパク質の構造変化は元の生体機能を損ない、アミロイド繊維の形成及びアミロイド繊維の沈着により、狂牛病、ヒトのクロイツフェルトーヤコブ病、クールー病、羊のスクレイピーなどのプリオン病、アルツハイマー痴呆病(Aβペプチド、アミロイドβタンパク質)、透析アミロイド-シス(βミクログロブリン)、甲状腺髄様がん(カルシトニン)、ALアミロイドーシス(免疫グロブリンL鎖)、家族性アミロイドポリニューロパチー(トランスサイレチン)、家族性アミロイド-シス(リゾチーム)、パーキンソン病(αシヌクレイン)、ハンチントン病(ハンチンチン)などを引き起こすことが知られている。()内はその原因となるタンパク質を示している。
上記アミロイド型タンパク質は分子膜、特に脂質ニ分子膜、脂質二分子膜内で形成されるマイクロドメイン(ラフト、ガベオラ)、脂質二分子膜内又は表面に含有もしくは突起されるアンカータンパク質(GPIアンカータンパク質)、レセプタータンパク質、糖タンパク質、スフィンゴ脂質(ガングリオシド)、糖脂質、抗原、抗体との特異的、又は膜との静電的、疎水的、親水的およびイオン的などの相互作用によって、膜への吸着、付着、沈着ならびに膜との相互作用に伴う膜を貫通したポアーの形成による物質の膜への透過変化を引き起こすアミロイドタンパク質やその前駆体タンパク質であるならば、特に上述の種類に限定されることがない。
上記マイクロドメインとは、脂質二分子膜中で形成されたマイクロドメインであり、スフィンゴミエリン、コレステロール及びスフィンゴ脂質(ガングリオシド)が集合してできる膜領域を土台(13〜70nm)として形成されるマイクロドメンである。これらの脂質が不飽和の脂肪酸鎖の多いリン脂質膜の中で集合して秩序な液晶のマイクロドメイン(ラフト)を形成するものとも考えられている。又、膜内タンパク質であるMAL、フロッティリン、ESAもマイクロドメイン(ラフト)を構成するタンパク質である。
(アミロイド型タンパク質の検出原理と手段)
以下にプリオン病及びアルツハイマー痴呆病を引き起こすアミロイド型タンパク質を例として、これらのタンパク質と分子膜、特に、脂質二分子膜との相互作用に基づくバイオセンサの原理を述べる。
まず、プリオン病及びその検出原理と手段について記述する。狂牛病、ヒトのクロイツフェルト−ヤコブ病、クールー病、羊のスクレイピーなどの共通する病原物質として、タンパク質の一種であるプリオンが考えられる。よって、これらの疾病はまとめてプリオン病と呼ばれる。プリオンはαへリックスとβシートの二つの構造があるが、αへリックスのプリオンは正常なプリオンであるが、βシートプリオンはタンパク質構造異常型プリオンである。正常型のαへリックスプリオンは異常型のβシートプリオンに感染された場合、βシートプリオンを鋳型にして、次々とβシートへ構造が変異される。
又、生体内では、α-プリオンもβ-プリオンも最終的にタンパク質分解を受けるが、 α-プリオンが完全に分解されるのに、β-プリオンは完全に分解されず、N末端67残基を失うだけで、更に凝集しアミロイド斑を作る。このアミロイド斑は狂牛病に特有の神経変性の直接原因と考えられている。
一方、プリオンの構造が異なると、その親水性もしくは疎水性の特性が異なる。正常型のαへリックスプリオンは、親水性であるが、異常型βシートプリオンは疎水性である。したがって、構造の相異に起因するプリオンの親水性もしくは疎水的特性によって、これらの分子膜、特に脂質ニ分子膜、ラフトを形成する二分子脂質膜との相互作用も異なることが明らかである。
第3の実施の形態では、構造の相違に起因するプリオンの分子膜、特に脂質ニ分子膜もしくは脂質ニ分子膜中に形成されるマイクロドメインとの相互作用の相違によって生じる膜電位、インピーダンス、誘電率などの変化、膜への物質透過の変化、又は、膜の表面構造、状態の変化を検知、観測することにより、正常型α-プリオンと異常型β-プリオンを判別することである。
具体的に、例えば、正常型α−プリオンはPOPG膜(パルミトイルオレイルホスファチジルグリセロールpalmitoyloleoyphosphatidylglycerolの略)と相互作用するが膜は破壊されない。一方、異常型β−プリオンは同様にPOPG膜と相互作用するが膜が破壊される。又、正常型α−プリオンはDPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリンdipalmitoylphosphatidylcholine)、コレステロール、スフィンゴミエリンからなるラフト膜と相互作用しないが、異常型β−プリオンはラフト膜と相互作用するにもかかわらず、膜は安定した構造を保つことができる。
即ち、第3の実施の形態においては、プリオンの分子膜、特に脂質ニ分子膜もしくは、脂質ニ分子膜中に形成されるマイクロドメインとの相互作用による引き起こされる膜電位の変化相違や膜への透過物質の変化を検知し、又は膜の表面状態を観測することにより、異常型プリオンを認識することを特徴とする。
次に、アルツハイマー痴呆病及びその検出原理と手段について記述する。アルツハイマー痴呆病もプリオン病と同様に、タンパク質構造の異常により、凝集性が著しく増すアミロイド(凝集)繊維が形成されるためと考えられている。このアミロイド繊維は中枢神経の細胞に異常に凝集し、この結果中枢神経の細胞脱落を引き起こしてしまい、患者は痴呆症に至る。
一方、アルツハイマー痴呆病の原因タンパク質はAβペプチド、アミロイドβタンパク質であり、特に、アミロイドβタンパク質は水溶液中で凝集性が強く、数十μM以上の濃度でインキュベートするとβシート構造を有するアミロイド繊維が容易に形成される。一方、生体内における生理的なアミロイドβタンパク質濃度はnMオーダーで極めて低濃度で存在し、可溶であるので、タンパク質の自発的な凝集が起こらないため、早期診断と治療は困難とされる。
第3の実施の形態では、アミロイドβタンパク質と脂質二分子膜中に存在するスフィンゴミエリン、コレステロール及びスフィンゴ脂質(ガングリオシド)からなるマイクロドメイン、特にガンクリオシドとの特異的相互作用により、少量のアミロイドβタンパク質のマイクロドメインへの付着、沈着により、マイクロドメインでアミロイドβタンパク質の種(seed)を形成し、この種に少量のアミロイドβタンパク質が凝集される特性を利用する。
即ち、脂質二分子膜中に存在するマイクロドメインへのアミロイドβタンパク質の凝集によって、引き起こした膜の電気的、表面的特性もしくは、物質の膜への透過の大きな変化を検知、観測することでアルツハイマー痴呆病の早期診断を行う。
(ウィルスの種類)
本発明の第3の実施の形態に係る試料であるウィルスとして、キャプシドと核酸だけからなる正二十面体のウィルス、キャプシドの外側にエンペロープと呼ばれる皮膜を持つウィルス、キャプソマーが螺旋状につらなったキャプシドの外側にエンペロープを持つウィルスがある。正二十面体のウィルスとしては、例えば、運動神経麻痺などを起こすポリオウィルス、肝炎を引き起こすA型肝炎ウィルスがある。キャプシドの外側にエンペロープと呼ばれる皮膜を持つウィルスとしては、例えば、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、シンドビウィルス、ヒトヘルペスウィルス6型やヒトヘルペスウィルス8型とがある。又、キャプソマーが螺旋状につらなったキャプシドの外側にエンペロープを持つウィルスとしては、例えば、SARSウィルスなどのウィルスがある。その他に、B型肝炎ウィルスのように3種類の形を取るウィルスがある。
上述のように、ウィルスの種類及び形態はさまざまであるが、分子膜、特に脂質ニ分子膜、脂質二分子膜内で形成されるマイクロドメイン(ラフト、ガベオラ)、脂質二分子膜表面に突起されるアンカータンパク質(GPIアンカータンパク質)、レセプタータンパク質、糖タンパク質、スフィンゴ脂質(ガングリオシド)、糖タンパク質、糖脂質、抗原、抗体との特異的、膜との静電的、疎水的、親水的およびイオン的などの相互作用によって、膜への吸着、付着、沈着ならびに、膜との相互作用及びその相互作用に伴う膜を貫通したポアーの形成による溶液相の物質の膜への透過変化を引き起こすウィルスであるならば、特にウィルスの種類に限定されることがない。
(ウィルスの検出原理と手段)
第3の実施の形態では、ウィルスの分子膜、特に脂質ニ分子膜、マイクロドメイン類似膜、脂質二分子膜内で形成されるマイクロドメイン(ラフト、ガベオラ)、脂質二分子膜表面に突起されるアンカータンパク質(GPIアンカータンパク質)、レセプタータンパク質、糖タンパク質、スフィンゴ脂質(ガングリオシド)、糖タンパク質、糖脂質、抗原、抗体との特異的、膜との静電的、疎水的、親水的およびイオン的などの相互作用によって、膜への吸着、付着、沈着、融合ならびに膜との相互作用により引き起こされる膜電位、インピーダンス、誘電率、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび膜表面状態の変化、或いは上記の相互作用に伴う膜を貫通したポアーの形成による物質の膜への透過変化を引き起こす特徴を利用することを特徴とする。
第3の実施の形態では、上記の相互作用に伴う、膜電位、電流、インピーダンス、誘電率、電気容量、粘度、密度、屈折率、吸収スペクトル、蛍光スペクトルなどの変化、膜への物質透過の変化を検知し、もしくは、膜の表面構造、状態の変化を観測することにより、ウィルスを検知することである。
(測定装置と検出方法)
試料の分子膜との相互作用により引き起こされるさまざまな電気的、化学的及び物理的変化は、具体的に下記検出装置及び方法により検知することができる。
分子膜表面状態の変化の検出装置として、例えば、光学顕微鏡、電子顕微鏡、レーザー電子顕微鏡、微分干渉位相差顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、全反射フーリエ変換赤外分析装置、レーザーラマン分光装置、蛍光顕微鏡、偏光顕微鏡、X線解析装置と原子間力顕微鏡(AFM)などを用いることができるが、本発明に用いられている装置は特に、これらの装置に限定されるものではない。
第3の実施の形態に係る分子膜の特性として、例えば、膜の流動性、充填状態などの物理的性質、膜表面の電荷密度、疎水的および親水的特性を膜電位、膜のインピーダンス、電位容量、膜もしくは溶液の誘電率測定で調べることができる。
膜電位、電流などの電気信号を測定する装置として、例えば、エレクトロメーター、デジタルマルチメーター、ポテンショスタットなどがあるが、高抵抗、ローパスフィルタ、シグナル電気信号を増幅できるアンプなどを備える高感度エレクトロメーターの使用が望ましい。膜のインピーダンスおよび電気容量を測定する装置として、インピーダンスアナライザー、LCRメーター、ベクトルインピーダンスメーターなどを用いることができるが、ポテンショスタット、特に、ピコアンペアより小さいシグナル電気信号の測定及び高速掃引が可能であり、ローパスフィルタを備えた超高感度ポテンショスタットなどの装置との併用が望ましい。その他の電気化学測定装置として、バイポテンシオスタット(デユアルポテンショスタット)を用いることができるが、本発明に用いられている装置は特に、これらの装置に限定されるものではない。
又、電気的ノイズを防ぐために、上記の測定をシールドボックス内で行うことが望ましい。
(物質の膜との相互作用による膜と流体の特性変化の測定方法)
一方、ポリペプチド、糖類、タンパク質等の生体関連物質及びウィルスは膜との相互作用による膜へ付着、吸着、沈着、融合の変化は上記膜の特性を検知する装置と手法及び膜の表面状態を観察する装置を用いることができる。
更に、アミロイド型タンパク質或いはウィルスの分子膜との相互作用による流体中に含まれるのイオン、酸化還元種、有機物、糖類およびアミノ酸など物質の膜透過変化、ポリペプチド、糖類、苦味物質、甘味物質、及びタンパク質等の物質や分子などの物質の分子膜への透過変化、膜および流体の電気化学的変化、吸収スペクトル、蛍光スペクトル、或いは膜の表面特性の変化を、間接的に、もしくは直接的に検知・観察することができる。
(物質の膜の透過及び膜との相互作用による物質の膜および流体の測定方法)
更に、膜を透過したイオン、酸化還元種、分子及び物質を直接的に検知する手法として、以下のような手法をとることができる。例えば、マイクロチャンネル内もしくはマイクロチャンネル外に、エレクトロメータ−、ポテンショスタット及びガルバノスタット装置のセンサ端子であるイオンセンサー、微小電極、センサ電極などの電極を設置し、チャネル内の局所的、in-situ検出を行うことができる。更に、チャンネルの出口でこれらの膜透過物質を収集・測定することもできる。
一方、チャンネルから流出された膜透過物質をそれぞれの物質の性質に応じて、pHメータ、粘度計、密度計、屈折率計、吸光光度計、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC/MS)、薄層クロマトグラフィー分析装置(TLC)、蛍光分光装置、フーリエ変換赤外分光分析装置(FTIR)などの化学分析装置を用いて該当成分を分析することができる。
例えば、上述のように、膜を透過する物質は蛍光スペクトルの変化を引き起こさない場合、透過物質の電気信号、pH、粘度、密度、屈折率、吸収スペクトル及び熱信号の測定により、定性及び定量することができる。
一方、膜を透過した物質は、膜および流体中の蛍光スペクトル変換を引き起こす場合、蛍光スペクトル変化の検出により、物質の定性、定量ができる。
(ペプチド、ポリペプチドやタンパク質の分析装置)
ペプチド、ポリペプチドやタンパク質の分析として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光光度法及び円偏光二色スペクトル法を用いることができる。
フーリエ変換赤外分光分析装置を用いて、タンパク質の二次構造を分析することができる。
(第3の実施の形態に係るマイクロリアクタの作用及び効果)
第3の実施の形態に係るマイクロリアクタによると、構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)及びウィルスのマイクロチャンネル内で作製される静止もしくは流動の分子膜との相互作用により、引き起こされるさまざまな電気的、化学的及び物理的変化を捉え、構造異常タンパク質(アミロイド型タンパク質)及びウィルスの高感度、迅速検知を行うことができる。更に、構造異常タンパク質の迅速リフォールディングを行うこともできる。
第3の実施の形態に係るマイクロリアクタ及び分析システムは、液/液層流間、気/液層流間、もしくは固/層流間に流動性のある分子膜を形成させることにより、この分子膜が持つ生体膜機能を利用して、さまざまな試料のセンサとして使用することを特徴とする。更に、膜の流動性を利用して、ワンチップで様々な機能を有するセンサを構築することができると伴に、センサの繰り返し使用も可能である特徴を有する。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る分析システムの実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、アミロイド型タンパク質(Aβ)の検出を行った。実施例1で用いられた脂質、溶液、タンパク質は以下の通りである。
脂質:GM1/スフィンゴミエリン/コレステロール(40:30:30)を含む卵黄ホスファリジルコリン脂質
溶液:0.1 M トリス緩衝液(pH7.5)
タンパク質:0.6μM アミロイドβタンパク質(Aβ)
図37に示すように、25℃に恒温されたマイクロリアクタの第3の導入口21よりGM1/スフィンゴミエリン/コレステロール(40:30:30)を含む卵黄ホスファリジルコリン脂質の溶液を所定流速で導入し、第1の導入口22及び第2の導入口23より所定流速で、それぞれ0.1 M トリス緩衝液(pH7.5)を導入し、さらに、第2の導入口23から断続的に0.6μMアミロイドβタンパク質(Aβ)のを含む0.1 M トリス緩衝液(pH7.5)を導入した。
(結果)
アミロイドβタンパク質(Aβ)を含む0.1 M トリス緩衝液(pH7.5)を断続的に流した場合、膜の両側に設置される電極により、膜電位の変化が検知された。
実施例1の実験結果により、分子膜を備えるマイクロリアクタはアミロイドβタンパク質(Aβ)を特異的に検知できることを示した。
(実施例2)
実施例2では、分子膜を備えるマイクロリアクタを用いた変性タンパク質のリフォールディングを行うモデル系として行ったものである。変性したタンパク質のモデルとして炭酸脱水酵素を用いて、そのリフォールディングを行った。実施例2で用いられた界面活性剤、有機溶媒、タンパク質は以下の通りである。
界面活性剤:1−パルミトイル−2−オレイル−sn―グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)
有機溶媒:デカン
変性タンパク質:炭酸脱水素酵素
図38に示すように、25℃に恒温されたマイクロリアクタの第1の導入口22及び第2の導入口23より所定流速で3 μMの変性炭酸脱水素酵素と0.1 M グアニジン塩酸塩を含む0.1 M トリス緩衝液(pH7.5)を導入し、第3の導入口21より所定流速で7 % 1−パルミトイル−2−オレイル−sn―グリセロ−3−ホスホコリンを含むデカン溶液を導入してリフォールディング操作を行った。
(結果)
変性炭酸脱水素酵素はマイクロリアクタ内で形成された分子膜との接触により速やかにリフォールディングされた。
(実施例3)
実施例3では、図37と同様なセル構造で、25℃に恒温されたマイクロリアクタの第3の導入口21よりパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)の両親媒性分子混合液を所定流速で導入し、第1の導入口22および第2の導入口23よりそれぞれ0.1Mトリス緩衝液(pH7.5)を所定流速で導入した。第2の導入口23より更に、断続的に0.6μM β型プリオンタンパク質を含む0.1M トリス緩衝液(pH7.5)を導入した。
(結果)
0.6μM β型プリオンタンパク質を含む0.1M トリス緩衝液(pH7.5)を流した場合、膜の両側に設置される電極により、膜電位の変化が検知された。
(比較例3)
一方、上記と同様な実験条件で、第2の導入口23より断続的に0.6μM α型プリオンタンパク質を含むトリス緩衝液(pH7.5)を流した場合、膜電位の変化が検知されなかった。
実施例3と比較例3の実験結果より、分子膜を備えるマイクロリアクタはβプリオンタンパク質を特異的に検知できることを示した。
(実施例4)
実施例4では、血清含有液によりHIV−1中のウィルスRNA及び逆転写酵素の抽出と膜電位変化、遺伝子センサ及びプロテインセンサによるHIV−1の検知を行った。
図39(a)に示すように、25℃に恒温されたマイクロリアクタの第3の導入口21より所定流速で、スフィンゴミエリン、ガラクトシルセラミド(GalCer)とコレステロールを含む両親媒性分子混合液を流す。第1の導入口22および第2の導入口23よりそれぞれより0.1Mトリス緩衝液(pH7.5)を導入した。更に、第2の導入口23より、断続的に血清とHIV−1を含有する溶液を導入した。
第3の導入口21から流された両親媒性分子混合液(脂質混合液25)により、マイクロチャンネル内の液/液層流間にマイクロドメイン(ラフト)類似膜が形成され、このマイクロドメイン類似膜はHIV−1のGp120という糖タンパク質のV3 loop{図39(b)参照}の部位と特異的に相互作用し、その結果、HIVと脂質二分子膜の膜融合を引き起こし、HIV−1内にあるHIV−1のウィルスRNA及び逆転写酵素{図39(c)参照}を膜の反対側に放出させた{図39(a)参照}。一方、血清は膜を透過しないので、このまま出口より流出し、HIV−1のウィルスRNA及び逆転写酵素と分離することができる。
(結果)
上記のようにHIV−1と脂質二分子膜との膜融合により、ウィルスRNAと逆転写酵素と血清を分離することができると同時に、膜融合により、膜電位変化などの電気信号(電位、抵抗、電流、誘電率など)の変化を各層流に設置される電極などにより検知することができた。
又、抽出されたHIV−1の転移酵素とRNAを更にプロテインセンサもしくは遺伝子センサにより、血清の影響を受けることなく検出することができた。
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、逆ミセル分子膜を作製するマイクロリアクタを用い、物質、特に生体関連物質の正抽出及び逆抽出、もしくは抽出に伴う化学反応及び変性タンパク質のリフォールディングについて説明する。
第4の実施形態では、簡便、短時間、省エネルギー、且つ温和な反応・抽出条件で、物質の高効率および迅速抽出、タンパク質などの生体関連物質の高活性、高効率および迅速抽出、変性タンパク質の迅速リフォールディングを行なう逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアク)を提供することを目的とする。
(第4の実施の形態に係るマイクロリアクタの特徴)
第4の実施の形態では、マイクロリアクタ内で逆ミセル抽出を行うことにより、従来の逆ミセル抽出における問題を大幅に改善することを特徴とするものである。
具体的に、本発明は、従来の逆ミセル抽出のように、攪拌を伴うことなく、油水界面積を大きくすることができるので、界面活性剤の乳化が進むことなく、有用物質の迅速抽出を行うことを特徴とするものである。
第4の実施の形態では、微小空間による逆ミセルサイズの制御が容易であり、油/水の層流接触による安定なミセル構造による抽出が可能なため、従来の逆ミセル抽出と比較して、選択性の高い抽出及び迅速抽出を行うことを特徴とするものである。
第4の実施の形態は穏和な条件での抽出操作が可能であるため、タンパク質・酵素(細胞の約20%を占める)、アミノ酸、ペプチド、核酸などの比較的小さい生体分子の抽出から、ウィルスや微生物細胞などの生体粒子に至る生理活性物質、および物質の分離・抽出系を提供することを特徴とするものである。
第4の実施の形態は、逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアク)を用いて、変性タンパク質の立体構造及び活性回復を行うことを特徴とするものである。
第4の実施の形態は、逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアクタ)を用いたバイオリアクタシステムを提供することを特徴とするものである。
第4の実施の形態は、逆ミセルによるマイクロ抽出システムはマイクロチャンネル内の原料水相と逆ミセル溶液相の層流間において、逆ミセル溶液相に存在する逆ミセルへ原料水相中の物質が正抽出され、もしくは抽出に伴うタンパク質のリフォールディングが行なわれる工程1と、原料水溶液の回収もしくは再循環の工程2と、正抽出した逆ミセル溶液から物質とリフォールディングされたタンパク質の逆抽出を行う工程3と、逆ミセル溶液を再利用するための循環工程4と、抽出生成物を回収するための工程5とを具備することを特徴とするものである。
即ち、第4の実施の形態は、一種類以上の両親媒性分子及びリガンド、リン脂質、糖脂質、コレステロール、タンパク質、スフィンゴ脂質、酸化還元種、細胞認識分子、受容体及び少量な水を含有する一種類以上の両親媒性分子からなる逆ミセル溶液を流すマイクロチャンネルと、生体関連物質、各種分子、酸化還元剤、分子シャペロンおよび金属イオンなどの物質から少なくとも1種類以上を含有する原料水溶液を流すマイクロチャンネルと合流し、両チャンネルから流出される両液相は同一マイクロチャンネル内において層流状態を保ちながら、一定方向に輸送され、この際、逆ミセル溶液相と原料水相の両液相界面での相互接触による逆ミセルへの生体関連物質などの正抽出、もしくは抽出に伴う化学反応、タンパク質のリフォールディングが行われる工程1を具備し、続いて、原料水溶液の回収もしくは再循環チャンネルが設置され、原料水溶液の回収もしくは再循環の工程2を具備し、更に、生体関連物質、各種分子、イオンなどを取り込んだ逆ミセル溶液チャンネルに、逆抽出を行うための複数の回収水相チャンネルを具備し、逆抽出のための工程3を具備し、更に逆ミセル溶液を再利用するための循環工程4と、抽出生成物を回収するための工程5とを具備することを特徴とするものである。
又、工程3はさらに正抽出した逆ミセル溶液相と回収水相の両層流間の接触により回収水相への生体関連物質の逆抽出が行われる工程3(a)、生体関連物質などを含有する逆ミセル溶液相と回収水相のチャンネルにおいて、チャンネル中両液相の温度をマイクロコントロールチップで制御することにより、回収水相への生体関連物質の温度度制御による逆抽出を行う工程3(b)、及び逆ミセル溶液のチャンネルへ親水性有機溶媒を分岐チャンネルから導入することにより回収水相への生体関連物質を逆抽出する工程3(c)を具備することを特徴とするものである。
第4の実施の形態の逆ミセルは少なくとも一種類以上の両親媒性分子からなる逆ミセルと、少なくとも一種類以上の両親媒性分子と少なくとも一種類以上の助界面活性剤、リガンド、リン脂質、糖脂質、コレステロール、タンパク質、スフィンゴ脂質、酸化還元種、細胞認識分子、受容体からなる混合型逆ミセルであることを特徴とするものである。
第4の実施の形態の逆ミセルの中心にウォータープールもしくは酸化還元種、核酸関連物質、タンパク質を含有するウォータープールが存在し、そこへ生体関連物質が取り込まれることを特徴とするものである。
第4の実施の形態における工程3の回収水相は、異なるpH、塩濃度を有することを特徴とするものである。
第4の実施の形態における原料水溶液は物質、特に生体関連物質であるタンパク質、変性タンパク質、アミノ酸、ポリペプチド、ペプチド、核酸、核酸関連物質、プラスミド、バクテリア、植物細胞などを含有することを特徴とするものである。
第4の実施形態において、変性タンパク質を含む逆ミセルのウォータープール中に酸化還元剤、分子シャペロン、金属イオンが取り込まれ、逆ミセルのウォータープール内で、タンパク質の立体構造および活性の回復を行うことを特徴とするものである。
(逆ミセルによるマイクロ抽出システムの構造)
第4の実施の形態に係るマイクロリアクタシステム(逆ミセル型マイクロリアクタ)は、図40に示したように、逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアクタ)による生体関連物質などの物質の正抽出及びリフォールディングを行うための正抽出部91と、原料水溶液を回収するための原料回収部92と、正抽出で抽出された生体関連物質などの物質の逆抽出を行うための逆抽出部93、逆ミセル溶液を循環するための循環部95と、逆抽出で得られたそれぞれの抽出生成物を回収するための生成物回収部94とを備える。これらの構成部分は正抽出及び逆抽出の対象物に対応して、自由に組み合わせることができる。
正抽出部91において、例えば、異なる生体関連性物質(或いは物質)の正抽出及び正抽出の後に行われるタンパク質のリフォールディングの模式図をそれぞれ図41と図42に示す。
図41に示すように、正抽出のマイクロチャンネルは逆ミセルへの異なる生体関連物質(或いは物質)抽出を行うための逆ミセル(RM)を含む溶液を導入する第6の導入口96と生体関連物質(P1、P2、P3)などを含む原料水溶液(W)を導入する第7の導入口97があり、これらの二つのチャンネルはマイクロチャンネル(3)と接続する。マイクロチャンネル3内では、両層流相が形成され、原料水相に含まれる生体関連物質(P1、P2、P3)が両層流の界面を通じて、逆ミセル(RM)内へ正抽出される。
この場合、逆ミセルは一種類以上の両親媒性分子からなる逆ミセル、もしくは少なくとも一種以上の両親媒性分子と少なくとも一種類以上のリガンド、リン脂質、糖脂質、コレステロール、タンパク質、スフィンゴ脂質、酸化還元種、分子シャペロン、細胞認識分子、助界面活性剤、受容体からなる混合型逆ミセルである。又、逆ミセルの内部に予め、少量な水、酸化還元種、金属イオン、各種分子と生体関連物質を含有させることもできる。逆ミセルを構成するさまざまな物質及び逆ミセル内に内包されるさまざまな物質について、後で詳細に説明する。
一方、原料水相(W)に変性タンパク質が含まれる場合は、図42に示すように、変性タンパク質のリフォールディングを行うことができる。まず、変性タンパク質を逆ミセル(RM)に抽出する。次に、逆ミセル溶液相の分岐チャンネル(第10の導入口104)より酸化剤及び還元剤を内包した逆ミセル(RM−Ox/Red)や分子シャペロン、アデノシン三リン酸、金属イオンを内包した逆ミセル(RM−Cpn/ATP/M)を加え、変性タンパク質のリフォールディングを行うことができる。
原料回収部92は、未反応の原料水溶液を回収する。
逆抽出部93は、正抽出部で抽出された生体関連物質及びリフォールディングされた後のタンパク質の逆抽出を行う。逆抽出部93は、図43に示すように、水溶液(回収水相)の塩濃度、pHなどの条件制御、もしくは水溶液中(回収水相)にリガンド試薬の添加により逆抽出を行う第1の逆抽出部93a(工程3a)、マイクロチャンネル内の温度を制御することにより逆抽出を行う第3の逆抽出部93b(工程3b)、正抽出した逆ミセル溶液相にアルコール類などの親水性有機溶媒を添加することにより回収水相への逆抽出を行う第3の逆抽出部93c(工程3c)を含む。
生成物回収部94は、逆抽出部93で得られた抽出生成物を回収する。
循環部95は、逆抽出部93から正抽出部91へ逆ミセル溶液を循環する。
第4の実施の形態に係る正抽出部91及び逆抽出部93に用いられるマイクロチャンネルの形状は摩擦抵抗を軽減するために、直管のマイクロチャンネルを多管式にして、使用することが望ましいが、用途に応じて曲がったマイクロチャンネルを適宜に使用することもできる。第4の実施の形態に係るマイクロチャンネルは逆ミセル溶液相と水相の層流を形成できるものであれば、マイクロチャンネルの径の大きさと形状を特に限定されるものではない。
尚、マイクロチャンネルの材料については、第1の実施の形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
(逆ミセルによるマイクロ抽出システムにおいて使用する物質)
第4の実施の形態に係る逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアクタ)において使用するアミノ酸、ペプチド、核酸関連物質等の物質については、第1の実施の形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。又、タンパク質、変性剤、酸化剤及び還元剤、界面活性剤及び有機溶媒は例えば以下のものを使用するが、これらに特に限定されるものではない。
タンパク質としては、アシル−CoAオキシダーゼ、アシル−CoAシンセターゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、アスパアラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸β−脱炭酸酵素、アスパルターゼ、アセテートキナーゼ、アミノアシラーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラニン脱水素酵素、アラバナーゼ、アラビノシダーゼ、RNAポリメラーゼ、アルカリキシラナーゼ、アルカリセルラーゼ、アルカリプロテアーゼ、アルカリリパーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルドラーゼ、α−アセト乳酸脱炭酸酵素、α−キモトリプシン、イソアミラーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、インベルターゼ、ウリカーゼ、ウレアーゼ、ウロキナーゼ、エステラーゼ、N-アセチルノイラミン酸リアーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、ω−ヒドロキシラーゼ、カタラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、γ−グルタミントランスペプチダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、キシランアセチルエステラーゼ、キシロースイソメラーゼ、キモシン、グアノシン5’−リン酸シンセターゼ、クエン酸シンセターゼ、グリセロールオキシダーゼ、グリセロールキナーゼ、グリセロール3−リン酸オキシダーゼ、グルコアミラーゼ、グルコシダーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、グルコースイソメラーゼ、グルコース−1−オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース脱水素酵素、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デカルボキシダーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、クレアチニナーゼ、クレアチニンデイミナーゼ、クレチナーゼ、クロロペルオキシダーゼ、5’−アデニル酸デアミナーゼ、コリパーゼ、コリンエステラーゼ、コリンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、サーモライシン、ザルコシンオキシダーゼ、ザルコシンデヒドロゲナーゼ、3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3−クロロ−D−アラニンクロリドリアーゼ、ジアホラーゼ、シアン酸アルドラーゼ、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、ジヒドロピリミジナーゼ、ストレプトキナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スブチリシン、セファロスポリンアシラーゼ、セファロスポリンアミダーゼ、セルラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、チトクロムC、チミディレートシンターゼ、DNAポリメラーゼ、デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ、デキストラナーゼ、ドーパデカルボキシラーゼ、トランスグルタミナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、トリプシン、トリプトファナーゼ、トリプトファンシンセターゼ、ナリンギナーゼ、ニトリルヒドラターゼ、乳酸脱水素酵素、ノイラミニダーゼ、ハロヒドリンエポキシダーゼ、ハロヒドリンハロゲンハライドリアーゼ、ハロペルオキシダーゼ、ヒスチジンアンモニアリアーゼ、ヒダントイナーゼ、ピラノース−2−オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、フェニルアラニンアンモニアリナーゼ、フェノールオキシダーゼ、プトレッシンオキシダーゼ、フラビン酵素、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、プルラナーゼ、プロテアーゼ、プロウロキナーゼ、プロティナーゼ、プロリンイミノペプチダーゼ、ブロモペルオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、ペクチントランスエリミナーゼ、β−エーテラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルカナーゼ、β−グルコアミラーゼ、β−フルクトフラノシダーゼ、β−フラクトフラシノダーゼ、ペプチダーゼ、ヘミセルラーゼ、ペニシリンアミラーゼ、ペニシリンアミダーゼ、ペルオキシダーゼ、ペントサナーゼ、ホスホジエステラーゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、マンナナーゼ、ムタナーゼ、ムタロターゼ、ラクターゼ、ラクトノヒドロラーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ラク又ゼ、ラセマーゼ、ラッカーゼ、リアーゼ、リガーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、リジルエンドペプチダーゼ、リジンオキシダーゼ、リジンデカルボキシラーゼ、リゾチーム、リパーゼ、リブロース1、5−ビスホスフェイトカルボキシラーゼ、リポプロテインリパーゼ、リボヌクレアーゼA、リンゴ酸デヒドロキナーゼ、ルシフェラーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、ロダナーゼ、アルブミン、インスリン、インターフェロン、インターロイキン、γ−グロブリン、キモトリプシノーゲン、コンカナバリンA、バクテリオロドプシン、プロインスリン、β−ラクトグロブリン、ヘモグロビン、ミオグロビン、トリプシン阻害剤、ロドプシンなどが使用可能である。
又、変性剤としては、凝集タンパク質を水溶液に可溶化できる変性剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、グアニジン塩酸塩、尿素、ジチオスレイトール(DTT)、2−メルカプトエタノール、システインなどの変性剤を用いることができる。
又、酸化剤及び還元剤としては、逆ミセルに抽出された変性タンパク質をリフォールディングできるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、酸化剤として酸化型グルタチオン(GSSG)、シスチン及びジチオスレイトール(DTT)など、還元剤として還元型グルタチオン(GSH)、ジチオスレイトール(DTT)、システイン及び2−メルカプトエタノールなどを用いることができる。
又、分子シャペロンとしては、逆ミセルに抽出された変性タンパク質をリフォールディングできるものであれば、特に限定されないが、例えば、シャペロン(GroEL、Hsp60)、Hsp70(Dnak),Hsp90(HtpG)、HSp104(CIPB)などがある(カッコ内は大腸菌の場合の名称)
又、界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などがあるが、分子量100前後のアミノ酸から数ミクロンの大きさの細胞までの物質を可溶化できれば、特に限定されるものではない。具体例としては、アルキル四級アンモニウム塩(CTAB、TOMAC等)、アルキルピリジニウム塩(CPC等)、ジアルキルスルホコハク酸塩(AOT等)、ジアルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩(SDS等)、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン系界面活性剤(Tween系、Brij系、Triton系等)、アルキルソルビタン(Span系等)、レシチン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他、逆ミセルの構造を安定化させるために、助界面活性剤を用いることができる。
イオン性界面活性剤による可溶化は膜タンパク質の変性を伴うことが多いが、非イオン性界面活性剤を用いる場合、膜タンパク質の生物活性を失わずに可溶化されるので、膜タンパク質の抽出において非イオン界面活性剤の使用が望ましい。
又、逆ミセル抽出において、膜タンパク質を安定化するために、ポリオール類(グリセロールなど)、還元剤(ジチオスレイトールなど)、キレート剤(EDTAなど)、タンパク質分解酵素阻害剤(トリプシンイオンヒビターなど)の添加が必要となる場合もある。
又、逆ミセル溶液を構成する溶媒は有機溶媒であってもよい。有機溶媒を用いる場合、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素等を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
又、有機溶媒の代わりに、例えば、超臨界流体や高圧流体を用いて、逆ミセル溶液を調製することができる。例えば、エタン、プロパン、二酸化炭素などの超臨界流体や高圧流体を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
(逆ミセルによるマイクロ抽出システムの作用及び効果)
第4の実施の形態に係る逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアクタ)2によると、以下の作用及び効果が得られる。
1)迅速及び高効率抽出が可能になるため、抽出操作時におけるタンパク質の変性・失活を抑制することができる。
2)攪拌するための動力などを必要としないため、省エネルギー型である。
3)高効率の抽出が実現できるため、廃棄物の少ない、環境負荷低減型である。
4)マイクロチャンネルの径が小さいため、系全体の温度制御は容易である。
5)層流接触による安定な逆ミセル構造で抽出を行うことができる。
6)攪拌を伴うことなく、油/水界面を大きくすることができるので、界面活性剤の乳化が進むことなく、有用物質の迅速且つ連続抽出を行うことができる。
7)ワンチップで変性タンパク質のリフォールディングと抽出を行うことができる。
8)逆ミセルの各種物質、光学異性体に対する選択、抽出特性を利用して、更に各種分析機器との組み合わせにより、新規センサとして利用することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態に係る分析システムの実施例について説明する。
(実施例1)
従来系で行われている逆ミセル抽出の代表例として、タンパク質であるチトクロムCを用いた正抽出及び逆抽出操作がある。実施例1は、逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアクタ)の効果を検証するために、従来系と同様の抽出系を用いて、連続的正抽出及び逆抽出のモデル実験として行われたものである。実施例1に用いられる界面活性剤、有機溶媒及びタンパク質は以下の通りである。
界面活性剤:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム
有機溶媒:イソオクタン
タンパク質:チトクロムC
実施例1の正抽出は、図44に示すように、25℃に恒温されたマイクロリアクタの第6の導入口96より所定流速で50 mM AOTを含むイソオクタン溶液を流し、第7の導入口97より第6の導入口96と同じ流速で10 μM チトクロムCと0.1 M 塩化カリウムを含むpH8.5水溶液を流して二相を接触させることによって行った。
又、実施例1の逆抽出は、上記正抽出操作で得られたチトクロムCを可溶化した50 mM AOTイソオクタン溶液に、第8の導入口98より第6の導入口96と同じ流速で0.5 M 塩化カリウム水溶液を流して接触させることによって行った。
チトクロムCの濃度測定は、分光光度計(波長280 nm)を用いて行った。
(結果)
実施例1は従来の逆ミセル抽出と比較して、以下のような顕著的な効果が得られた。
逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアクタ)において、乳化の操作である攪拌を必要としないため、省エネルギー型であった。又、攪拌に伴うタンパク質のずり変性による失活を避けることができるため、高活性のタンパク質の抽出ができた。相分離の操作を必要としないため、例えば、遠心分離などの操作を必要とせず、従来法のように相分離のセトラー部も必要としないので、抽出時間は格段に短縮され、抽出工程及び操作も簡便になる。
実施例1のような逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアクタ)において、攪拌及び相分離の操作・過程が省略され、生体関連物質の短時間抽出が可能となるため、高活性タンパク質の高効率(図45参照)正抽出及び逆抽出を迅速且つ連続的に行うことができた。
(実施例2)
実施例2に用いられた界面活性剤、有機溶媒及びタンパク質は以下の通りである。
界面活性剤:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム
有機溶媒:イソオクタン
タンパク質:チトクロムC、リゾチーム、リボヌクレアーゼA
実施例2の正抽出は、図46に示すように、25℃に恒温されたマイクロリアクタの第6の導入口96より所定流速で50 mM AOTを含むイソオクタン溶液を流し、第7の導入口97より第6の導入口96と同じ流速で3μM チトクロムC、3μMリゾチーム、3μMリボヌクレアーゼA及び0.1 M 塩化カリウムを含むpH8.5水溶液を流して二相を接触させることによりチトクロムCとリゾチームの正抽出を行った。この正抽出の過程で、リポヌクレアーゼAは正抽出されなかったので、原料水相の出口から回収された。
実施例2の逆抽出は、以下に示した二段階の抽出条件に従って行われた。
まず、上記正抽出操作で得られたチトクロムCとリゾチームを可溶化した50 mM AOTイソオクタン溶液に、第8の導入口98より第6の導入口96と同じ流速で0.5 M 塩化カリウム水溶液を流して接触させることによりチトクロムCの逆抽出を行った。
次に、上記正抽出で得られたリゾチームを可溶化した50 mM AOTイソオクタン溶液に、第99の導入口9より第6の導入口96と同じ流速で1.5 M 塩化カリウム水溶液を流して接触させることによりリゾチームの逆抽出を行った。
高速液体クロマトグラフィーにてタンパク質を定量した。
なお、高速液体クロマトグラフィーの測定条件は以下の通りである。
カラムにODS(0.30 mX4.0 mmφ)を用い、流動相として0.1%トリフルオロ酢酸水溶液から60%アセトニトリル/40%水/0.1%トリフルオロ酢酸へグラジエント法で流速1 ml/minで15分間送液した。又、紫外吸収検知器(波長280 nm)を用いた。
(結果)
上記のような正抽出及び二段階の逆抽出により、リボヌクレアーゼA、チトクロムC、及びリゾチームの三種タンパク質を100%で分離・抽出することができた(図47参照)。
(実施例3)
実施例3に用いられた界面活性剤、有機溶媒及び変性タンパク質は以下の通りである。
界面活性剤:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム
有機溶媒:イソオクタン
変性タンパク質:変性リボヌクレアーゼA
実施例3の正抽出は、図48に示すように、20℃に恒温されたマイクロリアクタの第6の導入口96より所定流速で400 mM AOTを含むイソオクタン溶液を流し、第7の導入口97より第6の導入口96と同じ流速で2 mg/ml 変性リボヌクレアーゼAと0.3 M グアニジン塩酸塩を含む0.1 M トリス緩衝液(pH8.7)を流し、二相を接触させることにより変性リボヌクレアーゼAの正抽出を行った。
次に、上記正抽出操作で得られた変性リボヌクレアーゼAを可溶化した400 mM AOTイソオクタン溶液に、第8の導入口98より第6の導入口96と同じ流速で0.1 M 塩化カリウムを含む0.1 M トリス緩衝液(pH8.7)を流して接触させることにより逆ミセル中に変性クレアーゼAとともに抽出されたグアニジン塩酸塩の逆抽出による除去を行った。
次に、上記正抽出操作で得られた変性リボヌクレアーゼAを可溶化した400 mM AOTイソオクタン溶液に、第10の導入口104より所定の流速で0.6 mM 還元型グルタチオン、0.2 mM酸化型グルチオンと0.1 M トリス緩衝液(pH8.7)を含む400 mM AOTイソオクタン溶液を流し、リフォールディングを行った。この場合の還元型グルタチオン、酸化型グルチオンと0.1 M トリス緩衝液(pH8.7)が逆ミセルのウォータープールに取り込まれている。この過程で、変性リボヌクレアーゼがリフォールディングされた。
次に、上記リフォールディング操作で得られた活性なリボヌクレアーゼAを可溶化した400 mM AOTイソオクタン溶液に、第5の導入口25より所定の流速で1M 塩化カリウムと100μl/ml酢酸エチルを含む0.1 M トリス緩衝液(pH8.7)を流して接触させることにより逆抽出を行った。
リボヌクレアーゼAの濃度は分光光度計を用いて波長278 nmで測定された。
(結果)
上述のワンチップで一連の抽出操作とリフォールディング工程を経て、変性リボヌクレアーゼAのリフォールディングが80%行われた。
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態では、分子膜を備えるマイクロリアクタを用いて、タンパク質の生体模擬合成を行うシステムについて説明する。
第5の実施の形態における無細胞タンパク質合成プロセスは、図49に示すように、無細胞液を生成するステップ(S1)、無細胞タンパク質を合成するステップ(S2)、タンパク質の抽出及びリフォールディングを行うステップ(S3)、ATP(アデノシン三リン酸)を再生するステップ(S4)から構成される。以下に、それぞれのステップについて説明する。
(イ)ステップS1において、図50に示すように、膜融合によって細胞液を生成する。電極54a、54bに瞬間に直流の高電圧、或いは交流の電圧を印加する場合、分子膜が乱れ、細胞融合が起こりやすくなる。細胞8は、分子膜5と膜融合する際、生体内の細胞融合と同様に、細胞内に含まれる細胞液が放出される。又、マイクロチャンネルの温度、pHの条件を人工的に制御することで、膜の流動性を人工的に変化させることにより、膜融合を行ってもよい。
(ロ)ステップS2において、図51に示すように、タンパク質の生体模擬構成システムで合成された疎水性の膜タンパク質103は、分子膜5との疎水相互作用により膜へ付着、沈着、透過、もしくは脂質二分膜の中に取り込まれることができる。従って、タンパク質の生体模擬構成システムは、通常のタンパク質の生体模擬構成システムもしくは培養細胞発現系で生合成された膜タンパク質の凝集を防ぐことができ、高効率、大量且つ簡便に膜タンパク質を合成することができる。
その他、脂質二分子膜に各種タンパク質を認識できるリガンド(例えば、抗体、レセプター、基質、糖脂質など)を埋め込ませることにより、分子膜はバイオアフィニティーによりタンパク質を特異的に認識することができる。
更に、マイクロドメイン機能を有する膜をマクロチャンネル内に部分的、あるいは全体的に形成させることにより、タンパク質を選択的もしくは特異的に認識することができる。
上述のようにステップ2において膜とタンパク質との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーを利用して、本発明のタンパク質の生体模擬合成システムで各種タンパク質を高選択性、高効率且つ大量に合成することができる。
又、ステップS2において、図52に示すように、電極54a、54bに電圧を印加、あるいは温度制御を行うことにより、タンパク質等は分子膜5を透過することが可能となる。電極54a、54bとしては、線状、点状などの電極面を有する微小電極を用いることができる。この抽出方法によると、無細胞タンパク質合成で合成されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質などを高活性のままで抽出することができる。又、生成されたタンパク質は、直ちに抽出、分離されるため、タンパク質の凝集を防ぐことができる。
(ハ)次に、ステップS3において、無細胞タンパク質合成で生産された変性タンパク質の抽出とリフォールディングを行うことができる。特に、ステップS3は、第1の実施形態の分子膜を備えるマイクロリアクタ或いは第4の実施形態の逆ミセルによるマイクロ抽出システム(逆ミセル型マイクロリアクタ)を利用して、変性タンパク質の抽出とリフォールディングを行なうことができる。
変性タンパク質のリフォールディングの一例として、第4の実施形態の(逆ミセルによるマイクロ抽出システム)の実施例3を挙げることができるので、ここで実施形態の詳細説明について省略する(図53)。
(ニ)次に、ステップS4において、ATP(アデノシン三リン酸)の再生を行う。例えば、図54にATP(アデノシン三リン酸)を再生する一例を示した。具体的に、まず、NAD+{ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化型)}の還元が行われる。NADH{ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型)}は、ミトコンドリア膜成分を含む脂質二分子膜においてADPから無細胞タンパク質合成のエネルギー源として使われるATPの生合成に必要なエネルギー供給源の1つである。このNADHはATPの生合成過程で消費され、NAD+に変換されるので、ここでまず、NAD+からNADHに再生させる必要がある。図54に示したように、第1の導入口22からNAD+、ADP(アデノシン二リン酸)とPi(無機リン酸イオン)の緩衝液を導入し、第2の導入口23からO2を導入する。ここでNAD+メディエータ修飾電極によるNAD+の還元が行われ、NADHが生産される。次に、第3の導入口21から両親媒性分子混合液(脂質混合液25)を導入し、ミトコンドリアを含む分子膜(脂質集合体膜)或いは脂質二分子膜を液/液層流間に形成させる。そして、ミトコンドリアによるNADHの酸化と酸化的リン酸化によって、ATPの生成が行われる。又、ステップS4のATPの再生は、図55に示すような形状のマイクロチャンネル3を用いて行ってもよい。
図54及び図55に示したように、NAD+メディエーター修飾電極により、NAD+のNADHへの還元反応を行なうことができる。一方、光電気化学的還元方法もしくはマイクロ電解セルにおける電気化学的還元方法によるNAD+からNADHを再生することもできる。
(ホ)図56〜58にステップS4において、光電気化学的還元方法もしくはマイクロ電解セルにおける電気化学的還元方法によりNAD+からNADHを再生する方法を示す。
図56は、ATP合成にNADHがNAD+に酸化された後のNAD+を光電気化学的にNADHに再生産する方法を示す。光感応性分子であるクロロフィルaを含む分子膜(脂質二分子膜)を液/液の層流間に形成させる。次に、光感応性膜への光照射により、脂質二分子膜に含まれるクロロフィルaは光エネルギーにより活性化され、電子が放出される。そして、チャンネル1にあるNAD+はこの電子を受け取りNADHに還元される。一方、電子を失ったクロロフィルaは膜の反対側にあるFe2+より電子を受け取り、Fe2+は Fe3+ に酸化される。このFe3+は電気化学的の手法でFe2+に再還元されることができ、再び、第2の導入口23からチャンネル2へ供給され、再利用される。
又、図57及び58にマイクロ電解セルを用いて、NAD+からNADHを再生する方法を示す。具体的に、二つの液/液層流間に隔膜としての機能を有する分子膜(脂質二分子膜)により仕切られ、水の電気化学的酸化によって、NAD+を還元する方法を示す。
図57では、グラミシジンを含む無電荷脂質で形成された分子膜(脂質二分子膜)が電気化学セルの隔膜としての機能を果たし、NAD+からNADHを再生する方法を示す。
図58では、無電荷脂質で形成された脂質二分子膜もしくは分子膜は電気化学セルの隔膜としてその機能を果たす。この系に飽和のKCL塩橋57を設置することによって、膜の両側の流体にK+とCl−イオンをそれぞれ適宜に補給することができる。このような脂質二分子膜もしくは分子膜型マイクロ電解セルを用いて、NAD+からNADHが再生される。
NAD+の電気化学的還元における隔膜の役割について、以下に詳述する。まず、作用電極側(アノード側)でポテンシオスタットによって一定の定電圧を印加して、水の酸化反応を起こさせる。
H2O − e- ⇔ 1/2 O2 + H+
アノードで水の酸化と同時に、対極側(カソード)でNAD+の還元が下記の式のように行われる。
NAD+ + e- + H+ ⇔ NADH
作用電極で生成された酸素は電気化学的に非常に反応活性である。つまり酸素が還元反応をしやすく、過酸化水素や水に電解還元される。
したがって、上記のような電気化学反応系において、作用電極と対極は同一マイクロチャンネル系(同一電解セルと同様の意味がある)で隔膜なしに存在する場合、作用電極で生成された酸素は速やかに対極側に拡散され、NAD+の還元反応に妨害及び影響を及ぼしてしまうので望ましくない。特に、マイクロチャンネル内において、各電極での反応生成物の拡散が格段に加速され、作用電極の反応生成物もしくは対極の反応生成物によって、その相対電極での反応を妨害することで、目的の反応生成物が得られないなどの問題が発生してしまう。
第5の実施の形態に係るマイクロチャンネルの両液/液層流間に形成される分子膜、特に、脂質二分子膜を設けることにより、作用電極がある層流と対極がある層流を仕切ることができ、すなはち作用電極室と対極室の両極室を隔離することができる。
又、マイクロチャンネル内で設けられる脂質二分子膜の厚さは僅か30〜60Åであり、分子レベルの薄さを有するにもかかわらず、この極薄隔膜の存在によって、従来マイクロリアクタで反応生成物の拡散による妨害反応の影響で、効率よく進められなかった電気化学反応を効率よく行うことができるようになった。
更に、この極薄隔膜はイオンチャンネルを含む脂質二分子膜を用いることにより、イオンを選択的に透過させることができ、イオン交換樹脂型隔膜としての特性を有することを特徴とする。
イオンチャンネルとして、例えば、図57に示したように水素イオンを選択的に透過するグラミシジンを用いることができる。この系の場合は、グラミシジンにより、アノード側で水の酸化により生成された水素イオンを即時にNAD+の還元側の層流に輸送することができる。そして輸送された水素イオンはNAD+の還元反応に使われるので、NAD+の還元反応はスムーズに進行することができる。
(第5の実施の形態に係るマイクロリアクタの作用及び効果)
第5の実施の形態では、生体系と同様に細胞の膜融合による細胞内物質の抽出を行うので、従来のような細胞粉砕により引き起こされる細胞自殺が起こることがなく、細胞内物質の活性を保った状態で抽出することができる。このような方法で抽出された細胞内物質をタンパク質合成に用いる場合には、細胞内タンパク質合成と同様な高効率合成が得られる。
又、第5の実施の形態では、ウィルスと膜との膜融合によりウィルス内の核酸(RNAもしくはDNA)ウィルスとキャプソマーと呼ばれるタンパク質を抽出することを特徴とする。
又、本発明は、分子膜を備えるマイクロリアクタ内で一連の電気化学的、光電気化学的、及び化学的手法でタンパク質合成に必要なエネルギー源の1つであるATPを再生することができる。
更に、分子膜を備えるマイクロリアクタ系によるタンパク質合成は、無細胞タンパク質合成と同様に大量、迅速にいろいろなタンパク質(遺伝子組み換えタンパク質、生細胞で合成できない毒性を持つタンパク質など)を合成することができると共に、無細胞系にない、合成されたタンパク質と分子膜との相互作用によりタンパク質の凝集による変性を防ぐ特性、すなわち優れた生細胞の模擬特性を有することを特徴とする。
第5の実施の形態では、細胞と分子膜、特に脂質二分子膜との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーによる膜融合によって、細胞内の小器官(核酸、タンパク質、小胞体、ゴルジ体とリボソームなど)を抽出することを特徴とする。
又、タンパク質の生体模擬構成システムで合成された疎水性の膜タンパク質は、分子膜あるいは脂質二分子膜との疎水相互作用により膜への付着、沈着、もしくは分子膜や脂質二分子膜の中に取り込まれることを特徴とする。
従って、本発明のタンパク質の生体模擬合成システムは通常の無細胞タンパク質合成系もしくは培養細胞発現系で生合成された膜タンパク質の凝集を防ぐことができ、高効率、大量且つ簡便に膜タンパク質を合成することができることを特徴とする。
その他、脂質二分子膜に各種タンパク質を認識できるリガンド(例えば、抗体、レセプター、基質、糖脂質など)を埋め込ませることにより、脂質二分子膜はバイオアフィニティーによりタンパク質を特異的に認識することができる。 更に、マイクロドメイン機能を有する膜をマクロチャンネル内に部分的、あるいは全体的に形成させることにより、タンパク質を選択的もしくは特異的に認識することができる。上述のように膜とタンパク質との静電的、疎水的、親水的およびイオン的相互作用、バイオアフィニティーを利用して、本発明のタンパク質の生体模擬合成システムで各種タンパク質を高選択性、高効率且つ大量に合成することができることを特徴とする。
マイクロチャンネル内にある分子膜や脂質二分子膜は電気化学反応の隔膜としての特性を有する。マイクロチャンネルの両液/液層流間に形成される分子膜、特に、脂質二分子膜は電気化学系の隔膜機能を有し、特にイオンチャンネルを含む脂質二分子膜はイオンを選択的に透過させることができ、イオン交換樹脂型隔膜としての特性を有することを特徴とする。このようなマイクロ電解セルを用いて、効率よくNADHおよびATPを再生することができることを特徴とする。
上述のいくつかのステップを1つのチップに統合して利用することにより、ワンチップでタンパク質を高効率、省エネルギー、連続的に合成することができる。
(実施例1)
実施例1では、タンパク質の生体模擬合成システムにおける第2のステップにおいて、図51に示したような分子膜を備えるマイクロリアクタを用いた疎水性タンパク質であるホスホリパーゼの合成を行った例を示す。実験の条件は、下記の通りである。
細胞抽出液:大腸菌S30分画抽出液(大腸菌BL21株から調製した(Zubay、 et al.、 Annu. Rev. Geneti.、 7、 267 (1973)。)
プラスミドDNA:プラスミドPLD(ホスホリパーゼ)12(Streptomyces antibioticusより誘導した(Iwasaki、 et al.、 J. Biosci. Bioeng.、 89、 506 (2000)。)
タンパク質合成液:50 mMトリス緩衝液(pH 7.4)、1.2 mM ATP、1.0 mM GTP、1.0 mM CTP、1.0 mM UTP、1.0 mMアミノ酸(L型20種類)、2 mM ジチオスレイトール、4% ポリエチレングリコール 6000、35 μg/ml フォリン酸、0.17 mg/ml大腸菌tRNA、36 mM 酢酸アンモニウム、8 mM 酢酸マグネシウム、100 mM酢酸カリウム、7.7μg/ml T7RNAポリメラーゼ、25 %大腸菌S30分画抽出液、15 μg/ml プラスミドPLD(ホスホリパーゼ)12
37℃の恒温条件に調整したマイクロリアクタの第2の導入口23より所定流速でタンパク質合成液を導入し、第1の導入口22より所定流速で50 mMトリス緩衝液(pH 7.4)を導入し、第3の導入口21より5 mg/ml 臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウムを含むn-デカン溶液を所定流速で導入した。この系で、ホスホリパーゼという疎水性タンパク質が合成された。出口で液/液層流間に形成された分子膜や脂質二分子膜を広めに回収するにより、ホスホリパーゼと脂質の混合液が得られた。この混合液を透析によりホスホリパーゼを分離し、もしくは混合液のままで以下の分析手法でホスホリパーゼの活性を測定することができる。
基質溶液(16 mM ホスファチジル-p-ニトロフェノール、5 % トリトンX-100、0.1 M トリス緩衝液(pH 8.0)) 8 μlと0.1 M 酢酸ナトリウム(pH 5.5) 146 μl とを混合したものにホスホリパーゼを含んだ試料溶液を所定量添加して、反応の進行を25℃、吸光度405 nm(p-ニトロフェノールの特性吸収波長)で追跡する。
(結果)
上記分子膜を備えるマイクロリアクタを用いたタンパク質の生体模擬構成システムで合成されたホスホリパーゼは、通常の無細胞タンパク質合成系で合成されたホスホリパーゼより、20%も高い活性を示した。
(その他の実施の形態)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、本発明に係る実施の形態において、タンパク質やペプチドなどの具体例を挙げたが、使用できるものはここで挙げたものとは限らない。
又、本発明に係る実施の形態において、層流で各溶液を流すと説明したが、層流でなくても構わない。又、溶液を流した後、測定のために流れを止めることも可能である。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
第1の実施形態に係る分析システムのブロック構成図である。
第1の実施形態に係る二次元(平面状)の分子膜を作製する作製部(マイクロリアクタ)の模式図である(その1)。
第1の実施形態に係る二次元(平面状)の分子膜を作製する作製部(マイクロリアクタ)の模式図である(その2)。
第1の実施形態に係る三次元(円筒状)の分子膜を作製する作製部(マイクロリアクタ)の模式図である。
第1の実施形態に係る単管式及び多管式のマイクロリアクタを示す模式図である。
第1の実施形態に係るマイクロリアクタ分析システム(バイオセンシングシステム)の概略構成図である(その1)。
第1の実施形態に係るマイクロリアクタ分析システム(バイオセンシングシステム)の概略構成図である(その2)。
第1の実施形態に係るマイクロリアクタ分析システム(バイオセンシングシステム)の概略構成図である(その3)。
第1の実施形態に係る集積膜の作製方法である(その1)。
第1の実施形態に係る集積膜の作製方法である(その2)。
第1の実施形態に係るバイオリアクタの概略プロセス図である(その1)。
図11のバイオリアクタにおいて生成される生成物の例である。
第1の実施形態に係るバイオリアクタの概略プロセス図である(その2)。
図13のバイオリアクタにおいて生成される生成物の例である。
第1の実施形態に係るバイオリアクタの概略プロセス図である(その3)。
第1の実施形態に係るバイオリアクタの概略プロセス図である(その4)。
第1の実施形態に係るバイオリアクタの概略プロセス図である(その5)。
第1の実施形態に係るバイオリアクタの概略プロセス図である(その6)。
第1の実施形態に係るバイオリアクタの概略プロセス図である(その7)。
第1の実施形態に係る膜融合による細胞内小器官の抽出の概略図である。
第1の実施形態に係る膜或いは膜との相互作用による生体関連物質の抽出・分離の概略図である。
第1の実施形態に係る実施例1のマイクロリアクタの構成概略図である。
第1の実施形態に係る比較例1と実施例1における転化率の経時変化を示すグラフである。
第1の実施形態に係る実施例2のマイクロリアクタの構成概略図である。
第1の実施形態に係る実施例2におけるN−アセチルーレートリプトファンエチルエステルの収率と流速比との関係を示すグラフである。
第1の実施形態に係わる実施例3のマイクロリアクタの構成概略図である。
第1の実施形態に実施例6のマイクロリアクタの構成概略図である。
第2の実施形態に係るマイクロチャネルセンサの構成概略図である(その1)。
第2の実施形態に係るマイクロチャネルセンサの構成概略図である(その2)。
第2の実施形態に係るマイクロチャネルセンサの構成概略図である(その3)。
第2の実施形態に係るマイクロチャネルセンサの構成概略図である(その4)。
第2の実施形態に係るマイクロチャネルセンサの構成概略図である(その5)。
第2の実施形態に係るマイクロチャネルセンサの構成概略図である(その6)。
第2の実施形態に係るマイクロチャネルセンサの構成概略図である(その7)。
第2の実施形態に係る比較例と実施例のマイクロチャネルセンサの構成概略図である。
第3の実施形態に係る構造異常タンパク質の検知原理を示す概念図である。
第3の実施形態に係る実施例1のマイクロリアクタの構成概略図である。
第3の実施形態に係る実施例2のマイクロリアクタの構成概略図である。
第3の実施形態に係る実施例4のマイクロリアクタの構成概略図である。
第4の実施形態に係るマイクロリアクタシステムのブロック構成図である。
図40の正抽出部におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その1)。
図40の正抽出部におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その2)。
図40の逆抽出部におけるマイクロリアクタの構成概略図である。
第4の実施形態に係る実施例1のマイクロリアクタの構成概略図である。
第4の実施形態に係る実施例1の結果を示す表である。
第4の実施形態に係る実施例2のマイクロリアクタの構成概略図である。
第4の実施形態に係る実施例2の結果を示す表である。
第4の実施形態に係る実施例3のマイクロリアクタの構成概略図である。
第5の実施形態に係るタンパク質の生体模擬合成システムのブロック構成図である。
図49のステップS1におけるマイクロリアクタの構成概略図である。
図49のステップS2におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その1)。
図49のステップS2におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その2)。
図49のステップS3におけるマイクロリアクタの構成概略図である。
図49のステップS4におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その1)。
図49のステップS4におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その2)。
図49のステップS4におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その3)。
図49のステップS4におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その4)。
図49のステップS4におけるマイクロリアクタの構成概略図である(その5)。
符号の説明
1 マイクロリアクタ
2 逆ミセル型マイクロリアクタ
3 マイクロチャンネル
5 分子膜
6 単分子膜
7 集積膜
8 細胞
9 生体関連物質
11 作製・再生部
12 条件制御部
13 検知部
14 反応部
15 循環部
16 分離・回収部
21 第1の導入口
22 第2の導入口
23 第3の導入口
24 第4の導入口
25 第5の導入口
26 第2の流体
27 第3の流体
28 両親媒性分子混合液
31 水相
32 水相
33 脂質相
34 分子膜層(脂質集合体膜層)
35 円筒状脂質二分子膜
40a、40b、…、40f バリア
41 フィルタ
42 構造異常タンパク質
43 構造異常タンパク質の凝集体
44 アミロイド型タンパク質
45 アミロイド型タンパク質の凝集体
46 膜電位測定装置
51a、51b 電極
52 電気化学信号の測定装置
53a、53b 電極
54a、54b 電極
55 カソード
56 アノード
57 塩橋
60 HIV−1
61 流体
62 絶縁性媒体
63 流体
64 両親媒性分子混合液(分子膜形成液)
65 流体もしくは試料を含有する流体
66 絶縁性媒体
67 流体
71 電気化学計測装置
72a、72b 電極
73 センサ電極
74 参照電極
75 対極
76 イオンチャンネル
77 塩橋
78 絶縁性媒体
79 分子膜(脂質集合体膜)
80 水溶液
81 HIVを含む水溶液
91 正抽出部
92 原料回収部
93 逆抽出部
94 生成物回収部
95 循環部
96 第6の導入口
97 第7の導入口
98 第8の導入口
99 第9の導入口
100 注入口
101 原料水相
102 回収水相
103 合成された膜タンパク質
104 第10の導入口
105 第11の導入口
106 第12の導入口