図1は、本発明の実施形態に係るプリントシステム1の要部の構成を模式的に示す図である。
プリントシステム1は、例えば、それぞれネットワーク3に接続された、通信端末5、プリントサーバ7及びプリンタ9を有している。
プリントシステム1は、複数の通信端末5及び複数のプリンタ9を有することが可能である。図1では、それぞれ一つのみ例示している。なお、プリントサーバ7も複数設けられ、分業がなされてもよい。
ネットワーク3は、例えば、複数のコンピュータネットワークを相互に接続するインターネット11と、複数の電話機を相互に接続するとともにインターネット11と不図示のゲートウェイを介して接続された電話網13とを含んでいる。なお、ネットワーク3の一部又は全部は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
通信端末5は、例えば、プリントシステム1によって実現されるサービスを受けるユーザが所有する。通信端末5は、ネットワーク3を介して電子メールを送信可能なものであれば、どのような機器であってもよい。なお、通常、電子メールを送信可能な機器は、電子メールを受信可能である。通信端末5は、例えば、スマートフォン等の携帯電話機、又は、デスクトップ型、ノートブック型等のパーソナルコンピュータである。通信端末5が携帯電話機である場合(図示の例)、通信端末5は、例えば、電話網13及び不図示のゲートウェイを介してインターネット11に接続されている。また、通信端末5がパーソナルコンピュータである場合、特に図示しないが、通信端末5は、モデム等の適宜なインターフェースを介してインターネット11に接続されている。
プリントサーバ7は、例えば、プリントシステム1によって実現されるサービスを提供する事業者(サービス提供者)が所有する。プリントサーバ7は、例えば、コンピュータにより構成されており、インターネット11に接続されている。プリントサーバ7を構成するコンピュータは、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接続された複数のハードウェアからなるものであってもよい。プリントサーバ7を構成するコンピュータは、例えば、一般的なコンピュータと同様に、CPU7a、ROM7b、RAM7c及び外部記憶装置7d等を有している。
プリンタ9は、例えば、通信端末5の所有者(ユーザ)、プリントサーバ7の所有者(サービス提供者)、又は、これらの者とは異なるユーザ若しくは事業者によって所有されている。プリンタ9は、ネットワーク3を介した通信が可能であれば、その形式は問わない。例えば、プリンタ9は、カラー印刷が可能なものであってもよいし、モノクロ印刷のようにカラー印刷が不可能なものであってもよい。また、プリンタ9は、インクジェットプリンタであってもよいし、サーマルプリンタであってもよいし、レーザープリンタであってもよい。また、プリンタ9は、狭義のプリンタだけでなく、いわゆる複合機であってもよい。
プリンタ9は、例えば、適宜なインターフェース15を介してインターネット11に接続されている。インターフェース15は、例えば、電話回線とプリンタ9とを接続するモデム、又は、光回線とプリンタ9とを接続する光回線終端装置である。インターフェース15とプリンタ9との間に更に不図示のルータ等が介在してもよいし、そのルータからプリンタ9側に構築されたLAN内にプリンタ9が組み込まれていてもよい。
図2は、プリントシステム1の動作の概要を示す模式図である。
まず、通信端末5は、印刷したい情報を含む電子メールを所定の印刷用メールアドレス宛に送信する(ステップST1)。プリントサーバ7は、この電子メールを受信すると、予め登録されているプリンタ9の状態を調べるための問い合わせ信号を当該プリンタ9に送信する(ステップST2)。
ここでいうプリンタ9の状態は、印刷の可否乃至は品質に関わるものであり、例えば、以下の項目についての状態である。
・プリンタ9の電源のON・OFF
・プリンタ9における用紙の有無
・プリンタ9におけるインクの有無
上記の問い合わせ信号を受信したプリンタ9は、自己の状態を示す状態情報をプリントサーバ7に返信する(ステップST3)。返信を受けたプリントサーバ7は、プリンタ9の状態が正常及び異常のいずれかであるか判定する(ステップST4)。例えば、電源ON、用紙有り、且つ、インク有りであれば正常と判定され、それ以外は異常と判定される。
プリンタ9の状態が正常と判定されると、プリントサーバ7は、ステップST1で受信した電子メールに基づいて印刷データを生成し、プリンタ9に送信する(ステップST5)。そして、プリンタ9は、受信した印刷データに基づいて印刷を行う(ステップST6)。
印刷データの内容は、例えば、電子メールの本文、電子メールに添付されたファイルの内容、及び、電子メールの本文に記入されたURL(Uniform Resource Locator)により特定されるウェブページの内容の少なくともいずれか一つを示す画像を印刷するためのものである。いずれが印刷対象とされるかは、例えば、予めプリントサーバ7において決定されていてもよいし、いずれを対象とするかを特定する情報を電子メールのタイトルに含ませることなどにより、通信端末5において指定可能であってもよい。
また、印刷データの形式は、プリンタ9により使用可能な形式のものである。例えば、印刷データの形式は、パーソナルコンピュータからプリンタへ印刷を指示するときにパーソナルコンピュータ(ドライバ)からプリンタへ送信される印刷データの形式と同一であり、一般にラスター形式のものである。
このようにして印刷がなされることから、通信端末5のユーザは、電子メールを送信するだけで、その電子メールに係る情報の印刷を行うことができる。すなわち、プリンタ9側にプリンタ9のドライバがインストールされたパーソナルコンピュータを用意し、通信端末5から、そのパーソナルコンピュータに電子メールを送信し、パーソナルコンピュータからプリンタ9へその電子メールに係る情報の印刷を指示するというような面倒な手順は不要である。
通信端末5のユーザがプリンタ9の近くにいる場合においては、当該ユーザは、プリンタ9をドライバが不要な通常のプリンタとして利用することができる。また、通信端末5のユーザがプリンタ9から離れている場合においては、当該ユーザは、プリンタ9をFAXのように利用することができる。
一方、ステップST4において、異常と判定された場合には、プリントサーバ7は、印刷データを送信せずに保存する(ステップST7)。例えば、プリントサーバ7が電子メールに基づいて印刷データを生成したときは、印刷データはRAM7cに記憶されており(記憶容量が足りないときは外部記憶装置7dが利用されることもある。)、ステップST5では、その印刷データが送信される。一方、ステップST7では、そのRAM7cに記憶されていた印刷データが外部記憶装置7dに記憶される。すなわち、印刷データは、適宜な時期に抽出されて(読み出されて)利用されることが可能となる。
ステップST8及びST9では、プリントサーバ7は、再度、ステップST3及びST4と同様に、状態情報を取得し、プリンタ9における異常の有無を判定する。そして、プリントサーバ7は、正常と判定すれば、外部記憶装置7dに保存されていた印刷データを抽出してプリンタ9に送信し(ステップST10)、異常と判定すれば、ステップST8及びST9を繰り返す。その間、プリントサーバ7は、他の電子メールを受信すれば、他の電子メールについてステップST1〜ST10の処理を(見かけ上)並行して行う。
以上のように、プリンタ9の状態が異常である場合においては、印刷データがプリントサーバ7にて保存され、適宜な時期に印刷が再試行される。これにより、確実に印刷を行うことができる。
図2の動作の前提として、ユーザ及びプリンタの所有者(通信端末5及びプリンタ9)は、サービス提供者(プリントサーバ7)に対する所定の登録手続きを行う。これにより、通信端末5、プリンタ9及びプリントサーバ7には、互いのメールアドレス等の必要な情報が記憶される。登録手続きは、例えば、通信端末5及びプリンタ9にインストールされた専用のアプリケーションが仲介してもよいし、通信端末5のウェブブラウザが仲介してもよい。
図3は、図2の動作を実現するためのプリントシステム1の構成を示すブロック図である。
図1においてプリンタ9について例示したように、通信端末5、プリントサーバ7及びプリンタ9それぞれは、例えば、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置等を有しており、CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、図3にブロック(矩形)で示された各部が構成されている。
通信端末5は、例えば、電子メールを送受信するためのメールクライアント部21と、ウェブページを閲覧するためのウェブクライアント部23と、表示部27と、操作部29とを有している。
メールクライアント部21及びウェブクライアント部23は、携帯電話機等の通信端末において一般的なもの(一般的なメールクライアントソフトウェア及びウェブクライアントソフトウェアの実行によって構築されるもの)と同様のものでよい。メールクライアント部21は、例えば、電子メールの作成、送信、受信、閲覧及び管理を行う。ウェブクライアント部23は、例えば、ネットワーク3を介して不図示のウェブサーバにアクセスし、ウェブブラウザによりウェブページを表示する。
表示部27は、例えば、液晶表示装置又は有機EL表示装置である。操作部29は、例えば、複数の物理的なキーを有するものであってもよいし、タッチパネルのように表示部27のGUI(graphical user interface)と組み合わされたものであってもよい。
なお、このように、通信端末5は、通常の携帯電話機等の構成と同様でよい。すなわち、プリントサーバ7によって提供されるサービスを受けるための専用のアプリケーションは不要である。ただし、そのような専用のアプリケーションが利用されてもよい。
プリントサーバ7は、例えば、電子メールを受信する(図2のステップST1参照)ためのメール受信部33と、ウェブページの情報を取得するためのウェブクライアント部35と、受信した電子メールに基づく印刷を行う主たる処理を行うためのメイン処理部37と、通信端末5及びプリンタ9のアドレス等の登録情報を保持する登録情報用データベース39と、印刷データを保存するための印刷データ用データベース45と、を有している。
メール受信部33は、例えば、一般的なメールサーバと同様に、他のメールサーバのMTA(Mail Transfer Agent)から送信され、宛先メールアドレスのドメイン名が自己のIPアドレス(Internet Protocol address)と対応した電子メールを受信する。すなわち、メール受信部33は、所定(一定)のドメイン名と、種々のローカルパートとからなる種々の宛先メールアドレスの電子メールを受信する。例えば、ドメイン名が「@f**.ne.jp」である、「eee@f**.ne.jp」、「ggg@f**.ne.jp」等を宛先メールアドレスとする電子メールを受信する。ただし、メール受信部33においては、メールサーバとは異なり、受信したメールを転送する機能(MTA)及び受信したメールをメールクライアントに配送する機能(MDA:Mail Delivery Agent)は不要である。
なお、メール受信部33は、メールクライアントのメール受信部と同様に構成され、所定のドメイン名を宛先メールアドレスに含む種々の電子メールをメールサーバのMDAから受信してもよい。すなわち、擬似的にメールサーバのように動作してもよい。ただし、この場合、通信端末5から電子メールが送信されたときに直ちにメール受信部33にて受信できるように、メールサーバからメール受信部33への電子メールの配送はプッシュ型であることが好ましい。
ウェブクライアント部35は、例えば、一般的なウェブクライアント部と同様に、URLによって特定されるウェブページの情報をウェブサーバから取得する。ただし、ウェブクライアント部35は、その情報を表示部に表示するためのブラウザは有していなくてもよい。
メイン処理部37は、例えば、登録情報用データベース39に記録される情報を管理する登録管理部40と、プリンタ9の状態を認識する(図2のステップST2〜ST4、ST8及びST9)ための状態認識部41と、状態認識部41が把握したプリンタ9の状態に基づいて印刷データの送信又は保存(図2のステップST5、ST7及びST10)を行う印刷処理部43と、プリントシステム1によって提供される機能(サービス)を取捨選択するための機能設定部47とを有している。
状態認識部41は、例えば、プリンタ9の状態を示す状態情報を取得する(図2のステップST2、ST3及びST8)ための状態情報取得部49と、その取得した状態情報に基づいて異常の有無を判定する(図2のステップST4及びST9)ための状態判定部51とを有している。
印刷処理部43は、例えば、メール受信部33が受信した電子メールに基づいて、プリンタ9が使用可能な形式の印刷データを生成する印刷データ生成部53と、プリンタ9が正常な場合に印刷データをプリンタ9に送信する(ステップST5及びST10)ための印刷データ送信部55と、プリンタ9が異常な場合に印刷データを保存する(ステップST7)ための記録処理部57と、を有している。
登録情報用データベース39及び印刷データ用データベース45は、例えば、所定の方式に従って外部記憶装置7dに情報が記憶されることによって構築されている。各データベースは、一つのハードウェアから構成されていてもよいし、LAN等のネットワークを介して接続された複数のハードウェアから構成されていてもよい。
プリンタ9は、例えば、受信した印刷データを印刷するための制御を行う印刷実行部59と、プリントシステム1によるサービスを受けるための処理を実行するネットワーク用処理部61と、表示部63と、操作部65とを有している。
印刷実行部59は、例えば、一般的なプリンタにおいて構築されているものと同様でよい。印刷実行部59は、例えば、印刷データに基づいて、プリントヘッドのアクチュエータ及び紙送り機構のアクチュエータに対して適宜なタイミング及び適宜な大きさで電圧を印加する。
ネットワーク用処理部61は、例えば、プリントシステム1にインストールされた専用のアプリケーションが実行されることによって構築される。このアプリケーションは、例えば、プリントサーバ7の提供者と同一又は提携しているプリンタ9の製造者によってプリンタ9の出荷前にインストールされてもよいし、プリンタ9の所有者によってインストールされてもよい。
ネットワーク用処理部61は、例えば、プリンタ9のIPアドレスをプリントサーバ7に通知するためのアドレス通知部67と、プリンタ9の状態をプリントサーバ7に通知する(図2のステップST3及びST8)ための状態通知部69とを有している。
アドレス通知部67は、例えば、プリンタ9のIPアドレスが動的に割り当てられるものである場合に、プリントサーバ7にプリンタ9のIPアドレスを通知するためのものである。例えば、個人ユーザのネットワーク接続機器(プリンタ9)のIPアドレスは、ネットワーク接続機器がネットワーク3に接続されたときに、プロバイダーのDHCPサーバ(Dynamic Host Configuration Protocol server、不図示)によって動的に割り当てられるものであることが多い。すなわち、プリンタ9のIPアドレスは変化する。そこで、アドレス通知部67が適宜な時期にプリントサーバ7にプリンタ9のIPアドレス等を通知することにより、図2のステップST2、ST5及びST10などにおいて、プリントサーバ7からネットワーク3を介してプリンタ9へ信号を送信することができる。なお、プリントサーバ7のIPアドレスは、例えば、静的に割り当てられている(固定IPアドレスである)。
具体的には、例えば、プリンタ9にグローバルIPアドレスが割り当てられる態様においては、アドレス通知部67は、適宜な情報(例えばプリントシステム1のサービスを受けるためのアカウント情報)をデータ部に含むIPパケットをプリントサーバ7へ送信すればよい。IPパケットには、送信元IPアドレスが含まれているから、これにより、プリントサーバ7は、プリンタ9のIPアドレスを把握できる。なお、IPパケットが含まれるイーサネットフレームには、送信元のMACアドレス(Media Access Control address)が含まれているから、プリントサーバ7は、アドレス通知部67からの通知によってプリンタ9のMACアドレスも取得できる。
また、例えば、プリンタ9にローカルIPアドレス(プライベートIPアドレス)が割り当てられる態様においては、アドレス通知部67は、ローカルIPアドレスをプリンタ9に割り当てたDHCPサーバ(例えばLANのルータ。プロバイダーのサーバであることもある)のグローバルIPアドレスと、プロトコルと、ポート番号とを含むIPパケットをプリントサーバ7へ送信すればよい(これらの一部又は全部の情報の付与はDHCPサーバが行ってもよい。)。すなわち、プリンタ9は、いわゆるポート開放を行えばよい。これにより、プリントサーバ7は、静的IPマスカレードを利用してプリンタ9へ信号を送信することができる。なお、本実施形態の説明では、グローバルIPアドレス、プロトコル及びポート番号の組み合わせについても、アドレス乃至はIPアドレスということがある。
アドレス通知部67がアドレスを通知する時期は、例えば、プリンタ9がインターネット11に接続するなどしてプリンタ9にIPアドレスが割り当てられたときである。プリンタ9にグローバルIPアドレスが割り当てられている場合においては、その後、プリンタ9の接続が切れて割り当てられたグローバルIPアドレスが回収されるまでは、プリントサーバ7はプリンタ9に対して信号を送信できる。また、例えば、LANのルータによってプライベートIPアドレスがプリンタ9に割り当てられている場合、ルータの電源が落とされてルータに割り当てられたグローバルIPアドレスが回収されるまでは、プリントサーバ7はプリンタ9に対して信号を送信できる。なお、通常、ルータは、電源を入れたままとされるから、長期に亘ってプリントサーバ7はプリンタ9に信号を送信可能である。その他、例えば、アドレス通知部67の起動よりもIPアドレスの割り当てが早いことが確実であれば、アドレスを通知する時期は、アドレス通知部67の起動時とされてもよい。
なお、プリンタ9のIPアドレスが静的に割り当てられている場合においては、アドレス通知部67は省略されてもよい。この場合、例えば、プリントシステム1によるサービスを受けるための当初の登録手続きにおいて、プリンタ9等からプリントサーバ7にMACアドレス及びIPアドレス等のアドレスが通知されればよい。
プリンタ9に携帯電話機を接続し、電話網13を介してプリンタ9をインターネット11に接続することも考えられる。この場合、各通信キャリアにおいては独自のプロトコルに従って携帯電話機を識別しており、プリントサーバ7からは、電話網13とインターネット11とを仲介する不図示のゲートウェイのIPアドレスまでしか把握できず、さらに、仲介を行うゲートウェイ(IPアドレス)は変化する。従って、このような場合においては、例えば、ネットワーク用処理部61は、起動と同時にプリントサーバ7へ接続し、できるだけ少ないデータ量で接続を維持すればよい。なお、理論的には、プリンタ9が電話網13を介さずにインターネット11に接続されている場合と同様に、プリンタ9等のアドレスをプリントサーバ7が記憶して、プリントサーバ7からプリンタ9へ信号を送信することも可能である。
状態通知部69は、例えば、外部(プリントサーバ7)からの問い合わせ(ステップST2)に応じて、及び/又は、自発的に、プリンタ9の状態を示す状態情報をプリントサーバ7に送信する。プリンタ9は、一般に、用紙の有無及びインクの有無等を検出する状態検出部を有している。従って、状態通知部69は、例えば、その既存の状態検出部とプリントサーバ7との仲介をするだけでよい。
表示部63及び操作部65は、通信端末5の表示部27及び操作部29と同様である。
図4(a)は、登録情報用データベース39の内容を示す模式図である。
登録情報用データベース39は、例えば、各々の登録情報(データテーブルの各行、データD1)を識別するためのデータ番号(No.)、通信端末5のメールアドレス、印刷用メールアドレス、プリンタ9に係る情報、及び、プリントシステム1の機能の設定に係る情報(制限時間)を互いに対応付けて保持している。この登録情報用データベース39の更新(管理)は、例えば、登録管理部40によって行われる。
登録情報用データベース39において、このような対応付けがなされた情報が保持されていることから、例えば、プリントサーバ7は、電子メールを受信したときに、その送信元及び/又は送信先のメールアドレスに基づいて、その電子メールを印刷すべきプリンタ9を特定することができる。各情報は、具体的には、例えば、以下のとおりである。
データ番号は、例えば、所定の登録手続きによって登録情報用データベース39に新たなデータD1が追加されたときに、プリントサーバ7がその新たなデータD1に対して割り当てる。
通信端末5のメールアドレスは、例えば、プリントシステム1によって実現されるサービスの提供前に、電子メール又はウェブブラウザを利用した所定の登録手続きによって、通信端末5からプリントサーバ7に入力され、登録情報用データベース39に保持される。
印刷用メールアドレスは、通信端末5のユーザが、印刷を希望する電子メールをプリントサーバ7に送信するときに、その宛先とすべきメールアドレスである。この印刷用メールアドレスのドメイン名は、例えば、既に述べたように、プリントサーバ7のIPアドレスに対応している。印刷用メールアドレスのローカルパートは、例えば、プリントシステム1のサービス提供前における所定の登録手続きにおいて、プリントサーバ7が通信端末5等からの信号等に基づいて適宜に設定する。
本実施形態では、例えば、電子メールの宛先メールアドレスに基づいて印刷先のプリンタ等を決定する。従って、例えば、複数の通信端末5のメールアドレスと、一の印刷用メールアドレスとが対応付けられていたり(複数のユーザが同一のプリンタ9から印刷したり)、逆に一の通信端末5のメールアドレスと、複数の印刷用メールアドレスとが対応付けられたり(一のユーザが印刷先のプリンタ9を複数のプリンタ9から選択したり)することが可能となっている。ただし、同一の、通信端末5のメールアドレスと印刷用メールアドレスとの組み合わせは存在しないように(重複して同じ組み合わせが登録されないように)、登録手続きが行われる。
プリンタに係る情報は、例えば、プリンタ9のアドレス(例えばMACアドレス及びIPアドレス)、及び、プリンタ9で使用可能な印刷データのデータ形式を示す情報である。なお、この例は、例えば、プリンタ9にグローバルIPアドレスが割り当てられている態様のものである。
プリンタ9のMACアドレスは、所定の登録手続きにおいて、通信端末5からプリントサーバ7に入力され、登録情報用データベース39に保持されてもよいし、上述したように、通信端末5からプリントサーバ7へのIPアドレスの通知とともに、取得・更新されてもよい。なお、前者であれば、例えば、プリンタ9からプリントサーバ7への通信においてMACアドレスを認証に利用可能である。後者であれば、例えば、ハードウェア(プリンタ9)が変更された場合にも、プリントサーバ7はMACアドレスを取得してプリンタ9に信号を送信できる。
プリンタ9のIPアドレスは、既に述べたように、アドレス通知部67からの通知等に基づいて適宜に更新される。
なお、プリンタ9にローカルIPアドレスが割り当てられる態様においては、例えば、プリンタ9のアドレスとして、ルータ(DHCPサーバ)のIPアドレス、プロトコル及びポート番号が記憶される。これらの情報が所定の登録手続きによって又はアドレス通知部67からの通知等に基づいて登録乃至は更新されてよいことは、上記と同様である。また、例えば、プリンタ9が携帯電話機を介してネットワーク3に接続される態様(アドレス通知部67が設けられない態様)においては、登録情報用データベース39にゲートウェイのIPアドレスは不要であり、プリンタ9から接続があったときにゲートウェイのIPアドレスがRAM等に適宜に記憶され、接続が確立されればよい。登録情報用データベース39は、上記のいずれの態様にも対応可能に構成されてもよい。
プリンタ9のデータ形式を示す情報は、例えば、所定の登録手続きにおいて、プリンタ9からの情報送信により、又は、プリンタ9の所有者等が有する通信端末からの情報送信により、登録情報用データベース39に記録される。なお、プリントサーバ7は、プリンタ9又は通信端末から、プリンタ9の機種の情報を取得し、その情報から自己の適宜なデータベースを参照してデータ形式を特定し、登録情報用データベース39に記録してもよい。
プリントシステム1の機能の選択の設定に係る情報は、例えば、印刷データを保存する予定の時間(期間)である制限時間の長さを示す情報である。プリントサーバ7の記録処理部57は、印刷データを保存している時間がこの制限時間を超えると、印刷データ用データベース45から印刷データを削除する。これにより、例えば、印刷データに含まれる個人情報が必要以上に長期に亘ってプリントサーバ7に記録されるおそれが低減される。
制限時間の長さは、例えば、通信端末5のユーザが任意に設定可能である。具体的には、制限時間の長さは、所定の登録手続きにおいて、又は、任意の時期において、ユーザが通信端末5等からウェブブラウザを利用してウェブサーバとしてのプリントサーバ7へ情報を送信することによって設定(更新)される。なお、制限時間の長さは、プリントサーバ7において全てのユーザに対して一律に設定されてもよく、この場合は、登録情報用データベースに制限時間の長さの情報は不要である。また、制限時間の長さの単位は、秒、分、時又は日等の適宜な単位で設定可能であってよく、これらのいずれかの単位を選択可能であってもよい。
なお、図4(a)に示すデータベースは、あくまで概念図であり、登録情報用データベース39においては、種々の適宜なデータテーブルが構成されてよい。例えば、図4(a)に示すデータテーブルにおいて、データ形式を示す情報に代えてプリンタ9の機種を示す情報が登録され、これとは別に、プリンタ9の機種を示す情報とデータ形式を示す情報とを対応付けたデータテーブルが用意されてもよい。これでも、実質的に、印刷用メールアドレス等と、データ形式を示す情報とが対応付けられているといえる。
図4(b)は、印刷データ用データベース45の内容を示す模式図である。
印刷データ用データベース45は、複数の印刷データを保持している。また、印刷データ用データベース45は、各印刷データが記録されている記憶領域のアドレスを示す保存先アドレスと、各印刷データに対応する登録情報(データD1)を識別するためのデータ番号と、各印刷データを印刷データ用データベース45に記録した時刻である保存時刻とを対応付けたデータテーブルDT(各行についてはデータD2ということがある。)を保持している。
従って、例えば、プリントサーバ7は、データD2の保存先アドレスを参照することによって、保存した印刷データを抽出可能である。また、プリントサーバ7は、データD2のデータ番号をキーとして、登録情報用データベース39を検索することによって、抽出した印刷データを送信すべきプリンタ9、及び、印刷データを保存する制限時間等を特定することができる。また、プリントサーバ7は、データD2の保存時刻と自己が計時している現在の時刻とを比較することによって、印刷データを保存している保存時間を特定することができ、その保存時間と登録情報用データベース39の検索により特定された制限時間とを比較することによって、印刷データを削除すべき時期が到来したか否かを判定できる。
すなわち、プリントサーバ7は、実質的に、登録情報用データベース39及び印刷データ用データベース45全体によって、保存された印刷用データと、その印刷用データの印刷先を示す情報と、その印刷用データを削除すべき時期とを対応付けて保持している。
各印刷データが記録される記憶領域は、例えば、その印刷データの保存の必要性が生じたときに(図2のステップST7)、プリントサーバ7によって適宜に確保される(印刷データの保存用に割り当てられる。)。印刷データは、既に述べたように、例えば、ラスター形式のものである。印刷データは、印刷データ用データベース45に記録される際に、適宜な圧縮処理が施されてもよい。
各データD2は、例えば、対応する印刷データが保存される際にデータテーブルDTに追加される。データD2の保存先アドレスは、上記のように印刷データを保存するための記憶領域が確保されたときに取得される。データ番号は、受信した電子メールの送信元アドレス及び宛先アドレスに基づいて登録情報用データベース39から取得される。各印刷データの保存時刻は、その印刷データを保存するとき(厳密に同時でなくてよい)にプリントサーバ7が計時している時計から取得される。
なお、保存時刻に代えて、削除すべき時刻(保存時刻+制限時間)が記録されてもよい。削除時刻が記録される場合、削除時刻が記録された後、ユーザが登録情報用データベース39の制限時間の長さを変更したとき、削除時刻が修正されるようにしてもよいし、修正されないようにしてもよい。
保存時間が制限時間を超えたときに行われる印刷データの削除は、例えば、データテーブルDTにおけるデータD2の削除(例えば上書き処理)を意味する。すなわち、保存先アドレスの情報を失うことによって印刷データの抽出が不可能になることを意味し、印刷データ自体は、その記憶領域が他のデータの保存等に割り当てられない限り、残存する。ただし、印刷データ自体の削除が行われてもよい。
なお、図4(b)に示すデータベースは、図4(a)と同様に、あくまで概念図であり、印刷データ用データベース45においては、種々の適宜なデータテーブルが構成されてよい。また、登録情報用データベース39と印刷データ用データベース45とは適宜に統合されてもよい。例えば、データD1に、データD2の印刷用データの保存先アドレス及び保存時刻を含ませるようにしてもよい。
図4(c)は、状態情報を含む状態データの一例を示す模式図である。すなわち、プリンタ9からプリントサーバ7へ送信されるデータ(ステップST3及びST8)の一例を示す模式図である。
この状態データは、例えば、一のパケットのデータ部に含まれるものであり、インク残量を示す情報と、用紙残量を示す情報とを含んでいる。なお、パケットは、この状態データに、宛先アドレス及び送信元アドレス等を付与して構成されている。
インク残量を示す情報は、インクの有無のみを示す情報(2値の情報)であってもよいし、段階的又は連続的にインク残量を示す情報であってもよい。また、プリンタ9がカラープリンタである場合においては、色毎にインク残量が示されてもよい。同様に、用紙残量を示す情報は、用紙の有無のみを示す情報であってもよいし、段階的又は連続的に用紙残量を示す情報であってもよい。用紙を供給するカセット乃至はトレイが複数ある場合においては、そのカセット乃至はトレイ毎に用紙残量が示されてもよい。なお、状態データには紙詰まりを示す情報が含まれていてもよいし、印刷前データの容量オーバーを示す情報が含まれていてもよい。
図5は、図2の動作を実現するためにプリントサーバ7が実行するメイン処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、プリントサーバ7が起動されてから継続的に実行される。
ステップST21では、プリントサーバ7は、電子メールを受信したか否か判定し、受信したと判定したときは、ステップST22に進み、受信していないと判定したときは、ステップST22をスキップする。
ステップST22では、プリントサーバ7は、ステップST21で受信した電子メールに基づいて、メール受信時処理を行う。この処理は、電子メールの印刷先のプリンタ9の状態を判定し、正常であれば印刷データの送信を行い、異常であれば印刷データの保存を行う処理である。
ステップST23では、プリントサーバ7は、プリンタ9が自発的に送信した(プリントサーバ7からの状態情報の要求に対する返信ではない)状態情報を受信したか否か判定し、受信したと判定したときは、ステップST24に進み、受信していないと判定したときは、ステップST24をスキップする。後述するように、本実施形態においては、プリンタ9が自発的に状態情報を送信するのは、そのプリンタ9が異常な状態から正常な状態になったときであり、自発的な状態情報を受信したとの判定は、プリンタが正常であるとの判定に相当する。もちろん、プリントサーバ7は、自発的に送信された状態情報であっても、その状態情報に基づいて、送信元のプリンタ9の状態が正常か否か判定し、正常と判定したときにステップST24に進むようにしてもよい。
なお、プリントサーバ7は、適宜な方法によって、受信した状態情報が自発的に送信されたものか否か判定可能である。例えば、プリントサーバ7は、いずれのプリンタに状態情報を要求したかの情報を所定の条件が満たされるまで保持しており、その情報と照らし合わせて、受信した状態情報が、状態情報を要求したプリンタからのものでない場合に、自発的に送信されたものであると判定できる。所定の条件は、例えば、要求に応じて返信が得られたこと、又は、返信が得られずに所定の時間が経過したことなどである。また、プリンタ9において、状態情報を送信するときに、要求に対する返信か、自発的なものであるかを示すフラグを状態情報に付加してもよい。
ステップST24では、プリントサーバ7は、ステップST23で受信した状態情報を送信したプリンタ9(異常から正常になったプリンタ9)に関して、印刷データ用データベース45に記録された印刷データがあれば、その印刷データをプリンタ9に送信するための状態回復時処理を実行する。
ステップST25では、プリントサーバ7は、保存時間が制限時間を超えた印刷データを印刷データ用データベース45から削除するための印刷データ管理処理を行う。
その後、プリントサーバ7は、ステップST21に戻る。なお、ステップST21及びST22と、ステップST23及びST24と、ステップST25とは、一部又は全部の順番が適宜に変更されてよいし、並列に行われているかのように実行されてもよい。
図6は、プリントサーバ7が図5のステップST22で実行するメール受信時処理の手順の一例を示すフローチャートである。
ステップST31では、プリントサーバ7は、図5のステップST21で受信した電子メールの送信元メールアドレスをキーとして登録情報用データベース39の通信端末5のメールアドレスを検索し、その送信元メールアドレスが登録情報用データベース39に記憶されているか否か判定する。すなわち、プリントサーバ7は、電子メールを送信したユーザが、プリントシステム1のサービスを受けるべく予め登録されたユーザであるか否かを判定する。
そして、プリントサーバ7は、送信元メールアドレスが登録情報用データベース39に記憶されていないと判定したときは、その旨を知らせる電子メールを送信元メールアドレスに送信し(ステップST32)、図6に示すメール受信時処理を終了する。一方、プリントサーバ7は、送信元メールアドレスが登録情報用データベース39に記憶されていると判定したときは、ステップST33に進む。
ステップST33では、プリントサーバ7は、登録情報用データベース39の複数のデータD1のうち、ステップST31における検索の結果得られた、受信した電子メールの送信元メールアドレスが通信端末5のメールアドレスに一致する1以上のデータD1を対象に、受信した電子メールの送信先メールアドレスをキーとして印刷用メールアドレスを検索し、1つのデータD1を特定する。これにより、例えば、印刷先のプリンタ9が特定される。なお、特に図示しないが、このとき、該当する印刷用メールアドレスが見つからないときは、プリントサーバ7は、その旨を電子メールなどで通信端末5に通知し、図6に示すメール受信時処理を終了してもよい。
ステップST34では、プリントサーバ7は、ステップST33で特定したデータD1を参照して、印刷先のプリンタ9で使用可能な印刷データのデータ形式を特定する。
ステップST35では、プリントサーバ7は、ステップST34で特定したデータ形式に基づいて、印刷データを生成する。
ステップST36では、プリントサーバ7は、ステップST33で特定したデータD1を参照して、印刷先のプリンタ9のアドレスを特定し、そのアドレスへ状態情報を要求する信号を送信し、状態情報を取得する。このとき、例えば、一定の時間が経過してもプリンタ9から返信が得られないなど、プリンタ9と通信ができないとき、プリントサーバ7は、プリンタ9の電源がOFFされているとみなす。この動作も、一種のプリンタ9の状態を示す状態情報の取得(生成)である。
ステップST37では、プリントサーバ7は、ステップST36で取得した状態情報に基づいて、プリンタ9の状態が正常か否か判定し、正常と判定した場合はステップST38に進み、異常と判定した場合は、ステップST39に進む。
ステップST38では、プリントサーバ7は、ステップST35で生成され、RAM7c等に一時的に保持されている印刷データをステップST33で特定したデータD1のプリンタ9のアドレスへ送信する。なお、特に図示しないが、送信後、RAM7c等における印刷データが記憶されていた記憶領域は解放される。
一方、ステップST39では、プリントサーバ7は、印刷データを印刷データ用データベース45に保存する。すなわち、RAM7c等に一時的に保持されている印刷データを外部記憶装置7dの適宜な記憶領域に記録するとともに、その記憶領域を示すアドレスと、ステップST33で特定したデータD1のデータ番号と、その印刷データを外部記憶装置7dに記憶させた時刻とを対応付けたデータD2をデータテーブルDTに追加する。なお、特に図示しないが、印刷データの保存後、RAM7c等における印刷データが記憶されていた記憶領域は解放される。
図7は、プリントサーバ7が図5のステップST24で実行する状態回復時処理の手順の一例を示すフローチャートである。
ステップST51では、プリントサーバ7は、状態情報を送信したプリンタ9に対応する印刷データが印刷データ用データベース45に記録されているか否か判定し、記録されていれば、ステップST52に進み、記録されていなければ、図7の状態回復時処理を終了する。すなわち、図7の状態回復時処理は、プリンタ9の状態が異常から正常になったときに実行されるところ、そのプリンタ9の状態が異常なときにそのプリンタ9を印刷先とする電子メールを受信しており(図5のステップST22)、印刷データを保存していれば(図6のステップST39)、その印刷データを印刷するための処理に進み、そうでなければ、図7の状態回復時処理を終了する。
具体的には、例えば、まず、プリントサーバ7は、状態情報の送信元アドレスをキーとして登録情報用データベース39のプリンタ9のアドレスを検索し、1又は複数のデータD1を特定する。次に、プリントサーバ7は、その特定したデータD1に含まれるデータ番号をキーとして、印刷データ用データベース45のデータ番号を検索する。このような検索の結果、該当するデータD2が1以上見つかれば、プリントサーバ7はステップST52に進み、見つからなければ、プリントサーバ7は図7の状態回復時処理を終了する。
なお、特に図示しないが、上記の検索前に、印刷データ用データベース45にデータD2が1以上あるか否か判定され、ないと判定されたときに図7の状態回復処理が終了されてもよい。
プリントサーバ7に状態情報を送信するのは、基本的には、登録情報用データベース39にアドレスが登録されているプリンタ9のはずであり、状態情報の送信元アドレスをキーとして登録情報用データベース39のプリンタ9のアドレスを検索すれば、1以上のデータD1が見つかるはずである。しかし、何らかのエラーの発生の可能性も考慮して、該当するデータD1が見つからないときに、ステップST51のNo判定がなされるようにしてもよい。この場合は、送信元アドレスにその旨のエラー通知がなされることが好ましい。
ステップST52では、プリントサーバ7は、ステップST51で特定した1以上のデータD2のうちいずれか一つの保存先アドレスを参照して、印刷データを抽出する。
ステップST53では、プリントサーバ7は、ステップST52で抽出した印刷データを図5のステップST23で状態情報を送信したプリンタ9に送信する。これにより、保存されていた印刷データがプリンタ9で印刷される。
ステップST54では、プリントサーバ7は、送信した印刷データを印刷データ用データベース45から削除する。
ステップST55では、プリントサーバ7は、ステップST51で特定した1以上のデータD2の全てについて、ステップST52〜ST54の処理を実行したか否か判定し、実行していないと判定したときは、ステップST52に戻って残りのデータD2についてステップST52〜ST54の処理を実行し、実行したと判定したときは、図7の状態回復時処理を終了する。
図8は、プリントサーバ7が図5のステップST25で実行する印刷データ管理処理の手順の一例を示すフローチャートである。
ステップST61では、プリントサーバ7は、印刷データ用データベース45を参照して、保存された印刷データの有無を判定し、あると判定したときは、ステップST61に進み、ないと判定したときは、図8の印刷データ管理処理を終了する。
ステップST62では、プリントサーバ7は、印刷データ用データベース45の複数のデータD2のうち一つを選択する。
ステップST63では、プリントサーバ7は、ステップST62で選択したデータD2のデータ番号をキーとして、登録情報用データベース39のデータ番号を検索して対応するデータD1を特定し、そのデータD1の制限時間を読み出す。
ステップST64では、プリントサーバ7は、ステップST62で選択したデータD2の保存時刻と、自己が計時している現在時刻とから、そのデータD2に対応する印刷データの保存時間を特定し、その保存時間がステップST63で特定した制限時間を超えたか否か判定する。
そして、プリントサーバ7は、保存時間が制限時間を超えていると判定したときは、その印刷データを印刷データ用データベース45から削除し(ステップST65)、超えていないと判定したときは、ステップST65をスキップする。
ステップST66では、プリントサーバ7は、印刷データ用データベース45に保存されている全ての印刷データについて、ステップST62〜ST65の処理を実行したか否か判定し、実行していないと判定したときは、ステップST62に戻って残りの印刷用データについてステップST62〜ST65の処理を実行し、実行したと判定したときは、図8のデータ管理処理を終了する。
なお、既に述べたように、印刷データ用データベース45において、保存時刻に代えて、削除時刻(保存時刻+制限時間)が記録されてもよい。そして、例えば、ステップST63では、ステップST62で指定したデータD2の削除時刻が参照され、ステップST64では、現在時刻が削除時刻を過ぎたか否かが判定されてよい。削除時刻が記録される場合においては、削除時刻が早いものから順にデータD2がソートされるようにしておき、そのソート順に、ステップST62〜ST65の処理を行い、現在時刻が削除時刻を超えていないデータD2に到達した時点で図8のデータ管理処理を終了するようにしてもよい。
図9は、プリンタ9が実行する状態通知処理の手順の一例を示すフローチャートである。
この処理は、例えば、プリンタ9の起動後、継続して実行される。従って、この処理が開始される前は、プリンタ9の電源がOFFされており、プリンタ9は、本実施形態の定義では異常であったことになる。そして、既に述べたように、プリントサーバ7は、プリンタ9の電源がOFFされている間にそのプリンタ9を印刷先とする電子メールを受信していたときなどにおいては、印刷データを保存している(図6のステップST39)。
ステップST71では、プリンタ9は、自己の状態が正常か否か判定する。例えば、プリンタ9は、用紙有り、且つ、インク有りであれば、正常と判定し、そうでなければ異常と判定する。そして、プリンタ9は、正常と判定したときは、プリントサーバ7へ状態情報を送信する(ステップST72)。これにより、プリンタ9の電源がONされ、そのときの状態が正常であれば、その旨がプリントサーバ7に自発的に通知されることになる。そして、プリントサーバ7では、図5のステップST23で肯定判定がなされる。一方、プリンタ9は、異常と判定したときは、ステップST72をスキップする。
ステップST72の状態情報の送信では、プリンタ9は、予め保持している1以上の(プリントサーバ7の)アドレスへ状態情報を送信する。このアドレスは、例えば、プリントシステム1によるサービスを受けるための所定の登録手続き等によって、プリンタ9に記録されている。
ステップST73では、プリンタ9は、プリントサーバ7から状態情報の送信を要求する信号(図6のステップST36)を受信したか否か判定する。そして、プリンタ9は、受信したと判定したときは、現在の状態を示す状態情報を正常か否かに関わらず、要求元のプリントサーバ7へ状態情報を送信する(ステップST74)。一方、プリンタ9は、状態情報の要求を受信していないと判定したときは、ステップST74をスキップする。
ステップST75では、プリンタ9は、自己の状態が異常から正常になったか(状態が回復したか)否か判定する。例えば、プリンタ9は、用紙有り且つインク有りが成立しない状態から成立する状態に変化したか否か判定する。そして、プリンタ9は、状態が回復したと判定したときは、ステップST72と同様に、予め保持しているアドレスへ状態情報を送信する(ステップST76)。これにより、用紙が補充されたこと及び/又はインクが補充されたこと等がプリントサーバ7へ自発的に通知されることになる。そして、プリントサーバ7では、図5のステップST23で肯定判定がなされる。一方、プリンタ9は、異常と判定したときは、ステップST76をスキップする。
そして、プリンタ9は、ステップST73〜ST76を繰り返す。このような動作によって、プリントサーバ7においては、問い合わせによってプリンタ9から状態情報を取得可能となるとともに、異常から正常な状態になったプリンタ9から自発的に送信される状態情報を受信できる。
(保存した印刷データの抽出トリガの変形例)
上述した実施形態では、プリンタ9の状態が異常から正常になったことをプリンタ9が自発的にプリントサーバ7に通知し、これにより、保存されていた印刷データが抽出されて印刷が行われた。この動作に代えて又は加えて、プリントサーバ7が定期的にプリンタ9に状態を問い合わせ、正常になったときに印刷データが抽出されて印刷が行われてもよい。
図10は、そのような変形例において、図5のステップST23及びST24に代えて又は加えて、プリントサーバ7が実行する再試行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
この処理の前提として、例えば、データD2は、前回、印刷を試行した時刻(不図示)を含んでいる。具体的には、例えば、図6のステップST37又は後述するステップST85で異常判定がなされたとき、プリントサーバ7は、そのとき自己が計時していた時刻をデータD2に含ませる。
ステップST81では、プリントサーバ7は、印刷データ用データベース45を参照して、保存された印刷データの有無を判定し、あると判定したときは、ステップST82に進み、ないと判定したときは、図10の再試行処理を終了する。
ステップST82では、プリントサーバ7は、印刷データ用データベース45の複数のデータD2のうち一つを選択する。
ステップST83では、ステップST82で選択したデータD2について、そのデータD2に含まれている、前回、印刷を試行した時刻と、現在の時刻とを比較して、所定の回復待ち時間が経過したか否か判定する。
この回復待ち時間は、例えば、制限時間と同様に、ユーザが任意に設定可能に、データD1毎に登録情報用データベース39に保持されており、データD2のデータ番号をキーとして登録情報用データベース39を検索することによって特定されてよい。また、回復待ち時間は、登録情報用データベース39には保持されずに、プリントサーバ7において全てのユーザに対して一律に設定されていてもよい。その単位は、秒、分、時又は日等のいずれでもよく、いずれかの単位を選択可能であってもよい。
そして、プリントサーバ7は、回復待ち時間が経過したと判定したときは、ステップST82で選択した印刷データについて印刷を試行するためのステップST84〜ST88へ進み、回復待ち時間が経過していないと判定したときは、ステップST84〜ST88をスキップする。
ステップST84及びST85では、プリントサーバ7は、ステップST82で選択したデータD2に対応するデータD1から特定されるプリンタ9に対して、状態情報を要求し、得られた状態情報に基づいて正常か否か判定する。この処理は、対象とするプリンタ9の選択方法が異なることを除いては、図6のステップST36及びST37と同様である。
そして、プリントサーバ7は、正常と判定したときは、ステップST82で選択したデータD2と対応する印刷データについて、図7のステップST52〜ST54と同様に、印刷データの抽出(ステップST86)、印刷データの送信(ステップST87)及び印刷データの削除(ステップST88)を行う。
ステップST89では、プリントサーバ7は、印刷データ用データベース45に保存されている全ての印刷データについて、ステップST82〜ST88の処理を実行したか否か判定し、実行していないと判定したときは、ステップST82に戻って残りの印刷用データについてステップST82〜ST88の処理を実行し、実行したと判定したときは、図10のデータ管理処理を終了する。
なお、回復待ち時間に代えて、再試行時刻(前回の試行時刻+回復待ち時間)がデータD2に保持され、現在時刻と比較されてもよい。そして、例えば、ステップST83では、ステップST82で指定したデータD2の再試行時刻が参照され、現在時刻が再試行時刻を過ぎたか否かが判定されてよい。再試行時刻が記録される場合においては、再試行時刻が早いものから順にデータD2がソートされるようにしておき、そのソート順に、ステップST82〜ST88の処理を行い、現在時刻が再試行時刻を超えていないデータD2に到達した時点で図10のデータ管理処理を終了するようにしてもよい。
図10の再試行処理が図5のステップST23及びST24に加えて実行される場合は、プリンタ9が実行する状態通知処理は、例えば、図9に示したものと同様である。図10の再試行処理が図5のステップST23及びST24に代えて実行される場合は、プリンタ9が実行する状態通知処理は、例えば、図9に示したものから自発的な状態情報の通知(ステップST71、ST72、ST75及びST76)を省略したものでよい(省略しなくてもよい)。
(保存する対象データの変形例)
上述した実施形態では、電子メールに基づく印刷データを印刷データ用データベース45に保存した。これに対して、印刷データに代えて電子メールを印刷データ用データベース45に保存することも可能である。
具体的には、例えば、図6のメール受信時処理では、データ形式の特定(ステップST34)及び印刷データの生成(ステップST35)を、正常か否かの判定(ステップST37)に関わらずに行うのではなく、正常と判定されたときのみ(ステップST37とステップST38との間)において行う。そして、ステップST39では、印刷データではなく、電子メールを保存する。
また、例えば、図7の状態回復時処理のステップST52(図10のステップST86も同様)では、保存した印刷データの抽出に代えて、保存した電子メールの抽出、印刷先のプリンタのデータ形式の特定、及び、電子メールに基づく印刷データの生成を行う。
一般に、ラスター形式のデータは、ベクタ形式のデータに比較してデータ量は小さいことから、電子メールを保存するよりも印刷データを保存した方がデータベースの容量を節約できる。しかし、電子メールに記載されたURLにより特定されるウェブページを印刷するような場合等においては、電子メールを保存する(ウェブページの内容は保存しない)方がデータベースの容量を節約できることがある。従って、プリントシステム1の運用等に応じて、いずれを保存するかが選択されてよい。また、プリントサーバ7は、電子メール及びその電子メールに基づく印刷データのデータ量(予測に基づくものであってもよい)を比較し、選択的にいずれかを記憶してもよいし、電子メール本文及び/又は添付ファイルをラスター形式にして保存するとともに、電子メールに記載されたURLをベクタ形式で保存してもよい。さらに、印刷データ用データベース45に保存する保存データとして、電子メールと印刷データとの間の中間データであってもよい。中間データは、電子メールが含む情報に基づく、プリンタ9にて使用可能な形式の印刷データを生成する途中のデータである。
以上のとおり、本実施形態では、通信端末5及びプリンタ9とネットワーク3を介して通信可能なプリントサーバ7は、通信端末5からネットワーク3を介して電子メールを受信するメール受信部33と、電子メールが含む情報に基づく、プリンタ9にて使用可能な形式の印刷データを生成する印刷データ生成部53と、ネットワーク3を介したプリンタ9との通信に基づいてプリンタ9の状態が正常及び異常のいずれであるかを判定する状態認識部41と、状態認識部41により正常と判定された場合に、印刷データ生成部53が生成した印刷データをネットワーク3を介してプリンタ9へ送信する(ステップST5:ST38)印刷データ送信部55と、状態認識部41により異常と判定された場合に、電子メール及び印刷データの少なくとも一方を含む保存データを印刷データ用データベース45(記録部)に記録する記録処理部57と、を有している。印刷データ送信部55は、状態認識部41により異常と判定された後に正常と判定された場合に、印刷データ用データベース45からの抽出に基づく印刷データをネットワーク3を介してプリンタ9へ送信する(ステップST10:ST53及び/又はST87)。
従って、既に述べたように、ネットワーク3とプリンタ9との間に、プリンタ9にて使用可能なデータ形式の印刷データを生成するための機器は不要であり、構成が簡素である。さらに、プリンタ9が異常な場合には、印刷データ(又は電子メール)がプリントサーバ7に保存され、その後、プリンタ9が正常なときに、印刷データがプリンタ9に送信されることから、例えば、電子メールを送信したユーザから見ると、ネットワーク3とプリンタ9との間に介在する通信端末の操作に依存せずに、確実に印刷がなされる。
なお、以上の実施形態において、外部記憶装置7d(印刷データ用データベース45のハードウェア)は記憶部の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、実施形態では、印刷用メールアドレスに種々のローカルパートが設定され、ローカルパート毎にプリンタを特定する情報が対応付けられた。しかし、印刷用メールアドレスのローカルパートは一定としてもよい。この場合であっても、例えば、電子メールの送信元アドレス(通信端末5のメールアドレス)毎に印刷先のプリンタを設定し、サービスを提供することができる。
また、例えば、実施形態では、プリンタからの自発的な状態情報の送信は、状態が正常なときにのみ行われた。しかし、プリンタは、状態の正常又は異常に関わらずに、定期的且つ自発的に状態情報を送信したり、状態の項目(例えば用紙の有無、インクの有無等)のいずれかが正常になったときに(全ての項目が正常でなくても)自発的に状態情報を送信したりしてもよい。この場合、例えば、プリントサーバは、ステップST23において、受信した状態情報に基づいて正常か否かを判定すればよい。